(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076369
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】プレスフェルト
(51)【国際特許分類】
D21F 7/08 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
D21F7/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023197778
(22)【出願日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】20226049
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】507009216
【氏名又は名称】バルメット テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーヴィ ヴィラ‐ヌオッタヤルヴィ
(72)【発明者】
【氏名】カティ ミッコネン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルマ ナーマンカ
(72)【発明者】
【氏名】スサンナ モイシオ
(72)【発明者】
【氏名】ユハ ヒュンニネン
(72)【発明者】
【氏名】レーナ シラコスキ
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AG84
4L055CE37
4L055CE38
4L055CE40
4L055CE42
4L055EA16
(57)【要約】
【課題】 マーキング効果を有し、パルプからの水分のより良好に蒸発させることができる改善されたプレスフェルトを提供すること。
【解決手段】 本発明の態様の一例によれば、縫い目と、ウェブ側及びマシン側とを有するプレスフェルト(100)が提供され、プレスフェルト(100)は、ウェブ側にある第1の繊維層(131)と、マシン側にある第2の繊維層(132)と、第1の繊維層と第2の繊維層との間にある少なくとも1つの織物基布(110)及び少なくとも1つの螺旋状織物(120)とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫い目、ウェブ側及びマシン側を有するプレスフェルトであって、当該プレスフェルトは、
前記ウェブ側にある第1の繊維層と、
前記マシン側にある第2の繊維層と、
前記第1の繊維層と前記第2の繊維層との間にある少なくとも1つの織物基布及び少なくとも1つの螺旋状織物と、
を含む、プレスフェルト。
【請求項2】
前記少なくとも1つの螺旋状織物は、前記少なくとも1つの織物基布の、前記ウェブ側又は前記マシン側にある、請求項1に記載のプレスフェルト。
【請求項3】
前記第1の繊維層及び前記第2の繊維層は、前記少なくとも1つの織物基布及び前記少なくとも1つの螺旋状織物を貫通し、前記少なくとも1つの織物基布と前記少なくとも1つの螺旋状織物とを互いに取り付けるように構成されている、請求項1又は2に記載のプレスフェルト。
【請求項4】
前記少なくとも1つの織物基布はマシン方向糸及びクロスマシン方向糸を含み、
前記少なくとも1つの螺旋状織物は、螺旋状ループ糸及びピントルワイヤを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプレスフェルト。
【請求項5】
前記ピントルワイヤは、前記螺旋状織物の平面内でクロスマシン方向に配置されているか又は前記クロスマシン方向に対して傾斜している、請求項4に記載のプレスフェルト。
【請求項6】
前記縫い目は、前記少なくとも1つの織物基布内にある第1の縫い目及び前記少なくとも1つの螺旋状織物内にある第2の縫い目を含む二重縫い目構造である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプレスフェルト。
【請求項7】
前記第1の縫い目は織物ループで形成され、前記第2の縫い目は螺旋状ループで形成されている、請求項6に記載のプレスフェルト。
【請求項8】
前記螺旋状ループ糸はポリマー、好ましくはポリアミドを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプレスフェルト。
【請求項9】
前記ポリアミドは、ポリアミド4.6、ポリアミド4.10、ポリアミド5.6、ポリアミド5.10、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10、ポリアミド11及びポリアミド12又はそれらの混合物から選択される、請求項8に記載のプレスフェルト。
【請求項10】
前記螺旋状ループ糸の断面は、円形、楕円形、ひし形、四角形又は丸みを帯びた縁を有する四角形である。請求項1乃至9のいずれか一項に記載のプレスフェルト。
【請求項11】
前記螺旋状ループ糸の直径は0.1~3mm、好ましくは0.1~0.6mmである、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のプレスフェルト。
【請求項12】
前記螺旋状ループ糸のループサイズは0.2~15mm、好ましくは0.2~10mm、より好ましくは2~6mmである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のプレスフェルト。
【請求項13】
前記螺旋状織物は、前記螺旋状ループ糸のループ内にフィラー糸をさらに含む、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプレスフェルト。
【請求項14】
前記フィラー糸はモノフィラメント、マルチフィラメント又はツイスト糸である、請求項13に記載のプレスフェルト。
【請求項15】
抄紙機、段ボール製造機、ティッシュ製造機又はパルプマシンにおける請求項1乃至14のいずれか一項に記載のプレスフェルトの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ウェブ機(fibre web machines)で用いられるプレスフェルトに関する。
【背景技術】
【0002】
プレスフェルトは、繊維ウェブ機のプレス区画で繊維ウェブから水を取り除くのに重要な役割を果たす。プレスフェルトはプレス区画にわたってウェブを運び、プレス処理の間にウェブから取り除かれた水を受け取る。それと同時に、プレスフェルトはウェブに滑らかさを与え、それを乾燥機区画に運ぶ。現代のプレスフェルトは少なくとも1つの基布と、基布の少なくとも一方の面に設けられる繊維層とを含む。基布は1~4層からなる織布又は不織布であり得る。
【0003】
従来用いられているプレスフェルトは表面積が小さいため、表面が滑らかなウェブの生産が可能となる。つまり、従来用いられているプレスフェルトにはマーキング効果がない。マーキング効果とは、プレスフェルトがウェブに対して凸凹な構造面を生み出すことを意味する。そのため、マーキング効果を有する新規なプレスフェルトに対するニーズがある。また、従来用いられているプレスフェルトは、表面積が小さいことにより水除去特性が不十分であり得る。そのため、パルプから水分がより良好に蒸発されるように表面積が大きくなった新規なプレスフェルトに対するニーズもある。
【発明の概要】
【0004】
本実施形態の少なくとも一部の目的は、マーキング効果及びパルプからの水分のより良い蒸発のために表面積が大きくなったプレスフェルトを提供することである。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、シーム、ウェブ側及びマシン側を有するプレスフェルトが提供され、プレスフェルトは、
-ウェブ側にある第1の繊維層と、
-マシン側にある第2の繊維層と、
-前記第1の繊維層と前記第2の繊維層との間にある少なくとも1つの織物基布(woven base fabric)及び少なくとも1つの螺旋状織物(spiral fabric)と、
を含む。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、抄紙機、段ボール製造機、ティッシュ製造機又はパルプマシン等の繊維ウェブ機における本願発明のプレスフェルトの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の少なくとも一部の実施形態に係るプレスフェルトを示す。
【
図2】
図2は、本発明の少なくとも一部の実施形態に係る螺旋状織物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本文脈で、「螺旋状織物(spiral fabric)」という用語は、複数の螺旋状ループ糸(spiral loop yarn)と、該螺旋状糸を互いに接続する複数のピントルワイヤとを含む織物を意味する。螺旋状ループ糸はジッパーのように隣接する螺旋状ループ糸と織り混ぜられる。隣接する螺旋状ループ糸は、隣接する螺旋状ループ糸との間でチャネルを形成する。隣接する螺旋状ループ糸は、チャネルを通って延びるピントルワイヤと接続される。螺旋状ループ糸のループ内には自由空間があり、その自由空間にはフィラー糸を充填することができる。
【0009】
本文脈で、「ループサイズ」という用語は、螺旋状ループ糸のループの長さ(L)を意味する。長さは、螺旋状織物の平面内のピントルワイヤの長さ方向に対して実質的に垂直であるか又は傾斜している。
【0010】
本文脈で、「ウェブ側(web side)」という用語は、プレスフェルトが繊維ウェブ機、例えば、抄紙機、段ボール製造機又はティッシュ製造機で用いられる場合に、製造される紙、板紙、パルプ又はティッシュ等の繊維ウェブに面するプレスフェルトの側を意味する。
【0011】
本文脈で、「マシン側(machine side)」という用語は、プレスフェルトが繊維ウェブ機で用いられている場合に、繊維ウェブ機の機材と接触するプレスフェルトの側を意味する。
【0012】
本文脈で、「マシン方向(machine direction)」という用語は、プレスフェルトが繊維ウェブ機で用いられている場合に、繊維ウェブ機においてプレスフェルトが移動する方向と平行な方向を意味する。
【0013】
本文脈で、「クロスマシン方向(cross machine direction)」という用語は、プレスフェルトが繊維ウェブ機で用いられている場合に、繊維ウェブ機においてプレスフェルトが移動する方向に対して垂直な方向を意味する。
【0014】
プレスフェルトは、抄紙機、段ボール製造機又はとりわけパルプマシン等の繊維ウェブ機のプレス区画で繊維ウェブから水を取り除き、表面を形成するのに重要な役割を果たす。本実施形態の少なくとも一部は、乾燥区画で繊維ウェブからの水分をより良好に蒸発させるために繊維ウェブに対して大きな表面積を付与することが可能な、マーキング効果を有するプレスフェルトを提供する。
【0015】
一実施形態によれば、継ぎ目と、ウェブ側及びマシン側とを有するプレスフェルト100は、
-ウェブ側にある第1の繊維層131と、
-マシン側にある第2の繊維層132と、
-繊維層131、132の間にある少なくとも1つの織物基布110及び少なくとも1つの螺旋状織物120と、
を含む。
【0016】
螺旋状織物はより頑強で粗い構造を有するため、織物基布と比べて螺旋状織物はより良好な機械的マーキング効果をもたらす。このマーキング効果は繊維ウェブの表面積を増加させるため、後に、繊維ウェブの乾燥はよりエネルギー効率が良いものとなる。
【0017】
プレスフェルト100は、1~4つ、好ましくは1~2つの織物基布110を含み得る。2つ以上の織物基布によって、より高い空隙容積、安定性及び強度を得ることができる。織物基布は少なくとも1つの糸層、好ましくは1~4つの糸層を有し得る。
【0018】
プレスフェルト100は、1~2つ、好ましくは1つの螺旋状織物120を含み得る。2つ以上の螺旋状織物によってより高い空隙容積を得ることができる。
【0019】
一実施形態によれば、少なくとも1つの螺旋状織物120は、少なくとも1つの織物基布110のウェブ側又はマシン側にある。少なくとも1つの螺旋状織物がウェブ側にある場合、螺旋状織物の表面構造が繊維層を通して影響を与えるため、プレスフェルトのウェブ側の表面は粗く粒状となる。そのため、少なくとも1つの螺旋状織物はウェブに対するマーキング効果がより強くなる。あるいは、少なくとも1つの螺旋状織物がマシン側にある場合、プレスフェルトのウェブ側表面は、螺旋状織物の表面構造は繊維層にわたって影響しないか又は大きく影響しないため、少なくとも比較的滑らかで均一である。又は繊維層を介して大きく影響しない。そのため、少なくとも1つの螺旋状織物は、繊維ウェブ上でマーキング効果を有さないか又はマーキング効果が弱くなる。
【0020】
プレスフェルト100が2つ以上の織物基布110を含む場合、織物基布110が互いに重ねられて織物基布の積層体を形成できる。プレスフェルト100が2つ以上の螺旋状織物120を含む場合、螺旋状織物が互いに重ねてられて螺旋状織物の積層体を形成できる。螺旋状織物の積層体又は好ましくは1つの螺旋状織物120は、織物基布110の積層体のマシン側又はウェブ側に配置できる。あるいは、織物基布110は螺旋状織物120と交互に(alternate with)なり得る。
【0021】
繊維層131、132は、プレスフェルト100のウェブ側及びマシン側で繊維層131、132を形成するために、少なくとも1つの織物基布110及び少なくとも1つの螺旋状織物120に針で縫い付けられる(needled)個々の繊維を含み得る。
【0022】
一実施形態によれば、第1の繊維層131、第2の繊維層132は、少なくとも1つの織物基布110及び少なくとも1つの螺旋状織物120を貫通し、少なくとも1つの織物基布110及び少なくとも1つの螺旋状織物120を互いに取り付けるように構成されている。そのため、織物を互いに取り付けるための追加の段階は必要ないが、繊維層の繊維を織物に針で縫い付けるできる。実際に、基布及び螺旋状織物を貫通する繊維層は、第1の繊維層、第2の繊維層のいずれか又はその両方の繊維を、繊維層の少なくとも一方の繊維層の繊維が他方の繊維層まで伸びるように、繊維層の間に配置された織物基布及び螺旋状織物に通し、それによりプレスフェルトの全ての層及び織物を共に取り付けることにより得ることができる。
【0023】
一実施形態によれば、少なくとも1つの織物基布110はマシン方向(MD)糸111及びクロスマシン方向(CMD)糸112を含み、少なくとも1つの螺旋状織物120は螺旋状ループ糸(spiral loop yarns)121及びピントルワイヤ122を含む。マシン方向糸111及びクロスマシン方向糸112は互いに交差し、それにより互いに係合している。螺旋状ループ糸は互いに隣接して配置された場合、すなわち隣接する螺旋状ループ糸の間で第1の方向にチャネルを形成する。隣接する螺旋状ループ糸はチャネルを通って延びるピントルワイヤに接続されている。通常、螺旋状織物の平面内の第1の方向に垂直な第2の方向では、ピントルワイヤが、
図1に示すように、隣接するチャネルまで延びるように2つのループが重なり合っている。
【0024】
一実施形態によれば、ピントルワイヤ122は、
図1に示すようにクロスマシン方向(CMD)に配置されるか又は螺旋状織物120の平面内のクロスマシン方向に対して傾斜している。ピントルワイヤ122は、螺旋状織物120の平面内のクロスマシン方向に対してわずかに傾斜(例えば0.1~10°)されている。すなわち、ピントルワイヤ122の方向は、少なくとも1つの織物基布110のクロスマシン方向糸112の方向と少なくとも実質的に同じであり得る。そのため、隣接する螺旋状ループ糸の間のチャネルは、プレスフェルトのクロスマシン方向に少なくとも実質的に形成される。これにより、全ての基布、つまり、基布及び螺旋状織物におけるクロスマシン方向に縫い目を形成することができるため、プレスフェルトの縫い合わせが容易になる。加えて、螺旋状織物の縫い目は螺旋状織物本体と同一であるため、本体と区別することはできない。
【0025】
本実施形態によれば、縫い目は、少なくとも1つの織物基布110における第1の縫い目141と、少なくとも1つの螺旋状織物120における第2の縫い目142とを含む二重縫い目構造である。少なくとも1つの織物基布110及び少なくとも1つの螺旋状織物120は、連続したプレスフェルトを形成するために共に結合されるマシン方向(MD)における両端、すなわち第1の端部及び第2の端部を有するクロスマシン方向(CMD)幅及びマシン方向(MD)長さを有し得る。そのため、プレスフェルトが繊維ウェブ機で用いられる場合、プレスフェルトはループを形成する。二重の縫い目は、プレスフェルトの安全且つ容易な取り付けを提供する。
【0026】
一実施形態によれば、第1の縫い目は織物ループで形成され、第2の縫い目は螺旋状ループで形成される。織物ループは、結合されるべき織物基布110の端部に形成できる。織物ループは、織物基布110のマシン方向糸111で形成できる。螺旋状ループは、結合されるべき螺旋状織物120の端部に形成できる。螺旋状ループは、螺旋状織物120の螺旋状ループ糸121のループで形成できる。
【0027】
織物基布110の第1の端部の織物ループは、端部がエンドレスプレスフェルトを形成するために互いに整列している場合に、織物基布110の第2の端部の織物ループと交互にかみ合うことができる。螺旋状織物120の第1の端部の螺旋状ループは、端部がエンドレスプレスフェルトを形成するために互いに整列している場合、螺旋状織物120の第2の端部の螺旋状ループと交互にかみ合うことができる。ループのこの交互にかみ合う配置は、ピントルが挿入され得る実質的に管状の通路を形成する。ピントルが通路に挿入されると、それは端を互いに取り付け、エンドレスプレスフェルトを提供する。
【0028】
プレスフェルト100が2つ以上の織物基布110及び/又は螺旋状織物120を含む場合、プレスフェルトを共に形成する全ての個々の織物基布110及び螺旋状織物120のマシン方向における両端部は、別々に又は同時に結合できる。
【0029】
マシン方向における両端部は、プレスフェルトが繊維ウェブ機のプレス区画に設置されている場合に共に結合できる。ピントルでシームループを結合することは、織物の端部から始めることができる。シームプロセスは、ピントルが織物のループ及び螺旋状ループを全て通り抜けるまで続けられる。
【0030】
一実施形態によれば、螺旋状糸121は、ポリマー、好ましくはポリアミド(PA)を含む。ポリアミド糸でできたプレスフェルトは優れた強度及び耐摩耗性を有する。
【0031】
一実施形態によれば、ポリアミドは、ポリアミド4.6、ポリアミド4.10、ポリアミド5.6、ポリアミド5.10、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10、ポリアミド11及びポリアミド12又はそれらの混合物から選択される。混合物(以下の他の例についても)とは、製品が同一の糸又は繊維中に2種類以上のポリアミドを含み得るか又は製品が異なる糸又は繊維に異なる種類のポリアミドを含み得ることを意味する。上記のポリアミドは、機械的強度及び耐摩耗性が必要な場合に優れた選択肢である。ポリアミド6繊維は強靭であり、高い引張強度及び弾性を有する。それらは摩耗や、酸及びアルカリ等の化学物質に対して高い耐性を有する。ポリアミド6は高い吸水性を有する。ポリアミド6.6は高い機械的強度、剛性及び良好な熱及び化学的安定性を有する。ポリアミド6.10は、高い耐衝撃性、耐薬品性及び寸法保持性を有する。ポリアミド11の密度、曲げ弾性率及びヤング率、吸水性並びに溶融及びガラス転移温度の値はポリアミド6のものよりも低い。しかしながら、ポリアミド11は、ポリアミド6よりも水分の存在下での寸法安定性が高い。
【0032】
一実施形態によれば、螺旋状ループ糸121の断面は円形、楕円形、ひし形、四角形又は丸みを帯びた縁を有する四角形である。これらの断面は、螺旋状織物のために粗く粒状の表面及び高い表面積を提供する。したがって、プレスフェルトは、少なくとも1つの螺旋状織物がウェブ側にある場合に、マーキング効果を有する。加えて、プレスフェルトの水除去性が改善する。
【0033】
一実施形態によれば、螺旋状ループ糸121の直径は0.1~3mm、好ましくは0.1~0.6mmである。約0.1~1mm等の直径が小さい螺旋状ループ糸はプレスフェルトに対してより小さな表面積、故により滑らかな表面を提供する。他方、約2~3mm等の直径が大きい螺旋状ループ糸は、プレスフェルトに対してより高い表面積、故により粗く粒状の表面を提供する。加えて、より大きな直径は良好な引張強度及び通気性を提供する。
【0034】
一実施形態によれば、螺旋状ループ糸121のループサイズLは0.2~15mm、好ましくは0.2~10、より好ましくは2~6mmである。ループサイズがより大きいと、直径がより大きいピントルワイヤを用いることができるようになり、マーキング効果に影響を与える。ループサイズがより小さいと、直径がより小さいピントルワイヤを用いることができる。これにより、作業条件に応じて、より柔軟な糸及びループサイズの選択が可能になる。約10~15mm等の大きなループサイズは、約0.2~1mm等の小さなループサイズよりも、プレスフェルトに対してより小さな表面積を提供する。他方、小さなループサイズは、ピントルワイヤ122間の距離が短くなるため、大きなループサイズよりも粗く粒状の表面をもたらす。
【0035】
螺旋状織物120は巻線織物(wind fabric)であってもよい。巻線織物では、螺旋状ループ糸121のフィラメントが螺旋状ループに巻かれ、螺旋状ループはピントルワイヤ122によって互いに接続される。
【0036】
ピントルワイヤ122はポリマー、好ましくはポリアミド(PA)を含み得る。ポリアミドは、ポリアミド4.6、ポリアミド4.10、ポリアミド5.6、ポリアミド5.10、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10、ポリアミド11及びポリアミド12並びにそれらの混合物から選択できる。ポリアミドでできたピントルワイヤは優れた強度及び耐摩耗性を有する。
【0037】
ピントルワイヤ122の直径は0.1~14mm、好ましくは0.3~0.9mmであり得る。ピントルワイヤの全てが本質的に同じ直径を有することが好ましい。
【0038】
一実施形態によれば、螺旋状織物120は、螺旋状ループ糸121のループ内にフィラー糸123をさらに含む。フィラー糸は、必要に応じて通気性を低下させ、繊維層131、132の繊維の繊維絡まりを高めるために用いることができる。
【0039】
一実施形態によれば、フィラー糸123は、モノフィラメント、マルチフィラメント又はツイスト糸である。フィラー糸はツイスト糸であることが好ましく、その場合、繊維層131、132の繊維との繊維絡みが高められる。そのため、繊維層131、132の繊維を螺旋状織物120に取り付けるのが容易になる。加えて、これにより、繊維層の互いへの取り付けが強化される。
【0040】
繊維層131、132の繊維は、針により、少なくとも1つの織物基布110及び少なくとも1つの螺旋状織物120に取り付けることができる。
【0041】
繊維層131、132の繊維の量は、例えば、50~2000g/m2であり得る。
【0042】
少なくとも1つの織物基布110のマシン方向糸111及びクロスマシン方向糸112の直径は150~500μmであり得る。好ましくは、基布の全ての糸は本質的に同じ直径を有することが好ましい。
【0043】
少なくとも1つの織物基布110のマシン方向糸111及びクロスマシン方向糸112はポリアミド(PA)を含み得る。ポリアミドは、ポリアミド4.6、ポリアミド4.10、ポリアミド5.6、ポリアミド5.10、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10、ポリアミド11及びポリアミド12並びにそれらの混合物から選択できる。あるいは、ポリアミド繊維は、上記のポリアミドのうちの2つ以上から得られるコポリアミドを含み得るか又はポリアミド繊維は、上記のポリアミドのうちの2つを含む二成分繊維であり得る。ポリアミド繊維はポリアミド11を含むことが好ましい。ポリアミド11は、水分の存在下で良好な寸法安定性を有する。
【0044】
上述のプレスフェルト100は、製紙機械、段ボール機械、ティッシュ機械又はパルプ機械で用いることができる。
【0045】
図1は、本発明の少なくとも一部の実施形態に係るプレスフェルト100を示す。プレスフェルト100は、ウェブ側にある第1の繊維層131と、マシン側にある第2の繊維層132とを含む。また、プレスフェルト100は、繊維層131、132の間に織物基布110及び螺旋状織物120を含む。織物基布110は3つの層を含む。螺旋状織物120は、織物基布110のウェブ側にある。織物基布110はマシン方向(MD)糸111及びクロスマシン方向(CMD)糸112を含み、螺旋状織物120は螺旋状ループ糸121及びピントルワイヤ122を含む。ピントルワイヤ122は、螺旋状織物120の平面においてクロスマシン方向に配置される。プレスフェルトの縫い目は、織物基布110における第1の縫い目141及び螺旋状織物120における第2の縫い目142を含む二重の縫い目構造である。第1の縫い目141は織物ループで形成されている。第2の縫い目142は螺旋状ループから形成されている。そのため、第2の縫い目142は螺旋状織物本体自体と同一であり、故に目に見えない。
【0046】
図2は、本発明の少なくとも一部の実施形態に係る螺旋状織物120を示す。螺旋状織物120は、螺旋状ループ糸121及びピントルワイヤ122を含む。螺旋状織物120は、螺旋状ループ糸121のループの内にフィラー糸123をさらに含む。螺旋状ループ糸121は、プレスフェルトのマシン方向(MD)における螺旋状ループ糸のループの長さであるループサイズLを有する。
【0047】
開示した本発明の実施形態は、本願で開示した特定の構造、工程又は材料に限定されず、当業者によって認識され得るようにそれらの同等物におよぶことが理解されよう。本願で用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ用いられており、限定することを意図していないことを理解すべきである。
【0048】
さらに、説明した特徴、構造又は特性は、1つ以上の実施形態で任意の適切な方法で組み合わされ得る。本明細書では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために長さ、幅、形状等の例といった数々の特定の詳細が提供されている。
【0049】
「含む」という動詞は、本願では、記載されていない特徴の存在を除外したり要求したりしないオープンな限定として用いられている。従属請求項に記載された特徴は、別段明記されていない限り、相互に自由に組み合わせられる。さらに、本願を通じて「a」又は「an」、すなわち単数形の使用は、複数を排除するものではないことを理解されたい。
【符号の説明】
【0050】
100 プレスフェルト
110 基布
111 マシン方向糸
112 クロスマシン方向糸
120 螺旋状織物
121 螺旋状ループ糸
122 ピントルワイヤ
123 フィラー糸
131 第1の繊維層
132 第2の繊維層
141 第1の縫い目
142 第2の縫い目
【手続補正書】
【提出日】2024-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫い目、ウェブ側及びマシン側を有するプレスフェルトであって、当該プレスフェルトは、
前記ウェブ側にある第1の繊維層と、
前記マシン側にある第2の繊維層と、
前記第1の繊維層と前記第2の繊維層との間にある少なくとも1つの織物基布及び少なくとも1つの螺旋状織物と、
を含む、プレスフェルト。
【請求項2】
前記少なくとも1つの螺旋状織物は、前記少なくとも1つの織物基布の、前記ウェブ側又は前記マシン側にある、請求項1に記載のプレスフェルト。
【請求項3】
前記第1の繊維層及び前記第2の繊維層は、前記少なくとも1つの織物基布及び前記少なくとも1つの螺旋状織物を貫通し、前記少なくとも1つの織物基布と前記少なくとも1つの螺旋状織物とを互いに取り付けるように構成されている、請求項1に記載のプレスフェルト。
【請求項4】
前記少なくとも1つの織物基布はマシン方向糸及びクロスマシン方向糸を含み、
前記少なくとも1つの螺旋状織物は、螺旋状ループ糸及びピントルワイヤを含む、請求項1に記載のプレスフェルト。
【請求項5】
前記ピントルワイヤは、前記螺旋状織物の平面内でクロスマシン方向に配置されているか又は前記クロスマシン方向に対して傾斜している、請求項4に記載のプレスフェルト。
【請求項6】
前記縫い目は、前記少なくとも1つの織物基布内にある第1の縫い目及び前記少なくとも1つの螺旋状織物内にある第2の縫い目を含む二重縫い目構造である、請求項1に記載のプレスフェルト。
【請求項7】
前記第1の縫い目は織物ループで形成され、前記第2の縫い目は螺旋状ループで形成されている、請求項6に記載のプレスフェルト。
【請求項8】
前記螺旋状ループ糸はポリマー、好ましくはポリアミドを含む、請求項4に記載のプレスフェルト。
【請求項9】
前記ポリアミドは、ポリアミド4.6、ポリアミド4.10、ポリアミド5.6、ポリアミド5.10、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10、ポリアミド11及びポリアミド12又はそれらの混合物から選択される、請求項8に記載のプレスフェルト。
【請求項10】
前記螺旋状ループ糸の断面は、円形、楕円形、ひし形、四角形又は丸みを帯びた縁を有する四角形である。請求項4に記載のプレスフェルト。
【請求項11】
前記螺旋状ループ糸の直径は0.1~3mm、好ましくは0.1~0.6mmである、請求項4に記載のプレスフェルト。
【請求項12】
前記螺旋状ループ糸のループサイズは0.2~15mm、好ましくは0.2~10mm、より好ましくは2~6mmである、請求項4に記載のプレスフェルト。
【請求項13】
前記螺旋状織物は、前記螺旋状ループ糸のループ内にフィラー糸をさらに含む、請求項4に記載のプレスフェルト。
【請求項14】
前記フィラー糸はモノフィラメント、マルチフィラメント又はツイスト糸である、請求項13に記載のプレスフェルト。
【請求項15】
抄紙機、段ボール製造機、ティッシュ製造機又はパルプマシンにおける請求項1乃至14のいずれか一項に記載のプレスフェルトの使用。
【外国語明細書】