(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076378
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/34 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
C23C16/34
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199212
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0159782
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518176264
【氏名又は名称】イージーティーエム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ,キュ ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハ ナ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ドク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ジュ ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヒョン ジュ
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA16
4K030BA18
4K030BA38
4K030JA06
4K030JA10
4K030JA11
(57)【要約】
【課題】本発明は,ステップカバレッジが良好な薄膜を形成することができる方法と,過吸収された反応物質を効果的に除去して薄膜のステップカバレッジを大幅に改善することができる薄膜形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施例によれば,化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法において,基板が載置されたチャンバの内部に金属前駆体を供給し,前記金属前駆体を前記基板に吸着する金属前駆体供給工程;前記チャンバの内部をパージする工程;前記チャンバの内部に反応物質を供給して吸着された前記金属前駆体と前記反応して薄膜を形成する薄膜形成工程;前記チャンバの内部に前記化学的パージ物質を供給して前記反応物質の一部を除去する化学的パージ物質供給工程;前記チャンバの内部をパージする工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法において,
基板が載置されたチャンバの内部に金属前駆体を供給し,前記金属前駆体を前記基板に吸着する金属前駆体供給工程;
前記チャンバの内部をパージする工程;
前記チャンバの内部に反応物質を供給して吸着された前記金属前駆体と反応して薄膜を形成する薄膜形成工程;
前記チャンバの内部に前記化学的パージ物質を供給して前記反応物質の一部を除去する化学的パージ物質供給工程;及び
前記チャンバの内部をパージする工程を含む,化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
【請求項2】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式1>として表される請求項1記載の化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
前記<化学式1>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,R
1又はR
2はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【請求項3】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式2>として表される請求項1記載の化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
前記<化学式2>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,n=1~5であり,R
1~R
4はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【請求項4】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式3>として表される請求項1記載の化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
前記<化学式3>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,R
1~R
4はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【請求項5】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式4>として表される,請求項1記載の化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
前記<化学式4>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,R
1~R
3はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【請求項6】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式5>として表される請求項1記載の化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
前記<化学式5>において,Yはプニクトゲン元素(N,P,As,Sb,Bi)であり,R
1~R
3はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【請求項7】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式6>として表される請求項1記載の化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
前記<化学式6>において,Yはプニクトゲン元素(N,P,As,Sb,Bi)であり,R
1~R
5はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【請求項8】
前記金属前駆体供給工程,前記薄膜形成工程,及び前記化学的パージ物質供給工程は,50~700℃でそれぞれ進行する,請求項1記載の化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
【請求項9】
前記反応物質は,アンモニア(NH3),ヒドラジン(Hydrazine,N2H4),二酸化窒素(NO2),及び窒素(N2)のうちの少なくとも1つである請求項1記載の化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
【請求項10】
前記金属前駆体は,Tiを含む4価金属,Nb及びTaを含む5価金属,Moを含む6価金属,Siを含む4価半金属の少なくとも1つを含む化合物である請求項1記載の化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜形成方法に関し,より詳細には化学的パージ物質を用いて過吸着された反応物質を除去可能な薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在,DRAM素子のキャパシタ(Capacitor)は,金属電極を用いたMIM(Metal/Insulator/Metal)キャパシタに対する研究が継続的に進められており,電極材料としてチタン窒化膜(TiN)が広く使用されている。
【0003】
半導体プロセスの分野では,堆積プロセスは,基板上に材料を堆積する重要なプロセスであり,電子機器の外観が縮小し続け,装置の密集度が増加するにつれて,フィーチャ(features)のアスペクト比はますます増加する。したがって,ステップカバレッジが良好なプロセスが注目されており,特に原子層蒸着(ALD)が相当な関心を集めている。
【0004】
チタン窒化膜はキャパシタ内上・下部電極で動作するため,優れたステップカバレッジ(Step Coverage)を具現しなければならないが,一般に,窒化チタン膜堆積プロセスに広く使用されている反応物質であるアンモニア(NH3)は,水素結合やファンデルワールス力等の分子間相互作用によって過吸着して多層を形成し,物理的パージでは完全に除去されない。
【0005】
NH3の過吸着は後続の前駆体の過吸着につながり,コンフォーマルな薄膜形成を困難にし,ステップカバレッジ劣化の原因となるため,このような現象を解決できる技術が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は,ステップカバレッジが良好な薄膜を形成することができる方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は,過吸収された反応物質を効果的に除去して薄膜のステップカバレッジを大幅に改善することができる薄膜形成方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は,以下の詳細な説明からより明確になるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例によれば,化学的パージ物質を用いた薄膜形成方法において,基板が載置されたチャンバの内部に金属前駆体を供給し,前記金属前駆体を前記基板に吸着する金属前駆体供給工程;前記チャンバの内部をパージする工程;前記チャンバの内部に反応物質を供給して,吸着された前記金属前駆体と反応して薄膜を形成する薄膜形成工程;前記チャンバの内部に前記化学的パージ物質を供給して前記反応物質の一部を除去する化学的パージ物質供給工程;前記チャンバの内部をパージする工程を含む。
【0010】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式1>として表すことができる。
【化1】
前記<化学式1>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,R
1又はR
2はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0011】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式2>として表すことができる。
【化2】
前記<化学式2>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,n=1~5であり,R
1~R
4はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0012】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式3>として表すことができる。
【化3】
前記<化学式3>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,R
1~R
4はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0013】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式4>として表すことができる。
【化4】
前記<化学式4>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,R
1~R
3はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0014】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式5>として表すことができる。
【化5】
前記<化学式5>において,Yはプニクトゲン(pnictogen)元素(N,P,As,Sb,Bi)であり,R
1~R
3はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0015】
前記化学的パージ物質は,下記<化学式6>として表すことができる。
【化6】
前記<化学式6>において,Yはプニクトゲン元素(N,P,As,Sb,Bi)であり,R
1~R
5はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0016】
前記金属前駆体供給工程,前記薄膜形成工程,及び前記化学的パージ物質供給工程は,50~700℃でそれぞれ進行することができる。
【0017】
前記反応物質は,アンモニア(NH3),ヒドラジン(Hydrazine,N2H4),二酸化窒素(NO2),及び窒素(N2)のうちの少なくとも1つであることができる。
【0018】
前記金属前駆体は,Tiを含む4価金属,Nb及びTaを含む5価金属,Moを含む6価金属,Siを含む4価半金属(metalloid)の少なくとも1つを含む化合物であることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば,化学的パージ物質を使用してサイクル当たりの堆積厚さを下げることができ,堆積された薄膜は均一性及びステップカバレッジを改善することができる。
【0020】
また,化学的パージを介して過吸着した反応物質を除去するため,物理的パージを用いた工程に比べて工程時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態による薄膜形成方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態による供給周期を概略的に示すグラフである。
【
図3】TiCl
4供給時間(a)/NH
3供給時間(b)/NH
3パージ時間(c)によるチタン窒化膜のGPCをそれぞれ示すグラフである。
【
図4】パターンウエハにチタン窒化膜を蒸着してステップカバレッジを確認した結果である(アスペクト比 20:1)。
【
図5】化学的パージ物質であるEMS供給時間によるチタン窒化膜のGPCを示すグラフである。
【
図6】比較例/実施例のGPC及び抵抗性(Resistivity)を示すグラフであり,100Å同一厚さで薄膜を作製した後比較した。
【
図7】化学的パージ物質であるEMSを用いてパターンウエハにチタン窒化膜を蒸着してステップカバレッジを確認した結果である(アスペクト比 20:1)。
【
図8】化学的パージ物質であるEMSと反応物質との相互作用を確認するためにH-NMR分析を行ったグラフである。
【
図9】付加物質(Adduct)形成前後のH-NMR分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下,本発明の好ましい実施例を添付した
図1~
図10を参照してより詳細に説明する。本発明の実施例は様々な形態に変形されてもよく,本発明の範囲が以下で説明する実施例に限ると解釈されてはならない。本実施例は,該当発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明をより詳細に説明するために提供されるものである。よって,図面に示した各要素の形状はより明確な説明を強調するために誇張されている可能性がある。
【0023】
従来の前駆体単独工程は,高縦横比(例えば,40:1以上)のトレンチ(trench)構造で,上部(又は入口側)は薄膜が厚くなって,下部(又は内部側)は薄膜が薄くなる等の薄膜が均一でなく,ステップカバレッジが不良の問題がある。
【0024】
図1は,本発明の実施例による薄膜形成方法を概略的に示すフローチャートであり,
図2は,本発明の実施形態による供給周期を概略的に示すグラフである。基板は,工程チャンバの内部にロードされ,以下のALD工程条件は調整される。ALD工程条件は,基板又は工程チャンバの温度,チャンバ圧力,ガス流量を含むことができ,温度は50~700℃である。
【0025】
基板は,チャンバの内部に供給された金属前駆体にさらされており,金属前駆体は,基板の表面に吸着される。金属前駆体は,Tiを含む4価金属,Nb及びTaを含む5価金属,Moを含む6価金属,Siを含む4価半金属の少なくとも1つを含む化合物であることができる。
【0026】
以後,チャンバの内部に浄化(purge)ガス(例えば,Arのような不活性ガス)を供給して,未吸着金属前駆体又は副生成物を除去し,清浄化する。
【0027】
以後,基板は,チャンバの内部に供給された反応物質にさらされており,基板の表面に薄膜が形成される。反応物質は,金属前駆体層と反応して薄膜を形成し,反応物質はアンモニア(NH3),ヒドラジン(Hydrazine,N2H4),二酸化窒素(NO2),及び窒素(N2)のうちの少なくとも1つ以上であり,反応物質を介して金属窒化膜を形成することができる。
【0028】
以後,チャンバの内部に浄化(purge)ガス(例えば,Arのような不活性ガス)を供給して,未反応物質又は副生成物を除去,清浄化する。
【0029】
以後,基板は,チャンバの内部に供給された化学的パージ物質にさらされており,過吸着した例えばNH3を除去する。化学的パージ物質は,下記<化学式1>として表すことができる。
【0030】
【化7】
前記<化学式1>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,R
1又はR
2はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0031】
また,前記化学的パージ物質は,下記<化学式2>として表すことができる。
【0032】
【化8】
前記<化学式2>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,n=1~5であり,R
1~R
4はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0033】
また,前記化学的パージ物質は,下記<化学式3>として表すことができる。
【0034】
【化9】
前記<化学式3>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,R
1~R
4はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0035】
また,前記化学的パージ物質は,下記<化学式4>として表すことができる。
【0036】
【化10】
前記<化学式4>において,Xはカルコゲン元素(O,S,Se,Te,Po)であり,R
1~R
3はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0037】
また,前記化学的パージ物質は,下記<化学式5>として表すことができる。
【0038】
【化11】
前記<化学式5>において,Yはプニクトゲン元素(N,P,As,Sb,Bi)であり,R
1~R
3はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0039】
また,前記化学的パージ物質は,下記<化学式6>として表すことができる。
【0040】
【化12】
前記<化学式6>において,Yはプニクトゲン元素(N,P,As,Sb,Bi)であり,R
1~R
5はそれぞれ独立に水素,炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基,ハロゲン元素,アルキルハライドから選択される。
【0041】
以後,チャンバの内部に浄化(purge)ガス(例えば,Arのような不活性ガス)を供給して,未反応物質又は副産物を除去したり,清潔にしたりする。
【0042】
- 比較例
ALD工程によりシリコン基板上にチタン窒化膜を形成し,ALD工程温度は450℃,反応物質はNH3ガスを用いた。
【0043】
ALD工程によるチタン窒化膜形成工程は以下の通りであり,以下の工程を1サイクルとして進行した。
1)Arをキャリアガスとし,常温でチタン前駆体TiCl4(Titanium Tetrachloride)を反応室(reaction chamber)に供給し,基板にチタン前駆体を吸着させる。
2)反応室内にArガスを供給して未吸着チタン前駆体又は副生成物を除去する。
3)NH3ガスを反応室に供給して窒化チタン膜を形成する。
4)反応室内にArガスを供給して未反応物質又は,副生成物を除去する。
【0044】
図3は,TiCl
4供給時間(a)/NH
3供給時間(b)/NH
3パージ時間(c)によるチタン窒化膜のGPCをそれぞれ示すグラフである。TiCl
4供給時間を0.5から3まで増加しても,GPCは0.3Åで一定であり,これはTiCl
4分子間の相互作用が弱く,多層(マルチレイヤー)が形成されないことを示す。
【0045】
NH3供給時間(b)を1から5まで増加すると,GPCは0.24から0.32Åに増加し続ける傾向を示し,これはNH3分子間相互作用によってNH3過吸着が発生することをいう。また,NH3分子間相互作用は,後のArパージ工程においても除去されずに吸着した状態で残留し,その後のTiCl4の吸着量が増加し,チタン窒化膜のGPCが増加することを示す。
【0046】
NH3パージ時間を5から60まで増加するとチタン窒化膜のGPCが減少する傾向であり,これはArパージを増加させることにより物理的にNH3分子の過吸着を一部除去してGPCが減少することが分かる。
【0047】
図4は, パターンウエハにチタン窒化膜を蒸着してステップカバレッジを確認した結果である(アスペクト比 20:1)。Top GPCは0.28Å,Bottom GPCは0.22Åで,Bottom対比TopでGPCが27%程度増加し,その結果ステップカバレッジは79%と確認された。これは,高アスペクト比のパターン構造で上部にNH
3過吸着が多く発生し,穴が狭い構造の下部には相対的に拡散が少なくなり,NH
3過吸着が減少し,NH
3への過吸着によるTiCl
4吸着量差によるものである。
【0048】
図3及び
図4を見てみると,NH
3過吸着がチタン窒化膜のGPCを増加させ,それによりステップカバレッジ劣化特性を示す。
【0049】
- 実施例
前述の化学的パージ物質としてEMS(Ethyl methyl sulfide)を用いてシリコン基板上にチタン窒化膜を形成した。ALD工程によりチタン窒化膜を形成し,ALD工程温度は450℃,反応物質はNH3ガスを用いた。
【0050】
ALD工程によるチタン窒化膜形成工程は以下の通りであり,以下の工程を1サイクルとして進行した(
図1及び2参照)。
1)Arをキャリアガスとし,常温でチタン前駆体TiCl
4(Titanium Tetrachloride)を反応室に供給し,基板にチタン前駆体を吸着させる。
2)反応室内にArガスを供給して未吸着チタン前駆体又は副生成物を除去する。
3)NH
3ガスを反応室に供給して窒化チタン膜を形成する。
4)反応室内にArガスを供給して未反応物質又は副生成物を除去する。
5)反応室内に化学的パージ物質を供給して過吸着したNH
3を除去する。
6)反応室内にArガスを供給して未反応物質又は副生成物を除去する。
【0051】
図5は,化学的パージ物質であるEMS供給時間によるチタン窒化膜のGPCを示すグラフである。EMS供給時間増加時にチタン窒化膜のGPCが減少し,供給時間が1から5に増加するにつれて,GPCはそれぞれ0.21Å~0.16Åであり,GPC減少率はそれぞれ28.6%~43.5%と確認された。
【0052】
これは,化学的パージ物質が表面に不均一に過吸着された反応物質と相互作用して,過吸着された反応物質を化学的パージの形態で除去するため,チタン窒化膜のGPCを減少させる効果を示すと考えられる。
【0053】
図6は,比較例/実施例のGPC及び抵抗性(Resistivity)を示すグラフであり,100Å同一厚さで薄膜を作製した後比較した。実施例のGPCは0.22Åで比較例のGPCである0.28Åに対する21.4%のGPC減少率を示し,抵抗性は同等レベルで確認された。(
図6参照。)
【0054】
これは,実施例のように化学的パージ物質を使用した場合,チタン窒化膜のGPCを減少させ,化学的パージ材料は後続のチタン前駆体と付加物質を形成して除去され,表面に残留しないため抵抗性が等しいように考えられる。
【0055】
図7は,化学的パージ物質であるEMSを用いてパターンウエハにチタン窒化膜を蒸着してステップカバレッジを確認した結果である(アスペクト比 20:1)。比較例と比較してパターン上部でGPCは0.28Åから0.21Åに25%減少したが,パターン下部でGPCは0.22Åから0.20Åに9%減少し,パターン上部と下部の厚さ有意差がほとんどない均一な膜を形成した。
【0056】
化学的パージ物質を適用して,ステップカバレッジは79%から95%に16%上昇する飛躍的な効果を確認し,その結果優れた均一性及びステップカバレッジを有するチタン窒化膜を形成した。
【0057】
図7の結果から,NH
3の過吸着を除去すると,窒化チタン膜は約0.2ÅのGPCを有するように見える。下表1は,NH
3過吸着を除去する方法で物理的パージ及び化学的パージ方式による工程時間を比較したデータである。物理的パージ方式でNH
3過吸着を除去する場合,GPCを0.2Åまで下げることができるが,サイクル当たりのプロセス所要時間が74秒かかる。一方,実施例の化学的パージ方式でNH
3過吸着を除去する場合,物理的パージ方式と同様にGPCを0.2Åレベルに下げることができ,サイクル当たりのプロセス所要時間も74sから35sに2倍以上短縮させることができる。
【0058】
結論として,窒化チタン膜のステップカバレッジを改善するためには,NH3の過剰吸着を除去しなければならず,NH3除去方法では化学的パージ方式を用いることが物理的パージ方式を用いるよりもUPHの点ではるかに有利であると思われる。
【0059】
【0060】
図8は,化学的パージ物質であるEMSと反応物質との相互作用を確認するためにH―NMR分析を行ったグラフである。反応物質であるNH
3(gas phase)と似た構造であるNH
4Clと実施例を1:1モル比(mole ratio)で混合後,NMR溶媒としてジメチルスルホキシド-d6(DMSO-d6)を用いてH―NMR分析を行った。
【0061】
NH4ClとEMS混合溶液のNMR分析により,化学的パージ物質混合後,NH4+ピークが7.38から7.27に0.11ケミカルシフト(chemical shift)され,NH4Clと化学的パージ物質との相互作用を確認した。このような現象により,化学的パージ物質と反応物質であるNH3との間の相互作用があることを間接的に確認し,さらに相互作用により化学的パージ物質がNH3の過吸着を除去できるとみられる。
【0062】
化学的パージ物質が反応物質との吸着除去後の後続のチタン前駆体間の相互作用によって表面に残留せずに除去されることを確認するために,化学的パージ物質とチタン前駆体とを1:1モル比で混合して付加物質(adduct)を形成した後,H-NMR及びTGA分析を行った。
図9は付加物質(Adduct)形成前後のH―NMR分析結果であり,NMR溶媒はベンゼン-d6(Benzene-d6)を用いた。
【0063】
NMR分析の結果,付加物質(Adduct)形成後,EMSピークのケミカルシフトが確認され,この現象は,化学的パージ物質とチタン前駆体と付加物質(adduct)等の相互作用が存在することを意味する。
【0064】
図10は,TGA分析の結果である。化学的パージ物質とチタン前駆体が形成された付加物質(Adduct)はグラフ上に変曲点が存在せず,T1/2は91℃でよく揮発し,残留物も残らず,安定した付加物質の形態で存在するようであり,さらに,付加物質は,薄膜形成後に表面に残らず安定してよく揮発すると予想される。
【0065】
結論として,表面に不均一に過剰吸着されたNH3を,化学的パージ物質を供給してNH3-化学的パージ物質相互反応(interaction)を通じて除去し,これを通じて,供給される金属前駆体の過剰蒸着を防止し,窒化膜の均一性(Uniformity)を改善する。
【0066】
また,表面に残留する化学的パージ物質は,次の工程で供給される金属前駆体と付加物質の形態で除去され,これにより化学的パージ物質が窒化膜中に不純物として含まれることを防止する。
【0067】
化学的パージ物質は,NH3と相互作用,金属前駆体と付加物質(adduct)を形成し,形成された付加物質(adduct)は薄膜表面に残らず,揮発して除去される特性を有している。
【0068】
これまで本発明について実施例を介して詳細に説明したが,これとは異なる形態の実施例も可能である。よって,以下に記載する請求項の技術的思想と範囲は実施例に限らない。