(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007638
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】非常開対応エッジ
(51)【国際特許分類】
E06B 7/22 20060101AFI20240112BHJP
E06B 3/36 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
E06B7/22 F
E06B3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108830
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦士
(72)【発明者】
【氏名】藤井 立裕
(72)【発明者】
【氏名】山岡 正一
【テーマコード(参考)】
2E014
2E036
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014DA05
2E014DB03
2E036AA02
2E036AA05
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036DA08
2E036DA12
2E036DA16
2E036EB03
2E036EC03
2E036FB02
2E036GA07
2E036HA02
2E036HB14
(57)【要約】
【課題】扉と扉枠の建付け精度にかかわらず視線を確実に遮蔽でき、扉の開閉時に気になる騒音が発生しない非常開対応エッジを提供する。
【解決手段】通常時には内開きとされ、非常時には外開き可能とされる扉51の戸先エッジ1と、これに対応する扉枠52の枠エッジ2とから成る非常開対応エッジにおいて、戸先エッジ1及び枠エッジ2は、それぞれ剛体の基材3に弾性材料を素材とする当接材4が保持されて、当接材4の突出部に対向面4aを有するものとされ、扉51を閉じたとき、戸先エッジ1の当接材4が室内側に、枠エッジ2の当接材4が室外側にずれた位置で、対向面4a同士が接触しており、通常時の扉51の開放に際しては、戸先エッジ1の当接材4が枠エッジ2の当接材4を乗り越えることがなく、非常時の扉51の開放に際しては、戸先エッジ1の当接材4が枠エッジ2の当接材4を乗り越えるものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時には内開きとされ、非常時には外開き可能とされる扉(51)の戸先エッジ(1)と、これに対応する扉枠(52)の枠エッジ(2)とから成る非常開対応エッジにおいて、
前記戸先エッジ(1)及び枠エッジ(2)は、それぞれ剛体の基材(3)に弾性材料を素材とする当接材(4)が保持されて、前記当接材(4)が前記基材(3)から突出し、その突出部に互いに向き合う対向面(4a)を有するものとされ、
扉(51)を閉じたとき、前記戸先エッジ(1)の当接材(4)が室内側に、前記枠エッジ(2)の当接材(4)が室外側にずれた位置で、前記対向面(4a)同士が接触又は近接しており、
通常時の扉(51)の開放に際しては、前記戸先エッジ(1)の当接材(4)が前記枠エッジ(2)の当接材(4)を乗り越えることがなく、
非常時の扉(51)の開放に際しては、前記戸先エッジ(1)及び枠エッジ(2)の当接材(4)の対向面(4a)が潰れるように弾性変形しつつ摺接し、前記戸先エッジ(1)の当接材(4)が前記枠エッジ(2)の当接材(4)を乗り越えることを特徴とする非常開対応エッジ。
【請求項2】
前記戸先エッジ(1)及び枠エッジ(2)の当接材(4)は、高さ方向に延びるチューブ状になっていることを特徴とする請求項1に記載の非常開対応エッジ。
【請求項3】
前記戸先エッジ(1)及び枠エッジ(2)の当接材(4)は、平面視で両側面に前記基材(3)の内部で側方へ張り出す段部(4b)を有し、
前記基材(3)の開口溝(3a)に前記当接材(4)が嵌入され、前記段部(4b)が前記基材(3)の開口溝(3a)に臨む部分に係合して、前記当接材(4)が前記基材(3)から抜け止めされていることを特徴とする請求項1に記載の非常開対応エッジ。
【請求項4】
前記戸先エッジ(1)及び枠エッジ(2)の当接材(4)は、それぞれ前記対向面(4a)の反対方向へ延びる一対の係止片(4c)を有し、
前記一対の係止片(4c)が前記基材(3)の内部に形成された突片(3b)に係合して、前記当接材(4)の前記基材(3)に対する扉(51)及び扉枠(52)の厚さ方向へのずれが抑制されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非常開対応エッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通常時には内開きとされ、非常時には外開き可能とされる扉とその扉枠に適用される非常開対応エッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
公共施設、商業施設、オフィスビル、学校等に設けられるトイレブースは、例えば、
図7に示すように、各個室50の出入口に設けられる扉51と、その吊元側及び戸先側に位置する扉枠52とを備え、隣り合う個室50が仕切壁53で区画された構造となっている(特許文献1参照)。扉51の戸先側には戸先エッジ54が取り付けられ、これに対応する扉枠52には枠エッジ55が取り付けられている。
【0003】
扉51は、吊元側のヒンジ56を軸として開閉し、通常時には内開きとされ、室内側の上部に位置する戸当り57により、外方向への開放が規制されている。戸当り57は、操作部を室外側からでも押し下げることができ、これにより、扉51の外方向への開放規制を解除することができる。
【0004】
このトイレブースには、
図8に示すように、ロック装置58が設けられている。ロック装置58は、扉51の戸先寄りの室内側に取り付けられるラッチ部材58aと、扉枠52の室内側に取り付けられる受具58bとから成り、ラッチ部材58aが扉51に対してスライドし、受具58bに係脱して、扉51が施解錠される。扉51の施解錠状態は、扉51の室外側に取り付けられた表示部材58cに表示される。
【0005】
ロック装置58は、施錠状態において、室外側からキー差込口に非常解錠キーを挿入して回すことにより、ラッチ部材58aを後退させて解錠することができる。
【0006】
特許文献1に記載の非常開対応エッジは、
図9に示すように、戸先エッジ54の表面の室内側に偏った位置から枠エッジ55に向けて、ゴムやエラストマー、軟質樹脂等を材料とし可撓性を有する板状の目隠片59を高さ方向の全長にわたって突出させ、戸先エッジ54と枠エッジ55の隙間を介した視線を遮るものとされている。
【0007】
目隠片59は、個室50の室内で利用者が倒れた場合等の非常時に、戸当り57を退避させた状態で、扉51を外開きにする際、枠エッジ55の表面に接触して撓み、扉51の開放を妨げないようになっている。また、外開きした扉51を閉じる際には、元の状態に復元するようになっている。
【0008】
なお、非常開対応エッジとして、下記特許文献2乃至5には、扉の戸先側に取り付けられる戸先エッジと、これに対応して扉枠側に取り付けられる枠エッジのうち、少なくとも一方のエッジが金属や硬質の樹脂から成る可動部を有するものとされ、その可動部が他方のエッジに摺接しつつ、扉が開閉するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-037851号公報
【特許文献2】特開2019-214898号公報
【特許文献3】特開2018-031147号公報
【特許文献4】特開2017-218850号公報
【特許文献5】特開2010-280813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたように、細長い板状の目隠片で戸先エッジと枠エッジの隙間を介した視線を遮る形態では、扉と扉枠の建付け精度が悪いと、視線の遮蔽が不完全になるという問題がある。
【0011】
また、上記特許文献2乃至5に記載されたように、硬質の可動部材で戸先エッジと枠エッジの隙間を介した視線を遮る形態では、可動部材が相手方のエッジに摺接する際、騒音が発生し、ブースの利用者を驚かせるという問題がある。
【0012】
そこで、この発明は、扉と扉枠の建付け精度にかかわらず視線を確実に遮蔽でき、扉の開閉時に気になる騒音が発生しない非常開対応エッジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような課題を解決するため、この発明は、通常時には内開きとされ、非常時には外開き可能とされる扉の戸先エッジと、これに対応する扉枠の枠エッジとから成る非常開対応エッジにおいて、
前記戸先エッジ及び枠エッジは、それぞれ剛体の基材に弾性材料を素材とする当接材が保持されて、前記当接材が前記基材から突出し、その突出部に互いに向き合う対向面を有するものとされ、
扉を閉じたとき、前記戸先エッジの当接材が室内側に、前記枠エッジの当接材が室外側にずれた位置で、前記対向面同士が接触又は近接しており、
通常時の扉の開放に際しては、前記戸先エッジの当接材が前記枠エッジの当接材を乗り越えることがなく、
非常時の扉の開放に際しては、前記戸先エッジ及び枠エッジの当接材の対向面が潰れるように弾性変形しつつ摺接し、前記戸先エッジの当接材が前記枠エッジの当接材を乗り越えるものとしたのである。
【0014】
また、前記戸先エッジ及び枠エッジの当接材は、高さ方向に延びるチューブ状になっているものとしたのである。
【0015】
また、前記戸先エッジ及び枠エッジの当接材は、平面視で両側面に前記基材の内部で側方へ張り出す段部を有し、
前記基材の開口溝に前記当接材が嵌入され、前記段部が前記基材の開口溝に臨む部分に係合して、前記当接材が前記基材から抜け止めされているものとしたのである。
【0016】
さらに、前記戸先エッジ及び枠エッジの当接材は、それぞれ前記対向面の反対方向へ延びる一対の係止片を有し、
前記一対の係止片が前記基材の内部に形成された突片に係合して、前記当接材の前記基材に対する扉及び扉枠の厚さ方向へのずれが抑制されているものとしたのである。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る非常開対応エッジでは、戸先エッジ及び枠エッジの当接材がゴムやエラストマー等の弾性材料から成り、扉を閉じた状態で、当接材の対向面同士が扉の厚さ方向にずれた位置で弾力的に接触し、又は近接しているので、扉と扉枠の建付け精度にかかわらず、戸先エッジと枠エッジの隙間を介した視線を確実に遮蔽できる。
【0018】
また、通常時の扉の開閉に際し、戸先エッジと枠エッジの当接材同士が押し合うことなく接離し、硬質の部材同士が摺接しないため、気になる騒音が発生することがない。
【0019】
そして、非常時には、室外側から解錠して扉を強く引くだけで、戸先エッジの当接材が枠エッジの当接材を乗り越えるので、戸惑うことなく扉を外開きにして、急病患者等を救出することができる。
【0020】
そのほか、建付けの誤差が比較的大きく許容されることから、トイレブースの施工が容易になり、戸先エッジと枠エッジとは、同一形状の基材と当接材の2部材のみで構成できることに加え、扉を左右いずれの勝手の場合にも入れ替えて兼用できるので、部材の製造や管理に要するコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施形態に係る非常開対応エッジの(a)通常時の扉を閉じた状態を示す平面図、(b)非常時に扉を開いた状態を示す平面図
【
図3】同上の当接材の閉扉時に接触する他の形態を示す平面図
【
図4】同上の当接材の閉扉時に非接触で近接する他の形態を示す平面図
【
図5】同上の当接材の奥側で開口した他の形態を示す平面図
【
図6】同上の当接材の中実である他の形態を示す平面図
【
図7】特許文献1に記載のトイレブースの全体を示す斜視図
【
図9】同上の非常時に扉を開く過程を示す拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
(構成)
この非常開対応エッジは、
図1(a)に示すように、通常時には内開きとされる扉51の戸先エッジ1と、これに対応する扉枠52の枠エッジ2とから成り、個室50の室内で利用者が倒れた場合等の非常時には、
図1(b)に示すように、扉51を外開き可能とするものである。扉51は、個室50(
図7参照)の未利用時に開いている常時開放型であっても、閉じている常時閉止型であってもよい。
【0024】
戸先エッジ1及び枠エッジ2は、同一のものであり、それぞれ扉51の框面にビス止めや接着により固定される金属や樹脂製の剛体の基材3と、基材3の開口溝3aに嵌め込んで保持されたゴムやエラストマー等の弾性材料を素材とする当接材4とから構成される。基材3及び当接材4は、扉51及び扉枠52の高さ方向の全長に及んでいる。
【0025】
当接材4は、基材3の開口溝3aから突出する部分の表面に、湾曲するように膨出した対向面4aが形成され、高さ方向に対して横断する平面内で周方向に閉塞されたチューブ状をなすものとされている。ここで、当接材4は、平面形状が基材3における開口溝3aの幅方向(扉51と扉枠52の厚さ方向)の中央の軸線(C.L.)に対して対称形状となっている。
【0026】
そして、扉51を閉じた状態では、戸先エッジ1の当接材4が室内側に位置し、枠エッジ2の当接材4が室外側に位置するように、戸先エッジ1の当接材4と枠エッジ2の当接材4とが扉51の厚さ方向にずらして配置され、これらの当接材4の対向面4a同士が押し合うように接触している。
【0027】
当接材4の対向面4aには、フッ素樹脂やシリコンシートなどの低摩擦材料のシートを被覆してもよい。
【0028】
また、当接材4は、両側面に基材3の内部で側方へ張り出す段部4bを有し、段部4bが基材3の開口溝3aに臨む部分に係合して、当接材4が基材3の開口溝3aから抜け止めされている。
【0029】
さらに、当接材4は、対向面4aの反対方向へ延びる一対の係止片4cを有し、一対の係止片4cが基材3の内部の奥面に形成された突片3bに係合して、当接材4の基材3に対する扉51及び扉枠52の厚さ方向へのずれが抑制されている。
【0030】
なお、
図3に示すように、当接材4は、平面形状が基材3における開口溝3aの幅方向(扉51と扉枠52の厚さ方向)の中央の軸線(C.L.)に対して対称となったものである必要はない。また、対向面4aは、湾曲することなく基材3の表面に対し傾斜した平面的な形状であってもよい。
【0031】
さらに、
図4に示すように、扉51を閉じた状態で、戸先エッジ1の当接材4と枠エッジ2の当接材4の対向面4aの間に、室外側からの目隠しが可能な態様で近接した隙間が開くようにしてもよい。
【0032】
そのほか、
図5に示すように、当接材4は、奥側で開口していても、変形時に開口部の先端の突合部3cが突き合わされる形状となっていたり、突片3bと係止片4cとが係合する構造を備えることにより、過大な変形が抑制されるものとすれば、基材3からの逸脱が防止されるので、機能上問題がない。このような形状とすることによって、当接材4の製造時における成形が容易になる。
【0033】
また、
図6に示すように、当接材4は、中空でなくても、スポンジ状の多孔質で弾性を有する材料を素材とする中実構造のものであれば、上述の中空構造のものと同様に、この発明の実施形態として同様の機能を備えたものとすることができる。
【0034】
(作用)
このような非常開対応エッジでは、
図1(a)に示すように、通常時に扉51を閉じた状態から開く際には、戸先エッジ1の当接材4が枠エッジ2の当接材4を乗り越えることなく、枠エッジ2の当接材4から離反する。
【0035】
一方、非常時に扉51を開く際には、
図2に示すように、戸先エッジ1及び枠エッジ2の当接材4の対向面4aが互いに潰れるように弾性変形しつつ摺接し、
図1(b)に示すように、戸先エッジ1の当接材4が枠エッジ2の当接材4を乗り越えて、枠エッジ2の当接材4から離反する。
【0036】
(効果)
上記のような非常開対応エッジでは、戸先エッジ1及び枠エッジ2の当接材4がゴムやエラストマー等の弾性材料から成り、扉51を閉じた状態で、当接材4の対向面4a同士が扉51の厚さ方向にずれた位置で弾力的に押し付けられ、又は近接しているので、扉51と扉枠52の建付け精度にかかわらず、戸先エッジ1と枠エッジ2の隙間を介した視線を確実に遮蔽できる。
【0037】
また、通常時の扉51の開閉に際し、弾性体である戸先エッジ1と枠エッジ2の当接材4同士が僅かな接触で接離し、硬質の部材同士が摺接しないため、気になる騒音が発生することがなく、ブースの利用者を驚かせるようなことがない。
【0038】
そして、非常時には、戸当り(
図7の符号57参照)の外方向への開放規制を解除すると共に、室外側からロック装置(
図8の符号58参照)を解錠して扉51を強く引くだけで、戸先エッジ1の当接材4が枠エッジ2の当接材4を乗り越えるので、戸惑うことなく扉51を外開きにして、急病患者等を救出することができる。
【0039】
そのほか、建付けの誤差が比較的大きく許容されることから、トイレブースの施工が容易になり、戸先エッジ1と枠エッジ2とは、扉51を左右いずれの勝手の場合にも入れ替えて兼用できるので、部材の製造や管理に要するコストを抑制することができる。
【0040】
なお、本発明において、当接材4の形状としての記載における「高さ方向に延びるチューブ状」とは、
図1に例示する筒状のみならず、
図5に例示するように奥側で開口している形状を含むものとする。
【0041】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。従って、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 戸先エッジ
2 枠エッジ
3 基材
3a 開口溝
3b 突片
3c 突合部
4 当接材
4a 対向面
4b 段部
4c 係止片
50 個室
51 扉
52 扉枠