(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076380
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240529BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240529BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240529BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/36 A
H01M4/48
C01B33/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199297
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0159267
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シム, ヒョンウー
(72)【発明者】
【氏名】カン, ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジョンフン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ウーヨン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン, セマン
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB20
4G072DD05
4G072DD06
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH01
4G072JJ02
4G072JJ47
4G072KK13
4G072LL11
4G072QQ06
4G072RR13
4G072TT01
4G072UU30
5H050AA07
5H050AA14
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5H050GA02
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5H050GA06
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】シリコン粒子からなる活物質の充電/放電時に、シリコンの体積膨張による構造の崩壊を防止しながらも、外郭シェル層の崩壊によって全てのシリコンが電解質に露出されることで寿命が短縮されるという問題を防止できるリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【解決手段】本発明は、コア及び前記コアを囲む第1シェル層を含む複合体と、複数の複合体及び前記複数の複合体を囲む第2シェル層とを含むリチウム二次電池用負極活物質に関し、前記複合体は金属粒子及び炭素を含み、前記複合体間の隣接距離は80nm~300nmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及び前記コアを囲む第1シェル層を含む複合体と、
複数の複合体及び前記複数の複合体を囲む第2シェル層と、
を含むリチウム二次電池用負極活物質であって、
前記複合体は金属粒子及び炭素を含み、
前記複合体間の隣接距離は80nm~300nmである、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記複合体間の隣接距離は100nm~150nmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記第2シェル層は、結晶質及び非晶質炭素からなる群より選択された1つ以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記第2シェル層の強度は第1シェル層の強度よりも大きい、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記コアは、金属粒子及び前記金属粒子の間に炭素連結部を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記炭素連結部は、結晶質及び非晶質炭素からなる群より選択された1つ以上を含む、請求項5に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項7】
前記コアは多孔性である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項8】
前記コアの直径は800nm~1200nmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項9】
前記金属粒子は、シリコン、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ゲルマニウム、スズ、鉛、これらの酸化物、及びその合金からなる群より選択された少なくとも1つ以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項10】
前記金属粒子は鱗片状シリコンを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項11】
前記金属粒子の直径は20nm~120nmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項12】
前記第1シェル層は、結晶質及び非晶質炭素からなる群より選択された1つ以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項13】
前記第1シェル層の厚さは100nm~150nmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項14】
前記結晶質炭素は黒鉛系炭素を含む、請求項3、6、及び12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項15】
前記非晶質炭素は、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)、ナフタレン(naphthalene)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)樹脂、スチレン(stylene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、メソフェーズピッチ、及びタールからなる群より選択された1つ以上で製造される、請求項3、6、及び12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項16】
請求項1に記載されたリチウム二次電池用負極活物質を含む、リチウム二次電池。
【請求項17】
シリコンを含む混合物を粉砕するステップ(S1)と、
前記混合物を噴霧乾燥してシリコン前駆体を製造するステップ(S2)と、
シリコン前駆体粉末、非晶質炭素前駆体、及び結晶質炭素で複合体を製造する1次複合化ステップ(S3)と、
前記複合体及び炭素前駆体で負極活物質を製造する2次複合化ステップ(S4)と、
を含む、請求項1に記載されたリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項18】
前記S4ステップにおいて、前記複合体及び炭素前駆体の重量比は1:0.4超過1:0.7未満である、請求項17に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
「電池」は、化学エネルギーを電気エネルギーに切り替える素子である。「二次電池」は1次電池とは異なり、電池が放電された後再び充電して使用可能な電池を意味する。そのうち、「リチウム二次電池」は、放電時にリチウムイオンが負極から正極に移動する化学反応を介して電気を生産する。
【0003】
最近、リチウム二次電池に対する市場需要が急増している。そのため、その応用が多様化しながら求められる性能も上向きに調整されており、リチウム二次電池の高容量化及び長寿命に対する要求がある。現在、幅広く使用されている負極活物質は黒鉛である。但し、その理論的な容量は372mAh/gであり、これは市場で要求される高容量化の側面において足りない性能を有している。電池の高容量化のために、負極活物質の素材として代表される新しい物質は、シリコン(Si)又はその化合物が挙げられている。
【0004】
しかし、シリコンを負極活物質に直ちに全てを適用するには限界がある。具体的に、充電/放電過程で300~400%体積膨張にともなう活物質の構造崩壊が発生し、これによって極板内の粒子の電気的短絡が発生することで抵抗が増加したり、損傷部分を通した電解質との直接的な接触は、シリコンの酸化反応を引き起こして電池の寿命を急激に減少させる。
【0005】
このようなシリコン物質に対する短所を補完するための方法が公示されている。例えば、シリコン1次粒子をナノメートル(nm)レベルに粉砕する方法である。但し、シリコン1次粒子サイズが減少することにより酸化度が増加し、電池性能を評価する際に初期効率が低下するという短所がある。
【0006】
他の方法として、シリコン粒子からなるコアの外郭にコーティング層を形成して膨張を抑制する方法がある。但し、このような方法は、充電/放電が反復されることによりコーティング層が損傷すれば、コアを形成している全てのシリコン粒子が同時に電解質に露出されることで、電池の寿命が極めて短縮されるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題を解決するために、シリコン粒子からなる活物質の充電/放電時に、シリコンの体積膨張による構造の崩壊を防止しながらも、外郭シェル層の崩壊によって全てのシリコンが電解質に露出されることで寿命が短縮されるという問題を防止できるリチウム二次電池用負極活物質を提供することを目的とする。
【0008】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及したものなどに制限されず、言及されない更なる課題は、下記の記載によって当該分野当業者にとって明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、コア及び前記コアを囲む第1シェル層を含む複合体と、複数の複合体及び前記複数の複合体を囲む第2シェル層とを含むリチウム二次電池用負極活物質であって、前記複合体は金属粒子及び炭素を含み、前記複合体間の隣接距離は80nm~300nmであるリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0010】
本発明の他の実施形態によると、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0011】
本発明の更なる実施形態によると、シリコンを含む混合物を粉砕するステップ(S1)と、前記混合物を噴霧乾燥してシリコン前駆体を製造するステップ(S2)と、シリコン前駆体粉末、非晶質炭素前駆体、及び結晶質炭素で複合体を製造する1次複合化ステップ(S3)と、前記複合体及び炭素前駆体で負極活物質を製造する2次複合化ステップ(S4)とを含む本発明の一実形態に係るリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、コアを囲む複数のシェルを含む構造を有し、複合体の間に最適化された間隔を有することにより、負極活物質の体積膨張による構造崩壊及び電池性能の急落を防止し、長寿命を有するリチウム二次電池を製造することができる。
【0013】
本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は請求範囲に記載された発明の構成から推論可能な全ての効果を含むものとして理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池用負極活物質の断面を示す図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係るリチウム二次電池の容量保持率(retention)結果を示したのである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付する図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。しかし、実施形態には様々な変更が加えられてもよく、特許出願の権利範囲がこのような実施形態によって制限されたり限定されることはない。実施形態に対する全ての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものとして理解しなければならない。
【0016】
実施形態で用いられる用語は、単に、説明を目的として使用されたものであり、限定しようとする意図として解釈されることはない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0017】
異なるように定義さがれない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0018】
また、添付図面を参照して説明することにおいて、図面符号に関係なく同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略することにする。実施形態の説明において、関連する公知技術についての具体的な説明が実施形態の要旨を不要に曖昧にするものと判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0019】
また、実施形態の構成要素を説明することにおいて、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を用いてもよい。このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって当該構成要素の本質や順番又は順序などが限定されることはない。
【0020】
いずれか1つの実施形態に含まれた構成要素と、共通の機能を含む構成要素は、他の実施形態において、同一の名称を用いて説明することにする。反対の記載がない以上、いずれか1つの実施形態に記載した説明は他の実施形態にも適用することができ、重複する範囲で具体的な説明は省略することにする。
【0021】
明細書の全体にわたり、いずれかの部分がいずれかの構成要素を「含む」とするとき、これは他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0022】
明細書の全体において、「複合体間の隣接距離」とは、1つの複合体の最外郭から他の複合体の最外郭までの最短距離を意味する。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、コア及び前記コアを囲む第1シェル層を含む複合体、及び複数の複合体及び前記複数の複合体を囲む第2シェル層を含むリチウム二次電池用負極活物質を提供することができる。ここで、前記複合体は、金属粒子及び炭素を含み、前記複合体間の隣接距離は80nm~300nm、好ましくは、100nm~150nmであってもよい。前記複合体間の隣接距離が80nm未満であれば、シリコン体積の膨張時に複合体の構造が崩壊されることがある。一方、負極活物質の製造時に、前記複合体間の隣接距離が300nmを超過する程度でシェル層を形成する物質を投入すれば、非晶質炭素の前駆体である石油系ピッチの量が多くなることで負極活物質どうしが固まる現像が発生し、負極活物質の形態及び大きさの制御が難しく、このような負極活物質を用いて極板を製造する場合、極板製造の過程で不良が生じる確率が大きいことから、電池評価に困難がある。
【0024】
複合体間の隣接距離は、上述した範囲内で均一であってもよい。複合体間の隣接距離が均一でなくて上述した範囲を超過して多様であれば、複合体間の距離が近い部分でシリコン体積の膨張により複合体の構造が崩壊し、これは負極活物質の全体構造の崩壊を引き起こすことから、リチウム二次電池の寿命が短縮され得る。
【0025】
本発明の一実施形態において、第2シェル層は、結晶質及び非晶質炭素からなる群より選択された1つ以上を含んでもよい。前記第2シェル層は、複合体の構造を保護するだけでなく、複合体を電気的に接続させる役割を果たす。
【0026】
一例として、結晶質炭素は、黒鉛系炭素を含んでもよい。黒鉛系炭素は、自然で生成して採掘される天然黒鉛(natural graphite)と石油系及び石炭系ピッチなどを熱処理して製造された人造黒鉛(artificial、synthetic、pyrolytic graphite)であってもよい。
【0027】
非晶質炭素は、一例として、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)、ナフタレン(naphthalene)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)樹脂、スチレン(stylene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、メソフェーズピッチ、及びタールなどの物質から製造されてもよい。
【0028】
但し、記載された例示に制限されることはない。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記第2シェル層の強度は、第1シェル層の強度よりも大きくてもよい。第2シェル層を製造するとき、第1シェル層を製造時に添加される炭素前駆体よりも軟化点が高い炭素前駆体を添加すると、複合化工程中に発生する熱及びストレスによって容易に軟化されて生じる問題を防止することができ、その後、熱処理過程で除去される揮発分が少なくなり、これから第1シェル層よりも強度の強い第2シェル層を形成することができる。例えば、第1シェル層を製造するとき添加される炭素前駆体の軟化点は100℃以上200℃未満であり、第2シェル層を製造するとき添加される炭素前駆体の軟化点は200℃~300℃であってもよい。第2シェル層の高い強度は複合体の膨張にもかかわらず、負極活物質の構造が保持されるように補助することができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記コアは、金属粒子と前記金属粒子との間に炭素連結部を含むことができる。前記炭素連結部は、結晶質及び非晶質炭素からなる群より選択された1つ以上を含んでもよい。結晶質及び非晶質炭素の例は、上記に記載された例示と同一である。
【0031】
前記炭素連結部により、電子が移動するとき粒子間の接触抵抗が減少し、その結果、電気伝導性が改善し、良好な出力特性や充電速度を取得することができる。それだけでなく、シリコン粒子間の決着が強化され、リチウム二次電池の持続的な充電/放電時にも金属粒子の電気伝導経路が保持及び安定的な電気化学反応が可能になり、その結果、改善された寿命特性(長寿命)を有することができる。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記コアは多孔性であってもよい。コア内の孔隙は充電/放電の際にシリコンの単一粒子が膨張できる空間を提供することができる。一例として、前記コアの孔隙率は20~30%であってもよい。孔隙率が20%未満であれば、活物質の体積膨張時に第1シェル層の構造崩壊が生じ、これを含む二次電池の寿命特性が悪くなり得る。一方、孔隙率が30%を超過すると、耐久性の弱いコアが形成され、このようなコアは複合化過程でストレスによりその構造が破壊することで、コアとシェルの境界が明確でない負極活物質が形成される。また、活物質の電気伝導度が低くなることで、初期効率が低下するという問題がある。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記コアの直径は800nm~1200nmであってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記金属粒子は、シリコン、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ゲルマニウム、スズ、鉛、これらの酸化物、及びその合金からなる群より選択された少なくとも1つ以上を含んでもよい。一例として、前記金属粒子は鱗片状シリコンであってもよい。シリコンは黒鉛に比べてエネルギー密度が約10倍高く、充電/放電速度が速いという長所がある。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記金属粒子の直径は20nm~120nmであってもよい。例えば、金属が鱗片状構造のように、長径及び短径を有する場合、前記長径及び短径はそれぞれ80nm~120nm及び20nm~60nmであってもよい。但し、これに限定されることはない。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記第1シェル層は、結晶質及び非晶質炭素からなる群より選択された1つ以上を含むことができる。結晶質及び非晶質炭素の例は、上記に記載された例示と同一である。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記第1シェル層の厚さは100nm~150nmであってもよい。前記第1シェル層の厚さが100nm未満に薄くなれば、シェルが崩壊し易くなり、電池の寿命特性が低下する。一方、前記第1シェル層の厚さが150nmを超過するようシェル層を形成する物質を投入する場合、複数のコアを囲む1つのシェル層が形成され、本発明が目的とする構造を有する負極活物質を製造することができず、このような構造は、複数のシェルを含む負極活物質に比べて電池の性能を長く保持することが難しいという問題がある。
【0038】
本発明の他の実施形態によれば、前記リチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池を提供することができる。
【0039】
リチウム二次電池は、正極、負極、電解質、及び分離膜を含む。
【0040】
正極は、リチウムイオンの供給源として、前記正極は、基材、正極活物質、導電材、及びバインダーを含み、前記正極活物質としてリチウム酸化物のような化合物を用いてもよい。
【0041】
一方、負極は、基材、負極活物質、導電材、及びバインダーを含み、前記負極活物質は、正極からのリチウムイオンを格納又は放出して電流が流れるようにする。
【0042】
分離膜は、正極と負極の物理的な接触を遮断する機能を行い、微細孔を含んでおり、リチウムイオンを透過することができ、前記電解質は、リチウムイオンの移動を可能にする媒介体として、非水電解液、固体電解質などを用いてもよい。
【0043】
本発明の更なる実施形態において、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池用負極活物質を製造する方法を提供することができる。リチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、シリコンを含む混合物を粉砕するステップ(S1)、前記混合物を噴霧乾燥してシリコン前駆体を製造するステップ(S2)、シリコン前駆体粉末、非晶質炭素前駆体、及び結晶質炭素で複合体を製造する1次複合化ステップ(S3)、及び前記複合体及び炭素前駆体で負極活物質を製造する2次複合化ステップ(S4)を含む。以下、各ステップについて具体的に説明する。
【0044】
(S1)ステップにおいて、シリコン、アルコール、及び添加剤を含む混合物をビーズミル(bead mill)に添加して中間粒度(D(50))が80nm~120nmになるように粉砕した溶液を製造する。
【0045】
(S2)ステップにおいて、前記溶液を排出温度基準50℃~60℃で噴霧乾燥して中間粒度が1μmであるシリコン前駆体粉末を製造する。
【0046】
(S3)ステップにおいて、前記シリコン前駆体粉末、非晶質炭素前駆体、及び結晶質炭素を1:1:1の比率で10分間複合化を行い、コアシェール構造を有する物質を製造する。前記非晶質炭素前駆体として、軟化点が100℃以上200℃未満のピッチ(pitch)系炭素などが使用され、前記結晶質炭素として黒鉛などが使用されてもよい。その後、前記コアシェール構造を有する物質を800~1000℃で熱処理することで複合体を形成することができる。
【0047】
(S4)ステップにおいて、前記複合体及び炭素前駆体を1:0.4超過1:0.7未満の重量比で配合し、10分間複合化を行った後、800~1000℃で熱処理して負極活物質を製造する。複合体及び炭素前駆体を前記重量比で配合する場合、隣接距離が80nm~300nm、好ましくは100nm~150nmに均一な負極活物質を製造することができる。ここで、前記炭素前駆体は、結晶質炭素又は非晶質炭素前駆体であってもよく、前記(S4)ステップで使用される炭素前駆体の軟化点は、前記(S3)ステップで使用される炭素前駆体の軟化点よりも高くてもよい。そのため、第1シェルよりも強度の高い第2シェルを形成し得る。
【0048】
以下、添付する図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。しかし、実施形態には様々な変更が加えられ、特許出願の権利範囲がこのような実施形態によって制限されたり限定されることはない。実施形態に対する全ての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものとして理解しなければならない。
【0049】
試験例1:リチウム二次電池用負極活物質の製造
実施形態1及び比較例1~5のリチウム二次電池用負極活物質を製造した。ここで、複合体間の距離は、集束イオンビーム(focus ion beam;FIB)を用いて複合体の断面を切削した後走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy;SEM)で分析した。
【0050】
実施形態1
以下の方法により、コア、第1及び第2シェル層を有し、複合体間の隣接距離が100nm以上150nm以下のリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0051】
中間粒度(D(50))が8μmになるように粉砕された純度99.5%以上のシリコン、イソプロピルアルコール、及び添加剤を1:15:0.5の重量比でビーズミル(Bead Mill)に投入し、D(50)基準90nmまで粉砕した。その後、粉砕された溶液を噴霧乾燥してD(50)が1μmであるシリコン前駆体粉末を製造した。
【0052】
その後、前記シリコン前駆体粉末と軟化点150℃の石油系ピッチ、黒鉛(純度99.9%以上、粒度200mesh以上)をそれぞれ1:1:1の重量比で複合化器(ハンソルケミカル自体製造)に投入して10分間1次複合化を行った。その後、900℃で熱処理して複合体を製造した。
【0053】
その次に、前記複合体と軟化点250℃の石油系ピッチを1:0.55の重量比で複合化器に投入して10分間2次複合化を行ってから、900℃で熱処理して負極活物質を製造した。
【0054】
比較例1
2次複合化時に前記複合体と250℃の石油系ピッチを1:0.4の重量比で投入したことを除外しては、実施形態1と同じ方法で実施し、これにより、コア、第1及び第2シェル層を有し、複合体間の隣接距離が80nm未満である負極活物質を製造した。
【0055】
比較例2
2次複合化時に前記複合体と軟化点250℃の石油系ピッチを1:0.2の重量比で投入したことを除外しては、実施形態1と同じ方法で実施し、これにより、コア及び第1シェル層のみを有する負極活物質を製造した。
【0056】
比較例3
2次複合化時に前記複合体と軟化点250℃の石油系ピッチを1:0.7の重量比で投入したことを除外しては、実施形態1と同じ方法で実施し、これにより、コア、第1及び第2シェル層を有し、複合体間の隣接距離が300nm超過である負極活物質を製造した。
【0057】
比較例4
2次複合化時に前記複合体と軟化点250℃の石油系ピッチを1:1の重量比で投入したことを除外しては、実施形態1と同じ方法で実施し、これにより、球状でないランダムな形状を有し、大きさがそれぞれである負極活物質を製造した。ここで、負極活物質は独立した状態でそれぞれ存在せず、ランダムにかたまって形成されているため、複合体間の隣接距離の測定が困難であった。
【0058】
比較例5
1次複合化を行わないことを除外しては実施形態1と同じ方法で実施し、これにより、コア及び第2シェル層を有し、複合体間の隣接距離が100nm~150nmである負極活物質を製造した。
【0059】
試験例2:リチウム二次電池の製造
電気化学の評価のために、リチウム二次電池の負極は次のようなステップで製造された。先ず、上記の実施形態1、比較例1~5によって製造した負極活物質(スラリー総重量対比93.5重量%)、炭素導電材(スラリー総重量対比3重量%)、カルボキシメチルセルロース(スラリー総重量対比1.5重量%)及びスチレンブタジエンバインダー(スラリー総重量対比2重量%)を混合して負極活物質スラリーを製造した。その後、このスラリーを銅ホイール(Cu foil)集電体にコーティング、乾燥、及び1.55g/ccの合材密度で圧延するステップを経て負極を製造した。
【0060】
正極は、次のような方法により製造された。NCM(LiNiMnCoO2)正極活物質(混合物総重量対比96重量%)、アセチレンブラック導電材(混合物総重量対比2重量%)、ポリフッ化ビニリデンバインダー(混合物総重量対比2重量%)をN-メチルピロリドン溶媒に混合して混合物を製造した。
【0061】
フルセル評価の際に、NCM活物質正極を対電極(Counter Electrode)として使用し、前記製造された負極との容量比率が1:1であるフルセルを製造した。電解質としてエチレンカーボネート:ジエチルカーボネートの体積比が3:7である混合溶液を使用した。
【0062】
試験例3:リチウム二次電池の電気化学的な特性評価
電気化学特性の評価のために2032コインセルを使用し、膨脹率及び寿命特性はフルセル(Full Cell)で評価した。
【0063】
膨脹率
前記負極活性物質で製造されたフルセルを用いて1Cの条件下で充電/放電を実施した。電池の厚さは、直接製造した装備を介して充電/放電ステップによりリアルタイムに測定して自動記録する方式で測定した。膨脹率は、下記の式を用いて計算された。
【0064】
【数1】
500サイクルの充電/放電後にリチウム二次電池の膨脹率の結果は、下記の表1のように示す。
【0065】
【表1】
寿命特性
前記負極活性物質で製造されたフルセルを用いて1Cの条件下で充電/放電を実施した。500サイクルの充電/放電後にリチウム二次電池の容量保持率の結果は
図2及び下記の表2のように示す。
【0066】
【表2】
前記試験例を通じて、本発明の請求範囲に記載されたリチウム二次電池用負極活物質を利用すると、複数のシェル層を有する負極活物質の構造を介して、シリコンの充電/放電性能をより長く保持させ、負極活物質内の複合体間の間隔を最適化して均一化することで、シリコンの体積膨張による構造崩壊を防止し、優れた効率及び長寿命特性を有するリチウム二次電池を製造できるものと予測される。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法とは異なる順に実行されたり、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法とは異なる形態に結合又は組み合せられたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても、適切な結果を達成することができる。
【0068】
従って、他の実現、他の実施形態、及び特許請求の範囲と均等なものなども後述する請求の範囲の範囲に属する。
【符号の説明】
【0069】
1:リチウム二次電池用負極活物質
10:コア
20:第1シェル層
30:第2シェル層
40:複合体間の隣接距離