IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スタッフ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-磁石錠 図1
  • 特開-磁石錠 図2
  • 特開-磁石錠 図3
  • 特開-磁石錠 図4
  • 特開-磁石錠 図5
  • 特開-磁石錠 図6
  • 特開-磁石錠 図7
  • 特開-磁石錠 図8
  • 特開-磁石錠 図9
  • 特開-磁石錠 図10
  • 特開-磁石錠 図11
  • 特開-磁石錠 図12
  • 特開-磁石錠 図13
  • 特開-磁石錠 図14
  • 特開-磁石錠 図15
  • 特開-磁石錠 図16
  • 特開-磁石錠 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076381
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】磁石錠
(51)【国際特許分類】
   E05C 19/16 20060101AFI20240529BHJP
   E05B 15/02 20060101ALI20240529BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
E05C19/16 C
E05B15/02 H
E05B47/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199421
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2022187661
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592245432
【氏名又は名称】スタッフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝仁
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構造で強い吸着力を出すことが可能な永久磁石を利用した引戸用の磁石錠である。
【解決手段】レバーを時計方向に90度回転すると、歯車108Cが時計方向に90度回転し、歯車108A、108Bが反時計方向に90度回転する。その結果、係合溝521に係合する係合片62によって永久磁石52、52が反時計方向に90度回転する。ヨーク51の先端部512にN極とS極が移動し、磁束が吸着板102に集中するためヨーク51の先端部512に、建物の枠側又は柱側等に固定されている吸着板102に吸着される。磁石ユニット106A、106Bが隣接して2個配置されているため、吸着力が強くなる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸側に固定された磁石錠本体と、
柱側又は前記引戸がスライドする枠側に固定され、前記磁石錠本体に吸着可能な磁性体の吸着板と、
前記磁石錠本体に間隔を空けて配置された一対のヨークと、
前記一対のヨークに回転可能に挟持され、径方向に着磁された円柱状の永久磁石と、
前記磁石錠本体に回転可能に軸支され、前記永久磁石に係合して前記永久磁石を回転させるレバーと
からなることを特徴とする磁石錠。
【請求項2】
請求項1に記載の磁石錠において、
前記永久磁石の回転角度が90度になるように前記レバーの回転角度を規制する規制部材を備えた
ことを特徴とする磁石錠。
【請求項3】
請求項1に記載の磁石錠において、
前記永久磁石の回転角度が90度より少なくなるように前記レバーの回転角度を規制する規制部材を備えた
ことを特徴とする磁石錠。
【請求項4】
請求項1~3から選択される1項に記載の磁石錠において、
一対の前記ヨークと前記永久磁石で構成された磁石ユニットは、前記磁石錠本体に前記引戸のスライド方向に平行に所定距離だけスライド可能に支持され、前記吸着板から離れる方向にばねで付勢されている
ことを特徴とする磁石錠。
【請求項5】
請求項4項に記載の磁石錠において、
前記磁石錠本体には、各前記磁石ユニットが隣接して配置されている
ことを特徴とする磁石錠。
【請求項6】
請求項5項に記載の磁石錠において、
複数の前記磁石ユニットの中心に配置され、前記磁石錠本体に凸部材を有する
ことを特徴とする磁石錠。
【請求項7】
請求項6に記載の磁石錠において、
前記磁石錠本体には前記永久磁石に各々係合し、前記レバーの回転を前記永久磁石に伝達する歯車が各々配置されている
ことを特徴とする磁石錠。
【請求項8】
請求項6に記載の磁石錠において、
前記一対のヨークの先端部は前記磁石錠本体から前記吸着板側に突出することが可能である
ことを特徴とする磁石錠。
【請求項9】
請求項6に記載の磁石錠において、
隣接する前記磁石ユニットの永久磁石は、磁石錠のロック状態では磁極が同極で向き合うように配置されている
ことを特徴とする磁石錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を利用した引戸用の磁石錠に関するものである。更に詳しくは、コンパクトな構造で強い吸着力を出すことが可能な磁石錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
永久磁石を利用した引戸用の磁石錠として特許文献1の磁石錠がある。特許文献1の磁石錠は、マグネット部とキャッチ部との間の対面間隔を調整して引戸の吸着保持力を調整可能にしたものである。また電磁石と永久磁石を利用した開閉式防火扉用の磁石錠として特許文献2の磁石錠がある。特許文献2の磁石錠は、磁石錠のロックとアンロックに電磁石と永久磁石を利用するものである。永久磁石を利用した開閉式ドア用の磁石錠として特許文献3の磁石錠がある。特許文献3の磁石錠は、開閉式ドアの閉止状態、開き途中の状態、全開状態のいずれの場合でも、その状態を保持するように磁力が作用するものである。しかし、特許文献1から特許文献3の磁石錠は、コンパクトな構造で強い吸着力を出すことができない。また、特許文献1から特許文献3の磁石錠は、磁石錠本体と枠側の吸着板との間に隙間があると、ロックする力が低下する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-95242号公報
【特許文献2】特開昭52-75040号公報
【特許文献3】実用新案登録第3127823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような背景で発明されたものであり、以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、コンパクトな構造で強い吸着力を出すことが可能な永久磁石を利用した引戸用の磁石錠を提供することにある。
本発明の他の目的は、引戸が開いた状態ではロックできないようにして、いたずらや誤ってロック状態で外に出て引戸を閉めてしまっても、ロックが掛からないようにした引戸用の磁石錠を提供することにある。
本発明の他の目的は、磁石錠本体と枠側の吸着板との間に多少の隙間があっても、隙間を許容して強い力でロックすることが可能な引戸用の磁石錠を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、磁石錠本体側や枠側の吸着板側に凹凸が少なく、デザイン性が良好な引戸用の磁石錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
即ち、本発明1の磁石錠は、引戸側に固定された磁石錠本体と、柱側又は前記引戸がスライドする枠側に固定され、前記磁石錠本体に吸着可能な磁性体の吸着板と、前記磁石錠本体に間隔を空けて配置された一対のヨークと、前記一対のヨークに回転可能に挟持され、径方向に着磁された円柱状の永久磁石と、前記磁石錠本体に回転可能に軸支され、前記永久磁石に係合して前記永久磁石を回転させるレバーとからなることを特徴とする。
【0006】
本発明2の磁石錠は、本発明1において、前記永久磁石の回転角度が90度になるように前記レバーの回転角度を規制する規制部材を備えたことを特徴とする。
本発明3の磁石錠は、本発明1において、前記永久磁石の回転角度が90度より少なくなるように前記レバーの回転角度を規制する規制部材を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明4の磁石錠は、本発明1~3から選択される1項において、一対の前記ヨークと前記永久磁石で構成された磁石ユニットは、前記磁石錠本体に前記引戸のスライド方向に平行に所定距離だけスライド可能に支持され、前記吸着板から離れる方向にばねで付勢されていることを特徴とする。
本発明5の磁石錠は、本発明4において、前記磁石錠本体には、各前記磁石ユニットが隣接して配置されていることを特徴とする。
本発明6の磁石錠は、本発明5において、複数の前記磁石ユニットの中心に配置され、前記磁石錠本体に凸部材を有することを特徴とする。
本発明7の磁石錠は、本発明6において、前記磁石錠本体には前記永久磁石に各々係合し、前記レバーの回転を前記永久磁石に伝達する歯車が各々配置されていることを特徴とする。
本発明8の磁石錠は、本発明6において、前記一対のヨークの先端部は前記磁石錠本体から前記吸着板側に突出することが可能であることを特徴とする。
本発明9の磁石錠は、本発明6において、隣接する前記磁石ユニットの永久磁石は、磁石錠のロック状態では磁極が同極で向き合うように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁石錠は、コンパクトな構造で強い吸着力を出すことが可能で、引戸が開いた状態ではロックできないため、いたずらや誤ってロック状態で外に出て引戸を閉めてしまっても安全に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態の磁石錠を示し、斜め上から見た全体斜視図であり、レバーを取り外した状態を示す。
図2図2は、図1の分解斜視図である。
図3図3は、図1のA-A線で断面した斜視図であり、レバーを取りつけた状態を示す。
図4図4は、図1の磁石錠を示し、図4(a)は図1の正面図、図4(b)は図4(a)の右側面図、図4(c)は図4(a)の平面図である。
図5図5は、図1の磁石錠を示し、図5(a)は図4(a)の左側面図、図5(b)は図4(a)の背面図である。
図6図6は、図2の2個の磁石ユニットのうちの1個を示す全体斜視図である。
図7図7は、図6の磁石ユニットの分解斜視図である。
図8図8は、図6の磁石ユニットを示し、図8(a)は図6の正面図、図8(b)は図8(a)の右側面図、図8(c)は図8(a)の平面図である。
図9図9は、図6の磁石ユニットを示し、図9(a)は図8(a)の左側面図、図9(b)は図8(a)の背面図である。
図10図10は、本発明の磁石錠のアンロック状態を示す動作説明図であり、図10(a)は永久磁石を回転させる歯車が見える状態の動作説明図、図10(b)は歯車を取り外して永久磁石が見える状態にした動作説明図である。
図11図11は、本発明の磁石錠のロック状態を示す動作説明図であり、図11(a)は永久磁石を回転させる歯車が見える状態の動作説明図、図11(b)は歯車を取り外して永久磁石が見える状態にした動作説明図である。
図12図12は、本発明の第2の実施の形態の磁石錠を示し、永久磁石の回転角度が80度になるようにレバーの回転角度を規制する回転角度規制溝を示す図4(a)相当図である。
図13図13は、図12で引戸が閉められていて磁石錠本体の近傍に枠側の吸着板がある時に、永久磁石を80度回転した時を示す動作説明図であり、図13(a)は永久磁石を回転させる歯車が見える状態の動作説明図、図13(b)は歯車を取り外して永久磁石が見える状態にした動作説明図である。
図14図14は、図12で引戸が開いた状態で磁石錠本体の近傍に枠側の吸着板が無い時に、永久磁石を80度回転した時を示す動作説明図であり、図14(a)は歯車を取り外して永久磁石が見える状態の動作説明図、図14(b)は永久磁石が原位置に戻った状態を示す動作説明図であり、歯車を取り外して永久磁石が見える状態にした動作説明図である。
図15図15(a)は、本発明の第3の実施の形態の磁石錠を示し、ケース103に覆われた2個の磁石ユニットを示す全体斜視図、図15(b)は図15(a)からケース103を外した2個の磁石ユニットを示す全体斜視図である。
図16図16は、本発明の第3の実施の形態の磁石錠を示し、磁石ユニットの下側に取り付けられた取っ手に力を加えて引戸を左側に開いた状態を示す説明図である。
図17図17は、本発明の第3の実施の形態の凸部材が無い場合の磁石錠を示し、磁石ユニットの下側に取り付けられた取っ手に力を加えて引戸を左側に開いた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔磁石錠の第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の磁石錠を示し、斜め上から見た全体斜視図であり、レバー21(図3参照)を取り外した状態を示す。図2図1の分解斜視図、図3図1のA-A線で断面にした斜視図であり、レバー21を取りつけた状態を示す。図4図1の磁石錠を示し、図4(a)は図1の正面図、図4(b)は図4(a)の右側面図、図4(c)は図4(a)の平面図である。図5図1の磁石錠を示し、図5(a)は図4(a)の左側面図、図5(b)は図4(a)の背面図である。図1から図5に示すように本発明の磁石錠100は、図示しない引戸側に固定される磁石錠本体101と、柱側又は引戸がスライドする枠側に固定され、磁石錠本体101に吸着可能な磁性体の吸着板102で構成されている。磁石錠本体101は2本のボルト101A、101Aで引戸側に固定される。吸着板102は2本のボルト102A、102Aで建物の枠側又は柱側等に固定される。磁石錠本体101は、断面がコの字型のケース103、断面がL字型の上カバー104、平板状の側面カバー105、2個の磁石ユニット106A、106B、2個の圧縮ばね107A、107B、3個の歯車108A、108B、108C、2個の円柱状の支持ピン109、109等で構成されている。
【0011】
磁石錠本体101を構成するケース103の内部に、磁石ユニット106A、106Bが並列に内蔵され、磁石ユニット106A、106Bの上面に歯車108A、108B、108Cが載置されている。図2で見て歯車108Cの左端は、磁石ユニット106A、106Bからはみ出している。支持ピン109、109はその下端がケース103の底板103Bに挿入されて固定されている。支持ピン109、109の上端面が歯車108Cのはみ出し部の下面に当接して歯車108Cを支持している。上カバー104が2本のボルト104A、104Aでケース103に固定されて、磁石ユニット106A、106B、歯車108A、108B、108Cをカバーしている。ケース103の右側面(図示上)には平板状のフランジ部103Aが形成されている。側面カバー105をフランジ部103Aに重ね合わせて蓋をし、側面カバー105を介して磁石錠本体101は2本のボルト101A、101Aで引戸側に固定される。圧縮ばね107A、107Bは、磁石ユニット106A、106Bの右側面とフランジ部103Aの左側面103Eとの間に挟み込まれて保持されている。
【0012】
図3に示すようにケース103の上部(室内側)には指で操作するレバー21が取り付けられ、ケース103の下部(室外側)には硬貨を差し込んで操作する間仕切22が取り付けられている。レバー21の下部には角柱状の角芯23が固定され、間仕切22の上部の角穴24に角芯23が挿入されて、レバー21と間仕切22が連結されている。間仕切22は、円盤皿状のガイド円板22Aに回転可能に保持され、ガイド円板22Aには円柱状の連結ピン25、25が2本固定されている。レバー21は円盤皿状のガイド円板21Aに回転可能に保持され、ガイド円板21Aは2本のボルト25A、25Aを連結ピン25、25にねじ込んで固定されている。図3図5に示すようにケース103の底板103Bには、円形の1個の大径穴31と2個の小径穴32が形成されている。大径穴31に間仕切22の軸部22Bが挿入され、小径穴32、32に連結ピン25、25が挿入されてケース103の内部に入り込んでいる。図2図4に示すように上カバー104には、円形で同一径の3個の小径穴41が直列に形成されている。中央の小径穴41にレバー21の角芯23が挿入され、両側の小径穴41、41にボルト25A、25Aが挿入される。
【0013】
図6図2の磁石ユニット106A、106Bのうちの1個の磁石ユニットを示す全体斜視図、図7図6の磁石ユニットの分解斜視図である。図8図6の磁石ユニットを示し、図8(a)は図6の正面図、図8(b)は図8(a)の右側面図、図(c)は図8(a)の平面図である。図9図6の磁石ユニットを示し、図9(a)は図8(a)の左側面図、図9(b)は図8(a)の背面図である。磁石ユニット106A、106Bは同一形状で、図6から図9に示すように、板状で強磁性体の一対のヨーク51、51が間隔を空けて配置され、4段に積み重ねられている。一対のヨーク51、51は同一形状で、線対称に配置されている。円柱状の永久磁石52が一対のヨーク51、51の円弧部511、511に回転可能に挟持されている。永久磁石52の上端面には、直径方向に断面が矩形の係合溝521が形成されている。永久磁石52は径方向に着磁され、係合溝521の中心線を挟んで一方がN、他方がSに着磁されている。4段の一対のヨーク51、51を下固定プレート53と上固定プレート54で挟み込み、4本の固定ピン55を下固定プレート53側から挿入している。固定ピン55の下端には直径の大きな頭部55Aが形成されている。4本の固定ピン55の上端をカシメることにより、ヨーク51、51、下固定プレート53、上固定プレート54が一体的に固定される。図2図10に示すように、この磁石ユニット106A、106Bがケース103の内部に2個隣接して配置されている。図5(b)に示すように、ケース103の底板103Bには8個の長溝103Cが形成され、磁石ユニット106A、106Bの固定ピン55の頭部55Aが長溝103Cに各々嵌入している。従って、磁石ユニット106A、106Bは、図5(b)の矢印103D方向(引戸のスライド方向に平行)にスライド可能にケース103に内蔵されている。
【0014】
図2図3に示すように上固定プレート54の上面に歯車108A、108B、108Cが載置されている。歯車108Aの中心が磁石ユニット106Aの永久磁石52の中心と同心に配置され、歯車108Bの中心が磁石ユニット106Bの永久磁石52の中心と同心に配置されている。また、歯車108Cの中心は、レバー21の角芯23の中心と同心に配置されている。歯車108A、108B、108Cは同一形状に形成されて、共通部品にしている。歯車108A、108B、108Cの中心には、角芯23の断面形状と同一形状の四角形穴61が形成されている。従って、レバー21の角芯23が歯車108Cの四角形穴61に嵌合して、レバー21の回転を歯車108Cに伝達する。歯車108Cは歯車108A、108Bに同時に噛み合っているため、レバー21を時計方向(ロックする方向)に90度回転すると、歯車108A、108Bは反時計方向に90度回転する。歯車108A、108B、108Cの外周には、下方に折り曲げた係合片62が形成されている。係合片62の幅は、永久磁石52の係合溝521の溝幅よりも若干狭く形成されている。歯車108Aの係合片62は、磁石ユニット106Aの永久磁石52の係合溝521に係合している(図6参照)。同様に、歯車108Bの係合片62は、磁石ユニット106Bの永久磁石52の係合溝521に係合している。
【0015】
図10は、本発明の磁石錠100のアンロック状態を示す動作説明図であり、図10(a)は永久磁石52を回転させる歯車108A、108B、108Cが見える状態の動作説明図、図10(b)は歯車108A、108B、108Cを取り外して永久磁石52が見える状態にした動作説明図である。図10の磁石錠100のアンロック状態では、永久磁石52のN極からヨーク51を通ってS極を通る磁気回路が形成されるため、ヨーク51の先端部(図10の右端部)512には磁束がほとんど流れないため、吸着板102はヨーク51の先端部512には吸着されない。
【0016】
図11は、本発明の磁石錠100のロック状態を示す動作説明図であり、図11(a)は永久磁石52を回転させる歯車108A、108B、108Cが見える状態の動作説明図、図11(b)は歯車108A、108B、108Cを取り外して永久磁石52が見える状態にした動作説明図である。図10の状態からレバー21を時計方向に90度回転すると、歯車108Cが時計方向に90度回転し、図11に示すように、歯車108A、108Bが反時計方向に90度回転する。その結果、係合溝521に係合する係合片62によって永久磁石52、52が反時計方向に90度回転する。すると、ヨーク51の先端部512にN極とS極が移動し、磁束が吸着板102に集中するためヨーク51の先端部512に吸着板102が吸着される。図11に示すように、本発明の磁石錠100の実施の形態では、ロック状態では隣接する永久磁石52、52の磁極が同極で向き合うように配置されている。従って、隣接する永久磁石52、52の間に流れる磁束が減り、磁束のロスが少なくなるため、隣接する磁石ユニット106A、106Bの間隔を狭く配置することができるため磁石錠100がコンパクトになる。磁石ユニット106A、106Bが隣接して2個配置されているため、吸着力が強くなる。図11に示すように、ロック状態では永久磁石52、52の係合溝521、521が矢印103D方向(引戸のスライド方向に平行)に平行になる。従って、歯車108A、108Bの係合片62、62に邪魔されないため、磁石ユニット106A、106Bは図11(b)の矢印103D方向(引戸のスライド方向に平行)にスライド可能になる。その結果、吸着板102と磁石錠本体101の側面カバー105との間に多少の隙間があっても、ヨーク51の先端部512が側面カバー105の右側面105Aから突出して隙間を許容するため、確実にロックすることが可能となる。
【0017】
歯車108A、108B、108Cの上面には円柱状の案内ピン63が各々固定されている。図1図2図4に示すように、上カバー104には、円弧状の回転角度規制溝(規制部材)64A、64B、64Cが形成されている。歯車108Aの案内ピン63が回転角度規制溝64Aに陥入し、歯車108Bの案内ピン63が回転角度規制溝64Bに陥入し、歯車108Cの案内ピン63が回転角度規制溝64Cに陥入している。レバー21を時計方向に回転すると、歯車108A、108B、108Cの案内ピン63が各々回転して、90度回転した位置で回転角度規制溝64A、64B、64Cの終端位置で停止し、歯車108A、108B、108Cの回転角度が90度に規制される。本発明の実施の形態の磁石錠100は、150N~200Nの吸着力を発揮するため、強引に開けようとしない限り開けることができない。また、緊急時には磁石錠本体を破損することなく開けることができる。従って、家庭のトイレや家庭の部屋での使用に適している。また、磁石錠本体101や吸着板102に凹凸が少ないためデザイン性が良好である。
【0018】
〔磁石錠の第2の実施の形態〕
次に、磁石錠の第2の実施の形態について説明する。図12は本発明の第2の実施の形態の磁石錠を示し、ロック時の永久磁石52の回転角度を90度より少し小さくなるように規制して、吸着板102が磁石錠本体101の近くに無い時には、永久磁石52が原位置に戻ることで、引戸が開いた状態ではロックできないようにした例である。すなわち、図12はレバー21の回転角度を80度に規制する回転角度規制溝65A、65B、65Cを形成することにより、永久磁石52の回転角度が80度になるようにした例を示す図4(a)相当図である。図13図12で引戸が閉められていて磁石錠本体101の近傍に枠側の吸着板102がある時に、永久磁石52を80度回転した時を示す動作説明図である。図13(a)は永久磁石52を回転させる歯車108A、108B、108Cが見える状態の動作説明図、図13(b)は、歯車108A、108B、108Cを取り外して永久磁石52が見える状態にした動作説明図である。図14は、図12で引戸が開いた状態で磁石錠本体101の近傍に枠側の吸着板101が無いときに、永久磁石52を80度回転した時を示す動作説明図である。図14(a)は、歯車108A、108B、108Cを取り外して、永久磁石52が見える状態にした動作説明図、図14(b)は、永久磁石52が原位置に戻った状態を示す動作説明図であり、歯車108A、108B、108Cを取り外して、永久磁石52が見える状態にした動作説明図である。
【0019】
図12に示すように、上カバー104に形成された円弧状の回転角度規制溝65A、65B、65Cの各溝(スリット)は、図4(a)の回転角度規制溝64A、64B、64Cよりも角度10度だけ短く形成されている。その結果、歯車108A、108B、108Cが80度回転すると、各案内ピン63が回転角度規制溝65A、65B、65Cの各終端位置に停止し、歯車108A、108B、108Cの回転角度が80度に規制される。その結果、図13(b)に示すように、永久磁石52、52が反時計方向(図示上)に80度回転する。引戸が閉められていて磁石錠本体101の近傍に枠側の吸着板102があると、ヨーク51の先端部512にN極とS極が移動し、磁束が吸着板102に集中するためヨーク51の先端部512に吸着板102が吸着されてロックが完了する。しかし、図14(a)に示すように、引戸が開いていて磁石錠本体101の近傍に吸着板102が無いと、ヨーク51の先端部512にN極とS極がほとんど移動しないため、ヨーク51の先端部512には磁束がほとんど流れない。その結果、図14(b)に示すように、永久磁石52、52が時計方向に80度回転して原位置に戻る。歯車108A、108Bは時計方向に80度回転し、歯車108Cは反時計方向に80度回転して図10(a)に示す原位置に戻る。すなわち、図10(b)に示すように、永久磁石52の原位置では永久磁石52のN極→ヨーク51、51→S極という磁気回路が形成されるため、磁束が比較的集中し、永久磁石52とヨーク51、51との間の吸着力が大きいため、永久磁石52の姿勢が安定するためである。従って、引戸が開いた状態ではロックできないため、いたずらや誤ってロック状態で外に出て引戸を閉めてしまっても、ロックが掛からないため安全である。
【0020】
〔磁石錠の第3の実施の形態〕
次に、磁石錠の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、磁石錠がロック状態の時、磁石錠本体101の下側に取り付けられた取っ手111に力を加えて引戸112を開いた時に、引戸112が傾いて磁石錠本体101の吸着力が低下することを防止するようにした磁石錠である。図15(a)は、本発明の第3の実施の形態の磁石錠を示し、ケース103に覆われた2個の磁石ユニット106A、106Bを示す全体斜視図、図15(b)は図15(a)からケース103を外した2個の磁石ユニット106A、106Bを示す全体斜視図である。磁石ユニット106A、106Bの上下方向(図15(b)で見て)の中間位置の隙間Gには、磁石ユニットケース114に出没自在(図15(b)で見て左右方向に)に挿入された板状の凸部材110が装着されている。
【0021】
図16は、本発明の第3の実施の形態の磁石錠を示し、磁石錠本体101の下側に取り付けられた取っ手111に力を加えて引戸112を左側に開いた状態を示す説明図である。柱側又は引戸112がスライドする枠側113には、磁石錠本体101のヨーク51の先端部512に吸着可能な磁性体の吸着板102が固定されている。図16に示すように、磁石錠本体101の下側に取り付けられた取っ手111に力を加えて引戸112を左側に開くと、引戸112には時計方向のモーメントが作用し、引戸112が時計方向に傾いて開く。その結果、下側の磁石ユニット106Bの先端部512に吸着板102から引き離す力が作用するため、磁石錠本体101の吸着力が低下する恐れがある。しかし、ケース103に固定されている側面カバー105に凸部材110(非磁性体)が配置されている。磁石ユニット106A、106Bは、磁石ユニットケース114に収納されており、この中間位置に凸部材110が配置されている。磁石ユニット106A、106Bの上下方向(図16で見て)の中心位置に吸着板102に押しつける力が作用するため、磁石ユニットケース114がこれを中心に揺動し、磁石ユニット106A、106Bの吸着力を効率的にロック荷重に活用することが可能となる。
【0022】
図17は、本発明の第3の実施の形態の凸部材110が無い場合の磁石錠を示し、磁石錠本体101の下側に取り付けられた取っ手111に力を加えて引戸112を左側に開いた状態を示す説明図である。図17に示すように凸部材110が無いため、下側の磁石ユニット106Bの先端部512に吸着板102から引き離そうとする力が作用するため、磁石錠本体101の吸着力が低下する不具合が生じてしまう。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはない。例えば、前述した実施の形態では、磁石ユニットは2個配置されているが2個以上でも良い。
【符号の説明】
【0024】
100…磁石錠
101…磁石錠本体
101A…ボルト
102…吸着板
102A…ボルト
103…ケース
103A…フランジ部
103B…底板
103C…長溝
103D…矢印
103E…左側面
104…上カバー
104A…ボルト
105…側面カバー
105A…右側面
106A、106B…磁石ユニット
107A、107B…圧縮ばね
108A、108B、108C…歯車
109…支持ピン
110…凸部材
111…取っ手
112…引戸
113…枠側
114…磁石ユニットケース
21…レバー
21A…ガイド円板
22…間仕切
22A…ガイド円板
22B…軸部
23…角芯
24…角穴
25…連結ピン
25A…ボルト
31…大径穴
32…小径穴
41…小径穴
51…ヨーク
511…円弧部
512…先端部
52…永久磁石
521…係合溝
53…下固定プレート
54…上固定プレート
55…固定ピン
55A…頭部
61…四角形穴
62…係合片
63…案内ピン
64A、64B、64C…回転角度規制溝(規制部材)
65A、65B、65C…回転角度規制溝(規制部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17