(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076391
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】軟質ウレタンの微粉末製造設備及び軟質ウレタンの微粉末
(51)【国際特許分類】
B02C 19/22 20060101AFI20240530BHJP
B02C 21/00 20060101ALI20240530BHJP
B02C 23/04 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B02C19/22
B02C21/00 D
B02C23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187841
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】519367706
【氏名又は名称】株式会社エコ・マイニング
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】相田 辰
(72)【発明者】
【氏名】瀬田 英博
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 拓
【テーマコード(参考)】
4D067
【Fターム(参考)】
4D067CB03
4D067DD11
4D067EE39
4D067GA16
(57)【要約】
【課題】二軸破砕機を用いて濡れた板状の軟質ウレタンフォームを破砕する場合に、生産性を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】二軸破砕機60の上流側に、減水機構20を付設する。減水機構20は、下ローラ22及び上ローラ23を備える。下ローラ22及び上ローラ23で濡れた板状の軟質ウレタンフォームを圧縮して、軟質ウレタンフォームから水を押し出す。減水処理された軟質ウレタンフォームが二軸破砕機60に投入される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーマル羽根とカウンター羽根を破砕スクリューに備え、この破砕スクリューを一対備え、一方の破砕スクリューに対して他方の破砕スクリューを逆回転させることで板状の軟質ウレタンフォームを破砕して微粉末を得る二軸破砕機を主たる構成要素とする微粉末製造設備であって、
この微粉末製造設備は、前記二軸破砕機の上流側に、前記板状の軟質ウレタンフォームに含まれる水の量を低減する減水機構を備え、
この減水機構は、前記板状の軟質ウレタンフォームを圧縮して減水する下ローラ及び上ローラを備えていることを特徴とする軟質ウレタンの微粉末製造設備。
【請求項2】
請求項1記載の軟質ウレタンの微粉末製造設備であって、
前記二軸破砕機の下流側に、前記微粉末が帯びる静電気を除去する除電機構が備えられていることを特徴とする軟質ウレタンの微粉末製造設備。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の軟質ウレタンの微粉末製造設備で製造される軟質ウレタンの微粉末であって、
この微粉末は、鳥の足形状を呈していることを特徴とする軟質ウレタンの微粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ウレタンフォームを微細化して微粉末を得る技術に関する。
【0002】
[用語の説明]
ウレタンは、ポリウレタンの略称である。
フォーム(Foam)は、日本語で泡を意味する。
ウレタンフォームは、発泡性ウレタンとも呼ばれる。
発泡性ウレタン(ウレタンフォーム)は、硬質ウレタンフォームと軟質ウレタンフォームとの総称である。
【0003】
上流側とは、後述の
図1に示す動線11上のある点(又は部位)から流れを遡る側をいう。
下流側とは、動線11上のある点(又は部位)から流れを下る側をいう。
二軸スクリュー式破砕機を、二軸破砕機と略記する。
【背景技術】
【0004】
硬質ウレタンフォームは、クローズドセルであって、独立セル構造を有する。セル内の空気がセル間を移動することはなく、セルが外に開放されてもいない。
空気が閉じ込められているため断熱性能が高く、建築断熱板や、自動販売機や冷蔵庫などの電機品断熱材として盛んに利用される。
【0005】
軟質ウレタンフォームは、オープンセルであって、セル内の空気がセル間を移動し、セルが外に開放されている。
軟質ウレタンフォームは、クッション、ソファー、ベッド、マットなどの生活用品や工業用品に盛んに利用される。
【0006】
古くなったウレタンフォームは、埋め立て処理されてきたが、埋め立て処理場の確保が難しくなり、現在は焼却処理が主流となっている。
ウレタンフォームは、石油由来製品であるため、原油資源の枯渇問題を考慮すると、再利用が望まれる。
【0007】
そこで、本発明者らは、軟質ウレタンフォームの廃材を二軸破砕機で破砕し且つ破砕物同士を擦り合わせることで、平均粒径が1.0mm以下の軟質微粉末を製造する技術を提案した(特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1の技術で概ね良好な軟質微粉末が得られたが、ある頻度で不具合が起こることが分かった。この不具合を図面で説明する。
図10は従来の不具合を説明する図(二軸破砕機の横断面図)であり、板状の軟質ウレタンフォーム101(以下、軟質ウレタンフォーム101と略記する。)をホッパー102へ投入すると、ある頻度で軟質ウレタンフォーム101が一対の破砕スクリュー103、104に載ったままとなる。暫くするとこの軟質ウレタンフォーム101は一対の破砕スクリュー103、104に引き込まれるが、載っている間は時間ロスとなる。この時間ロスの分だけ生産性は低下する。
【0009】
図11は従来の不具合を説明する図(二軸破砕機の長手断面の部分図)であり、引き込まれた後、砕かれてある程度の大きさになった破砕片105は、スクリュー軸106に設けられた螺旋状の羽根107でスクリュー軸106に沿って移動しつつ更に破砕される。しかし、破砕片105は順調にスクリュー軸106に沿って移動しないことがある。順調でない分だけ、生産性が低下する。
【0010】
生産コストの低減が求められる中、二軸破砕機を用いて板状の軟質ウレタンフォームを破砕する場合に、生産性を向上させることができる技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、二軸破砕機を用いて板状の軟質ウレタンフォームを破砕する場合に、生産性を向上させることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、
図10に示す軟質ウレタンフォーム101を詳細に観察した。すると、軟質ウレタンフォーム101の表面が濡れていた。この濡れにより、軟質ウレタンフォーム101と一対の破砕スクリュー103、104との間の摩擦係数が著しく低下し、結果、軟質ウレタンフォーム101が一対の破砕スクリュー103、104に載ってしまうことが分かった。
【0014】
また、本発明者らは、
図11に示す破砕片105において、破砕片105が濡れている(又は湿っている)ため、破砕片105と羽根107との間の摩擦係数が著しく低下する。摩擦係数が低下すると破砕片105が羽根107上を滑る。滑ると、破砕片105の移動性が低下すると推定した。
【0015】
そこで、
図10に示す軟質ウレタンフォーム101を、十分に乾燥した軟質ウレタンフォーム101に交換した。すると、不具合が解消し所望の微粉末が得られた。
【0016】
軟質ウレタンフォーム101は廃棄物であり、保管費用を節約するために、屋外に保管されることが少なくない。
屋外保管中に降雨があると、軟質ウレタンフォーム101は濡れ、水は中心まで浸み込む。すなわち、セルが繋がっており且つセルが外に開放されているため、短時間で多量の水が軟質ウレタンフォーム101の中心まで浸み込む。
【0017】
本発明者らは、濡れた軟質ウレタンフォーム101を、屋内で自然乾燥させることや、乾燥炉で強制乾燥させることを検討した。
屋内で自然乾燥させると、乾燥時間が延びて生産性が低下する。
乾燥炉で強制乾燥させると、高価な乾燥炉を準備する必要があると共に電気代やガス代が嵩み、生産コストが増大する。
【0018】
そこで、本発明者らは、自然乾燥や乾燥炉による強制乾燥に代わる技術を模索した。その過程で減水処理を試みた。
すなわち、濡れた軟質ウレタンフォーム101を、圧縮して減水処理を施してみた。結果、減水処理した軟質ウレタンフォーム101であれば、不具合が解消できる見通しを得た。
【0019】
以上の知見から、本発明は次のようにまとめることができる。
請求項1に係る発明は、ノーマル羽根とカウンター羽根を破砕スクリューに備え、この破砕スクリューを一対備え、一方の破砕スクリューに対して他方の破砕スクリューを逆回転させることで板状の軟質ウレタンフォームを破砕して微粉末を得る二軸破砕機を主たる構成要素とする微粉末製造設備であって、
この微粉末製造設備は、前記二軸破砕機の上流側に、前記板状の軟質ウレタンフォームに含まれる水の量を低減する減水機構を備え、
この減水機構は、前記板状の軟質ウレタンフォームを圧縮して減水する下ローラ及び上ローラを備えていることを特徴とする。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の軟質ウレタンの微粉末製造設備であって、
前記二軸破砕機の下流側に、前記微粉末が帯びる静電気を除去する除電機構が備えられていることを特徴とする。
【0021】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の軟質ウレタンの微粉末製造設備で製造される軟質ウレタンの微粉末であって、
この微粉末は、鳥の足形状を呈していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明では、微粉末製造設備は、二軸破砕機の上流側に、板状の軟質ウレタンフォームに含まれる水の量を低減する減水機構を備えているため、降雨などにより板状の軟質ウレタンフォームが濡れて中心まで水が浸み込んでいても、破砕処理が可能となる。
濡れた軟質ウレタンフォームを自然乾燥させる場合に比較して、減水処理であれば処理時間がごく短くなり、生産性を高めることができる。
濡れた軟質ウレタンフォームを強制乾燥させる場合に比較して、減水処理であれば処理コストを下げることができる。
【0023】
加えて、減水機構は、下ローラ及び上ローラ からなるため、構造が簡単で安価である。微粉末製造設備の設備コストのアップを抑えることができる。
よって、本発明により、二軸破砕機を用いた板状の軟質ウレタンフォームの破砕において、生産性を向上させることができる技術が提供される。
【0024】
請求項2に係る発明では、二軸破砕機の下流側に、除電機構が備えられている。
板状の軟質ウレタンフォームを屋外に保管すると、天候の影響を強く受ける。すなわち、降雨により板状の軟質ウレタンフォームは中心まで水が浸み込む。このときは、減水機構により対処可能である。一方、好天が続くと板状の軟質ウレタンフォームは中心まで乾燥する。
この乾燥した状態の板状の軟質ウレタンフォームは、減水機構を通過するだけで減水はされないが、次の二軸破砕機で破砕され、擦り合わされたときに、静電気が発生する。静電気は放置すると爆発に繋がる。
【0025】
爆発対策として、二軸破砕機の下流側に、除電機構を設け、この除電機構で静電気を除去する。
本発明により、乾燥が進んだ板状の軟質ウレタンフォームが軟質ウレタンの微粉末製造設備に投入されても、微粉末の製造が安全に行われる。
【0026】
請求項3に係る発明では、軟質ウレタンの微粉末製造設備で製造される軟質ウレタンの微粉末は、鳥の足形状を呈している。
微粉末処理の末期で行われる擦り合わせが十分に実施されると、破砕片が十分に解(ほぐ)れて鳥の足形状になる。
仮に、微粉末がセルを内包していると、このセルを含む微粉末は、熱伝導性が悪く、反応性が低く、濡れ性が悪い。
対して、本発明の鳥の足形状の微粉末は、熱伝導性が良く、反応性が高く、濡れ性が良い。そのため、本発明による微粉末は、多くの用途での活用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る軟質ウレタンの微粉末製造設備の基本構成図である。
【
図6】(a)は二軸破砕機の作用を説明する図であり、(b)は(a)のb部拡大図である。
【
図7】(a)、(b)は本発明により得られた鳥の足形状の微粉末の拡大図である。
【
図10】従来の不具合を説明する図(二軸破砕機の横断面図)である。
【
図11】従来の不具合を説明する図(二軸破砕機の長手断面の部分図)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0029】
[軟質ウレタンの微粉末製造設備]
図1に示すように、本発明に係る軟質ウレタンの微粉末製造設備10は、主たる構成要素である二軸破砕機60と、この二軸破砕機60の上流側に配置される減水機構20と、この減水機構20と二軸破砕機60との間に必要に応じて配置されるガイド機構50と、二軸破砕機60の下流側に必要に応じて配置される除電機構80とからなる。
【0030】
以下、各構成要素の構造及び作用を、詳しく説明する。
【0031】
[減水機構]
図2に示すように、減水機構20は、板状の軟質ウレタンフォーム21(以下、軟質ウレタンフォーム21と略記する。)を圧縮する下ローラ22及び上ローラ23と、落下する水滴24を受ける水受けパン25とからなる。
下ローラ22及び上ローラ23は各1本で差し支えないが、本実施例では各2本とした。下ローラ22及び上ローラ23は各3本以上であっても差し支えない。
【0032】
下ローラ22及び上ローラ23は鋼製のロール軸26に、ゴム製筒27を嵌めてなるゴムローラが好ましい。ゴムであれば摩擦係数が鋼より大きく、軟質ウレタンフォーム21とのスリップ現象が抑制できる。ゴム製筒27は、樹脂製筒に代えてもよい。
また、下ローラ22及び上ローラ23は表面を粗面にした鋼製ローラであってもよい。
よって、下ローラ22及び上ローラ23の構造は任意である。
【0033】
便宜上、2本の下ローラ22のうち、上流側の下ローラ22を第1下ローラ28、下流側の下ローラ22を第2下ローラ31と呼ぶ。同様に、2本の上ローラ23を第1上ローラ29と第2上ローラ32と呼んで、位置を明確にする。
【0034】
図3は
図2の3-3線断面図である。
図3に示すように、第1下ローラ28は、軸受33を介して左支持材34と右支持材35とで回転可能に支持されている。
右支持材35から図右へ張り出す下ブラケット36に下サーボモータ37が載せられ、この下サーボモータ37で第1下ローラ28が所定の速度で回される。
【0035】
また、右支持材35から図右へ張り出す上ブラケット38に上サーボモータ39が取り付けられ、この上サーボモータ39で第1上ローラ29が所定の速度で回される。
なお、上サーボモータ39と第1上ローラ29とは、自在軸継手42で繋がれ、第1上ローラ29は昇降可能とされる。
【0036】
第1下ローラ28と第1上ローラ29とが駆動ローラであるため、第1下ローラ28と第1上ローラ29とを同じ回転速度にする他、回転速度に差をつけることができる。
軟質ウレタンフォーム(
図2、符号21)が上もしくは下へ湾曲するときは、回転速度に差をつけることで、平坦にすることができる。
【0037】
ただし、第1下ローラ28のみを駆動ローラとして、第1上ローラ29をフリーローラとしてもよい。この場合は、上ブラケット38、上サーボモータ39及び自在軸継手42が
図3から省かれ、減水機構の構造が簡単になる。加えて、下サーボモータ37のみの回転制御で済むため、制御が簡単になる。
【0038】
図4は
図3の4矢視図である。
図4に示すように、左支持材34に縦長のガイド穴43が設けられ、このガイド穴43にスライドブロック44が昇降可能に嵌められ、このスライドブロック44に軸受33が嵌められ、この軸受33で第1上ローラ(
図3、符号29)が支持される。
【0039】
スライドブロック44からロッド45が上に延びており、このロッド45の上部にナット46及びロックナット47がねじ込まれている。また、スライドブロック44はスプリング48で下方へ付勢されている。
図面は省略するが、右支持材(
図3、符号35)も同様の構造である。
【0040】
ロックナット47を緩め、ナット46を回すことで、
図3に示す第1下ローラ28と第1上ローラ29との間隔(ローラギャップ)Gが任意に調節される。
また、
図3において、第1下ローラ28と第1上ローラ29との間に硬い異物が侵入したときには、スプリング48が縮むことで、第1上ローラ29が上に逃げる。結果、異物による機械的ダメージは回避される。
【0041】
図4で説明した構造は、
図2に示す第2下ローラ31及び第2上ローラ32についても同様である。
なお、減水機構20は、下ローラ22と上ローラ23とが主たる構成要素である機構であればよく、その構成は
図3及び
図4に限定されるものではない。
【0042】
また、
図2において、第1下ローラ28と第1上ローラ29と第2下ローラ31と第2上ローラ32の全てを駆動ローラとする他、第1下ローラ28と第2下ローラ31を駆動ローラとし、第1上ローラ29と第2上ローラ32をフリーローラとすることは差し支えない。この場合は、減水機構20の構造が簡単になると共に回転制御が簡単になる。
【0043】
加えて、第1下ローラ28の回転速度に対して第2下ローラ31の回転速度を若干高めて、軟質ウレタンフォーム21を動線11に沿って引っ張るようにしてもい。軟質ウレタンフォーム21に弛みが発生したときには、この弛みが是正される。
【0044】
第1下ローラ28と第1上ローラ29の上流側に軟質ウレタンフォーム21を導入する機構(又は送り込み機構)があるときには、第1下ローラ28もフリーローラにすることができる。
すなわち、第2下ローラ31のみを駆動ローラとし、第1下ローラ28と第1上ローラ29と第2上ローラ32をフリーローラとしてもよい。この場合は、減水機構20の構造がさらに簡単になると共に回転制御がさらに簡単になる。
【0045】
[減水機構の作用]
図2を用いて、減水機構20の作用を説明する。
軟質ウレタンフォーム21は、乾いているものの他、雨により濡れて中心まで水が浸み込んでいるものがある。ここでは、雨により濡れているものを想定する。
動線11に沿って、軟質ウレタンフォーム21が斜め上へ移動する。濡れた軟質ウレタンフォーム21は、第1下ローラ28と第1上ローラ29で圧縮され、水が絞り出される。結果、軟質ウレタンフォーム21に含まれる水の量が低減される(第1次減水処理)。水滴24は、水受けパン25へ落下する。
【0046】
第1次減水処理された軟質ウレタンフォーム21は、更に第2下ローラ31と第2上ローラ32で圧縮され、水が絞り出される。結果、軟質ウレタンフォーム21に含まれる水の量がさらに低減される(第2次減水処理)。水滴24は、水受けパン25へ落下する。
第1次減水処理及び第2次減水処理により、軟質ウレタンフォーム21は必要な減水処理がなされた。
【0047】
なお、第1下ローラ28と第1上ローラ29との間隔(ローラギャップ)Gは、第2下ローラ31と第2上ローラ33との間隔G2と同じ又は間隔G2より大きく設定する。
【0048】
間隔Gが大きければ、減水性能は低下するが、軟質ウレタンフォーム21を容易に導入することができる。すなわち、軟質ウレタンフォーム21の導入性能が高まる。
間隔G2は小さくする。間隔G2が小さいほど、減水性能が高まる。
導入性能と減水性能の両方を発揮させることができるため、間隔Gは間隔G2より大きく設定することが望ましい。
【0049】
ただし、軟質ウレタンフォーム21は容易に弾性変形するため、導入性能に重きを置く必要が無ければ、間隔Gを間隔G2と同様に小さくして、減水性能を高めてもよい。
【0050】
ところで、濡れた軟質ウレタンフォーム21を乾かす手法は、屋内に置いて自然乾燥させることや、乾燥炉にて強制乾燥させることが、通常行われている。
屋内での自然乾燥は、時間が掛かるため、生産時間が延びて生産性が低下する。加えて、倉庫などが必要である。廃棄物の一種である軟質ウレタンフォーム21に費用を掛けることは好ましくない。
【0051】
また、乾燥炉による強制乾燥は、生産性を高めることができるが、乾燥炉を準備する必要がある。加えて、乾燥炉に供給する熱エネルギー(電気、ガス、石油など)が必要となり、設備コスト及び運転コストが嵩む。廃棄物の一種である軟質ウレタンフォーム21に費用を掛けることは好ましくない。
【0052】
この点、本発明の減水機構20であれば、
図2に示したように、ごく簡単な機構であり、乾燥炉に比べて設備コスト及び運転コストが嵩まないという利点がある。加えて、自然乾燥のような時間的ロスがないため、本発明の減水機構20により、高い生産性を維持することができる。
【0053】
[ガイド機構]
図1に示すように、ガイド機構50は、下ガイドローラ51と、この下ガイドローラ51を回す下駆動モータ52と、上ガイドローラ53と、この上ガイドローラ53を回す上駆動モータ54とを主たる構成要素とする機構である。
下ガイドローラ51の回転速度より上ガイドローラ53の回転速度を高めると、速度差に応じて軟質ウレタンフォーム(
図2、符号21)は、動線11に沿って湾曲化し、先端が下向きとなり、ホッパー67へ好ましく投入される。
【0054】
なお、下ガイドローラ51及び上ガイドローラ53は、各1本ずつである他、各複数本であってもよい。
また、本実施例では、減水機構20は、上り勾配に配置したが、水平に配置することや、下り勾配に配置するは差し支えない。下り勾配に配置することで、ガイド機構50を省くことができる。
【0055】
また、減水機構20の向きに関係なく、軟質ウレタンフォーム21の動線11に沿った長さが短いときには、減水機構20の出口から軟質ウレタンフォーム21が容易に自由落下するため、ガイド機構50は省くことができる。
よって、軟質ウレタンの微粉末製造設備10にガイド機構50を配置するか否かは任意である。
【0056】
[二軸破砕機]
次に、二軸破砕機60の構成及び作用を説明する。
図5は二軸破砕機60の平面図である。
図5に示すように、二軸破砕機60は、例えば、互いに平行に配置した2本の破砕スクリュー70、75と、これらの破砕スクリュー70、75を回転自在に収納する主ケース61と、一方の破砕スクリュー70の基部に取り付けられた第1ギヤ62と、第1ギヤ62を回しつつ一方の破砕スクリュー70を回す減速機63付き電動機64と、第1ギヤ62に噛み合いつつ他方の破砕スクリュー75の基部に取り付けられた第2ギヤ65と、からなる。
【0057】
第1ギヤ62と第2ギヤ65は同径であり、ギヤケース66に収納される。
一方の破砕スクリュー70は、主軸71と、この主軸71に固定され主軸71の基部から先端に向かって連続的にピッチが小さくなるノーマル羽72と、このノーマル羽72のリード角θ1が正の場合にリード角θ2が負となるようなカウンター羽73と、からなる。
カウンター羽73は、ノーマル羽72の先端に連続すると共に主軸71に固定される。
【0058】
他方の破砕スクリュー75は、一方の破砕スクリュー70と同様な構造であるため、符号を流用し、詳細な説明は省略する。
主ケース61は、基部にホッパー67を有し、先端に排出口68を有する。
【0059】
電動機64で、一方の破砕スクリュー70を所定方向に回すと、第1ギヤ62及び第2ギヤ65を介して他方の破砕スクリュー75は逆方向に回る。
【0060】
[二軸破砕機の作用]
以上に述べた二軸破砕機60の作用を、
図6に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、所定の減水処理がなされた後の軟質ウレタンフォーム21を、ホッパー67から主ケース61内へ投入する。
【0061】
図6(a)にて、軟質ウレタンフォーム21は、ノーマル羽72で砕かれると共にノーマル羽72と主ケース61内面とで圧壊され中径破砕片77となる。
また、ノーマル羽72は連続的にピッチが小さくなっているため、中径破砕片77同士が圧縮され、圧壊される。結果、先端では小径破砕片78が得られる。
この小径破砕片78は、先端のノーマル羽72により前進し、このノーマル羽72に続くカウンター羽73で押し戻される。
【0062】
図6(b)は、
図6(a)のb部拡大図であり、矢印(1)のように前進し、矢印(2)のように戻されると、小径破砕片78は、滞留し、見かけ上、矢印(3)、(4)のように摺り合わされる。結果、小径破砕片78は、局部的に欠け、この欠けが更に摺り合わされ、結果として軟質ウレタンの微粉末79が得られる。
【0063】
[鳥の足形状の微粉末]
得られた軟質ウレタンの微粉末79を顕微鏡で拡大しつつ観察した。
図7(a)に示すように、ある軟質ウレタンの微粉末79は、鳥の足形状を呈し、その大きさは縦が約1.0mmで横が約0.7mmであった。
図7(b)に示すように、別の軟質ウレタンの微粉末79も鳥の足形状を呈し、その大きさは縦が約0.3mmで横が約0.3mmであった。
【0064】
図7(a)、(b)に示す軟質ウレタンの微粉末79は、セルが喪失していた。断熱性能を有するセルが喪失しているため、軟質ウレタンの微粉末79は熱伝導性が良い。
また、セルが喪失しているため、周囲のガスや液体によく接触し、軟質ウレタンの微粉末79は反応性が高く、濡れ性が良い。そのため、本発明による軟質ウレタンの微粉末79は、多くの用途での活用が可能となる。
【0065】
ところで、
図6(b)で説明したように、小径破砕片78同士を摺り合わせると、不可避的に静電気を帯びる。この静電気は小径破砕片78が乾燥しているほど静電気を帯び易くなる。
この静電気は粉塵爆発のような爆発の要因となる。そのために、静電気の除去、すなわち除電処置が望まれる。
【0066】
[除電機構]
図1に示すように、二軸破砕機60の下流側に、シュータ81を配置する。シュータ81は高低差を利用して軟質ウレタンの微粉末を滑落させる滑り台状の部材である。排出口68から排出される軟質ウレタンの微粉末は、シュータ81でバケット82へ導かれる。
シュータ81に除電機構80を付設する。シュータ81にアース線83を付設する。なお、好ましくは、二軸破砕機60及びバケット82を鉄鋼製とし、これらにアース線83を付設する。
【0067】
図8に示すように、除電機構80は、鉄鋼製のシュータ81と、このシュータ81から延ばしたアース線83とからなる。軟質ウレタンの微粉末79が帯電しているときは、帯電した静電気が鉄鋼製のシュータ81及びアース線83とを通じて地面に逃される。結果、除電処理がなされ、爆発が抑制される。
【0068】
また、
図9に示すように、除電機構80は、シュータ81上の軟質ウレタンの微粉末79へ霧(水の微細粒)を吹きかける噴霧ノズル84であってもよい。湿らせることで静電気の発生を抑制することができる。
【0069】
または、
図1に示すように、除電機構80は、イオナイザー85であってもよい。イオナイザー85は、静電気と逆極のイオンを発生して、シュータ81上の軟質ウレタンの微粉末79へ照射する。逆極のイオンにより除電される。
【0070】
除電機構80は、アース線83と噴霧ノズル84とイオナイザー85の何れか一つ又は2つ以上を複合することで、静電気を除去すればよく、選択または組合せは任意である。
【0071】
以上で軟質ウレタンフォームの処理を説明した。次に、硬質ウレタンフォームについて説明する。
硬質ウレタンフォームは雨に濡れた場合、雨は内部に滲み込まないが、外表面は濡れる。濡れがひどい場合には、
図10で説明したように、硬質ウレタンフォームが一対の破砕スクリュー103、104に載るという不具合は、頻度は僅かであるが、発生し得る。濡れた硬質ウレタンフォームを
図2に示す減水機構20に通すと、外表面の水の膜厚が減らされる。この処理により不具合の発生率を下げることができる。
【0072】
よって、本発明の軟質ウレタンの微粉末製造設備10に、硬質ウレタンフォームを投入することは、差し支えない。
結果、軟質ウレタンフォームに硬質ウレタンフォームを加えた(又は混在した)ウレタンフォーム廃材が、本発明の軟質ウレタンの微粉末製造設備10で一括して処理可能となる。軟質ウレタンフォームと硬質ウレタンフォームを分別する手間が省けるという利点がある。
【0073】
尚、ウレタンフォームは降雨で濡れる他、汚れたウレタンフォームを洗浄するときの洗浄水で濡れる。よって、濡れの要因は雨に限定されない。
10…軟質ウレタンの微粉末製造設備、20…減水機構、21…板状の軟質ウレタンフォーム(軟質ウレタンフォーム)、22…下ローラ、23…上ローラ、28…第1下ローラ、29…第1上ローラ、31…第2下ローラ、32…第2上ローラ、50…ガイド機構、60…二軸破砕機、70…一方の破砕スクリュー、72…ノーマル羽根、73…カウンター羽根、75…他方の破砕スクリュー、79…軟質ウレタンの微粉末(微粉末、鳥の足形状を呈している微粉末)、80…除電機構、81…シュータ、83…アース線。