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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076403
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】真空蒸着成膜システム
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20240530BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C23C14/24 Z
C23C14/56 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187869
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】502228247
【氏名又は名称】株式会社アールデック
(71)【出願人】
【識別番号】507228312
【氏名又は名称】株式会社 エイブイシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友章
(72)【発明者】
【氏名】川村 政美
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA01
4K029DA03
4K029EA00
4K029JA02
4K029KA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】成膜制御アプリケーションを動作させるOSがバージョンアップ中であっても、成膜運転を停止することなく、継続的に成膜運転を行うことができる真空蒸着成膜システムを提供する。
【解決手段】真空蒸着成膜システム10では、周期的にバージョンアップが必要なOSによって動作する成膜制御アプリケーションと組み込み型OSによって動作して各種複数のハードウェアをコントロールするPLCを動作させるPLC操作アプリケーションとを備え、真空蒸着成膜システム10が稼働中に、成膜制御アプリケーションを動作させるOSのバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、真空蒸着成膜システム10において稼働するそれらハードウェアをPLCが操作することで、真空蒸着成膜システム10における継続的な成膜運転が可能であり、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着チャンバーと、前記蒸着チャンバーの内部に配置されて蒸着材料を収容する第1~第n坩堝と、前記蒸着チャンバーの内部を所定の真空度に真空引きする第1真空ポンプと、前記蒸着材料に電子ビームを照射する電子銃とを備え、前記第1真空ポンプによって所定の真空度に真空引きされた真空雰囲気の蒸着チャンバーにおいて前記坩堝に収容された蒸着材料に前記電子銃から電子ビームを照射して該蒸着材料を蒸発させ、前記蒸発させた蒸着材料を前記蒸着チャンバーに配置された基板に蒸着させてそれら蒸着材料からなる第1~第n層の膜を前記基板に成膜する真空蒸着成膜システムにおいて、
前記真空蒸着成膜システムが、各種複数の成膜条件によって前記基板に成膜される第1~第n層の膜の膜厚をコントロールする膜厚コントローラと、前記真空蒸着成膜システムにおいて稼働する各種複数のハードウェアをコントロールするPLC(programmable logic controller)と、前記基板に成膜する第1~第n層の膜の各種複数の成膜条件を前記膜厚コントローラに送信するサーバとから形成され、前記サーバが、APIに欠点があって周期的にバージョンアップが必要なOSによって動作して前記基板に成膜する第1~第n層の膜の各種複数の成膜条件を設定する成膜制御アプリケーションと、組み込み型OSによって動作して前記真空蒸着成膜システムにおいて稼働する各種複数のハードウェアをコントロールする前記PLCを動作させるPLC操作アプリケーションとを備え、
前記真空蒸着成膜システムでは、前記成膜制御アプリケーションによって設定した成膜条件で該真空蒸着成膜システムが稼働中に、前記成膜制御アプリケーションを動作させるOSのバージョンアップによって該成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、前記真空蒸着成膜システムにおいて稼働するそれらハードウェアを前記PLC操作アプリケーションによって動作するPLCがコントロールすることで、前記真空蒸着成膜システムにおける継続的な成膜運転が可能であり、前記成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避可能であることを特徴とする真空蒸着成膜システム。
【請求項2】
前記サーバの成膜制御アプリケーションが、各種の成膜条件を記憶するとともに、それら成膜条件に基づいて設定した前記第1~第n層の膜の成膜における前記電子ビームのパワーアップ時間、前記電子ビームのパワー維持時間、前記電子ビームのパワーダウン時間からなる第1~第n運転ステップを記憶し、前記第1層の膜の第1運転ステップを前記膜厚コントローラに送信し、前記第1運転ステップに基づいた該第1層の膜の成膜が完了した後、前記第2層の膜の第2運転ステップを前記膜厚コントローラに送信し、前記第2運転ステップに基づいた該第2層の膜の成膜が完了した後、前記第3層の膜の第3運転ステップを前記膜厚コントローラに送信するように、1層毎の膜の成膜が完了する度毎に次層の膜の運転ステップを前記膜厚コントローラに送信し、前記膜厚コントローラが、前記サーバの成膜制御アプリケーションから送信された第1~第n運転ステップに従って前記基板に第1~第n層の膜を成膜する請求項1に記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項3】
前記第1~第n坩堝が、サーボモータの回転によって前記蒸着チャンバーの内部における指定座標に順次移動し、前記サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、前記サーボモータの回転軸の座標からそれら第1~第n坩堝の現在位置を割り出すとともに、前記サーボモータを回転させてそれら第1~第n坩堝のうちの指定された坩堝を前記指定座標に配置する請求項1又は請求項2に記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項4】
前記真空蒸着成膜システムが、前記蒸着材料を前記蒸着チャンバーに搬送する搬送機構を備えて所定の真空度に真空引きされる搬送チャンバーと、前記搬送チャンバーの内部を所定の真空度に真空引きする第2真空ポンプとを含み、前記サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、前記第1真空ポンプの発停及び前記第2真空ポンプの発停を操作する請求項1ないし請求項3いずれかに記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項5】
前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへ基板の搬送が可能となる前記蒸着チャンバー及び前記搬送チャンバーの真空度の第1閾値を設定し、前記サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、前記蒸着チャンバー及び前記搬送チャンバーの真空度が前記第1閾値に達したときに、前記搬送チャンバーの搬送機構によって前記基板を前記蒸着チャンバーへ搬送する請求項4に記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項6】
前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記蒸着チャンバーにおいて蒸着を開始可能な該蒸着チャンバーの真空度の第2閾値を設定し、前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記蒸着チャンバーの真空度が前記第2閾値に達したときに、前記蒸着チャンバーにおける蒸着材料の基板への蒸着を開始する蒸着開始信号を前記膜厚コントローラ及び前記PLC操作アプリケーションによって動作するPLCに送信する請求項4又は請求項5に記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項7】
前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記電子銃から電子ビームの照射が可能な前記蒸着チャンバーの真空度の第3閾値を設定し、前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記蒸着チャンバーの真空度が前記第3閾値に達したときに、前記電子銃から前記坩堝に向かって電子ビームを照射させる電子ビーム照射信号を前記膜厚コントローラ及び前記PLC操作アプリケーションによって動作するPLCに送信する請求項4ないし請求項6いずれかに記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項8】
前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記搬送チャンバーの搬送機構による該搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへの基板の各搬送条件を設定し、前記サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、各搬送条件に従って前記基板を前記搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへ搬送する請求項4ないし請求項7いずれかに記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項9】
前記搬送機構が、前記基板を保持するサンプルホルダーを含み、前記基板の搬送条件が、前記サンプルホルダーにおける基板の有無であり、前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記サンプルホルダーに基板が配置されている場合、前記搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、前記サンプルホルダーに基板が配置されていない場合、前記搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を不可とし、前記PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、前記搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を操作する請求項8に記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項10】
前記搬送機構が、前記サンプルホルダーを前記搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへ移動させるエアシリンダーを含み、前記基板の搬送条件が、前記エアシリンダーのアームの前記搬送チャンバー又は前記蒸着チャンバーにおける位置であり、前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記エアシリンダーのアームが前記搬送チャンバーの搬送開始位置に存在する場合、前記搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、前記エアシリンダーのアームが前記蒸着チャンバーの搬送完了位置に存在する場合、前記蒸着チャンバーから前記搬送チャンバーへのサンプルホルダーの帰還を可とし、前記PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、前記サンプルホルダーの搬送を操作するとともに、該サンプルホルダーの帰還を操作する請求項9に記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項11】
前記真空蒸着成膜システムが、前記蒸着チャンバーと前記搬送チャンバーとを連通させる搬送ゲートバルブを含み、前記基板の搬送条件が、前記搬送ゲートバルブの開閉であり、前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記搬送ゲートバルブが全開である場合、前記搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、前記PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、前記搬送チャンバーから前記蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を操作する請求項10に記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項12】
前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記蒸着チャンバーにおける各蒸着開始条件を設定し、前記蒸着チャンバーが、該蒸着チャンバーの上部に設置されて前記サンプルホルダーを冷却するサンプルステージと、前記サンプルホルダーを前記搬送チャンバーから引き取って該サンプルホルダーを前記サンプルステージに固定するチャック機構とを含み、前記蒸着開始条件が、前記チャック機構の位置及び前記サンプルステージにおける前記サンプルホルダーの有無であり、前記PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、前記チャック機構を操作し、前記サーバのPLC操作アプリケーションが、前記チャック機構がサンプルステージの近傍に上昇し、前記サンプルホルダーが前記サンプルステージに固定されている場合、蒸着を可とする請求項11に記載の真空蒸着成膜システム。
【請求項13】
前記蒸着開始条件が、前記搬送ゲートバルブのゲートの開閉であり、前記サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、前記搬送ゲートバルブのゲートの開閉を操作し、前記サーバのPLC操作アプリケーションPLCが、前記搬送ゲートバルブのゲートが全閉である場合、蒸着を可とする請求項12に記載の真空蒸着成膜システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発させた蒸着材料を蒸着チャンバーに配置された基板に蒸着させてそれら蒸着材料からなる第1~第n層の膜を基板に成膜する真空蒸着成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被成膜基板が設置される真空チャンバー内に複数の蒸着源が設けられ、蒸着源と被成膜基板との間に配置されて、昇華又は気化した蒸着物質の被成膜基板への付着領域を被成膜基板面内の一部に制限する開口を持つエリアマスクと、真空チャンバー内でエリアマスクと被成膜基板とを相対移動させて被成膜基板面内における付着領域を変更する変更手段とを備え、変更手段がエリアマスクを支持する固定枠とエリアマスクの上方に設置されて被成膜基板を支持する可動枠とを備え、可動枠を上下動する第1駆動部とその可動枠をエリアマスクの中心を通る上下方向の軸線回りに回転駆動する第2駆動部とが設けられ、各蒸着源から蒸着物質を夫々昇華または気化させて被成膜基板表面に多層膜を成膜する真空蒸着成膜システムが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-147774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の真空蒸着成膜システムでは、基板の蒸着チャンバーへの搬送や真空ポンプの発停、電子銃の発停等のシステムによる成膜運転がサーバ(コンピュータ)にインストールされた制御アプリケーションよってコントロールされている。サーバ(コンピュータ)にインストールされた制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)がAPIに欠点があって周期的にバージョンアップが必要なOS(例えば、WindowsやMacOS、Linux(登録商標))である場合、そのOSのバージョンアップによって制御アプリケーションの動作が制限され、制御アプリケーションの使用が不能になる場合があり、真空蒸着成膜システムの成膜運転を停止しなければならないリスクがある。
【0005】
本発明の目的は、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)がバージョンアップ中であっても、成膜運転を停止することなく、継続的に成膜運転を行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる真空蒸着成膜システムを提供することにある。本発明の他の目的は、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップ中であっても、成膜運転を行う各種複数のハードウェアを停止することなく、それらハードウェアをコントロール(操作)することができ、それらハードウェアを操作して成膜運転を継続的に行うことができる真空蒸着成膜システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、蒸着チャンバーと、蒸着チャンバーの内部に配置されて蒸着材料を収容する第1~第n坩堝と、蒸着チャンバーの内部を所定の真空度に真空引きする第1真空ポンプと、蒸着材料に電子ビームを照射する電子銃とを備え、第1真空ポンプによって所定の真空度に真空引きされた真空雰囲気の蒸着チャンバーにおいて坩堝に収容された蒸着材料に電子銃から電子ビームを照射して蒸着材料を蒸発させ、蒸発させた蒸着材料を蒸着チャンバーに配置された基板に蒸着させてそれら蒸着材料からなる第1~第n層の膜を基板に成膜する真空蒸着成膜システムである。
【0007】
前記前提における本発明の特徴は、真空蒸着成膜システムが、各種複数の成膜条件によって基板に成膜される第1~第n層の膜の膜厚をコントロールする膜厚コントローラと、真空蒸着成膜システムにおいて稼働する各種複数のハードウェアをコントロールするPLC(programmable logic controller)と、基板に成膜する第1~第n層の膜の各種複数の成膜条件を膜厚コントローラに送信するサーバとから形成され、サーバが、APIに欠点があって周期的にバージョンアップが必要なOSによって動作して基板に成膜する第1~第n層の膜の各種複数の成膜条件を設定する成膜制御アプリケーションと、組み込み型OSによって動作して真空蒸着成膜システムにおいて稼働する各種複数のハードウェアをコントロールするPLCを動作させるPLC操作アプリケーションとを備え、真空蒸着成膜システムでは、成膜制御アプリケーションによって設定した成膜条件で真空蒸着成膜システムが稼働中に、成膜制御アプリケーションを動作させるOSのバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、真空蒸着成膜システムにおいて稼働するそれらハードウェアをPLC操作アプリケーションによって動作するPLCがコントロールすることで、真空蒸着成膜システムにおける継続的な成膜運転が可能であり、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避可能であることにある。
【0008】
本発明の一例としては、サーバの成膜制御アプリケーションが、各種の成膜条件を記憶するとともに、それら成膜条件に基づいて設定した第1~第n層の膜の成膜における電子ビームのパワーアップ時間、電子ビームのパワー維持時間、電子ビームのパワーダウン時間からなる第1~第n運転ステップを記憶し、第1層の膜の第1運転ステップを膜厚コントローラに送信し、第1運転ステップに基づいた第1層の膜の成膜が完了した後、第2層の膜の第2運転ステップを膜厚コントローラに送信し、第2運転ステップに基づいた第2層の膜の成膜が完了した後、第3層の膜の第3運転ステップを膜厚コントローラに送信するように、1層毎の膜の成膜が完了する度毎に次層の膜の運転ステップを膜厚コントローラに送信し、膜厚コントローラが、サーバの成膜制御アプリケーションから送信された第1~第n運転ステップに従って基板に第1~第n層の膜を成膜する。
【0009】
本発明の他の一例としては、第1~第n坩堝が、サーボモータの回転によって蒸着チャンバーの内部における指定座標に順次移動し、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、サーボモータの回転軸の座標からそれら第1~第n坩堝の現在位置を割り出すとともに、サーボモータを回転させてそれら第1~第n坩堝のうちの指定された坩堝を指定座標に配置する。
【0010】
本発明の他の一例としては、真空蒸着成膜システムが、蒸着材料を蒸着チャンバーに搬送する搬送機構を備えて所定の真空度に真空引きされる搬送チャンバーと、搬送チャンバーの内部を所定の真空度に真空引きする第2真空ポンプとを含み、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、第1真空ポンプの発停及び第2真空ポンプの発停を操作する。
【0011】
本発明の他の一例としては、サーバのPLC操作アプリケーションが、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへ基板の搬送が可能となる蒸着チャンバー及び搬送チャンバーの真空度の第1閾値を設定し、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、蒸着チャンバー及び搬送チャンバーの真空度が第1閾値に達したときに、搬送チャンバーの搬送機構によって基板を蒸着チャンバーへ搬送する。
【0012】
本発明の他の一例としては、サーバのPLC操作アプリケーションが、蒸着チャンバーにおいて蒸着を開始可能な蒸着チャンバーの真空度の第2閾値を設定し、サーバのPLC操作アプリケーションが、蒸着チャンバーの真空度が第2閾値に達したときに、蒸着チャンバーにおける蒸着材料の基板への蒸着を開始する蒸着開始信号を膜厚コントローラ及びPLC操作アプリケーションによって動作するPLCに送信する。
【0013】
本発明の他の一例としては、サーバのPLC操作アプリケーションが、電子銃から電子ビームの照射が可能な蒸着チャンバーの真空度の第3閾値を設定し、サーバのPLC操作アプリケーションが、蒸着チャンバーの真空度が第3閾値に達したときに、電子銃から坩堝に向かって電子ビームを照射させる電子ビーム照射信号を膜厚コントローラ及びPLC操作アプリケーションによって動作するPLCに送信する。
【0014】
本発明の他の一例としては、サーバのPLC操作アプリケーションが、搬送チャンバーの搬送機構による搬送チャンバーから蒸着チャンバーへの基板の各搬送条件を設定し、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、各搬送条件に従って基板を搬送チャンバーから蒸着チャンバーへ搬送する。
【0015】
本発明の他の一例としては、搬送機構が、基板を保持するサンプルホルダーを含み、基板の搬送条件が、サンプルホルダーにおける基板の有無であり、サーバのPLC操作アプリケーションが、サンプルホルダーに基板が配置されている場合、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、サンプルホルダーに基板が配置されていない場合、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を不可とし、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を操作する。
【0016】
本発明の他の一例としては、搬送機構が、サンプルホルダーを搬送チャンバーから蒸着チャンバーへ移動させるエアシリンダーを含み、基板の搬送条件が、エアシリンダーのアームの搬送チャンバー又は蒸着チャンバーにおける位置であり、サーバのPLC操作アプリケーションが、エアシリンダーのアームが搬送チャンバーの搬送開始位置に存在する場合、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、エアシリンダーのアームが蒸着チャンバーの搬送完了位置に存在する場合、蒸着チャンバーから搬送チャンバーへのサンプルホルダーの帰還を可とし、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、サンプルホルダーの搬送を操作するとともに、サンプルホルダーの帰還を操作する。
【0017】
本発明の他の一例としては、真空蒸着成膜システムが、蒸着チャンバーと搬送チャンバーとを連通させる搬送ゲートバルブを含み、基板の搬送条件が、搬送ゲートバルブの開閉であり、サーバのPLC操作アプリケーションが、搬送ゲートバルブが全開である場合、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を操作する。
【0018】
本発明の他の一例としては、サーバのPLC操作アプリケーションが、蒸着チャンバーにおける各蒸着開始条件を設定し、蒸着チャンバーが、蒸着チャンバーの上部に設置されてサンプルホルダーを冷却するサンプルステージと、サンプルホルダーを搬送チャンバーから引き取ってサンプルホルダーをサンプルステージに固定するチャック機構とを含み、蒸着開始条件が、チャック機構の位置及びサンプルステージにおけるサンプルホルダーの有無であり、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、チャック機構を操作し、サーバのPLC操作アプリケーションが、チャック機構がサンプルステージの近傍に上昇し、サンプルホルダーがサンプルステージに固定されている場合、蒸着を可とする。
【0019】
本発明の他の一例としては、蒸着開始条件が、搬送ゲートバルブのゲートの開閉であり、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが、搬送ゲートバルブのゲートの開閉を操作し、サーバのPLC操作アプリケーションPLCが、搬送ゲートバルブのゲートが全閉である場合、蒸着を可とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る真空蒸着成膜システムによれば、成膜制御アプリケーションによって設定した成膜条件で真空蒸着成膜システムが稼働中に、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、真空蒸着成膜システムにおいて稼働するそれらハードウェアをPLC操作アプリケーションによって動作するPLCがコントロールするから、成膜運転を停止することなく、真空蒸着成膜システムにおいて成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。真空蒸着成膜システムは、成膜制御アプリケーションを動作させるOSのバージョンアップ中であっても、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCによって成膜運転を行う各ハードウェアをコントロールすることができ、成膜運転を行うそれらハードウェアを停止することなく、それらハードウェアを操作して成膜運転を継続的に行うことができる。
【0021】
成膜制御アプリケーションが、各種の成膜条件を記憶するとともに、それら成膜条件に基づいて設定した第1~第n層の膜の成膜における電子ビームのパワーアップ時間、電子ビームのパワー維持時間、電子ビームのパワーダウン時間からなる第1~第n運転ステップを記憶し、1層毎の膜の成膜が完了する度毎に次層の膜の運転ステップを膜厚コントローラに送信し、膜厚コントローラが、サーバの成膜制御アプリケーションから送信された第1~第n運転ステップに従って基板に第1~第n層の膜を成膜する真空蒸着成膜システムは、第1層の膜の第1運転ステップを膜厚コントローラに送信し、第1運転ステップに基づいた第1層の膜の成膜が完了した後、第2層の膜の第2運転ステップを膜厚コントローラに送信し、第2運転ステップに基づいた第2層の膜の成膜が完了した後、第3層の膜の第3運転ステップを膜厚コントローラに送信するように、1層毎の膜の成膜が完了する度毎に次層の膜の運転ステップを膜厚コントローラに送信することで、蒸着材料からなる第1~第n層の膜を基板に確実に成膜することができる。
【0022】
第1~第n坩堝がサーボモータの回転によって蒸着チャンバーの内部における指定座標に順次移動し、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCがサーボモータの回転軸の座標からそれら第1~第n坩堝の現在位置を割り出すとともに、サーボモータを回転させてそれら第1~第n坩堝のうちの指定された坩堝を指定座標に配置する真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCがサーボモータ(ハードウェア)をコントロールし、PLCによって第1~第n坩堝のうちの指定された坩堝が指定座標に配置されるから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、真空蒸着成膜システムにおいて成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。真空蒸着成膜システムは、成膜制御アプリケーションを動作させるOSのバージョンアップ中であっても、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCによって成膜運転に使用するサーボモータ(ハードウェア)をコントロールすることができ、成膜運転に使用するサーボモータを停止することなく、サーボモータを操作して成膜運転を継続的に行うことができる。
【0023】
蒸着材料を蒸着チャンバーに搬送する搬送機構を備えて所定の真空度に真空引きされる搬送チャンバーと、搬送チャンバーの内部を所定の真空度に真空引きする第2真空ポンプとを含み、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが第1真空ポンプの発停及び第2真空ポンプの発停を操作する真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが第1及び第2真空ポンプ(ハードウェア)をコントロールし、PLCによって第1及び第2真空ポンプの発停(ON/OFF)が行われるから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、真空蒸着成膜システムにおいて成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。真空蒸着成膜システムは、成膜制御アプリケーションを動作させるOSのバージョンアップ中であっても、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCによって成膜運転に使用する第1及び第2真空ポンプ(ハードウェア)をコントロールすることができ、成膜運転に使用する第1及び第2真空ポンプを停止することなく、第1及び第2真空ポンプを操作して成膜運転を継続的に行うことができる。
【0024】
サーバのPLC操作アプリケーションが搬送チャンバーから蒸着チャンバーへ基板の搬送が可能となる蒸着チャンバー及び搬送チャンバーの真空度の第1閾値を設定し、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが蒸着チャンバー及び搬送チャンバーの真空度が第1閾値に達したときに、搬送チャンバーの搬送機構によって基板を蒸着チャンバーへ搬送する真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバー及び搬送チャンバーの真空度を管理し、蒸着チャンバー及び搬送チャンバーの真空度が第1閾値に達したときに、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが搬送チャンバーの搬送機構によって基板を蒸着チャンバーへ搬送するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、蒸着チャンバー、搬送チャンバー、搬送機構(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0025】
サーバのPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバーにおいて蒸着を開始可能な蒸着チャンバーの真空度の第2閾値を設定し、サーバのPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバーの真空度が第2閾値に達したときに、蒸着チャンバーにおける蒸着材料の基板への蒸着を開始する蒸着開始信号を膜厚コントローラ及びPLC操作アプリケーションによって動作するPLCに送信する真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバーの真空度を管理し、蒸着チャンバーの真空度が第2閾値に達したときに、蒸着チャンバーにおける蒸着材料の基板への蒸着を開始する蒸着開始信号を膜厚コントローラ及びPLCに送信するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、蒸着チャンバー(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0026】
サーバのPLC操作アプリケーションが電子銃から電子ビームの照射が可能な蒸着チャンバーの真空度の第3閾値を設定し、サーバのPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバーの真空度が第3閾値に達したときに、電子銃から坩堝に向かって電子ビームを照射させる電子ビーム照射信号を膜厚コントローラ及び操作アプリケーションによって動作するPLCに送信する真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバーの真空度を管理し、蒸着チャンバーの真空度が第3閾値に達したときに、電子銃から坩堝に向かって電子ビームを照射させる電子ビーム照射信号を膜厚コントローラ及びPLCに送信し、サーバの操作アプリケーションによって動作するPLCが電子銃から坩堝に向かって電子ビームを発射させるから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、電子銃(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0027】
サーバのPLC操作アプリケーションが搬送チャンバーの搬送機構による搬送チャンバーから蒸着チャンバーへの基板の各搬送条件を設定し、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが各搬送条件に従って基板を搬送チャンバーから蒸着チャンバーへ搬送する真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが搬送チャンバーの搬送機構を操作し、各搬送条件に従って基板を搬送チャンバーから蒸着チャンバーへ搬送するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、搬送チャンバーの搬送機構(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0028】
搬送機構が基板を保持するサンプルホルダーを含み、基板の搬送条件がサンプルホルダーにおける基板の有無であり、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCがサンプルホルダーに基板が配置されている場合、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、サンプルホルダーに基板が配置されていない場合、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を不可とし、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を操作する真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションがサンプルホルダーにおける基板の有無を判断し、サンプルホルダーにおける基板の有無によって搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送の可/不可を決定し、搬送の可の場合、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を操作するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、搬送機構のサンプルホルダー(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0029】
搬送機構がサンプルホルダーを搬送チャンバーから蒸着チャンバーへ移動させるエアシリンダーを含み、基板の搬送条件がエアシリンダーのアームの搬送チャンバー又は蒸着チャンバーにおける位置であり、サーバのPLC操作アプリケーションが、エアシリンダーのアームが搬送チャンバーの搬送開始位置に存在する場合、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、エアシリンダーのアームが蒸着チャンバーの搬送完了位置に存在する場合、蒸着チャンバーから搬送チャンバーへのサンプルホルダーの帰還を可とし、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCがサンプルホルダーの搬送を操作するとともにサンプルホルダーの帰還を操作する真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションがエアシリンダーのアームの搬送チャンバー又は蒸着チャンバーにおける位置を判断し、エアシリンダーのアームの位置によって搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送の可/不可や蒸着チャンバーから搬送チャンバーへのサンプルホルダーの帰還の可/不可を決定し、PLCがサンプルホルダーの搬送を操作するとともにサンプルホルダーの帰還を操作するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、搬送機構のエアシリンダー(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0030】
真空蒸着成膜システムが蒸着チャンバーと搬送チャンバーとを連通させる搬送ゲートバルブを含み、基板の搬送条件が搬送ゲートバルブの開閉であり、サーバのPLC操作アプリケーションが搬送ゲートバルブが全開である場合、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を操作する真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションが搬送ゲートバルブの開閉を管理し、PLC操作アプリケーションが搬送ゲートバルブが全開であると判断した場合、搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を可とし、PLCが搬送チャンバーから蒸着チャンバーへのサンプルホルダーの搬送を操作するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、搬送ゲートバルブ(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0031】
サーバのPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバーにおける各蒸着開始条件を設置し、蒸着チャンバーが蒸着チャンバーの上部に設置されてサンプルホルダーを冷却するサンプルステージと、サンプルホルダーを搬送チャンバーから引き取ってサンプルホルダーをサンプルステージに固定するチャック機構とを含み、蒸着開始条件がチャック機構の位置及びサンプルステージにおけるサンプルホルダーの有無であり、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCがチャック機構を操作し、サーバのPLC操作アプリケーションが、チャック機構がサンプルステージの近傍に上昇し、サンプルホルダーがサンプルステージに固定されている場合、蒸着を可とする真空蒸着成膜システムは、サーバのPLC操作アプリケーションがチャック機構の位置及びサンプルステージにおけるサンプルホルダーの有無を判断し、チャック機構がサンプルステージの近傍に上昇し、サンプルホルダーがサンプルステージに固定されている場合、蒸着を可とし、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCがチャック機構を操作するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、チャック機構(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0032】
蒸着開始条件が搬送ゲートバルブのゲートの開閉であり、サーバのPLC操作アプリケーションによって動作するPLCが搬送ゲートバルブのゲートの開閉を操作し、サーバのPLC操作アプリケーションPLCが搬送ゲートバルブのゲートが全閉である場合、蒸着を可とする真空蒸着成膜システムは、PLC操作アプリケーションによって動作するPLCが搬送ゲートバルブのゲートの開閉を操作し、サーバのPLC操作アプリケーションが搬送ゲートバルブのゲートが全閉であると判断した場合、蒸着を可とするから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、搬送ゲートバルブ(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一例として示す真空蒸着成膜システムの斜視図。
図2】真空蒸着成膜システムの各アプリケーション及びハードウェアの一例を示すブロック図。
図3】真空蒸着成膜システムの搬送機構の一例を示す斜視図。
図4】サンプルホルダーの一例を示す斜視図。
図5】蒸着チャンバーの収容スペースの一例を示す斜視図。
図6】坩堝の一例を示す斜視図。
図7】サンプルステージの一例を示す斜視図。
図8】チャック機構がサンプルホルダーを支持した状態のサンプルステージの斜視図。
図9】チャック機構によってサンプルホルダーがサンプルステージに固定された状態のサンプルステージの斜視図。
図10】真空蒸着成膜システムにおいて行われる蒸着運転の一例を示すラダー図。
図11】真空蒸着成膜システムにおいて行われる坩堝制御の一例を示す図。
図12】真空蒸着成膜システムにおいて行われる真空制御の一例を示す図。
図13】真空蒸着成膜システムにおいて行われる基板の搬送制御の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
一例として示す真空蒸着成膜システム10の斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる真空蒸着成膜システムの詳細を説明すると、以下のとおりである。尚、図2は、真空蒸着成膜システム10の各アプリケーション及びハードウェアの一例を示すブロック図であり、図3は、真空蒸着成膜システム10の搬送機構の一例を示す斜視図である。図4は、サンプルホルダー50の一例を示す斜視図であり、図5は、蒸着チャンバー15の収容スペース16の一例を示す斜視図である。図6は、坩堝17の一例を示す斜視図であり、図7は、サンプルステージ31の一例を示す斜視図である。図8は、チャック機構32がサンプルホルダー50を支持した状態のサンプルステージ31の斜視図であり、図9は、チャック機構32によってサンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定された状態のサンプルステージ31の斜視図である。
【0035】
真空蒸着成膜システム10は、有機物からなる蒸着材料(試料)(例えば、Al、Ti、Ni、Au、Pl,Cr等)に偏向型電子銃18から電子ビームを照射し、蒸着材料を蒸発させ、蒸発させた蒸着材料(蒸着材料の蒸気)を基板に蒸着させる。基板には、第1~第n層の膜が生成される。真空蒸着成膜システム10は、図2に示すように、サーバ11(PC)及び膜厚コントローラ12と、PLC13(programmable logic controller)及び電子銃制御電源14を備え、その蒸着運転がサーバ11及び膜厚コントローラ12によってコントロール(制御)され、各制御信号がPLC13から各装置ハードウェアに出力される。
【0036】
真空蒸着成膜システム10は、所定容積の収容スペース16(内部)を有する蒸着チャンバー15と、蒸着チャンバー15の収容スペース16(内部)に配置された6個の第1~第6坩堝17(第1~第n坩堝)と、第1真空ポンプ(図示せず)と、蒸着チャンバー15の収容スペース15(内部)に設置された偏向型電子銃18と、所定容積の搬送スペース20(内部)を有する搬送チャンバー19と、第2真空ポンプ(図示せず)とを備えている。蒸着チャンバー15及び搬送チャンバー19は、架台21に設置されている。架台21には、ディスプレイ22が設置されている。
【0037】
サーバ11及び膜厚コントローラ12並びPLC13には、架台21に設置されている。サーバ11及び膜厚コントローラ12は、中央処理部(CPU又はMPU)とメモリ(メインメモリ及びキャッシュメモリ)とを有する物理的なコンピュータであり、大容量記憶領域を実装している。サーバ11及び膜厚コントローラ12には、架台21に設置されたディスプレイ22がインターフェイス(無線又は有線)を介して接続されている。
【0038】
尚、サーバ11がインターネット上のクラウド(クラウドコンピューティング)に仮想(形成)された仮想サーバあってもよい。仮想サーバは、仮想CPU又は仮想MPU(中央処理部)と仮想メインメモリ及び仮想キャッシュメモリ(メモリ)とを有し、大容量記憶領域が仮想(形成)されている。クラウドとしては、Infrastructure as a Service(IaaS)、Platform as a Service(PaaS)、Software as a Service(SaaS)を利用することができる。
【0039】
膜厚コントローラ12は、各種複数の成膜条件によって基板に成膜される第1~第n層の膜の膜厚をコントロール(制御)する。膜厚コントローラ12のメインメモリには、基板に成膜する第1~第n層の膜の1層毎の膜の成膜における偏向型電子銃18の待機時間、偏向型電子銃18(電子ビーム)の出力上昇時間(パワーアップ時間)、偏向型電子銃18(電子ビーム)の上昇出力、偏向型電子銃18(電子ビーム)の出力維持時間(パワー維持時間)、偏向型電子銃18(電子ビーム)の出力下降時間(パワーダウン時間)、偏向型電子銃18(電子ビーム)の下降出力が所定の識別子に関連付けられた状態で記憶(格納)される。
【0040】
サーバ11のメインメモリ(仮想メインメモリ)には、図2に示すように、APIに欠点があって周期的にバージョンアップが必要なOS(オペレーティングシステム)によって動作する成膜制御アプリケーションがインストールされているとともに、組み込み型OS(オペレーティングシステム)によって動するPLC操作(制御)アプリケーションがインストールされている。成膜制御アプリケーションは、基板に成膜する第1~第n層の膜の各種複数の成膜条件を設定する。PLC操作アプリケーションは、真空蒸着成膜システム10において稼働する各種複数の装置ハードウェアを操作するPLC13に各種指令を出力する。
【0041】
サーバ11にインストールされた成膜制御アプリケーションは、各種の成膜条件を記憶するとともに、それら成膜条件に基づいて設定した第1~第n層の膜の1層毎の膜の成膜における偏向型電子銃18の待機時間、偏向型電子銃18(電子ビーム)の出力上昇時間(パワーアップ時間)、偏向型電子銃(電子ビーム)の上昇出力、偏向型電子銃(電子ビーム)の出力維持時間(パワー維持時間)、偏向型電子銃(電子ビーム)の出力下降時間(パワーダウン時間)、偏向型電子銃(電子ビーム)の下降出力を設定する。
【0042】
サーバ11の成膜制御アプリケーションは、基板に成膜する第1~第n層の膜の1層毎の膜の各種複数の成膜条件を膜厚コントローラ12に送信する。サーバ11にインストールされたPLC操作アプリケーションは、真空蒸着成膜システム10において稼働する後記する各種複数のハードウェアをPLC13を介してコントロール(操作)する。
【0043】
PLC13の中枢にはマイクロプロセッサが使用されており、PLC13はソフトウェアで動作する。PLC13は、リレー回路を原型とするステートマシンを動作モデルとする。PLC13の入力側は、リミットスイッチ、各種センサ、位置情報等を読み込む。PLC13の出力側は、モーター、エアシリンダー、リレー、ソレノイド等を駆動する。
【0044】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、搬送チャンバー20から蒸着チャンバー15へ基板の搬送が可能となる(後記するサンプルホルダー50の搬送チャンバー20から蒸着チャンバー15への搬送が可能となる)蒸着チャンバー15及び搬送チャンバー20の真空度の第1閾値を設定し、設定した第1閾値を所定の識別子に関連付けた状態で大容量記憶領域に記憶する。尚、第1閾値は、適宜変更可能である。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、蒸着チャンバー15及び搬送チャンバー20の真空度が第1閾値に達したと判断した場合、基板を搬送チャンバー20から蒸着チャンバー15へ搬送する搬送信号をPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13に送信する。
【0045】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、蒸着チャンバー15において蒸着を開始可能な蒸着チャンバー15の真空度の第2閾値(真空度)を設定し、設定した第2閾値を所定の識別子に関連付けた状態で大容量記憶領域に記憶する。尚、第2閾値は、適宜変更可能である。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、蒸着チャンバー15の真空度が第2閾値に達したと判断した場合、蒸着チャンバー15における蒸着材料の基板への蒸着を開始する蒸着開始信号を膜厚コントローラ12及びPLC13に送信する。
【0046】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、偏向型電子銃18から電子ビームの照射が可能な蒸着チャンバー15の真空度の第3閾値(真空度)を設定し、設定した第3閾値を所定の識別子に関連付けた状態で大容量記憶領域に記憶する。尚、第3閾値は、適宜変更可能である。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、蒸着チャンバー15の真空度が第3閾値に達したと判断した場合、偏向型電子銃18から坩堝17に向かって電子ビームを照射させる電子ビーム照射信号を膜厚コントローラ12及びPLCに送信する。
【0047】
蒸着チャンバー15は、ステンレス(SUS304)から作られ、正面壁23(正面ハッチ)及び背面壁24と、頂面壁25及び底面壁26と、両側面壁27,28とを有する六面体であり、上下方向へ長い角柱状に成型されている。蒸着チャンバー15のそれら壁23~28には、電解研磨及び450℃@10h高真空脱ガス処理が施されている。蒸着チャンバー15には、それら壁23~28に囲繞された収容スペース16が形成されている。
【0048】
正面壁23(正面ハッチ)は、蝶番を介して側壁27に開閉可能に連結されている。蒸着チャンバー15では、側壁27を中心として正面壁23を幅方向外方へ旋回させて正面壁23を開けることで、収容スペース16が開放され、側壁27を中心として正面壁23を幅方向内方へ旋回させて正面壁23を閉めることで、収容スペース16が気密に閉鎖される。正面壁23の上部中央には、観察窓29が設置されている。観察窓29から蒸着チャンバー15の収容スペース16を視認(観察)することができる。
【0049】
真空蒸着成膜システム10の使用時には、蒸着チャンバー15の収容スペース16が所定の真空度(所定の真空圧)に保持される。尚、蒸着チャンバー15は、E-5Paの超高真空に対応可能である。尚、蒸着チャンバー15の上下方向の寸法や幅方向の寸法に特に制限はなく、上下方向の寸法や幅方向の寸法を自由に決定することができる。
【0050】
蒸着チャンバー15の収容スペース16には、膜厚センサ30及び第1真空計(図示せず)が設置され、サンプルステージ31(基板ステージ)及びチャック機構32が設置されているとともに、坩堝確認ミラー33及び防着板34が設置されている。膜厚センサ30は、膜圧センサ用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。膜厚センサ30は、真空蒸着成膜システム10における成膜運転中に、基板に成膜された膜の膜厚を測定し、測定した膜厚をPLC13を経由してサーバ11に送信する。
【0051】
第1真空計は、第1真空計用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。第1真空計は、真空蒸着成膜システム10における成膜運転準備中及び成膜運転中に、蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度(真空圧)を測定し、測定した真空度(真空圧)をPLC13を経由してサーバ11に送信する。
【0052】
サンプルステージ31は、蒸着チャンバー15の頂面壁25の中央に取り付けられ、頂面壁25の中央から下方へ垂下している。サンプルステージ31は、上下方向へ長い円柱状に成形され、周面35及び円形の下面36を有する。サンプルステージ31には、サンプルホルダー50(基板)を冷却する冷却機構(図示せず)が設置されている。サンプルステージ31には、電力ケーブルを介して電気が給電される。
【0053】
冷却機構には、水冷式のそれが使用されている。冷却機構は、その制御部が冷却機構用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。真空蒸着成膜システム10における成膜運転中に、サンプルホルダー50がサンプルステージ31の下面36に当接し、サンプルホルダー50に保持された基板が冷却機構によって所定温度に冷却される。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介して冷却機構の発停(ON/OFF)及び冷却機構の温度をコントロール(操作)する。冷却機構は、PLC13(サーバ11)からのON信号によって起動して基板を所定温度に冷却し、PLC13(サーバ11)からのOFF信号によってその稼働が停止する。
【0054】
チャック機構32は、蒸着チャンバー15の頂面壁25に取り付けられ、サンプルステージ31の周面35の両側に位置している。チャック機構32は、サンプルホルダー50を搬送チャンバー20から引き取ってサンプルホルダー50をサンプルステージ31に固定する。チャック機構32には、電力ケーブルを介して電気が給電される。
【0055】
チャック機構32は、サンプルステージ31の周面35の外側近傍に位置して上下方向へ延びる一対の第1アーム37aと、第1アーム37aの反対側に配置されてサンプルステージ31の周面35の外側近傍に位置して上下方向へ延びる一対の第2アーム37bと、それら第1アーム37aの下端部に取り付けられた第1鉤爪38aと、それら第2アーム37bの下端部に取り付けられた第2鉤爪38bとを有する。第1及び第2アーム37a,37bは、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター(ラック・ピニオンシステム))(図示せず)によって蒸着チャンバー15の頂面壁25から底面壁26に向かって上下方向下方へ同期して延伸するとともに、蒸着チャンバー15の底面壁26から頂面壁25に向かって上下方向上方へ同期して短縮する。
【0056】
第1及び第2アーム37a,37bが上下方向上方へ短縮した状態では、第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルステージ31の下面36の両側に位置する。第1及び第2アーム37a,37bが上下方向上方へ短縮した状態から第1及び第2アーム37a,37bが上下方向下方へ下降(延伸)することで、第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルステージ31の下面36から蒸着チャンバー15の底面壁26に向かって上下方向下方へ移動し、第1及び第2鉤爪38a,38bが上下方向下方へ移動した状態から第1及び第2アーム37a,37bが上下方向上方へ上昇(短縮)することで、第1及び第2鉤爪38a,38bが蒸着チャンバー15の底面壁26近傍からサンプルステージ31の下面36に向かって上下方向上方へ移動する。
【0057】
チャック機構32は、その制御部がチャック機構用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介してチャック機構32の発停(ON/OFF)をコントロール(操作)する。チャック機構32の制御部は、PLC13(サーバ11)からの降下信号によって第1及び第2アーム37a,37bを上下方向下方へ下降(延伸)させ、PLC13(サーバ11)からの上昇信号によって第1及び第2アーム37a,37bを上下方向上方へ上昇(短縮)させる。
【0058】
チャック機構32には、サンプルホルダー用位置センサ(図示せず)が設置されている。サンプルホルダー用位置センサには、レーザーセンサが使用される。サンプルホルダー用位置センサは、サンプルホルダー位置センサ用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。サンプルホルダー用位置センサは、真空蒸着成膜システム10における成膜運転準備中及び成膜運転中に、サンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されているか否かを計測し、計測したサンプルホルダー50の固定の有無をPLC13を経由してサーバ11に送信する。
【0059】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、サンプルホルダー用位置センサが計測したサンプルホルダー50の固定の有無によって、サンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されているか又はサンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されていないかを判断する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、サンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されている場合、蒸着材料の基板への蒸着を可とし、サンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されていない場合、蒸着材料の基板への蒸着を不可とする。
【0060】
坩堝確認ミラー33は、蒸着チャンバー15の側面壁27から幅方向へ延びるロッドに取り付けられ、蒸着チャンバー15の背面壁24とサンプルステージ31との間であってサンプルステージ31の下方に配置されている。坩堝確認ミラー33は、後記する指定座標(電子ビーム照射位置)に配置された坩堝17を映し、その坩堝17を観察窓29から確認可能に映し出す。防着板34は、蒸着チャンバー15の下方であって第1~第6坩堝17の直上に設置されている。防着板34は、坩堝17において蒸発した蒸着材料(蒸着材料の蒸気)が基板以外の他の装置に付着することを防ぐ。防着板34の中央には、蒸発した蒸着材料(蒸着材料の蒸気)が通る開口39が穿孔されている。
【0061】
第1~第6坩堝17は、蒸着チャンバー15の収容スペース16の底面壁26に設置された6点回転式回転テーブル40に着脱可能に取り付けられている。第1~第6坩堝17には、12mlが使用され、同一又は異なる種類の蒸着材料が収容される。尚、蒸着材料は、図示はしていないが、ハーフライナ(Cu、W、グラファイト、セラミック等の椀型の容器)に入れ、そのハーフライナを坩堝17に収容する。第1~第6坩堝17は、6点回転式回転テーブル40の周縁部において回転テーブル40の周り方向へ等間隔離間して並んでいる。尚、6個の坩堝17が使用されているが、7個以上の坩堝17を使用することもできる。この場合、第1~第n坩堝17が回転式回転テーブルの周り方向へ等間隔離間して設置される。第1~第6坩堝17は、蒸着材料の蒸気を頂部開口から放出する。
【0062】
第1~第6坩堝17の温度は、蒸着チャンバー15の外側に設置された放射温度計(図示せず)によって測定される。放射温度計は、温度計用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。放射温度計は、真空蒸着成膜システム10における成膜運転中に、それら坩堝17の温度を測定し、測定した温度をPLC13を経由してサーバ11に送信する。
【0063】
6点回転式回転テーブル40の中心には、サーボモータ(図示せず)の軸がギアボックス(図示せず)を介して連結されている。サーボモータは、蒸着チャンバー15の底面壁26の下方における架台21に設置され、サーボモータ用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。サーボモータには、電力ケーブルを介して電気が給電される。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介してサーボモータの発停(ON/OFF)及びサーボモータの回転速度をコントロール(操作)する。サーボモータは、PLC13(サーバ11)からのON信号によって起動し、その回転軸が所定の回転速度で時計周り方向又は反時計周り方向へ回転し、PLC11(サーバ13)からのOFF信号によって回転軸の回転が停止する。
【0064】
6点回転式回転テーブル40には、坩堝用位置センサ(図示せず)が設置されている。坩堝用位置センサには、リニアトランスデューサ、レーザーセンサ、ワイヤーエンコーダ等が使用される。坩堝用位置センサは、坩堝位置センサ用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。坩堝用位置センサは、真空蒸着成膜システム10における成膜運転準備中及び成膜運転中に、サーボモータの回転軸の座標(第1~第6坩堝の現在位置)を計測し、計測した座標(現在位置)をPLC13を経由してサーバ11に送信する。
【0065】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、真空蒸着成膜システム10における成膜運転準備及び成膜運転中に、サーボモータの回転軸の座標からそれら第1~第6坩堝17の現在位置を割り出し、サーボモータを駆動(回転)させてそれら第1~第6坩堝17のうちの指定された坩堝17を指定座標(電子ビーム照射位置)に配置する。
【0066】
サーボモータの回転軸が時計周り方向又は反時計周り方向へ回転すると、それによって6点回転式回転テーブル40が時計周り方向又は反時計周り方向へ回転し、回転テーブル40の周縁部に位置する第1~第6坩堝17が回転テーブル40の周り方向へ移動する。第1~第6坩堝17は、サーボモータの駆動(回転)によって蒸着チャンバー15の収容スペース16内部における指定座標(電子ビーム照射位置)に順に移動する。
【0067】
第1真空ポンプは、蒸着チャンバー15の収容スペース16(内部)を所定の真空度(真空圧)に真空引きする。第1真空ポンプには、2200L/sターボ分子ポンプが使用されている。第1真空ポンプは、蒸着チャンバー15の直後であって蒸着チャンバー15の下方に位置する架台21に設置され、ステンレスから作られたポンプ接続ダクト(図示せず)を介して蒸着チャンバー15に接続されている。
【0068】
第1真空ポンプは、その制御部が第1真空ポンプ用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。第1真空ポンプには、電力ケーブルを介して電気が給電される。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介して第1真空ポンプの発停(ON/OFF)及び第1真空ポンプの出力をコントロール(操作)する。第1真空ポンプの制御部は、PLC13(サーバ11)からのON信号によって第1真空ポンプを所定の出力で起動し、PLC13(サーバ11)からのOFF信号によって第1真空ポンプの稼働を停止する。
【0069】
ポンプ接続ダクトは、軸方向へ延びる所定容積の円筒状の連通路を有し、その一端部が蒸着チャンバー15の背面壁24の上方中央に気密に連結され、その他端部が第1真空ポンプに気密に連結されている。ポンプ接続ダクトの一端部が連結された蒸着チャンバー15の背面壁24の上方中央には、円形の真空引き開口41が穿孔されている。
【0070】
ポンプ接続ダクトは、蒸着チャンバー15の背面壁24(真空引き開口41)から後方に延びた後、略直角に折れ曲がり、架台21に向かって下方へ延びて架台21に設置された第1真空ポンプに繋がっている。ポンプ接続ダクトには、その連通路を開閉する第1ゲートバルブ(第1シャッター)(図示せず)が設置されている。
【0071】
第1ゲートバルブは、ステンレスから作られ、ポンプ接続ダクトの連通路を開閉する。第1ゲートバルブには、エアシリンダー(図示せず)が設置され、そのエアシリンダーによってゲートの開閉が自動で行われる。尚、第1ゲートバルブに電動リニアアクチュエーター(ラック・ピニオンシステム)(図示せず)が設置され、その電動リニアアクチュエーターによってゲートの開閉が自動で行われる場合がある。エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)は、その制御部がエアシリンダー(又はアクチュエーター用)信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介してエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の発停(ON/OFF)をコントロール(操作)し、第1ゲートバルブのゲートを開閉する。
【0072】
エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、第1ゲートバルブの閉状態信号又は開状態信号をPLC13を経由してサーバ11に送信する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部から送信された閉状態信号によって第1ゲートバルブのゲートが閉鎖されていると判断し、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部から送信された開状態信号によって第1ゲートバルブのゲートが開放されていると判断する。
【0073】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、第1ゲートバルブのゲートが全開である場合、第1真空ポンプによる蒸着チャンバー15の真空引きを可とする。エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、PLC13(サーバ11)からの閉信号によってエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて第1ゲートバルブのゲートを閉め、ポンプ接続ダクトの連通路を気密に閉鎖し、PLC13(サーバ11)からの開信号によってエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて第1ゲートバルブのゲートを開け、ポンプ接続ダクトの連通路を開放する。
【0074】
偏向型電子銃18は、蒸着チャンバー15の底面壁26近傍に取り付けられている。偏向型電子銃18には、熱電子放出型や電界放射型が使用される。偏向型電子銃18には、電力ケーブルを介して電気が給電される。偏向型電子銃18の偏向角度は、270°である。第1~第6坩堝17のうちの指定座標(電子ビーム照射位置)に位置する坩堝17に向かって電子ビーム(電子線)を発射し、その坩堝17に収容された蒸着材料に電子ビーム(電子線)を照射する。偏向型電子銃18から発射された電子ビームは、電子ビーム放出口53から放出された後、坩堝17の頂部開口に向かい、坩堝17に収容された蒸着材料に照射されることで、蒸着材料を所定温度に加熱し、蒸着材料を蒸発させる。
【0075】
偏向型電子銃18は、電子銃用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC11(サーバ13)に接続されている。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介して偏向型電子銃18の発停(ON/OFF)及び偏向型電子銃18の出力をコントロール(操作)する。偏向型電子銃18は、PLC13(サーバ11)からの電子ビーム照射信号によって起動して所定の出力で電子ビーム(電子線)を発射し、PLC13(サーバ11)からの電子ビーム停止信号によって電子ビームの発射を停止する。
【0076】
搬送チャンバー19は、ステンレス(SUS304)から作られ、頂面壁42及び底面壁43と、前面壁44及び後面壁45と、両側面壁46,47とを有する六面体であり、幅方向へ長い角柱状に成型されている。搬送チャンバー19のそれら壁42~47には、電解研磨及び450℃@10h高真空脱ガス処理が施されている。搬送チャンバー19には、それら壁42~47に囲繞された搬送スペース20が形成されている。頂面壁42には、サンプル投入用ハッチ48が幅方向へスライド可能に設置されている。サンプル投入用ハッチ48を幅方向一方へスライドさせることで搬送スペース20が開放され、サンプル投入用ハッチ48を幅方向他方へスライドさせることで搬送スペース20が気密に閉鎖される。
【0077】
搬送チャンバー19は、アーム49及びサンプルホルダー50と、エアシリンダー(図示せず)及び第2真空ポンプ(図示せず)と、第2ゲートバルブ(図示せず)とを備えている。真空蒸着成膜システム10の使用時には、搬送チャンバー19の搬送スペース20が所定の真空度(所定の真空圧)に保持される。搬送チャンバー19の収容スペース20には、アーム用位置センサ(図示せず)及び基板検知センサ(図示せず)と、第2真空計(図示せず)とが設置されている。
【0078】
エアシリンダー及びアーム49は、搬送チャンバー19の搬送スペース20に設置されている。アーム49は、ステンレスから作られ、その基端部がエアシリンダーに連結されている。アーム49には、サンプルホルダー50を載置する円形の載置部51が形成されている。アーム49の載置部51は、搬送チャンバー15と蒸着チャンバー19との間を往復動する。サンプルホルダー50は、円盤状に成形され、その下面に複数枚の基板を着脱可能にセットする複数の基板セット部(図示せず)を備えている。
【0079】
エアシリンダーは、その制御部がエアシリンダー用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介してエアシリンダーの発停(ON/OFF)をコントロール(操作)する。エアシリンダーの制御部は、PLC13(サーバ11)からの前進信号によってアーム49を幅方向へ延伸させ、PLC13(サーバ11)からの後退信号によってアーム49を幅方向へ短縮させる。
【0080】
真空蒸着成膜システム10では、エアシリンダーの稼働によってアーム49が搬送チャンバー19の搬送スペース20から蒸着チャンバー15の収容スペース16に向かって幅方向へ延伸すると、サンプルホルダー50を載せたアーム49の載置部51が搬送チャンバー19の搬送スペース20から蒸着チャンバー15に向かって幅方向へ移動して載置部51(サンプルホルダー50)が蒸着チャンバー15の収容スペース16(内部)に位置する。アーム49の載置部51が蒸着チャンバー15の収容スペース16に位置した状態において、エアシリンダーの稼働によってアーム49が蒸着チャンバー15から搬送チャンバー19に向かって幅方向へ短縮すると、アーム49の載置部51のみ又はサンプルホルダー31を載せたアーム49の載置部51が蒸着チャンバー15から搬送チャンバー19に向かって幅方向へ移動して載置部51(サンプルホルダー50)が搬送チャンバー19の搬送スペース20に位置する。
【0081】
第2真空ポンプは、搬送チャンバー19の搬送スペース20(内部)を所定の真空度(真空圧)に真空引きする。第2真空ポンプには、300L/sターボ分子ポンプが使用されている。第2真空ポンプは、搬送チャンバー19の直下に位置する架台21に設置され、連通路を介して搬送チャンバー19に接続されている。
【0082】
第2真空ポンプは、その制御部が第2真空ポンプ用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。第2真空ポンプには、電力ケーブルを介して電気が給電される。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介して第2真空ポンプの発停(ON/OFF)及び第2真空ポンプの出力をコントロール(操作)する。第2真空ポンプの制御部は、PLC13(サーバ11)からのON信号によって第2真空ポンプを所定の出力で起動し、PLC13(サーバ11)からのOFF信号によって第2真空ポンプの稼働を停止する。
【0083】
第2ゲートバルブは、ステンレスから作られ、搬送チャンバー19と第2真空ポンプとを連結する連通路に設置され、連通路を開閉する。第2ゲートバルブには、エアシリンダーが設置され、そのエアシリンダーによってゲートの開閉が自動で行われる。尚、第2ゲートバルブに電動リニアアクチュエーター(ラック・ピニオンシステム)(図示せず)が設置され、その電動リニアアクチュエーターによってゲートの開閉が自動で行われる場合がある。エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)は、その制御部がエアシリンダー用(アクチュエーター用)信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介してエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の発停(ON/OFF)をコントロール(操作)し、第2ゲートバルブのゲートを開閉する。
【0084】
エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、第2ゲートバルブの閉状態信号又は開状態信号をPLC13を経由してサーバ11に送信する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部から送信された閉状態信号によって第2ゲートバルブのゲートが閉鎖されていると判断し、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部から送信された開状態信号によって第2ゲートバルブのゲートが開放されていると判断する。
【0085】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、第2ゲートバルブのゲートが全開である場合、第2真空ポンプによる搬送チャンバー19の真空引きを可とする。エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、PLC13(サーバ11)からの閉信号によってエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて第2ゲートバルブのゲートを閉め、連通路を閉鎖し、PLC13(サーバ11)からの開信号によってエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて第2ゲートバルブのゲートを開け、連通路を開放する。
【0086】
アーム用位置センサは、搬送チャンバー19の搬送スペース20に設置されている。アーム用位置センサには、リニアトランスデューサ、レーザーセンサ、リニアエンコーダ等が使用される。アーム用位置センサは、アーム位置センサ用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。アーム用位置センサは、真空蒸着成膜システム10における成膜運転準備中及び成膜運転中に、アーム49の載置部51が搬送チャンバー19の搬送開始位置に位置するか又は蒸着チャンバー15の搬送完了位置に位置するかを計測し、計測したアーム49の載置部51の位置(搬送チャンバー15又は蒸着チャンバー19)をPLC13を経由してサーバ11に送信する。
【0087】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、アーム用位置センサが計測したアーム49の載置部51の位置によって、アーム49の載置部51が搬送チャンバー19に位置するか又は蒸着チャンバー15に位置するかを判断する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、アーム49の載置部51が搬送チャンバー19の搬送開始位置に存在する場合、搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へのサンプルホルダー50の搬送を可とし、アーム49の載置部51が蒸着チャンバー15の搬送完了位置に存在する場合、蒸着チャンバー15から搬送チャンバー19へのサンプルホルダー50の帰還を可とする。
【0088】
基板検知センサは、搬送チャンバー19の搬送スペース20に設置されている。基板検知センサには、近接センサ、マイクロフォトセンサ、光電センサが使用される。基板検知センサは、基板検知センサ用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。基板検知センサは、真空蒸着成膜システム10における成膜運転準備中及び成膜運転中に、アーム49の載置部51に載置されたサンプルホルダー50の基板セット部における基板の有無(基板セット部に基板が配置されているか否か)を検知し、サンプルホルダー50の基板セット部における基板の有無をPLC13を経由してサーバ11に送信する。
【0089】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、基板検知センサが検知した基板セット部における基板の有無によって、サンプルホルダー50の基板セット部に基板がセット(配置)されているか否かを判断する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、サンプルホルダー50の基板セット部に基板がセット(配置)されている場合、搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へのサンプルホルダー50の搬送を可とし、サンプルホルダー50の基板セット部に基板がセット(配置)されていない場合、搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へのサンプルホルダー50の搬送を不可とする。
【0090】
第2真空計は、第2真空計用信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。第2真空計は、真空蒸着成膜システム10における成膜運転準備中及び成膜運転中に、搬送チャンバー19の収容スペース20の真空度(真空圧)を測定し、測定した真空度(真空圧)をPLC13を経由してサーバ11に送信する。
【0091】
蒸着チャンバー15の側面壁28と搬送チャンバー19の側面壁46との間には、それらチャンバー15,19を連通させる連通路52が設置され、その連通路52に搬送ゲートバルブ(図示せず)が設置されている。搬送ゲートバルブは、ステンレスから作られ、蒸着チャンバー15と搬送チャンバー19とを連結する連通路52を開閉する。搬送ゲートバルブには、エアシリンダー(図示せず)が設置され、そのエアシリンダーによってゲートの開閉が自動で行われる。尚、搬送ゲートバルブに電動リニアアクチュエーター(ラック・ピニオンシステム)(図示せず)が設置され、その電動リニアアクチュエーターによってゲートの開閉が自動で行われる場合がある。エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)は、その制御部がエアシリンダー用(アクチュエーター用)信号線(インターフェイス)(有線又は無線)を介してPLC13(サーバ11)に接続されている。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介してエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の発停(ON/OFF)をコントロール(操作)し、搬送ゲートバルブのゲートを開閉する。
【0092】
エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、搬送ゲートバルブの閉状態信号又は開状態信号をPLC13を経由してサーバ11に送信する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部から送信された閉状態信号によって搬送ゲートバルブのゲートが閉鎖されていると判断し、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部から送信された開状態信号によって搬送ゲートバルブのゲートが開放されていると判断する。
【0093】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、搬送ゲートバルブのゲートが全開である場合、搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へのサンプルホルダー50の搬送を可とする。エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、PLC13(サーバ11)からの閉信号によってエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて搬送ゲートバルブのゲートを閉め、連通路52を閉鎖し、PLC13(サーバ11)からの開信号によってエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて搬送ゲートバルブのゲートを開け、連通路52を開放する。
【0094】
図10は、真空蒸着成膜システム10において行われる蒸着運転の一例を示すラダー図であり、図11は、真空蒸着成膜システム10において行われる坩堝制御の一例を示す図である。図12は、真空蒸着成膜システム10において行われる真空制御の一例を示す図であり、図13は、真空蒸着成膜システム10において行われる基板の搬送制御の一例を示す図である。図10では、縦軸に偏向型電子銃18の出力(power(%))が表され、横軸に時間(Time)が表されている。
【0095】
真空蒸着成膜システム10において行われる蒸着運転の一例は、以下のとおりである。第1~第6坩堝17に蒸着材料(試料)が収容されていない場合、蒸着チャンバー15の正面壁23(正面ハッチ)を開けて収容スペース16を開放し、第1~第6坩堝17に蒸着材料を収容する。それら坩堝17に蒸着材料を収容した後、正面壁23を閉めて蒸着チャンバー15の収容スペース16を気密に閉鎖する。
【0096】
次に、サーバ11を起動させる。起動したサーバ11は、架台21に設置されたディスプレイ22に蒸着操作アイコンが表示された初期画面(図示せず)を出力(表示)する。蒸着操作アイコンをタップ(クリック)すると、蒸着操作画面(図示せず)がディスプレイ22に出力(表示)される。蒸着操作画面には、成膜条件ボタン、蒸着開始ボタン、キャンセルボタンが表示される。キャンセルボタンをタップすると、ディスプレイ22に初期画面が出力(表示)される。
【0097】
成膜条件ボタンをタップすると、サーバ11は、それにインストールされた成膜制御アプリケーションを起動し、ディスプレイ22に成膜条件入力画面(図示せず)を出力(表示)する。成膜条件入力画面において、基板に成膜する第1~第n層の膜の各種複数の成膜条件(パラメータ)を入力(設定)する。それら成膜条件(パラメータ)には、蒸着材料の種類(名称記号)、蒸着材料の密度、蒸着材料の物性値、偏向型電子銃18の最大出力、電子銃18の出力上昇時間、電子銃18の出力維持時間、電子銃18の出力下降時間、電子銃18の出力振れ幅、蒸着チャンバー15の設定真空度、搬送チャンバー19の設定真空度、坩堝17の順番、坩堝温度、蒸着チャンバー15の蒸着スペース16及び搬送チャンバー19の搬送スペース20の真空度の第1閾値、蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度の第2閾値、蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度の第3閾値等がある。
【0098】
1層毎の成膜条件は、サーバ11の大容量記憶領域に記憶(格納)されるとともに、1層毎にサーバ11から膜厚コントローラ12に送信され、膜厚コントローラ12のキャッシュメモリに記憶(格納)される。成膜条件がサーバ11の大容量記憶領域や膜厚コントローラ12のキャッシュメモリに記憶されると、蒸着操作画面(図示せず)がディスプレイ22に出力(表示)される。
【0099】
成膜条件入力画面において成膜条件(パラメータ)を設定した後、サンプルホルダー50の基板セット部に基板をセット(固定)し、搬送チャンバー19の頂面壁42のサンプル投入用ハッチ48を幅方向一方へスライドさせて搬送スペース20を開放し、基板をセットしたサンプルホルダー50をアーム49の載置部51に載置する。サンプルホルダー50を載置部51に載置したことを確認した後、頂面壁42のサンプル投入用ハッチ48を幅方向他方へスライドさせて搬送スペース20を気密に閉鎖する。
【0100】
第1~第6坩堝17への蒸着材料の収容、蒸着チャンバー15の収容スペース16の閉鎖、基板を設置したサンプルホルダー50のアーム49の載置部52への載置、搬送チャンバー19の搬送スペース20の閉鎖を確認した後、ディスプレイ22に出力(表示)された蒸着操作画面の蒸着確認ボタンをタップ(クリック)する。蒸着開始ボタンをタップすると、成膜条件確認画面(図示せず)がディスプレイ22に出力(表示)される。成膜条件確認画面には、設定(入力)した各種の成膜条件(パラメータ)及びキャンセルボタンが出力(表示)される。成膜条件確認画面に出力(表示)された各成膜条件に間違いがないことを確認した後、成膜条件確認画面に出力(表示)された蒸着開始ボタンをタップ(クリック)する。
【0101】
蒸着開始ボタンをタップすると、サーバ11は、真空蒸着成膜システム10において行われる蒸着運転プロセスを開始する。サーバ11は、第1及び第2真空計、膜厚センサ30、第1~第6坩堝17の放射温度計、坩堝用位置センサ、アーム用位置センサ、基板検知センサ、サンプルホルダー用位置センサ、第1及び第2ゲートバルブ、搬送ゲートバルブを起動させる。第1真空計は、蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度(真空圧)の測定を開始し、測定した真空度(真空圧)をサーバ11に送信する。第2真空計は、搬送チャンバー19の搬送スペース20の真空度(真空圧)の測定を開始し、測定した真空度(真空圧)をサーバ11に送信する。
【0102】
第1ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、第1ゲートバルブのゲートの閉状態信号をサーバ11に送信する。第2ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)ーの制御部は、第2ゲートバルブのゲートの閉状態信号をサーバ11に送信する。搬送ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、搬送ゲートバルブのゲートの閉状態信号をサーバ11に送信する。アーム用位置センサは、搬送チャンバー19の搬送開始位置にエアシリンダーのアーム49の載置部51が位置していることをサーバ11に送信する。基板検知センサは、アーム49の載置部51に載置されたサンプルホルダー50の基板セット部に基板がセットされているとを(基板有)をサーバ11に送信する。
【0103】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、第1ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部から送信された閉状態信号によって第1ゲートバルブのゲートが閉鎖されていると判断する。PLC13(サーバ11)は、第1ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部に開信号を送信する。PLC13(サーバ11)から開信号を受信したエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて第1ゲートバルブのゲートを開け、ポンプ接続ダクトの連通路を開放する。第1ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、開状態信号をサーバ11に送信する。
【0104】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、第2ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部から送信された閉状態信号によって第2ゲートバルブのゲートが閉鎖されていると判断する。PLC13(サーバ11)は、第2ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部に開信号を送信する。PLC13(サーバ11)から開信号を受信したエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて第2ゲートバルブのゲートを開け、搬送チャンバー19と第2真空ポンプとを連結する連通路を開放する。第2ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、開状態信号をサーバ11に送信する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、搬送ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部から送信された閉状態信号によって搬送ゲートバルブのゲートが閉鎖されていると判断する。
【0105】
PLC13(サーバ11)は、第1真空ポンプの制御部にON信号を送信する。PLC13(サーバ11)からON信号を受信した第1真空ポンプの制御部は、第1真空ポンプを所定の出力で起動し、蒸着チャンバー15の収容スペース16(内部)を真空引きする。PLC13(サーバ11)は、第2真空ポンプの制御部にON信号を送信する。PLC13(サーバ11)からON信号を受信した第2真空ポンプの制御部は、第2真空ポンプを所定の出力で起動し、搬送チャンバー19の搬送スペース20(内部)を真空引きする。
【0106】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13が第1及び第2真空ポンプ(ハードウェア)をコントロール(操作)し、PLC13によって第1及び第2真空ポンプの発停(ON/OFF)が行われるから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、真空蒸着成膜システム10において第1及び第2真空ポンプ(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0107】
真空蒸着成膜システム10は、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップ中であっても、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13によって成膜運転に使用する第1及び第2真空ポンプ(ハードウェア)をコントロールすることができ、成膜運転に使用する第1及び第2真空ポンプを停止することなく、第1及び第2真空ポンプを操作して成膜運転を継続的に行うことができる。
【0108】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13が第1及び第2ゲートバルブ(ハードウェア)をコントロール(操作)し、PLC13によって第1及び第2ゲートバルブの発停(ON/OFF)が行われるから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、真空蒸着成膜システム10において第1及び第2ゲートバルブ(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0109】
真空蒸着成膜システム10は、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップ中であっても、PLC操作アプリケーションによって動作するPLC13によって成膜運転に使用する第1及び第2ゲートバルブ(ハードウェア)をコントロールすることができ、成膜運転に使用する第1及び第2ゲートバルブを停止することなく、第1及び第2ゲートバルブを操作して成膜運転を継続的に行うことができる。
【0110】
真空引きされた蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度(真空圧)は、第1真空計によって測定され、収容スペース16の真空度が第1真空計からPLC13を経由してサーバ11に送信される。真空引きされた搬送チャンバー19の搬送スペース20の真空度(真空圧)は、第2真空計によって測定され、搬送スペース20の真空度が第2真空計からPLC13を経由してサーバ11に送信される。
【0111】
ディスプレイ22には、第1ゲートバルブのゲートの開を示す開メッセージ、第1真空ポンプによって真空引きされている蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度、第2ゲートバルブのゲートの開を示す開メッセージ、第2真空ポンプによって真空引きされている搬送チャンバー19の搬送スペース20の真空度、蒸着チャンバー15の蒸着スペース16及び搬送チャンバー19の搬送スペース20の真空度の第1閾値、蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度の第2閾値、蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度の第3閾値、蒸着中止ボタンが出力(表示)される。蒸着中止ボタンをタップすると、蒸着運転が中止される。
【0112】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、第1及び第2真空計から送信された蒸着チャンバー15の蒸着スペース16及び搬送チャンバー19の搬送スペース20の真空度を参照し、蒸着チャンバー15の蒸着スペース16の真空度及び搬送チャンバー19の搬送スペース20の真空度が第1閾値に達したかを判断する。蒸着チャンバー15及び搬送チャンバー19の真空度が第1閾値に達したと判断した場合であって、アーム49の載置部51が搬送チャンバー19の搬送開始位置に存在するとともにサンプルホルダー50の基板セット部に基板がセット(配置)されていると判断した場合、搬送チャンバー15から蒸着チャンバー19へのサンプルホルダー50の搬送を可とし、基板を搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へ搬送する搬送信号を膜厚コントローラ12及びPLC13に送信する。
【0113】
PLC13(サーバ11)は、搬送ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部に開信号を送信する。PLC13(サーバ11)から開信号を受信したエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて搬送ゲートバルブのゲートを開けて連通路52を開放し、搬送チャンバー19と蒸着チャンバー15とを連通させる。搬送ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、開状態信号をPLC13を介してサーバ11に送信する。
【0114】
次に、PLC13(サーバ11)は、エアシリンダーの制御部に前進信号を送信する。PLC13(サーバ11)から前進信号を受信したエアシリンダーの制御部は、アーム49を幅方向へ延伸させる。アーム49が連通路52を通って搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15に向かって幅方向へ延伸することで、サンプルホルダー50を載せたアーム49の載置部51が搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15に向かって幅方向へ移動し、サンプルホルダー50が蒸着チャンバー15の収容スペース16(サンプルステージ31の直下)に位置する。PLC13(サーバ11)は、冷却機構の制御部にON信号を送信する。ON信号を受信した冷却機構の制御部は、冷却機構を起動する。ディスプレイ22には、基板搬送中のメッセージが出力(表示)される。
【0115】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバー15及び搬送チャンバー19の真空度を管理し、蒸着チャンバー15及び搬送チャンバー19の真空度が第1閾値に達したときに、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13が搬送チャンバー19の搬送機構を操作して基板を搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へ搬送するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、蒸着チャンバー15及び搬送チャンバー19(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0116】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションがエアシリンダーのアーム49の搬送チャンバー19又は蒸着チャンバー15における位置を判断し、エアシリンダーのアーム49の位置によって搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へのサンプルホルダー50の搬送の可/不可や蒸着チャンバー15から搬送チャンバー19へのサンプルホルダー50の帰還の可/不可が決定し、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13がサンプルホルダー50の搬送を操作するとともにサンプルホルダー50の帰還を操作するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、搬送機構のエアシリンダー(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0117】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションが搬送ゲートバルブのゲートの開閉を管理し、PLC操作アプリケーションが搬送ゲートバルブのゲートが全開であると判断した場合、搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へのサンプルホルダー50の搬送を可とし、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13が搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へのサンプルホルダー50の搬送を操作するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、搬送ゲートバルブ(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0118】
サンプルホルダー50が蒸着チャンバー15の収容スペース16に位置すると、アーム用位置センサは、蒸着チャンバー15の搬送完了位置にエアシリンダーのアーム49の載置部51が位置していることをPLC13を介してサーバ11に送信する。アーム用位置センサから搬送完了位置にアーム49の載置部51が位置していることを受信したサーバ11のPLC操作アプリケーションは、チャック機構指導信号をPLC13に送信する。チャック機構指導信号を受信したPLC13(サーバ11)は、チャック機構32を起動させる。
【0119】
起動したチャック機構32は、第1及び第2アーム37a,37bをサンプルステージ31から蒸着チャンバー15の底面壁26に向かって上下方向下方へ下降(伸長)させ、第1及び第2鉤爪38a,38bをサンプルステージ31の下面36から蒸着チャンバー15の底面壁26に向かって上下方向下方へ移動させる。第1及び第2アーム37a,37bが下方へ下降し、第1及び第2鉤爪38a,38bが下方へ移動することで、第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルホルダー50の下方であってサンプルホルダー50の両側部の外側近傍に位置する。
【0120】
第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルホルダー50の下方であってサンプルホルダー50の両側部の外側近傍に位置した後、第1及び第2アーム37a,37bが幅方向内方へ移動し、それに伴って第1及び第2鉤爪38a,38bが幅方向内方へ移動して第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルホルダー50の両側部の直下に位置する。第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルホルダー50の両側部の直下に位置した後、チャック機構32は、第1及び第2アーム37a,37bを上下方向上方へ上昇(短縮)させる。
【0121】
第1及び第2アーム37a,37bが上方へ上昇すると、第1及び第2鉤爪38a,38bが上方へ上昇して第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルホルダー50の両側部の下面に当接してサンプルホルダー50を支持し、第1及び第2鉤爪38a,38bとともにサンプルホルダー50がアーム49の載置部51からサンプルステージ31に向かって上方へ次第に上昇する。上方へ上昇したサンプルホルダー50は、その上面がサンプルステージ31の下面36に当接し、第1及び第2鉤爪38a,38bとサンプルステージ31の下面36とに挟まれた状態でサンプルステージ31に固定される。サンプルホルダー50がサンプルステージ31の下面36に当接固定されることで、冷却機構によってサンプルホルダー50とともに基板が冷却される。
【0122】
サンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されると、サンプルホルダー用位置センサがサンプルホルダー固定信号(サンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されている信号)をサーバ11に送信する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、サンプルホルダー用位置センサから送信されたサンプルホルダー固定信号によってサンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されていると判断する。
【0123】
尚、PLC13(サーバ11)は、エアシリンダーの制御部に後退信号を送信する。PLC13(サーバ11)から後退信号を受信したエアシリンダーの制御部は、第1及び第2アーム37a,37bの下降、上昇と略同期してアーム49を幅方向へ短縮させる。アーム49が蒸着チャンバー15から搬送チャンバー19に向かって幅方向へ短縮することで、アーム49の載置部51が連通路52を通って蒸着チャンバー15から搬送チャンバー19に向かって幅方向へ移動し、アーム49の載置部51が搬送チャンバー19の搬送スペース20に位置する。
【0124】
アーム49の載置部51が搬送スペース19に位置した後、PLC13(サーバ11)は、搬送ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部に閉信号を送信する。PLC13(サーバ11)から閉信号を受信したエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて搬送ゲートバルブのゲートを閉めて連通路52を気密に閉鎖し、搬送チャンバー19と蒸着チャンバー15との連通を遮断する。搬送ゲートバルブ19のエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、閉状態信号をサーバに送信する。ディスプレイ22には、基板搬送完了のメッセージが出力(表示)される。
【0125】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、サーボモータの回転軸の座標からそれら第1~第6坩堝17の現在位置を特定し(割り出し)、現在位置を特定した後、第1番目として指定された坩堝17が指定座標(電子ビーム照射位置)に位置しているかを判断する。指定された坩堝17が指定座標に位置していない場合、サーバ11のPLC操作アプリケーションは、指定された坩堝17を指定座標に配置する配置信号をPLC13に送信する。
【0126】
PLC13(サーバ11)は、サーボモータを駆動(回転)させてそれら第1~第6坩堝17のうちの第1番目として指定された坩堝17を指定座標(電子ビーム照射位置)に配置する。指定座標(電子ビーム照射位置)に配置された坩堝17の放射温度計は、その坩堝17の温度を測定し、測定した温度をサーバ11に送信する。ディスプレイ22には、指定座標に配置された坩堝17及びその坩堝17の温度が出力(表示)される。
【0127】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、第1真空計から送信された蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度(真空圧)を参照し、蒸着チャンバー15の真空度が第2閾値に達したかを判断する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、サンプルホルダー50の基板セット部に基板がセット(配置)されていると判断し、アーム49の載置部51が搬送チャンバー15の搬送スペース16に位置していると判断し、サンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されていると判断するとともに、搬送ゲートバルブのゲートが閉められていると判断し、更に、蒸着チャンバー15の真空度が第2閾値に達したと判断した場合、膜厚コントローラ12及びPLC13に蒸着開始信号を送信する。サーバ11の成膜制御アプリケーションは、第1層の膜の成膜条件及び第1運転ステップを膜厚コントローラ12に送信する。膜厚コントローラ12は、サーバ11の成膜制御アプリケーションから受信した第1層の膜の成膜条件及び第1運転ステップに従って基板に第1層の膜を成膜する。
【0128】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、第1真空計から送信された蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度(真空圧)を参照し、蒸着チャンバー15の真空度が第3閾値に達したかを判断する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、蒸着チャンバー15の真空度が第3閾値に達したと判断した場合、電子ビーム照射信号を膜厚コントローラ12及びPLC13に送信する。サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13は、偏向型電子銃18に電子ビーム照射信号(ON信号)を送信する。電子ビーム照射信号を受信した偏向型電子銃18は、所定の出力で電子ビーム(電子線)を発射する。ディスプレイ22には、電子ビーム照射中メッセージ、坩堝17の温度、蒸着チャンバー15の収容スペース16の真空度、搬送チャンバー19の搬送スペース20の真空度、蒸着中止ボタンが出力(表示)される。
【0129】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションがチャック機構32の位置及びサンプルステージ31におけるサンプルホルダー50の有無を判断し、チャック機構32がサンプルステージ31の近傍に上昇し、サンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されている場合、蒸着を可とし、PLC操作アプリケーションが蒸着開始信号を膜厚コントローラ12及びPLC13に送信し、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13がチャック機構32をコントロール(操作)するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、チャック機構32及びサンプルステージ50(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0130】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションが搬送ゲートバルブのゲートの開閉を管理し、サーバ11のPLC操作アプリケーションが搬送ゲートバルブのゲートが全閉であると判断した場合、蒸着を可とし、蒸着開始信号を膜厚コントローラ12及びPLC13に送信し、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13が搬送ゲートバルブのゲートの開閉をコントロール(操作)するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、搬送ゲートバルブ(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0131】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバー15の真空度を管理し、蒸着チャンバー15の真空度が第2閾値に達したときに、蒸着チャンバー15における蒸着材料の基板への蒸着を開始する蒸着開始信号を膜厚コントローラ12及びPLC13に送信し、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13が蒸着チャンバー15をコントロール(操作)するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、蒸着チャンバー15(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0132】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションが蒸着チャンバー15の真空度を管理し、蒸着チャンバー15の真空度が第3閾値に達したときに、偏向型電子銃18から坩堝17に向かって電子ビームを照射させる電子ビーム照射信号を膜厚コントローラ12及びPLC13に送信し、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13が電子銃18から坩堝17に向かって電子ビームを発射させるから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、電子銃18(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0133】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13がサーボモータ(ハードウェア)をコントロール(操作)し、PLC13によって第1~第6坩堝17(第1~第n坩堝)のうちの指定された坩堝17が指定座標(電子ビーム照射位置)に配置されるから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、真空蒸着成膜システム10においてサーボモータ及び6点回転式回転テーブル40を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0134】
真空蒸着成膜システム10は、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップ中であっても、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13によって成膜運転に使用するサーボモータ及び6点回転式回転テーブル40(ハードウェア)をコントロール(操作)することができ、成膜運転に使用するサーボモータ及び回転テーブル40を停止することなく、坩堝17を指定座標(電子ビーム照射位置)に順次移動させるサーボモータ及び回転テーブル40を使用して成膜運転を継続的に行うことができる。
【0135】
真空蒸着成膜システム10は、サーバ11のPLC操作アプリケーションがサンプルホルダー50における基板の有無を判断し、サンプルホルダー50における基板の有無によって搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へのサンプルホルダー50の搬送の可/不可を決定し、搬送の可の場合、サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13が搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15へのサンプルホルダー50の搬送をコントロール(操作)するから、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、成膜運転を停止することなく、搬送機構のサンプルホルダー50(ハードウェア)を使用して成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0136】
偏向型電子銃18から発射された電子ビーム(電子線)は、指定座標(電子ビーム照射位置)に位置する第1番目として指定された坩堝17に収容された蒸着材料に照射される。真空蒸着成膜システム10における偏向型電子銃18の電子ビームの照射の一例として、図10に示すように、膜厚コントローラ12は、偏向型電子銃18を第1の時間待機させた後、待機時間(第1の時間)が経過した後、出力第1上昇時間になると、電子銃18の出力を一定の上昇速度で次第に上昇させ、電子銃18の出力が第1出力に上昇した後、第1出力の状態で、偏向型電子銃18を第2の時間待機させる。膜厚コントローラ12は、第1出力における待機時間(第2の時間)が経過した後、出力第2上昇時間になると、偏向型電子銃18の出力を一定の上昇速度で次第に上昇させ、電子銃18の出力が第2出力に上昇した後、第2出力の状態で、電子銃18を第3の時間待機させる。
【0137】
第2出力における待機時間(第3の時間)が経過した後、第2出力の状態で偏向型電子銃18から電子ビームを坩堝17に向かって発射させる。電子銃18から電子ビームを所定の照射時間継続して坩堝17に収容された蒸着材料に照射する。照射時間が経過した後、偏向型電子銃17の出力を一定の下降速度で次第に下降させ、電子銃17の出力を0にする。偏向型電子銃17の出力が0になった後、電子銃18を第3の時間待機させる。
【0138】
第1番目として指定された坩堝17に収容された蒸着材料は、電子ビームによって所定温度に加熱されて蒸発し、蒸気となって坩堝17の頂部開口から放出される。坩堝17の頂部開口から放出された蒸着材料の蒸気は、蒸着チャンバー15の収容スペース16(内部)を次第に上昇して防着板34の中央に穿孔された開口39を通過し、サンプルホルダー50の基板セット部にセットされた基板に蒸着する。基板には、蒸着材料からなる第1層の所定の膜厚の膜が成膜される。
【0139】
膜厚センサ30は、基板に成膜された第1層の膜の膜厚を測定し、測定した膜厚を膜厚コントローラ12及びサーバ11に送信する。膜厚コントローラ12は、膜厚センサ30から送信された膜厚を参照し、基板に成膜された第1層の膜の膜厚が設定膜厚になった場合、PLC13及びサーバ11に成膜完了信号を送信する。成膜完了信号を受信したPLC13は、電子ビーム停止信号を偏向型電子銃18に送信する。電子ビーム停止信号を受信した電子銃18は、電子ビームの照射を停止する。
【0140】
成膜完了信号を受信したサーバ11の成膜制御アプリケーションは、第2層の膜の成膜条件及び第2運転ステップを膜厚コントローラ12に送信する。成膜完了信号を受信した膜厚コントローラ12は、サーバ11の成膜制御アプリケーションから受信した第2層の膜の成膜条件及び第2運転ステップに従って基板に第2層の膜を成膜する。サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13は、サーボモータを駆動(回転)させてそれら第1~第6坩堝のうちの第2番目に指定された坩堝17を指定座標(電子ビーム照射位置)に配置する。指定座標(電子ビーム照射位置)に配置された第2番目の坩堝17の放射温度計は、その坩堝17の温度を測定し、測定した温度をサーバ11に送信する。
【0141】
サーバ11のPLC操作アプリケーションは、サンプルホルダー50の基板セット部に基板がセット(配置)されていると判断し、アーム49の載置部51が搬送チャンバー19の搬送スペース20に位置していると判断し、サンプルホルダー50がサンプルステージ31に固定されていると判断するとともに、搬送ゲートバルブのゲートが閉められていると判断し、更に、蒸着チャンバー15の真空度が第2閾値に達ししていると判断した場合、膜厚コントローラ12及びPLC13に蒸着開始信号を送信する。サーバ11のPLC操作アプリケーションは、蒸着チャンバー15の真空度が第3閾値に達していると判断した場合、電子ビーム照射信号を膜厚コントローラ12及びPLC13に送信する。サーバ11のPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13は、偏向型電子銃18に電子ビーム照射信号を送信する。電子ビーム照射信号を受信した偏向型電子銃18は、所定の出力で電子ビーム(電子線)を発射する。
【0142】
偏向型電子銃18から発射された電子ビーム(電子線)は、指定座標(電子ビーム照射位置)に位置する第2番目として指定された坩堝17に収容された蒸着材料に照射される。第2番目として指定された坩堝17に収容された蒸着材料は、電子ビームによって所定温度に加熱されて蒸発し、蒸気となって坩堝17の頂部開口から放出される。坩堝17の頂部開口から放出された蒸着材料の蒸気は、蒸着チャンバー15の収容スペース16(内部)を次第に上昇して防着板34の中央に穿孔された開口39を通過し、サンプルホルダー50の基板セット部にセットされた基板に蒸着する。基板には、蒸着材料からなる第2層の所定の膜厚の膜が成膜される。
【0143】
膜厚センサ30は、基板に成膜された第2層の膜の膜厚を測定し、測定した膜厚をサーバ11及び膜厚コントローラ12に送信する。膜厚コントローラ12は、膜厚センサ30から送信された膜厚を参照し、基板に成膜された第2層の膜の膜厚が設定膜厚になった場合、PLC13及びサーバ11に成膜完了信号を送信する。成膜完了信号を受信したPLC13は、電子ビーム停止信号を偏向型電子銃18に送信する。電子ビーム停止信号を受信した電子銃18は、電子ビームの照射を停止する。
【0144】
成膜完了信号を受信したサーバ11の成膜制御アプリケーションは、第3層の膜の成膜条件及び第3運転ステップを膜厚コントローラ12に送信する。成膜完了信号を受信した膜厚コントローラ12は、サーバ11の成膜制御アプリケーションから受信した第3層の膜の成膜条件及び第3運転ステップに従って基板に第3層の膜を成膜する。このように、真空蒸着成膜システム10では、サーバ11の成膜制御アプリケーションが1層毎の膜の成膜が完了する度毎に次層の膜の成膜条件及び運転ステップを膜厚コントローラ12に送信し、膜厚コントローラ12が、サーバ11の成膜制御アプリケーションから送信された第1~第n層の膜の成膜条件及び第1~第n運転ステップに従って基板に第1~第n層の膜を成膜する。
【0145】
真空蒸着成膜システム10は、第1層の膜の成膜条件及び第1運転ステップを膜厚コントローラ12に送信し、その成膜条件及び第1運転ステップに基づいた第1層の膜の成膜が完了した後、第2層の膜の成膜条件及び第2運転ステップを膜厚コントローラ12に送信し、その成膜条件及び第2運転ステップに基づいた第2層の膜の成膜が完了した後、第3層の膜の成膜条件及び第3運転ステップを膜厚コントローラ12に送信するように、1層毎の膜の成膜が完了する度毎に次層の膜の成膜条件及び運転ステップを膜厚コントローラ12に送信することで、蒸着材料からなる第1~第n層の膜を基板に確実に成膜することができる。
【0146】
基板に第1~第n層の膜が成膜された後、サーバ11のPLC操作アプリケーションは、基板搬出信号をPLC13に送信する。基板搬出信号を受信したPLC13は、冷却機構の制御部にOFF信号を送信する。OFF信号を受信した冷却機構の制御部は、冷却機構の起動を停止する。PLC12は、搬送ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部に開信号を送信する。PLC13(サーバ11)から開信号を受信したエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて搬送ゲートバルブのゲートを開けて連通路52を開放し、搬送チャンバー19と蒸着チャンバー15とを連通させる。搬送ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、開状態信号をサーバ11に送信する。
【0147】
PLC13は、エアシリンダーの制御部に前進信号を送信する。PLC13から前進信号を受信したエアシリンダーの制御部は、アーム49を幅方向へ延伸させる。アーム49が搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15に向かって幅方向へ延伸することで、アーム49の載置部51が搬送チャンバー19から蒸着チャンバー15に向かって幅方向へ移動し、アーム49の載置部51が蒸着チャンバー15の収容スペース16(サンプルステージ31の直下)に位置する。
【0148】
アーム49の載置部51が蒸着チャンバー15の収容スペース16に位置すると、アーム用位置センサは、蒸着チャンバー15の搬送完了位置にエアシリンダーのアーム49の載置部51が位置していることをPLC13を介してサーバ11に送信する。アーム用位置センサから搬送完了位置にアーム49の載置部51が位置していることを受信したサーバ11のPLC操作アプリケーションは、PLC13を介してチャック機構32を起動させる。
【0149】
起動したチャック機構32は、第1及び第2アーム37a,37bをサンプルステージ31から蒸着チャンバー15の底面壁26に向かって上下方向下方へ下降させ、第1及び第2鉤爪38a,38bをサンプルステージ31の下面36から蒸着チャンバー15の底面壁26に向かって上下方向下方へ移動させる。第1及び第2アーム37a,37bが下方へ下降し、第1及び第2鉤爪が38a,38b下方へ移動することで、第1及び第2鉤爪38a,38bに支持されたサンプルホルダー50がサンプルステージ31の下面36から蒸着チャンバー15の底面壁26に向かって上下方向下方へ移動し、サンプルステージ31の下面36に対するサンプルホルダー50の固定が解除される。
【0150】
第1及び第2鉤爪38a,38bに支持されたサンプルホルダー50が下方へ下降し、第1及び第2鉤爪38a,38bに支持された状態でサンプルホルダー50がエアシリンダーのアーム49の載置部51に載置された後、第1及び第2アーム37a,37bが幅方向外方へ移動し、それに伴って第1及び第2鉤爪38a,38bが幅方向外方へ移動して第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルホルダー50の両側部から外れ、第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルホルダー50の下方であってサンプルホルダー50の両側部の外側近傍に位置する。それによって、サンプルホルダー50のみがアーム49の載置部51に載置される。
【0151】
第1及び第2鉤爪38a,38bがサンプルホルダー50の両側部の外側近傍に位置した後、チャック機構32は、第1及び第2アーム37a,37bと第1及び第2鉤爪38a,38bとを上下方向上方へ上昇させる。第1及び第2アーム37a,37bは、蒸着チャンバー15の底面壁26の側から頂面壁25に向かって上下方向上方へ同期して短縮する。上方へ上昇した第1及び第2アーム37a,37bと第1及び第2鉤爪38a,38bとがサンプルステージ31の周面35の外側近傍に位置すると、それらアーム37a,37bの上昇(短縮)が停止する。
【0152】
それらアーム37a,37bの上昇が停止した後、PLC13は、エアシリンダーの制御部に後退信号を送信する。PLC13から後退信号を受信したエアシリンダーの制御部は、アーム49を幅方向へ短縮させる。アーム49の載置部51及びサンプルホルダー50が蒸着チャンバー15の収容スペース16(内部)に位置した状態において、エアシリンダーの稼働によってアーム49が蒸着チャンバー15から搬送チャンバー19に向かって幅方向へ短縮すると、サンプルホルダー50を載せたアーム49の載置部51が蒸着チャンバー15から搬送チャンバー19に向かって幅方向へ移動して載置部51とともにサンプルホルダー50が搬送チャンバー19の搬送スペース20に位置する。
【0153】
アーム49の載置部51及びサンプルホルダー50が搬送スペース20に位置した後、PLC13は、搬送ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部に閉信号を送信する。PLC13から閉信号を受信したエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、エアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)を駆動させて搬送ゲートバルブのゲートを閉め、搬送チャンバー19と蒸着チャンバー15との連通を遮断する。搬送ゲートバルブのエアシリンダー(又は電動リニアアクチュエーター)の制御部は、閉状態信号をサーバ11に送信する。
【0154】
PLC13は、第2真空ポンプの制御部にOFF信号を送信する。PLC13からOFF信号を受信した第2真空ポンプの制御部は、第2真空ポンプの出力を次第に減少させつつ第2真空ポンプを停止させる。搬送チャンバー19の搬送スペース20は、次第に大気圧に戻る。搬送チャンバー19の搬送スペース20が大気圧に戻った後、蒸着終了画面(図示せず)がディスプレイ22に出力(表示)される。蒸着終了画面には、蒸着終了及び可能メッセージ、サンプルホルダー搬出終了ボタンが出力(表示)される。
【0155】
ディスプレイ22に蒸着終了画面が出力(表示)された後、搬送チャンバー19のサンプル投入用ハッチ48を幅方向へスライドさせて搬送スペース20を開放し、アーム49の載置部51からサンプルホルダー50を取り上げ、搬送チャンバー19の搬送スペース20からサンプルホルダー50を取り出す。次に、サンプル投入用ハッチ48を幅方向へスライドさせて搬送スペース20を閉鎖し、ディスプレイ33に出力(表示)された蒸着終了画面のサンプルホルダー搬出終了ボタンをタップする。サンプルホルダー搬出終了ボタンをタップすると、初期画面がディスプレイ22に出力(表示)される。サンプルホルダー50の基板セット部にセットされた基板を基板セット部から取外し、基板への膜の蒸着作業が終了する。以上の操作を繰り返すことで、基板への膜の蒸着作業を繰り返すことができる。
【0156】
真空蒸着成膜システム10は、成膜制御アプリケーションによって設定した成膜条件で真空蒸着成膜システム10が稼働中に、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップによって成膜制御アプリケーションの動作が制限されたとしても、真空蒸着成膜システム10において稼働する各種複数のハードウェアをPLC操作アプリケーションによって動作するPLC13(programmable logic controller)がコントロール(操作)するから、成膜運転を停止することなく、真空蒸着成膜システム10において成膜運転を継続的に行うことができ、成膜制御アプリケーションの動作制限によるリスクを回避することができる。
【0157】
真空蒸着成膜システム10は、成膜制御アプリケーションを動作させるOS(オペレーティングシステム)のバージョンアップ中であっても、PLC操作アプリケーションによって動作するPLC13によって成膜運転を行う各種複数のハードウェアをコントロール(操作)することができ、成膜運転を行うそれらハードウェアを停止することなく、それらハードウェアを操作して成膜運転を継続的に行うことができる。
【符号の説明】
【0158】
10 真空蒸着成膜システム
11 サーバ
12 膜厚コントローラ
13 PLC(programmable logic controller)
14 電子銃制御電源
15 蒸着チャンバー
16 収容スペース(内部)
17 坩堝
18 偏向型電子銃
19 搬送チャンバー
20 搬送スペース(内部)
21 架台
22 ディスプレイ
23 正面壁(正面ハッチ)
24 背面壁
25 頂面壁
26 底面壁
27 側面壁
28 側面壁
29 観察窓
30 膜厚センサ
31 サンプルステージ
32 チャック機構
33 坩堝確認ミラー
34 防着板
35 周面
36 下面
37a 第1アーム
37b 第2アーム
38a 第1鉤爪
38b 第2鉤爪
39 開口
40 6点回転式回転テーブル
41 真空引き開口
42 頂面壁
43 底面壁
44 前面壁
45 後面壁
46 側面壁
47 側面壁
48 サンプル投入用ハッチ
49 アーム
50 サンプルホルダー
51 載置部
52 連通路
53 放出口
図1
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