(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076409
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】水道用節水具
(51)【国際特許分類】
E03C 1/08 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
E03C1/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187879
(22)【出願日】2022-11-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】303055349
【氏名又は名称】株式会社クリア
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】畠山 友行
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060CC11
(57)【要約】
【課題】節水効果が高く、水道水の使用感にも優れている水道用節水具の提供を目的とする。
【解決手段】円柱状の本体部に流入面側から流出面側に向けて貫通した複数の流路孔を有し、前記流路孔は5穴以上であり、それぞれの流路孔の内径は1mm以下であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の本体部に流入面側から流出面側に向けて貫通した複数の流路孔を有し、前記流路孔は5穴以上であり、それぞれの流路孔の内径は1mm以下であることを特徴とする水道用節水具。
【請求項2】
前記流路孔は5穴であり、前記5つの流路孔は同心円状に配置してあることを特徴とする請求項1記載の水道用節水具。
【請求項3】
前記流路孔の中心部を結ぶ同心円の大きさが流入面側より流出面側の方が大きいことを特徴とする請求項2記載の水道用節水具。
【請求項4】
前記流路孔は5穴であり、前記本体部の中心に1穴を有し、その周囲に同心円状に4穴を配置したことを特徴とする請求項1記載の水道用節水具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水栓に取り付けることで、節水効果が得られる水道用節水具に関する。
【背景技術】
【0002】
水道配管は、一般家庭のみならず、学校,病院,ホテル,各種施設等、多くの分野にて施工されている。
水道管内の水圧は、一般に2kgf/cm2以上あり、水栓を開くと水の勢いが強く、必要以上に流出する場合も多く、水資源の無駄になっている場合も多い。
そこで、本出願人は、これまでに3つの貫通した流路孔からなる節水具を提案している(特許文献1)。
上記節水具に対して、水道水の節水効果を同等以上にしつつ、水の使用感が向上させることができないか検討した結果、本発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、節水効果が高く、水道水の使用感にも優れている水道用節水具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る水道用節水具は、円柱状の本体部に流入面側から流出面側に向けて貫通した複数の流路孔を有し、前記流路孔は5穴以上であり、それぞれの流路孔の内径は1mm以下であることを特徴とする。
【0006】
詳細は後述するが、上記により本出願人がこれまで提案してきた3穴タイプを従来例とし、それと同等以上の節水効果を維持しつつ、流出面側から流出する水道水の流速を向上させることで、水道水の使用感が向上する。
【0007】
本発明において、流路孔は5穴であり、前記5つの流路孔は同心円状に配置してあってもよく、その場合に流路孔の中心部を結ぶ同心円の大きさが流入面側より流出面側の方が大きい配置であってもよい。
【0008】
また、本発明は、流路孔は5穴であり、前記本体部の中心に1穴を有し、その周囲に同心円状に4穴を配置してあってもよく、この場合にも周囲の4穴は使用場面に合せて流入面よりも流出面の方が外側に向けて傾けた放射状であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る節水具は、5穴以上にし、1つの流路孔の内径を1mm以下とすることで、従来の3穴タイプと同等以上に節水効果を有するとともに、さらに水道水の使用感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
節水具の流路孔の配置による解析結果を以下説明する。
【0012】
一般的な水栓とスパウト部との接続部に節水具を取り付けることを前提にする。
一般的な水道は、約20リットル/分であり、配管径をφ10mmとすると流量U=3.33×10-4m3/sであり、流速V=4.24m/sとなる。
特許文献1に記載したような3穴の従来の節水具は、流路孔の直径1.5mm,流路孔の長さ10mmである。
この場合に、流路孔の入口損失係数,流路孔内の摩擦損失係数(乱流),流路孔の出口損失係数の合計値をζ=1.51とし、修正ベルヌーイの式より流量を求めると、U1=2.11×10-4m3/sとなる。
また、流路孔出口の流速は、V1=39.7m/sとなる。
よって、流量は36.8%の節水になる。
【0013】
これに対して、節水具を
図1に示すように流路孔の直径d=φ1mm,流路孔の長さL=10mmの5穴にして、上記と同様の計算をすると、次のようになる。
流路孔出口の流速V
2=52.6m/s
流量U
2=2.07×10
-4m
3/s
従って、流量の割合は節水具無しの62.0%となるから、38.0%の節水となる。
このことは、「φ1.5mm×3穴」から「φ1.0mm×5穴」にすると、節水具による節水具無しに対する流量の割合は、3穴:63.2%,5穴:62.0%とほぼ同等でありながら出口での流速は、3穴:39.7m/s,5穴:52.6m/sとなることから、水流が速くなることによる使用感が大きく向上していることになる。
【0014】
そこで次に、流路孔に角度をつけることによる変化を数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)解析を用いて検討した。
図2に示すような解析モデルを用いて、CFD解析を行った。
図2において、上側の5穴から流入し、L字管の下側から流出する。
CFD解析ソフトは、ソフトウェアクレイドル社製Stream v2020を用い、MARS法により解析実時間で0.01sまで行い、0.01sにおける結果で比較した。
解析パターンとしては、
図3に示した5つのパターンで行った。
図3において、上段が側面図、下段が上面図である。
いずれも矢印が流れの方向を表している。
また、上面図において流路に表示している×は、紙面奥側に向かって流れることを意味
している。
パターン1:流路に角度を付けないで鉛直方向に流れ出る
パターン2:中心以外の流路に外向き5°の角度をつけて外壁に向かって流れ出る
パターン3:中心以外の流路に外向き5°かつ円周方向45°の角度をつけて渦巻状に流れ出る
パターン4:中心以外の流路に外向き3°の角度をつけて外壁に向かって流れ出る
パターン5:中心以外の流路に外向き3°かつ円周方向45°の角度をつけて渦巻状に流れ出る。
【0015】
図5~
図9に水の流れの分布を示す。
L字管の上側から下側に向けて流れ、図の右側は出口から見た水の分布である。
水の分布を見ると、従来のものは管路壁面に沿うように水が分布しており、中心部分は水の流れが無いことがわかる。
管路壁に沿うように水が流出し、管路中心部では水の流れを十分に感じられないことが予想される。
一方で、5穴のものはより管路の中心に近いところにも水が分布していることがわかる。
パターン1からパターン5は、従来のものに比べて、いずれも管路中心でより水の流れを感じられることが予想される。
【0016】
次に
図10に示した2ヶ所における流速を評価した。
その結果を
図11,
図12に示す。
流速評価線1においては、パターン1が最も早い流速となった。
次いでパターン4,パターン2が早い結果となった。
一方で、従来のものは、パターン2と同等な結果となっていた。
これは、従来のものは節水具の出口での流速は遅いが、その後の管路内での圧力損失が少なく、結果としてパターン2と同等な結果となったと考えられる。
流速評価線2においては、流速評価線1と同様に、パターン1が最も早い流速となった。
次いで、パターン4と従来のものが同等の流速となっている。
水の分布の結果から、従来のものは管路壁面により多くのが集まる結果となっている。
つまり、従来のものは管路壁面付近に水が集まり、管路壁面付近での流速が早い結果となる。
一方で、パターン1の場合は、従来のものよりも全体的に流速が早くなるとともに、管路中心近くにも水が分布するため、従来のものよりも使用感の向上が期待できる。
また、パターン4は、従来のものに比べて、管中心近くで高い流速を示し、パターン1よりもより広い範囲に水が広がっていることから、従来のものよりも使感の向上が期待できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の本体部に流入面側から流出面側に向けて貫通した複数の流路孔を有し、それぞれの流路孔の内径は1mm以下であり、
前記流路孔は5穴であり、前記本体部の中心に1穴を有し、その周囲に同心円状に4穴を配置し、前記同心円状に配置した4穴は流入面よりも流出面の方が外側に向けて傾けた放射状であることを特徴とする水道用節水具。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓とスパウト部との接続部に取り付ける水道用節水具であって、
円柱状の本体部に流入面側から流出面側に向けて貫通した複数の流路孔を有し、それぞれの流路孔の内径は1mm以下であり、
前記流路孔は5穴であり、前記本体部の中心に中心軸方向の1穴を有し、その周囲に同心円状に4穴を配置し、前記同心円状に配置した4穴は流入面よりも流出面の方が外側に向けて3~5°傾けた放射状であり、内径1.5mmで3穴の流路孔を有する水道用節水具と同等の節水効果を有しながら、それより相対的に管中心近くで速い流速を示し、水の広がり範囲が広い使用感を向上させたことを特徴とする水道用節水具。