(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076414
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20240530BHJP
F16B 37/08 20060101ALI20240530BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H02G3/30
F16B37/08 B
B60R16/02 623C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187889
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】592077121
【氏名又は名称】竹内工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】村吉 幸太
【テーマコード(参考)】
5G363
【Fターム(参考)】
5G363AA16
5G363BA01
5G363DA13
5G363DA15
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1部品として構成され、安定した固定状態が得られる一方で、固定及び固定解除の作業の簡略化を図った固定具を提供する。
【解決手段】シャーシ100に立設されたスタッドボルト101に固定して、ケーブル等の被支持部材を当該基体に支持する固定具1であって、スタッドボルト101に固定されるベース2と、ベース2にヒンジ4を介して一体形成され、ヒンジ4により回動されてベース2に結合されるカバー3と、を備える。ベース2は、内部にスタッドボルト101が挿入され、かつ、径方向に弾性変形可能な係合片24を有する筒状の係合スリーブ22を備える。カバー3は、ベース2に結合されたときに係合スリーブ22の外周側に嵌合され、係合片24を内径方向に弾性変形してスタッドボルト101のネジ溝に押圧させる締結スリーブ35を備える。ベース2とカバー3の少なくとも一方によって被支持部材を支持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に立設されたスタッドボルトに固定してケーブル等の被支持部材を当該基体に支持する固定具であって、前記スタッドボルトに固定されるベースと、このベースにヒンジを介して一体形成され、当該ヒンジにより回動されて前記ベースに結合されるカバーとを備えて構成され、前記ベースは内部に前記スタッドボルトが挿入され、かつ径方向に弾性変形可能な筒状の係合スリーブを備え、前記カバーは前記ベースに結合されたときに前記係合スリーブの外周側に嵌合され、当該係合スリーブを内径方向に弾性変形させる締結スリーブを備え、前記ベースと前記カバーの少なくとも一方において前記被支持部材が支持される構成であることを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記係合スリーブの外周面と前記締結スリーブの内周面の少なくとも一方は筒軸方向に傾斜を有する錘面に形成され、前記係合スリーブに対する前記締結スリーブの筒軸方向の位置変化により前記係合片の径方向の変形量が変化される請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記ベースと前記カバーの一方に、前記カバーと前記ベースの結合状態を保持し、かつ当該結合状態を解除することが可能なロック部を備える請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記係合スリーブは円周方向に配設された複数のスリットにより分割された係合片を備える請求項2に記載の固定具。
【請求項5】
前記ベースと前記カバーの少なくとも一方に、前記被支持部材を支持する支持部材の連結部が配設されている請求項2に記載の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基体に立設されたスタッドボルトに対して固定され、当該基体にケーブル等の被支持部材を固定支持するための固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のシャーシやパネル等の基体に対してケーブル等を支持する場合に、基体に立設されたスタッドボルトを利用して固定具を固定し、この固定具にケーブルを支持する構成が提案されている。例えば、特許文献1には、ホースを支持するホースクリップのクリップ本体に連結スリーブが設けられ、この連結スリーブ内に車体パネルに立設されたスタッドボルトを嵌入させることにより、連結スリーブの内面の係止爪がスタッドボルトのネジ溝に係合され、クリップ本体がスタッドボルトに接続固定される技術が記載されている。
【0003】
特許文献2には、固定具としてのスタッドクリップをベース部とロック部の2部品で構成し、車体パネルに立設されたスタッドボルトにベース部の挿通孔に挿通させ、ベース部の弾性係合片をスタッドボルトのネジ溝に係止させてスタッドクリップを固定する技術が記載されている。また、この特許文献2には、ベース部に対してロック部を連結し、ロック部をベース部に対して移動操作することにより弾性係合片の係止状態を保持あるいは解除する技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-71520号公報
【特許文献2】特開2021-55712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、クリップ本体に外力が加えられたときに、係止爪がスタッドボルトのネジ溝との係止から外れることがあり、安定した固定状態を保持することが難しいという課題がある。また一方で、クリップ本体をスタッドボルトから取り外す際に、係止爪とネジ溝との係止を解除するための操作が面倒であるという課題がある。
【0006】
特許文献2の技術は、ロック部により弾性係合片での係止を保持しているので、特許文献1に比較して安定した固定状態を得る上で有効である。しかし、ロック部とベース部が別体の2部品で構成されており、部品点数が増えるという課題がある。また、スタッドクリップの装着や取外しの際に、ロック部をベース部に対して上下方向及び回転方向に操作する作業が必要であり、作業性の点で必ずしも好ましくないという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、1部品として構成され、安定した固定状態が得られる一方で、固定及び固定解除の作業の簡略化を図った固定具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の固定具は、基体に立設されたスタッドボルトに固定してケーブル等の被支持部材を当該基体に支持する固定具であり、スタッドボルトに固定されるベースと、このベースにヒンジを介して一体形成され、当該ヒンジにより回動されてベースに結合されるカバーとを備えて構成される。その上で、ベースは内部にスタッドボルトが挿入され、かつ径方向に弾性変形可能な筒状の係合スリーブを備え、カバーはベースに結合されたときに係合スリーブの外周側に嵌合され、係合スリーブ内径方向に弾性変形させる締結スリーブを備える。さらに、ベースとカバーの少なくとも一方において被支持部材が支持される構成である。
【0009】
本発明において、係合スリーブの外周面と締結スリーブの内周面の少なくとも一方は筒軸方向に傾斜を有する錘面に形成され、係合スリーブに対する締結スリーブの筒軸方向の位置変化により係合片の径方向の変形量が変化される構成とすることが好ましい。また、ベースとカバーの一方に、カバーとベースの結合状態を保持し、かつ当該結合状態を解除することが可能なロック部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベースとカバーがヒンジを介して一体に形成された1部品として構成されるので、部品点数が低減でき、製造及び取り扱いが簡略化できるとともに低コスト化を図ることができる。また、固定具をスタッドボルトに固定する作業は、ベースをスタッドボルトに挿通させた上でカバーを閉じてベースに結合させる作業でよく、操作性が改善される。さらに、係合リブは締結スリーブによりスタッドボルトとの係合が保持されるので安定した固定状態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態の固定具を取り付ける状態を説明する斜視図。
【
図3】実施形態の固定具を固定する状態を説明する拡大断面図。
【
図4】実施形態の固定具にケーブルを支持する形態の斜視図。
【
図5】実施形態の固定具にケーブルを支持する他の形態の斜視図。
【
図7】変形例の固定具にケーブル支持する形態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明を、電子機器の基体の一部としてのシャーシにケーブル等の被支持部材を支持させるための固定具1に適用した実施形態の外観図である。なお、以降の説明において、上下方向は
図1を基準にしている。シャーシ100の表面一部には所要の長さを有するスタッドボルト101が立設されている。このスタッドボルト101は、外周面にネジ溝を有する雄ネジで構成され、その一端においてシャーシ100に固定されている。この固定具1は、このスタッドボルト101に対して固定される。
【0013】
固定具1は樹脂の一体成形により形成されており、それぞれ所要の幅寸法及び長さ寸法を有する矩形状をしたベース2とカバー3を備えている。また、これらベース2とカバー3はそれぞれの基端部20,30においてヒンジ4により連結されており、このヒンジ4の屈曲により、カバー3は基端部を支点にしてベース2に対して回動されることが可能とされている。そして、カバー3が回動されてベース2に当接されたときに、当該カバー3はベース2の上部を覆う状態でベース2に結合されるようになっている。
【0014】
前記ベース2は、基端部20と反対側の先端部21は平板状に形成されており、この先端部21の上面に係合スリーブ22が突出状態に立設されている。この係合スリーブ22は略円筒状に形成されており、その内径寸法はスタッドボルト101の外径寸法よりも大きな寸法とされている。係合スリーブ22の突出側の領域の外周面22aは先端に向けて外径寸法が小さくなるテーパ状の円錐面に形成されている。また、この係合スリーブ22には円周方向の複数箇所(ここでは4箇所)に筒軸方向に延びるスリット23が形成されており、このスリット23により係合スリーブ22には円周方向に分断された複数の係合片24が形成される。各係合片24は突出端側が径方向に弾性変形されることが可能とされるとともに、各係合片24の内周面には内径方向に突出した筒軸方向に延びる係合リブ24aが形成されている。
【0015】
前記ベース2の先端部21の端縁には、ロック部を構成するロック片25が設けられている。このロック片25は先端部21から上方に向けて立設されており、ベース2よりも小さい幅寸法を有している。このロック片25の高さ寸法はカバー2の高さ寸法よりも長くされており、その上端部の幅方向の両側には、それぞれベース2の基端部20側に向けて突出した一対の楔状のフック25aが形成されている。このフック25aは後述するようにカバー3に係合され、カバー3の回動をロックする機能を有する。
【0016】
前記ベース2の基端部20は、幅方向の両側部と長さ方向の端部にそれぞれ下方向に向けて取付溝20aが開口されたテーブル状に形成されている。この基端部20の端面には幅方向の両側にそれぞれ板厚方向に屈曲が可能なヒンジ片41が形成されており、前記したヒンジ4が構成されている。また、基端部20には、後述するカバー3の取付穴37に対応する逃げ穴26が開口されているが、この逃げ穴は必ずしも形成されなくてもよい。
【0017】
前記カバー3はベース2と略等しい幅寸法と長さ寸法を有し、底壁32、端壁33、側壁34を有する矩形容器状に形成されている。このカバー3は、基端部30の端壁33において前記ヒンジ片41、すなわちヒンジ4を介してベース2に連結されている。これにより、カバー3はヒンジ4を支点にして、すなわち基端部30を支点にして回動されることが可能であり、ベース2の上側を覆う状態まで回動される。
【0018】
カバー3の先端部31には、カバー3がベース2に結合された状態のときにベース2の係合スリーブ22に対向される位置に、円筒状をした締結スリーブ35が立設されている。この締結スリーブ35の内周面35aは開口端から奥方に向けて内径寸法が徐々に小さくなるテーパ状の逆円錐面として形成されている。また、締結スリーブ35の開口端における内径寸法は係合スリーブ22の上端の外径寸法よりも幾分大きい寸法とされ、奥方の内径寸法は係合スリーブ22の上端の外径寸法よりも幾分小さい寸法とされている。そして、ベース2を覆う位置までカバー3を回動したときには、締結スリーブ35は係合スリーブ22の外周側に嵌合され、締結スリーブ35の内周面35aが係合スリーブ22の外周面22aに当接される。これにより、カバー3はベース2に結合される。なお、ここでの結合は、カバー3とベース2が一体的に組み立てられることを意味している。
【0019】
カバー3の先端部31側の端壁33の幅方向の中央には、ベース2のロック片25の幅寸法に略等しい寸法の凹溝36が形成されており、この凹溝36内にカバー3の底壁32の端縁32aが露呈されている。カバー3がベース2に結合された状態のときに、ロック片25はこの凹溝36に内挿され、これと同時にロック片25の一対のフック25aは当該底壁32の端縁32aに係合され、カバー3をベース2に対してロックする。ロックした状態では、ロック片25の上端部はカバー3の底壁32よりも上方に突出された状態とされる。
【0020】
カバー3の基端部30では、端壁33と側壁34にそれぞれ所要寸法の取付溝30aが切り欠かれている。これら3つの取付溝30aは、カバー3がベース2に結合されたときに、ベース2に設けられている各取付溝20aにそれぞれ対応位置され、後述するようにケーブル支持部材の結束バンドをこれらの取付溝20a,30aに挿通することが可能とされている。また、カバー3の基端部30の底壁32には所要の径寸法の取付穴37が開口されており、後述するようにケーブル支持部材を取り付けることが可能とされている。
【0021】
以上の構成の実施形態の固定具1における固定作業と取外し作業を、
図2を参照して説明する。固定具1をシャーシ100に固定する際には、
図2(a)に示すように、先ずベース2をスタッドボルト101に対して取り付ける。すなわち、カバー2とベース3を開いた状態でベース2の係合スリーブ22をスタッドボルト101に位置合わせし、ベース2の下面がシャーシ100の上面に接する状態になるまで押し下げる。これにより、ベース2の係合スリーブ22内にスタッドボルト101が挿通される。
【0022】
次いで、
図2(b)に示すように、ヒンジ片41を屈曲させてカバー3がベース2を覆う状態となるまで回動する。このとき、カバー3の端壁33と側壁34はベース2の周縁を囲む状態に位置される。また、締結スリーブ35は係合スリーブ22の外周側に嵌合され、カバー3とベース2との結合が行われる。なお、スタッドボルト101の長さ寸法がカバー3の高さ寸法よりも長いときには、スタッドボルト101の先端はカバー3の締結スリーブ35を通して固定具1の上方に突出される。この実施形態では、スタッドボルト101の長さ寸法は固定具1の高さ寸法と略同じである。
【0023】
図3は固定具1をスタッドボルト101に固定するときの状態を示す拡大断面図である。
図3(a)に示すように、カバー3がベース2に向けて白矢印の方向に回動されて行き、
図2(b)に示した状態まで回動されると、
図3(b)に示すように締結スリーブ35が係合スリーブ22に嵌合される状態となる。この状態になると、締結スリーブ35の内周面35aが係合スリーブ22の係合片24の外周面に22a当接される。これら外周面35aと内周面22aはそれぞれ錘面に形成されているので、嵌合が進むのに伴って締結スリーブ35は複数の係合片24を黒矢印のように内径方向に押圧し、各係合片24は内径方向に弾性変形される。
【0024】
これにより、各係合片24に設けられている係合リブ24aがスタッドボルト101のネジ溝に押圧されて当該ネジ溝が係合リブ24aの内面に食い込まれ、係合リブ24aにはスタッドボルト101のネジ溝に対応した複数の凹凸が形成される。これらの凹凸はネジ溝に係合された状態にあるので、係合スリーブ22はスタッドボルト101に対してボルト軸方向の移動が規制され、結果としてベース2はスタッドボルト101に対して固定される。すなわち、ベース2及びこれと一体のカバー3で構成される固定具1はスタッドボルト101からの抜け出しが防止され、スタッドボルト101に対して固定される。
【0025】
一方、
図3(b)に示したように、カバー3がベース2に結合されたときには、ベース2のロック片25はカバー3の凹溝36に内挿される。このとき、ロック片25は一対のフック25aがカバー3の底壁32の端部を乗り越えるように弾性変形され、その後に弾性復帰されて各フック25aは底壁32の端縁32aに係合される。これにより、カバー3の回動が規制され、カバー3がベース2に結合された状態にロックされる。カバー3がロックされることにより、締結スリーブ35が係合スリーブ24に嵌合した状態もロックされることになり、係合片24が外径方向に弾性変形してスタッドボルト101との係合が外れることが防止される。したがって、固定具1のスタッドボルト101に対する安定した固定状態が保持される。
【0026】
以上のように、固定具1をスタッドボルト101に対して固定した後は、
図4に示すように、固定具1に設けた取付溝30aにケーブル支持部材として、例えば公知の結束バンド111を挿通して連結する。このとき結束バンド111はベース2の凹溝20aも挿通される。したがって、これらの取付溝30a,20aはケーブル支持部材の連結部として構成される。この結束バンド111でケーブル120を結束することにより、当該ケーブル120を固定具1、さらにはシャーシ100に支持することができる。
【0027】
あるいは、
図5(a)に示すように、ケーブル支持部材として公知のスナップ型のケーブルファスナー112を利用することもできる。このケーブルファスナー112をカバー3に設けた取付穴37に嵌入して連結する。このときケーブルファスナー112のサイズの違いによってベース2の逃げ穴26にも嵌入されることがある。したがって、この取付穴37や逃げ穴26はケーブル支持部材の連結部として構成される。このケーブルファスナー112でケーブル120を固定具1、ないしシャーシ100に支持することができる。ケーブルファスナー112は、固定具1をスタッドボルト101に固定する前に、予めカバー2に連結させておいてもよい。
【0028】
この実施形態の固定具1では、ベース2とカバー3がヒンジ4を介して一体に形成された1部品として構成されているので、特許文献2のような2部品の構成に比較して部品点数が低減でき、製造及び取り扱いが簡略化できるとともに低コスト化を図ることができる。また、固定具1をスタッドボルト101に固定する作業は、単に、ベース2にスタッドボルト101を挿通させた上でカバー3を閉じてベース2に結合させる作業でよく、特許文献2のようにロック部に対して複雑な操作を行う必要がなく作業性が改善される。
【0029】
また、固定具1をスタッドボルト101に対して固定したときには、ロック部、すなわちロック片25によりカバー3とベース2との結合状態が保持されるので、固定具1に外力が加えられたときにもカバー3とベース2の結合状態が簡単に崩されることはない。特許文献2は弾性力を利用してロック状態を保持しているため、外力によって比較的容易にロック状態が外れてしまうことがある。
【0030】
このようにカバー3とベース2の結合状態が保持されるので、締結スリーブ35と係合スリーブ22との嵌合状態も保持され、スタッドボルト101に対する係合スリーブ22の固定状態が保持される。これに加えて、係合片24の係合リブ24aには、スタッドボルト101のねじ溝による複数の凹凸が自己整合的に形成されてスタッドボルト101のネジ溝に係合されるので、特許文献2のように弾性係合片がネジ溝の1箇所に係合する構成に比較してボルト軸方向への移動を規制する効果が高められ、安定した固定状態が得られる。
【0031】
固定具1をスタッドボルト101から取り外す際には、ロック片25の先端を指等により操作してフック25aとカバー3の底壁32の端縁32aとの係合を外し、ロック状態を解除する。これにより、カバー3の回動が可能となり、カバー3を結合時とは反対方向に回動してベース2との結合状態を解除することが可能になる。この結合状態の解除により、締結スリーブ35と係合スリーブ22との嵌合状態も解除でき、係合片24が径方向に弾性変形することが可能になる。したがって、ベース2をスタッドボルト101から引き抜く作業を行えば、係合片24が外径方向に弾性変形してスタッドボルト101のネジ溝との係合が解除され、ベース2をスタッドボルト101から取り外すことが可能になる。したがって、固定具1をスタッドボルト101から取り外す作業において、特許文献2のようなロック部を複雑に移動させる操作は不要であり、取外し作業は容易である。
【0032】
取り外した後の固定具1は、係合片24の係合リブ24aにスタッドボルト101のネジ溝に対応した凹凸が形成されているのみあり、他の部位は何らの損傷を受けることもない。そのため、固定具1の再利用が可能である。再利用時には、前記したと同様に、ベース2にスタッドボルト101を挿通し、締結スリーブ35で締結を行えばよく、この際に係合リブ24aに形成されている凹凸は自己整合的にスタッドボルト101のネジ溝に係止されるので、再利用に際しての固定具1の固定の信頼性が低下することもない。
【0033】
図6は本発明の変形例の固定具1Aの斜視図である。実施形態と等価な部位には同一の符号を付してある。この変形例では、ベース2の基端部20も先端部21と同様に平板状に形成されており、先端部21には実施形態と同様な係合スリーブ22が立設され、ロック片25が形成されている。一方、基端部20には端壁27が設けられるとともに、長さ方向の略中央位置に一対の案内壁28が立設されており、これら端壁27と案内壁28との間にケーブルを挿通させることが可能な空所20bが形成されている。
【0034】
また、この固定具1Aのカバー3は、基端部30において側壁34の一部が除去されて凹溝30bが形成されるとともに、当該基端部30には逃げ穴は開口されておらず、基端部30は平板状に形成されている。
【0035】
この変形例では、
図7(a)に示すように、固定具1Aをスタッドボルトに対して固定する際に、ケーブル120をベース2の空所20b内を挿通し、その上で、図示は省略するが実施形態と同様にベース2にスタッドボルトを挿通させる。しかる上で、
図7(b)に示すように、カバー3をベース2に結合させると、締結スリーブ35と係合スリーブ22により固定具1Aがスタッドボルトに固定される。また、これと同時に、ケーブル120はベース2の空所20bとカバー3の凹溝30bとの間に挟持(クランプ)した状態で支持される。したがって、固定具1Aの固定作業とケーブル120の支持作業を同時に行うことができ、作業性が改善される。
【0036】
なお、この変形例の固定具1Aにおいても、空所20bと凹溝30bを利用して
図4に示した結束バンド111でのケーブルの支持が可能となる。また、カバー2に実施形態と同様の取付穴(37)を開口しておけば
図5に示したケーブルファスナー112によるケーブルの支持が可能となる。
【0037】
本発明の固定具は実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではない。例えば、係合スリーブと締結スリーブの構成において、係合スリーブの外周面や締結スリーブの内周面の一方は緩やかな曲面からなるテーパ面で構成されてもよい。また、締結スリーブは係合スリーブの係合片を内径方向に押圧する構成であれば必ずしも完全な筒状でなくてもよい。係合片は実施形態よりも多数に分割形成されてもよく、その場合には係合片の内面に設ける係合リブを省略することも可能となる。さらに、係合スリーブが径方向に弾性変形できる構成であれば、特に係合片は形成されなくてもよい。
【0038】
また、ロック部については、カバーとベースとの結合状態を保持する構成であれば、実施形態の構成に限られることはない。例えば、ロック片はカバーに設けられてベースに係合する構成としてもよい。さらに、ベースとカバーの形状、特にケーブルを支持するための取付穴や取付溝の形状や位置、個数についても適宜に変更することは可能である。
【0039】
本発明における基体は機器のシャーシに限られるものではなく、各種装置のパネルや基板等であってもよい。また、本発明おけるスタッドボルトは、スタッドボルトと同等の構成のロッド部材、例えば外周面に多数の環状溝を軸方向に配列したロッド状の部材、あるいは外周面に凹凸を形成したロッド状の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1,1A 固定具
2 ベース
3 カバー
4 ヒンジ
22 係合スリーブ
23 スリット
24 係合片
25 ロック片(ロック部)
35 締結スリーブ
41 ヒンジ片
100 シャーシ(基体)
101 スタッドボルト
111 結束バンド(支持部材)
112 ケーブルファスナー(支持部材)
120 ケーブル(被支持部材)