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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076421
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】対象物移動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20240530BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20240530BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
E05F11/48 D
E05F15/689
B60J1/17 A
B60J1/17 B
B60J1/17 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187901
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】毛利 太一
(72)【発明者】
【氏名】今岡 隆之
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA13
2E052EC01
3D127AA07
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF03
3D127DF09
3D127DF14
3D127DF26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】緩衝部材と受け部との当接により移動部材から緩衝部材が脱落してしまうことを抑制可能な対象物移動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置と、駆動装置によって巻き取りと繰り出しとが行われるインナーケーブル6と、インナーケーブル6の巻き取りと繰り出しとにより移動対象物とともに昇降移動する移動部材10と、移動部材10と摺動自在に係合し、移動部材10の移動を案内可能であり、移動対象物の移動方向に延伸するガイドレール5と、移動部材10に設けられた緩衝部材20と、ガイドレール5に取り付けられる部材に設けられる、緩衝部材20と当接して移動部材10の移動を規制する受け部31Aとを備える。受け部31Aは、緩衝部材20の当り部と当接する傾斜部34Aに、緩衝部材20との間での摩擦力が受け部31Aの他の部分より高い高摩擦力部36Aを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、
前記駆動部によって巻き取りと繰り出しとが行われるケーブルと、
移動対象物が取り付けられ、前記ケーブルの巻き取りと繰り出しとにより前記移動対象物とともに昇降移動する移動部材と、
前記移動部材と摺動自在に係合し、前記移動部材の移動を案内可能であり、前記移動対象物の移動方向に延伸するガイドレールと、
前記移動部材に設けられた緩衝部材と、
前記ガイドレールに取り付けられる部材に設けられる、前記緩衝部材と当接して前記移動部材の移動を規制する受け部と、
を備え、
前記受け部は、
少なくとも前記緩衝部材の一部と当接する部位に、前記緩衝部材との間での摩擦力が前記受け部の他の部分より高い高摩擦力部を有する、
対象物移動装置。
【請求項2】
前記高摩擦力部は、前記受け部の前記緩衝部材と当接する部位に形成された凸部を含む、
請求項1に記載の対象物移動装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記ガイドレールが延伸する方向に直交する方向である幅方向に複数形成されている、
請求項2に記載の対象物移動装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記ガイドレールの幅方向に対して延伸するように形成されている、
請求項2または3に記載の対象物移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動対象物が取り付けられた移動部材を昇降させる対象物移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移動部材を昇降させる対象物移動装置として、例えば車両の窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、ウインドガラスを保持する移動部材であるキャリアプレートを昇降自在にガイドするガイドレールと、キャリアプレートに連結されたケーブルを往復駆動する駆動機構とを備えたウインドレギュレータが開示されている。上記のキャリアプレートの下端には緩衝部材が設けられており、駆動機構のハウジングには、キャリアプレートの下降時に上記の緩衝部材と当接してキャリアプレートの下降を規制する受け部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2012/002093号公報
【0005】
自動車のウインドレギュレータでは、ガイドレールが車外に向かって凸となるように湾曲しているため、ガイドレール上を摺動するキャリアプレートは、ケーブルによって引き下げられて下端位置に達し、キャリアプレートの緩衝部材が受け部に当接したときに、キャリアプレートの緩衝部材がガイドレールから離れる方向の回転モーメントを受ける。そのため、緩衝部材と受け部とが当接した後もキャリアプレートに対して下端方向への力が加わり続けたり、緩衝部材と受け部との当接が繰り返し行われると、上記の回転モーメントによりキャリアプレートから緩衝部材が脱落するおそれがあった。
【0006】
本発明は、緩衝部材と受け部との当接により移動部材から緩衝部材が脱落してしまうことを抑制可能な対象物移動装置を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る対象物移動装置は、駆動部と、前記駆動部によって巻き取りと繰り出しとが行われるケーブルと、移動対象物が取り付けられ、前記ケーブルの巻き取りと繰り出しとにより前記移動対象物とともに昇降移動する移動部材と、前記移動部材と摺動自在に係合し、前記移動部材の移動を案内可能であり、前記移動対象物の移動方向に延伸するガイドレールと、前記移動部材に設けられた緩衝部材と、前記ガイドレールに取り付けられ、前記緩衝部材と当接して前記移動部材の下降を規制する受け部と、を備え、前記受け部は、少なくとも前記緩衝部材と当接する部位に、前記緩衝部材との間での摩擦力を高めるための加工部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、緩衝部材と受け部との当接により移動部材から緩衝部材が脱落してしまうことを抑制可能な対象物移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一般的な対象物移動装置の斜視図の一例である。
図2】移動部材を前方側の下方から見た場合の斜視図の一例である。
図3】移動部材の周辺を前方側の上方から見た場合の斜視図の一例である。
図4】緩衝部材及びストッパを左側からみたときの側面を示す模式図の一例であって、(A)緩衝部材とストッパとが当接したときの状態を示す図、(B)緩衝部材が嵌合部から抜けるときの状態を示す図、(C)緩衝部材が嵌合部から抜けた後の状態を示す図、である。
図5】本実施形態に係る対象物移動装置が備える移動部材の周辺を前方側の上方から見た場合の斜視図の一例である。
図6】変形例に係る対象物移動装置が備える移動部材の周辺を前方側の上方から見た場合の斜視図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一例である実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る対象物移動装置は、例えば、車両のドア等に取り付けられ、移動対象物(例えば、車両の窓ガラス)の昇降を行うウインドレギュレータ等として用いられるものである。
【0011】
(対象物移動装置の概要)
図1は、一般的な対象物移動装置1の斜視図の一例である。この明細書において、図1に示される対象物移動装置1を前方側の上方から見ているものとして、方向を定義する。また、前方側から見た場合の左方を左側とし、前方側から見た場合の右方を右側と定義する。後述の図2図6についても、方向の定義は同じである。
【0012】
図1に示されるように、対象物移動装置1は、主に、駆動装置2と、上下方向に移動することが可能な移動部材10と、上下方向に所定の長さを有する略長方形状の板状部材で構成されたガイドレール5と、駆動装置2により移動部材10を上下方向に移動させるインナーケーブル6と、インナーケーブル6の配索経路をガイドレール5に沿わせるように規制するケーブルガイド7と、ガイドレール5の上端に設けられる方向転換部材8と、ブラケット9と、ストッパ30と、を備える。
【0013】
駆動装置2は、ガイドレール5の下端に取り付けられ、移動部材10の下限位置よりも下側に位置するように配置されている。この駆動装置2は、例えば、インナーケーブル6を巻き取り、送り出すドラム(不図示)と、このドラムを駆動するモータ3と、モータ3に連結されるウォームギア減速機等の減速機(不図示)を収容するためのハウジング4とを有する。なお、図1に示される対象物移動装置1では、駆動装置2がガイドレール5の下端に取り付けられているが、駆動装置の位置はこれに限定されるものではなく、ガイドレールの中央部や他の箇所に駆動装置が設けられていても良く、また、ガイドレールとは別体とする構成であってもよい。上記の「駆動装置2」は、本発明の「駆動部」に相当する。
【0014】
移動部材10は、ガイドレール5の一方の面と対向するように配置されており、上下方向に延びるガイドレール5に沿って摺動自在に係合されている。移動部材10の上下方向の移動は、ガイドレール5によって案内される。詳しくは図示しないが、移動部材10には、インナーケーブル6の端部を取り付けるためのケーブル端連結部が設けられている。また、移動部材10には、例えば車両の窓ガラス(不図示)をねじ等によって固定するための2つの固定孔12が形成されている。この移動部材10は、例えば合成樹脂等によって一体成型されているが、素材は特に合成樹脂に限定されない。移動部材10の素材は、金属であってもよいし、金属と合成樹脂とを組み合わせたもの等であってもよい。
【0015】
ガイドレール5は、亜鉛メッキ鋼板等の金属薄板であって、上下に弓なりに湾曲するよう形成されている。移動部材10の固定孔12に固定された例えば窓ガラスは、湾曲した軌跡で上下に昇降する。また、ガイドレール5には、ケーブルガイド7が取り付けられている。
【0016】
インナーケーブル6は、駆動装置2により移動部材10を上下に移動させるものであり、一方の端部がドラム(不図示)に巻き取られ、他方の端部が移動部材10に連結されている。インナーケーブル6は、ケーブルガイド7によって規制されていない状態においては、ガイドレール5の上端に設けられる方向転換部材8と、ガイドレール5の下端に設けられる上述のドラム(不図示)との間において、最短距離を通るように直線状に配索される。上記の「インナーケーブル6」は、本発明の「ケーブル」に相当する。
【0017】
ケーブルガイド7は、上述したようにガイドレール5に取り付けられており、インナーケーブル6が振動することによって生じる異音を抑制する機能を有する。ケーブルガイド7は、少なくとも一部が常にインナーケーブル6と接触しており、移動部材10が上下方向に移動するとき、インナーケーブル6が摺動するように構成されている。
【0018】
方向転換部材8は、インナーケーブル6の移動方向を変えるための部材として機能する。この方向転換部材は、プーリやケーブルガイド等、インナーケーブルを巻き掛けて配索方向を変えることが可能な部材であれば、特に限定されない。
【0019】
ブラケット9は、対象物移動装置1を、他の部材(例えば車両のドア)に取り付けるための部材である。
【0020】
ストッパ30は、移動部材10を下限位置で停止させるために、移動部材10の下方向に向けた移動を規制するものである。ストッパ30は、移動部材10が下方向に向けて移動したときに、移動部材10の移動を停止させたい下限位置において後述の緩衝部材20と当接する部材であり、移動部材10よりも下方において、ガイドレール5に設けられている。
【0021】
なお、緩衝部材20及びストッパ30は、いずれも、例えば、耐摩耗性に優れたPOM(ポリアセタール)が材質として用いることができる。
【0022】
(緩衝部材、及びストッパの詳細)
次に、緩衝部材20、及びストッパ30の詳細について説明する。
【0023】
図2は、移動部材10を前方側の下方から見た場合の斜視図の一例である。移動部材10のガイドレール5(図1参照)と対向する面と反対の面を移動部材10の前方側とする。図2に示されるように、緩衝部材20は、下方側の先端に、略三角柱形状の当り部22を有する。緩衝部材20は、当り部22の上方に、前後方向に伸びる円筒状の本体部24を有する。図2では把握し難いが、本体部24は、前後方向の寸法が当り部22よりも長く、当り部22の後端よりも後方に突出している(後述の図4を参照)。本体部24は、前後方向の途中に、後述の第2抜け防止爪18と係合する係合溝26(後述の図4を参照)を有する。
【0024】
移動部材10は、下方側の端部に、緩衝部材20が嵌合される嵌合部14を有する。この嵌合部14は、下方に開口している。この嵌合部14には、緩衝部材20の本体部24が前方側から挿入される。
【0025】
移動部材10は、前方側に緩衝部材20が抜けてしまうことを防止しようとする機能を有する、第1抜け防止爪16及び第2抜け防止爪18を含む。第1抜け防止爪16は、嵌合部14の前方側において下方に突出し、前方側に向けた緩衝部材20の移動を規制することで、嵌合部14から緩衝部材20が抜けてしまうことを抑制、すなわち緩衝部材20の脱落を抑制している。第2抜け防止爪18は、上述のとおり、緩衝部材20の係合溝26(後述の図4を参照)と係合することで、嵌合部14から緩衝部材20が抜けてしまうことを抑制、すなわち緩衝部材20の脱落を抑制している。
【0026】
図3は、移動部材10の周辺を前方側の上方から見た場合の斜視図の一例である。図3に示されるように、ストッパ30は、緩衝部材20と当接する受け部31を含む。この受け部31は、ストッパ30の上方側の面の全体に相当する。受け部31は、ガイドレール5側の基部32と、基部32よりも前方側の傾斜部34とを有する。基部32は、ガイドレール5に対して略直角である。傾斜部34は、ガイドレール5に垂直な面、すなわち基部32の面に対して概ね10°~20°の角度で前方に向けて上方に傾斜している。すなわち、傾斜部34は、ガイドレール5から前方に向けて離れるにしたがって、上方に向けて傾斜している。
【0027】
上述のように構成される対象物移動装置1は、モータ3(図1参照)が一の方向に回転すると、減速機を介してドラム(不図示)が回転し、インナーケーブル6が循環駆動し、移動部材10が上昇する。移動部材10が上昇すると、移動部材10の固定孔12に固定された例えば車両の窓ガラスが上昇する。一方、モータ3が他の方向に回転すると、インナーケーブル6が逆方向に循環駆動し、移動部材10が下降する。移動部材10が下降すると、例えば車両の窓ガラスが下降する。移動部材10は、例えば下限位置において緩衝部材20とストッパ30とが当接し、下降が止められる。
【0028】
(緩衝部材とストッパとが当接したときに生じうる問題点)
次に、移動部材10が下方に向けて移動し、緩衝部材20とストッパ30とが当接したときに生じうる問題点について、図4(A)~(C)を参照して説明する。図4(A)~(C)は、緩衝部材20及びストッパ30を左側からみたときの側面を示す模式図の一例であって、(A)緩衝部材20とストッパ30とが当接したときの状態を示す図、(B)緩衝部材20が嵌合部14から抜けるときの状態を示す図、(C)緩衝部材20が嵌合部14から抜けた後の状態を示す図、である。
【0029】
移動部材10(図1図3を参照)が下方に向けて移動すると、図4(A)に示されるように、緩衝部材20とストッパ30とが当接する。このとき、緩衝部材20の当り部22が、ストッパ30の傾斜部34に当接する。ところで、移動部材10に対しては、インナーケーブル6(図1または図3を参照)によるケーブル引き角によって、後方側の下方に向けた力Fが作用する。そのため、緩衝部材20に対して、当り部22が前方側(すなわちガイドレール5から離れる方向)に向かう回転モーメントMが作用する。この回転モーメントMが作用する方向は、図4における反時計方向である。
【0030】
緩衝部材20とストッパ30との当接が繰り返し行われると、上述の回転モーメントMによって、第2抜け防止爪18と係合する係合溝26、及び当り部22に対して、負荷が繰り返し作用する。そうすると、図4(B)に示されるように、第1抜け防止爪16が緩衝部材20の本体部24に食い込むとともに、第2抜け防止爪18が係合溝26の後端の壁27に対して力を作用する。このとき、緩衝部材20の当り部22が傾斜部34を乗り越えようとする。
【0031】
緩衝部材20及びストッパ30が図4(B)に示される状態となった後、さらに、緩衝部材20とストッパ30との当接が繰り返し行われると、図4(C)に示されるように、緩衝部材20の当り部22が傾斜部34を大きく乗り越えて、緩衝部材20が嵌合部14から脱落してしまうおそれがある。
【0032】
(緩衝部材の脱落抑制)
次に、本実施形態に係る対象物移動装置1Aについて、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る対象物移動装置1Aが備える移動部材10の周辺を前方側の上方から見た場合の斜視図の一例である。なお、対象物移動装置1Aが備える各種部材のうち、上述の対象物移動装置1が備える各種部材と同じ部材については、図1~4と同じ符号を付すものとする。
【0033】
本実施形態に係る対象物移動装置1Aは、一般的な対象物移動装置1と同様に、主に、駆動装置2(図1参照)と、移動部材10と、ガイドレール5と、インナーケーブル6と、ケーブルガイド7と、方向転換部材8(図1参照)と、ブラケット9(図1参照)と、を備える。対象物移動装置1Aが備える駆動装置2、移動部材10、ガイドレール5、インナーケーブル6、ケーブルガイド7、方向転換部材8、及びブラケット9は、上述の対象物移動装置1が備える駆動装置2、移動部材10、ガイドレール5、インナーケーブル6、ケーブルガイド7、方向転換部材8、及びブラケット9と同じであるため、説明を省略する。
【0034】
また、対象物移動装置1Aは、対象物移動装置1が備えるストッパ30に代えて、ストッパ30Aを備える。
【0035】
ストッパ30Aは、ストッパ30と同様に、移動部材10が下方向に向けて移動したときに緩衝部材20と当接する部材であり、移動部材10よりも下方において、ガイドレール5に設けられている。また、ストッパ30Aは、ストッパ30と同様に、例えば、耐摩耗性に優れたPOMが材質として用いられているが、これに限定されず、例えば、緩衝部材20とストッパ30Aとが当接したときの衝撃を緩和することが可能な弾性部材が材質として用いられるようにしてもよい。
【0036】
ストッパ30Aは、ストッパ30と同様に、ガイドレール5に対して略直角の基部32Aと、基部32Aの面に対して概ね10°~20°の角度で前方に向けて上方に傾斜している傾斜部34Aとを有する。
【0037】
ストッパ30Aは、ストッパ30と異なり、傾斜部34Aに、高摩擦力部36Aを有する。本実施形態では、傾斜部34Aの前方側の一部にのみ高摩擦力部36Aを有するが、傾斜部34Aの全部にわたって高摩擦力部36Aを有するようにしてもよい。
【0038】
高摩擦力部36Aは、緩衝部材20との間での摩擦力が受け部31Aの他の部分より高い部位である。本実施形態において、高摩擦力部36Aは、例えば、ガイドレール5の延伸方向に直交する幅方向、すなわち左右方向に沿って溝形状が形成された部位である。溝形状の凸部は、左右方向に沿って、断続することなく連続するように延伸している。溝形状の凸部が左右方向に沿って連続するように延伸している場合、凸部が左右方向に沿って断続している場合と比べて、高摩擦力部36Aにおけるグリップ力、すなわち上述の回転モーメントMに対抗する摩擦力を高めることが可能となる。また、凸部は、凸部を前後方向に切ったときに見える凸部の断面が、四角形、頂角を有する三角形、または頂点に角部を有しない円弧状等、さまざまな形態が含まれる。さらに、凸部が形成されると凹部としての溝部が形成されるが、この溝部と凸部の壁とが成す角度が45~135度(下限値及び上限値を含む)である場合、溝の断面形状が円弧であるときには、円弧の頂点の接線と凸部の壁とが成す角が45~135度(下限値及び上限値を含む)である場合、好ましくは、溝部と凸部の壁とが成す角度が90~135度(下限値及び上限値を含む)である場合、溝の断面形状が円弧であるときには、円弧の頂点の接線と凸部の壁とが成す角が90~135度(下限値及び上限値を含む)である場合、高摩擦力部36Aにおける緩衝部材20との摩擦力をより高めることが可能となる。
【0039】
緩衝部材20とストッパ30Aとが当接したとき、当り部22(図2図4を参照)が、傾斜部34Aの高摩擦力部36Aに当接する。そのため、緩衝部材20に対して上述の回転モーメントM(図4参照)が作用したとしても、高摩擦力部36Aにおける相対的に高い摩擦力により、第1抜け防止爪16(図4(B)参照)が緩衝部材20の本体部24に食い込むことを抑制できる。また、第2抜け防止爪18が係合溝26の後端の壁27(いずれも図4(B)参照)に対して作用する力を軽減することも可能となる。その結果、緩衝部材20の当り部22が傾斜部34Aを乗り越えようとすることを抑制でき、緩衝部材20とストッパ30Aとの当接が繰り返し行われたとしても、緩衝部材20が嵌合部14(図3図4を参照)から脱落してしまうことを抑制できる。
【0040】
また、高摩擦力部36Aとしての凸部は、左右方向に沿って平行な複数の凸部を有することが好ましい。凸部の数が多いほど、上述の回転モーメントMに対抗する摩擦力を高めることが可能となる。
【0041】
(変形例)
以上、本発明の一例として上述の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述のストッパ30Aを、図6に示されるストッパ30Bに変更することができる。
【0042】
図6は、変形例に係る対象物移動装置1Bが備える移動部材10の周辺を前方側の上方から見た場合の斜視図の一例である。対象物移動装置1Bは、対象物移動装置1Aが備えるストッパ30Aに代えて、ストッパ30Bを備えている。なお、ストッパ30Bを除いて、対象物移動装置1Bが備える各種部材は、対象物移動装置1Aが備える各種部材と同じである。そのため、以下ではストッパ30Bについて説明し、ストッパ30Bを除く各種部材についての説明を省略する。
【0043】
ストッパ30Bは、高摩擦力部36Bにおける凸部の形状がストッパ30Aと異なるものの、その他はストッパ30Aと同じである。具体的には、ストッパ30Bは、移動部材10が下方向に向けて移動したときに緩衝部材20と当接する部材であり、移動部材10よりも下方において、ガイドレール5に設けられている。また、ストッパ30Bは、ストッパ30Aと同様に、例えば、耐摩耗性に優れたPOMが材質として用いられているが、これに限定されない。ストッパ30Aと同様に、例えば弾性部材が、ストッパ30Bの材質として用いられるようにしてもよい。
【0044】
ストッパ30Bは、ストッパ30Aと同様に、ガイドレール5に対して略直角の基部32Bと、基部32Bの面に対して概ね10°~20°の角度で前方に向けて上方に傾斜している傾斜部34Bとを有する。
【0045】
ストッパ30Bは、傾斜部34Bに、頂点に角部を有する例えば三角錐又は四角錐に形成された凸部を有する高摩擦力部36Bを含む。この高摩擦力部36Bは、高摩擦力部36Aと同様に、緩衝部材20との間での摩擦力が受け部31Bの他の部分より高い部位である。この変形例では、傾斜部34Bの前方側の一部にのみ高摩擦力部36Bを有するが、傾斜部34Bの全部にわたって高摩擦力部36Bを有するようにしてもよい。高摩擦力部36Bに形成された三角錐又は四角錐の凸部の頂角は、10~90度(下限値及び上限値を含む)の範囲であることが好ましい。
【0046】
このように、ストッパ30Aをストッパ30Bに変えた場合であっても、簡単な構成で、高摩擦力部36Bにおけるグリップ力、すなわち上述の回転モーメントMに対抗する摩擦力を高めることが可能となる。よって、緩衝部材20とストッパ30Bとの当接が繰り返し行われたとしても、緩衝部材20が嵌合部14(図3図4を参照)から脱落してしまうことを抑制できる。
【0047】
なお、上述の実施形態及び変形例において、高摩擦力部36A及び高摩擦力部36Bは、それぞれ、傾斜部34A及び傾斜部34Bに形成された凸部である。すなわち、この凸部は、ストッパ30A及びストッパ30Bの材質自体を成形したものである。しかし、高摩擦力部36A及び高摩擦力部36Bは、必ずしも、ストッパ30A及びストッパ30Bの素材自体を成形したものに限定されない。例えば、上記の回転モーメントMに抗うことができれば、傾斜部34A及び傾斜部34Bに、グリップ力を高める素材を貼り付けるようにしてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態では高摩擦力部36Aを溝形状とし、上述の変形例では高摩擦力部36Bを三角錐又は四角錐としている。ただし、高摩擦力部の形状は、凸、溝、三角錐、及び四角錐に限定されず、緩衝部材20との間での摩擦力が受け部の他の部分(受け部のうち高摩擦力部でない部分)より高くなる形状であれば、円錐、半球等でもよい。また高摩擦力部が設けられる範囲において、凸、溝、三角錐、四角錐、円錐、半球等の形状が直線状や波状等に整列して配置、あるいは無作為に配置されているようなものであってもよい。
【0049】
また、上述の実施形態において、対象物移動装置1Aは、移動部材10の下方に、移動部材10が下方に向けて移動したときに緩衝部材20と当接するストッパ30Aを備えている。また、上述の変形例において、対象物移動装置1Bは、移動部材10の下方に、移動部材10が下方に向けて移動したときに緩衝部材20と当接するストッパ30Bを備えている。ただし、対象物移動装置1Aが移動部材10の下方にストッパ30Aを備えることは必須でなく、対象物移動装置1Bが移動部材10の下方にストッパ30Bを備えることも必須でない。例えば、移動部材10が下方に向けて移動したときに、移動部材10の下方側の端部に設けられた緩衝部材20が、ガイドレール5に取り付けられる部材と当接するようにしてもよい。ガイドレール5に取り付けられる部材は、例えば、駆動装置2(ドラム(不図示)、ハウジング4等)である。ケーブルガイド7を移動部材10の下限位置に設けることができれは、ケーブルガイド7も、上述のガイドレール5に取り付けられる部材に含まれる。このように、緩衝部材20がガイドレール5に取り付けられる部材と当接するようにした場合、緩衝部材20が当接する部材に、上述の高摩擦力部36Aまたは高摩擦力部36Bに相当する高摩擦力部を有する受け部を設けるようにするとよい。
【0050】
また、上述の実施形態及び変形例において、移動部材10は、下方側の端部に、緩衝部材20が嵌合される嵌合部14を有する。ただし、嵌合部14は、必ずしも、移動部材10の下方側の端部に設けられることに限定されない。例えば、移動部材10が下方に向けて移動したときに、緩衝部材20が移動部材10の下方側の端部よりも上方の部位(例えば、図2に示される嵌合部14よりも右側の部位)と当接する場合には、この部位に嵌合部14が設けられていてもよい。
【0051】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態及び変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。なお、上述の実施形態及び変形例の形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0052】
(1)駆動部と、
前記駆動部によって巻き取りと繰り出しとが行われるケーブルと、
移動対象物が取り付けられ、前記ケーブルの巻き取りと繰り出しとにより前記移動対象物とともに昇降移動する移動部材と、
前記移動部材と摺動自在に係合し、前記移動部材の移動を案内可能であり、前記移動対象物の移動方向に延伸するガイドレールと、
前記移動部材に設けられた緩衝部材と、
前記ガイドレールに取り付けられる部材に設けられる、前記緩衝部材と当接して前記移動部材の移動を規制する受け部と、
を備え、
前記受け部は、
少なくとも前記緩衝部材の一部と当接する部位に、前記緩衝部材との間での摩擦力が前記受け部の他の部分より高い高摩擦力部を有する、
対象物移動装置。
【0053】
(2)前記高摩擦力部は、前記受け部の前記緩衝部材と当接する部位に形成された凸部を含む、
(1)に記載の対象物移動装置。
【0054】
(3)前記凸部は、前記ガイドレールが延伸する方向に直交する方向である幅方向に複数形成されている、
(2)に記載の対象物移動装置。
【0055】
(4)前記凸部は、前記ガイドレールの幅方向に対して延伸するように形成されている、
(2)または(3)に記載の対象物移動装置。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本実施形態及び変形例では、対象物移動装置1A,1Bが採用される適用例として、車両のドア等に設けられ、車両の窓ガラスの開閉を行うウインドレギュレータを例示したが、ウインドレギュレータに限定されず、様々な装置に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,1A,1B 対象物移動装置
2 駆動装置
5 ガイドレール
6 インナーケーブル
20 緩衝部材
31,31A,31B 受け部
34,34A,34B 傾斜部
36A,36B 高摩擦力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6