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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076423
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】樹脂製蓋および蓋付容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/06 20060101AFI20240530BHJP
   B65D 3/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B65D43/06 200
B65D3/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187904
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】相馬 克彦
(72)【発明者】
【氏名】栗原 伸一郎
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA06
3E084AA12
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084CC04
3E084CC05
3E084CC07
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084DC04
3E084DC05
3E084DC07
3E084FA09
3E084FC07
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA20
3E084KB01
3E084LA01
3E084LB02
3E084LB10
3E084LC01
3E084LD01
3E084LF10
(57)【要約】
【課題】段差空隙に起因する液漏れを抑制できる蓋付容器を提供する。
【解決手段】蓋付容器は容器100と蓋1とからなる。容器100は上部にフランジ103を有し、内壁周方向に段差106を有する。蓋1は容器フランジを嵌合する嵌合部30を有する。前記蓋嵌合部30の内側径は前記フランジ103の内側径より大きい。前記蓋嵌合部30の内壁31と前記フランジ103内側との間に線接触部42が形成される。前記蓋嵌合部の空間内34であって前記フランジ103上方に空隙45が形成される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部にフランジを有し内壁周方向に段差を有する容器と、容器フランジに嵌合する嵌合部を有する蓋とからなる蓋付容器であって、
前記蓋嵌合部の内側径は前記フランジの内側径より大きく、
前記蓋嵌合部の内側と前記フランジの内側との間に線接触部が形成され、
前記蓋嵌合部内であって前記フランジ上方に空隙が形成される
ことを特徴とする蓋付容器。
【請求項2】
前記蓋嵌合部の外側径は前記フランジの外側径より小さい
ことを特徴とする蓋付容器。
【請求項3】
前記蓋嵌合部の最大幅は前記フランジの最大幅より小さい
ことを特徴とする請求項1記載の蓋付容器。
【請求項4】
前記空隙において前記フランジの最頂部は前記蓋嵌合部に接しない
ことを特徴とする請求項1記載の蓋付容器。
【請求項5】
前記蓋嵌合部の外側下部には縮径による規制部が形成される
ことを特徴とする請求項1記載の蓋付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器と蓋とからなる蓋付容器に関する。特に、容器胴部やフランジ部に段差がある場合の蓋付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や汁気の多い食品用の容器では蓋付であることが好ましい。例えば、コンビニエンスストアでは、顧客は容器を購入し、店舗にある機械を用いてコーヒーを注ぎ、容器に蓋をして、持ち帰る。アイスコーヒーの場合は、予め氷の入った容器を購入し、容器のシール蓋を剥がして、コーヒーを注ぐ。
【0003】
容器は、底部と、底部から立設される胴部と、胴部上端に形成されるフランジとを備える。胴部上端には開口が形成される。
【0004】
ところで、近年、環境配慮の観点から樹脂製容器よりも紙製容器が好まれている。円形容器の場合、胴部は略逆円錐台形状であることが一般的である。略扇型状の紙製ブランクの両端部を重ね合わせてシーム部とし、略逆円錐台形状を形成する。この製造過程において、容器胴部及びフランジ部のシーム部相当箇所において微小な段差が発生する。
【0005】
蓋と容器の嵌合構造において、シーム部段差に起因する空隙が発生し、段差空隙からの液漏れが発生するおそれがある。特に、蓋付容器は商品の配達、持ち帰りに多用されており、容器転倒リスクの検討が必要である。容器転倒後数秒で戻せば、全体的な液漏れは防止できるが、段差空隙箇所が下になるように転倒した場合、液漏れリスクも顕在化する(図19参照)。
【0006】
段差空隙からの液漏れに対し、蓋嵌合部の内側に発泡性材料からなる緩衝材を配置することも検討されている(例えば特許文献1)。
【0007】
特許文献1記載の液漏れ抑制構造は、別途発泡性材料からなる緩衝材を必須の構成とする。一般論として、構成が増える程、製造工程増、コスト増となり好ましくない。
【0008】
また、紙製容器のフランジは外側カール状に形成されることが多い(例えば特許文献2)。
【0009】
カール状フランジは低剛性であり、蓋嵌合部の形状に馴染むように適宜変形する。したがって嵌合しやすい。一方、カール状フランジは低剛性であることから、形状安定性に欠ける。その結果、嵌合が均一でないおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2019-077475号公報
【特許文献2】特開2004-001892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
紙製容器の用途が拡大するに従い、紙製容器の改良も進められている。たとえば、カール状フランジを上下に圧縮(更にカール内部で溶着してもよい)することで、プレス状フランジは高剛性となり、形状安定性を有する(図20参照)。
【0012】
一方、プレス状フランジは高剛性であることから、蓋嵌合時に強く押し込む必要がある。さらに、フランジに開口部を閉鎖するシール蓋を有する場合、プレス状フランジでは、カール状フランジに比べて、シール蓋を剥がす力を要する。つまりイージーピール性に改善の余地がある。
【0013】
このように形状安定性とイージーピール性とを両立させることは困難であり、更なる改良が必要である。
【0014】
上記の様な紙製容器の改良に伴い、蓋も改良をする必要がある。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するものであり、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる蓋付容器を提供することを目的とする。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するものであり、容器フランジの改良に対応する蓋付容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するための本発明の蓋付容器は、上部にフランジを有し内壁周方向に段差を有する容器と、容器フランジに嵌合する嵌合部を有する蓋とからなる。前記蓋嵌合部の内側径は前記フランジの内側径より大きく、前記蓋嵌合部の内側と前記フランジの内側との間に線接触部が形成され、前記蓋嵌合部内であって前記フランジ上方に空隙が形成される。
【0018】
これにより、蓋嵌合部の内壁は板バネとして作用する。線接触部には押圧力が作用する。その結果、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【0019】
上記発明において好ましくは、前記蓋嵌合部の外側径は前記フランジの外側径より小さい。
【0020】
これにより、嵌合部の外側とフランジの外側との間にも線接触部が形成される。蓋嵌合部の外壁は板バネとして作用する。蓋線接触部には押圧力が作用する。
【0021】
上記発明において好ましくは、前記蓋嵌合部の最大幅は前記フランジの最大幅より小さい。
【0022】
これにより、蓋嵌合部の内壁および外壁は板バネとして作用する。
【0023】
上記発明において好ましくは、前記空隙において前記フランジの最頂部は前記蓋嵌合部に接しない。
【0024】
これにより、蓋嵌合部の内壁および外壁は板バネとして作用する。
【0025】
上記発明において好ましくは、前記蓋嵌合部の外側下部には縮径による規制部が形成される。
【0026】
これにより、外側の線接触部が引き摺られても、規制部により係止される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の蓋付容器は、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【0028】
本発明の蓋は、容器の改良に対応できる。特に、幅方向における剛性を有するフランジを有する容器、たとえば、プレス状フランジに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】蓋の斜視図
図2】蓋の部分断面斜視図
図3】蓋嵌合部の拡大図
図4】蓋嵌合部と容器フランジの関係の説明図
図5】蓋嵌合部と容器フランジの関係の説明図
図6】蓋嵌合部と容器フランジの関係の説明図
図7】蓋嵌合部と容器フランジの嵌合状態の断面図
図8】空隙の説明図
図9】蓋嵌合部と容器フランジの嵌合状態の断面図
図10】比較例における嵌合状態の断面図
図11】本願効果の説明図
図12】本願効果の説明図
図13】本願効果の説明図
図14】本願効果の説明図
図15】変形例の断面図
図16】変形例の断面図
図17】変形例の断面図
図18】円形紙製容器以外への適用例
図19】容器転倒時動作の説明図
図20】容器フランジ形状の例
【発明を実施するための形態】
【0030】
~基本構成および改良容器~
蓋付容器は蓋1と容器100とからなる。容器100は紙製である。一般にラミネート加工されている。底部101と胴部102とフランジ部103とを備える。底部101は平面視円形である。胴部102は側面視略逆円錐台形状であり、底部101から立設される。胴部上端に形成されるフランジ部103は胴部102上端に形成される。
【0031】
胴部102上端には開口104が形成される。蓋1はフランジ部103に嵌合され、開口104を塞ぐ。
【0032】
胴部102は略扇型状の紙製ブランクの両端部を重ね合わせて形成する。シーム部105形成により、胴部102およびフランジ部103には段差106が発生する。
【0033】
フランジ部103について説明する。カール状フランジA(図20A)が一般的である。周外側にカール状に形成される。カールに外力が作用すると適宜変形する。つまり低剛性である。プレス状フランジC(図20C)はカール状フランジAを上下方向に圧縮したものである。内部を溶着してもよい。カール状フランジAに比べて高剛性である。
【0034】
カール状フランジAもプレス状フランジCも一長一短ある。そこで、カール状フランジとプレス状フランジの長所を併せ持つプレス状フランジB(図20B)が開発されている。プレス状フランジBは適度な剛性を有し、形状安定性とイージーピール性とが両立する。
【0035】
本願では便宜的に、フランジ幅を基準(=1)としたとき、フランジ高1.2~0.8をカール状フランジAとし、フランジ高0.8~0.4(より好ましくは0.7~0.5)をプレス状フランジBとし、フランジ高0.4未満をプレス状フランジCとする。
または、プレス状フランジBは、フランジ天面側にフランジ外側に向けて下がった段差部があり、フランジ天面の下がった段差部がシールされないような形状になっているのに対し、プレス状フランジCは、フランジ天面全体がほぼフラットな状態で、シール蓋がフランジ天面全面にシールされるような形状になっている。
【0036】
本願蓋はプレス状フランジBに好適である。したがって、プレス状フランジBへの適用を前提に説明する。ただし、プレス状フランジCにも適用できる。また、カール状フランジを適用除外する意図はなく、フランジ幅方向に、ある程度の剛性があればよい。
【0037】
~蓋構成概略~
蓋1は樹脂製である。例えば、ポリプロピレン製である。ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンなどでもよい。また、紙製であってもよい。
【0038】
図1は蓋外観の斜視図である。図2は蓋の部分断面斜視図である。
【0039】
蓋1は蓋天面10と蓋嵌合部30とからなる。蓋嵌合部30は、蓋天面10周縁に設けられ、容器開口104に設けられた容器嵌合部(フランジ部103)と嵌合する。
【0040】
図3は、蓋嵌合部30の拡大図である。
【0041】
蓋嵌合部30は、蓋嵌合部内壁31と、蓋嵌合部天部32と、蓋嵌合部外壁33とを有する。中心に近い方を内側とし、中心から遠い方を外側とする。すなわち蓋嵌合部内壁31と蓋嵌合部外壁33とが対向し、蓋嵌合部内壁31と蓋嵌合部外壁33とは上端において蓋嵌合部天部32と連続し、蓋嵌合部天部32は適度な水平幅を有し、これにより略門型形状を形成し、門型形状に囲まれた嵌合空間34を形成する。
【0042】
蓋嵌合部30は、蓋嵌合部外壁33下部に縮径による規制部35を有する。更に規制部35下部にスカート部39を有する。
【0043】
蓋天面10の構成について説明する。蓋天面中央部11は蓋天面10の中央に位置する。蓋天面中央部11は略すり鉢状であり中央に向かって曲面を形成しながら低くなる。
【0044】
蓋天面11の周縁は周縁天部12を介して蓋側面13と連続し、蓋側面13は連結部14を介して蓋嵌合部30と連結する。蓋側面13と連結部14と蓋嵌合部内壁31は、凹状溝空間15を形成する。
【0045】
なお、蓋天面10の諸構成は例示であり、本願はこれに限定されない。
【0046】
~蓋嵌合部特徴~
図4図6は蓋嵌合部30の特徴を説明する図である。蓋嵌合部30はフランジ部103との関係において以下のような特徴を有する。
【0047】
蓋嵌合部内壁31は下方に拡大するテーパを有しながらR状を介して連結部14に連続する。蓋嵌合部内壁31下方であってR状開始位置36を基準とし、蓋嵌合部30の内側径とする。より詳しくは嵌合空間34側を基準とする。
【0048】
フランジ部103は略楕円形状であり、楕円長軸の内側端点131を基準とし、フランジ部103の内側径とする。
【0049】
蓋1と容器100の中心は一致する。蓋嵌合部30の内側径はフランジ部103の内側径より大きい。
【0050】
蓋嵌合部外壁33は略垂直に下方に延設される。下方に拡大するテーパを有していてもよい。蓋嵌合部外壁33の最外位置37(図5においては任意)を基準とし、蓋嵌合部30の外側径とする。より詳しくは嵌合空間34側を基準とする。
【0051】
フランジ部103は略楕円形状であり、楕円長軸の外側端点133を基準とし、フランジ部103の外側径とする。
【0052】
蓋嵌合部30の外側径はフランジ部103の外側径より小さい。
【0053】
これらの位置関係において、嵌合空間34の最大幅はフランジ部103の楕円長軸幅より短い。
【0054】
また、これらの位置関係により、嵌合状態において嵌合空間34内であってフランジ部103上方に空隙45(図8に対応する説明参照)が形成される。
【0055】
~嵌合構造~
図7は一般部(シーム部以外)における嵌合状態の断面図である。X線写真を加工したものである。
【0056】
蓋嵌合部内壁31は蓋嵌合部天部32と連結部14との間に形成される。形成時において、蓋嵌合部内壁31は蓋嵌合部天部32に比べて樹脂が引き延ばされる。その結果、蓋嵌合部内壁31は蓋嵌合部天部32に比べて薄くなる。すなわち低剛性となる。例えば、蓋嵌合部内壁31厚0.2mm程度に対し、蓋嵌合部天部32厚0.3mm程度である。
【0057】
一方、フランジ部103は蓋嵌合部内壁31に比べて高剛性である。
【0058】
フランジ部103を嵌合空間34に挿入するとき、蓋嵌合部30の内側径はフランジ部103の内側径より大きいため、楕円長軸内側端点131は蓋嵌合部内壁R状付近に接触する。
【0059】
これにより、蓋嵌合部内壁31は上端41を固定端とする板バネ機構を構成し、弾性力が作用する。
【0060】
さらに、フランジ部103を嵌合空間34に挿入すると、蓋嵌合部内壁31の下端は内側に変位する。蓋嵌合部内壁31の下端近傍において、フランジ部103との間に線接触部42(図示点が周方向に連続する)が形成される。線接触部42においてフランジ部103は板バネに押圧される。
【0061】
フランジ部103を嵌合空間34に挿入するとき、スカート部39を変位させ、さらに、蓋嵌合部30の外側径はフランジ部103の外側径より小さいため、楕円長軸外側端点133は蓋嵌合部外壁33に接触する。
【0062】
蓋嵌合部外壁33は蓋嵌合部天部32に比べて薄くなる。すなわち低剛性となる。一方、フランジ部103は蓋嵌合部外壁33に比べて高剛性である。
【0063】
これにより、蓋嵌合部外壁33は上端43を固定端とする板バネ機構を構成し、弾性力が作用する。
【0064】
さらに、フランジ部103を嵌合空間34に挿入すると、蓋嵌合部外壁33の下端は外側に変位する。蓋嵌合部外壁33の下端近傍において、フランジ部103との間に線接触部44が形成される。線接触部44においてフランジ部103は板バネに押圧される。
【0065】
このとき、線接触部42は容器胴部102近傍に形成されるのに対し、線接触部44は容器胴部102遠方に形成される。そのため、フランジ部103を嵌合空間34に挿入するとき、線接触部44は蓋嵌合部外壁33に引きずられる。具体的には容器フランジ部に蓋をかぶせ、蓋から手を離した後、線接触部44が蓋嵌合部外壁33の内壁部をこすりながら、蓋が容器から外れる方向、すなわち、線接触部44は、蓋嵌合部外壁33に対し、上から下に移動する。これは蓋嵌合部の外側径がフランジの外側径よりも小さく設定されているためである。
【0066】
すなわち、2つの板バネである蓋嵌合部内壁31と蓋嵌合部外壁33とにより、フランジ部103を挟み込む。その際、蓋嵌合部内壁31は、連結部14によって水平方向への動きが規制される。蓋嵌合部外壁33は、樹脂の剛性のみでその位置を保っているため(自由端のため)、フランジ部103の剛性によって、外側に広がる。その結果、板バネ効果でフランジ部103は線接触部42において押圧される。
【0067】
図8は空隙の説明図である。嵌合状態において嵌合空間34内であってフランジ部103上方に空隙45が形成される。フランジ最頂部は、蓋嵌合部天部32下端に接せず、充分な空間を確保することが好ましい。
【0068】
蓋1をフランジ部103に押し込むとき、空隙45は遊びとして機能する。これにより、蓋嵌合部内壁31とフランジ部103との接触、および、蓋嵌合部外壁33とフランジ部103との接触後、線接触部42、線接触部44が形成されるまで押し込むことができる。
【0069】
また適度な空隙45を有することにより、蓋嵌合部内壁31および蓋嵌合部外壁33は変位に伴い板バネとして機能する。
【0070】
本願では、形状誤差等などの要因により結果的に空隙が生じるのではなく、技術思想に基づき意図的に明確な空隙45を設ける。空隙45が大きければ大きい程よいわけではないが、空隙45高さは嵌合空間34高さの5%以上あることが好ましい。更に10%以上あることが好ましい。
【0071】
例えば、蓋嵌合部天部32下端とフランジ最頂部132の距離を空隙45高さとする。例えば、蓋嵌合部天部32下端と蓋嵌合部内壁31下端との距離を嵌合空間34高さとする。
【0072】
図9はシーム部における嵌合状態の断面図である。X線写真を加工したものである。シーム部では容器胴部及びフランジ部が紙2枚相当厚となる。フランジ部103の剛性も一般部に比べて高くなる。
【0073】
したがって、蓋嵌合部内壁31や蓋嵌合部外壁33の変位が一般部に比べて多くなる。その結果、フランジ部103は蓋嵌合部外壁33に更に押し付けられ、嵌合後、蓋嵌合部外壁33は上方に、フランジ部は下方に更に引きずられ、規制部35で係止される。
【0074】
この位置関係により、シーム部105では一般部に比べて、線接触部42において、上方から下方への成分を含む押圧力が更に作用し、シーム部段差106に起因する空隙が狭まる。
【0075】
さらに、蓋嵌合部内壁31は蓋嵌合部天部32に比べて薄いこと、蓋嵌合部内壁31R状付近は連結部14によって水平方向への動きが規制されていること、線接触部42は蓋嵌合部内壁31R状付近に形成されることの相互作用により、シーム部段差106から一般部に向けて、段差に沿うように線接触部42が接触し、空隙を狭めることができる。
【0076】
言い換えると、樹脂が薄いが、動きを規制されることにより、樹脂がシーム部段差106に沿うような形で変化する。
【0077】
~効果~
本願実施例と比較例と比較することで本願効果を検証する。
【0078】
図10は比較例における嵌合状態の断面図である。X線写真を加工したものである。
【0079】
比較例容器はカール状フランジである。比較例蓋嵌合部はカール状フランジ形状に対応する形状をしている。カール状フランジは低剛性であり、蓋嵌合部の形状に馴染むように適宜変形する。
【0080】
これによりカール状フランジと蓋嵌合部内面とは面接触し、液漏れを抑制する。
【0081】
なお、比較例面接触においても、カール状フランジが弾性変形し、接触面全体に緩やかな押圧力が発生する。ただし、上記本願押圧力のように顕著ではない。
【0082】
図11および図12は本願効果の説明図である。
【0083】
紙製容器シーム部105では段差106に起因して、嵌合状態において空隙が発生し、段差空隙からの液漏れが発生するおそれがある。本願実施例でも比較例でも段差空隙を完全に無くすことは難しい。
【0084】
比較例における嵌合は面接触であり顕著な押圧力は作用していない。空隙発生影響範囲においてカール状フランジの変形は戻るが、その戻りは緩やかである。その結果、空隙発生影響範囲は周方向に連続する。空隙発生に起因して液漏れが発生するおそれがある。
【0085】
これに対し、本願実施例における嵌合は線接触であり顕著な押圧力が作用する。空隙発生影響範囲において板バネ31の変形は段差空隙を塞ぐ方向に戻る。その結果、比較例と比べて、空隙発生影響範囲が短くなる。すなわち、液漏れが発生するおそれを抑制できる。
【0086】
更に別の比較により、本願押圧力による効果を検討する。蓋嵌合部30の内側径とフランジ部103の内側径はほぼ同じ、蓋嵌合部30の外側径とフランジ部103の外側径はほぼ同じ、嵌合空間34の最大幅とフランジ部103の楕円長軸幅はほぼ同じである参考例(図示せず)を試作した。
【0087】
本願実施例と参考例とは、外観においてほぼ同一である。一方で、参考例では蓋嵌合部内壁31や蓋嵌合部外壁33の変位は少なく、板バネとしては期待できず、線接触による押圧力も期待できない。参考例ではどちらかと言えば面接触に類似する。
【0088】
本願実施例と参考例において、段差106を下側として、液体の入った容器を45度傾けて、液漏れが確認されるまでの時間を計測した。
【0089】
参考例3体のうち、2体は1分未満で液漏れが確認され、1体は1分強で液漏れが確認された。これに対し、本願実施例5体のうち、2体は3分経過しても液漏れは確認されず、残り3体は、2分半、2分、1分半で液漏れが確認された。
【0090】
本願押圧力により液漏れが発生するおそれを抑制できる。
【0091】
図13は別の本願効果の説明図である。
【0092】
比較例における嵌合は面接触であり顕著な押圧力は作用していない。とくに、上方から下方への押圧力が顕著とはいえない。容器が傾き蓋に液圧が作用した時、嵌合解除に対抗する力が弱い。
【0093】
これに対し、本願実施例における嵌合は線接触であり顕著な押圧力が作用する。とくに、押圧力は上方から下方への成分を十分に含む。容器が傾き蓋に液圧が作用した時、嵌合解除に対抗できる。
【0094】
なお、液漏れ発生のおそれは容器転倒時に段差106が下側になったときに顕著となる。本願実施例においては、シーム部において嵌合解除対抗効果は顕著となる。
【0095】
更に、液圧作用時以外の効果の相違について検討する。
【0096】
比較例における嵌合は面接触により液漏れ発生のおそれを抑制している。面接触の面積(断面では距離)が長くなるほど抑制効果を期待できる。一方で、精度の課題により僅かな隙間があると、毛細管現象が発生する。蓋が透明であり液体が有色である場合、嵌合箇所に液体が浸透している状態が視認でき、美観を損なう。すなわち、比較例では液漏れ発生のおそれを抑制できても、液浸透のおそれは残る。
【0097】
これに対し、本願実施例における嵌合は線接触であり顕著な押圧力が作用する。毛細管現象による液浸透のおそれは少ない。
【0098】
なお、本願実施例における嵌合では、液浸透のおそれは少ないのが前提であるが、好ましくない条件が重なり、線接触部42から液が浸透した場合でも、浸透した液は線接触部44による押圧により空隙45に捕捉される。これにより、液漏れが発生するおそれを十分に抑制できる。
【0099】
図14はさらに別の本願効果の説明図である。
【0100】
紙製容器100に内容物を充填し開口部104にシート状のシール蓋を施し、使用時にシール蓋を剥がし、その後、蓋1を嵌合することがある(例えばアイスコーヒーの例)。
【0101】
シール蓋を剥がすとき、フランジ部103頂部が毛羽立ち、形状精度に影響を与えるおそれがある。なお、樹脂製容器では毛羽立ちは起きない。
【0102】
比較例における嵌合は面接触により液漏れ発生のおそれを抑制している。頂部毛羽立ちにより形状精度が劣ると、嵌合精度にも影響する。
【0103】
これに対し、本願実施例における嵌合では空隙45を介しているため、頂部毛羽立ちにより形状精度に影響しても、嵌合精度には影響しない。すなわち、嵌合精度は維持される。また、シールがされない位置、すなわち毛羽立ちが起きない位置に、線接触部44と線接触部42があるため、嵌合精度は維持される。
【0104】
更に、形状誤差に係る効果について説明する。本願実施例でも比較例でも蓋および容器において製造時の形状誤差を完全に無くすことは難しい。
【0105】
比較例におけるカール状フランジは低剛性であることから形状安定性に欠け、嵌合精度にも影響する。形状誤差があると嵌合精度は更に低下する。
【0106】
これに対し、本願実施例における嵌合は線接触であり、線接触部42や線接触部44の上下位置調整により形状誤差は吸収される。線接触部42や線接触部44の位置が微小変動しても、蓋嵌合部内壁31や蓋嵌合部外壁33の板バネ機能は維持される。すなわち嵌合への影響は少ない。これにより、液漏れが発生するおそれを十分に抑制できる。
【0107】
以上、いくつかの観点において、液漏れが発生するおそれを抑制できる。
【0108】
~変形例~
本願発明は、上記実施形態に限定されず、上記技術思想の範囲で種々の変更が可能である。
【0109】
図15は蓋の変形例の一つである。上記実施形態の嵌合空間34は略門型形状であるが、変形例の嵌合空間34は略山形状である。蓋嵌合部天部32は略山形状の頂点であり、蓋嵌合部内壁31や蓋嵌合部外壁33は頂点からなだらかに広がる。
【0110】
蓋嵌合部内壁31とフランジ部103との間に線接触部42が形成される点、蓋嵌合部外壁33とフランジ部103との間に線接触部44が形成される点、蓋嵌合部天部32とフランジ部103との間に空隙45が形成される点は、上記実施形態と変形例とも共通する。したがって、当該構成による効果も共通する。
【0111】
図16は上記変形例の変形例である。蓋天面10と蓋嵌合部30とを連結する連結部14の有無で相違し、その他の構成は共通する。したがって、効果も共通する。
【0112】
図17は上記変形例の別の変形例である。蓋天面10と蓋嵌合部30とを連結する連結部14がないのに加えて、蓋側面13の立設もない。すなわち蓋天面10は略フラットに形成されている。その他の構成は共通する。したがって、効果も共通する。
【0113】
図18は他の適用例である。上記実施形態では、円形紙製容器製造過程に発生する容器段差106に着目したが、本願発明は段差空隙に起因する液漏れリスクに対し広く適用可能である。
【0114】
図18Aは、紙を折り込んで形成した矩形容器である。容器製造過程において段差が発生する。蓋嵌合部内壁31による押圧により、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【0115】
図18Bは、一枚の紙から底部と側壁とフランジ部を形成した一枚絞り紙製容器である。なお、紙以外の材質(例えば樹脂やアルミ等)で形成してもよい。一枚の紙から容器形状に成形するために、胴部の上下方向やフランジ部の半径方向(周直交方向)に細かい段差が出来る。蓋嵌合部内壁31による押圧により、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【符号の説明】
【0116】
1 蓋
10 蓋天面
11 蓋天面中央部
12 周縁天部
13 蓋側面
14 連結部
15 凹状溝空間
30 蓋嵌合部
31 蓋嵌合部内壁
32 蓋嵌合部天部
33 蓋嵌合部外壁
34 嵌合空間
35 規制部
36 基準位置
37 基準位置
39 スカート部
41 板バネ固定端
42 線接触部
43 板バネ固定端
44 線接触部
45 空隙
100 容器
101 底部
102 胴部
103 フランジ部
104 開口部
105 シーム部
106 段差
131 フランジ端点
132 フランジ最頂部
133 フランジ端点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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