IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電装株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-アース端子 図1
  • 特開-アース端子 図2
  • 特開-アース端子 図3
  • 特開-アース端子 図4
  • 特開-アース端子 図5
  • 特開-アース端子 図6
  • 特開-アース端子 図7
  • 特開-アース端子 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076435
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】アース端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/38 20060101AFI20240530BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H01R4/38 B
H01R4/64 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187931
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 敦
(72)【発明者】
【氏名】深津 幸弘
【テーマコード(参考)】
5E012
【Fターム(参考)】
5E012BA12
(57)【要約】
【課題】電線の取り外しを容易に行うことができ、且つ電線の引っ張り力に対して強度を確保できるアース端子を提供する。
【解決手段】アース端子10,10Aは、板状であって、ボディ80に固定されるベース部11と、ベース部11の板面に重なるように配置される電線接続部12と、電線接続部12からの電線90の延び方向と交差する方向に折り返される形状を有してベース部11と電線接続部12とをつなぐ折り返し部13と、を備える。ベース部11と電線接続部12のうち、いずれか一方は、他方の側に突出する突部25,25Aを有し、他方は、突部25,25Aに対して延び方向に突き当て可能に対向する当て部32を有している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のアース端子であって、
ボディに固定されるベース部と、
前記ベース部の板面に重なるように配置され、電線の端末部に接続される電線接続部と、
前記電線接続部からの前記電線の延び方向と交差する方向に折り返される形状を有して前記ベース部と前記電線接続部とをつなぐ折り返し部と、を備え、
前記ベース部と前記電線接続部のうち、いずれか一方は、他方の側に突出する突部を有し、
前記他方は、前記突部に対して前記延び方向に突き当て可能に対向する当て部を有している、アース端子。
【請求項2】
前記他方は、前記突部が嵌合する孔を有し、
前記当て部は、前記孔の内面における前記延び方向で前記突部と対向する部分に設けられている、請求項1に記載のアース端子。
【請求項3】
前記突部は、前記一方の一部を切り起こした形状である、請求項2に記載のアース端子。
【請求項4】
前記突部は、平面視において前記延び方向に長い形状をなし、前記延び方向の一端に、前記当て部に対向する板厚面を有している、請求項1に記載のアース端子。
【請求項5】
前記突部の前記板厚面は、前記他方の側の先端に向けて次第に前記当て部側に傾斜するテーパ形状を有している、請求項4に記載のアース端子。
【請求項6】
前記突部は、前記他方の側の先端に向けて板厚を縮小させる先端縮小部を有している、請求項4に記載のアース端子。
【請求項7】
前記他方は、前記一方の側を向く面に開口する前記孔の開口部に、前記一方の側に拡開する形状の拡開部を有している、請求項2に記載のアース端子。
【請求項8】
前記一方は前記ベース部で、前記他方は前記電線接続部である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のアース端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アース端子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両のボディに取り付けられるアース端子を開示している。このアース端子は、板状をなし、ボルトを介してボディに固定される固定部と、固定部に連なる基板部と、基板部から突出して電線の芯線に圧着される離脱用芯線バレル形成部と、を備える。離脱用芯線バレル形成部は、根元部分に形成された易破断部の180度の折り返しによって、基板部の板面に重ね合わされる。車両解体時に、電線がその延び方向と交差する方向である上方に引っ張られ、易破断部が破壊されることにより、離脱用芯線バレル形成部を電線とともに離脱させることができる。なお、特許文献2、3は、別体の部材を連結してなるアース端子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-272731号公報
【特許文献2】特開平9-82384号公報
【特許文献3】特開2015-185487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、離脱用芯線バレル形成部の付け根に、強度的に脆弱な易破断部が形成されている。このため、ボディへの組み付け時等に、電線がその延び方向である後方に引っ張られると、易破断部が意図せず変形し、電線の延び方向が本来の方向から変わる可能性があった。これに対し、離脱用芯線バレル形成部の付け根の強度を高めると、車両解体時に易破断部が破断に至らず、電線の取り外し作業を円滑に進めることができないという問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、電線の取り外しを容易に行うことができ、且つ電線の引っ張り力に対して強度を確保できるアース端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のアース端子は、板状のアース端子であって、ボディに固定されるベース部と、前記ベース部の板面に重なるように配置され、電線の端末部に接続される電線接続部と、前記電線接続部からの前記電線の延び方向と交差する方向に折り返される形状を有して前記ベース部と前記電線接続部とをつなぐ折り返し部と、を備え、前記ベース部と前記電線接続部のうち、いずれか一方は、他方の側に突出する突部を有し、前記他方は、前記突部に対して前記延び方向に突き当て可能に対向する当て部を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電線の取り外しを容易に行うことができ、且つ電線の引っ張り力に対して強度を確保できるアース端子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のアース端子の斜視図である。
図2図2は、実施形態1のアース端子の後部側の平面図である。
図3図3は、実施形態1のアース端子の後部側の底面図である。
図4図4は、実施形態1のアース端子の後部側が電線の端末部に接続された態を示す側面図である。
図5図5は、実施形態1のアース端子の後部側から電線接続部とともに電線を取り外した状態を示す側面図である。
図6図6は、実施形態1のアース端子の後部側において、孔を貫通した突部の側断面図である。
図7図7は、実施形態2のアース端子の斜視図である。
図8図8は、実施形態2のアース端子の後部側において、孔を貫通した突部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のアース端子は、
(1)板状のアース端子であって、ボディに固定されるベース部と、前記ベース部の板面に重なるように配置され、電線の端末部に接続される電線接続部と、前記電線接続部からの前記電線の延び方向と交差する方向に折り返される形状を有して前記ベース部と前記電線接続部とをつなぐ折り返し部と、を備え、前記ベース部と前記電線接続部のうち、いずれか一方は、他方の側に突出する突部を有し、前記他方は、前記突部に対して前記延び方向に突き当て可能に対向する当て部を有している、アース端子である。
【0010】
車両解体時等に電線をベース部から取り外す際には、電線を延び方向と交差する方向に引っ張ることにより、折り返し部を破断させ、電線接続部を電線とともにベース部から離脱させることができる。よって、ボディに対するベース部の固定を解除することなく、電線を取り外すことができ、作業性の向上を図ることができる。
他方、ボディへの組み付け時等に、電線が延び方向に引っ張られても、当て部が突部に突き当たるので、折り返し部が破断に至らず、ベース部に対する電線接続部の位置ずれを規制することができる。結果として、電線の延び方向を一定に維持することができる。
【0011】
(2)前記他方は、前記突部が嵌合する孔を有し、前記当て部は、前記孔の内面における前記延び方向で前記突部と対向する部分に設けられていることが好ましい。
突部が孔に嵌合することにより、孔の内面における当て部以外の部分も突部に突き当たることができるので、ベース部に対する電線接続部の位置ずれを孔の全周に亘って規制することができる。
【0012】
(3)前記突部は、前記一方の一部を切り起こした形状であると良い。
一方における突部の切り起こし位置と他方における孔の形成位置とを調整することにより、当て部が突部に突き当たる位置を決めることができるので、当て部の突き当て位置を決める際の自由度を高めることができる。
【0013】
(4)前記突部は、平面視において前記延び方向に長い形状をなし、前記延び方向の一端に、前記当て部に対向する板厚面を有していると良い。
電線が延び方向に強く引っ張られ、当て部が突部に突き当たったときに、突部が変形する懸念がある。しかし、上記構成によれば、当て部が延び方向に長い突部の板厚面に突き当たることができるので、突部が変形しにくく、ベース部に対する電線接続部の位置ずれをより確実に規制することができる。
【0014】
(5)前記突部の前記板厚面は、前記他方の側の先端に向けて次第に前記当て部側に傾斜するテーパ形状を有していると良い。
電線が延び方向に強く引っ張られたときに、突部に突き当たった当て部が延び方向と交差する方向に浮き上がるように変位するのを、突部のテーパ形状によって抑えることができる。
【0015】
(6)前記突部は、前記他方の側の先端に向けて板厚を縮小させる先端縮小部を有していると良い。
アース端子の製造時に、折り返し部が折り返され、電線接続部がベース部の板面に重なる際に、突部が先端縮小部にガイドされて他方との干渉を回避することができる。
【0016】
(7)前記他方は、前記一方の側を向く面に開口する前記孔の開口部に、前記一方の側に拡開する形状の拡開部を有していると良い。
アース端子の製造時に、折り返し部が折り返され、電線接続部がベース部の板面に重なる際に、突部が拡開部にガイドされて孔に円滑に入り込むことができる。
【0017】
(8)前記一方は前記ベース部で、前記他方は前記電線接続部であると良い。
突部の先端が電線接続部から突出していてもボディと干渉しないので、突部の突出寸法を十分に確保することができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
<実施形態1>
本開示の実施形態1のアース端子10は、一枚の導電性の金属板を打ち抜いた後、曲げ加工等して成形され、図4に示すように、電線90の端末部に接続される。アース端子10は、車両のボディ80に取り付けられる。なお、以下の説明において、前後方向は、アース端子10から電線90が延びる方向を後方とする。上下方向は、アース端子10がボディ80を向く側とは反対側の方向を上方とする。左右方向は、アース端子10を前方から見たときの右側を右方とする。図1において、前方、右方および上方は、それぞれ、符号X、符号Y、符号Zで表記される。本明細書における方向の基準は、便宜的なものであり、アース端子10が車両のボディ80に取り付けられたときの方向の基準と必ずしも一致しない。
【0020】
(アース端子の構造)
アース端子10は、図1に示すように、ボディ80に固定されるベース部11と、電線90に接続される電線接続部12と、ベース部11と電線接続部12とをつなぐ折り返し部13と、を備えている。
ベース部11は、板面を上下方向に向けて配置され、前後方向の中間部に、左右方向に幅広の固定部14を有している。固定部14は、板厚方向に貫通する固定孔15と、固定孔15を挟んだ左右両側に配置される係止ガイド部16と、を有している。
【0021】
アース端子10は、このアース端子10と対をなす図示しない別のアース端子と組み合わされ、組み合わせアース端子を構成する。別のアース端子は、アース端子10に対して左方から係止ガイド部16にガイドされつつ組み付けられ、組み付け位置にて係止ガイド部16の係止孔17に係止されてアース端子10に保持される。アース端子10の固定孔15は別のアース端子の固定孔と上下方向に連通し、連通した各固定孔に上方からボルト70(図1を参照)が挿通される。ボルト70は、さらにボディ80の図示しないボルト孔に挿入されて固定される。
【0022】
ベース部11は、固定部14から前端寄りの位置にかけて左右方向に次第に幅狭に形成されている。そして、ベース部11は、前端寄りの位置から前端に亘る部分に、一旦下方に突出した後、前方に突出する側面視L字形の掛け止め部18を有している。掛け止め部18は、ボディ80に掛け止められ、ボディ80に対する位置決めの機能を果たす。
【0023】
また、ベース部11は、固定部14の後端右側の端部から後方に延びる延出部19を有している。延出部19は、後端の左右両側の端部から上方に突出する一対のインシュレーションバレル片21を有している。各インシュレーションバレル片21は、図示しない圧着治具によって折り曲げられ、電線90の端末部(前端部)の被覆部92に圧着され機械的に接続される。図4に示すように、電線90は、被覆電線であって、複数本の素線を撚り合わせた導体からなる芯線部91と、芯線部91の外周を包囲する絶縁樹脂からなる被覆部92と、によって構成される。芯線部91は、電線90の端末部において、被覆部92の除去によって露出している。
【0024】
延出部19は、図1および図2に示すように、各インシュレーションバレル片21の付け根間から前方に向かう部分に、下向きに湾曲する断面形状の受け部22を有している。図4に示すように、受け部22の上方には、電線接続部12の後述するワイヤバレル部28が重なるように配置される。
【0025】
また、図1および図2に示すように、延出部19は、受け部22と固定部14との間に、前後方向に一定の幅寸法で延びる平板状の平板部23を有している。平板部23の上方には、電線接続部12の後述する連結部24が重なるように配置される。
【0026】
平板部23は、受け部22寄りの位置に、上方に突出する突部25を有している。突部25は、図3に示すように、平板部23に形成されたU字形の切り込み孔43間の舌片部分を切り込み孔43の左側端を支点として曲げ起こすことによって形成される。図2に示すように、突部25は、平面視において前後方向に長い側面視矩形の板状をなし、図5に示すように、平板部23の上面上に板面を左右方向に向けて配置される。突部25の前端面は、板厚面41であって、上下方向に沿って配置される。図2および図6に示すように、突部25は、上端部に、先端(上端)に向けて板厚および板幅を次第に縮小させる先端縮小部26を有している。
【0027】
また、図1および図2に示すように、ベース部11は、平板部23の後部左側の端部(板厚部分)から突出する押さえ部27を有している。押さえ部27は、図示しない治具によって断面U字形に折り曲げられ、平面視三角形の返し部分が連結部24の上面に押し当てられる。連結部24は、押さえ部27と平板部23との間に上下方向に挟まれて保持される。
【0028】
続いて、電線接続部12について説明する。図1に示すように、電線接続部12は、連結部24とワイヤバレル部28とを前後方向に一体に連ねて構成される。
連結部24は、平板状をなし、板面を上下方向に向けつつ平板部23の上面に密着して重なるように配置される。連結部24の中間部には、前後方向に長い矩形断面の孔29が形成されている。孔29は、連結部24を板厚方向に貫通し、上方に開放されている。
【0029】
連結部24の孔29には、突部25が貫通して配置される。孔29の断面形状(矩形断面)は、突部25の断面形状と相似であり、突部25の断面形状より一回り大きくされている(図2を参照)。図6に示すように、連結部24の孔29は、平板部23側を向く下面に開口する開口部に、下向きに次第に拡開する拡開部31を有している。図3に示すように、拡開部31は、孔29の内面の下部における前後左右の各面に形成されている。
【0030】
また、図6に示すように、連結部24は、孔29の内面における前側面(後方を向く面)に、突部25の板厚面41に突き当たることが可能な当て部32を有している。当て部32は、上下方向に沿って延び、下端を拡開部31の上端に連ねている。
【0031】
図1に示すように、折り返し部13は、平板部23の後部右側の端部(板厚部分)と連結部24の後部右側の端部(板厚部分)とにそれぞれ連なり、平板部23および連結部24の各端部間に折り返し状に形成されている。具体的には、折り返し部13は、平板部23および連結部24の各端部よりも右方向に離れた位置に、折り返し端部33を有している。図2に示すように、折り返し端部33は、平面視において、後方へ行くにしたがって右方向に傾斜する折り返し線に沿って配置される。そして、折り返し部13は、折り返し端部33を中心に180度折り返され、上下方向に互いの板面同士を密着させる重合部34を有している。重合部34は、帯状をなし、折り返し部13から各板厚部分にかけて折り返し端部33と同幅で且つ折り返し端部33の傾斜方向と直交する方向に延びるように形成されている。
【0032】
ワイヤバレル部28は、オープンバレル状をなし、連結部24の後部左側の端部(板厚部分)から後方に延びる底部35と、底部35の左右両側の端部から上方に突出する一対のワイヤバレル片36と、によって構成される。底部35は、受け部22と同様、下向きに湾曲する断面形状を有し、受け部22の上面に重なるように配置される。各ワイヤバレル片36の前後幅は、各インシュレーションバレル片21の前後幅よりも大きくされている。図4に示すように、各ワイヤバレル片36は、図示しない圧着治具によって折り曲げられ、電線90の端末部に露出する芯線部91に圧着されて電気的および機械的に接続される。図2に示すように、ワイヤバレル部28は、その内面としての各ワイヤバレル片36の相互の対向面と底部35の上面とに、前後方向に間隔を置いて配置される複数のセレーション部37を有している。各セレーション部37は、ワイヤバレル部28の内面において周方向に延びる凹状断面を有し、電線90の芯線部91に食い込むように機能する。
【0033】
(アース端子の作用)
アース端子10の製造に際し、平板部23の一部から突部25が切り起こし形成され、続いて、折り返し端部33を中心とする180度の折り返しによって重合部34が形成される。これにより、電線接続部12が延出部19の上面に重なるように配置される。具体的には、連結部24が平板部23の上面上に載置され、ワイヤバレル部28が受け部22の上面上に載置される。そして、折り返し部13の折り返しに伴い、突部25が連結部24の孔29に下方から嵌まり込む。ここで、突部25は先端縮小部26にガイドされて孔29に挿入され、孔29の下部には突部25をガイドする拡開部31も形成されている。このため、突部25は、連結部24の下面との干渉を回避しつつ孔29に円滑に嵌まり込むことができる。図6に示すように、突部25が孔29に挿入されると、先端縮小部26は、連結部24の上面における孔29の開口端よりも上方に突出して配置される。
【0034】
次いで、押さえ部27が、折り曲げられ、連結部24の右側の端部上面に押し当てられる。これにより、連結部24の平板部23からの浮き上がりが規制され、電線接続部12がベース部11に重なる状態が維持される。
【0035】
また、各ワイヤバレル片36および各インシュレーションバレル片21がそれぞれ底部35および受け部22から立ち上げ形成される。図1に示すように、各ワイヤバレル片36間の底部35の上面上および各インシュレーションバレル片21間の受け部22の上面上には、前後方向に同軸に延びる受容空間38が形成される。受容空間38には上方から電線90が挿入され、図4に示すように、各ワイヤバレル片36が折り曲げられて電線90の芯線部91に圧着され、且つ各インシュレーションバレル片21が折り曲げられて電線90の被覆部92に圧着される。被覆部92に対する各インシュレーションバレル片21の圧着力は、各インシュレーションバレル片21の前後幅が小さいことから、芯線部91に対する各ワイヤバレル片36の圧着力よりも小さい。このため、各インシュレーションバレル片21は、各ワイヤバレル片36よりも開き易くなっている。
【0036】
アース端子10がボディ80に固定される際に、あるいは固定された状態において、電線90が後方(図6の矢印P方向)に引っ張られると、孔29の当て部32が突部25の板厚面41に前方から突き当たり、ベース部11に対する電線接続部12の後方への位置ずれが規制される。このため、折り返し部13に過剰な応力が加わることがなく、折り返し部13が変形したり、破断に至る事態を防止することができる。その結果、アース端子10からの電線90の延び方向を前後方向に維持することができる。また、電線90が左右方向に振動等したときには、突部25が孔29の内面における当て部32以外の部分に当たることができるので、ベース部11に対する電線接続部12の左右方向への位置ずれも規制される。
【0037】
車両解体時に電線90を取り外す際には、図5に示すように、電線90が上方に引き上げられる。これにより、押さえ部27が開いて電線接続部12に対するベース部11の圧着状態が解除される。また、各インシュレーションバレル片21も開いて、電線90の端末部の被覆部92がベース部11から離間する。他方、電線90の端末部の芯線部91は、各ワイヤバレル片36に圧着された状態のまま電線接続部12とともに上方に引き上げられる。折り返し部13は、電線90の引張力を受けて破断される。また、電線接続部12の上面における孔29の開口縁部が突部25で遮られることなく露出しているので、突部25が孔29から容易に抜け出て電線接続部12から離間する。これにより、ベース部11をボディ80に残した状態で、電線90を電線接続部12とともにボディ80から取り外すことができる。ここで、折り返し部13は、その折り返し形状によって破断し易くなっており、さらに折り返し端部33が前後方向に対して傾斜していることから、電線90の引き上げに伴って容易に破断される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態1によれば、電線90をベース部11から取り外す際に、電線90を上方に引っ張ることにより、折り返し部13を破断させ、電線接続部12を電線90とともにベース部11から離脱させることができる。よって、電線90を取り外す際に、ボルト70を緩めてボディ80からベース部11を取り外す等といった面倒な作業を行わなくて済み、作業性の向上を図ることができる。
他方、ボディ80への組み付け時等において、電線90が後方に引っ張られると、当て部32が突部25に突き当たるので、折り返し部13が破断に至らず、ベース部11に対する電線接続部12の位置ずれが規制される。特に、突部25が孔29に嵌合することにより、孔29の内面における当て部32以外の部分も突部25に突き当たることができるので、ベース部11に対する電線接続部12の位置ずれを孔29の全周に亘って規制することができる。
【0039】
また、突部25がベース部11の一部を切り起こして形成されているため、ベース部11における突部25の切り起こし位置と電線接続部12における孔29の形成位置とを調整し、当て部32が突部25に突き当たる位置を決めることができる。その結果、当て部32の突き当て位置を決める際の自由度を高めることができる。そして、突部25がベース部11に設けられ、孔29が電線接続部12に設けられているため、突部25が孔29を貫通して電線接続部12の上面上に突出していても、突部25がボディ80と干渉することがない。その結果、突部25の突出寸法を十分に確保することができ、ひいては当て部32に対する突部25の接触面積を十分に確保することができる。
【0040】
また、突部25が平面視において前後方向に長い形状をなし、突部25の前端には当て部32に対向する板厚面41が形成されているため、電線90が強く引っ張られても、当て部32の突き当て力に抗して突部25の形状を維持することができる。その結果、ベース部11に対する電線接続部12の位置ずれがより確実に規制される。
【0041】
さらに、突部25が先端縮小部26を有し、孔29がベース部11側に拡開する拡開部31を有しているため、電線接続部12が折り返し部13を支点に回動してベース部11に重なる際に、突部25がベース部11と干渉するのを回避できる。
【0042】
<実施形態2>
実施形態2のアース端子10Aは、図8に示すように、突部25Aにテーパ面39を形成しており、この点で実施形態1のアース端子10とは異なる。図7に示すように、アース端子10Aにおける突部25A以外の部分は、実施形態1と同様である。なお、以下の実施形態2の説明において、実施形態1と同一または相当する部位には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0043】
突部25Aは、ベース部11の一部を切り起こして形成され、板面を左右方向に向けて配置される。図8に示すように、突部25Aは、ベース部11の上面上の切り起こし部分を側面視したときに、上辺が下辺よりも長い台形状をなしている。なお、突部25Aは先端縮小部26を有していない。突部25Aの後端面は、上下方向に沿って配置される。突部25Aの上端面は、前後方向に沿って配置される。
【0044】
突部25Aの前端面は、上記台形の斜辺を構成する板厚面であって、ベース部11の上面上に、上方へ行くにしたがって前方に傾斜するテーパ面39を有している。突部25Aのテーパ面39と上端面は互いに鋭角に交差している。
【0045】
突部25Aが孔29に挿入された状態において、突部25Aのテーパ面39が孔29の当て部32に対向して配置される。テーパ面39の上端部は、連結部24の上面上に露出して配置される。
【0046】
電線90が後方(矢印P方向)に引っ張られると、孔29の当て部32が突部25Aのテーパ面39に前方から突き当たる。ここで、突部25Aのテーパ面39が当て部32の上方への変位を規制するテーパ形状を有しているため、電線接続部12がベース部11に強固に係止される。その結果、ベース部11に対する電線接続部12の後方への位置ずれがより確実に規制される。
【0047】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1,2はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1,2の場合、アース端子は、組み合わせアース端子の一つとして、複数枚組合せされてボディに固定されていた。これに対し、他の実施形態によれば、アース端子は、一枚が単独でボディに固定されていても良い。この場合、アース端子から係止ガイド部を省略することができる。
上記実施形態1,2の場合、当て部は、電線接続部の孔の内面に形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、当て部は、孔の内面ではなく、電線接続部の後端面等の端部に形成されていても良い。
上記実施形態1,2の場合、突部は、ベース部の一部を切り起こして形成され、ベース部には、突部の切り起こしに起因する切り込み孔が形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、突部は、ベース部に切り込み孔を形成することなく、ベース部から延びる突片部分を曲げ起こして形成されていても良い。
上記実施形態1,2の場合、突部がベース部に設けられ、当て部が電線接続部に設けられていた。これに対し、他の実施形態によれば、突部が電線接続部に設けられ、当て部がベース部に設けられていても良い。
上記実施形態1,2の場合、一対のインシュレーションバレル片は、ベース部に設けられていた。これに対し、他の実施形態によれば、一対のインシュレーションバレル片は、電線接続部に設けられていても良い。この場合、ワイヤバレル部の後方に底部が連続して延び、各インシュレーションバレル片がワイヤバレル部の後方で底部の左右両側の端部から上方に突出する形態であると良い。
上記実施形態2の突部は、先端縮小部を有していなかった。これに対し、他の実施形態によれば、実施形態2の突部も先端縮小部を有していても良い。
上記実施形態1の拡開部は、先端に向けて板厚および板幅を縮小させる形態であった。これに対し、他の実施形態によれば、拡開部は、先端に向けて板厚のみを縮小させる形態であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
10,10A…アース端子
11…ベース部
12…電線接続部
13…折り返し部
14…固定部
15…固定孔
16…係止ガイド部
17…係止孔
18…掛け止め部
19…延出部
21…インシュレーションバレル片
22…受け部
23…平板部
24…連結部
25,25A…突部
26…先端縮小部
27…押さえ部
28…ワイヤバレル部
29…孔
31…拡開部
32…当て部
33…折り返し端部
34…重合部
35…底部
36…ワイヤバレル片
37…セレーション部
38…受容空間
39…テーパ面
41…板厚面
43…切り込み孔
70…ボルト
80…ボディ
90…電線
91…芯線部
92…被覆部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8