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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076450
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】ホース移動用器具
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
E04G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187964
(22)【出願日】2022-11-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)試作品を提供 提供日 令和4年6月8日 提供した場所 株式会社静北(千葉県柏市千代田1-5-35-1001) (2)試作品を提供 提供日 令和4年6月8日 提供した場所 松島総業株式会社(千葉県千葉市花見川区長作町1111-1) (3)試作品を提供 提供日 令和4年6月8日 提供した場所 株式会社ワタナベコンクリートサービス(山梨県南都留郡鳴沢村4175-3)
(71)【出願人】
【識別番号】594104515
【氏名又は名称】有限会社山岡興産
(74)【代理人】
【識別番号】100091410
【弁理士】
【氏名又は名称】澁谷 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA31
2E172CA61
(57)【要約】
【課題】軽量で寿命が長く、しかも円滑なスライド移動を確保できるホース移動用器具を提供する。
【解決手段】底部材5の底部23に収容凹部25を形成し、収容凹部25内にスライド材31を配置する。底部材5の底面5-1の隣り合う収容凹部25の間に形成されている底面溝5-3のそれぞれに、長さ方向に間隔をあけて3つの鉄筋ブロック材5-5を取り付けておく。鉄筋ブロック材5-5の材料としては、スライド材31と同様に、ポリカーボネート、ポリアセタール(POM)又はジュラコンなどの耐摩耗性に優れた樹脂、摩擦係数の小さなポリエステル樹脂、その他の樹脂、スチールやステンレスなどの金属を用いることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースを支える支持部が前側及び後側に設けられ、底部の下側面がスライド面を有するように形成されている箱状又は高さの低い箱状のホース移動用器具であって、
前記底部には、下側に凹み、下側面が前記スライド面を形成する前後方向に細長い又は前後方向に延びる収容凹部が複数本形成され、
前記収容凹部には、この収容凹部の底面部が磨滅したときに露出するスライド材が収められて固定されていて、
前記底部の前記下側面の隣り合う前記収容凹部の間に形成されている前後方向に細長い又は前後方向に延びる溝部に、鉄筋ブロック材が1つ又は長さ方向に間隔をあけて複数取り付けられている、ことを特徴とするホース移動用器具。
【請求項2】
前記底部の前記スライド面と前記鉄筋ブロック材の下側面とは同一の高さ又はほぼ同一の高さに位置している、ことを特徴とする請求項1記載のホース移動用器具。
【請求項3】
前記鉄筋ブロック材はスライド部材である、ことを特徴とする請求項1又は2記載のホース移動用器具。
【請求項4】
前記鉄筋ブロック材は前記スライド材と同じ材料で形成されている、ことを特徴とする請求項3記載のホース移動用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場においてコンクリートを圧送して打設する際に用いられるコンクリート圧送用ホースなどの大径のホースを容易に移動させることのできるホース移動用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場でコンクリート圧送用ホースを用いてコンクリートを打設する場合には、作業員が圧送用ホースの先端を支えて送られてきたコンクリートを所定個所に打設している。打設個所を変更する場合には圧送用ホースの先端を移動させなければならないが、圧送用ホースの重量が大きいために持ち上げて移動させることが容易ではなく、鉄筋上などをひきずりながら移動させることとなる。ところが、圧送用ホースは重量が大きいのでひきずりながら移動させるとホース本体が早期に摩耗したり、ホース本体に亀裂が生じたりする。また、鉄筋上を移動させる場合には鉄筋が圧送用ホースに引っ張られて変形し、場合によっては鉄筋の結束線が切断されるおそれもある。そこで、例えば特許文献1や特許文献2に示すように、重量の大きいコンクリート圧送用ホースをひきずることなく円滑に移動させることができるホース移動用器具も開発されている。このホース移動用器具は、樹脂製、より具体的には強化プラスチック製の箱体状のものであり、前側及び後側の上端にホースを収めて支持するための支持凹部が形成されていて、箱体を鉄筋上に置き、箱体の支持凹部内にホースを嵌めて使用する。ここでホースを移動させようとして例えば引っ張ると、鉄筋上で箱体をスライドさせてホースを円滑に移動させることができる。
【0003】
また、特許文献1及び特許文献2のホース移動用器具では底部に耐摩耗性に優れた薄肉のプレート材を埋め込んで底部の早期の磨滅を防止するように構成している。
【0004】
特許文献1や特許文献2に記載されたホース移動用器具は優れた耐久性を有するものではあるが、底部に全体的に耐摩耗性プレートを埋め込む構成であるため、重量が増加しすぎたり価格が高くなりすぎたりしないように、耐摩耗性プレートとしてはできるだけ薄肉のものを使用せざるを得ない場合もあり、常に十分な耐摩耗性を確保できるとは限らない。
【0005】
そこで特許文献3に示すように、底部又は底面部に、下側面がスライド面を形成する前後方向に細長い又は前後方向に延びる収容凹部を複数本形成し、収容凹部に底面部が磨滅したときに露出するスライド材を収めておき、スライド材により寿命を延ばす構成を採用するにあたってホース移動用器具の重量の増加や使用するスライド材の量を抑えることができるような構成のものも採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3192856号公報
【特許文献2】実用新案登録第3211425号公報
【特許文献3】特開2021-70967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3の ホース移動用器具では、底部の下側面に隣り合う収容凹部の間で細長い溝部が形成されるため、使用時にこの溝部に鉄筋が入り込んでしまい、あるいは引っ掛かってしまい、鉄筋上でのホース移動用器具のスムーズなスライド移動が阻害されるおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、軽量で寿命が長く、しかも円滑なスライド移動を確保できるホース移動用器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するための本発明のホース移動用器具は、ホースを支える支持部が前側及び後側に設けられ、底部の下側面がスライド面を有するように形成されている箱状又は高さの低い箱状のホース移動用器具であって、前記底部には、下側に凹み、下側面が前記スライド面を形成する前後方向に細長い又は前後方向に延びる収容凹部が複数本形成され、前記収容凹部には、この収容凹部の底面部が磨滅したときに露出するスライド材が収められて固定されていて、前記底部の前記下側面の隣り合う前記収容凹部の間に形成されている前後方向に細長い又は前後方向に延びる溝部に、鉄筋ブロック材が1つ又は長さ方向に間隔をあけて複数取り付けられているものである。鉄筋ブロック材はそれぞれの溝部に2つ乃至5つ設けるのが好ましい。鉄筋ブロック材同士の長さ方向の間隔は鉄筋ブロック材の長さよりも大きいことが好ましい。それぞれの溝部での鉄筋ブロック材の長さの合計は溝部の長さの10%乃至40%とすることができる。あるいは、鉄筋ブロック材の長さの合計はそれぞれの溝部で溝部の長さの15%乃至30%とすることができ、20%又はほぼ20%が効果的である。スライド材は摩擦係数が小さい樹脂製とすることができ、HDPE(高密度ポリエチレン)製としてもよい。あるいはスライド材を樹脂よりも耐久性に優れたステンレスやスチールなどの金属製とすることができる。また、予め形成したスライド材を収容凹部に配置する代わりに、収容凹部にスライド材用の材料である樹脂製パテを供給し、このパテを硬化させてスライド材としてもよい。鉄筋ブロック材も摩擦係数が小さい樹脂製とすることができ、HDPE(高密度ポリエチレン)製としてもよい。あるいは鉄筋ブロック材を樹脂よりも耐久性に優れたステンレスやスチールなどの金属製とすることができる。
【0010】
底部のスライド面と鉄筋ブロック材の下側面とは同一の高さ又はほぼ同一の高さに位置していることが好ましい。 底部のスライド面と鉄筋ブロック材の下側面とは例えば連続している。底部のスライド面と鉄筋ブロック材の下側面とは例えば上下方向で同一の位置又はほぼ同一の位置となっている。
【0011】
鉄筋ブロック材はスライド部材とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば優れたホース移動機能を有するホース移動用器具を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る第1のホース移動用器具の分解斜視図である。
図2】底部材の底面側を示す斜視図である。
図3】スライド材の斜視図である。
図4】底部材の断面図である。
図5】底部材の別の断面図である。
図6】第1のホース移動用器具の使用状態を示す斜視図である。
図7】底部材の変形例の断面図である。
図8】底部材の変形例の別の断面図である。
図9】本発明に係る第2のホース移動用器具の斜視図である。
図10】第2のホース移動用器具の底面側を示す斜視図である。
図11】第2のホース移動用器具の断面図である。
図12】第2のホース移動用器具の別の断面図である。
図13】第2のホース移動用器具の変形例の断面図である。
図14】第2のホース移動用器具の変形例の別の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0015】
まず、図1乃至図5を参照して本発明に係る第1のホース移動用器具の構成を説明する。
【0016】
第1のホース移動用器具1は器具本体3及び底部材5を備えている。繊維強化プラスチック製の器具本体3は上面が開口した容器状又は高さの低い箱状に一体的に構成されていて、上端には全周にわたって鍔7が形成されている。前方の鍔7a及び後方の鍔7bにはそれぞれ、コンクリート圧送用ホースA(図6参照)を収容して支えるための半円柱状又は半円形状の支持凹部9,9が設けられ、かつこの支持凹部9,9の両側に固定用バンド11(図6参照)を通すための通し孔13,13が形成されている。
【0017】
繊維強化プラスチック製の底部材5は上面が開口した浅い容器状又は高さの低い箱状に一体的に構成されていて、この底部材5の左右上端からはそれぞれ、取付け部15,15が上方に延びている。取付け部15,15にはそれぞれ、組み立てボルト孔17が形成されていて、器具本体3の左右側壁19,19にこの組み立てボルト孔17に対応する組み立てボルト穴21が設けられている。
【0018】
底部材5の底部23(第1のホース移動用器具1の底部)には、前後方向に細長く延びる収容凹部25が幅方向一端側、幅方向中間部及び幅方向他端側に等間隔で3本形成されていて、それぞれの収容凹部25は、底部23の基部27の下面よりも下側に突出している。収容凹部25は断面台形状に形成されて平板状のスライド底部29を有しているが、スライド底部29の前端部及び後端部は湾曲(例えば円弧状に湾曲)して立ち上がるように形成されている。スライド底部29の下側面又は下面は平面状のスライド面を形成する。
【0019】
それぞれの収容凹部25にはHDPE製の板状のスライド材31が収容されていて、スライド材31は収容凹部25とほぼ等しい長さと、収容凹部25のスライド底部29よりも狭い又はスライド底部29とほぼ等しい、収容凹部25の開口幅のほぼ2分の1の幅と、を有している。スライド材31の前端部及び後端部の下面は湾曲(例えば円弧状に湾曲)して立ち上がるように形成されていて、スライド材31は、下面の幅方向中央に全長又はほぼ全長にわたって延びる溝33を有している。収容凹部25に収容されたスライド材31の周囲には樹脂35が流し込まれて硬化していて、スライド材31の溝33にもこの樹脂35が入り込んで硬化している。スライド材31はこの樹脂35により収容凹部25に接着されている。スライド材31の材料としては、ポリカーボネート、ポリアセタール(POM)又はジュラコンなどの耐摩耗性に優れた樹脂、摩擦係数の小さなポリエステル樹脂、その他の樹脂、スチールやステンレスなどの金属を用いることができ、また、断面形状も台形、長方形、その他の四角形、円形、半円形、かまぼこ形とすることができる。
【0020】
底部材5の内面にはスライド材31を覆うようにガラス繊維強化ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂層からなる保護層37が形成されている。樹脂35は保護層37を形成する場合に使用した樹脂が収容凹部25内に入り込んで硬化したものである。
【0021】
底部材5の底面5-1には隣り合う収容凹部25の間に長さ方向に延びる2本の底面溝5-3が形成されていて、それぞれの底面溝5-3には、長さ方向に間隔をあけて3つの鉄筋ブロック材5-5が取り付けられている。鉄筋ブロック材5-5同士の間隔は鉄筋ブロック材5-5の長さの2倍、ほぼ2倍又は2倍を超えるように設定できる。底面溝5-3及び鉄筋ブロック材5-5は断面台形状に形成されている。底面溝5-3は底部23の基部27の下面を上面としている。それぞれの鉄筋ブロック材5-5の材料としては、スライド材31と同様に、ポリカーボネート、ポリアセタール(POM)又はジュラコンなどの耐摩耗性に優れた樹脂、摩擦係数の小さなポリエステル樹脂、その他の樹脂、スチールやステンレスなどの金属を用いることができる。
【0022】
鉄筋ブロック材5-5は、底面5-7にリベット用溝5-9を有し、このリベット用溝5-9の上面に貫通孔5-11が形成されている。また、底部材5の底部23の基部27には貫通孔5-11に対応する貫通孔5-13が形成されていて、固定リベット5-15をリベット用溝5-9(鉄筋ブロック材5-5)の貫通孔5-11及び基部27の貫通孔5-13に通し、底部材5の底部23の内側で固定リベット5-15の先端部に抜け止め加工5-17を施すことにより、鉄筋ブロック材5-5は底面溝5-3に例えば強固に取り付けられている。リベット用溝5-9の貫通孔5-11は下側が大径収容部として形成されていて、固定リベット5-15の頭部5-21はこの大径収容部内に入り込んでいる。
【0023】
鉄筋ブロック材5-5の底面5-7は平面状に形成され、底部材5のスライド底部29の下側面又は下面と同一の高さ又はほぼ同一の高さとなるように形成され、底部材5のスライド底部29の下側面又は下面と連続し、面一となっている。鉄筋ブロック材5-5の両側面5-23はテーパ状に形成され、底面溝5-3のテーパ状の両側壁に当接又は押し付けられている。鉄筋ブロック材5-5の上面と底面溝5-3の上面との間には隙間が形成されているが、鉄筋ブロック材5-5を厚く形成して隙間が無いように又は小さくなるように構成できる。
【0024】
器具本体3の下側を底部材5に嵌め込んでから組み立てボルト孔17及び組み立てボルト穴21にボルト38を通し、器具本体3の内側からこのボルト38にナット39を取り付けて底部材5を外面下側を覆うように器具本体3に固定する。底部材5は器具本体3に対して下側に位置している。器具本体3の左右側壁19,19にはそれぞれ、中央上端部に長方形状の手掛け孔41が形成されていて(右側壁19に形成されている手掛け孔41は図示せず)、この手掛け孔41に手を掛けて第1のホース移動用器具1を容易かつ自由に持ち運びすることができる。
【0025】
器具本体3には複数個の軽減孔43が設けられて重量が軽減されている。底部材5が磨耗により使用できなくなったときは底部材5を取り外して新しい底部材5を器具本体3に取り付けて使用することとなるが、底部材5を取り外して器具本体3のみで使用することもできる。ここで、器具本体3のスライド機能を重視する場合は器具本体3の底部45には軽減孔43を設けないことが好ましい。また、軽量化を重視する場合には底部45を設けないで左右側壁19,19及び前後側壁47,47から形成される枠体形状に器具本体3を構成すればよい。
【0026】
なお、図中49は紐取付け孔である。
【0027】
図6を参照して第1のホース移動用器具1の使用状態を説明する。
【0028】
第1のホース移動用器具1は鉄筋B上に載せられ、器具本体3の支持凹部9,9にコンクリート圧送用ホースAが収められている。コンクリート圧送用ホースAは、通し孔13,13に通された固定用バンド11によって支持凹部9に取り付けられている。前方の2つの紐取付け孔49(図1参照)には引き紐67が取り付けられていて、この引き紐67の先端を引っ張れば第1のホース移動用器具1をコンクリート圧送用ホースAをともなって矢印X方向にスムーズに移動させることができる。引き紐67を用いて第1のホース移動用器具1を矢印X方向と逆方向に移動させたい場合には後方の2つの紐取付け孔49にも引き紐を取り付けておく。鉄筋又は配筋Bは鉄筋ブロック材5-5によりブロックされ、底面溝5-3内に入り込んだり引っ掛かったりしない(図4参照)。
【0029】
なお、第1のホース移動用器具1を直接引っ張ったり、又は押したり、あるいは手掛け孔41に手を掛けて移動させてもよい。
【0030】
底部材5を修理する場合又は取り替える場合には、ナット39を外してボルト38を組み立てボルト穴21及び組み立てボルト孔17から抜き取り(図1参照)、その後、器具本体3から底部材5を分離させる。器具本体3に割れなどが生じてきた場合には、底部材5を分離させて器具本体3を直接鉄筋B上でスライドさせて使用する。
【0031】
図7及び図8を参照して第1のホース移動用器具1の底部材5の変形例を説明する。
【0032】
底部材5の変形例である底部材69は、収容凹部25内にスライド材31を配置する代わりに、収容凹部25内に繊維強化樹脂のパテ71、例えばガラス繊維又はカーボン繊維配合ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のパテを塗って収容凹部25を埋めた構造のものであり、その他の構成は底部材5と同一である。収容凹部25を埋めたパテ71は硬化してスライド材を構成する。底部材69の内面にはガラス繊維強化ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂層からなる保護層37が形成されている。
【0033】
また、図9乃至図12を参照して本発明に係る第2のホース移動用器具の構成を説明する。
【0034】
第2のホース移動用器具73は繊維強化プラスチック製の上面が開口した容器状又は高さの比較的低い箱状に一体的に構成されていて、上端には全周にわたって鍔75が形成されている。前方の鍔75a及び後方の鍔75bにはそれぞれ、コンクリート圧送用ホースAを収容して支えるための半円柱状又は半円形状の支持凹部77,77が設けられ、かつ、この支持凹部77,77の両側にホース固定用紐79を通すための通し孔81,81が形成されている。なお、図中83は引っ張り紐85を通すための紐取付け孔である。
【0035】
第2のホース移動用器具73の底部87には、前後方向に細長く延びる収容凹部89が幅方向一端側、幅方向中間部及び幅方向他端側に等間隔で3本形成されていて、それぞれの収容凹部89は、底部87の基部91の下面よりも下側に突出している。収容凹部89は断面台形状に形成されて平板状のスライド底部93を有しているが、スライド底部93の前端部及び後端部は湾曲(例えば円弧状に湾曲)して立ち上がるように形成されている。スライド底部93の下側面又は下面は平面状のスライド面を形成する。
【0036】
それぞれの収容凹部89にはHDPE製の板状のスライド材95が収容されていて、スライド材95は収容凹部89とほぼ等しい長さと、収容凹部89のスライド底部93よりも狭い又はスライド底部93とほぼ等しい、収容凹部89の開口幅のほぼ2分の1の幅と、を有している。スライド材95の前端部及び後端部の下面は湾曲(例えば円弧状に湾曲)して立ち上がるように形成されていて、スライド材95は、下面の幅方向中央に全長又はほぼ全長にわたって延びる溝97を有し、スライド材31と同一の形状を有している。収容凹部89に収容されたスライド材95の周囲には樹脂99が流し込まれて硬化していて、スライド材95の溝97にもこの樹脂99が入り込んで硬化している。スライド材95はこの樹脂99により収容凹部89に接着されている。 なお、スライド材95の材料としては、ポリカーボネート、ポリアセタール(POM)又はジュラコンなどの耐摩耗性に優れた樹脂、摩擦係数の小さなポリエステル樹脂、その他の樹脂、スチールやステンレスなどの金属を用いることができ、また、断面形状も台形、長方形、その他の四角形、円形、半円形、かまぼこ形とすることができる。
【0037】
第2のホース移動用器具73の内面(鍔部7及び支持凹部77の上面を含む)にはスライド材95を覆うようにガラス繊維強化ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂層からなる保護層101が形成されている。樹脂99は保護層101を形成する場合に使用した樹脂が収容凹部89内に入り込んで硬化したものである。
【0038】
第2のホース移動用器具73の底部87の底面87-1には隣り合う収容凹部89の間に長さ方向に延びる2本の底面溝87-3が形成されていて、それぞれの底面溝87-3には、長さ方向に間隔をあけて3つの鉄筋ブロック材87-5が取り付けられている。鉄筋ブロック材87-5同士の間隔は鉄筋ブロック材87-5の長さの2倍、ほぼ2倍又は2倍を超えるように設定できる。底面溝87-3は底部87の基部91の下面を上面としている。それぞれの鉄筋ブロック材87-5の材料としては、スライド材95と同様に、ポリカーボネート、ポリアセタール(POM)又はジュラコンなどの耐摩耗性に優れた樹脂、摩擦係数の小さなポリエステル樹脂、その他の樹脂、スチールやステンレスなどの金属を用いることができる。
【0039】
鉄筋ブロック材87-5は、底面87-7にリベット用溝87-9を有し、このリベット用溝87-9の上面に貫通孔87-11が形成されている。また、第2のホース移動用器具73の底部87の基部91には貫通孔87-11に対応する貫通孔87-13が形成されていて、固定リベット87-15をリベット用溝87-9(鉄筋ブロック材87-5)の貫通孔87-11及び基部91の貫通孔87-13に通し、固定リベット87-15の先端部に抜け止め加工87-17を施すことにより、鉄筋ブロック材87-5は底面溝87-3に取り付けられている。リベット用溝87-9の貫通孔87-11は下側が大径収容部として形成されていて、固定リベット87-15の頭部87-21はこの大径収容部内に入り込んでいる。
【0040】
鉄筋ブロック材87-5の底面87-7は平面状に形成され、底部87のスライド底部93の下側面又は下面と同一の高さ又はほぼ同一の高さとなるように形成され、底部87のスライド底部93の下側面又は下面と連続し、面一となっている。鉄筋ブロック材87-5の両側面87-23はテーパ状に形成され、底面溝87-3のテーパ状の両側壁に当接又は押し付けられている。鉄筋ブロック材87-5の上面と底面溝87-3の上面との間には隙間が形成されているが、鉄筋ブロック材87-5を厚く形成して隙間が無いように又は小さくなるように構成できる。
【0041】
第2のホース移動用器具73は鉄筋上に載せられ、支持凹部77,77にコンクリート圧送用ホースAが収められて使用される(図9参照)。第2のホース移動用器具73は紐取付け孔83に接続された引っ張り紐85の先端を引っ張ることにより鉄筋上を移動させることができる。なお、第2のホース移動用器具73を直接引っ張ったり又は押したりして移動させてもよい。鉄筋Bは鉄筋ブロック材87-5によりブロックされ、底面溝87-3内には入り込まない(図11参照)。
【0042】
図13及び図14を参照して第2のホース移動用器具73の変形例を説明する。
【0043】
第2のホース移動用器具73の変形例であるホース移動用器具109は、収容凹部89内にスライド材95を配置する代わりに、収容凹部89内に繊維強化樹脂のパテ111、例えばガラス繊維又はカーボン繊維配合ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のパテを塗って収容凹部89を埋めた構造のものであり、その他の構成は第2のホース移動用器具73と同一である。収容凹部89を埋めたパテ111は硬化してスライド材を構成する。
【符号の説明】
【0044】
1 第1のホース移動用器具
5-5 87-5 鉄筋ブロック材
23、87 底部
25、89 収容凹部
31、95 スライド材
73 第2のホース移動用器具
A コンクリート圧送用ホース
B 鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14