(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076455
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷システムおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 21/00 20060101AFI20240530BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240530BHJP
B41J 3/01 20060101ALI20240530BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B41J21/00 Z
B41J2/01 201
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J3/01
H04N1/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187969
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏門
【テーマコード(参考)】
2C055
2C056
2C187
5C077
【Fターム(参考)】
2C055JJ00
2C055JJ04
2C055JJ07
2C055JJ12
2C056EA01
2C056EB49
2C056EB52
2C056EB58
2C056EC79
2C056FA13
2C187AC08
2C187BF01
2C187BF09
2C187CD08
2C187DB41
5C077LL09
5C077PP13
5C077PP55
5C077PP68
5C077TT05
(57)【要約】
【課題】処理時間を短くできコストアップの抑制を図りつつ、比較パターンを用いた画像補正を行うことができる印刷装置、印刷システムおよび印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置は、選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンが所定の比較パターンに一致するか否か、および、選択ドットデータを含むドットパターンが所定の除外パターンに一致するか否か、を判別する処理と、判別する処理において比較パターンに一致せず且つ除外パターンに一致しない第1状態と判別された場合にはドットパターンに含まれる選択ドットデータを第1印刷データから削除する補正を行う処理と、第1印刷データについて補正が行われて得られた第2印刷データに基づいて吐出ヘッドから被印刷媒体に液滴を吐出させて画像を被印刷媒体に形成する処理と、を実行するコントローラを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を被印刷媒体に吐出する吐出ヘッドと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記被印刷媒体上に前記液滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードを含む画像を前記被印刷媒体に形成するための第1印刷データを取得する処理と、
取得した前記第1印刷データにおいて、前記画像を形成するドットに対応するドットデータを選択し、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンが所定の比較パターンに一致するか否か、および、前記選択ドットデータを含む前記ドットパターンが所定の除外パターンに一致するか否か、を判別する処理と、
前記判別する処理において前記比較パターンに一致せず且つ前記除外パターンに一致しない第1状態と判別された場合には前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行う処理と、
前記判別する処理において前記第1状態以外の第2状態と判別された場合には前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行わずに維持する処理と、
前記第1印刷データについて前記補正または前記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて前記吐出ヘッドから前記被印刷媒体に前記液滴を吐出させて前記画像を前記被印刷媒体に形成する処理と、を実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記維持する処理は、前記比較パターンに一致すると判別された前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行わずに維持する処理を含む、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記維持する処理は、前記比較パターンに一致せず且つ前記除外パターンに一致すると判別された前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行わず維持する処理を含む、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記比較パターンは前記被印刷媒体の種類ごとに異なっている、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
所定のマスクパターンにより前記ドットパターンに対してマスクをする処理をさらに実行し、
前記判別する処理では、前記比較パターンに一致するか否かが比較される前記ドットパターンとして、前記マスクをする処理の後の前記ドットパターンが用いられる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
コンピュータおよび印刷装置を備える印刷システムであって、
前記コンピュータは、第1コントローラを有し、
前記印刷装置は、液滴を被印刷媒体に吐出する吐出ヘッドと、第2コントローラとを有し、
前記第1コントローラは、
前記被印刷媒体上に前記液滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードを含む画像を前記被印刷媒体に形成するための第1印刷データを取得する処理と、
取得した前記第1印刷データにおいて、前記画像を形成するドットに対応するドットデータを選択し、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンが所定の比較パターンに一致するか否か、および、前記選択ドットデータを含む前記ドットパターンが所定の除外パターンに一致するか否か、を判別する処理と、
前記判別する処理において前記比較パターンに一致せず且つ前記除外パターンに一致しない第1状態と判別された場合には前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行う処理と、
前記判別する処理において前記第1状態以外の第2状態と判別された場合には前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行わずに維持する処理と、を実行し、
前記第2コントローラは、
前記第1印刷データについて前記補正または前記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて前記吐出ヘッドから前記被印刷媒体に前記液滴を吐出させて前記画像を前記被印刷媒体に形成する処理を実行する、印刷システム。
【請求項7】
被印刷媒体上に液滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードを含む画像を前記被印刷媒体に形成するための第1印刷データを取得し、
取得した前記第1印刷データにおいて、前記画像を形成するドットに対応するドットデータを選択し、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンが所定の比較パターンに一致するか否か、および、前記選択ドットデータを含む前記ドットパターンが所定の除外パターンに一致するか否か、を判別し、
前記判別において前記比較パターンに一致せず且つ前記除外パターンに一致しない第1状態と判別された場合には前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行い、
前記判別において前記第1状態以外の第2状態と判別された場合には前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行わずに維持し、
前記第1印刷データについて前記補正または前記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて吐出ヘッドから前記被印刷媒体に前記液滴を吐出させて前記画像を前記被印刷媒体に形成する、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷システムおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーコードの読み取り精度を低下させることなく、バーコード以外の表および罫線の印刷を良好に行うことを目的とした印刷システムが知られている。この場合、プリンタドライバは、印刷データがバーコードのデータである場合には印刷データに対して輪郭線を太らせる補正をせずに印刷し、印刷データがバーコードのデータでない場合には印刷データに対して輪郭線を太らせる補正をして印刷する。
【0003】
しかし、被印刷媒体に液滴を吐出してバーコードを印刷する際、当該液滴が被印刷媒体上で滲むことがある。そのため、バーコードの線幅が増大し、バーコードの読み取り精度が低下してしまう。そこで、形成すべき画像のうち所定の縁部に位置するドット(注目対象である選択ドットの周辺にある周辺ドット)に対する比較用のドットパターンである複数の比較パターンを用いた補正を行う印刷装置が知られている(特許文献1参照)。この印刷装置では、周辺ドットと各比較パターンにおけるドットとが一致する場合に当該周辺ドットに対応する上記選択ドットを空白データにする補正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では複数の比較パターンが必要となるので、当該比較パターンの数が極端に増加してしまう。そのため、処理に要する時間が長くなると共に、高性能のプロセッサやメモリが必要となるためコストアップにつながる恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、処理時間を短くできコストアップの抑制を図りつつ、比較パターンを用いた画像補正を行うことができる印刷装置、印刷システムおよび印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷装置は、液滴を被印刷媒体に吐出する吐出ヘッドと、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記被印刷媒体上に前記液滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードを含む画像を前記被印刷媒体に形成するための第1印刷データを取得する処理と、取得した前記第1印刷データにおいて、前記画像を形成するドットに対応するドットデータを選択し、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンが所定の比較パターンに一致するか否か、および、前記選択ドットデータを含む前記ドットパターンが所定の除外パターンに一致するか否か、を判別する処理と、前記判別する処理において前記比較パターンに一致せず且つ前記除外パターンに一致しない第1状態と判別された場合には前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行う処理と、前記判別する処理において前記第1状態以外の第2状態と判別された場合には前記ドットパターンに含まれる前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行わずに維持する処理と、前記第1印刷データについて前記補正または前記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて前記吐出ヘッドから前記被印刷媒体に前記液滴を吐出させて前記画像を前記被印刷媒体に形成する処理と、を実行するものである。
【0008】
本発明に従えば、選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンが比較パターンに一致せず且つ除外パターンに一致しない第1状態と判別された場合に、上記ドットパターンに含まれる選択ドットデータが第1印刷データから削除される補正が行われる。この点、従来では選択ドットデータを補正する場合を多く確保すべく、周辺ドットデータに一致させたい数だけ比較パターンが必要であった。これに対して、本願発明ではドットパターンが比較パターンに一致しない場合に補正が行われる構成としたことで、ドットパターンにおける何れかのドットデータが一つでも比較パターンに一致しなければ補正が行われる。これにより、比較パターンは複数要らず単数で済む。よって、比較パターンが増えることに起因して処理に要する時間が長くなること、およびコストアップにつながることを避けることができる。従って、処理時間を短くできコストアップの抑制を図りつつ、比較パターンを用いた画像補正を行うことができる。また、本発明ではドットパターンが除外パターンに一致しない場合に補正が行われる構成としたので、上記比較パターンを用いることによる弊害として選択ドットデータが補正により不所望に除外されることを回避できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理時間を短くできコストアップの抑制を図りつつ、比較パターンを用いた画像補正を行うことが可能な印刷装置、印刷システムおよび印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置を示す平面図である。
【
図2】
図1の印刷装置に備わる吐出ヘッドの底面図である。
【
図3】
図1の印刷装置における制御系の構成を示すブロック図である。
【
図4】情報を有するコードを含む画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5Aは処理前の画像を示す図であり、
図5Bは選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと比較パターンとの比較を示す図であり、
図5Cは補正が実行された画像を示す図である。
【
図6】
図6Aは1ドット削りに係る補正を示す図であり、
図6Bは2ドット削りに係る補正を示す図であり、
図6Cは3ドット削りに係る補正を示す図であり、
図6Dは4ドット削りに係る補正を示す図である。
【
図7】
図7Aは処理前の画像を示す図であり、
図7Bは選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと比較パターンとの比較を示す図であり、
図7Cはドットパターンと除外パターンとの比較を示す図であり、
図7Dは補正が実行された画像を示す図である。
【
図8】
図8Aは処理前の画像を示す図であり、
図8Bは選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと比較パターンとの比較を示す図であり、
図8Cは補正が実行されずに維持された画像を示す図である。
【
図9】
図9Aは処理前の画像を示す図であり、
図9Bは選択された選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと比較パターンとの比較を示す図であり、
図9Cはドットパターンと除外パターンとの比較を示す図であり、
図9Dは補正が実行されずに維持された画像を示す図である。
【
図11】
図11Aは1ドット削り用の比較パターンを示す図であり、
図11Bは2ドット削り用の比較パターンを示す図であり、
図11Cは3ドット削り用の比較パターンを示す図であり、
図11Dは4ドット削り用の比較パターンを示す図である。
【
図12】
図12Aは選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと比較パターンとの比較を示す図であり、
図12Bは補正が実行された画像を示す図である。
【
図13】
図13Aは選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンとマスクパターンを示す図であり、
図13Bはマスク処理後のドットパターンと比較パターンとの比較を示す図であり、
図13Cは補正せずに維持された画像を示す図である。
【
図14】
図14Aは選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンとマスクパターンを示す図であり、
図14Bはマスク処理後のドットパターンと比較パターンとの比較を示す図であり、
図14Cは補正が実行された画像を示す図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る印刷システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る印刷装置について図面を参照して説明する。以下に説明する印刷装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る印刷装置10を示す平面図である。
図2は
図1の印刷装置10に備わる吐出ヘッド30の底面図である。
図3は
図1の印刷装置10における制御系の構成を示すブロック図である。
図1および
図2において、相互に直交する方向を、第1方向Dsおよび第2方向Dfとする。本実施形態では、例えば、第2方向Dfは後述の被印刷媒体Wの搬送方向であり、第1方向Dsは後述するラインヘッド式の吐出ヘッド30の延在方向である。以下の説明では、Dsを延在方向と呼び、Dfを搬送方向と呼び、延在方向Dsの一方を左方、当該延在方向Dsの他方を右方とし、搬送方向Dfの一方を前方、当該搬送方向Dfの他方を後方とする。但し、上記各方向は一例であって限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、印刷装置10は、例えば、液滴としてのインク滴を印刷用紙である被印刷媒体Wに吐出するインクジェットプリンタである。印刷装置10は、筐体11、プラテン12、搬送装置20、1又は複数(例えば、4つ)の吐出ヘッド30、タンク13およびコントローラ40を備える。なお、吐出ヘッド30は例えばラインヘッドである。
【0014】
筐体11は、プラテン12、搬送装置20、吐出ヘッド30、タンク13およびコントローラ40を収容する。プラテン12は平坦な上面を有し、この上面に被印刷媒体Wが載置される。
【0015】
搬送装置20は、一対の搬送ローラ21および搬送モータ22(
図3)を有する。一対の搬送ローラ21は、搬送方向Dfにおいて互いの間に吐出ヘッド30を挟むように配置されており、その中心軸が延在方向Dsに延びて互いに平行に並んでいる。搬送モータ22は、搬送ローラ21に連結されており、搬送ローラ21を回転させ、被印刷媒体Wを前方に搬送する。
【0016】
吐出ヘッド30は、筐体11に固定されており、例えば矩形状であって、延在方向Dsにおける寸法が被印刷媒体Wの寸法よりも長い。吐出ヘッド30の下面は、プラテン12の上面に対向した状態で配置されている。4つの吐出ヘッド30は、搬送方向Dfに一列に並べられている。
【0017】
タンク13は、例えば、吐出ヘッド30と同数が設けられ、互いに異なる種類のインクを貯留し、吐出ヘッド30にチューブ14によって接続されている。例えば、4つのタンク13は、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクをそれぞれ貯留し、対応する吐出ヘッド30にチューブ14を介してインクを供給する。
【0018】
吐出ヘッド30は、
図2に示すように、保持台31および複数のチップ32を有する。保持台31は、例えば、直方体形状であって、その下面にチップ32の下面が露出するようにチップ32を保持している。なお、
図2では1つの吐出ヘッド30のみを示している。
【0019】
チップ32は、複数のノズル33および当該ノズル33に対応する駆動素子34(
図3)を有する。ノズル33は、液体流路およびチューブ14を介してタンク13に接続されている。複数のノズル33は、例えば、延在方向Dsにおいて互いに所定の間隔を空けながら列を成し、ノズル列を形成している。各チップ32では、延在方向Dsにおいて複数のノズル33が等間隔に並ぶように複数のノズル列は搬送方向Dfに配列されている。
【0020】
複数のチップ32は、保持台31において延在方向Dsに配置され、且つ、隣り合うチップ32は搬送方向Dfにずれて配置されている。このため、複数のチップ32は、1つずつ搬送方向Dfに互い違いになるようにして延在方向Dsに並べられている。複数のチップ32は、延在方向Dsにおいて複数のノズル33が等間隔で配置されつつ延在方向Dsにおける全長が被印刷媒体Wよりも長くなるように配置されている。
【0021】
コントローラ40は、
図3に示すように、演算部41、記憶部42およびインターフェース43を有する。コントローラ40は単独のコントローラであってもよいし、複数のコントローラで構成されてもよい。
【0022】
インターフェース43は、コンピュータ、ネットワークおよび記録媒体等の外部機器Bに接続され、外部機器Bから印刷データ等の各種データを受信する。印刷データは、被印刷媒体W上にインク滴を着弾させて形成するドットにより所定情報を有するコードを含む画像を被印刷媒体Wに形成するためのデータであって、例えば、ラスタデータ等の画像データを含む。なお、印刷データは記憶部42に記憶されたデータであってもよい。また、印刷データは吐出ヘッド30からインク滴を吐出させるか否かを指令するための2値以上のデータであってもよい。また、印刷データは上記2値以上のデータに変換される前のRGB値のデータであってもよい。
【0023】
記憶部42は、演算部41がアクセス可能な記憶媒体であって、例えばRAMおよびROMにより構成される。RAMは各種データを一時的に記憶する。この各種データとしては、印刷データおよび演算部41により変換されたデータが例示される。ROMは各種処理を行うためのプログラム、並びに後述する比較パターンPc、除外パターンPeおよびマスクパターンPmを記憶する。なお、プログラムは記憶部42以外の他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0024】
演算部41は、例えばCPU等のプロセッサおよびASIC等の集積回路により構成される。演算部41は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子34および搬送モータ22を制御する。
【0025】
コントローラ40は、ヘッド駆動回路44を介して駆動素子34に接続されており、印刷データに基づいた制御信号をヘッド駆動回路44に出力する。ヘッド駆動回路44は、制御信号に基づいて駆動信号を生成して駆動素子34に出力する。これにより、駆動素子34が駆動信号に応じて駆動し、ノズル33に繋がる流路のインクに圧力が付与されることで、ノズル33からインク滴が被印刷媒体Wに吐出される。
【0026】
コントローラ40は、搬送駆動回路45を介して搬送モータ22に接続されており、印刷データに基づいた制御信号を搬送駆動回路45に出力する。搬送駆動回路45はこの制御信号に基づいて生成した駆動信号を搬送モータ22に出力する。これにより、搬送モータ22の駆動タイミング、回転速度、回転量等が制御され、被印刷媒体Wが搬送方向Dfの前方に搬送される。
【0027】
コントローラ40は、印刷データに基づいて画像を被印刷媒体Wに印刷する印刷処理を実行する。この印刷処理では、コントローラ40は、印刷データに基づいて駆動素子34の駆動によりノズル33からインク滴を吐出させる吐出動作および搬送モータ22の駆動により被印刷媒体Wを搬送方向Dfの前方に搬送させる搬送動作を行う。これにより、ノズル33から吐出されたインク滴が被印刷媒体Wの上に着弾し、当該インク滴によって被印刷媒体W上にドットが形成される。このドットの集合体により被印刷媒体Wに画像が形成される。
【0028】
図4は情報を有するコードCを含む画像Gの一例を示す図である。画像Gは、1つ又は複数のドットにより形成され、
図4に示すようにコードCを含む。コントローラ40は、被印刷媒体W上にインク滴を着弾させて形成するドットにより、
図4に示すようなコードCを含む画像Gを被印刷媒体Wに形成するための印刷データ(以下、第1印刷データと呼ぶ)を例えば外部機器Bから取得する処理を実行する。なお、第1印刷データは、印刷装置10に備わるキーボードおよびマウス等の入力装置15を用いてユーザにより入力されたものであってもよい。
図4においては、画像GにコードC以外の画像(例えば文字および符号等)が含まれない態様を示したが、当該画像GにはコードC以外の画像が含まれていてもよい。コードCは、反射光から情報を読み取るためのコードであって、バーコード等の一次元コードおよびQRコード(登録商標)等の二次元コードが例示される。コードリーダにより赤外線等の光がコードCに対して照射され、その反射光からコードCに含まれる情報が読み取られる。
【0029】
(補正処理)
次いで、コードCの読み取り精度の低下を抑制するための、パターンマッチングによる補正について説明する。
【0030】
図5Aは処理前の画像Dg1を示す図であり、
図5Bは選択された選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPd1と比較パターンPcとの比較を示す図であり、
図5Cは補正が実行された画像Dg1を示す図である。なお、
図5Aの画像Dg1は
図4で説明したコードCを含む画像Gの一部についての一例とする。
【0031】
コントローラ40は、取得した第1印刷データにおいて、画像を形成するドットに対応するドットデータを選択する。そして、コントローラ40は、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンが所定の比較パターンに一致するか否かを判別する処理を実行する。コントローラ40は、判別する処理においてドットパターンが比較パターンに一致しないと判別された場合には上記ドットパターンに含まれる選択ドットデータを第1印刷データから削除する補正を行い、他方、ドットパターンが比較パターンに一致すると判別された場合には選択ドットデータを第1印刷データから削除する補正を行わずに維持する処理を実行する。このような処理が本実施形態における基本的な補正処理である。以下、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0032】
コントローラ40は、
図5Aに示すように、第1印刷データに基づいて印刷する画像を1つのドットに1つのセルが対応するように格子状に複数のセルに分割する。そして、コントローラ40は、第1印刷データにおける濃度が所定値以上であるセルに対しては、ドットを形成するとしてドットデータ「1」を設定する。ドットデータ「1」が設定されたセルは、
図5Aにおいて黒塗りされたセルであり、以降の図も同様とする。一方、コントローラ40は、第1印刷データにおける濃度が所定値未満であるセルに対しては、ドットを形成しないとして空白データ「0」を設定する。空白データ「0」が設定されたセルは、
図5Aにおいて黒塗りされていないセルであり、以降の図も同様とする。なお、以下の説明において、便宜上、格子状に配置された各セルの位置を行および列により特定する。
【0033】
コントローラ40は、第1印刷データにおける複数のセルから、画像Dg1を形成するドットデータ「1」を順に選択し、選択したドットデータ(選択ドットデータ)Dcを含む所定範囲のドットパターンを抽出する。
図5Aでは、選択ドットデータDcとして、3行3列目に位置するセルにおけるドットデータDc1が選択されたものとする。また、
図5Aでは、選択ドットデータDcおよび当該選択ドットデータDcを囲む8つのドットデータから成る3×3のドットパターンPd1を所定範囲のドットパターンとする。なお、選択ドットデータDcを基準として抽出されるドットパターンの所定範囲は任意であり適宜変更可能である。
【0034】
続いて、
図5Bに示すように、コントローラ40は選択ドットデータDcを含むドットパターンPd1が所定の比較パターンPcに一致するか否かを判別する。
図5Bでは、ドットパターンPd1は比較パターンPcに一致しない。この場合、コントローラ40は、選択ドットデータDcを第1印刷データから削除するべく、選択ドットデータDcに対応するドットデータDc1を
図5Cに示すように空白データDca1にする補正を行う。なお、比較パターンPcおよび後述の除外パターンPeにおいて、ドットデータ「1」はドットの形成を示し、空白データ「0」はドットの非形成を示す。また、
図5Cにおける参照符号Pdh1は補正後の画像を示す。このように本実施形態では、ドットパターンPd1が比較パターンPcに一致しない場合に補正を実行する。
【0035】
図6Aは1ドット削りに係る補正を示す図であり、
図6Bは2ドット削りに係る補正を示す図であり、
図6Cは3ドット削りに係る補正を示す図であり、
図6Dは4ドット削りに係る補正を示す図である。
【0036】
1ドット削りに係る補正とは、画像Dg2の搬送方向Dfにおける1行分の各セルのドットデータDkを空白データにすると共に、当該画像Dg2の延在方向Dsにおける外側の1列分の各セルのドットデータDkを空白データにする補正である。具体例を挙げると、1ドット削りに係る補正では、
図6Aの処理前の画像Dg2において、例えば、搬送方向Dfの後方の行(
図6Aでは2行目)および延在方向Dsの左方の列(
図6Aでは2列目)の各セルのドットデータDkが空白データにされる。よって、例えば、搬送方向Dfの前方の行(
図6Aでは7行目)、および延在方向Dsの右方の列(
図6Aでは7列目)の各セルのドットデータDkを空白データにする等の変形が可能である。また、2ドット削りに係る補正とは、
図6Bの処理前の画像Dg2において、当該画像Dg2の外周縁を構成する各セルのドットデータDkを空白データにする補正である。
【0037】
3ドット削りに係る補正とは、画像Dg2の搬送方向Dfにおける一方側の1行分と他方側の2行分の各セルのドットデータDkを空白データにすると共に、当該画像Dg2の延在方向Dsにおける一方側の1列分と他方側の2列分の各セルのドットデータDkを空白データにする補正である。具体例を挙げると、3ドット削りに係る補正では、
図6Cの処理前の画像Dg2において、例えば、搬送方向Dfの後方の2つの行(
図6Cでは2行目と3行目)および前方の1つの行(
図6Cでは7行目)の各セルのドットデータDkが空白データにされる。これに加えて、3ドット削りに係る補正では、画像Dg2において、例えば、延在方向Dsの左方の2つの列(
図6Cでは2列目と3列目)および右方の1つの列(
図6Cでは7列目)の各セルのドットデータDkが空白データにされる。また、4ドット削りに係る補正とは、2ドット削りに係る補正後の画像Dg2において、
図6Dに示すように、さらに当該画像Dg2の外周縁を構成する各セルのドットデータDkを空白データにする補正である。
【0038】
次に、
図7Aは処理前の画像Dg2を示す図であり、
図7Bは選択された選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPd2と比較パターンPcとの比較を示す図である。また、
図7CはドットパターンPd2と除外パターンPeとの比較を示す図であり、
図7Dは補正が実行された画像Dg2を示す図である。なお、
図7Aの画像Dg2は
図4で説明したコードCを含む画像Gの一部についての一例とする。
【0039】
ここでは、ドットパターンPd2と比較パターンPcとの比較に加えて当該ドットパターンPd2と除外パターンPeとの比較について説明する。ドットパターンPd1と比較パターンPcとの比較において両者が一致しない場合に補正を行うのが基本的な補正処理であることを
図5で述べたが、ドットパターンPd2と比較パターンPcとが一致せず、且つ当該ドットパターンPd2と除外パターンPeとが一致しない場合(以下、この場合を第1状態ST1と呼ぶ)に補正を行う。以下、具体的に説明する。
【0040】
図7Aに示すように、6行3列目に位置するセルにおけるドットデータDc2が選択ドットデータDcとして選択されたものとする。また、
図7Aでは、選択ドットデータDcおよび当該選択ドットデータDcを囲む8つのドットデータから成る3×3のドットパターンPd2を所定範囲のドットパターンとする。
【0041】
コントローラ40は、
図5Bの場合と同様に、
図7Bにおいて選択ドットデータDcを含むドットパターンPd2が比較パターンPcに一致するか否かを判別する。
図7Bにおいては、ドットパターンPd2は比較パターンPcに一致しない(第1結果)。そして、コントローラ40は、
図7Cに示すように、ドットパターンPd2が所定の除外パターンPeに一致するか否かを判別する。
図7Cでは、ドットパターンPd2は除外パターンPeに一致しない(第2結果)。よって、第1結果および第2結果より、コントローラ40は第1状態ST1が成立すると判別する。この場合、コントローラ40は、選択ドットデータDcを第1印刷データから削除するべく、選択ドットデータDcに対応するドットデータDc2を
図7Dに示すように空白データDca2にする補正を行う。なお、
図7Dにおける参照符号Pdh2は補正後の画像を示す。
【0042】
これに対して、コントローラ40は第1状態ST1以外の状態である第2状態ST2が成立すると判別する場合には、以下の処理を実行する。
【0043】
図8Aは処理前の画像Dg3を示す図であり、
図8Bは選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPd3と比較パターンPcとの比較を示す図であり、
図8Cは補正が実行されずに維持された画像Dg3を示す図である。なお、
図8Aの画像Dg3は
図7Aの画像Dg2と同一である。
【0044】
図8Aに示すように、5行4列目に位置するセルにおけるドットデータDc3が選択ドットデータDcとして選択されたものとする。また、
図8Aでは、選択ドットデータDcおよび当該選択ドットデータDcを囲む8つのドットデータから成る3×3のドットパターンPd3を所定範囲のドットパターンとする。
【0045】
コントローラ40は、
図7Bの場合と同様に、
図8Bにおいて選択ドットデータDcを含むドットパターンPd3が比較パターンPcに一致するか否かを判別する。
図8Bでは、ドットパターンPd3は比較パターンPcに一致する。よって、コントローラ40は第1状態ST1以外の第2状態ST2が成立すると判別する。この場合、コントローラ40は、ドットパターンPd3に含まれる選択ドットデータDcに対応するドットデータDc3を第1印刷データから削除する補正を行わずに
図8Cに示す通り維持する処理を行う。
【0046】
第2状態ST2の別例について説明する。
図9Aは処理前の画像Dg4を示す図であり、
図9Bは選択された選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPd4と比較パターンPcとの比較を示す図である。また、
図9CはドットパターンPd4と除外パターンPeとの比較を示す図であり、
図9Dは補正が実行されずに維持された画像Dg4を示す図である。
【0047】
図9Aに示すように、5行3列目に位置するセルにおけるドットデータDc4が選択ドットデータDcとして選択されたものとする。また、
図9Aでは、選択ドットデータDcおよび当該選択ドットデータDcを囲む8つのドットデータから成る3×3のドットパターンPd4を所定範囲のドットパターンとする。
【0048】
コントローラ40は、
図7Bの場合と同様に、
図9Bにおいて選択ドットデータDcを含むドットパターンPd4が比較パターンPcに一致するか否かを判別する。
図9Bにおいては、ドットパターンPd4は比較パターンPcに一致しない(第3結果)。そして、コントローラ40は、
図9Cに示すように、ドットパターンPd4が所定の除外パターンPeに一致するか否かを判別する。
図9Cでは、ドットパターンPd4は除外パターンPeに一致する(第4結果)。よって、第3結果および第4結果より、コントローラ40は第1状態ST1以外の第2状態ST2が成立すると判別する。この場合、コントローラ40は、
図8Cと同様に、ドットパターンPd4に含まれる選択ドットデータDcに対応するドットデータDc4を第1印刷データから削除する補正を行わずに
図9Dに示す通り維持する処理を行う。
【0049】
以上の通り、コントローラ40は第1状態ST1および第2状態ST2のうち何れの状態が成立するかについて判別し、当該判別結果に応じて補正の要否を決定する。そして、コントローラ40は、第1印刷データについて補正または上記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて吐出ヘッド30から被印刷媒体Wにインク滴を吐出させて画像を被印刷媒体Wに形成する処理を実行する。
【0050】
図10は印刷処理を示すフローチャートである。
図10に示すように、最初にコントローラ40はコードCを含む画像Gを被印刷媒体Wに形成するための第1印刷データを外部機器B又は入力装置15から取得する(ステップS1)。次に、コントローラ40は選択ドットデータDcを含む所定範囲(例えば選択ドットデータDcを中心とした3×3)のドットパターンを取得する(ステップS2)。そして、コントローラ40は取得したドットパターンが比較パターンPcに一致するか否かを判別する(ステップS3)。
【0051】
ドットパターンが比較パターンPcに一致しない場合(ステップS3でNo)、コントローラ40はドットパターンが除外パターンPeに一致するか否かを判別する(ステップS4)。ドットパターンが除外パターンPeに一致しない場合(ステップS4でNo)、コントローラ40は第1状態ST1が成立すると判別し、選択ドットデータDcを第1印刷データから削除するべく、選択ドットデータDcに対応するドットデータを空白データにする補正を行う(ステップS5)。
【0052】
一方、ドットパターンが比較パターンPcに一致する場合(ステップS3でYes)、および、当該ドットパターンが比較パターンPcに一致せずとも除外パターンPeに一致する場合(ステップS4でYes)には、コントローラ40は第2状態ST1が成立すると判別する。この場合、コントローラ40は選択ドットデータDcを第1印刷データから削除せずに維持する(ステップS7)。
【0053】
ステップS5の処理の後およびステップS7の処理の後、コントローラ40は第1印刷データについて補正または上記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて画像を被印刷媒体Wに形成する処理を実行する(ステップS6)。
【0054】
(マスク処理)
以下、本実施形態において実行されるマスク処理について説明する。
図11Aは1ドット削り用の比較パターンPc1を示す図であり、
図11Bは2ドット削り用の比較パターンPc2を示す図であり、
図11Cは3ドット削り用の比較パターンPc3を示す図であり、
図11Dは4ドット削り用の比較パターンPc4を示す図である。比較パターンPc1は2×2の大きさを有し、比較パターンPc2は3×3の大きさを有し、比較パターンPc3は4×4の大きさを有し、比較パターンPc4は5×5の大きさを有している。このような比較パターンPc1~Pc4は被印刷媒体Wの種類ごとに異なる。すなわち、被印刷媒体Wの種類に応じて、用いられる比較パターンPcが異なる。例えば、インク滴の滲みが多く生じる被印刷媒体Wについては、各ドット削りによる削り量(以下、補正量と呼ぶ)を多くすることが好ましいことから、
図11Dの比較パターンPc4などを用いることができる。
【0055】
上述した補正処理においては、
図6で説明した補正量に応じた比較パターンPcが必要となる。1ドット削りに係る補正の際に用いられる比較パターンPcは例えば
図11Aに示す2×2の比較パターンPc1である。また、2ドット削りに係る補正の際に用いられる比較パターンPcは例えば
図11Bに示す3×3の比較パターンPc2であり、3ドット削りに係る補正の際に用いられる比較パターンPcは例えば
図11Cに示す4×4の比較パターンPc3である。さらに、4ドット削りに係る補正の際に用いられる比較パターンPcは例えば
図11Dに示す5×5の比較パターンPc4である。本実施形態では、補正量の最大値として4ドット削りを例示したが、これに限られるものではなく、5ドット削り以上の補正量を最大値としてもよい。
図11A~11Dにおける参照符号Dpは選択ドットデータDcに対応する比較パターンPc1上のドットデータである。以上のように補正量に基づき比較すべき領域の大きさが異なるため、複数の比較パターンPcが必要となる。そのため、演算量を低減する余地がある。
【0056】
そこで、本実施形態では、以下のように比較パターンPcの共通化を行う。
図12Aは選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPd5と比較パターンPc5との比較を示す図であり、
図12Bは補正が実行された画像を示す図である。
【0057】
ここでは、取得すべきドットパターンPd5の範囲を、
図11Dで示した比較パターンPc4の大きさ(すなわち比較すべき領域の大きさ)が5×5であることに準じて、
図12Aに示すように例えば7×7とすることができる。このとき、比較パターンPc5の大きさ(すなわち、比較すべき領域の大きさ)は、例えば2ドット削りを行うような場合であっても、ドットパターンPd5の大きさに合わせて7×7とする。この点が、同じ2ドット削りでも、
図11Bの比較パターンPc2と異なる点である。これにより、補正量に基づき比較すべき領域の大きさが異ならずに比較パターンPcを共通化できる。なお、
図12AのドットパターンPd5において、4行4列目に位置するセルにおけるドットデータDc5が選択ドットデータDcとして選択されたものとする。
【0058】
しかしながら、
図12Aのように例えば2ドット削りのような少ない補正量に係る補正を行う場合に、7×7という大きな比較領域を有する比較パターンPc5を用いることで、処理が適切に行えないことがある。詳しく説明すると、仮に、2ドット削りを行う際の3×3の比較領域の比較パターンに対して
図12Aの選択ドットデータDcを含むドットパターンPd5を比較する場合には、ドットパターンPd5は比較パターンPcに一致する。この場合、選択ドットデータDcを空白データにする補正は行われない。これに対して、
図12Aの7×7の比較領域の比較パターンPc5に対してドットパターンPd5を比較すると、ドットパターンPd5は比較パターンPc5に一致しない。この場合、
図12Bに示すように、選択ドットデータDcに対応するドットデータDc5が空白データDca5に補正されるという弊害が生じてしまう。そこで、以下のマスク処理を行う。
【0059】
図13Aは選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPd6とマスクパターンPmを示す図であり、
図13Bはマスク処理後のドットパターンPmaと比較パターンPc6との比較を示す図であり、
図13Cは補正せずに維持された画像を示す図である。また、
図14Aは選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPd7とマスクパターンPmを示す図であり、
図14Bはマスク処理後のドットパターンPmaと比較パターンPc7との比較を示す図であり、
図14Cは補正が実行された画像を示す図である。
【0060】
図13Aに示すドットパターンPd6は
図12AのドットパターンPd5と同一である。
図13AのドットパターンPd6において、4行4列目に位置するセルにおけるドットデータDc6が選択ドットデータDcとして選択されたものとする。また、
図13Bに示す比較パターンPc6は
図12Aの比較パターンPc5と同一である。
【0061】
マスクパターンPmはドットパターンPd6と同様に7×7の大きさを有する。マスクパターンPmにおいては、所望する補正量に基づき、選択ドットデータDcを基準としたセルに対してはドットデータ「1」が設定され、残余のセルに対しては空白データ「0」が設定される。具体的には、所望する補正量が例えば2ドット削りである場合には、
図13AのマスクパターンPmにおいて、ドットパターンPd6の選択ドットデータDcに対応するドットデータを基準とする3×3のセルに対してはドットデータ「1」が設定され、残余のセルに対しては空白データ「0」が設定される。
【0062】
コントローラ40は、マスクパターンPmによりドットパターンPd6に対してマスクをする処理を実行する。このマスク処理によって、マスクパターンPmにおいてドットデータ「1」が設定されたセルに対応するドットパターンPd6のセルにドットデータ「1」が設定されている場合を除き、ドットパターンPd6の残余のセルに対して空白データ「0」が設定されたドットパターンPmaが生成される。
図13Aの例では、マスクパターンPm上のドットデータ「1」が設定されたセルに対応するドットパターンPd6のセルには全てドットデータ「1」が設定されている。そのため、生成されたドットパターンPmaにおいては、ドットデータ「1」が設定された3×3のセルを除くセルには空白データ「0」が設定される。
【0063】
コントローラ40は、
図13Bに示すように、ドットパターンPmaが比較パターンPc6に一致するか否かを判別する。
図13Bでは、ドットパターンPmaは比較パターンPc6に一致する。この場合、コントローラ40は、ドットパターンPd6に含まれる選択ドットデータDcに対応するドットデータDc6を第1印刷データから削除する補正を行わずに
図13Cに示す通り維持する処理を行う。
【0064】
これに対して、
図14Aに示す例では、マスクパターンPm上のドットデータ「1」が設定されたセルに対応するドットパターンPd7上の複数のセルのうち一つのセル(3行3列目のセル)にはドットデータ「1」が設定されていない。そのため、マスク処理により生成される
図14BのドットパターンPmaでは、ドットパターンPd7の3行3列目のセルに対応するセルと、ドットデータ「1」が設定された8つのセルを除く残余のセルとに対して空白データ「0」が設定される。
【0065】
コントローラ40は、
図14Bに示すように、ドットパターンPmaが比較パターンPc7に一致するか否かを判別する。
図14Bでは、ドットパターンPmaは比較パターンPc6に一致しない。この場合、コントローラ40は、選択ドットデータDcを第1印刷データから削除するべく、選択ドットデータDcに対応するドットデータDc7を
図14Cに示すように空白データDca7に補正した画像Pdh7を生成する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置10によれば、選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPd2が比較パターンPcに一致せず且つ除外パターンPeに一致しない第1状態ST1と判別された場合に、選択ドットデータDcが第1印刷データから削除される補正が行われる。この点、従来では選択ドットデータを補正する場合を多く確保すべく、当該選択ドットデータの周辺に存在する周辺ドットデータに一致させたい数だけ比較パターンが必要であった。これに対して、本実施形態ではドットパターンPd2が比較パターンPcに一致しない場合に補正が行われる構成としたことで、ドットパターンPd2における何れかのドットデータが一つでも比較パターンPcに一致しなければ補正が行われる。これにより、比較パターンPcは、同補正量において複数要らず単数で済む。よって、比較パターンPcが増えることに起因して処理に要する時間が長くなること、およびコストアップにつながることを避けることができる。従って、処理時間を短くできコストアップの抑制を図りつつ、比較パターンPcを用いた画像補正を行うことができる。また、ドットパターンPd2が除外パターンPeに一致しない場合に補正が行われる構成としたので、比較パターンPcを用いることによる弊害として選択ドットデータDcが補正により不所望に除外されることを回避できる。
【0067】
また、本実施形態では、比較パターンPcに一致すると判別されたドットパターンPd3に含まれる選択ドットデータDcに対しては、第1状態ST1以外の第2状態ST2が成立するとして、第1印刷データから削除する補正が行われずに維持される。これにより、補正を行わずに維持する場合を明確に規定できる。
【0068】
また、本実施形態では、比較パターンPcに一致せず且つ除外パターンPeに一致すると判別されたドットパターンPd4に含まれる選択ドットデータDcに対しても、第1状態ST1以外の第2状態ST2が成立するとして、第1印刷データから削除する補正が行われずに維持される。これにより、補正を行わずに維持する場合を明確に規定できる。
【0069】
また、本実施形態では、比較パターンPcは被印刷媒体Wの種類ごとに異なる。すなわち、被印刷媒体Wの種類に応じて、用いられる比較パターンPcが異なる。これにより、例えば、インク滴の滲みが多く生じる被印刷媒体Wについては、削り量である補正量を多くすることができる比較パターンを用いること等の対応が可能となる。
【0070】
さらに、本実施形態では、比較パターンPcの大きさ(比較すべき領域の大きさ)を共通化することによる上記弊害を回避するべく、コントローラ40によるマスク処理が実行される。これにより、選択ドットデータDcが不所望に空白データに補正されることを防ぐことが可能となる。
【0071】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0072】
上記実施形態において印刷装置10が行う処理を、下記の印刷システム50においてコンピュータ51と印刷装置10とに分けて行ってもよい。
図15は本発明の一実施形態に係る印刷システム50の構成を示すブロック図である。
【0073】
図15に示すように、印刷システム50はコンピュータ51および印刷装置10を備える。コンピュータ51は第1コントローラ52を有する。印刷装置10は、インク滴を被印刷媒体Wに吐出するヘッド30および第2コントローラ46を有する。第1コントローラ52は、被印刷媒体W上にインク滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードCを含む画像Gを被印刷媒体Wに形成するための第1印刷データを取得する。第1コントローラ52は、取得した第1印刷データにおいて、選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンが所定の比較パターンPcに一致するか否か、および、選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンが所定の除外パターンPeに一致するか否か、を判別する。第1コントローラ52は、上記判別する処理において比較パターンPcに一致せず且つ除外パターンPeに一致しない第1状態ST1と判別された場合には上記ドットパターンに含まれる選択ドットデータDcを第1印刷データから削除する補正を行う。一方、第1コントローラ52は、上記判別する処理において第1状態ST1以外の第2状態ST2と判別された場合には上記ドットパターンに含まれる選択ドットデータDcを第1印刷データから削除する補正を行わずに維持する。そして、第2コントローラ46は、第1印刷データについて補正または維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて吐出ヘッド30から被印刷媒体Wにインク滴を吐出させて画像を被印刷媒体Wに形成する。
【0074】
第1コントローラ52は、第1演算部53、第1記憶部54および第1インターフェース55を有する。第1インターフェース55は、印刷装置10に接続され、印刷装置10に第2印刷データを印刷装置10に送信する。第1記憶部54は、第1演算部53がアクセス可能なものであって、例えばRAMおよびROMにより構成される。第1演算部53は、演算部41による処理と同様の処理を行い、第2印刷データを第1インターフェース55により印刷装置10に送信する。
【0075】
第2コントローラ46は、第2演算部47、第2記憶部48および第2インターフェース49を有する。第2インターフェース49はコンピュータ51から送信された第2印刷データを受信する。第2演算部47は、第2記憶部48に記憶されたプログラムを実行することにより、第2印刷データに基づいて印刷処理を実行する。なお、
図15の印刷装置10における他の構成要素の機能は、上述した
図3の印刷装置10において同一符号を付した構成要素の機能と同じであるため説明を省略する。
【0076】
また、上記実施形態では、吐出ヘッド30をラインヘッドとしたが、これに限定されない。印刷装置10は、吐出ヘッド30を搭載したキャリッジを備え、当該キャリッジにより吐出ヘッド30を延在方向Dsに移動するシリアルヘッド方式が用いられてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、印刷装置10が被印刷媒体Wを搬送方向Dfに搬送する搬送装置20を備えなくてもよい。この場合、吐出ヘッド30が被印刷媒体Wに対して移動する方式が用いられてもよい。
【0078】
なお、上記実施形態における記載は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 印刷装置
30 吐出ヘッド
40 コントローラ
46 第2コントローラ
50 印刷システム
51 コンピュータ
52 第1コントローラ
C コード
Dc 選択ドットデータ
G 画像
Pc 比較パターン
Pd1~Pd7 ドットパターン
Pe 除外パターン
Pm マスクパターン
ST1 第1状態
ST2 第2状態
W 被印刷媒体