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特開2024-76456印刷装置、印刷システムおよび印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076456
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷システムおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 21/00 20060101AFI20240530BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240530BHJP
   B41J 3/01 20060101ALI20240530BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B41J21/00 Z
B41J2/01 201
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J3/01
H04N1/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187970
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏門
【テーマコード(参考)】
2C055
2C056
2C187
5C077
【Fターム(参考)】
2C055JJ00
2C055JJ04
2C055JJ07
2C055JJ11
2C055JJ12
2C056EA04
2C056EB49
2C056EB52
2C056EB58
2C056EC79
2C187AC08
2C187BF09
2C187CD08
2C187DB41
5C077LL09
5C077PP13
5C077PP28
5C077PP55
5C077PP68
5C077SS05
5C077TT05
(57)【要約】
【課題】コードの読み取り精度を低下させないための補正を行っても、印刷データに基づく画像の画質を低下させることなく印刷することが可能な印刷装置、印刷システムおよび印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置は、選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと所定の比較パターンとに基づいて第1印刷データから選択ドットデータを削除する補正を行うか否かを決定する処理と、第1画像を形成するドットの範囲である第1範囲、および、第2画像を形成するドットの範囲である第2範囲のうち、何れか一つを指定する処理と、第1範囲を指定した場合には第1範囲において補正を行い、第2範囲を指定した場合には第2範囲において補正を行わずに維持する処理と、第1印刷データについて補正または維持が行われて得られた第2印刷データに基づく印刷処理と、を実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を被印刷媒体に吐出する吐出ヘッドと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記被印刷媒体上に前記液滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードを含む第1画像および前記コードを含まない第2画像を前記被印刷媒体に形成するための第1印刷データを取得する処理と、
取得した前記第1印刷データにおいて、前記第1画像を形成するドットに対応する第1ドットデータおよび前記第2画像を形成するドットに対応する第2ドットデータのうち少なくとも一つを選択し、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと所定の比較パターンとに基づいて前記第1印刷データから前記選択ドットデータを削除する補正を行うか否かを決定する処理と、
前記第1画像を形成するドットの範囲である第1範囲、および、前記第2画像を形成するドットの範囲である第2範囲のうち、何れか一つを指定する処理と、
前記第1範囲を指定した場合には前記第1範囲において前記補正を行い、前記第2範囲を指定した場合には前記第2範囲において前記補正を行わずに維持する処理と、
前記第1印刷データについて前記補正または前記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて前記吐出ヘッドから前記被印刷媒体に前記液滴を吐出させて前記第1画像および前記第2画像を前記被印刷媒体に形成する処理と、を実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記補正を行うか否かを決定する処理において、前記ドットパターンが前記比較パターンに一致するか否かを判別し、
前記ドットパターンが前記比較パターンに一致すると判別された場合に、前記選択ドットデータを前記第1印刷データから削除する補正を行わずに維持する処理を実行する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記コントローラは、ユーザの指示に基づき前記第2画像に対して前記補正を行うか否かについての補正要否情報を取得する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1印刷データにおける前記第2画像の数が閾値以下であるか否かを判別する処理を実行する、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1印刷データにおける前記第1画像の数が前記閾値以下であるか否かを判別する処理を実行する、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記補正要否情報が前記補正を必要とする内容である場合、前記指定処理を行わずに前記第1画像および前記第2画像を含む全範囲に対して前記補正を実行する、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記補正要否情報が前記補正を不要とする内容である場合で且つ前記第2画像の数が閾値以下であると判別された場合に、前記指定する処理において前記第2範囲を指定する、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記補正要否情報が前記補正を不要とする内容である場合で且つ前記第2画像の数が前記閾値超えであると判別されると共に前記第1画像の数が前記閾値以下であると判別された場合に、前記指定する処理において前記第1範囲を指定する、請求項5に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記補正要否情報が前記補正を不要とする内容である場合で且つ前記第2画像の数が前記閾値超えであると判別されると共に前記第1画像の数が前記閾値超えであると判別された場合に、前記指定する処理において前記第1範囲を指定する、請求項5に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記第1印刷データは前記第1画像を3つ以上含み、
前記コントローラは、前記指定する処理において前記第1範囲を指定する場合に、一方の前記第1画像について指定した一方の前記第1範囲の中に前記一方の第1画像とは異なる第1画像である中間配置画像の一部が含まれ、かつ、他方の前記第1画像について指定した他方の前記第1範囲の中に前記中間配置画像の前記一部以外の部分全てが含まれる場合には、前記中間配置画像についての前記第1範囲の指定を省略する、請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
コンピュータおよび印刷装置を備える印刷システムであって、
前記コンピュータは、第1コントローラを有し、
前記印刷装置は、液滴を被印刷媒体に吐出する吐出ヘッドと、第2コントローラとを有し、
前記第1コントローラは、
前記被印刷媒体上に前記液滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードを含む第1画像および前記コードを含まない第2画像を前記被印刷媒体に形成するための第1印刷データを取得する処理と、
取得した前記第1印刷データにおいて、前記第1画像を形成するドットに対応する第1ドットデータおよび前記第2画像を形成するドットに対応する第2ドットデータのうち少なくとも一つを選択し、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと所定の比較パターンとに基づいて前記第1印刷データから前記選択ドットデータを削除する補正を行うか否かを決定する処理と、
前記第1画像を形成するドットの範囲である第1範囲、および、前記第2画像を形成するドットの範囲である第2範囲のうち、何れか一つを指定する処理と、
前記第1範囲を指定した場合には前記第1範囲において前記補正を行い、前記第2範囲を指定した場合には前記第2範囲において前記補正を行わずに維持する処理と、を実行し、
前記第2コントローラは、
前記第1印刷データについて前記補正または前記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて前記吐出ヘッドから前記被印刷媒体に前記液滴を吐出させて前記第1画像および前記第2画像を前記被印刷媒体に形成する処理を実行する、印刷システム。
【請求項12】
被印刷媒体上に液滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードを含む第1画像および前記コードを含まない第2画像を前記被印刷媒体に形成するための第1印刷データを取得し、
取得した前記第1印刷データにおいて、前記第1画像を形成するドットに対応する第1ドットデータおよび前記第2画像を形成するドットに対応する第2ドットデータのうち少なくとも一つを選択し、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと所定の比較パターンとに基づいて前記第1印刷データから前記選択ドットデータを削除する補正を行うか否かを決定し、
前記第1画像を形成するドットの範囲である第1範囲、および、前記第2画像を形成するドットの範囲である第2範囲のうち、何れか一つを指定し、
前記第1範囲を指定した場合には前記第1範囲において前記補正を行い、前記第2範囲を指定した場合には前記第2範囲において前記補正を行わずに維持し、
前記第1印刷データについて前記補正または前記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて吐出ヘッドから前記被印刷媒体に前記液滴を吐出させて前記第1画像および前記第2画像を前記被印刷媒体に形成する、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷システムおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーコードの読み取り精度を低下させることなく、バーコード以外の表および罫線の印刷を良好に行うことを目的とした印刷システムが知られている。この場合、プリンタドライバは、印刷データがバーコードのデータである場合には印刷データに対して輪郭線を太らせる補正をせずに印刷し、印刷データがバーコードのデータでない場合には印刷データに対して輪郭線を太らせる補正をして印刷する。
【0003】
しかし、被印刷媒体に液滴を吐出してバーコードを印刷する際、当該液滴が被印刷媒体上で滲むことがある。そのため、バーコードの線幅が増大し、バーコードの読み取り精度が低下してしまう。そこで、形成すべき画像のうち所定の縁部に位置するドット(注目対象である選択ドットの周辺にある周辺ドット)に対する比較用のドットパターンである複数の比較パターンを用いた補正を行う印刷装置が知られている(特許文献1参照)。この印刷装置では、周辺ドットと各比較パターンにおけるドットとが一致する場合に当該周辺ドットに対応する上記選択ドットを空白データにする補正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-084291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、印刷データにはバーコードを含む画像以外にバーコードを含まない画像も含まれることがある。バーコードを含まない画像の例としては、例えば企業ロゴマーク等が挙げられる。この企業ロゴマークは、例えば、社名を白抜きにし、当該社名の背景画像が色付けされる。しかしながら、バーコードを含む画像に対して上記補正を行う従来技術によれば、上記背景画像に対して不所望に補正がされてしまう。その結果、背景画像が白色となり、企業ロゴマークにおける社名が視覚的に消失して画質が低下するという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、コードの読み取り精度を低下させないための補正を行っても、印刷データに基づく画像の画質を低下させることなく印刷することが可能な印刷装置、印刷システムおよび印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷装置は、液滴を被印刷媒体に吐出する吐出ヘッドと、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記被印刷媒体上に前記液滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードを含む第1画像および前記コードを含まない第2画像を前記被印刷媒体に形成するための第1印刷データを取得する処理と、取得した前記第1印刷データにおいて、前記第1画像を形成するドットに対応する第1ドットデータおよび前記第2画像を形成するドットに対応する第2ドットデータのうち少なくとも一つを選択し、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと所定の比較パターンとに基づいて前記第1印刷データから前記選択ドットデータを削除する補正を行うか否かを決定する処理と、前記第1画像を形成するドットの範囲である第1範囲、および、前記第2画像を形成するドットの範囲である第2範囲のうち、何れか一つを指定する処理と、前記第1範囲を指定した場合には前記第1範囲において前記補正を行い、前記第2範囲を指定した場合には前記第2範囲において前記補正を行わずに維持する処理と、前記第1印刷データについて前記補正または前記維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて前記吐出ヘッドから前記被印刷媒体に前記液滴を吐出させて前記第1画像および前記第2画像を前記被印刷媒体に形成する処理と、を実行するものである。
【0008】
本発明に従えば、上記指定する処理において、補正を行うための第1範囲および補正を行わないための第2範囲のうち何れか一つが指定される。そして、第1範囲が指定された場合には当該第1範囲において上記補正が行われ、第2範囲が指定された場合には当該第2範囲においては上記補正が行われずに維持される。これにより、補正を行う範囲を制限することができる。つまり、補正が行われるのを望む範囲を第1範囲として指定することで当該補正が行われるのを避けたい範囲を間接的に指定することができ、また、第2範囲を指定することで補正を行うのを避けたい範囲を直接的に指定することができる。これによって、補正が行われるのを避けたい画像を除いた状態でコードの読み取り精度を低下させないための補正を実行することができる。よって、補正が行われるのを避けたい画像を含む印刷データに基づいて画質を低下させることなく画像を被印刷媒体に印刷することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コードの読み取り精度を低下させないための補正を行っても、印刷データに基づく画像の画質を低下させることなく印刷することが可能な印刷装置、印刷システムおよび印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置を示す平面図である。
図2図1の印刷装置に備わる吐出ヘッドの底面図である。
図3図1の印刷装置における制御系の構成を示すブロック図である。
図4】情報を有するコードを含む第1画像および当該コードを含まない第2画像の一例を示す図である。
図5図5Aは処理前の画像を示す図であり、図5Bは選択された選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンと比較パターンとの比較を示す図であり、図5Cは補正が実行された画像を示す図である。
図6図6Aはハーフトーンで形成された画像の一例を示す図であり、図6B図6Aの画像に対して補正を行った後の画像を示す図である。
図7図7Aは補正を行う際の条件を格納したテーブルを示す図であり、図7B図7Aにおける条件に対応して領域指定の方法を規定するテーブルを示す図である。
図8】印刷処理を示すフローチャートである。
図9図9Aは2つの第1画像の間に位置する中間配置画像を示す図であり、図9B図9Aの画像を補正する際の領域指定である重ね掛けを説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態に係る印刷システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る印刷装置について図面を参照して説明する。以下に説明する印刷装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る印刷装置10を示す平面図である。図2図1の印刷装置10に備わる吐出ヘッド30の底面図である。図3図1の印刷装置10における制御系の構成を示すブロック図である。図1および図2において、相互に直交する方向を、第1方向Dsおよび第2方向Dfとする。本実施形態では、例えば、第2方向Dfは後述の被印刷媒体Wの搬送方向であり、第1方向Dsは後述するラインヘッド式の吐出ヘッド30の延在方向である。以下の説明では、Dsを延在方向と呼び、Dfを搬送方向と呼び、延在方向Dsの一方を左方、当該延在方向Dsの他方を右方とし、搬送方向Dfの一方を前方、当該搬送方向Dfの他方を後方とする。但し、上記各方向は一例であって限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、印刷装置10は、例えば、液滴としてのインク滴を印刷用紙である被印刷媒体Wに吐出するインクジェットプリンタである。印刷装置10は、筐体11、プラテン12、搬送装置20、1又は複数(例えば、4つ)の吐出ヘッド30、タンク13およびコントローラ40を備える。なお、吐出ヘッド30は例えばラインヘッドである。
【0014】
筐体11は、プラテン12、搬送装置20、吐出ヘッド30、タンク13およびコントローラ40を収容する。プラテン12は平坦な上面を有し、この上面に被印刷媒体Wが載置される。
【0015】
搬送装置20は、一対の搬送ローラ21および搬送モータ22(図3)を有する。一対の搬送ローラ21は、搬送方向Dfにおいて互いの間に吐出ヘッド30を挟むように配置されており、その中心軸が延在方向Dsに延びて互いに平行に並んでいる。搬送モータ22は、搬送ローラ21に連結されており、搬送ローラ21を回転させ、被印刷媒体Wを前方に搬送する。
【0016】
吐出ヘッド30は、筐体11に固定されており、例えば矩形状であって、延在方向Dsにおける寸法が被印刷媒体Wの寸法よりも長い。吐出ヘッド30の下面は、プラテン12の上面に対向した状態で配置されている。4つの吐出ヘッド30は、搬送方向Dfに一列に並べられている。
【0017】
タンク13は、例えば、吐出ヘッド30と同数が設けられ、互いに異なる種類のインクを貯留し、吐出ヘッド30にチューブ14によって接続されている。例えば、4つのタンク13は、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクをそれぞれ貯留し、対応する吐出ヘッド30にチューブ14を介してインクを供給する。
【0018】
吐出ヘッド30は、図2に示すように、保持台31および複数のチップ32を有する。保持台31は、例えば、直方体形状であって、その下面にチップ32の下面が露出するようにチップ32を保持している。なお、図2では1つの吐出ヘッド30のみを示している。
【0019】
チップ32は、複数のノズル33および当該ノズル33に対応する駆動素子34(図3)を有する。ノズル33は、液体流路およびチューブ14を介してタンク13に接続されている。複数のノズル33は、例えば、延在方向Dsにおいて互いに所定の間隔を空けながら列を成し、ノズル列を形成している。各チップ32では、延在方向Dsにおいて複数のノズル33が等間隔に並ぶように複数のノズル列は搬送方向Dfに配列されている。
【0020】
複数のチップ32は、保持台31において延在方向Dsに配置され、且つ、隣り合うチップ32は搬送方向Dfにずれて配置されている。このため、複数のチップ32は、1つずつ搬送方向Dfに互い違いになるようにして延在方向Dsに並べられている。複数のチップ32は、延在方向Dsにおいて複数のノズル33が等間隔で配置されつつ延在方向Dsにおける全長が被印刷媒体Wよりも長くなるように配置されている。
【0021】
コントローラ40は、図3に示すように、演算部41、記憶部42およびインターフェース43を有する。コントローラ40は単独のコントローラであってもよいし、複数のコントローラで構成されてもよい。
【0022】
インターフェース43は、コンピュータ、ネットワークおよび記録媒体等の外部機器Bに接続され、外部機器Bから印刷データ等の各種データを受信する。コントローラ40の演算部41は、外部機器Bからインターフェース43を介して印刷データを取得する。なお、印刷データは、印刷装置10に備わるキーボードおよびマウス等の入力装置15を用いてユーザにより入力されてもよい。このような印刷データは、被印刷媒体W上にインク滴を着弾させて形成するドットにより、所定情報を有するコードを含む第1画像およびコードを含まない第2画像を被印刷媒体Wに形成するためのデータであって、例えばラスタデータ等の画像データを含む。第1画像および第2画像については後述する。なお、印刷データは記憶部42に記憶されたデータであってもよい。また、印刷データは吐出ヘッド30からインク滴を吐出させるか否かを指令するための2値以上のデータであってもよい。さらに、印刷データは上記2値以上のデータに変換される前のRGB値のデータであってもよい。
【0023】
記憶部42は、演算部41がアクセス可能な記憶媒体であって、例えばRAMおよびROMにより構成される。RAMは各種データを一時的に記憶する。この各種データとしては、印刷データおよび演算部41により変換されたデータが例示される。ROMは各種処理を行うためのプログラム、後述の比較パターンPc、および後述のテーブルTa1,Ta2等を記憶する。なお、プログラムは記憶部42以外の他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0024】
演算部41は、例えばCPU等のプロセッサおよびASIC等の集積回路により構成される。演算部41は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子34および搬送モータ22を制御する。
【0025】
コントローラ40は、ヘッド駆動回路44を介して駆動素子34に接続されており、印刷データに基づいた制御信号をヘッド駆動回路44に出力する。ヘッド駆動回路44は、制御信号に基づいて駆動信号を生成して駆動素子34に出力する。これにより、駆動素子34が駆動信号に応じて駆動し、ノズル33に繋がる流路のインクに圧力が付与されることで、ノズル33からインク滴が被印刷媒体Wに吐出される。
【0026】
コントローラ40は、搬送駆動回路45を介して搬送モータ22に接続されており、印刷データに基づいた制御信号を搬送駆動回路45に出力する。搬送駆動回路45はこの制御信号に基づいて生成した駆動信号を搬送モータ22に出力する。これにより、搬送モータ22の駆動タイミング、回転速度、回転量等が制御され、被印刷媒体Wが搬送方向Dfの前方に搬送される。
【0027】
コントローラ40は、印刷データに基づいて画像を被印刷媒体Wに印刷する印刷処理を実行する。この印刷処理では、コントローラ40は、印刷データに基づいて駆動素子34の駆動によりノズル33からインク滴を吐出させる吐出動作および搬送モータ22の駆動により被印刷媒体Wを搬送方向Dfの前方に搬送させる搬送動作を行う。これにより、ノズル33から吐出されたインク滴が被印刷媒体Wの上に着弾し、当該インク滴によって被印刷媒体W上にドットが形成される。このドットの集合体により画像が被印刷媒体Wに形成される。
【0028】
図4は情報を有するコードを含む第1画像Gcおよび当該コードを含まない第2画像Gnの一例を示す図である。図4に示すように、印刷装置10により被印刷媒体Wに第1画像Gcおよび第2画像Gnが形成されることがある。
【0029】
第1画像Gcおよび第2画像Gnは1つ又は複数のドットにより形成される。第1画像Gcは、反射光から情報を読み取るためのコードを含み、バーコード等の一次元コードおよびQRコード(登録商標)等の二次元コードが例示される。コードリーダにより赤外線等の光が第1画像Gcに対して照射され、その反射光から第1画像Gcに含まれる情報が読み取られる。なお、図4では、第1画像Gcにコード以外の画像(例えば文字および符号等)が含まれない態様を示したが、当該第1画像Gcにはコード以外の画像が含まれてもよい。
【0030】
また、第2画像Gnは、第1画像Gcとは異なりコードを含まない画像である。第2画像Gnの例としては、文字およびロゴ(図案化又は装飾化された文字および文字列)等が挙げられる。第2画像Gnは、ハーフトーンで形成された背景画像の中に配置された、例えば「ABC」からなる白抜き文字である。
【0031】
ここで、インク滴の滲みが多く生じる被印刷媒体Wを用いる場合には、上述の第1画像Gcのような画像に含まれるコードの読み取り精度の低下を抑制するべく、画像のドットを削除する補正が行われることがある。以下、補正について説明する。
【0032】
図5Aは処理前の画像Gcを示す図であり、図5Bは選択された選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPdと比較パターンPcとの比較を示す図であり、図5Cは補正が実行された画像Gcを示す図である。また、図6Aはハーフトーンで形成された画像Gd1の一例を示す図であり、図6B図6Aの画像Gd1に対して補正を行った後の画像Gd2を示す図である。なお、図5Aの画像Gcは図4で説明した第2画像Gnの一部についての一例とする。
【0033】
補正の基本的な流れは以下の通りである。最初に、コントローラ40は外部機器Bから取得した印刷データ(以下、第1印刷データと呼ぶ)において、第1画像Gcを形成するドットに対応する第1ドットデータおよび第2画像Gnを形成するドットに対応する第2ドットデータのうち少なくとも一つを選択する。本実施形態において第1印刷データはページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述される。コントローラ40は、選択したドットデータである選択ドットデータを含む所定範囲のドットパターンが所定の比較パターンに一致するか否かを判別する処理を実行する。コントローラ40は、判別する処理においてドットパターンが比較パターンに一致しないと判別された場合には上記ドットパターンに含まれる選択ドットデータを第1印刷データから削除する補正を行う。他方、コントローラ40は、ドットパターンが比較パターンに一致すると判別された場合には選択ドットデータを第1印刷データから削除する補正を行わずに維持する処理を実行する。但し、本実施形態では、第1画像Gcに対する補正はユーザの指定によらず実行されるが、第2画像Gnに対する補正を行うか否かについてはユーザが入力装置15を用いて指定することができる。この場合、第2画像Gnに対する補正が不要であることがユーザにより指定されたとき、第1画像Gcに対する補正の際にコントローラ40により所定の条件に基づく領域指定が実行される。なお、領域指定については後で詳述する。
【0034】
上記補正の具体例について図面を参照しつつ説明する。図5Aに示すように、コントローラ40は、第1印刷データに基づいて印刷する画像を1つのドットに1つのセルが対応するように格子状に複数のセルに分割する。そして、コントローラ40は、第1印刷データにおける濃度が所定値以上であるセルに対しては、ドットを形成するとしてドットデータ「1」を設定する。ドットデータ「1」が設定されたセルは、図5Aにおいて黒塗りされたセルである。一方、コントローラ40は、第1印刷データにおける濃度が所定値未満であるセルに対しては、ドットを形成しないとして空白データ「0」を設定する。空白データ「0」が設定されたセルは、図5Aにおいて黒塗りされていないセルである。なお、以下の説明において、便宜上、格子状に配置された各セルの位置を行および列により特定する。
【0035】
コントローラ40は、第1印刷データにおける複数のセルから、画像Gcを形成するドットデータ「1」を順に選択し、選択したドットデータ(以下、選択ドットデータと呼ぶ)Dcを含む所定範囲のドットパターンを抽出する。図5Aでは、選択ドットデータDcとして、3行3列目に位置するセルにおけるドットデータDc1が選択されたものとする。また、図5Aでは、選択ドットデータDcおよび当該選択ドットデータDcを囲む8つのドットデータから成る3×3のドットパターンPdを所定範囲のドットパターンとしている。なお、選択ドットデータDcを基準として抽出されるドットパターンの所定範囲は任意であり適宜変更可能である。
【0036】
続いて、図5Bに示すように、コントローラ40は選択ドットデータDcを含むドットパターンPdが所定の比較パターンPcに一致するか否かを判別する。比較パターンPcは例えば3×3の比較領域を有し、全てのセルにおいてドットデータ「1」が設定されたものである。図5Bにおいては、ドットパターンPdは比較パターンPcに一致しない。この場合、コントローラ40は、選択ドットデータDcを第1印刷データから削除するべく、選択ドットデータDcを図5Cに示すように空白データDc1にする補正を行う。なお、図5Cにおける参照符号Pd1は補正後のドットパターンを示し、参照符号Gc1は補正後の画像を示す。
【0037】
以上のように、ドットパターンPdが比較パターンPcに一致しない場合に補正を実行する。すなわち、比較パターンPcが全セルにおいてドットデータが設定されたものであるため、選択ドットデータDcの周辺の8つのセルのうち1つでも空白データが設定されているセルが存在すれば、当該選択ドットデータDcは空白データDc1に置き換えられる。
【0038】
ここで、上記の補正を第2画像Gnに対して実行すると、当該第2画像Gnがハーフトーンで形成された背景画像の中に配置された白抜き文字であることに起因して適切に補正することができない事態が生じてしまう。つまり、図6Aに示すハーフトーンで形成された画像Gd1に対して補正を行うと、当該画像Gd1を形成する複数の黒点がほぼ全て空白データに置き換えられる結果、図6Bに示すように補正後の画像Gd2は白塗り画像となってしまう。
【0039】
そこで、本実施形態では、第1画像Gcおよび第2画像Gnに対して補正を行う際に、第2画像Gnに対する補正のON/OFF(要否)をユーザの指定によるものとする。そして、第2画像Gnに対する補正が不要であることがユーザにより指定された場合に、所定の領域指定に基づき第1画像Gcが補正される。以下、領域指定について説明する。
【0040】
図7Aは補正を行う際の条件を格納したテーブルTa1を示す図であり、図7B図7Aにおける条件に対応して領域指定の方法を規定するテーブルTa2を示す図である。図7Aに示すように、テーブルTa1には、ユーザ指定による第2画像Gnに対する補正の要否と、第1印刷データにおける第1画像Gcの数N1および第2画像Gnの数N2(つまり、被印刷媒体Wに形成すべき第1画像Gcの数N1および第2画像Gnの数N2)とが規定される。
【0041】
コントローラ40は、ユーザの指示に基づき第2画像Gnに対して補正を行うか否かについての情報を示す補正要否情報を取得する。この場合、コントローラ40はユーザにより操作された入力装置15からの出力信号を補正要否情報として取得することができる。この補正要否情報が第2画像Gnの補正を必要とする内容である場合、すなわち、第1画像Gcの補正と併せて、第2画像Gnの補正も必要である場合には、コントローラ40は図7Bに示すテーブルTa2に基づき領域指定の処理を行わずに、図5で説明した方法により第1画像Gcおよび第2画像Gnを含む全範囲に対して補正を実行する。
【0042】
一方、補正要否情報が第2画像Gnの補正を不要とする内容である場合には、コントローラ40は次の処理を実行する。すなわち、コントローラ40は、テーブルTa1における条件を基に規定されたテーブルTa2に基づいて、第1画像Gcを形成するドットの範囲である第1範囲R1(図4)および第2画像Gnを形成するドットの範囲である第2範囲R2(図4)のうち何れか一つを指定する処理を実行する。この場合、コントローラ40は、上述のPDLで記述された第1印刷データを解析することで第1画像Gcおよび第2画像Gnの各位置情報をそれぞれ取得する。なお、本実施形態において第1範囲R1および第2範囲R2は例えば正方形状又は矩形状を成している。
【0043】
第1画像Gcのみを補正する場合には、コントローラ40は第1画像Gcの数N1および第2画像Gnの数N2に基づき第1範囲R1および第2範囲R2の何れか一つを指定する。コントローラ40は、第1範囲R1を指定した場合には第1範囲R1において補正を実行する。この場合、第1範囲R1における第1画像Gcに対して補正が実行され、第2範囲R2における第2画像Gnに対して補正は実行されない。一方、コントローラ40は、第2範囲R2を指定した場合には第2範囲R2において補正を行わずに維持する処理を実行する。この場合も、第1範囲R1における第1画像Gcに対して補正が実行され、第2範囲R2における第2画像Gnに対して補正は実行されない。つまり、第2画像Gnの補正を不要とする補正要否情報に基づき第1画像Gcに対して補正を実行するときに、第1画像Gcの数N1および第2画像Gnの数N2を基に、補正を行うべき第1画像Gcを含む範囲である第1範囲R1、および、補正を行わない第2画像Gnを含む範囲である第2範囲R2の何れか一つが指定される。
【0044】
また、コントローラ40は次の処理を実行する。すなわち、コントローラ40は第1印刷データにおける第1画像Gcの数N1が閾値Nt以下であるか否かを判別すると共に、第2画像Gnの数N2が閾値Nt以下であるか否かを判別する処理を実行する。
【0045】
テーブルTa1に戻り、コントローラ40は、補正要否情報が第2画像Gnの補正を不要とする内容である場合で、且つ、第2画像Gnの数N2が閾値Nt以下であると判別する場合には、補正を実行しない領域を指定する。つまり、コントローラ40は、第2範囲R2を指定する。
【0046】
テーブルTa1において、コントローラ40は、補正要否情報が第2画像Gnの補正を不要とする内容である場合で、且つ、第2画像Gnの数N2が閾値Nt超えであると判別されると共に第1画像Gcの数N1が閾値Nt以下であると判別する場合には、補正を実行する領域を指定する。つまり、コントローラ40は、第1範囲R1を指定する。
【0047】
テーブルTa1において、コントローラ40は、補正要否情報が第2画像Gnの補正を不要とする内容である場合で、且つ、第2画像Gnの数N2が閾値Nt超えであると判別されると共に第1画像Gcの数N1も閾値Nt超えであると判別する場合には、補正を実行する領域を指定する。つまり、コントローラ40は、第1範囲R1を指定する。
【0048】
図8は印刷処理を示すフローチャートである。図8に示すように、最初にコントローラ40は第1画像Gcおよび第2画像Gnを被印刷媒体Wに形成するための第1印刷データを外部機器B又は入力装置15から取得する(ステップS1)。
【0049】
次いで、コントローラ40は、取得した第1印刷データにおいて、第1画像Gcを形成するドットに対応する第1ドットデータおよび第2画像Gnを形成するドットに対応する第2ドットデータのうち少なくとも一つを選択する(ステップS2)。そして、コントローラ40は、選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPdが所定の比較パターンPcに一致するか否かについての判別結果に基づき補正を行うか否かを決定する(ステップS3)。
【0050】
コントローラ40はテーブルTa2に基づき第1範囲R1および第2範囲R2のうち何れかの範囲を指定する(ステップS4)。第1範囲R1を指定しない場合、つまり、補正を実行しない方の範囲である第2範囲R2を指定する場合(ステップS5でNo)、コントローラ40は第1範囲R1における第1画像Gcに対して補正を実行する(ステップS6)。この場合、第2範囲R2における第2画像Gnに対する補正は実行されない。
【0051】
一方、第1範囲R1を指定する場合、つまり、補正を実行する方の範囲を指定する場合(ステップS5でNo)、コントローラ40は第2範囲R2における第2画像Gnに対する補正を実行せずに維持する(ステップS7)。この場合、第1範囲R1における第1画像Gcに対する補正は実行される。
【0052】
ステップS6の処理の後およびステップS7の処理の後、コントローラ40は、第1印刷データについて補正または維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて吐出ヘッド30から被印刷媒体Wに液滴を吐出させて第1画像Gcおよび第2画像Gnを被印刷媒体Wに形成する処理を実行する(ステップS8)。
【0053】
ここで、領域指定のバリエーションについて説明する。図9Aは2つの第1画像Gcの間に位置する中間配置画像Gmを示す図であり、図9B図9Aの第1画像Gcおよび中間配置画像Gmを補正する際の領域指定である重ね掛けを説明するための図である。
【0054】
第1印刷データには、例えば8つ以上の第1画像Gcが含まれることがある。図9Aの例では、第1画像Gcとして、第1画像Gc1、第1画像Gc2、および中間配置画像Gmの3つの画像が示されている。例えば、第1画像Gc2は第1画像Gc1に対して搬送方向Dfに離間して配置されている。中間配置画像Gmは第1画像Gc1および第1画像Gc2とは異なる第1画像Gcである。中間配置画像Gmは、搬送方向Dfにおいて第1画像Gc1と第1画像Gc2との間に配置されている。中間配置画像Gmの一部は、延在方向Dsにおいて第1画像Gc1の一部と重なっている。中間配置画像Gmの他部は、延在方向Dsにおいて第1画像Gc2の一部と重なっている。なお、第1画像Gc1の右方に第2画像Gn1が配置され、第1画像Gc2の左方に第2画像Gn2が配置されている。
【0055】
コントローラ40は、一方の第1画像Gc1について第1範囲R1aを指定し、他方の第1画像Gc2について第1範囲R1bを指定する。この場合、一方の第1画像Gc1について指定した一方の第1範囲R1aの中に中間配置画像Gmの一部が含まれ、かつ、他方の第1画像Gc2について指定した他方の第1範囲R1bの中に当該中間配置画像Gmの一部以外の部分全てが含まれる。このとき、コントローラ40は、図9Bに示すように中間配置画像Gmについての第1範囲の指定を省略する。したがって、図9Aの例の場合、コントローラ40は、3つの第1画像Gc(つまり、第1画像Gc1、第1画像Gc2、および中間配置画像Gm)について、2つの第1範囲R1(つまり、第1範囲R1aおよび第1範囲R1b)を指定するだけで済む。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置10によれば、コードの読み取り精度を低下させない補正を行うための第1範囲R1および当該補正を行わないための第2範囲R2のうち何れか一つが指定される。第1範囲R1が指定された場合には、当該第1範囲R1における第1画像Gcに対して補正が行われ、第2範囲R2における第2画像Gnに対して補正は行われずに維持される。一方、第2範囲R2が指定された場合には、第1範囲R1における第1画像Gcに対して補正が行われ、第2範囲R2における第2画像Gnに対して補正は行われずに維持される。これにより、補正を行う範囲を制限することができる。つまり、補正が行われるのを望む範囲を第1範囲R1として指定することで当該補正が行われるのを避けたい範囲である第2範囲R2を間接的に指定することができ、また、第2範囲R2を指定することで補正を行うのを避けたい範囲を直接的に指定することができる。これによって、補正が行われるのを避けたい第2画像Gnを除いた状態で補正を実行することができる。よって、補正が行われるのを避けたい第2画像Gnを含む第2印刷データに基づいて画質を低下させることなく被印刷媒体Wへの印刷を行うことが可能となる。
【0057】
また、本実施形態では、ドットパターンPdが比較パターンPcに一致すると判別された場合に、選択ドットデータDcを第1印刷データから削除する補正を行わずに維持される。換言すれば、ドットパターンPdが比較パターンPcに一致しない場合に補正を実行する。すなわち、選択ドットデータDcの周辺の例えば8つのセルのうち1つでも空白データが設定されているセルが存在すれば、当該選択ドットデータDcを空白データDc1に置き換える補正が実行される。これにより、選択ドットデータDcを補正する場合を多く確保すべく周辺ドットデータに一致させたい数だけの比較パターンを要せずに済む。
【0058】
また、本実施形態では、コントローラ40はユーザの指示に基づき第2画像Gnに対する補正要否情報を取得する。これにより、第2画像Gnの補正の要否をユーザの希望に基づき決定することができる。
【0059】
また、本実施形態では、コントローラ40は補正要否情報が補正を必要とする内容である場合、範囲の指定処理を行わずに第1画像Gcおよび第2画像Gnを含む全範囲に対して補正を実行する。これにより、第1画像Gcに対する補正と併せて、ユーザが望む場合には第2画像Gnに対しても補正を行うことができる。また、範囲の指定処理が不要となるため、メモリの使用量を低減することができる。
【0060】
また、本実施形態では、コントローラ40は補正要否情報が補正を不要とする内容である場合で且つ第2画像Gnの数N2が閾値Nt以下であると判別された場合に、範囲を指定する処理において、補正をしない領域である第2範囲R2を指定する。範囲の指定後は、第1範囲R1における第1画像Gcに対しては補正が実行され、第2範囲R2における第2画像Gnに対しては補正が実行されない。このように、数が比較的少ない方の第2画像Gnについての第2範囲R2を指定することによって、範囲の指定数を少なくすることができる。これにより、メモリの使用量を低減することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、コントローラ40は補正要否情報が補正を不要とする内容である場合で且つ第2画像Gnの数N2が閾値Nt超えであると判別されると共に第1画像Gcの数N1が閾値Nt以下であると判別された場合に、補正をする領域である第1範囲R1を指定する。範囲の指定後は、第1範囲R1における第1画像Gcに対しては補正が実行され、第2範囲R2における第2画像Gnに対しては補正が実行されない。このように、数が比較的少ない方の第1画像Gcについての第1範囲R1を指定することによって、範囲の指定数を少なくすることができる。これにより、メモリの使用量を低減することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、コントローラ40は、補正要否情報が補正を不要とする内容である場合で且つ第2画像Gnの数N2が閾値Nt超えであると判別されると共に第1画像Gcの数N1が閾値Nt超えであると判別された場合に、指定する処理において第1範囲R1を指定する。この場合には、補正をする領域である第1範囲R1を指定することで、誤動作により第2範囲R2が指定され当該第2範囲R2における第2画像Gnに対して補正が行われてしまうといったリスクを限りなく低減できる。
【0063】
さらに、本実施形態では、一方の第1画像Gc1について指定した一方の第1範囲R1aの中に中間配置画像Gmの一部が含まれ、かつ、他方の第1画像Gc2について指定した他方の第1範囲R1bの中に当該中間配置画像Gmの一部以外の部分全てが含まれる場合には、以下の処理が実行される。すなわち、コントローラ40は中間配置画像Gmについての第1範囲の指定を省略する。これにより、コントローラ40は例えば3つの第1画像Gcについて2つの第1範囲R1を指定するだけで済む。これにより、コントローラ40の処理量およびメモリの使用量を低減することができる。
【0064】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0065】
上記実施形態において印刷装置10が行う処理を、下記の印刷システム50においてコンピュータ51と印刷装置10とに分けて行ってもよい。図10は本発明の一実施形態に係る印刷システム50の構成を示すブロック図である。
【0066】
図10に示すように、印刷システム50はコンピュータ51および印刷装置10を備える。コンピュータ51は第1コントローラ52を有する。印刷装置10は、インク滴を被印刷媒体Wに吐出するヘッド30および第2コントローラ46を有する。第1コントローラ52は、被印刷媒体W上にインク滴を着弾させて形成するドットにより、情報を有するコードを含む第1画像Gcおよびコードを含まない第2画像Gnを被印刷媒体Wに形成するための第1印刷データを取得する。第1コントローラ52は、取得した第1印刷データにおいて、第1画像Gcを形成するドットに対応する第1ドットデータおよび第2画像Gnを形成するドットに対応する第2ドットデータのうち少なくとも一つを選択する。また、第1コントローラ52は第1画像Gcを形成するドットの範囲である第1範囲R1、および、第2画像Gnを形成するドットの範囲である第2範囲R2のうち何れか一つを指定する。第1コントローラ52は第1範囲R1を指定した場合には当該第1範囲R1において補正を行い、第2範囲R2を指定した場合には当該第2範囲R2において補正を行わずに維持する。第1コントローラ52は、補正において、選択ドットデータDcを含む所定範囲のドットパターンPdが所定の比較パターンPcに一致するか否かを判別する。ドットパターンPdが比較パターンPcに一致しない場合には、第1コントローラ52は選択ドットデータDcを第1印刷データから削除する補正を行う。一方、ドットパターンPdが比較パターンPcに一致する場合には、第1コントローラ52は選択ドットデータDcを第1印刷データから削除する補正を行わずに維持する。そして、第2コントローラ46は、第1印刷データについて補正または維持が行われて得られた第2印刷データに基づいて吐出ヘッド30から被印刷媒体Wにインク滴を吐出させて第1画像Gcおよび第2画像Gnを被印刷媒体Wに形成する処理を実行する。
【0067】
第1コントローラ52は、第1演算部53、第1記憶部54および第1インターフェース55を有する。第1インターフェース55は、印刷装置10に接続され、印刷装置10に第2印刷データを印刷装置10に送信する。第1記憶部54は、第1演算部53がアクセス可能なものであって、例えばRAMおよびROMにより構成される。第1演算部53は、演算部41による処理と同様の処理を行い、第2印刷データを第1インターフェース55により印刷装置10に送信する。
【0068】
第2コントローラ46は、第2演算部47、第2記憶部48および第2インターフェース49を有する。第2インターフェース49はコンピュータ51から送信された第2印刷データを受信する。第2演算部47は、第2記憶部48に記憶されたプログラムを実行することにより、第2印刷データに基づいて印刷処理を実行する。なお、図10の印刷装置10における他の構成要素の機能は、上述した図3の印刷装置10において同一符号を付した構成要素の機能と同じであるため説明を省略する。
【0069】
また、上記実施形態では、吐出ヘッド30をラインヘッドとしたが、これに限定されない。印刷装置10は、吐出ヘッド30を搭載したキャリッジを備え、当該キャリッジにより吐出ヘッド30を延在方向Dsに移動するシリアルヘッド方式が用いられてもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、印刷装置10が被印刷媒体Wを搬送方向Dfに搬送する搬送装置20を備えなくてもよい。この場合、吐出ヘッド30が被印刷媒体Wに対して移動する方式が用いられてもよい。
【0071】
なお、上記実施形態における記載は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 印刷装置
30 吐出ヘッド
40 コントローラ
46 第2コントローラ
50 印刷システム
51 コンピュータ
52 第1コントローラ
Dc 選択ドットデータ
Gc,Gc1,Gc2 第1画像
Gm 中間配置画像
Gn,Gn1,Gn2 第2画像
Pc 比較パターン
Pd ドットパターン
R1,R1a,R1b 第1範囲
R2 第2範囲
W 被印刷媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10