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特開2024-7646多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007646
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20240112BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G01B11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108843
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】白石 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐希
(72)【発明者】
【氏名】濱田 達也
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065BB05
2F065CC08
2F065FF04
2F065FF42
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ02
2F065JJ05
2F065JJ25
2F065LL08
2F065LL13
2F065LL15
2F065LL62
2F065MM16
2F065QQ31
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】被測定物体の3次元形状を従来よりも精度よく計測する3次元計測装置を提供すること。
【解決手段】被測定物体1にレーザ発振器10からのレーザ光をシングルスポット光Lとして照射し、被測定物体1から反射された反射光を受光することにより、被測定物体1の3次元形状を計測する装置であって、3台以上のラインCCD(charge coupled device)カメラで被測定物体1からの反射光を1次元軸上で受光する光学系20と、光学系20で受光した1次元軸上における反射光輝度分布を表す検出信号から反射光の3次元的位置を演算する解析手段40とを具備し、解析手段40は、被測定物体1を2次元平面に投影して解析する透視投影モデルの解析において、3台以上のラインCCDカメラ30を組み合わせてワールド座標系からカメラ座標系へ変換し、さらにカメラ座標系から計測点Pの3次元座標を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物体にレーザ発振器からのレーザ光をシングルスポット光として照射し、前記被測定物体から反射された反射光を受光することにより、前記被測定物体の3次元形状を計測する装置であって、
3台以上のラインCCD(charge coupled device)カメラで前記被測定物体からの前記反射光を1次元軸上で受光する光学系と、
前記光学系で受光した前記1次元軸上における反射光輝度分布を表す検出信号から前記反射光の3次元的位置を演算する解析手段とを具備し、
前記解析手段は、前記被測定物体を2次元平面に投影して解析する透視投影モデルの解析において、3台以上の前記ラインCCDカメラを組み合わせてワールド座標系からカメラ座標系へ変換し、さらに前記カメラ座標系から計測点の3次元座標を算出することを特徴とする多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置。
【請求項2】
前記透視投影モデルの解析としてDLT(Direct Linear Translation)法のアルゴリズムを用いた前記解析手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置。
【請求項3】
前記ラインCCDカメラをN(N≧4)台具備し、前記解析手段は、N台の前記ラインCCDカメラそれぞれの平面の式のうち二つの平面の式を用いてカメラ光線を求め、他の一つの平面の式と前記カメラ光線との交点を求めることで前記計測点の3次元座標を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置。
【請求項4】
前記解析手段は、前記平面の式の組み合わせを変えて前記計測点の3次元座標を複数回算出し、複数回算出することにより蓄積した前記計測点の情報に統計処理を加えて前記計測点の3次元座標を決定することを特徴とする請求項3に記載の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置。
【請求項5】
前記ラインCCDカメラをN(N≧4)台具備し、N台の前記ラインCCDカメラにより前記被測定物体を少なくとも2方向から撮影することを特徴とする請求項1に記載の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置。
【請求項6】
前記シングルスポット光を前記被測定物体の表面で移動させる走査手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置。
【請求項7】
前記シングルスポット光の前記走査手段を用いることにより、前記被測定物体の全体3次元形状を生成することを特徴とする請求項6に記載の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のラインCCD(charge coupled device)カメラを備えて被測定物体の3次元形状を計測する多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラインCCDカメラ(ラインCCDセンサ)を用いて物体の3次元形状を計測する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、互いに異なる位置に配置され、シングルスポット光の反射光をX軸上の異なる領域に集束する光学系と、互いに異なる位置に配置され、光学系によってX軸上の異なる領域に集束されたシングルスポット光の反射光をそれぞれ受光し、X軸上における輝度分布を表す第1及び第2の検出信号をそれぞれ出力するラインセンサと、シングルスポット光の反射光を、Y軸上に集束する光学系と、該光学系によってY軸上に集束された反射光を受光し、Y軸上における輝度分布を表す第3の検出信号を出力するラインセンサと、第1~第3の検出信号に基づいて、検出対象におけるシングルスポット光の照射位置に関する情報を求める演算処理部とを含む3次元計測システムが開示されており、請求項3には、ラインセンサがラインCCDセンサであってもよい旨が記載されている。
また、特許文献2には、撮像手段と、撮像手段によって被測定対象を撮像して得られた画像情報から被測定対象の座標情報を算出する演算手段とを有し、演算手段は、撮像手段によって被測定対象を撮像して得られた画像情報を、撮像手段に固有の誤差情報によって補正して補正画像情報を得る誤差補正手段と、補正画像情報から被測定対象の座標情報を算出する座標算出手段とを備える画像測定装置が開示されており、段落0024には、撮像手段のカメラがラインCCDセンサを有することが記載されている。
また、特許文献3には、任意の位置に移動可能な測定用点光源と、測定用点光源からの光を受光し、該測定用点光源の位置を検出する位置検出装置とを備え、位置検出装置を構成する第1光学系と第1ラインセンサとの間、および、第2光学系と第2ラインセンサとの間に、各ラインセンサの画素配列方向に間隔を隔てた少なくとも2つの基準線を有する透明な校正用基板が配置され、また、プローブ演算部において、各ラインセンサで検出される輝度分布信号および2つの基準線に基づく基準位置信号のうち、基準位置信号と対応するラインセンサの画素位置から、ラインセンサの熱膨張または移動に伴うシフト量を算出し、このシフト量を補正して測定用点光源の座標を演算する三次元測定システムが開示されており、段落0019には、ラインセンサの構成としてCCDを一列に配列した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-233759号公報
【特許文献2】特開2012-57996号公報
【特許文献3】特開2014-202691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3においては計測に用いるラインCCDカメラ(ラインCCDセンサ)を3台としているが、3台では測定対象物によっては陰になって計測できない箇所が生じることがある。
また、2台以上のカメラを用いたステレオ計測による3次元計測も知られているが、一般的なステレオ計測においては複数画像のマッチングが必要なため画像処理が難しい。
そこで本発明は、被測定物体の3次元形状を従来よりも精度よく計測する3次元計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載に対応した多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置においては、被測定物体にレーザ発振器からのレーザ光をシングルスポット光として照射し、被測定物体から反射された反射光を受光することにより、被測定物体の3次元形状を計測する装置であって、3台以上のラインCCD(charge coupled device)カメラで被測定物体からの反射光を1次元軸上で受光する光学系と、光学系で受光した1次元軸上における反射光輝度分布を表す検出信号から反射光の3次元的位置を演算する解析手段とを具備し、解析手段は、被測定物体を2次元平面に投影して解析する透視投影モデルの解析において、3台以上のラインCCDカメラを組み合わせてワールド座標系からカメラ座標系へ変換し、さらにカメラ座標系から計測点の3次元座標を算出することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、3台以上のラインCCDカメラを使用した透視投影モデルの解析により被測定物体の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、透視投影モデルの解析としてDLT(Direct Linear Translation)法のアルゴリズムを用いた解析手段を備えたことを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、計測点の3次元座標をDLT法により算出することができる。
【0007】
請求項3記載の本発明は、ラインCCDカメラをN(N≧4)台具備し、解析手段は、N台のラインCCDカメラそれぞれの平面の式のうち二つの平面の式を用いてカメラ光線を求め、他の一つの平面の式とカメラ光線との交点を求めることで計測点の3次元座標を算出することを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、計測の精度とロバスト性を向上させることができる。
【0008】
請求項4記載の本発明は、解析手段は、平面の式の組み合わせを変えて計測点の3次元座標を複数回算出し、複数回算出することにより蓄積した計測点の情報に統計処理を加えて計測点の3次元座標を決定することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、さらに計測の精度とロバスト性を向上させることができる。
【0009】
ラインCCDカメラをN(N≧4)台具備し、N台のラインCCDカメラにより被測定物体を少なくとも2方向から撮影することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、従来は陰になって計測できなかった箇所も含めて計測できるため、計測の精度とロバスト性を向上させることができる。
【0010】
請求項6記載の本発明は、シングルスポット光を被測定物体の表面で移動させる走査手段を具備することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、シングルスポット光を走査させることにより計測効率を高めることができる。
【0011】
請求項7記載の本発明は、シングルスポット光の走査手段を用いることにより、被測定物体の全体3次元形状を生成することを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、被測定物体の全体の3次元形状を短時間で得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置によれば、3台以上のラインCCDカメラを使用した透視投影モデルの解析により被測定物体の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0013】
また、透視投影モデルの解析としてDLT(Direct Linear Translation)法のアルゴリズムを用いた解析手段を備えた場合には、計測点の3次元座標をDLT法により算出することができる。
【0014】
また、ラインCCDカメラをN(N≧4)台具備し、解析手段は、N台のラインCCDカメラそれぞれの平面の式のうち二つの平面の式を用いてカメラ光線を求め、他の一つの平面の式とカメラ光線との交点を求めることで計測点の3次元座標を算出する場合には、計測の精度とロバスト性を向上させることができる。
【0015】
また、解析手段は、平面の式の組み合わせを変えて計測点の3次元座標を複数回算出し、複数回算出することにより蓄積した計測点の情報に統計処理を加えて計測点の3次元座標を決定する場合には、計測の精度とロバスト性をさらに向上させることができる。
【0016】
また、ラインCCDカメラをN(N≧4)台具備し、N台のラインCCDカメラにより被測定物体を少なくとも2方向から撮影する場合には、従来は陰になって計測できなかった箇所も含めて計測できるため、計測の精度とロバスト性を向上させることができる。
【0017】
また、シングルスポット光を被測定物体の表面で移動させる走査手段を具備する場合には、シングルスポット光を走査させることにより計測効率を高めることができる。
【0018】
また、シングルスポット光の走査手段を用いることにより、被測定物体の全体3次元形状を生成する場合には、被測定物体の全体の3次元形状を短時間で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置の構成図
図2】同レーザ発振器の構成図
図3】エリアCCDカメラとラインCCDカメラの違いを示す図
図4】球面レンズによる集光とセミシリンドリカルレンズによる集光の違いを示す図
図5】ラインCCDカメラで受光した輝度分布を示す図
図6】本発明の実施形態による多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置の動作を示すフローチャート
図7】同計測点の3次元座標の算出方法に用いる一般化透視投影モデルを示す図
図8】同平面の式を用いて計測点の3次元座標を算出するイメージ図
図9】同3次元計測装置を水槽に設置した状態を示す概略図
図10】同実際の計測に用いた3次元計測装置の3Dモデルを示す図
図11】同実際の計測に用いた3次元計測装置の写真
図12】同プロペラの翼形状計測結果の比較図
図13】同プロペラの翼端付近におけるキャビテーション形状計測結果の比較図
図14】同3次元計測装置を用いたプロペラの翼端渦キャビテーションの形状計測結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態による多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置について説明する。
図1は本実施形態による多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置の構成図、図2はレーザ発振器の構成図である。
多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置(以下、単に「3次元計測装置」という場合がある。)は、レーザ発振器10と、複数の光学系20と、複数のラインCCDカメラ30と、解析手段(解析装置)40と、制御手段50と、走査手段(レーザ走査装置)51を備える。解析手段40及び制御手段50には、例えばコンピュータを用いることができる。
【0021】
レーザ発振器10は、レーザ光をシングルスポット光Lとして発生させ、シングルスポット光Lをプロペラ等の被測定物体1に照射する。
制御手段50は、走査手段51に対して制御信号を送信し、シングルスポット光Lを被測定物体1の表面で移動させる走査を制御する。被測定物体1上をシングルスポット光Lで走査することにより、計測効率を高めることができる。
また、走査手段51を用いて被測定物体1上にシングルスポット光Lをくまなく走査させることで、被測定物体1の全体3次元形状を短時間で生成することもできる。
図2に示すように、レーザ発振器10は、レーザ発振部11と、第一ミラー12と、第二ミラー13を備える。
レーザ発振部11は、所定径のレーザビームを発生する。レーザの発振波長は、使用環境や被測定物体1の物性等に応じて適宜選択する。
第一ミラー12は、例えば、Y軸を回転軸として往復回転運動することにより、レーザ発振部11から出射したレーザ光をXZ平面上において偏向する。第二ミラー13は、例えば、X軸を回転軸として往復回転運動することにより、第一ミラー12から反射されたレーザ光をYZ平面上において偏向する。これにより、レーザ光が被測定物体1に照射される。
なお、第一ミラー12及び第二ミラー13には、電気制御可能なミラーを使用する。電気制御可能なミラーとしては、例えば、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等がある。
【0022】
各光学系20は、セミシリンドリカルレンズを有し、シングルスポット光Lの反射光を1次元軸上に集束する。
各ラインCCDカメラ30は、光学系20で集束された反射光を受光し、1次元軸上における反射光輝度分布を表す検出信号を出力する。
解析手段40は、ラインCCDカメラ30が出力した検出信号から計測点P(シングルスポット光Lの照射位置)の3次元的位置を解析アルゴリズムにより演算する。
【0023】
ここで、図3はエリアCCDカメラとラインCCDカメラの違いを示す図であり、図3(a)はエリアCCDカメラ、図3(b)はラインCCDカメラである。エリアCCDカメラはCCD素子100が縦横に配列されているのに対し、ラインCCDカメラ30はCCD素子100が横一列に配列されている。ラインCCDカメラ30は、平面を走査しないため速度が速く分解能が高いという特長がある。
また、図4は球面レンズによる集光とセミシリンドリカルレンズによる集光の違いを示す図であり、図4(a)は球面レンズ、図4(b)はセミシリンドリカルレンズである。図5はラインCCDカメラで受光した輝度分布を示す図である。球面(半球)レンズは、3次元空間の全ての場所の起点を焦点として1点に集光する。一方セミシリンドリカルレンズ(半円筒レンズ)は、ある3次元空間の2次元平面の輝点をラインCCDカメラ30の1軸上に集光し、この時の受光した輝点の輝度分布は図5に示すように表れる。
【0024】
図6は本実施形態による多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置の動作を示すフローチャートである。
計測を開始すると、走査手段51は、レーザ発振器10からシングルスポット光Lを被測定物体1に照射する(ステップS1)。
次に、シングルスポット光Lを照射した被測定物体1から反射された反射光を、各光学系20で集束して各ラインCCDカメラ30で検出する(ステップS2)。これにより、1次元軸上における反射光輝度分布を表す検出信号が取得される。
【0025】
解析手段40は、透視投影モデルに基づいて被測定物体1における反射光の3次元座標を算出する(ステップS3)。ステップS3における3次元座標の算出方法については後述する。
次に、解析手段40は、被測定物体1における他の点を計測するかを判断する(ステップS4)。ステップS4における判断は、例えば、計測すべき点として予め入力されている点が残っているか否かにより行う。
まだ計測すべき点が残っている等により、他の点を計測する(Yes)と解析手段40が判断した場合、制御手段50は、走査手段51にシングルスポット光Lの投影位置を移動させ(ステップS5)、再びステップS1を実行する。
一方、もう計測すべき点が残っていない等により、他の点を計測しない(No)と解析手段40が判断した場合は、ステップS6へ移行する。
【0026】
ステップS6において、解析手段40は、収集された反射光の3次元座標に基づいて、被測定物体1の全体の3次元座標情報を算出し、画像データを生成する。
解析手段40が生成した画像データはモニタ等の表示手段(図示略)に送信され、表示手段に被測定物体1の画像が表示される。
【0027】
図7は計測点の3次元座標の算出方法に用いる一般化透視投影モデルを示す図である。
解析手段40は、被測定物体1を2次元平面に投影して解析する透視投影モデルの解析として、例えば、DLT(Direct Linear Translation)法のアルゴリズムを用いる。この場合、3台のラインCCDカメラ30の画像(検出信号)を組み合わせることで計測点Pの画像座標を構築し、その2次元座標からDLT法を用いて3次元座標を算出する。
カメラ座標系は、カメラに固定された座標系であり、横方向をX、縦方向をY、奥行方向をZとし、カメラのレンズ中心を原点としている。また、ワールド座標系は、被測定物体1が存在する空間に設定する座標系である。カメラ座標系とワールド座標系の関係式を下式(1)に示す。
【数1】
ここで、Rは回転行列、tは平行移動ベクトルである。
また、下式(2)、(3)はDLT法の基本式である。
【数2】
【数3】
ここで、LからL11はカメラパラメータである。
【0028】
DLT法では、計測作業を行う前に、カメラパラメータ推定作業であるキャリブレーションを行う必要がある。このとき、コントロールポイントと呼ばれるキャリブレーション用の既知のワールド座標と、計測されたコントロールポイントのカメラ座標との対応から、式(2)、(3)のカメラパラメータL~L11を推定する。カメラパラメータL~L11の推定には最小二乗法を用いる。
カメラパラメータを推定しておくことで、上記ステップS3において、カメラ座標系からワールド座標系へ座標変換して計測点Pの3次元座標を算出することができる。
このように解析手段40は、透視投影モデルに基づき、3台以上のラインCCDカメラ30を組み合わせてワールド座標系からカメラ座標系へ変換し、さらにカメラ座標系から計測点Pの3次元座標を算出する。この3台以上のラインCCDカメラ30を使用した透視投影モデルの解析により被測定物体1の3次元形状を精度よく計測することができる。
【0029】
図8は平面の式を用いて計測点の3次元座標を算出するイメージ図である。
演算手段は、DLT法に代えて、あるいはDLT法と併用して、平面の式を用いた透視投影モデルの解析を行う。
ラインCCDカメラ30のカメラモデルは、下式(4)、(5)、(6)のように平面の式で表現できる。
【数4】
【数5】
【数6】
【0030】
3台以上のラインCCDカメラ30で被測定物体1からの反射光を受光し、その内2台のラインCCDカメラ30の二つの平面の式を組み合わせることでカメラ光線(直線)を求め、そのカメラ光線と別の1台のラインCCDカメラ30の平面の式との交点を求める。この交点が計測点Pの3次元座標となる。なお、カメラ光線は、一般的にカメラ(視点)からある点を見た場合の、視点からある点までの追跡光である。例えば、図7のカメラ座標系から(X,Y,Z)に延ばした矢印がカメラ光線となる。
この原理にしたがって、ラインCCDカメラ30の台数をN(N≧4)台とすることで平面の式を増やし、各計測点Pについての3次元座標の算出を平面の式の組み合わせを変えて複数回行うことにより、計測点Pの情報を増やすことができる。そして、計測点Pの3次元座標を複数回算出することにより蓄積した計測点Pの情報について統計処理を行い、例えば最大値、最小値、平均値、又は標準偏差等に基づいて計測点Pの3次元座標を決定する。
このようにラインCCDカメラ30の台数を4台以上とすること、計測点Pの情報について統計処理を行うことにより、計測の精度とロバスト性をさらに向上させることができる。
【0031】
図9は多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置を水槽に設置した状態を示す概略図であり、船舶のプロペラが入れられたキャビテーション水槽を上から見た状態を示している。
ラインCCDカメラ30は計6台であり、水槽2の一方側と他方側に3台ずつ分けて配置している。
水槽2の一方側においては、1台のレーザ発振器10と、3つの光学系20と、3台のラインCCDカメラ30を共通の第一架台60に取り付けて水槽2の近傍に設置し、水槽2の他方側においては、3つの光学系20と、3台のラインCCDカメラ30を共通の第二架台70に取り付けて水槽2の近傍に設置している。
回転しているプロペラ(被測定物体1)へレーザ発振器10からシングルスポット光Lを照射し、水槽2の両側に3台ずつ配置された6台のラインCCDカメラ30で反射光を受光し、プロペラやキャビテーション等の3次元形状を再現する。このとき、図9に示すようラインCCDカメラ30を4台以上用い、4台以上のラインCCDカメラ30により被測定物体1を少なくとも2方向から撮影することで、ラインCCDカメラ30が3台以下の場合、又は1方向から撮影する場合よりも多角的な撮影が可能となり、被測定物体1上の陰(死角)となる箇所を減らせるため、従来は計測できていなかった箇所も含めて計測でき、計測の精度とロバスト性を向上させることができる。
【0032】
次に、多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置を用いた実際の計測結果について説明する。
図10は実際の計測に用いた3次元計測装置の3Dモデルを示す図であり、図10(a)は斜視図、図10(b)は正面図である。図11は実際の計測に用いた3次元計測装置の写真である。
計測においては、4台のラインCCDカメラ30及び光学系20等を図10に示す配置とし、被測定物体1として、船舶の模型プロペラ(φ250mm)の形状と、キャビテーションの形状を撮影した。
【0033】
図12はプロペラの翼形状計測結果の比較図であり、図12(a)は従来の組合せラインCCD法による3次元計測装置の計測結果、図12(b)は本発明の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置の計測結果である。
なお、従来の組合せラインCCD法とは、被測定物体1にレーザを照射して、表面で散乱する光を3台のラインCCDカメラ30で撮影し、それぞれの撮影画像のピーク位置から計測点Pの3次元位置を算出する方法である。
また、下表1は二つの3次元計測装置の精度を比較したものである。
【表1】
図12及び表1より、本発明の3次元計測装置は、従来の組合せラインCCD法による3次元計測装置に比べて形状計測精度が大きく向上していることが分かる。
【0034】
図13はプロペラの翼端付近におけるキャビテーション形状計測結果の比較図であり、図13(a)は従来の組合せラインCCD法による3次元計測装置の計測結果、図13(b)は本発明の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置の計測結果である。なお、図13(a)、(b)中の左側にはキャビテーションを撮影した写真も併せて示している。
図13から、従来の組合せラインCCD法による3次元計測装置では捉えることのできない翼端付近のキャビテーションを、本発明の3次元計測装置ではしっかりと捉え形状を計測できていることが分かる。
【0035】
図14は本発明の多視点型ラインセンシング法による3次元計測装置を用いたプロペラの翼端渦キャビテーションの形状計測結果を示す図である。なお、図14中の上側には翼端渦キャビテーションを撮影した写真も併せて示している。
従来はプロペラの翼端渦キャビテーションの形状計測は困難であったが、本発明の3次元計測装置を用いれば、図14に示すように、プロペラの翼端渦キャビテーションの形状を計測することも可能である。
【0036】
このように、本発明の3次元計測装置は、従来の3次元計測装置よりも精度とロバスト性が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、キャビテーション水槽におけるプロペラ形状や変形量計測、キャビテーションの形状計測等に利用できる他、水中ロボットの距離センサや物体認識センサ等にも利用できる。また、その他、3次元計測であれば何にでも適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 被測定物体
10 レーザ発振器
20 光学系
30 ラインCCDカメラ
40 解析手段
51 走査手段
L シングルスポット光
P 計測点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14