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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076467
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】樹脂シートの成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20240530BHJP
   B30B 9/00 20060101ALI20240530BHJP
   H04R 7/02 20060101ALI20240530BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B29C43/34
B30B9/00 C
H04R7/02 D
H04R31/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187994
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 和幸
【テーマコード(参考)】
4F204
5D016
【Fターム(参考)】
4F204AA40
4F204AC03
4F204AG05
4F204AG28
4F204AH39
4F204FA01
4F204FB01
4F204FN11
4F204FN15
5D016AA08
5D016AA09
5D016CA01
5D016EC02
5D016JA03
(57)【要約】
【課題】成形体の品質の向上に寄与する樹脂シートの成形方法を実現する。
【解決手段】本開示の一形態に係る樹脂シート(5)の成形方法は、第1の予備成形型(10)と第2の予備成形型(20)とで樹脂シート(5)を挟み込み、後の本成形時に第1の本成形型(30)と第2の本成形型(40)とで凸部又は凹部が形成されて樹脂シート(5)が伸びやすい凹凸成形領域に対して前記樹脂シート(5)の周縁側の領域を引き込んで、樹脂シート(5)に弛み部(5a)を形成する予備成形工程と、第1の本成形型(30)と第2の本成形型(40)とで弛み部(5a)が形成された樹脂シート(5)を挟み込み、樹脂シート(5)の凹凸成形領域に弛み部(5a)を引き込みつつ成形体を成形する本成形工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートを成形型で所定の形状に成形する樹脂シートの成形方法であって、第1の予備成形型と第2の予備成形型とで樹脂シートを挟み込み、後の本成形時に第1の本成形型と第2の本成形型とで凸部又は凹部が形成されて前記樹脂シートが伸びやすい凹凸成形領域に対して前記樹脂シートの周縁側の領域を引き込んで、前記樹脂シートに弛み部を形成する予備成形工程と、
前記第1の本成形型と前記第2の本成形型とで前記弛み部が形成された樹脂シートを挟み込み、前記樹脂シートの前記凹凸成形領域に前記弛み部を引き込みつつ成形体を成形する本成形工程と、
を備える、樹脂シートの成形方法。
【請求項2】
前記予備成形工程において、前記樹脂シートにおける前記凸部又は前記凹部の周縁部を跨ぐように、前記弛み部を形成し、
前記本成形工程において、前記樹脂シートの前記弛み部を、前記第1の本成形型及び前記第2の本成形型における前記樹脂シートに前記凸部又は前記凹部の周縁部を形成する部分で挟み込んで、前記成形体を成形する、請求項1に記載の樹脂シートの成形方法。
【請求項3】
前記予備成形工程において、前記樹脂シートにおける前記凸部又は前記凹部の周縁部に対し、前記樹脂シートにおいて中心側となる領域に、前記周縁部に沿って前記弛み部を形成し、
前記本成形工程において、前記樹脂シートの前記弛み部を、前記第1の本成形型及び前記第2の本成形型における前記樹脂シートに前記凸部又は前記凹部を形成する部分で挟み込んで、前記成形体を成形する、請求項1に記載の樹脂シートの成形方法。
【請求項4】
前記予備成形工程において、前記樹脂シートにおける前記弛み部が形成される領域に対して前記第1の予備成形型と前記第2の予備成形型とで挟み込まれる前記樹脂シートの中心側の領域を拘束しつつ、前記樹脂シートにおける前記弛み部が形成される領域を含む前記樹脂シートの周縁側の領域を拘束しないように、前記第1の予備成形型と前記第2の予備成形型とを相対的に近づけて、前記樹脂シートにおける前記弛み部が形成される領域を含む前記樹脂シートの周縁側の領域を引き込んで、前記樹脂シートに前記弛み部を形成する、請求項1又は2に記載の樹脂シートの成形方法。
【請求項5】
前記弛み部は、波形状であり、
前記弛み部における前記樹脂シートの前記凹凸成形領域の側に配置される第1の部分の波形の振幅は、前記弛み部における前記第1の部分よりも前記樹脂シートの前記凹凸成形領域の側に対して、前記樹脂シートの周縁側に配置される第2の部分の波形の振幅に対して大きい、請求項4に記載の樹脂シートの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂シートの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スピーカーの振動板やフレームなどは、板状体を第1の成形型と第2の成形型とで挟み込んで成形している。このとき、例えば、特許文献1では、板状体を本成形しやすい半球状に予備成形した後に、板状体を第1の成形型と第2の成形型とで挟み込んで本成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-333685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂シートの板状体を第1の成形型と第2の成形型とで挟み込んで成形する場合、成形体に対応する成形型の凸部又は凹部の高さ(深さ)や形状によって樹脂シートが局所的に大きく引っ張られて厚さが不均一になり、成形体の品質が低下する課題を有する。
【0005】
本開示の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、成形体の品質の向上に寄与する樹脂シートの成形方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る樹脂シートの成形方法は、第1の予備成形型と第2の予備成形型とで樹脂シートを挟み込み、後の本成形時に第1の本成形型と第2の本成形型とで凸部又は凹部が形成されて前記樹脂シートが伸びやすい凹凸成形領域に対して前記樹脂シートの周縁側の領域を引き込んで、前記樹脂シートに弛み部を形成する予備成形工程と、
前記第1の本成形型と前記第2の本成形型とで前記弛み部が形成された樹脂シートを挟み込み、前記樹脂シートの前記凹凸成形領域に前記弛み部を引き込みつつ成形体を成形する本成形工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、成形体の品質の向上に寄与する樹脂シートの成形方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、一般的なスピーカーの振動板をZ軸+側から見た図であり、(b)は、一般的なスピーカーの振動板のYZ断面図である。
図2】実施の形態1の樹脂シートの成形方法での予備成形工程を示す図である。
図3】実施の形態1の樹脂シートの成形方法の各工程での当該樹脂シートの形状を示す図である。
図4】実施の形態1の樹脂シートの成形方法での予備成形工程後の当該樹脂シートの一部を示す斜視図である。
図5】実施の形態1の樹脂シートの成形方法での本成形工程を示す図である。
図6】実施の形態1の樹脂シートの成形方法での異なる本成形工程を示す図である。
図7】実施の形態1の樹脂シートの成形方法の各工程後の異なる樹脂シートの形状を示す図である。
図8】実施の形態2の樹脂シートの成形方法での各工程後の当該樹脂シートの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を適用したスピーカーの振動板における具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではなく、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。また、説明を明確にするため、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する。ここで、三次元座標系は、振動板基準であり、Z軸+側がスピーカーから音が出力される放音方向である。
【0010】
<本開示に至る経緯>
図1(a)は、一般的なスピーカーの振動板をZ軸+側から見た図であり、図1(b)は、一般的なスピーカーの振動板のYZ断面図である。振動板1は、例えば、図1(a)及び図1(b)に示すように、Z軸+側に凸形状のドーム部2、ドーム部2と連続するように形成されたコーン部3、及びコーン部3と連続するように形成されたフランジ部4を備えている。振動板1は、中心軸AX1を有し、軸対称の形状であり、例えば、円、楕円、四角、星型などの形状が含まれる。
【0011】
ドーム部2は、例えば、図1(a)及び図1(b)に示すように、Z軸方向から見て略円形状であり、所定の曲率でZ軸+側に突出する凸部である。コーン部3は、例えば、Z軸方向から見て略円環形状であり、ドーム部2を囲むように配置されている。
【0012】
コーン部3は、図1(b)に示すように、Z軸+側に突出する凸部であり、振動板1の径方向外側に向かうのに従ってZ軸+側に向かう湾曲部3a、及び湾曲部3aの径方向外側の周縁部からZ軸-側に突出する円筒形状の立ち上がり部3bを備えている。フランジ部4は、図1及び図2に示すように、コーン部3から振動板1の径方向外側に突出しており、XY平面と略平行な平坦部である。
【0013】
このような振動板1は、例えば、PEI(ポリエーテルイミド)などから成る樹脂シートを第1の成形型と第2の成形型とで挟み込んで成形する。このとき、振動板1におけるZ軸方向に高さを有する箇所やその周辺(例えば、図1(b)に示すような、コーン部3の立ち上がり部3bの第1の領域A1、ドーム部2とコーン部3との境界部分の第2の領域A2、ドーム部2の中腹部分の第3の領域A3など)で、樹脂シートが中心軸AX1に向かって引っ張られるとともに第1の成形型と第2の成形型とに挟まれることで樹脂シートが摩擦により拘束(固定)されて、樹脂シートが伸ばされて薄くなる場合がある。
【0014】
これにより、薄くなった部分が他の部分に対して強度が弱くなり、つまり、脆弱部が発生し、想定とは異なる動作をする可能性があり、振動板1の品質が低下する場合がある。そこで、本開示では、例えば、振動板1の品質の向上に寄与する樹脂シートの成形方法を実現する。
【0015】
<実施の形態1>
本実施の形態の樹脂シートの成形方法は、例えば、振動板1の第1の領域A1での脆弱部の発生を抑制するために好適である。図2は、本実施の形態の樹脂シートの成形方法での予備成形工程を示す図である。図3は、本実施の形態の樹脂シートの成形方法の各工程での当該樹脂シートの形状を示す図であり、上段に予備成形工程前の樹脂シートを示し、中段に予備成形工程後の樹脂シートを示し、下段に本成形工程後の樹脂シートを示している。図4は、本実施の形態の樹脂シートの成形方法での予備成形工程後の当該樹脂シートの一部を示す斜視図である。なお、図2及び図3では、振動板1の中心軸AX1がY軸-側に配置されることになる。
【0016】
先ず、図2に示すように、樹脂シート5を第1の予備成形型10と第2の予備成形型20とで挟み込んで熱プレスする予備成形工程を行う。ここで、本実施の形態では、図2に示すように、図1(b)の形態に対してZ軸+側を紙面の上下で反転させた状態で、樹脂シート5に対して予備成形工程を行う。
【0017】
第1の予備成形型10は、例えば、樹脂シート5を予備成形するためのZ軸-側の型を成す。第1の予備成形型10は、凹凸部11、第1の平坦部12、凹部13及び第2の平坦部14を第1の予備成形型10のZ軸+側の面に備えている。
【0018】
凹凸部11は、例えば、Z軸方向から見て略円環形状であり、凹凸部11の径方向に拡がる略波紋形状である。凹凸部11は、例えば、図2に示すように、凹凸部11の周方向から見て当該凹凸部11の径方向内側に向かうのに従って波形の振幅が大きくなる波形状であるとよい。
【0019】
第1の平坦部12は、図2に示すように、凹凸部11に対して当該凹凸部11の径方向内側に配置されており、凹凸部11と連続している。第1の平坦部12は、例えば、Z軸方向から見て略円形状であり、XY平面と略平行である。
【0020】
凹部13は、図2に示すように、凹凸部11に対して当該凹凸部11の径方向外側に配置されており、凹凸部11と連続している。凹部13は、例えば、Z軸方向から見て略円環形状であり、第1の平坦部12に対してZ軸-側に窪んでいる。
【0021】
第2の平坦部14は、図2に示すように、凹部13に対して当該凹部13の径方向外側に配置されており、凹部13と連続している。第2の平坦部14は、例えば、Z軸方向から見て略環形状であり、XY平面と略平行である。
【0022】
このとき、第1の平坦部12と第2の平坦部14とは、振動板1のドーム部2とコーン部3との境界部分と、フランジ部4と、をZ軸方向で略等しい高さに配置するために、図2に示すように、Z軸方向において略等しい高さに配置されている。ここで、凹凸部11は、詳細な効果は後述するが、第1の平坦部12及び第2の平坦部14に対して、Z軸+側に配置されているとよい。
【0023】
第2の予備成形型20は、図2に示すように、樹脂シート5を予備成形するためのZ軸+側の型を成す。第2の予備成形型20は、凹凸部21、第1の平坦部22及び第2の平坦部23を第2の予備成形型20のZ軸-側の面に備えている。
【0024】
凹凸部21は、例えば、Z軸方向から見て略円環形状であり、凹凸部21の径方向に拡がる略波紋形状である。凹凸部21は、例えば、図2に示すように、凹凸部21の周方向から見て当該凹凸部21の径方向内側に向かうのに従って波形の振幅が大きくなる波形状であるとよく、第1の予備成形型10の凹凸部11の波形状と対応している。
【0025】
このとき、後述するように、樹脂シート5を第1の予備成形型10と第2の予備成形型20とで挟み込んだ際に、樹脂シート5を第1の予備成形型10の凹凸部11と第2の予備成形型20の凹凸部21とで摩擦によって拘束(固定)しないように、第1の予備成形型10の凹凸部11及び第2の予備成形型20の凹凸部21が形成されている。
【0026】
例えば、図2に示すように、樹脂シート5を第1の予備成形型10と第2の予備成形型20とで挟み込んだ際に、第1の予備成形型10の凹凸部11と第2の予備成形型20の凹凸部21との間に、樹脂シート5の厚さより大きい隙間が確保されるように、第1の予備成形型10の凹凸部11及び第2の予備成形型20の凹凸部21が形成されている。
【0027】
第1の平坦部22は、図2に示すように、凹凸部21に対して当該凹凸部21の径方向内側に配置されており、凹凸部21と連続している。第1の平坦部22は、例えば、Z軸方向から見て略円形状であり、XY平面と略平行である。
【0028】
第2の平坦部23は、図2に示すように、凹凸部21に対して当該凹凸部21の径方向外側に配置されており、凹凸部21と連続している。第2の平坦部23は、例えば、Z軸方向から見て略環形状であり、XY平面と略平行である。このとき、第1の平坦部22と第2の平坦部23とは、Z軸方向において略等しい高さに配置されている。
【0029】
このような第1の予備成形型10と第2の予備成形型20とを用いて、図3の上段に示すような平坦な樹脂シート5を挟み込んだ場合(例えば、第1の予備成形型10を図2の紙面下側に向かって移動させて樹脂シート5を挟み込んだ場合)、樹脂シート5が第1の予備成形型10の第1の平坦部12と第2の予備成形型20の第1の平坦部22、及び第1の予備成形型10の第2の平坦部14と第2の予備成形型20の第2の平坦部23とで挟み込まれて拘束(固定)される。
【0030】
それと共に、第1の予備成形型10の凹凸部11と第2の予備成形型20の凹凸部21との間に樹脂シート5が配置され、樹脂シート5が第1の予備成形型10の凹凸部11に沿って、樹脂シート5に弛み部5aが形成される。
【0031】
このとき、樹脂シート5の弛み部5aは、樹脂シート5における後の本成形時に振動板1のコーン部3の立ち上がり部3bのような凸部又は凹部が形成されて樹脂シート5が伸びやすい領域に該当する凹凸成形領域(コーン部3の立ち上がり部3bとその周辺が形成される領域)に形成される。弛み部5aは、凹凸成形領域に対して外側の樹脂シート5の周縁側の領域を引き込んで形成する。ここで、樹脂シート5の周縁は、成形後に形状をなす領域の外側にある余白領域(不要領域)を示す。
【0032】
ここで、第1の予備成形型10の凹凸部11と第2の予備成形型20の凹凸部21との間、及び第1の予備成形型10の凹部13と第2の予備成形型20の第2の平坦部23との間に樹脂シート5が配置される。樹脂シート5を第1の予備成形型10と第2の予備成形型20とで挟み込んだ際に、第1の予備成形型10の凹凸部11と第2の予備成形型20の凹凸部21との間に、樹脂シート5の厚さより大きい隙間を確保し、更に凹部13は、第1の平坦部12に対してZ軸-側に窪ませているため、樹脂シート5における弛み部5aが形成される領域を含む外側の領域は、拘束(固定)されず、図3の中段に示す矢印のように、当該外側の領域の樹脂シート5の材料を径方向内側に引き込みつつ弛み部5aを形成することができる。
【0033】
これにより、樹脂シート5における弛み部5aが形成される領域の材料が引き延ばされることを抑制しつつ、図4に示すように、Z軸方向から見て略波紋形状の弛み部5aを形成することができる。
【0034】
このとき、樹脂シート5における第1の予備成形型10の第2の平坦部14と第2の予備成形型20の第2の平坦部23とで挟み込まれる領域は、大凡、本成形後に振動板1を形成するために除去される不要部分であるとよい。これにより、樹脂シート5における振動板1となる領域の材料が引き延ばされることを、より抑制できる。
【0035】
また、第1の予備成形型10の凹凸部11及び第2の予備成形型20の凹凸部21は、凹凸部11、21の周方向から見て、凹凸部11、21の径方向内側に向かうのに従って波形の振幅が大きくなる波形状である。
【0036】
そのため、第1の予備成形型10と第2の予備成形型20とを相対的に近づけた際に、第1の予備成形型10における凹凸部11の径方向内側の凸部11aが、先ず、樹脂シート5に接触して弛み部5aが形成される領域に対して外側の領域を当該領域の側に大きく引き寄せることができる。これにより、樹脂シート5における弛み部5aが形成される領域の材料が引き延ばされることを、さらに抑制できる。
【0037】
ここで、本実施の形態では、詳細な機能については後述するが、樹脂シート5における振動板1のコーン部3の周縁部が形成される領域、即ち、樹脂シート5における振動板1のコーン部3が形成される領域とフランジ部4が形成される領域との境界部分を跨ぐように、弛み部5aが形成している。
【0038】
図5は、本実施の形態の樹脂シートの成形方法での本成形工程を示す図である。なお、図5では、振動板1の中心軸AX1がY軸-側に配置されることになる。図5に示すように、第1の本成形型30と第2の本成形型40とで弛み部5aが形成された樹脂シート5を挟み込んで熱プレスする本成形工程を行う。ここで、本実施の形態では、図5に示すように、図1(b)の形態に対してZ軸+側を紙面の上下で反転させた状態で、樹脂シート5に対して本成形工程を行う。
【0039】
第1の本成形型30は、図5に示すように、樹脂シート5を本成形するためのZ軸-側の型を成す。第1の本成形型30は、第1の凸部31、第2の凸部32及び平坦部33を第1の本成形型30のZ軸+側の面に備えている。第1の凸部31は、例えば、Z軸方向から見て略円形状であり、Z軸+側に凸形状である。第1の凸部31は、振動板1のドーム部2のZ軸-側の面形状に対応している。
【0040】
第2の凸部32は、図5に示すように、第1の凸部31の径方向外側に配置されており、第1の凸部31と連続している。第2の凸部32は、例えば、Z軸方向から見て略円環形状であり、Z軸+側に凸形状である。第2の凸部32は、振動板1のコーン部3のZ軸-側の面形状に対応している。平坦部33は、第2の凸部32の径方向外側に配置されており、第2の凸部32と連続している。平坦部33は、例えば、Z軸方向から見て環形状であり、XY平面と略平行である。
【0041】
第2の本成形型40は、図5に示すように、樹脂シート5を本成形するためのZ軸+側の型を成す。第2の本成形型40は、第1の凹部41、第2の凹部42及び平坦部43を第2の本成形型40のZ軸-側の面に備えている。第1の凹部41は、例えば、Z軸方向から見て略円形状であり、Z軸+側に凹形状である。第1の凹部41は、振動板1のドーム部2のZ軸+側の面形状に対応している。
【0042】
第2の凹部42は、図5に示すように、第1の凹部41の径方向外側に配置されており、第1の凹部41と連続している。第2の凹部42は、例えば、Z軸方向から見て略円環形状であり、Z軸+側に凹形状である。第2の凹部42は、振動板1のコーン部3のZ軸+側の面形状に対応している。
【0043】
つまり、第1の予備成形型10の第1の平坦部12と、第2の予備成形型20の第1の平坦部22と、第1の本成形型30の第1の凸部31及び第2の凸部32と、第2の本成形型40の第1の凹部41及び第2の凹部42と、は振動板1のドーム部2及びコーン部3を形成するために対応して配置されている。
【0044】
そして、第1の予備成形型10の凹凸部11と、第2の予備成形型20の凹凸部21と、第1の本成形型30の第2の凸部32の側壁部32aと、第2の本成形型40の第2の凹部42の側壁部42aと、は振動板1のコーン部3の立ち上がり部3bを形成するために対応して配置されている。
【0045】
平坦部43は、図5に示すように、第2の凹部42の径方向外側に配置されており、第2の凹部42と連続している。平坦部43は、例えば、Z軸方向から見て環形状であり、XY平面と略平行である。このとき、第1の予備成形型10の第2の平坦部14と、第2の予備成形型20の第2の平坦部23と、第1の本成形型30の平坦部33と、第2の本成形型40の平坦部43と、は振動板1のフランジ部4を形成するために対応して配置されている。
【0046】
このような第1の本成形型30と第2の本成形型40とを用いて、図3の中段に示すような弛み部5aが形成された樹脂シート5を挟み込んだ場合(例えば、第1の本成形型30を図3の紙面下側に向かって移動させて樹脂シート5を挟み込んだ場合)、第1の本成形型30の第1の凸部31と第2の本成形型40の第1の凹部41とが嵌め合わされ、第1の本成形型30の第2の凸部32と第2の本成形型40の第2の凹部42とが嵌め合わされる。そして、第1の本成形型30の平坦部33と第2の本成形型40の平坦部43とが突き合わされる。
【0047】
このとき、第1の本成形型30の第2の凸部32と第2の本成形型40の第2の凹部42とが嵌め合わされる際に、樹脂シート5における振動板1のコーン部3の立ち上がり部3bが形成されることによって本成形時に本成形型で凸部又は凹部が形成されて樹脂シート5が伸びやすい凹凸成形領域に弛み部5aが引き込まれつつ、樹脂シート5が図3の下段に示すような所定の形状の成形体6に成形される。
【0048】
このように本成形時に樹脂シート5が伸びやすい凹凸成形領域に弛み部5aを引き込みつつコーン部3の立ち上がり部3bを形成するので、当該立ち上がり部3bの厚さが薄くなることを抑制できる。そのため、振動板1のコーン部3の立ち上がり部3bが脆弱部になることを抑制できる。
【0049】
これにより、本実施の形態の樹脂シート5の成形方法で成形した成形体6を振動板1として加工した後に機能させた際に、想定に近い動作をさせることができる振動板1を実現することができ、振動板1の品質を向上させることができる。
【0050】
また、上述のように、第1の予備成形型10の凹凸部11が第1の平坦部12及び第2の平坦部14に対してZ軸+側に配置されているため、弛み部5aが他の部分に対して、第1の本成形型30の第2の凸部32の凸方向及び第2の本成形型40の第2の凹部42の凹方向と等しいZ軸+側に突出している。そのため、本成形する際に樹脂シート5の無駄な動きを抑制することができ、成形し易い。
【0051】
ここで、図5に示すように、第1の本成形型30における第2の凸部32の径方向外側であって、且つZ軸+側の端部E1と、第2の本成形型40における第2の凹部42の径方向外側であって、且つZ軸-側の端部E2と、で樹脂シート5の弛み部5aの頂部T1を挟み込んで本成形を行うとよい。
【0052】
これにより、第1の本成形型30と第2の本成形型40とを相対的に近づけた際に、樹脂シート5における弛み部5aの頂部T1から当該弛み部5aの径方向内側に向かうのに従ってZ軸+側に向かって傾斜する部分5bを、第1の本成形型30の第2の凸部32の側壁部32aと、第2の本成形型40の第2の凹部42の側壁部42aと、の間に導きつつ、本成形時に樹脂シート5が伸びやすい凹凸成形領域に弛み部5aを良好に引き込むことができる。
【0053】
このように本実施の形態の樹脂シート5の成形方法は、樹脂シート5における後の本成形時に振動板1のコーン部3の立ち上がり部3bが形成されることによって本成形時に樹脂シート5が伸びやすい凹凸成形領域に対して外側の領域を引き込んで弛み部5aを形成し、凹凸成形領域に弛み部5aを引き込みつつ成形体6を成形する。
【0054】
これにより、振動板1(成形体6)のコーン部3の立ち上がり部3bの厚さが薄くなることを抑制でき、その結果、当該立ち上がり部3bが脆弱部になることを抑制できる。したがって、本実施の形態の樹脂シート5の成形方法は、当該成形方法によって成形された成形体6を振動板1として加工した後に機能させた際に、想定に近い動作をさせることができる振動板1を実現することができ、振動板1の品質を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、図5に示すように、第1の本成形型30における第2の凸部32の径方向外側であって、且つZ軸+側の端部E1と、第2の本成形型40における第2の凸部32の径方向外側であって、且つZ軸-側の端部E2と、で樹脂シート5の弛み部5aの頂部T1を挟み込んでいるが、この限りでない。
【0056】
例えば、図6に示すように、第1の本成形型30における第2の凸部32の径方向外側であって、且つZ軸+側の端部E1と、第2の本成形型40における第2の凹部42の径方向外側であって、且つZ軸-側の端部E2と、で樹脂シート5の弛み部5aにおける最も径方向内側に配置される底部B1を挟み込んでもよい。
【0057】
これにより、第1の本成形型30の第2の凸部32の凸方向と、第2の本成形型40の第2の凹部42の凹方向と、樹脂シート5の弛み部5aの底部B1の凹方向と、を一致させることができる。なお、図6では、振動板1の中心軸AX1がY軸-側に配置されることになる。
【0058】
そのため、第1の本成形型30と第2の本成形型40とを相対的に近づけた際に、樹脂シート5における弛み部5aの底部B1を当該弛み部5aの径方向で挟む両側の部分5c、5dが、第1の本成形型30における第2の凸部32の径方向外側であって、且つZ軸+側の端部E1を跨いだ状態で当該底部B1をZ軸+側に押し込み、本成形時に樹脂シート5が伸びやすい凹凸成形領域に弛み部5aを良好に引き込むことができる。
【0059】
また、第1の本成形型30における第2の凸部32の径方向外側であって、且つZ軸+側の端部E1と、第2の本成形型40における第2の凹部42の径方向外側であって、且つZ軸-側の端部E2と、で樹脂シート5の弛み部5aにおける径方向外側の周縁部を挟み込んでもよい。
【0060】
このとき、弛み部5aは、図7に示すように、樹脂シート5における振動板1のコーン部3の周縁部が形成される領域に対して内側領域に当該周縁部に沿って形成される。ここで、図7は、上段に予備成形工程後の樹脂シートを示し、下段に本成形工程後の樹脂シートを示している。なお、図7では、振動板1の中心軸AX1がY軸-側に配置されることになる。
【0061】
これにより、第1の本成形型30と第2の本成形型40とを相対的に近づけた際に、樹脂シート5における弛み部5aを、第1の本成形型30の第2の凸部32の側壁部32aと、第2の本成形型40の第2の凹部42の側壁部42aと、の間に導きつつ、本成形時に樹脂シート5が伸びやすい凹凸成形領域に弛み部5aを良好に引き込むことができる。
【0062】
<実施の形態2>
本実施の形態の樹脂シートの成形方法は、例えば、振動板1の第2の領域A2での脆弱部の発生を抑制するために好適である。図8は、本実施の形態の樹脂シートの成形方法での各工程後の当該樹脂シートの形状を示す図であり、上段に予備成形工程後の樹脂シートを示し、下段に本成形工程後の樹脂シートを示している。
【0063】
本実施の形態では、図8に示すように、樹脂シート5における振動板1のドーム部2が形成される領域とコーン部3が形成される領域との境界部分を跨ぐように、弛み部5aを形成する。このとき、例えば、樹脂シート5における振動板1のドーム部2とコーン部3との境界部分の凹部7が形成される領域を跨ぐように弛み部5aが配置されているとよい。
【0064】
そして、第1の本成形型30と第2の本成形型40とで弛み部5aが形成された樹脂シート5を挟み込んで熱プレスする本成形工程を行う。このとき、第1の本成形型30の第2の凸部32と第2の本成形型40の第2の凹部42とが嵌め合わされる際に、樹脂シート5における振動板1のドーム部2とコーン部3との境界部分が形成されることによって本成形時に樹脂シート5が伸びやすい凹凸成形領域に弛み部5aが引き込まれつつ、樹脂シート5が所定の形状の成形体8に成形される。
【0065】
このように本成形時に樹脂シート5が伸びやすい凹凸成形領域に弛み部5aを引き込みつつドーム部2及びコーン部3を形成するので、ドーム部2とコーン部3との境界部分の厚さが薄くなることを抑制できる。そのため、振動板1のドーム部2とコーン部3の境界部分が脆弱部となることを抑制できる。
【0066】
したがって、本実施の形態の樹脂シート5の成形方法で成形した成形体8を振動板1として加工した後に機能させた際も、想定に近い動作をさせることができる振動板1を実現することができ、振動板1の品質を向上させることができる。
【0067】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0068】
例えば、上記実施の形態の第1の予備成形型10、第2の予備成形型20、第1の本成形型30及び第2の本成形型40は、例示であり、振動板の形状に応じて、適宜、変更することができる。
【0069】
例えば、振動板のドーム部2の中腹部分の第3の領域A3の厚さが薄くなることを抑制する場合は、樹脂シート5における振動板1のドーム部2の麓部分が形成される領域に弛み部5aを形成するとよい。なお、弛み部5aは、第1の本成形型と第2の本成形型とを相対的に近づけた際に、本成形時に樹脂シート5が伸びやすい凹凸成形領域に引き込まれるように配置されていればよい。このとき、凹凸成形領域(第1の凹凸成形領域)に対して内側に他の凹凸成形領域(第2の凹凸成形領域)が存在する場合、第2の凹凸成形領域にも弛み部5aが引き込まれるように、弛み部5aが配置されるとよい。
【0070】
例えば、上記実施の形態では、樹脂シート5に弛み部5aを形成する際に、第1の予備成形型10の第2の平坦部14と第2の予備成形型20の第2の平坦部23とで樹脂シート5を拘束しているが、第1の予備成形型10の凹凸部11と第2の予備成形型20の凹凸部21とで弛み部5aを良好に形成することができる場合、第1の予備成形型10の第2の平坦部14と第2の予備成形型20の第2の平坦部23とで樹脂シート5を拘束する必要はない。
【0071】
例えば、上記実施の形態の樹脂シートの成形方法は、振動板1を形成するための成形体を成形しているが、製品形態は限定されない。
【0072】
第1の予備成形型10の凹凸部11と第2の予備成形型20の凹凸部21において、樹脂シート5が引き延ばされて薄くなることをより軽減するため、いずれか一方の凹凸部の凸部又は凹部の形状(曲率)を他方の凹凸部の凹部又は凸部の形状よりもゆるく(小さく)してもよい。
【0073】
例えば、上記実施の形態では、図1(b)の形態に対してZ軸+側を紙面の上下で反転させた状態で、樹脂シート5に対して予備成形工程及び本成形工程を行っているが、Z軸+側を反転させることなく、樹脂シート5に対して予備成形工程及び本成形工程を行ってもよく、また、いずれか一方の工程を行ってもよい。
【符号の説明】
【0074】
5 樹脂シート、5a 弛み部
6、8 成形体
7 凹部
10 第1の予備成形型
20 第2の予備成形型
30 第1の本成形型
40 第2の本成形型
B1 弛み部の底部
T1 弛み部の頂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8