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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076469
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】加熱炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/04 20060101AFI20240530BHJP
   F27D 7/04 20060101ALI20240530BHJP
   F23C 9/00 20060101ALI20240530BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240530BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20240530BHJP
   F27B 9/24 20060101ALN20240530BHJP
【FI】
F27B9/04
F27D7/04
F23C9/00
F27D17/00 101A
F27D19/00 Z
F27B9/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188000
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】秋本 茂
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 亜輝男
(72)【発明者】
【氏名】赤木 朝輝
【テーマコード(参考)】
3K091
4K050
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
3K091AA07
3K091BB07
4K050AA02
4K050BA07
4K050BA16
4K050CC07
4K050CC08
4K050CE03
4K050CG04
4K056AA09
4K056BA02
4K056CA10
4K056CA18
4K056DA02
4K056DA22
4K056DA36
4K056FA10
4K056FA11
4K063AA05
4K063BA04
4K063BA12
4K063CA01
(57)【要約】
【課題】熱処理空間からガスラインへのガスの吸引および熱処理空間へのガスの噴出の切り替えを不要とするか、または、切り替えのタイミングを長くする。
【解決手段】加熱炉100は、被処理物1の熱処理を行うための熱処理空間11を有し、熱処理空間11内に配置された加熱部を備える本体部10と、熱処理を行うために必要なガスを本体部10の熱処理空間11に供給するガス供給部と、本体部10の熱処理空間11に接続されたガスライン31を有し、熱処理空間11からガスライン31へのガスの吸引と、ガスライン31に吸引されたガスの熱処理空間11への噴出とを連続的に行う吸引噴出部30と、ガスライン31の内部に設けられ、熱処理空間11から吸引したガスと、熱処理空間11へ噴出するガスとの間で熱交換を行うための換熱式の熱交換器40とを備える。ガスライン31は、熱処理空間11以外の外部からガスが供給されないように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の熱処理を行うための熱処理空間を有し、前記熱処理空間内に配置された加熱部を備える本体部と、
熱処理を行うために必要なガスを前記本体部の前記熱処理空間に供給するガス供給部と、
前記本体部の前記熱処理空間に接続されたガスラインを有し、前記熱処理空間から前記ガスラインへのガスの吸引と、前記ガスラインに吸引されたガスの前記熱処理空間への噴出とを連続的に行う吸引噴出部と、
前記ガスラインの内部に設けられ、前記熱処理空間から吸引したガスと、前記熱処理空間へ噴出するガスとの間で熱交換を行うための換熱式の熱交換器と、
を備え、
前記ガスラインは、前記熱処理空間以外の外部からガスが供給されないように構成されていることを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記ガスラインの内部のうち、前記本体部の内部に位置する部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記ガスラインの内部のうち、前記本体部を貫通している領域に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の加熱炉。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記熱処理空間から吸引したガスが流れる吸引路と、前記熱処理空間へ噴出するガスが流れる噴出路とを有し、
前記ガスラインは、前記熱交換器の前記吸引路と接続された第1の延伸部と、前記熱交換器の前記噴出路と接続された第2の延伸部と、前記第1の延伸部と前記第2の延伸部とを接続する接続部とを有することを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。
【請求項5】
前記噴出路の一部は、前記本体部の前記熱処理空間内に露出していることを特徴とする請求項4に記載の加熱炉。
【請求項6】
前記吸引噴出部は、前記ガスラインに配置された第1のファンを備えることを特徴とする請求項4に記載の加熱炉。
【請求項7】
前記吸引噴出部は、前記ガスラインに配置され、前記第1のファンの駆動によるガスの流れと同じ向きにガスを流すための第2のファンをさらに備えており、
前記第1のファンは、前記第1の延伸部に配置されており、
前記第2のファンは、前記第2の延伸部に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の加熱炉。
【請求項8】
前記ガスラインに配置され、前記熱処理空間から吸引されて前記熱交換器を通過したガスを冷却するための冷却器をさらに備え、
前記冷却器には、前記第1のファンの駆動時に前記第1のファンよりも上流側となる位置に配置された第1の冷却器が含まれることを特徴とする請求項6に記載の加熱炉。
【請求項9】
前記冷却器は、ガスが流れるガス流路と、冷媒が流れる冷媒流路とが交互に積層された構造を有することを特徴とする請求項8に記載の加熱炉。
【請求項10】
前記ガスラインには、水平方向に延伸する部分と、鉛直方向に延伸する部分が含まれており、
前記冷却器は、前記ガスラインの前記第1の延伸部のうち、前記鉛直方向に延伸する部分に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の加熱炉。
【請求項11】
前記ガスラインには、一端が前記第1の延伸部のうちの前記水平方向に延伸する部分に接続されて、前記第1の延伸部と前記第2の延伸部との間を接続するバイパス流路が設けられており、
前記吸引噴出部は、前記ガスラインに配置され、前記第1のファンの駆動によるガスの流れとは逆向きにガスを流すための逆洗用ファンをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の加熱炉。
【請求項12】
前記吸引噴出部は、前記第1のファンが駆動状態で、前記逆洗用ファンが非駆動状態にある連続吸引噴出モードでの動作中に、前記逆洗用ファンが駆動状態で、前記第1のファンが非駆動状態にある逆洗モードへの切り替えを定期的に行うことを特徴とする請求項11に記載の加熱炉。
【請求項13】
前記連続吸引噴出モードでの動作時間と前記逆洗モードでの動作時間の合計時間に対する前記連続吸引噴出モードでの動作時間の割合は、60%以上であることを特徴とする請求項12に記載の加熱炉。
【請求項14】
前記バイパス流路には、開いた状態のときに、前記第1の延伸部から前記第2の延伸部へはガスを流すが、前記第2の延伸部から前記第1の延伸部へはガスが流れないようにするためのチャッキバルブが設けられており、
前記チャッキバルブは、前記連続吸引噴出モードでの動作中は、閉じられており、前記逆洗モードでの動作中は、開かれていることを特徴とする請求項12に記載の加熱炉。
【請求項15】
前記冷却器には、前記第1の延伸部に配置された前記第1の冷却器と、前記第2の延伸部のうち、前記逆洗用ファンの駆動時に前記逆洗用ファンよりも上流側となる位置に配置された第2の冷却器とが含まれており、
前記連続吸引噴出モードでは、前記第1の冷却器の冷却機能はオンで前記第2の冷却器の冷却機能はオフであり、前記逆洗モードでは、前記第1の冷却器の冷却機能はオフで前記第2の冷却器の冷却機能はオンとなるように構成されていることを特徴とする請求項12に記載の加熱炉。
【請求項16】
前記連続吸引噴出モード時に前記逆洗用ファンの回転数を計測する回転数計測部をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の加熱炉。
【請求項17】
前記吸引噴出部は、前記第1のファンを制御するための制御部を備えており、
前記制御部は、前記回転数計測部によって計測される回転数が基準回転数と一致するように、前記第1のファンの駆動を制御することを特徴とする請求項16に記載の加熱炉。
【請求項18】
前記被処理物が前記熱処理空間内に載置される載置面に対して、前記被処理物が載置される側に延びる単位法線ベクトルと、前記熱交換器から前記熱処理空間へ噴出されるガスの進行方向に沿った単位ベクトルとの内積が負となるように、前記熱交換器が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。
【請求項19】
前記吸引噴出部は、複数設けられていることを特徴とする請求項1~18のいずれか一項に記載の加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
炉内にガスを供給し、被処理物の熱処理を行う加熱炉が知られている。
【0003】
そのような加熱炉の一つとして、特許文献1には、炉内のガスを循環ファンによって炉外循環経路に導入するとともに、炉外循環経路に導入したガスを再び炉内に戻す加熱炉が開示されている。炉外循環経路には、ガスとの間で熱交換を行うための蓄熱体と、流路切替装置が設けられている。流路切替装置によって、炉外循環経路を流れるガスの流れが周期的に切り替えられることにより、炉内から炉外循環経路に導入されたガスは、蓄熱体で熱交換が行われて低温とされ、炉内に戻されるガスは、蓄熱体で熱交換が行われて高温とされてから炉内へと噴出される。そのような構成により、特許文献1に記載の加熱炉では、高温で強い循環流を炉内に供給することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-178112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1に記載の加熱炉では、炉外循環経路に設けられている蓄熱体で蓄熱と放熱とを交互に行うため、熱交換特性の関係上、ガスの吸引とガスの噴出とを5秒~10秒程度の短いサイクルで切り替える必要がある。このため、ガスの吸引と噴出の流れを切り替えるための流路切替装置の寿命が短くなる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、本体部の熱処理空間からガスラインへのガスの吸引とガスラインから熱処理空間へのガスの噴出の切り替えが不要であるか、または、上記切り替えのタイミングを長くすることが可能な加熱炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱炉は、
被処理物の熱処理を行うための熱処理空間を有し、前記熱処理空間内に配置された加熱部を備える本体部と、
熱処理を行うために必要なガスを前記本体部の前記熱処理空間に供給するガス供給部と、
前記本体部の前記熱処理空間に接続されたガスラインを有し、前記熱処理空間から前記ガスラインへのガスの吸引と、前記ガスラインに吸引されたガスの前記熱処理空間への噴出とを連続的に行う吸引噴出部と、
前記ガスラインの内部に設けられ、前記熱処理空間から吸引したガスと、前記熱処理空間へ噴出するガスとの間で熱交換を行うための換熱式の熱交換器と、
を備え、
前記ガスラインは、前記熱処理空間以外の外部からガスが供給されないように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱炉は、ガスラインの内部に設けられ、熱処理空間から吸引したガスと、熱処理空間へ噴出するガスとの間で熱交換を行うための換熱式の熱交換器を備えていることにより、熱処理空間からガスラインへのガスの吸引と、ガスラインから熱処理空間へのガスの噴出とを連続的に行うことができる。このため、基本的には、ガスラインを流れるガスの流れの向きを切り替える必要がなく、必要に応じて切り替える場合でも、切り替えるタイミングを長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態における加熱炉の構成を模式的に示す断面図である。
図2図1に示す加熱炉をII-II線に沿って切断したときの構成を模式的に示す断面図である。
図3】コンパクト熱交換器を用いた冷却器の構成を模式的に示す斜視図である。
図4】熱交換器の構成を模式的に示す斜視図である。
図5】第1の実施形態における加熱炉において、熱交換器の吸引路にガスを吸引し、噴出路からガスを噴出する動作を説明するための図である。
図6】第2の実施形態における加熱炉の構成を模式的に示す断面図である。
図7図6に示す加熱炉を矢印Y1の方向から見たときの構成を模式的に示す図である。
図8】(a)は、第2の実施形態における加熱炉において、連続吸引噴出モードにおける動作を説明するための図であり、(b)は、逆洗モードにおける動作を説明するための図である。
図9】第3の実施形態における加熱炉の構成を模式的に示す断面図である。
図10】熱交換器から熱処理空間へ噴出されるガスの進行方向に沿った単位ベクトルと、被処理物が載置されるプレートの載置面に対して、被処理物が載置される側に延びる単位法線ベクトルとの関係を示す図である。
図11】第4の実施形態における加熱炉の構成を模式的に示す断面図である。
図12】連続吸引噴出モードと逆洗モードを交互に行ったときの第1のファンの回転数と逆洗用ファンの回転数との関係を示す図であって、(a)は、PWM制御でファンを駆動するときのデューティ比を60%とした場合の回転数を示し、(b)は、デューティ比を70%とした場合の回転数を示している。
図13】第5の実施形態における加熱炉の構成を模式的に示す断面図である。
図14】第6の実施形態における加熱炉の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における加熱炉100の構成を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す加熱炉100をII-II線に沿って切断したときの構成を模式的に示す断面図である。ただし、図2では、後述する駆動用ローラ13を省略している。
【0012】
ここでは、加熱炉100がローラーハース炉であるものとして説明する。ローラーハース炉は、炉内の進行方向に沿って一定間隔で複数の駆動用ローラ13が配置され、被処理物1を駆動用ローラ13上で搬送する連続式の加熱炉である。図1は、被処理物1の搬送方向と直交する面で加熱炉100を切断したときの断面を示している。ただし、加熱炉100がローラーハース炉に限定されることはなく、バッチ式の加熱炉など、他の種類の加熱炉であってもよい。
【0013】
加熱炉100は、本体部10と、ガス供給部20と、吸引噴出部30と、熱交換器40とを備える。
【0014】
本体部10は、被処理物1の熱処理を行うための熱処理空間11を有し、熱処理空間11内に配置された加熱部12を備える。本体部10の形状や大きさに特に制約はない。加熱部12は、例えば、1300℃程度まで加熱可能なヒーターである。本実施形態では、熱処理空間11に駆動用ローラ13が配置されており、駆動用ローラ13と加熱部12との間に被処理物1が位置するように、被処理物1に対して駆動用ローラ13とは反対側、すなわち、被処理物1の上方に加熱部12が配置されている。ただし、加熱部12の配置場所が被処理物1に対して駆動用ローラ13とは反対側の位置に限定されることはない。
【0015】
本実施形態において、本体部10は、図1に示すように、第1の側壁10a、第2の側壁10b、炉床壁10cおよび天井壁10dの4つの炉壁を備えている。第1の側壁10aと第2の側壁10b、および、炉床壁10cと天井壁10dはそれぞれ、被処理物1の搬送方向と直交する方向において対向する。また、図2に示すように、被処理物1の搬送方向の両端は開口されており、被処理物1が出入りする搬出入口につながっている。第1の側壁10a、第2の側壁10b、炉床壁10cおよび天井壁10dを含む本体部10の炉壁は、例えば、断熱材からなる。
【0016】
熱処理対象である被処理物1の種類に制約はなく、例えば、積層セラミックコンデンサ等のチップ状のセラミック電子部品を作製するための未焼成のセラミック素体である。本実施形態では、複数の被処理物1が載せられたプレート2が駆動用ローラ13上を搬送されるように構成されている。プレート2は、例えば、セラミックからなる。
【0017】
ガス供給部20は、熱処理を行うために必要なガスを本体部10の熱処理空間11に供給する。本体部10には、ガス供給口14が設けられており、ガス供給部20により、ガス供給口14を介して熱処理に必要なガスが熱処理空間11に供給される。
【0018】
なお、本体部10には、熱処理空間11の圧力が一定に保たれるように、不要なガスを排出するためのガス排出口15が設けられている。
【0019】
吸引噴出部30は、熱交換器40に接続されたガスライン31を有し、熱処理空間11からガスライン31へのガスの吸引と、ガスライン31に吸引されたガスの熱処理空間11への噴出とを連続的に行う。本実施形態では、ガスライン31を流れるガスの流れの向きが変わることなく、ガスライン31へのガスの吸引と、ガスライン31からのガスの噴出が連続的に行われる。
【0020】
ガスライン31は、熱処理空間11以外の外部からガスが供給されないように構成されている。すなわち、熱処理空間11からガスライン31へと吸引されたガスは、他のガスや空気等が混入されることなく、そのまま熱処理空間11へと噴出される。したがって、吸引噴出部30によってガスライン31に吸引されて熱処理空間11へと噴出されるガスは、熱処理空間11内のガスと同じ組成を有するガスである。
【0021】
本実施形態におけるガスライン31は、後述する熱交換器40の吸引路41と接続された第1の延伸部31aと、熱交換器40の噴出路42と接続された第2の延伸部31bと、第1の延伸部31aと第2の延伸部31bとを接続する接続部31cとを有する。本実施形態では、図2に示すように、第1の延伸部31aと第2の延伸部31bはそれぞれ、本体部10から遠ざかる方向に延伸しており、接続部31cは、第1の側壁10aと平行な方向に延伸している。
【0022】
本実施形態において、第1の延伸部31a、第2の延伸部31b、および、接続部31cは、いずれも同じ高さに位置する。すなわち、ガスライン31は、ガスが水平方向に流れるように設けられている。
【0023】
本実施形態における吸引噴出部30は、ガスライン31に配置された第1のファン32aと、ガスライン31に配置され、第1のファン32aの駆動によるガスの流れと同じ向きにガスを流すための第2のファン32bとを備える。第1のファン32aは、ガスライン31の第1の延伸部31aに配置されており、第2のファン32bは、第2の延伸部31bに配置されている。ただし、吸引噴出部30は、第1のファン32aのみを備えており、第2のファン32bを省略した構成とすることも可能である。
【0024】
第1のファン32aおよび第2のファン32bはそれぞれ、送風可能なものであれば、どのような構造のものでもよい。以下の説明では、第1のファン32aと第2のファン32bを総称して、ファン32と呼ぶことがある。また、図示は省略するが、吸引噴出部30は、第1のファン32aと第2のファン32bの駆動を制御するための制御部を備えている。
【0025】
第1のファン32aは、駆動時に、ガスがガスライン31の第1の延伸部31aから接続部31cへと流れるように配置されている。すなわち、第1のファン32aを駆動させると、熱処理空間11から熱交換器40を介してガスライン31の第1の延伸部31aへとガスが吸引される。このとき、第2のファン32bも駆動状態とする。熱処理空間11からガスライン31の第1の延伸部31aに吸引されたガスは、接続部31cおよび第2の延伸部31bを通過し、熱交換器40を介して熱処理空間11へと噴出される。
【0026】
上述したように、第2のファン32bは、第1のファン32aの駆動によるガスの流れと同じ向きにガスを流すためのものである。第1のファン32aとともに第2のファン32bを設けることにより、第1のファン32aのみを設ける構成と比べて、より強力にガスの吸引噴出動作を行うことができる。
【0027】
本実施形態における加熱炉100は、ガスライン31に配置され、熱処理空間11から吸引されて後述する熱交換器40を通過したガスを冷却するための冷却器33を備えている。冷却器33には、ガスライン31の第1の延伸部31aに配置された第1の冷却器33aが含まれる。第1の冷却器33aは、第1のファン32aの駆動時に第1のファン32aよりも上流側となる位置に配置されている。なお、第1のファン32aよりも上流側とは、第1のファン32aの駆動時にガスが流れる方向の上流側を意味し、図2では、第1のファン32aに対して熱交換器40に近い側の位置である。
【0028】
第1の冷却器33aは、熱処理空間11から熱交換器40を経てガスライン31の第1の延伸部31aへと吸引されたガスを冷却する。一例として、熱処理空間11からガスライン31の第1の延伸部31aへと吸引されるガスは、熱交換器40によって100℃程度まで冷却された後に、第1の冷却器33aによって、50℃以下に冷却される。そのような構成により、第1のファン32aに高温のガスが流入して熱的ダメージを受けることを抑制することができる。
【0029】
また、第1の冷却器33aが設けられていることにより、熱交換器40の温度分布を平衡状態に維持することができる。すなわち、第1の冷却器33aが設けられていない場合、熱処理空間11からガスライン31へのガスの吸引、および、ガスライン31から熱処理空間11へのガスの噴出が連続して進行する過程で、熱交換器40の温度が上昇する。その場合、熱交換器40によって冷却されたガスの温度が100℃を大きく上回る可能性がある。
【0030】
しかしながら、本実施形態における加熱炉100では、第1の冷却器33aが設けられているので、上述したような熱交換器40の温度の上昇を抑制し、熱交換器40を通過したガスの温度が100℃を大きく上回ることを抑制することができる。
【0031】
第1の冷却器33aとして、例えば、公知の熱交換器を用いることが可能である。図3は、熱交換器の1つであるコンパクト熱交換器を用いた冷却器33(第1の冷却器33a)の構成を模式的に示す斜視図である。図3に示すように、冷却器33は、高温のガスが流れるガス流路F1と、冷媒が流れる冷媒流路F2とが交互に積層された構造を有する。そのような構造により、ガス流路F1を流れるガスを効果的に冷却することができる。ガス流路F1と冷媒流路F2は、互いに直交する向きとなるように構成されている。ガス流路F1および冷媒流路F2には、複数のフィンが設けられており、ガス流路F1を流れるガスと、冷媒流路F2を流れる冷媒との間で熱交換が行われる。
【0032】
なお、図3では、ガス流路F1と冷媒流路F2がそれぞれ2層設けられた構成を示しているが、ガス流路F1および冷媒流路F2の積層数が2に限定されることはない。
【0033】
第1の冷却器33aの冷却機能について説明する。冷媒流路F2には、ガス流路F1を流れるガスを冷却するための冷媒が流れる。冷媒は、例えば、冷風である。例えば、冷媒流路F2の上流側に冷却ファンを設けて、冷媒流路F2に冷風を流す。ガス流路F1には、熱交換器40を通過したガスが流れる。
【0034】
一例として、熱処理空間11から吸引されて熱交換器40を通過した100℃程度のガスが30L/分の風量で第1の冷却器33aのガス流路F1に流入するものとする。第1の冷却器33aの冷媒流路F2に、冷媒として、30~120L/分の風量の冷風を流すと、ガス流路F1を流れるガスは50℃程度まで冷却される。
【0035】
なお、第1の冷却器33aは、ガスを冷却できるものであればよく、ガスが流れるガス流路F1と、冷媒が流れる冷媒流路F2とが交互に積層された構造の熱交換器に限定されることはない。また、熱交換器40によってガスが十分に冷却されるのであれば、冷却器33は省略することが可能である。
【0036】
熱交換器40は、ガスライン31の内部に設けられ、熱処理空間11から吸引したガスと、熱処理空間11へ噴出するガスとの間で熱交換を行うための換熱式の熱交換器である。熱交換器40は、熱処理空間11から吸引したガスが流れる吸引路41と、熱処理空間11へ噴出されるガスが流れる噴出路42とを有する。
【0037】
図4は、熱交換器40の構成を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、熱交換器40は、吸引路41と噴出路42とが交互に積層された構造を有する。吸引路41と噴出路42は、互いに平行な向きとなるように構成されている。また、積層方向において、吸引路41と噴出路42とは、隔壁43によって隔てられている。なお、図4では、吸引路41と噴出路42とがそれぞれ2層ずつ設けられた構成を示しているが、吸引路41および噴出路42の積層数が2に限定されることはない。
【0038】
熱交換器40は、ガスライン31の内部のうち、本体部10の内部に位置する部分、具体的には、本体部10を貫通している領域に設けられている。図1および図2に示す例では、熱交換器40は、ガスライン31の内部のうち、本体部10の第1の側壁10aを貫通している領域に設けられている。ただし、熱交換器40は、本体部10の第2の側壁10b側に設けられていてもよいし、後述するように、本体部10の第1の側壁10a側と第2の側壁10b側のそれぞれに設けられていてもよい。熱交換器40がガスライン31の内部のうち、本体部10の内部に位置する部分に設けられていることにより、熱交換器40を通過して熱処理空間11へと噴出されるガスの温度を、炉内温度により近い温度にすることができる。
【0039】
なお、図1および図2において、熱交換器40は、ガスライン31の内部のうち、本体部10を貫通している領域の全てに設けられているが、本体部10を貫通している領域の一部にだけ設けられていてもよい。また、熱交換器40は、ガスライン31の内部のうち、本体部10を貫通している領域から本体部10の外側の領域にはみ出す態様で設けられていてもよい。
【0040】
なお、図1および図2において、熱交換器40は、ガスライン31の内部のうち、本体部10を貫通している領域の全てに設けられているが、本体部10を貫通している領域の一部にだけ設けられていてもよい。また、熱交換器40は、ガスライン31の内部のうち、本体部10を貫通している領域から本体部10の外側の領域にはみ出す態様で設けられていてもよい。
【0041】
図1および図2に示すように、熱処理空間11から吸引したガスと、熱処理空間11へ噴出するガスとの間で熱交換を行うための換熱式の熱交換器40がガスライン31のうち、本体部10の内部に位置する部分に設けられていることにより、ガスライン31が熱処理空間11に接続される位置を1箇所にすることができる。そのような構成により、ガスライン31が熱処理空間11と接続される位置が2箇所である構成と比べて、ガスライン31の設置の自由度が向上する。
【0042】
熱交換器40の吸引路41は、ガスライン31の第1の延伸部31aと接続されており、噴出路42は、ガスライン31の第2の延伸部31bと接続されている。熱交換器40には、層状に複数の吸引路41が設けられており、全ての吸引路41が第1の延伸部31aと接続されている。また、熱交換器40には、層状に複数の噴出路42が設けられており、全ての噴出路42が第2の延伸部31bと接続されている。
【0043】
図4に示すように、噴出路42の一部は、本体部10の熱処理空間11内に露出している。吸引路41は、熱処理空間11内に露出していない。そのような構成により、熱交換器40から熱処理空間11へと噴出されるガスの流れと、熱処理空間11から熱交換器40へと吸引されるガスの流れとが干渉することを抑制することができる。
【0044】
すなわち、噴出路42が熱処理空間11内に露出していない構成では、熱交換器40から熱処理空間11へと噴出されるガスが熱処理空間11から吸引されるガスの流れの影響を受けて、直進しづらくなる。すなわち、熱交換器40の噴出路42から熱処理空間11へと噴出されるガスの一部が吸引路41へとすぐに吸引される流れが生じてしまう。
【0045】
しかしながら、図4に示すように、噴出路42の一部が本体部10の熱処理空間11内に露出していることにより、吸引路41には、ガスの直進方向だけでなく、熱処理空間11内に露出した隔壁43の側方側からもガスが吸引される。これにより、噴出路42から噴出されるガスの一部が吸引路41へと流れることが抑制されるので、噴出路42から噴出されるガスは、直進しやすくなる。
【0046】
発明者がシミュレーションを行ったところ、噴出路42が熱処理空間11内に露出している長さL1は、熱交換器40の幅方向の寸法W1の1/2以上であれば、上述した噴出ガスの流れと吸引ガスの流れとの干渉を効果的に抑制できることが分かった。例えば、熱交換器40の幅方向の寸法W1が30mmの場合、噴出路42のうち、熱処理空間11内に露出している部分の長さL1を15mm以上とすることが好ましい。
【0047】
また、噴出路42の一部が熱処理空間11内に露出していることにより、噴出路42が熱処理空間11内に露出している領域において、熱処理空間11に噴出されるガスに対する熱交換が進み、より熱処理空間11内の温度に近い温度のガスを被処理物1に向かって噴出することができる。
【0048】
ここで、熱交換器40の幅方向の寸法W1が30mm、吸引路41および噴出路42の高さH1が1.5mm、隔壁43の厚さD1が1mm、噴出路42が熱処理空間11内に露出している部分の長さL1が15mm、吸引路41および噴出路42の長さL2が200mm、吸引路41および噴出路42がそれぞれ7層、熱処理空間11の温度が1200℃の場合に、熱交換器40から熱処理空間11へ噴出されるガスの温度と、熱処理空間11から吸引されて熱交換器40の吸引路41からガスライン31の第1の延伸部31aへと排出されるガスの温度を確認した。ここでは、ガスライン31を流れるガスの風量を15L/分、30L/分、45L/分と変更して、上述したガスの温度を確認した。確認した結果を表1に示す。表1において「噴出ガス温度」は、熱交換器40から熱処理空間11へ噴出されるガスの温度であり、「排出ガス温度」は、熱処理空間11から吸引されて熱交換器40からガスライン31の第1の延伸部31aまたは第2の延伸部31bへと排出されるガスの温度である。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、ガスライン31を流れるガスの風量が15L/分の場合、熱交換器40から熱処理空間11へと噴出されるガスの温度は1169℃であり、熱交換器40からガスライン31の第1の延伸部31aへと流れるガスの温度は81℃であった。また、ガスライン31を流れるガスの風量が30L/分の場合、熱交換器40から熱処理空間11へと噴出されるガスの温度は1140℃であり、熱交換器40からガスライン31の第1の延伸部31aへと流れるガスの温度は110℃であった。一方、ガスライン31を流れるガスの風量が45L/分の場合、熱交換器40から熱処理空間11へと噴出されるガスの温度は1112℃であり、熱交換器40からガスライン31の第1の延伸部31aへと流れるガスの温度は138℃であった。
【0051】
すなわち、ガスライン31を流れるガスの風量が30L/分以下であれば、熱処理空間11へと噴出されるガスの温度は1140℃以上であり、熱処理空間11のガスの温度との乖離が60℃以下となる。すなわち、熱交換器40から熱処理空間11へと噴出されるガスの温度は、炉内温度に近い温度である。
【0052】
また、ガスライン31を流れるガスの風量が30L/分以下であれば、熱処理空間11から吸引されて熱交換器40の吸引路41を通過したガスの温度は、110℃以下となる。この場合、冷却器33で、ファン32の耐熱温度である60℃以下までガスの温度を下げることは容易である。
【0053】
したがって、上述した条件では、ガスライン31を流れるガスの風量は、30L/分以下であることが好ましい。
【0054】
ここで、吸引噴出部30による熱処理空間11からガスライン31へのガスの吸引、および、ガスライン31から熱処理空間11へのガスの噴出の動作について説明する。
【0055】
図5に示すように、第1のファン32aおよび第2のファン32bを駆動すると、本体部10の熱処理空間11内のガスが熱交換器40の吸引路41に吸引される。このとき、第1の冷却器33aの冷却機能はオンとする。熱処理空間11内のガスの温度は、例えば、約1200℃であるものとする。
【0056】
熱交換器40の吸引路41に吸引されたガスは、噴出路42を流れるガスとの間で熱交換が行われて、100℃前後まで温度が低下する。熱交換器40の吸引路41を通過したガスは、ガスライン31の第1の延伸部31aへと導入されて、第1の冷却器33aのガス流路F1を通過することにより、50℃以下の温度まで冷却される。第1の冷却器33aを通過したガスは、ガスライン31の接続部31cを通って、第2の延伸部31bに流入し、熱交換器40の噴出路42へと導入される。
【0057】
熱交換器40の噴出路42に導入されたガスは、吸引路41を流れるガスとの間で熱交換が行われて、熱処理空間11内の温度に近い1150℃程度の温度まで加熱される。噴出路42を通過したガスは、熱処理空間11へと噴出されて、プレート2上の複数の被処理物1の表面に達する。
【0058】
図5では、熱処理空間11から熱交換器40の吸引路41へとガスが吸引され、ガスライン31の第1の延伸部31a、接続部31cおよび第2の延伸部31bを通過した後、熱交換器40の噴出路42から熱処理空間11へとガスが噴出されるときのガスの流れの向きを矢印で示している。このように、熱処理空間11から熱交換器40の吸引路41へとガスが吸引され、ガスライン31の第1の延伸部31a、接続部31cおよび第2の延伸部31bを通過した後、熱交換器40の噴出路42から熱処理空間11へとガスが噴出される動作が連続的に行われる。
【0059】
ここで、被処理物1が積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品を作製するための未焼成のセラミック素体である場合、熱処理によって、バインダー除去や種々の反応が行われる。バインダーは、例えばカーボンである。例えば、セラミック素体内のバインダーは、150℃付近の温度で熱分解が生じ、最終的には1000℃を超える温度になるまでの間にほぼ完全に除去されるが、600℃を超えるくらいの温度でも、内部に残留する成分を速やかに除去することが望まれる。例えば、バインダーの除去が不完全な状態で炉内の温度が最高温度に到達すると、製造されるセラミック電子部品の構造欠陥や品質低下が生じることが分かっている。したがって、速やかにバインダーを除去することは重要である。
【0060】
一般的に、バインダーの除去には、ガスの流れが有効に作用するため、必要十分な流速のガスを被処理物1の近傍に与えることが望ましい。被処理物1の近傍に必要十分な流速のガスを供給することにより、被処理物1の近傍において、被処理物1の内部からの飛散物を含む飛散ガスの濃度が低下し、被処理物1の内部からの飛散物の除去が促進される。逆に、ガスの流速が低い場合、被処理物1の内部からの飛散物の除去が進みにくくなる。
【0061】
本実施形態における加熱炉100では、吸引噴出部30によって、熱処理空間11からガスライン31へのガスの吸引と、ガスライン31に吸引したガスの熱処理空間11への噴出とを連続的に行うことにより、炉外からガスライン31へと新たにガスを導入する必要なく、必要十分な流速のガスを被処理物1の近傍に供給することができる。ガスライン31から熱処理空間11へと噴出されるガスは、熱処理空間11内のガスと同じ組成を有するガスであるため、ガスライン31から噴出されたガスが当たる位置の被処理物1と、ガスライン31から噴出されたガスが当たらない位置の被処理物1との間での反応バラツキの発生を抑制することができる。
【0062】
本実施形態における加熱炉100によれば、換熱式の熱交換器40を備えていることにより、熱処理空間11からガスライン31へのガスの吸引と、ガスライン31に吸引されたガスの熱処理空間11への噴出とを連続的に行うことができる。すなわち、熱交換器40は、熱処理空間11から吸引した高温のガスと、熱処理空間11へ噴出する低温のガスとの間で熱交換が行われる構成であるため、ガスの流路を切り替えなくても、蓄熱と放熱を繰り返し行うための蓄熱体のように急速に温度が上昇または下降し続けることを抑制することができる。このため、ガスライン31を流れるガスの流れの向きを切り替えなくてもよいので、第1のファン32aの駆動と停止を頻繁に切り替える必要がない。これにより、第1のファン32aの寿命を伸ばすことができる。
【0063】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態における加熱炉100Aの構成を模式的に示す断面図である。図1と同様、図6は、被処理物1の搬送方向と直交する面で加熱炉100Aを切断したときの断面を示している。図7は、図6に示す加熱炉100Aを矢印Y1の方向から見たときの構成を模式的に示す図である。ただし、熱交換器40の部分は省略している。
【0064】
第2の実施形態における加熱炉100Aは、第1の実施形態における加熱炉100の構成に対して、逆洗用ファン32cと第2の冷却器33bとをさらに備える。また、図7に示すように、ガスライン31には、バイパス流路34が設けられており、バイパス流路34には、チャッキバルブ50が設けられている。
【0065】
本実施形態におけるガスライン31には、水平方向に延伸する部分と、鉛直方向に延伸する部分とが含まれている。すなわち、ガスライン31は、図2に示すガスライン31を、第1の延伸部31aおよび第2の延伸部31bの途中の位置で上方に折り曲げたような形状を有する。本実施形態におけるガスライン31にも、第1の延伸部31a、第2の延伸部31b、および、接続部31cが含まれるが、第1の延伸部31aおよび第2の延伸部31bの形状が図2に示すガスライン31とは異なる。
【0066】
本実施形態における第1の延伸部31aは、本体部10の外側に向かって水平方向に延伸する部分である第1の水平部31a1と、第1の水平部31a1と接続され、鉛直方向に延伸する部分である第1の鉛直部31a2とを有する。
【0067】
本実施形態における第2の延伸部31bは、本体部10の外側に向かって水平方向に延伸する部分である第2の水平部31b1と、第2の水平部31b1と接続され、鉛直方向に延伸する部分である第2の鉛直部31b2とを有する。
【0068】
接続部31cは、水平方向に延伸しており、第1の延伸部31aの第1の鉛直部31a2と、第2の延伸部31bの第2の鉛直部31b2とを接続している。
【0069】
ただし、第1の鉛直部31a2および第2の鉛直部31b2は、必ずしも鉛直方向に延伸している必要は無く、鉛直方向に対して傾いていてもよい。例えば、水平面と第1の鉛直部31a2との間の角度、および、水平面と第2の鉛直部31b2との間の角度は、60°であってもよい。
【0070】
逆洗用ファン32cは、ガスライン31に配置されており、第1のファン32aの駆動によるガスの流れとは逆向きにガスを流すためのファンである。図7に示す構成例では、逆洗用ファン32cは、ガスライン31の接続部31cに配置されている。逆洗用ファン32cは、送風可能なものであれば、どのような構造のものでもよい。ただし、逆洗用ファン32cは、第1のファン32aよりも低出力でよく、低静圧特性のファンを用いることができる。
【0071】
図7に示すように、第1の冷却器33aおよび第1のファン32aは、ガスライン31の第1の延伸部31aのうち、鉛直方向に延伸する部分である第1の鉛直部31a2に配置されている。第1の冷却器33aは、第1のファン32aの下方に位置する。
【0072】
第2の冷却器33bおよび第2のファン32bは、ガスライン31の第2の延伸部31bのうち、鉛直方向に延伸する部分である第2の鉛直部31b2に配置されている。第2の冷却器33bは、第2の延伸部31bのうち、逆洗用ファン32cの駆動時に逆洗用ファン32cよりも上流側となる位置、より詳しくは、逆洗用ファン32cの駆動時に第2のファン32bよりも上流側となる位置に配置されている。なお、上流側とは、ガスが流れる方向の上流側を意味する。本実施形態において、第2の冷却器33bは、ガスライン31の第2の鉛直部31b2のうち、第2のファン32bの下方に配置されている。
【0073】
バイパス流路34は、一端がガスライン31の第1の延伸部31aのうちの水平方向に延伸する部分である第1の水平部31a1に接続されて、第1の延伸部31aと第2の延伸部31bとの間を接続する。バイパス流路34が第1の水平部31a1と接続されている位置は、第1の水平部31a1の底面に近い位置である。図7に示すように、バイパス流路34は、接続部31cより下方に位置する。
【0074】
バイパス流路34に設けられているチャッキバルブ50は、開いた状態のときに、第1の延伸部31aから第2の延伸部31bへはガスを流すが、第2の延伸部31bから第1の延伸部31aへはガスが流れないようにするために設けられている。
【0075】
ここで、吸引噴出部30の動作について説明する。
【0076】
図8(a)は、熱処理空間11からガスライン31へのガスの吸引と、ガスライン31に吸引されたガスの熱処理空間11への噴出とを連続的に行うときのガスの流れを示す図である。ここでは、上述したガスの吸引と噴出を連続的に行う動作モードを連続吸引噴出モードと呼ぶ。連続吸引噴出モードでは、第1のファン32aおよび第2のファン32bは駆動状態で、逆洗用ファン32cは非駆動状態にある。ただし、第1の実施形態における加熱炉100と同様に、第2のファン32bは省略することが可能である。
【0077】
連続吸引噴出モードでは、第1の延伸部31aに配置されている第1の冷却器33aの冷却機能はオンとし、第2の延伸部31bに配置されている第2の冷却器33bの冷却機能はオフとする。また、チャッキバルブ50は、閉じた状態とする。
【0078】
第1のファン32aおよび第2のファン32bを駆動状態とし、逆洗用ファン32cを非駆動状態とすると、本体部10の熱処理空間11内のガスは、熱交換器40の吸引路41に吸引されて、ガスライン31の第1の延伸部31aへと流れる。チャッキバルブ50が閉じられていることにより、バイパス流路34にはガスは流れない。これにより、バイパス流路34にガスが流れることによる無駄な循環流の発生を防止して、ガスの吸引および噴出の効率の低下を防ぐことができる。
【0079】
ガスライン31の第1の延伸部31aを通過したガスは、接続部31cおよび第2の延伸部31bを通って熱交換器40の噴出路42へと導入され、熱処理空間11に噴出される。このとき、第2の冷却器33bの冷却機能はオフとなっているので、熱交換器40の噴出路42に導入されるガスが必要以上に冷却されることを抑制することができる。
【0080】
ここで、ガスライン31を流れるガスは、冷却機能がオンとなっている第1の冷却器33aで冷却される。冷却後のガスの温度が露点を下回る場合、ガスに含まれる水蒸気は結露し、表面に付着する。上述したように、第1の冷却器33aがガスライン31の第1の鉛直部31a2に配置されているので、第1の冷却器33aの表面に付着した結露水の少なくとも一部を落下させることができる。
【0081】
連続吸引噴出モードでの動作を継続すると、第1の冷却器33aの表面に付着する結露水が増加するとともに、下方に落下した結露水が滞留する。このため、本実施形態における加熱炉100Aでは、上述した結露水をガスライン31から熱処理空間11へと戻すための逆洗動作を行う。ここでは、逆洗動作が行われる動作モードを逆洗モードと呼ぶ。
【0082】
図8(b)は、逆洗モード時のガスの流れを示す図である。逆洗モードでは、第1のファン32aおよび第2のファン32bは非駆動状態とし、逆洗用ファン32cは駆動状態とする。第1の延伸部31aに配置されている第1の冷却器33aの冷却機能はオフとし、第2の延伸部31bに配置されている第2の冷却器33bの冷却機能はオンとする。チャッキバルブ50は、開いた状態とする。
【0083】
第1のファン32aおよび第2のファン32bを非駆動状態とし、逆洗用ファン32cを駆動状態とすると、本体部10の熱処理空間11内のガスは、熱交換器40の噴出路42に吸引されて、ガスライン31の第2の延伸部31bへと流れる。
【0084】
第2の延伸部31bへ導入されたガスは、第2の冷却器33bを通過することによって冷却される。上述したように、逆洗動作を行うための逆洗用ファン32cは、第1のファン32aおよび第2のファン32bよりも低出力のものを用いることが可能である。このため、逆洗動作中に熱処理空間11から熱交換器40の噴出路42へと吸引されるガスの量は少なく、熱交換器40の噴出路42から第2の延伸部31bへと流れるガスの温度は、第1のファン32aおよび第2のファン32bの耐熱温度を十分下回る温度となる場合もある。その場合、第2の冷却器33bは不要であり、省略することが可能である。
【0085】
ガスライン31の第2の延伸部31bを通過したガスは、接続部31cおよび第1の延伸部31aを通って熱交換器40の吸引路41へと導入され、熱処理空間11に噴出される。このとき、第1の冷却器33aの冷却機能はオフとなっているので、熱交換器40の吸引路41に導入されるガスが必要以上に冷却されることを抑制することができる。
【0086】
上述したように、チャッキバルブ50は開いた状態であるため、第1の延伸部31aに流れるガスの一部がバイパス流路34を通って第2の延伸部31bへと向かう。このバイパス流路34を流れるガス(以下、バイパス流と呼ぶ)によって、第1の冷却器33aの表面に付着した結露水や、第1の冷却器33aの下方に滞留している結露水は、第2の延伸部31bの第2の冷却器33bの下方へと移動する。なお、バイパス流路34の直径は、少なくとも結露水を移動させるために必要なバイパス流を確保できる大きさである。
【0087】
上述した逆洗動作は、ガスライン31の第1の延伸部31aに存在する結露水を第2の延伸部31b側に移動させるための動作であるため、数秒程度行えばよい。したがって、逆洗モードでの動作を数秒程度行うと、再び、連続吸引噴出モードでの動作を行う。ガスライン31の第2の延伸部31bに移動した結露水は、連続吸引噴出モードでの動作が始まることにより、熱交換器40の噴出路42から熱処理空間11へと噴出される。
【0088】
吸引噴出部30は、連続吸引噴出モードでの動作中に、逆洗モードへの切り替えを定期的に行う。連続吸引噴出モードでの動作中に、逆洗モードへの切り替えを定期的に行うことにより、連続吸引噴出モードでの動作中にガスライン31の第1の延伸部31aに発生する結露水を熱処理空間11に戻すことができる。また、第1の延伸部31aに発生する結露水を、バイパス流路34を通過させることによって熱処理空間11に戻すことにより、結露水がファン32を通過することを抑制することができる。これにより、結露水の付着等に起因するファン32のダメージを軽減することができる。
【0089】
連続吸引噴出モードの時間は、結露水の発生量に応じて設定すればよい。すなわち、結露水の発生量が少ない場合は、連続吸引噴出モードの時間を長くし、結露水の発生量が多い場合は、連続吸引噴出モードの時間を短くする。連続吸引噴出モードでの動作時間と逆洗モードでの動作時間の合計時間に対する連続吸引噴出モードでの動作時間の割合は、例えば、60%以上である。
【0090】
一例として、連続吸引噴出モードで、30L/分の風量で熱処理空間11から熱交換器40の吸引路41に吸引されたガスの露点が60℃であって、第1の冷却器33aで50℃まで冷却された場合の結露の量は、2.3cc/分に相当する。したがって、10秒で約0.4ccの結露が発生して、第1の冷却器33aの表面に付着し、その少なくとも一部は、第1の冷却器33aの下方に落下して滞留する。上記考察は、かなり結露しやすい条件のものであるため、通常は、1分あたり1cc以下の結露が発生すると考えられる。
【0091】
逆洗モード時にバイパス流路34を通るガスの流量は、バイパス流路34の長さが100mm、バイパス流路34の直径が3mm、逆洗用ファン32cを184Paのファン静圧で駆動した場合、約92cc/秒である。したがって、3秒間で約276ccのガスがバイパス流路34を流れる。このため、上述した1分あたり1ccの結露水は、3秒間の逆洗動作で十分に、ガスライン31の第1の延伸部31aから第2の延伸部31bへと移動させることが可能である。
【0092】
このため、連続吸引噴出モードの時間を十秒~数分程度とし、逆洗モードの時間を数秒程度に設定することが可能である。このため、連続吸引噴出モードの時間と、逆洗モードの時間の割合は、例えば、3:1~100:1程度の範囲で設定することが可能である。この場合、連続吸引噴出モードでの動作時間と逆洗モードでの動作時間の合計時間に対する連続吸引噴出モードでの動作時間の割合は、75%以上99%以下となる。すなわち、第1のファン32aおよび第2のファン32bの駆動効率は、75%以上99%以下と高い。
【0093】
なお、バイパス流路34にチャッキバルブ50を設けない構成とすることもできる。例えば、連続吸引噴出モード時に吸引するガスの風量が500cc/秒で、バイパス流路34を流れるガスの風量が50cc/秒以下であれば、バイパス流の量は、熱処理空間11から吸引するガスの量の1/10以下であるため、チャッキバルブ50を設けなくても実用上は問題が無い。
【0094】
<第3の実施形態>
第1の実施形態における加熱炉100では、熱交換器40から熱処理空間11へは、水平方向にガスが噴出される。このため、プレート2上の複数の被処理物1に向けてガスが噴出されるように、熱交換器40は、プレート2が載置される駆動用ローラ13に対してできるだけ近い高さの位置に設けられることが好ましい。
【0095】
しかしながら、図1では省略しているが、ガスライン31が貫通している本体部10の第1の側壁10aには、駆動用ローラ13を駆動するためのモータなどの駆動部が設けられている。このため、熱交換器40を駆動用ローラ13に対してできるだけ近い高さの位置に配置すると、駆動用ローラ13の駆動部とガスライン31とが干渉する可能性があり、設計に工夫を要する。
【0096】
このため、第3の実施形態における加熱炉100Bでは、熱交換器40は、駆動用ローラ13の駆動部から離れた位置に設けられている。
【0097】
図9は、第3の実施形態における加熱炉100Bの構成を模式的に示す断面図である。図1と同様、図9は、被処理物1の搬送方向と直交する面で加熱炉100Bを切断したときの断面を示している。
【0098】
第1の実施形態における加熱炉100と比べて、本実施形態における熱交換器40は、駆動用ローラ13に対してより高い位置、すなわち、駆動用ローラ13の搬送面と直交する高さ方向において、駆動用ローラ13から遠ざかった位置に設けられている。そのような配置により、駆動用ローラ13の駆動部とガスライン31とが干渉することを抑制することができる。
【0099】
本実施形態では、被処理物1が熱処理空間11内に載置される載置面に対して、被処理物1が載置される側に延びる単位法線ベクトルと、熱交換器40から熱処理空間11へ噴出されるガスの進行方向に沿った単位ベクトルとの内積が負となるように、熱交換器40が配置されている。このことについて、図10を用いて説明する。
【0100】
なお、熱交換器40からは、先端に向かって吸引路41および噴出路42が延伸する方向に沿ってガスが噴出されるので、熱交換器40から熱処理空間11へ噴出されるガスの進行方向に沿った単位ベクトルとは、先端に向かって吸引路41および噴出路42が延伸する方向に沿った単位ベクトルを意味する。
【0101】
図10は、熱交換器40から熱処理空間11へ噴出されるガスの進行方向に沿った単位ベクトルvと、被処理物1が載置されるプレート2の載置面2aに対して、被処理物1が載置される側に延びる単位法線ベクトルnとの関係を示す図である。単位ベクトルvと単位法線ベクトルnとの内積(v・n)は負である。すなわち、熱交換器40から斜め下方に向かってガスが噴出されるように、熱交換器40の吸引路41および噴出路42の向きが調整されている。
【0102】
第3の実施形態における加熱炉100Bによれば、駆動用ローラ13の駆動部とガスライン31との干渉を抑制することができる。また、熱処理空間11内におけるプレート2上の複数の被処理物1には、斜め上方からガスが吹き付けられるため、より多くの被処理物1に対してガスを吹き付けることが可能となる。これにより、より多くの被処理物1に対する反応を促進させることができ、被処理物1毎の反応のバラツキをさらに抑制することができる。
【0103】
<第4の実施形態>
図11は、第4の実施形態における加熱炉100Cの構成を模式的に示す断面図である。図11に示す断面図の切断位置は、図2に示す断面図の切断位置と同じである。
【0104】
第4の実施形態における加熱炉100Cは、第1の実施形態における加熱炉100の構成に対して、回転数計測部60をさらに備える。回転数計測部60は、連続吸引噴出モード時に、非駆動状態にある逆洗用ファン32cの回転数を計測する。
【0105】
上述したように、逆洗動作は、ガスライン31の第1の延伸部31aに存在する結露水を第2の延伸部31b側に移動させるための動作であるため、逆洗用ファン32cは、第1のファン32aおよび第2のファン32bよりも低出力である低静圧特性のファンを用いることができる。低静圧特性のファンは、非駆動状態のときに、ガスライン31を流れるガスによって、ガスライン31を流れるガスの風量に応じた回転数で回転する。このため、非駆動状態の逆洗用ファン32cの回転数を回転数計測部60で計測することによって、ガスライン31を流れるガスの風量を把握することが可能である。
【0106】
図12(a)、(b)は、連続吸引噴出モードと逆洗モードを交互に行ったときの第1のファン32aの回転数と、逆洗用ファン32cの回転数との関係を示す図である。連続吸引噴出モードの動作時間は25秒とし、逆洗モードの動作時間は5秒とした。図12(a)は、PWM制御で第1のファン32aを駆動するときのデューティ比を60%とした場合の回転数を示し、図12(b)は、デューティ比を70%とした場合の回転数を示している。図12において、PCnt1は、第1のファン32aの回転数であり、PCnt2は、逆洗用ファン32cの回転数である。
【0107】
図12(a)に示すように、連続吸引噴出モード時にPWM制御で第1のファン32aを駆動するときのデューティ比を60%とした場合の逆洗用ファン32cの回転数は、約900rpmである。また、図12(b)に示すように、連続吸引噴出モード時にPWM制御で第1のファン32aを駆動するときのデューティ比を70%とした場合の逆洗用ファン32cの回転数は、約1080rpmである。ガスライン31を流れるガスの温度は、30℃以上50℃以下程度でほぼ一定であり、回転数計測部60で計測される非駆動状態の逆洗用ファン32cの回転数は、ガスライン31を流れるガスの風量に応じたものである。
【0108】
ここで、熱処理空間11のガスの温度を変化させた場合、熱処理空間11のガスの温度上昇に伴って、熱交換器40の吸引路41および噴出路42を流れるガスの温度分布が上昇して圧力損失が変化する。この場合、駆動状態の第1のファン32aの回転数が一定であっても、ガスライン31を流れるガスの風量が変化してしまう。このため、駆動状態の第1のファン32aの回転数からガスライン31を流れるガスの風量を精度良く把握することはできない。
【0109】
しかしながら、本実施形態における加熱炉100Cでは、回転数計測部60によって非駆動状態の逆洗用ファン32cの回転数を計測することにより、ガスライン31を流れるガスの風量を精度良く把握することができる。また、ガスライン31を流れるガスの風量を把握するために、逆洗用ファン32cを利用することができるため、風量を測定するための別の装置等を設ける必要がない。これにより、ガスライン31に流れるガスの風量を把握可能な加熱炉100Cの構成を簡易化することができる。
【0110】
<第5の実施形態>
図13は、第5の実施形態における加熱炉100Dの構成を模式的に示す断面図である。図13に示す断面図の切断位置は、図2に示す断面図の切断位置と同じである。第5の実施形態における加熱炉100Dは、第4の実施形態における加熱炉100Cと同様に、回転数計測部60を備えており、後述する制御部35の制御に特徴がある。
【0111】
図13に示すように、吸引噴出部30は、第1のファン32aと第2のファン32bの駆動を制御するための制御部35を備えている。本実施形態において、制御部35は、回転数計測部60によって計測される回転数が基準回転数と一致するように、駆動状態の第1のファン32aおよび第2のファン32bの駆動を制御する。基準回転数は、例えば、ガスライン31を流れるガスの風量を所望の風量とするために予め設定しておく。制御部35は、例えば、フィードバック制御により、回転数計測部60によって計測される回転数と基準回転数とを一致させる。回転数計測部50によって計測される回転数が基準回転数と一致するように、制御部35が駆動状態のファン32の駆動を制御することにより、ガスライン31の内部に異物が付着するなどして、ガスライン31の内部の状態が変化した場合でも、ガスライン31を流れるガスの風量が所望の風量となるように制御することが可能となる。
【0112】
例えば、制御部35は、回転数計測部60によって計測される回転数が800rpmとなるように、駆動状態の第1のファン32aおよび第2のファン32bのPWM制御の出力を制御する。これにより、非駆動状態の逆洗用ファン32cの回転数が800rpmでほぼ一定となるように制御することができ、ガスライン31を流れるガスの風量が一定となるように制御することが可能となる。
【0113】
なお、上述した制御例では、非駆動状態の逆洗用ファン32cの回転数が800rpmとなるように制御する例を挙げて説明したが、非駆動状態の逆洗用ファン32cが安定して回転する風量以上で、かつ、駆動状態の第1のファン32aおよび第2のファン32bのPWM制御のデューティ比が100%以内であれば、任意の回転数に制御することが可能である。
【0114】
<第6の実施形態>
第1の実施形態における加熱炉100~第5の実施形態における加熱炉100Dはそれぞれ、1つの吸引噴出部30を備えている。これに対して、第6の実施形態における加熱炉100Eでは、複数の吸引噴出部30が設けられている。複数の吸引噴出部30が設けられていることにより、被処理物1に対してより多くのガスを吹き付けることが可能となる。これにより、より多くの被処理物1に対する反応を促進させることができ、被処理物1毎の反応のバラツキをさらに抑制することができる。
【0115】
図14は、第6の実施形態における加熱炉100Eの構成を模式的に示す断面図である。図14に示す断面図の切断位置は、図2に示す断面図の切断位置と同じである。
【0116】
図14に示す例では、4つの吸引噴出部30が設けられている。具体的には、本体部10の第1の側壁10a側に2つの吸引噴出部30が設けられ、第1の側壁10aと対向する第2の側壁10b側に2つの吸引噴出部30が設けられている。ただし、吸引噴出部30の数が4つに限定されることはないし、1つの側壁側に全ての吸引噴出部30が設けられていてもよい。
【0117】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。例えば、各実施形態における加熱炉の特徴的な構成は、適宜組み合わせることができる。
【0118】
本体部10の形状は、上述した実施形態で説明した形状に限定されることはない。例えば、本体部10の形状は、略球状の形状でもよい。
【0119】
上述した各実施形態では、吸引噴出部30がファン32を備え、ファン32の駆動により、熱処理空間11からガスライン31へのガスの吸引と、ガスライン31から熱処理空間11へのガスの噴出とを行うものとして説明した。しかしながら、ガスの吸引および噴出を行うための動力源がファン32に限定されることはない。
【0120】
本出願における加熱炉は、以下の通りである。
<1>.被処理物の熱処理を行うための熱処理空間を有し、前記熱処理空間内に配置された加熱部を備える本体部と、
熱処理を行うために必要なガスを前記本体部の前記熱処理空間に供給するガス供給部と、
前記本体部の前記熱処理空間に接続されたガスラインを有し、前記熱処理空間から前記ガスラインへのガスの吸引と、前記ガスラインに吸引されたガスの前記熱処理空間への噴出とを連続的に行う吸引噴出部と、
前記ガスラインの内部に設けられ、前記熱処理空間から吸引したガスと、前記熱処理空間へ噴出するガスとの間で熱交換を行うための換熱式の熱交換器と、
を備え、
前記ガスラインは、前記熱処理空間以外の外部からガスが供給されないように構成されていることを特徴とする加熱炉。
<2>.前記熱交換器は、前記ガスラインの内部のうち、前記本体部の内部に位置する部分に設けられていることを特徴とする<1>に記載の加熱炉。
<3>.前記熱交換器は、前記ガスラインの内部のうち、前記本体部を貫通している領域に設けられていることを特徴とする<2>に記載の加熱炉。
<4>.前記熱交換器は、前記熱処理空間から吸引したガスが流れる吸引路と、前記熱処理空間へ噴出するガスが流れる噴出路とを有し、
前記ガスラインは、前記熱交換器の前記吸引路と接続された第1の延伸部と、前記熱交換器の前記噴出路と接続された第2の延伸部と、前記第1の延伸部と前記第2の延伸部とを接続する接続部とを有することを特徴とする<1>~<3>のいずれか一つに記載の加熱炉。
<5>.前記噴出路の一部は、前記本体部の前記熱処理空間内に露出していることを特徴とする<4>に記載の加熱炉。
<6>.前記吸引噴出部は、前記ガスラインに配置された第1のファンを備えることを特徴とする<4>または<5>に記載の加熱炉。
<7>.前記吸引噴出部は、前記ガスラインに配置され、前記第1のファンの駆動によるガスの流れと同じ向きにガスを流すための第2のファンをさらに備えており、
前記第1のファンは、前記第1の延伸部に配置されており、
前記第2のファンは、前記第2の延伸部に配置されていることを特徴とする<6>に記載の加熱炉。
<8>.前記ガスラインに配置され、前記熱処理空間から吸引されて前記熱交換器を通過したガスを冷却するための冷却器をさらに備え、
前記冷却器には、前記第1のファンの駆動時に前記第1のファンよりも上流側となる位置に配置された第1の冷却器が含まれることを特徴とする<6>または<7>に記載の加熱炉。
<9>.前記冷却器は、ガスが流れるガス流路と、冷媒が流れる冷媒流路とが交互に積層された構造を有することを特徴とする<8>に記載の加熱炉。
<10>.前記ガスラインには、水平方向に延伸する部分と、鉛直方向に延伸する部分が含まれており、
前記冷却器は、前記ガスラインの前記第1の延伸部のうち、前記鉛直方向に延伸する部分に配置されていることを特徴とする<8>または<9>に記載の加熱炉。
<11>.前記ガスラインには、一端が前記第1の延伸部のうちの前記水平方向に延伸する部分に接続されて、前記第1の延伸部と前記第2の延伸部との間を接続するバイパス流路が設けられており、
前記吸引噴出部は、前記ガスラインに配置され、前記第1のファンの駆動によるガスの流れとは逆向きにガスを流すための逆洗用ファンをさらに備えることを特徴とする<10>に記載の加熱炉。
<12>.前記吸引噴出部は、前記第1のファンが駆動状態で、前記逆洗用ファンが非駆動状態にある連続吸引噴出モードでの動作中に、前記逆洗用ファンが駆動状態で、前記第1のファンが非駆動状態にある逆洗モードへの切り替えを定期的に行うことを特徴とする<11>に記載の加熱炉。
<13>.前記連続吸引噴出モードでの動作時間と前記逆洗モードでの動作時間の合計時間に対する前記連続吸引噴出モードでの動作時間の割合は、60%以上であることを特徴とする<12>に記載の加熱炉。
<14>.前記バイパス流路には、開いた状態のときに、前記第1の延伸部から前記第2の延伸部へはガスを流すが、前記第2の延伸部から前記第1の延伸部へはガスが流れないようにするためのチャッキバルブが設けられており、
前記チャッキバルブは、前記第1のファンが駆動状態で、前記逆洗用ファンが非駆動状態にある連続吸引噴出モードでの動作中は、閉じられており、前記逆洗用ファンが駆動状態で、前記第1のファンが非駆動状態にある逆洗モードでの動作中は、開かれていることを特徴とする<12>または<13>に記載の加熱炉。
<15>.前記冷却器には、前記第1の延伸部に配置された前記第1の冷却器と、前記第2の延伸部のうち、前記逆洗用ファンの駆動時に前記逆洗用ファンよりも上流側となる位置に配置された第2の冷却器とが含まれており、
前記連続吸引噴出モードでは、前記第1の冷却器の冷却機能はオンで前記第2の冷却器の冷却機能はオフであり、前記逆洗モードでは、前記第1の冷却器の冷却機能はオフで前記第2の冷却器の冷却機能はオンとなるように構成されていることを特徴とする<12>~<14>のいずれか一つに記載の加熱炉。
<16>.前記連続吸引噴出モード時に前記逆洗用ファンの回転数を計測する回転数計測部をさらに備えることを特徴とする<12>~<15>のいずれか一つに記載の加熱炉。
<17>.前記吸引噴出部は、前記第1のファンを制御するための制御部を備えており、
前記制御部は、前記回転数計測部によって計測される回転数が基準回転数と一致するように、前記第1のファンの駆動を制御することを特徴とする<16>に記載の加熱炉。
<18>.前記被処理物が前記熱処理空間内に載置される載置面に対して、前記被処理物が載置される側に延びる単位法線ベクトルと、前記熱交換器から前記熱処理空間へ噴出されるガスの進行方向に沿った単位ベクトルとの内積が負となるように、前記熱交換器が配置されていることを特徴とする<1>~<17>のいずれか一つに記載の加熱炉。
<19>.前記吸引噴出部は、複数設けられていることを特徴とする<1>~<18>のいずれか一つに記載の加熱炉。
【符号の説明】
【0121】
1 被処理物
10 本体部
11 熱処理空間
12 加熱部
13 駆動用ローラ
14 ガス供給口
15 ガス排出口
20 ガス供給部
30 吸引噴出部
31 ガスライン
31a 第1の延伸部
31a1 第1の水平部
31a2 第1の鉛直部
31b 第2の延伸部
31b1 第2の水平部
31b2 第2の鉛直部
31c 接続部
32a 第1のファン
32b 第2のファン
32c 逆洗用ファン
33a 第1の冷却器
33b 第2の冷却器
34 バイパス流路
35 制御部
40 熱交換器
41 吸引路
42 噴出路
43 隔壁
50 チャッキバルブ
60 回転数計測部
100、100A、100B、100C、100D、100E 加熱炉
F1 ガス流路
F2 冷媒流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14