(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076476
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】TVCMの案を評価するための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0242 20230101AFI20240530BHJP
【FI】
G06Q30/0242
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188020
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】522166220
【氏名又は名称】ノバセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀弥
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB08
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】TVCMの案を評価するための方法において、当該案を全体的に評価する。
【解決手段】装置110は、各広告枠に段階的評価を関連づけて、記憶部113に記憶する(S201)。次に、装置110は、ユーザー端末100から、案を表す案データを取得する(S202)。案データは、複数の番組名又は番組識別子を含む。案データは、さらに各番組の放送開始時刻又は放映開始日時、放送終了時刻又は放映終了日時、及びテレビ局名又はテレビ局識別子のうちの少なくともいずれかを含んでもよい。そして、装置110は、当該案データにより表される各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定する(S203)。装置110は、取得した案データにより表される複数の番組の複数の評価の評価割合を算出する(S204)。一例として、「excellent」が17%、「normal」が69%、「bad」が14%といった評価割合が挙げられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TVCMの案を評価するための方法であって、
第1の装置が、前記案を表す案データを取得するステップと、
前記第1の装置が、前記案データにより表される前記案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定するステップと、
前記第1の装置が、前記案に含まれる複数の番組についての複数の評価の少なくとも一部の評価割合を算出するステップと
を含み、
TVCMの後にインターネット上で行われた行為の増加を表すスコアを効果スコアとして、前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、過去に当該広告枠で放映された複数のTVCMの複数の効果スコアを用いて算出されたものである。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、
当該広告枠で放映されたものを含む過去の複数のTVCMの複数の効果スコアを表す放映履歴データを入力し、
当該広告枠で所定回以上過去に放映されたTVCMの複数の効果スコアが前記放映履歴データに含まれる場合、前記複数の効果スコアの累計数又はこれに応じた値に当該広告枠に関連づけられた補正係数を乗じて得られた値に基づいて付与されたものである。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、
前記放映履歴データに、前記案に基づいてTVCMを放映予定の第1の広告主により当該広告枠で過去に所定回以上放映されたTVCMの第1の効果スコアが含まれず、前記第1の広告主ではない第2の広告主により当該広告枠で過去に所定回以上放映されたTVCMの第2の効果スコアが含まれる場合、前記第2の効果スコアの累計数又はこれに応じた値に当該広告枠に関連づけられた補正係数を乗じて得られた値に基づいて付与されたものである。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法であって、
前記補正係数は、前記放映履歴データに含まれる複数のTVCMで用いられた1又は複数の素材のそれぞれによる効果スコアの獲得効率をクリエイティブスコアとして、前記1又は複数の素材の1又は複数のクリエイティブスコアの、前記補正係数が関連づけられている広告枠における重みつき平均に反比例する値である。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の方法であって、
前記所定回は、2回又は3回である。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の方法であって、
前記広告枠ごとの段階的評価は、広告枠で放映される番組に対する段階的評価を含む。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記番組に対する段階的評価の付与の前に、前記放映履歴データに含まれる番組名を変更する前処理を行うステップをさらに含む。
【請求項8】
請求項2又は3に記載の方法であって、
前記広告枠ごとの段階的評価は、前記第1の装置又は前記第2の装置とは異なる第2の装置が付与する。
【請求項9】
第1の装置に、TVCMの案を評価するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記案を表す案データを取得するステップと、
前記案データにより表される前記案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定するステップと、
前記案に含まれる複数の番組についての複数の評価の少なくとも一部の評価割合を算出するステップと
を含み、
TVCMの後にインターネット上で行われた行為の増加を表すスコアを効果スコアとして、前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、過去に当該広告枠で放映された複数のTVCMの複数の効果スコアを用いて算出されたものである。
【請求項10】
TVCMの案を評価するための方法を実行させるための第1の装置であって、
前記案を表す案データを取得して、前記案データにより表される前記案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定し、
前記案に含まれる複数の番組についての複数の評価の少なくとも一部の評価割合を算出し、
TVCMの後にインターネット上で行われた行為の増加を表すスコアを効果スコアとして、前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、過去に当該広告枠で放映された複数のTVCMの複数の効果スコアを用いて算出されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TVCMの案を評価するための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット広告の市場規模(日本)がテレビで放映されるCM(以下「TVCM」と呼ぶ。)の市場規模である2兆円弱を大きく超えて成長しつつも、テレビは、依然として最大の影響力をもつメディアである。音声と映像により反復してメッセージを伝達することで、強い印象を視聴者に与えることができる。
【0003】
TVCMは、通常、媒体社であるテレビ局が広告スペースとして提供する広告枠を、広告会社が広告主に販売する媒体枠取引により流通する。TVCMの放映を望む広告主は、広告会社に予算又は目標を伝え、広告会社から線引表と呼ばれるテレビ局ごとに一組の広告枠が定められた表を受け取る。そして、広告主又は広告会社がこれらの媒体枠にいずれの素材を放映するかを割り付けて、各テレビ局に伝える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6953643号
【特許文献2】特許第6792694号
【特許文献3】特開2021-111322
【特許文献4】特開2022-136062
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、広告主が広告会社から受け取る一組の広告枠(以下「案」とも呼ぶ。)について、過去の経験に基づいて、属人的に評価を行ってテレビ局に対して修正を求めることはあったものの、広告主が、自社にとって望ましい広告枠が選定されているかを事前に客観的に評価することは困難であった。また、放映したTVCMの効果を事後的に測定して、それを可視化するサービスが提供されているものの(特許文献1及び2参照)、個別の広告枠を評価するものであり、案全体を評価するものではない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その課題は、TVCMの案を評価するための装置、方法又はそのためのプログラムにおいて、当該案を全体的に評価することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明の第1の態様は、TVCMの案を評価するための方法であって、第1の装置が、前記案を表す案データを取得するステップと、前記第1の装置が、前記案データにより表される前記案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定するステップと、前記第1の装置が、前記案に含まれる複数の番組についての複数の評価の少なくとも一部の評価割合を算出するステップとを含み、TVCMの後にインターネット上で行われた行為の増加を表すスコアを効果スコアとして、前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、過去に当該広告枠で放映された複数のTVCMの複数の効果スコアを用いて算出されたものである。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、当該広告枠で放映されたものを含む過去の複数のTVCMの複数の効果スコアを表す放映履歴データを入力し、当該広告枠で所定回以上過去に放映されたTVCMの複数の効果スコアが前記放映履歴データに含まれる場合、前記複数の効果スコアの累計数又はこれに応じた値に当該広告枠に関連づけられた補正係数を乗じて得られた値に基づいて付与されたものである。
【0009】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様の方法であって、前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、前記放映履歴データに、前記案に基づいてTVCMを放映予定の第1の広告主により当該広告枠で過去に所定回以上放映されたTVCMの第1の効果スコアが含まれず、前記第1の広告主ではない第2の広告主により当該広告枠で過去に所定回以上放映されたTVCMの第2の効果スコアが含まれる場合、前記第2の効果スコアの累計数又はこれに応じた値に当該広告枠に関連づけられた補正係数を乗じて得られた値に基づいて付与されたものである。
【0010】
また、本発明の第4の態様は、第2又は3の態様の方法であって、前記補正係数は、前記放映履歴データに含まれる複数のTVCMで用いられた1又は複数の素材のそれぞれによる効果スコアの獲得効率をクリエイティブスコアとして、前記1又は複数の素材の1又は複数のクリエイティブスコアの、前記補正係数が関連づけられている広告枠における重みつき平均に反比例する値である。
【0011】
また、本発明の第5の態様は、第2又は3の態様の方法であって、前記所定回は、2回又は3回である。
【0012】
また、本発明の第6の態様は、第2又は3の態様の方法であって、前記広告枠ごとの段階的評価は、広告枠で放映される番組に対する段階的評価を含む。
【0013】
また、本発明の第7の態様は、第6の態様の方法であって、前記番組に対する段階的評価の付与の前に、前記放映履歴データに含まれる番組名を変更する前処理を行うステップをさらに含む。
【0014】
また、本発明の第8の態様は、第2又は3の態様の方法であって、前記広告枠ごとの段階的評価は、前記第1の装置又は前記第2の装置とは異なる第2の装置が付与する。
【0015】
また、本発明の第9の態様は、第1の装置に、TVCMの案を評価するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、前記案を表す案データを取得するステップと、前記案データにより表される前記案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定するステップと、前記案に含まれる複数の番組についての複数の評価の少なくとも一部の評価割合を算出するステップとを含み、TVCMの後にインターネット上で行われた行為の増加を表すスコアを効果スコアとして、前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、過去に当該広告枠で放映された複数のTVCMの複数の効果スコアを用いて算出されたものである。
【0016】
また、本発明の第10の態様は、TVCMの案を評価するための方法を実行させるための第1の装置であって、前記案を表す案データを取得して、前記案データにより表される前記案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定し、前記案に含まれる複数の番組についての複数の評価の少なくとも一部の評価割合を算出し、TVCMの後にインターネット上で行われた行為の増加を表すスコアを効果スコアとして、前記広告枠ごとの段階的評価は、それぞれ、過去に当該広告枠で放映された複数のTVCMの複数の効果スコアを用いて算出されたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、TVCMの案を表す案データを取得し、当該案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定して、判定結果として得られる評価の評価割合を算出することによって、当該案を全体的に評価することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかるシステムを示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態にかかる案評価の流れを示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態にかかる段階的評価の付与の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態にかかるシステムを示す。TVCMの案を評価するための装置110(以下「第1の装置」とも呼ぶ。)は、装置110により提供される案評価サービスを利用するユーザーのユーザー端末100とインターネット等のIPネットワークを介して通信する。
【0021】
装置110は、通信インターフェースなどの通信部111と、プロセッサ、CPU等の処理部112と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部113とを備え、各処理又は各動作を行うためのプログラムを処理部112において実行することによって構成することができる。装置110は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部113又は装置110からIPネットワークを介してアクセス可能なデータベース114等の記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部112の少なくとも1つのプロセッサにおいて当該プログラムに含まれる命令を実行することができる。以下で記憶部113に記憶されるものとして記述されるデータはデータベース114等の記憶装置又は記憶媒体に記憶してもよく、またその逆も同様である。
【0022】
まず、装置110は、各広告枠に段階的評価を関連づけて、記憶部113に記憶する(S201)。たとえば、「excellent」、「normal」及び「bad」という三段階評価を関連づけてもよい。各広告枠に関連づけられる段階的評価は、装置100が付与する場合のほか、装置110以外の装置120(以下「第2の装置」とも呼ぶ。)で各広告枠に付与して、装置110の記憶部113に記憶してもよい。また、付与された段階的評価は、装置110からアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体として、たとえば、第2の装置120に記憶して、必要に応じてそこから受信してもよい。次に、装置110は、ユーザー端末100から、案を表す案データを取得する(S202)。
【0023】
案データは、複数の番組名又は番組識別子を含む。案データは、さらに各番組の放送開始時刻又は放映開始日時、放送終了時刻又は放映終了日時、及びテレビ局名又はテレビ局識別子のうちの少なくともいずれかを含んでもよい。番組名は、同一番組であっても、必ずしも統一されておらず、装置110において、案データに含まれる少なくとも一部の番組の番組名を変更する前処理を行ってもよい。広告主が案データを受け取る広告会社によって表記が異なったり、広告主が広告会社から受け取った案データを修正したりすることが表記揺れの原因として考えられる。
【0024】
前処理の一例として、番組名を、予め定められた複数の番組名のうちのいずれかに変更してもよく、より具体的には、予め定められた複数の番組名のそれぞれとの類似度を算出して、最も類似しているものに変更することが例として挙げられる。また、番組名の一部を修正又は省略することによって変更してもよく、より具体的には、正式名称を略称に変更、略称を正式名称に変更、番組名中の「!」の全角を半角に又は半角を全角に変更、番組名中の「!」を省略、番組名中の「?」の全角を半角に又は半角を全角に変更、番組名中の「?」を省略、墨付き括弧部分の省略、「~」で囲まれた部分又は「~」に続く部分の省略等が例として挙げられる。ここで説明した前処理は、後述する段階的評価で用いる放映履歴データに含まれる番組名に対して施すこともできる。
【0025】
そして、装置110は、当該案データにより表される各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定する(S203)。広告枠ごとに予め付与された段階的評価の詳細については、後述する。
【0026】
装置110は、取得した案データにより表される複数の番組の複数の評価の評価割合を算出する(S204)。一例として、「excellent」が17%、「normal」が69%、「bad」が14%といった評価割合が挙げられる。評価割合は、テレビ局別に算出しても、テレビ局を区別せずに算出してもよい。評価割合は、後述する「評価中」の番組を分母に含めて、あるいは分母に含めずに、複数の評価の少なくとも一部について算出してもよい。
【0027】
段階的評価の詳細
段階的評価が付与される広告枠は、番組名又は番組識別子で特定される場合のほか、局、曜日及び時間帯で特定される場合がある。以下では、番組名で特定される場合を主に説明する。また、上述のとおり、段階的評価の付与は、必ずしも第1の装置110で行う必要はないものの、簡単のため、第1の装置110で行う場合を例に説明する。
【0028】
まず、装置110に、TVCMを放映する広告主によって過去に放映された、所定の商品、サービス又はブランド(以下「商品等」という。)に関する複数のTVCMの効果を表す放映履歴データを入力する(S301)。放映履歴データには、放映したTVCMごとに、番組名又は番組識別子、素材名又は素材識別子、効果スコア、及び推定視聴数を含む。当該所定の商品等に関する複数のTVCM以外のTVCMに関するデータが当該放映履歴データに含まれていてもよい。
【0029】
次に、装置110は、当該放映データに含まれる、所定の商品等に関する当該複数のTVCMについて、効果スコアの累計数を推定視聴数の累計数で除して、当該所定の商品等がTVCMによって効果スコアを獲得する獲得効率を算出する(S302)。獲得効率は、厳密に効果スコアの累計数を推定視聴数の累計数で除した値でなくとも、その近似値であればよい。近似値には、効果スコアの累計数又はその近似値を推定視聴数の累計数又はその近似値で除した値の小数点以下を切り捨てた値がたとえば含まれるが、これに限らない。本明細書において、このように算出される獲得効率を「ブランドスコア」と呼ぶことがある。
【0030】
上述の「効果スコア」は、TVCMの後にインターネット上で行われた行為の増加を表すスコアを意味し、対象となる行為としては、たとえば、TVCMに関連づけられたアプリケーションの利用開始、TVCMに関連づけられたウェブサイト又はウェブページへのアクセス、及びTVCMに関連づけられた1又は複数の単語を用いた検索エンジンにおける検索が挙げられる。それぞれ、出願人による特許文献1、3及び4に詳細が記述されている。
【0031】
対象となる行為が利用開始の場合、効果スコアは「利用開始スコア」と呼ぶことができ、ある時点の以後又は後の第1の期間における利用開始数又はその近似値と当該ある時点の以前又は前の第2の期間における利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値である。利用開始には、サーバからのアプリケーションのダウンロード、ダウンロード後の初回起動その他のアプリケーションの利用を開始するための行為が該当し、ダウンロード数を指標とする場合には効果スコアは「ダウンロードスコア」と呼ぶことがある。
【0032】
対象となる行為がアクセスの場合、効果スコアは「アクセススコア」と呼ぶことができ、ある時点の以後又は後の第1の期間におけるアクセス数又はその近似値と当該ある時点の以前又は前の第2の期間におけるアクセス数又はその近似値とを用いて定まるアクセス増加を表す値である。アクセス数のカウントとしては、さまざまな方式が可能である。
【0033】
対象となる行為が検索の場合、効果スコアは「検索スコア」と呼ぶことができ、ある時点を基準とした検索数の増加を表す値である。検索スコアは、インターネット上で行われた複数の検索に関する検索履歴データに基づいて算出する。検索履歴データは、各検索について、検索に用いられた1若しくは複数の単語又はそれらの論理和若しくは論理積としての組み合わせと、検索が行われた時刻とを含む。検索に用いられた1又は複数の単語が、TVCMに関連づけられた商品等の名称又は商品等が属するカテゴリー名である場合に、当該検索を「指名検索」と呼び、狭義には、商品等の名称である場合を「指名検索」と呼ぶことがある。また、本明細書において、指名検索における検索スコアを「指名検索スコア」と呼ぶことがある。
【0034】
また、上述の「推定視聴数」は、TVCMを視聴したと推定される人数又は世帯数を表し、その推定方法には、さまざまなものがあり、任意の方法によって推定された数を用いればよい。
【0035】
次いで、装置110は、当該放映履歴データに含まれる、当該商品等に関する複数のTVCMについて、素材ごとに獲得効率を算出して、当該商品等が当該素材を用いてTVCMによって効果スコアを獲得する獲得効率を算出する(S303)。このように算出される素材ごとの獲得効率を、素材は広告業界で「クリエイティブ」と呼ばれることが多いことから、「クリエイティブスコア」と呼ぶことがある。
【0036】
そして、装置110は、広告枠ごとに獲得効率を算出して、当該広告枠がTVCMによって効果スコアを獲得する獲得効率を算出する(S304)。本明細書において、このように算出される獲得効率を「広告枠スコア」と呼び、番組名によって広告枠が特定されるこの例においては「番組スコア」と呼ぶ。以下では、主に番組スコアの例で説明するものの、広告枠スコアについても同様に考えることができる。
【0037】
その後、装置110は、各番組スコアに、以下の式で定まる当該番組に関連づけられた補正係数を乗じることによって、補正後番組スコアを算出する(S305)。
補正係数=定数/クリエイティブスコアの番組ごとの重みつき平均
クリエイティブスコアの番組ごとの重みつき平均は、番組ごとに単一のクリエイティブが用いられたと仮定した場合に当該クリエイティブによる獲得効率を表し、この値に反比例する補正係数によって番組スコアを補正することによって、全番組について平均的なクリエイティブスコアの素材を用いてTVCMを放映したと仮定することができる。そのため、補正後番組スコアを用いることにより、当該放映データに含まれる、所定の商品等に関する当該複数のTVCMに用いられた1又は複数の素材の影響の番組ごとの違いを緩和することができる。上記定数は、たとえばブランドスコアとしてもよく、その他の値を適宜定めてもよい。
【0038】
より一般には、補正後広告枠スコアは、クリエイティブスコアの広告枠ごとの重みつき平均に反比例する補正係数を当該広告枠の広告枠スコアに乗じたスコアとすることができる。当該補正係数は、広告枠ごとの素材の影響の大きさに反比例する係数であると言える。ここでは、広告枠スコアに補正係数を乗じているところ、広告枠スコアの分子である、当該広告枠がTVCMによって獲得した効果スコアの累計数又はその近似値に補正係数を乗じて、当該広告枠で放映されたTVCMの推定視聴者数の累計数又はその近似値で除しても同義である。よって、各広告枠の補正後広告枠スコアは、より一般に、当該広告枠がTVCMによって獲得した効果スコアの累計数又はこれに応じた値に補正係数を乗じて得られた値とすることができる。
【0039】
表1に、番組スコアを説明するための案データのサンプルを示す。
【0040】
【0041】
分子をブランドスコアとし、分母の重みつき平均における各クリエイティブスコアの重みを、当該クリエイティブスコアの対象である素材についての当該番組における効果スコアの累計数とした場合について算出した補正係数をブランドスコア並びに素材a及びbのクリエイティブスコアとともに示すと、以下のようになる。
ブランドスコア 0.000615
クリエイティブスコア
素材a 0.000780
素材b 0.000480
補正係数
番組P 0.897
番組Q 0.788
番組R 1.28
番組スコア
番組P 672
番組Q 365
番組R 712
【0042】
この結果は、R>P>Qの順で補正後番組スコアが高い、すなわち、用いた放映履歴データに含まれる複数のTVCMの対象である商品等についてこの順で広告効果が高いことを意味する。
【0043】
素材ごとに効果スコアの獲得効率が異ならない場合には、クリエイティブスコアは素材を問わず一定のスコアとなるため、上述した補正係数の分母も番組を問わず一定の係数とある。より具体的には、この場合には、クリエイティブスコアの番組ごとの重みつき平均はブランドスコアと等しくなり、補正係数は1となる。たとえば、番組Rについて補正係数を1としてみれば、補正後番組スコアは556となり、広告効果はP>R>Qの順で高いという結果になる。これは、番組Rでは、クリエイティブスコアが低い素材bのみが用いられており、素材の影響で効果スコアの番組Rについての累計数が低くなっていることに起因すると解することができる。したがって、1を超える補正係数を乗じて補正することによって、番組自体の広告効果を適切に評価可能となる。
【0044】
別の例として、分子をブランドスコアとし、分母の重みつき平均における各クリエイティブスコアの重みを、当該クリエイティブスコアの対象である素材についての当該番組内でのクリエイティブスコア(以下「番組内クリエイティブスコア」と呼ぶことがある。)とした場合について算出した補正係数及び番組スコアを示すと、以下のようになる。
補正係数
番組P 0.867
番組Q 0.788
番組R 1.28
番組スコア
番組P 650
番組Q 365
番組R 712
【0045】
この結果は、先の例と同様にR>P>Qの順で補正後番組スコアが高いことを示しており、分母の重みつき平均における各クリエイティブスコアの重みについては、補正係数の対象である番組における当該クリエイティブスコアの対象である素材の影響を表す量であってもよいと言える。
【0046】
装置110は、放映履歴データに含まれる各TVCMについて、算出された補正後番組スコアに基づいて、段階的評価を付与する(S306)。より具体的には、放映履歴データに含まれる複数のTVCMについて算出された複数の補正後番組スコアを母集団として、補正後番組スコアが所定の第1の順位又は所定の第1の閾値以上又は超の番組に第1の段階的評価を付与し、所定の第2の順位又は所定の第2の閾値未満又は以下の番組に第2の段階的評価を付与してもよい。第1の順位としては、例として、上位30%としてもよい。また、閾値を用いる場合、補正後番組スコアの偏差値又はこれに対応する値を求めて、偏差値であれば55以上又は超、偏差値に対応する値として標準化得点を用いるのであれば、0.5以上又は超の番組に第1の段階的評価を付与してもよい。この場合、偏差値が45未満若しくは以下又は標準化得点が-0.5未満若しくは以下の番組に第2の段階的評価を付与したり、あるいは、偏差値が55未満若しくは以下又は標準化得点が0.5未満若しくは以下の番組に第2の段階的評価を付与してもよい。第1の順位と第2の順位が異なる場合に、第1の順位未満又は以下で第2の順位以上又は超の番組に第3の段階的評価を付与してもよく、閾値についても同様に考えることができる。ここでは、2段階又は3段階の段階的評価について述べたところ、それ以上の数の複数の段階的評価を付与してもよい。
【0047】
案データにより表される案に含まれる複数の広告枠のうちのいずれかが、新規番組であるような場合、その案に沿ってTVCMを放映予定の広告主の過去の放映履歴データには、当然のことながら、当該新規番組における放映実績が含まれないことになる。このような場合には、広告枠を個別の番組名又は番組識別子ではなく、局、曜日及び時間帯で特定し、同様に当該広告枠に段階的評価を付与することができる。
【0048】
また、放映実績があっても、当該番組又は当該広告枠における放映実績が所定回数未満である場合には、TVCMに用いられた1又は複数の素材の影響の番組又は広告枠ごとの違いを十分に緩和することができず、発明者らは、2回、さらには3回以上の放映実績があることが好ましいことを見い出した。放映実績が、1回以上所定回数未満である番組又は広告枠については、上述した段階的評価を付与せずに「評価中」という評価を判定してもよい。また、当該番組又は広告枠の補正後番組スコア又は補正後広告枠スコアに基づいて、上記第1の順位又は第1の閾値の条件を満たすので、第1の段階的評価となることが見込まれることを判定したり、上記第2の順位又は第2の閾値の条件を満たすので、第2の段階的評価となることが見込まれることを判定してもよい。
【0049】
また、自社の商品等に関する放映実績が不足する場合に、案データにより表される案に沿って当該商品等に関するTVCMを放映予定の広告主ではない別の広告主による過去の放映履歴データを追加的又は代替的に用いて、広告枠ごとの段階的評価の付与を行ってもよい。当該別の広告主による放映履歴データを用いる場合には、当該商品等と同一カテゴリーに属する商品等に関するものであることが好ましい。
【0050】
(第2の実施形態)
装置110は、広告主に関連づけて、案に加えたい広告枠又は案から除外したい広告枠を記憶部113に記憶しておき、案データを取得した後に、加えるべき広告枠又は除外すべき広告枠を提案するための提案情報をユーザー端末100に送信してもよい。
【0051】
また、装置110は、取得した案データにより表される案に含まれる各広告枠の評価に応じて、当該広告枠の除外の適否を判定し、除外が適切であると判定された1又は複数の広告枠を含む改案提案をするための改案提案情報をユーザー端末100に送信することができる。ユーザー端末100を用いる広告主は、当該改案提案を検討して、必要に応じて広告会社又はTV局に改案要求を行う。
【符号の説明】
【0052】
100 ユーザー端末
110 第1の装置
111 通信部
112 処理部
113 記憶部
114 データベース
120 第2の装置
【手続補正書】
【提出日】2023-11-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TVCMの案を評価するための方法であって、
第1の装置が、前記案を表す案データを取得するステップと、
前記第1の装置が、前記案データにより表される前記案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定するステップと、
前記第1の装置が、前記案に含まれる複数の番組についての複数の評価の少なくとも一部の評価割合を算出するステップと
を含む。
【請求項2】
第1の装置に、TVCMの案を評価するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記案を表す案データを取得するステップと、
前記案データにより表される前記案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定するステップと、
前記案に含まれる複数の番組についての複数の評価の少なくとも一部の評価割合を算出するステップと
を含む。
【請求項3】
TVCMの案を評価するための方法を実行させるための第1の装置であって、
前記案を表す案データを取得して、前記案データにより表される前記案に含まれる各番組の評価を、予め付与された広告枠ごとの段階的評価を用いて判定し、
前記案に含まれる複数の番組についての複数の評価の少なくとも一部の評価割合を算出する。