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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076479
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
G01R33/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188026
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】林 承彬
(72)【発明者】
【氏名】福井 崇人
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AD00
2G017CB01
2G017CB10
2G017CB20
2G017CC02
(57)【要約】
【課題】低周波領域の磁界を高感度に検出可能な改良された磁気センサを提供する。
【解決手段】磁気センサ1は、磁気ギャップG1を介してX方向に配列された磁性体構造物10,20と、磁気ギャップG1によって形成される磁路上に配置され、X方向を感度軸方向とする感磁素子R1と、磁気ギャップG1をバイパスするよう、磁性体構造物10と磁性体構造物20を磁気的に接続する磁性体構造物30,40と、磁性体構造物30に巻回された励磁コイルC1と、磁性体構造物40に巻回された励磁コイルC2とを備える。これによれば、励磁コイルC1,C2に所定の周波数を有する電流を流すことにより、感磁素子R1から出力される検出信号を所定の周波数で変調することができることから、低周波領域の磁界を高感度に検出することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ギャップを介して第1の方向に配列された第1及び第2の磁性体構造物と、
前記磁気ギャップによって形成される磁路上に配置され、前記第1の方向を感度軸方向とする感磁素子と、
前記磁気ギャップをバイパスするよう、前記第1の磁性体構造物と前記第2の磁性体構造物を磁気的に接続する第3及び第4の磁性体構造物と、
前記第3の磁性体構造物に巻回された第1の励磁コイルと、
前記第4の磁性体構造物に巻回された第2の励磁コイルと、を備える磁気センサ。
【請求項2】
前記第1の励磁コイルと前記第2の励磁コイルは、互いに逆方向の磁界が発生するよう、直列に接続されている、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第1及び第2の励磁コイルに所定の周波数を有する電流を流す変調回路をさらに備える、請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第3及び第4の磁性体構造物は、いずれも複数の磁性体構造片の組み合わせからなる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記第3の磁性体構造物は、前記第1の励磁コイルが巻回された第1の磁性体構造片と、前記第1の磁性体構造片と前記第1の磁性体構造物を磁気的に接続する第2の磁性体構造片と、前記第1の磁性体構造片と前記第2の磁性体構造物を磁気的に接続する第3の磁性体構造片とを含み、
前記第4の磁性体構造物は、前記第2の励磁コイルが巻回された第4の磁性体構造片と、前記第4の磁性体構造片と前記第1の磁性体構造物を磁気的に接続する第5の磁性体構造片と、前記第4の磁性体構造片と前記第2の磁性体構造物を磁気的に接続する第6の磁性体構造片とを含む、請求項4に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第2及び第3の磁性体構造片は、前記第1の磁性体構造片を位置決め可能な位置決め部を有し、
前記第5及び第6の磁性体構造片は、前記第4の磁性体構造片を位置決め可能な位置決め部を有している、請求項5に記載の磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は磁気センサに関し、特に、低周波領域の磁界を高感度に検出可能な磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、感磁素子を用いた磁気センサは様々な分野で利用されているが、極めて微弱な磁界を検出するためには、S/N比の高い磁気センサが必要となる。ここで、磁気センサのS/N比を低下させる要因として、1/fノイズが挙げられる。1/fノイズは、測定対象となる磁界の周波数成分が低いほど顕著となることから、例えば1kHz以下といった低周波領域の磁界を高感度に検出するためには、1/fノイズを低減させることが重要となる。
【0003】
1/fノイズを低減させた磁気センサとしては、特許文献1に記載された磁気センサが知られている。特許文献1に記載された磁気センサは、変調手段を用いて感磁素子の動作点を変調することによって、1/fノイズを低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-522696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された磁気センサにおいては、感磁素子自身のノイズも変調されてしまうという問題があった。
【0006】
本開示においては、低周波領域の磁界を高感度に検出可能な改良された磁気センサについて説明される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による磁気センサは、磁気ギャップを介して第1の方向に配列された第1及び第2の磁性体構造物と、磁気ギャップによって形成される磁路上に配置され、第1の方向を感度軸方向とする感磁素子と、磁気ギャップをバイパスするよう、第1の磁性体構造物と第2の磁性体構造物を磁気的に接続する第3及び第4の磁性体構造物と、第3の磁性体構造物に巻回された第1の励磁コイルと、第4の磁性体構造物に巻回された第2の励磁コイルとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低周波領域の磁界を高感度に検出可能な改良された磁気センサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の第1の実施形態による磁気センサ1の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、磁気センサ1の略分解斜視図である。
図3図3は、磁性体構造物10,20とセンサチップ100を分離した状態を示す略分解斜視図である。
図4図4は、センサチップ100の構造を説明するための略斜視図である。
図5図5は、センサチップ100から磁性体層111,112を除去した状態を示す略斜視図である。
図6図6は、センサチップ100の主要部のXZ断面図である。
図7図7は、磁気センサ1の使用方法を説明するための模式図である。
図8図8は、磁気センサ1の効果を説明するためのグラフである。
図9図9は、本開示の第2の実施形態による磁気センサ2の外観を示す略斜視図である。
図10図10は、磁気センサ2の略分解斜視図である。
図11図11は、本開示の第3の実施形態による磁気センサ3の外観を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本開示の第1の実施形態による磁気センサ1の外観を示す略斜視図である。また、図2は磁気センサ1の略分解斜視図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態による磁気センサ1は、基板5と、基板5に搭載されたセンサチップ100及び磁性体構造物10,20,30,40とを備えている。基板5はXZ面を主面とし、主面にセンサチップ100及び磁性体構造物10,20,30,40が搭載されている。
【0013】
磁性体構造物10,20,30,40は、いずれもフェライトなどの高透磁率材料からなるブロックである。磁性体構造物10は、X方向を長手方向とする棒状の本体部11と、本体部11の-X方向における端部に設けられた突出部12からなる。同様に、磁性体構造物20は、X方向を長手方向とする棒状の本体部21と、本体部21の+X方向における端部に設けられた突出部22からなる。突出部12と突出部22は接触しておらず、両者間にはX方向の磁気ギャップG1が形成される。このように、磁性体構造物10と磁性体構造物20は、磁気ギャップG1を介してX方向に配列されている。突出部12,22のZ方向における厚みは、本体部11,21のZ方向における厚みよりも薄く、突出部12,22とZ方向に重なるよう、センサチップ100が配置される。
【0014】
磁性体構造物30は、励磁コイルC1が巻回された巻芯部31と、巻芯部31の+X方向における端部に位置し、巻芯部31と磁性体構造物10を磁気的に接続する接続部32と、巻芯部31の-X方向における端部に位置し、巻芯部31と磁性体構造物20を磁気的に接続される接続部33とを有している。同様に、磁性体構造物40は、励磁コイルC2が巻回された巻芯部41と、巻芯部41の+X方向における端部に位置し、巻芯部41と磁性体構造物10を磁気的に接続する接続部42と、巻芯部41の-X方向における端部に位置し、巻芯部41と磁性体構造物20を磁気的に接続される接続部43とを有している。これにより、磁性体構造物30,40は、いずれも磁気ギャップG1をバイパスするよう、磁性体構造物10と磁性体構造物20を磁気的に接続する。巻芯部31,41のZ方向における厚み及びY方向における高さは、接続部32,33,42,43のZ方向における厚み及びY方向における高さよりも小さく、これにより、励磁コイルC1,C2と磁性体構造物10,20やセンサチップ100との干渉が防止されるとともに、励磁コイルC1,C2と基板5との干渉が防止されている。
【0015】
磁性体構造物30と磁性体構造物40は互いに同じ形状を有している。このため、磁性体構造物30と磁性体構造物40は、磁性体構造物10,20のZ方向における中心を通るXY面に対して面対称である。磁性体構造物10と磁性体構造物20についても、互いに同じ形状であっても構わない。
【0016】
図3は、磁性体構造物10,20とセンサチップ100を分離した状態を示す略分解斜視図である。
【0017】
図3に示すように、センサチップ100の主面である素子形成面105はXY面を構成する。つまり、センサチップ100の素子形成面105は、基板5の主面に対して垂直である。素子形成面105上には、磁性体層111,112が形成されている。磁性体層111は磁性体構造物10の突出部12とZ方向に重なり、磁性体層112は磁性体構造物20の突出部22とZ方向に重なる。
【0018】
図4は、センサチップ100の構造を説明するための略斜視図である。
【0019】
図4に示すように、センサチップ100の素子形成面105上には感磁素子R1、磁性体層111,112、端子電極T11~T14が形成されている。磁性体層111,112は、パーマロイなどのNiFe系材料からなる薄膜であり、磁性体層111,112からなる磁気ギャップG2によって形成される磁路上に感磁素子R1が配置されている。磁気ギャップG2は磁気ギャップG1より狭く、これにより漏れ磁束が低減することから、磁性体層111,112を設けない場合と比べて、感磁素子R1により多くの磁界を印加することができる。磁性体層111は磁性体構造物10の突出部12とZ方向に重なり、磁性体層112は磁性体構造物20の突出部22とZ方向に重なる。これにより、磁性体構造物10,20間を流れるX方向の磁束は、磁性体層111,112を介して感磁素子R1に印加される。
【0020】
図5は、センサチップ100から磁性体層111,112を除去した状態を示す略斜視図である。
【0021】
図5に示すように、感磁素子R1は、素子形成面105上においてY方向に延在し、その一端が配線L1を介して端子電極T11に接続され、他端が配線L2を介して端子電極T12に接続されている。感磁素子R1は、磁束の向きによって電気抵抗が変化する磁気抵抗効果素子である。感磁素子R1の感度軸方向である固定磁化方向はX方向である。本発明において感磁素子R1が磁気抵抗効果素子である必要はないが、感磁素子R1として磁気抵抗効果素子を用いることにより、微弱な磁界を高感度に検出することが可能となる。素子形成面105の下層又は上層には、補償コイル120も形成されている。補償コイル120の一端は端子電極T13に接続され、他端は端子電極T14に接続されている。補償コイル120は、感磁素子R1に印加される磁界を打ち消すことによって、いわゆるクローズドループ制御を行うために用いられる。そして、本実施形態においては、センサチップ100の主面である素子形成面105が基板5の主面に対して垂直となるよう、センサチップ100を立てて搭載していることから、端子電極T11~T14と基板5の配線距離を短縮することができる。これにより、ハンダなどを用いて、基板5に設けられたランドパターンと端子電極T11~T14を直接接続することが可能となる。
【0022】
図6は、センサチップ100の主要部のXZ断面図である。
【0023】
図6に示すように、センサチップ100の素子形成面105には、感磁素子R1が形成されている。感磁素子R1は絶縁層107で覆われており、絶縁層107の表面に磁性体層111,112が形成されている。磁性体層111,112は絶縁層108で覆われている。そして、平面視で(Z方向から見て)、感磁素子R1は磁性体層111と磁性体層112の間に位置する。これにより、磁気ギャップG2を通過する磁界が感磁素子R1に印加される。つまり、感磁素子R1は、磁性体層111と磁性体層112によって形成される磁気ギャップG2の近傍であり、磁気ギャップG2を通過する検出対象磁界を検出可能な磁路上に配置される。このように、感磁素子R1を必ずしも2つの磁性体層111,112間に配置する必要はなく、磁性体層111,112からなる磁気ギャップG2を通過する磁界の少なくとも一部が感磁素子R1に印加されるような配置であれば足りる。磁気ギャップG2の幅と感磁素子R1の幅の関係については特に限定されない。図6に示す例では、磁気ギャップG2のX方向における幅G2xが感磁素子R1のx方向における幅Rxよりも狭く、これにより、Z方向から見て磁性体層111,112と感磁素子R1が重なりOVを有している。磁気ギャップG2を通過する磁界のより多くを感磁素子R1に印加するためには、重なりOVにおける磁性体層111,112と感磁素子R1のZ方向における距離ができるだけ近いことが望ましく、磁気ギャップG2のX方向における幅G2xよりも磁性体層111,112と感磁素子R1のZ方向における距離が近いことがより望ましい。これにより、感磁素子R1が磁気ギャップG2を通過する磁界の主な磁路となる。
【0024】
図7は、本実施形態による磁気センサ1の使用方法を説明するための模式図である。
【0025】
図7に示すように、本実施形態による磁気センサ1を使用する際には、励磁コイルC1,C2を変調回路50に接続することによって、励磁コイルC1,C2に所定の周波数を有する交流電流iを流す。ここで、励磁コイルC1によって磁性体構造物30に流れる磁束の方向Aと、励磁コイルC2によって磁性体構造物40に流れる磁束の方向Bは互いに逆となるよう、励磁コイルC1,C2の巻回方向及び電流方向を設定する。励磁コイルC1と励磁コイルC2は直列に接続されており、これにより励磁コイルC1と励磁コイルC2に流れる電流量は一致する。また、交流電流iの電流経路には可変抵抗51が接続されており、可変抵抗51の抵抗値を変化させることによって、交流電流iの電流量を調整することができる。交流電流iの代わりに、パルス状の直流電流を断続的に流しても構わない。
【0026】
励磁コイルC1,C2に交流電流iを流すことよって磁性体構造物30,40が励磁されると、磁性体構造物30,40は磁気飽和し、透磁率が大幅に低下する。つまり、磁性体構造物30,40が励磁されている期間においては、検出対象となるX方向の磁界成分は、磁性体構造物30,40をバイパスすることなく、磁性体構造物10,20を通ることになる。このため、磁気ギャップG1を通過するX方向の磁界が感磁素子R1に印加される。また、補償コイル120には、感磁素子R1から得られる検出信号に応じたフィードバック電流が流れ、これにより生じるキャンセル磁界によって、感磁素子R1に印加される磁界がゼロに保たれる。このようなクローズドループ制御によって、高い検出精度を得ることが可能となる。
【0027】
しかも、励磁コイルC1によって磁性体構造物30によって生じる磁界の方向Aと、励磁コイルC2によって磁性体構造物40によって生じる磁界の方向Bが互いに逆であることから、励磁コイルC1,C2によって生じる磁界は、磁性体構造物10,20,30,40からなるループを周回する。このため、励磁コイルC1,C2によって生じる磁界は、感磁素子R1にほとんど印加されない。特に、本実施形態においては、磁性体構造物30と磁性体構造物40がXY面に対して面対称に配置されていることから、磁性体構造物10,20,30,40からなるループを周回する磁界に漏れが少なく、感磁素子R1に対してほとんど影響を与えない。
【0028】
一方、励磁コイルC1,C2に流れる電流がゼロになるタイミングにおいては、磁性体構造物30,40が励磁されないことから、磁性体構造物30,40は透磁率が高い状態が維持される。これにより、検出対象となるX方向の磁界成分は、磁気ギャップG1を有する磁性体構造物10,20を通ることなく、磁性体構造物30,40によってバイパスされる。このため、検出対象となるX方向の磁界は、感磁素子R1に印加されなくなる。
【0029】
このように、励磁コイルC1,C2が励磁されている期間においては、検出対象となるX方向の磁界成分が感磁素子R1に印加され、励磁コイルC1,C2が励磁されていない期間においては、検出対象となるX方向の磁界成分が磁性体構造物30,40をバイパスする。その結果、感磁素子R1から得られる検出信号が交流電流iの周波数によって変調されることから、1/fノイズが大幅に低減される。
【0030】
このように、本実施形態による磁気センサ1は、検出対象となる微弱な磁界を感磁素子R1に集める一対の磁性体構造物10,20を備えるとともに、磁性体構造物10,20によって形成される磁気ギャップG1をバイパスする磁性体構造物30,40を備え、磁性体構造物30,40にそれぞれ励磁コイルC1,C2が巻回されている。これにより、励磁コイルC1,C2に交流電流iを流すことによって、感磁素子R1によって得られる検出信号を変調することができる。その結果、検出対象となる微弱な磁界の周波数が低い場合であっても、1/fノイズを大幅に低減することが可能となる。しかも、励磁コイルC1,C2によって生じる磁界は、磁性体構造物10,20,30,40をループ状に周回し、感磁素子R1には印加されないことから、感磁素子R1自身のノイズが変調されることもない。さらに、感磁素子R1として磁気抵抗効果素子を用いていることから、コイルを用いて磁界を検出する場合と比べて単位面積当たりの磁気検出効率を高めることができる。
【0031】
図8は、本実施形態による磁気センサ1の効果を説明するためのグラフであり、実線は本実施形態による磁気センサ1におけるノイズの周波数特性を示し、破線は変調手段を持たない従来の磁気センサにおけるノイズの周波数特性を示している。図8に示すように、本実施形態による磁気センサ1は、感磁素子R1によって得られる検出信号が変調されることから、特に低周波領域における1/fノイズが大幅に低減していることが分かる。
【0032】
図9は、本開示の第2の実施形態による磁気センサ2の外観を示す略斜視図である。また、図10は磁気センサ2の略分解斜視図である。
【0033】
図9及び図10に示すように、第2の実施形態による磁気センサ2は、磁性体構造物30,40がいずれも3つの磁性体構造片の組み合わせからなる点において、上述した第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
磁性体構造物30は、励磁コイルC1が巻回された磁性体構造片P1と、磁性体構造片P1と磁性体構造物10を磁気的に接続する磁性体構造片P2と、磁性体構造片P1と磁性体構造物20を磁気的に接続する磁性体構造片P3とを含む。同様に、磁性体構造物40は、励磁コイルC2が巻回された磁性体構造片P4と、磁性体構造片P4と磁性体構造物10を磁気的に接続する磁性体構造片P5と、磁性体構造片P4と磁性体構造物20を磁気的に接続する磁性体構造片P5とを含む。磁性体構造片P2,P3はL字型の溝を有しており、この溝に励磁コイルC1が巻回された磁性体構造片P1を嵌め込むことにより、磁性体構造物30が構成される。同様に、磁性体構造片P5,P6はL字型の溝を有しており、この溝に励磁コイルC2が巻回された磁性体構造片P4を嵌め込むことにより、磁性体構造物40が構成される。
【0035】
このように、磁性体構造物30,40を複数の磁性体構造片の組み合わせによって構成すれば、フェライトなどからなる磁性体ブロックの加工や設計変更が容易となるだけではなく、励磁コイルC1,C2の巻回作業も容易となる。しかも、磁性体構造片P2,P3,P5,P6に溝のような磁性体構造片P1,P4を位置決め可能な位置決め部を設けておけば、磁性体構造片P1と磁性体構造片P2,P3の位置決め、並びに、磁性体構造片P4と磁性体構造片P5,P6の位置決めが容易となる。
【0036】
図11は、本開示の第3の実施形態による磁気センサ3の外観を示す略斜視図である。
【0037】
図11に示すように、第3の実施形態による磁気センサ3は、磁性体構造物30,40の代わりに磁性体構造物60が用いられている点において、上述した第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
磁性体構造物60は、励磁コイルC1が巻回された巻芯部61と、励磁コイルC2が巻回された巻芯部62と、巻芯部61,62と磁性体構造物10を磁気的に接続する接続部63と、巻芯部61,62と磁性体構造物20を磁気的に接続する接続部64とを有している。巻芯部62は、磁性体構造物10,20と巻芯部61によってY方向に挟まれている。
【0039】
第3の実施形態による磁気センサ3が例示するように、本発明において、磁気ギャップG1をバイパスする磁性体構造物が互いに対称形である2つのブロックからなるものである点は必須でない。また、励磁コイルC1,C2がそれぞれ巻回される2つの巻芯部61,62は、一端が共通の接続部63を介して磁性体構造物10に接続され、他端が共通の接続部64を介して磁性体構造物20に接続されても構わない。
【0040】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0041】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本開示による磁気センサは、磁気ギャップを介して第1の方向に配列された第1及び第2の磁性体構造物と、磁気ギャップによって形成される磁路上に配置され、第1の方向を感度軸方向とする感磁素子と、磁気ギャップをバイパスするよう、第1の磁性体構造物と第2の磁性体構造物を磁気的に接続する第3及び第4の磁性体構造物と、第3の磁性体構造物に巻回された第1の励磁コイルと、第4の磁性体構造物に巻回された第2の励磁コイルとを備える。これによれば、第1及び第2の励磁コイルに所定の周波数を有する電流を流すことにより、感磁素子から出力される検出信号を所定の周波数で変調することができることから、低周波領域の磁界を高感度に検出することが可能となる。
【0043】
上記の磁気センサにおいて、第1の励磁コイルと第2の励磁コイルは、互いに逆方向の磁界が発生するよう、直列に接続されていても構わない。これによれば、第1及び第2の励磁コイルによって生じる磁界が第1~第4の磁性体構造物を周回することから、第1及び第2の励磁コイルによって生じる磁界が感磁素子に対するノイズになりにくい。
【0044】
上記の磁気センサにおいて、第1及び第2の励磁コイルに所定の周波数を有する電流を流す変調回路をさらに備えても構わない。これによれば、第1及び第2の励磁コイルに所定の周波数を有する電流を流すことが可能となる。
【0045】
上記の磁気センサにおいて、第3及び第4の磁性体構造物は、いずれも複数の磁性体構造片の組み合わせからなるものであっても構わない。これによれば、第3及び第4の磁性体構造物の作製や第1及び第2の励磁コイルの巻回作業が容易となる。
【0046】
上記の磁気センサにおいて、第3の磁性体構造物は、第1の励磁コイルが巻回された第1の磁性体構造片と、第1の磁性体構造片と第1の磁性体構造物を磁気的に接続する第2の磁性体構造片と、第1の磁性体構造片と第2の磁性体構造物を磁気的に接続する第3の磁性体構造片とを含み、第4の磁性体構造物は、第2の励磁コイルが巻回された第4の磁性体構造片と、第4の磁性体構造片と第1の磁性体構造物を磁気的に接続する第5の磁性体構造片と、第4の磁性体構造片と第2の磁性体構造物を磁気的に接続する第6の磁性体構造片とを含んでいても構わない。これによれば、各磁性体構造片の形状を単純化することが可能となる。
【0047】
上記の磁気センサにおいて、第2及び第3の磁性体構造片は、第1の磁性体構造片を位置決め可能な位置決め部を有し、第5及び第6の磁性体構造片は、第4の磁性体構造片を位置決め可能な位置決め部を有していても構わない。これによれば、第1の磁性体構造片と第2及び第3の磁性体構造片の位置決め、並びに、第4の磁性体構造片と第5及び第6の磁性体構造片の位置決めが容易となる。
【符号の説明】
【0048】
1~3 磁気センサ
5 基板
10,20,30,40 磁性体構造物
11,21 本体部
12,22 突出部
31,41 巻芯部
32,33,42,43 接続部
50 変調回路
51 可変抵抗
60 磁性体構造物
61,62 巻芯部
63,64 接続部
100 センサチップ
105 素子形成面
107,108 絶縁層
111,112 磁性体層
120 補償コイル
A,B 方向
C1,C2 励磁コイル
G1,G2 磁気ギャップ
L1,L2 配線
P1~P6 磁性体構造片
R1 感磁素子
T11~T14 端子電極
i 交流電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11