(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076495
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/086 20060101AFI20240530BHJP
F16L 21/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
F16L37/086
F16L21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188050
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】落合 義人
(72)【発明者】
【氏名】清原 昌樹
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AA06
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE29
3J106EA03
3J106EB02
3J106EC06
3J106ED22
3J106EE01
3J106EF04
(57)【要約】
【課題】分離した部品の削減された抜け止めリング移動抑制構造を有する管継手を提供する。
【解決手段】 管継手は、パイプを受け入れ可能な開口を有する円筒部と、円筒部内に配置されたリングであって、パイプが円筒部に受け入れられたときにパイプが圧入されるリングと、円筒部にヒンジを介して連結されたリングストッパー片と、を備える。リングストッパー片は、ヒンジの屈曲により円筒部内に配置され、リングよりも開口の近くに位置し、リングの前記開口に向かう移動を制止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを受け入れ可能な開口を有する円筒部と、
前記円筒部内に配置されたリングであって、前記パイプが前記円筒部に受け入れられたときに前記パイプが圧入されるリングと、
前記円筒部にヒンジを介して連結されたリングストッパー片と、を備え、
前記リングストッパー片は、前記ヒンジの屈曲により前記円筒部内に配置され、前記リングよりも前記開口の近くに位置し、前記リングの前記開口に向かう移動を制止する、
管継手。
【請求項2】
前記円筒部は、内周面と外周面との間を貫通する孔を有し、
前記リングストッパー片は、前記円筒部の前記内周面側から、前記孔に挿入し固定された突出部を含む、
請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
パイプを受け入れ可能な開口を有する円筒部と、
前記円筒部内に配置されるリングの前記開口に向かう移動を制止するリングストッパー片と、を備え、
前記リングストッパー片は、前記円筒部にヒンジを介して連結されており、前記ヒンジの屈曲により前記円筒部内に配置可能である、管継手。
【請求項4】
前記円筒部は、内周面と外周面との間を貫通する孔を有し、
前記リングストッパー片は、前記円筒部の前記内周面側から、前記孔に挿入可能な突出部を含む、請求項3に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、建築物内の給水、給湯、または空調機器に用いられる一対のパイプを接続する管継手を開示している。この管継手は、パイプを受け入れる継手本体と、パイプに係合する抜け止めリングと、継手本体にネジ止め可能なブッシュとを備える。ブッシュは、継手本体にネジ止めされたときに抜け止めリングに当接し、パイプの軸方向の移動(パイプの抜け)を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記管継手は、抜け止めリングの移動を抑制するために、継手本体とは分離したブッシュを要する。管継手内の分離した部品を削減することは、製造時または使用時での部品の管理(例えば、紛失予防)の観点から好ましい。本開示は、分離した部品が削減された抜け止めリング移動抑制構造を有する管継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る管継手は、パイプを受け入れ可能な開口を有する円筒部と、円筒部内に配置されたリングであって、パイプが円筒部に受け入れられたときにパイプが圧入されるリングと、円筒部にヒンジを介して連結されたリングストッパー片と、を備える。リングストッパー片は、ヒンジの屈曲により円筒部内に配置され、リングよりも開口の近くに位置し、リングの開口に向かう移動を制止する。
【0006】
本開示の別の態様に係る管継手は、パイプを受け入れ可能な開口を有する円筒部と、円筒部内に配置されるリングの開口に向かう移動を制止するリングストッパー片と、を備える。リングストッパー片は、円筒部にヒンジを介して連結されており、ヒンジの屈曲により円筒部内に配置可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、分離した部品の削減された抜け止めリング移動抑制構造を有する管継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本開示の一実施形態に係る管継手の分解斜視図。
【
図4】本開示の一実施形態に係る管継手の上面および正面を併記した図。
【
図5】本開示の一実施形態に係る管継手の使用方法の説明図。
【
図6】本開示の他の実施形態に係る管継手の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、管継手の中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向から見た平面視で中心軸Oと交差する方向を径方向といい、平面視で中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0010】
本実施形態では、
図1に示すように、管継手1は、第1パイプ9と第2パイプ10を接続する。第1パイプ9および第2パイプ10は、例えば、建築物に設置される空調装置のドレインに使用される。管継手1は、第1パイプ9と第2パイプ10を直線状につなぐストレートタイプの管継手である。ただし、管継手1は、第1パイプ9と第2パイプ10を曲がった状態につなぐエルボタイプや、その他のタイプの管継手であってもよい。第1パイプ9および第2パイプ10は、例えば、樹脂パイプである。
【0011】
本実施形態では、
図2に示すように、管継手1は、継手本体2と、第1リング5と、第2リング6と、第1パッキン7と、第2パッキン8とを備える。
【0012】
継手本体2は、第1連結部3と、第1連結部3に同軸に連結された第2連結部4とを含む。第1連結部3は、第1パイプ9に結合する。第2連結部4は、第2パイプ10に結合する。継手本体2は、例えば、樹脂製である。
【0013】
第1リング5は、第1連結部3内に配置される。第1パイプ9は、第1連結部3内に受け入れられたときに第1リング5内に圧入される。第1リング5は、第1パイプ9の外表面に食い込んで、第1パイプ9に固定される。本実施形態では、第1リング5は、部分的に欠落した環状部を有する、いわゆるCリングである。ただし、第1リング5は、
図6に示すように、完全な(欠落していない)環状部51と、環状部51内に設けられた係合歯52とを有してもよい。第1リング5は、例えば、金属製または樹脂製である。
【0014】
第2リング6は、第2連結部4内に配置される。第2パイプ10は、第2連結部4内に受け入れられたときに第2リング6内に圧入される。第2リング6は、第2パイプ10の外表面に食い込んで、第2パイプ10に固定される。第2リング6は、第1リング5と同様の構成を有する。
【0015】
第1パッキン7は、第1連結部3内に配置される。第1パッキン7は、第1パイプ9と第1連結部3との間の気密または液密な連結を確保する。
【0016】
第2パッキン8は、第2連結部4内に配置される。第2パッキン8は、第2パイプ10と第2連結部4との間の気密または液密な連結を確保する。
【0017】
本実施形態では、第2連結部4は、第1連結部3と同様の構造を有する。本明細書では、第1連結部3を詳細に説明し、第2連結部4の詳細説明を省略する。
【0018】
第1連結部3は、第1パイプ9を受け入れる開口313を有する円筒部31を含む。第1連結部3は、さらに、円筒部31に少なくとも1つのヒンジ35を介して連結された少なくとも1つのリングストッパー片34を含む。本実施形態では、第1連結部3は、4つのリングストッパー片34を含む。具体的には、第1連結部3は、第1ヒンジ35aを介して円筒部31に連結された第1リングストッパー片34aと、第2ヒンジ35bを介して円筒部31に連結された第2リングストッパー片34bと、第3ヒンジ35cを介して円筒部31に連結された第3リングストッパー片34cと、第4ヒンジ35dを介して円筒部31に連結された第4リングストッパー片34dとを含む。リングストッパー片34の数量は、4に限らず、1、2、3、5、6、その他の数でもよい。
【0019】
複数のリングストッパー片34は、管継手1の周方向に等間隔に配置されてもよく、不等間隔に配置されてもよい。本実施形態では、4つのリングストッパー片34は、管継手1の周方向に90度間隔で配置されている。
【0020】
図3に示すように、リングストッパー片34は、ヒンジ35の屈曲により円筒部31内に配置され、第1リング5よりも円筒部31の開口313の近くに位置し、第1リング5の開口313に向かう移動を制止する。本実施形態では、円筒部31は、大径部311と、大径部311に同軸に連結された小径部312とを含む。小径部312は、第1パイプ9の外径と同じまたはそれよりも大きな内径を有する。大径部311は、小径部312の内径よりも大きな内径を有する。リングストッパー片34は、大径部311内に配置され、管継手1の軸方向においてリングストッパー片34と小径部312との間に隙間を形成する。第1リング5は、この隙間に配置される。
【0021】
リングストッパー片34は、ヒンジ35を介して円筒部31に連結されている。リングストッパー片34の円筒部31への連結が、分離した部品の削減された抜け止めリング移動抑制構造を提供する。
【0022】
リングストッパー片34は、円筒部31内に配置される板片341と、板片341上に形成された少なくとも1つの突出部342とを含んでもよい。あるいは、リングストッパー片34は、板片341を含み、突出部342を含まなくてもよい。
【0023】
図3に示すように、本実施形態では、板片341は、大径部311内に配置される。板片341は、大径部311の内周面の半径と小径部312の内周面の半径の差と同じまたはそれよりも小さな厚みを有する。板片341は、管継手1の軸方向に第1の長さを有する。第1の長さは、円筒部31の開口313の直径よりも短くてもよい。4つのヒンジ35が1つずつ順番に屈曲されることにより、4つのリングストッパー片34が屈曲時に円筒部31に干渉することなく円筒部31内に配置され得る。第1の長さは、円筒部31の開口313の半径よりも短くてもよい。4つのヒンジ35が同時に屈曲されても、4つのリングストッパー片34が屈曲時に互いに干渉することなく円筒部31内に配置され得る。板片341は、管継手1の周方向に第2の長さを有する。第2の長さは、円筒部31の開口313の直径よりも短くてもよい。第2の長さは、円筒部31の開口313の半径よりも短くてもよい。
【0024】
円筒部31は、内周面314と外周面315との間を貫通する少なくとも1つの孔316を含んでもよい。突出部342は、孔316内に挿入されて円筒部31に固定される。突出部342は、孔316と協働して、リングストッパー片34の軸方向の移動を防止する。突出部342は、爪のような係合部を有してもよい。円筒部31は、孔316内に突出部342の係合部に係合する被係合部を有してもよい。係合部は、被係合部と協働して、突出部342の孔316からの抜けを防止し、リングストッパー片34の径方向の移動を防止する。あるいは、リングストッパー片34の軸方向および径方向の移動を防止するために、突出部342は、孔316内に圧入されていてもよい。
【0025】
ヒンジ35は、リングストッパー片34および円筒部31と一体的に形成されてもよく、リングストッパー片34および円筒部31とは別部品であってもよい。本実施形態では、管継手1は、樹脂成形により形成されている。ヒンジ35は、リングストッパー片34および円筒部31と一体的に形成されている。本実施形態では、ヒンジ35は、円筒部31の厚みよりも小さな厚みを有し、板片341の厚みよりも小さな厚みを有する。本実施形態では、ヒンジ35は、それ自体が柔軟性を有することにより屈曲可能である。
【0026】
ヒンジ35の柔軟性を高めるため、ヒンジ35の屈曲位置を定めるため、ヒンジ35の屈曲方向を定めるため、または、その他の理由により、
図6に示すように、ヒンジ35は、管継手1の周方向に平行に延びる少なくとも1つの溝351を有してもよい。
【0027】
図4に示すように、本実施形態では、リングストッパー片34は、2つの突出部342を含み、具体的には、第1突出部342aおよび第2突出部342bを含む。円筒部31は、第1突出部342aを受け入れる第1孔316aと、第2突出部342bを受け入れる第2孔316bとを含む。
【0028】
板片341は、第1面3411とその反対の第2面3412を有する。第1面3411は、ヒンジ35の屈曲によりリングストッパー片34が円筒部31内に配置されたときに円筒部31の内周面に面する。第2面3412は、ヒンジ35の屈曲によりリングストッパー片34が円筒部31内に配置されたときに第1パイプ9の外周面に面する。第1面3411は、円筒部31の内周面(凹面)に沿う凸面を有してもよい。第2面3412は、第1パイプ9の外周面(凸面)に沿う凹面を有してもよい。
【0029】
上述のように、管継手1は、樹脂成形により形成されてもよい。樹脂成形は、例えば、管継手1の軸方向に移動可能な第1型(キャビ・コア型)と、管継手1の径方向に移動可能な第2型(スライド型)とを利用してもよい。
【0030】
第1型および第2型を利用して管継手1を形成するために、
図4に示すように、ヒンジ35が屈曲されずにリングストッパー片34が円筒部31外に位置したとき、板片341は、管継手1の径方向において円筒部31の開口313よりも外側に位置してもよい。
【0031】
さらに、第1型および第2型を利用して管継手1を形成するために、
図4に示すように、ヒンジ35が屈曲されずにリングストッパー片34が円筒部31外に位置したとき、突出部342は、管継手1の径方向において板片341よりも内側で開口313よりも外側に位置し、かつ、管継手1の周方向においてヒンジ35により占められる範囲35wの外側に位置してもよい。
【0032】
図2に戻り、円筒部31は、第1パイプ9が円筒部31内に受け入れられたときに第1パイプ9の位置を視認可能にする少なくとも1つの窓317を有してもよい。本実施形態では、窓317は、円筒部31の内周面と外周面の間を貫通する孔である。
【0033】
第1型および第2型を利用して管継手1を形成するために、あるいは、その他の理由により、窓317は、管継手1の周方向においてリングストッパー片34と同じ位置に配されてもよい。本実施形態では、第1連結部3は、4つのリングストッパー片34と2つの窓317を含む。1つの窓317は、管継手1の周方向において第1リングストッパー片34aと同じ位置に配されている。もう1つの窓317は、管継手1の周方向において第3リングストッパー片34cと同じ位置に配されている。
【0034】
第1リング5および第2リング6は、管継手1の製造段階で(例えば、製造工場内で)継手本体2内に収容され、リングストッパー片34により制止されていてもよい。この場合、管継手1は、ヒンジ35の屈曲によりリングストッパー片34が円筒部31内に配置され、かつ、第1リング5および第2リング6が円筒部31内に配置されてリングストッパー片34により制止された状態で販売され得る。
【0035】
あるいは、第1リング5および第2リング6は、管継手1の利用段階で(例えば、パイプの施工現場で)継手本体2内に収容され、リングストッパー片34により制止されてもよい。この場合、管継手1は、ヒンジ35は屈曲されずにリングストッパー片34が円筒部31外に位置した状態で販売され得る。第1リング5および第2リング6は、管継手1の付属品として円筒部31と共に販売され得、あるいは、管継手1とは別に販売され得る。
【0036】
あるいは、第1リング5および第2リング6は、管継手1の製造段階で(例えば、製造工場内で)継手本体2内に収容され、かつ、管継手1の利用段階で(例えば、パイプの施工現場で)リングストッパー片34により制止されてもよい。この場合、管継手1は、第1リング5および第2リング6が継手本体2内に収容され、途中まで屈曲された(例えば、90度屈曲)リングストッパー片34により継手本体2内から出ないようにした状態で販売され得る。利用段階では、途中まで屈曲されたリングストッパー片34が完全に屈曲されることにより(例えば、180度屈曲)、第1リング5および第2リング6がリングストッパー片34により制止され得る。
【0037】
図5は、管継手の使用方法の一例を示す。ヒンジ35が90度屈曲されることにより、リングストッパー片34が円筒部31の開口313付近に配される。第1リング5は、すでに円筒部31内に収容されている。第1パイプ9が円筒部31内に挿入されると、リングストッパー片34が第1パイプ9に押されてヒンジ35のさらなる屈曲により円筒部31内に配置される。第1パイプ9は、第1リング5内に圧入される。リングストッパー片34は、第1リング5よりも開口313の近くに位置し、第1リング5の開口313に向かう移動を制止する。第1パイプ9は、窓317により視認可能である。
【0038】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、リングストッパー片34は、2つの突出部342を含んでいるが、突出部の数量は2つに限らない。例えば、リングストッパー片34は、突出部を1つのみ含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1:管継手 2:継手本体 5:第1リング 6:第2リング 7:第1パッキン 8:第2パッキン 9:第1パイプ 10:第2パイプ 31:円筒部 34:リングストッパー片 35:ヒンジ 313:開口 316:孔 341:板片 342:突出部