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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076498
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】中実糸モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 15/10 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
B01D15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188060
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原田 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】坪井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】梅原 重治
(72)【発明者】
【氏名】井坂 弘明
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA09
4D017BA07
4D017CA13
4D017CB10
4D017DA01
4D017EA05
4D017EB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、連通口がヘッダの中心部に設けられた場合であっても、ケースの軸方向に対し垂直な方向において被処理流体を均質に配分することが可能な、中実糸モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、円筒状のケースと、中心部に連通口を有し、内部に該連通口を中心に外側に向けて直径が拡大する、テーパー部が設けられた、円筒状のヘッダと、複数の中実糸が束ねられた、担体と、を備え、上記担体は上記ケースに内蔵され、上記ヘッダは、上記ケースの両端部にそれぞれ嵌合され、上記ケースの内径をD、上記ケースの軸方向における長さをL、上記連通口の最小内径をD、上記ケースの軸方向における上記テーパー部の幅をWとしたときに、D/L≧1.1、D/D≦0.1、及び、W/L≦0.06の関係を満たす、中実糸モジュールを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケースと、
中心部に連通口を有し、内部に該連通口を中心に外側に向けて直径が拡大する、テーパー部が設けられた、円筒状のヘッダと、
複数の中実糸が束ねられた、担体と、を備え、
前記担体は前記ケースに内蔵され、
前記ヘッダは、前記ケースの両端部にそれぞれ嵌合され、
前記ケースの内径をD、前記ケースの軸方向における長さをL、前記連通口の最小内径をD、前記ケースの軸方向における前記テーパー部の幅をWとしたときに、
/L≧1.1、D/D≦0.1、及び、W/L≦0.06
の関係を満たす、中実糸モジュール。
【請求項2】
前記中実糸の長手方向に対し垂直な方向における断面形状が、異形である、請求項1記載の中空糸モジュール。
【請求項3】
前記中実糸の充填率が、55~70%である、請求項1又は2記載の中実糸モジュール。
【請求項4】
前記Dが、30~80mmである、請求項1又は2記載の中実糸モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中実糸モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
非処理流体中から除去対象物質を選択的に除去する浄化モジュールは基本的に、ケースと、ケースの両端を封止するヘッダと、ケースに内蔵された担体と、から構成される。
【0003】
除去対象物質を選択的に除去する役割を実質的に担うのは担体であり、その態様としては、多孔質のビーズや多孔質繊維等が挙げられる。ここで複数の多孔質繊維を同一方向に束ねた担体は、被処理流体の流路抵抗の抑制が比較的容易となることから多くの浄化モジュールに用いられており、中でも、外表面の形状の工夫により単位体積当たりの表面積を増大させ、浄化性能を高めることが比較的容易な、中実糸が選択されることも少なくない。
【0004】
例えば特許文献1には、約21万本もの中実糸を束ねた糸束を担体とする、浄化モジュールが開示されている。また特許文献2には、同じく21万本を超える、断面が異形の中実糸の高密度糸束が収容された、血液浄化カラムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7022373号公報
【特許文献2】特開2019-126719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら中実糸のような繊維を極めて多数本束ねて、限られた空間に高密度に充填した場合には、流路抵抗が高まってしまい、被処理流体が担体全体に均質に行き渡らないという問題が生じることがあった。特に、被処理流体をモジュール内に導入するための「連通口」がヘッダの中心部に位置する場合には、ケースの内表面近傍の中実糸にまで到達する被処理流体の量が少なくなる傾向が見られることから、それを解消すべく、ヘッダの内部には連通口を中心に外側に向けて直径が拡大する、テーパー部が設けられることがある。しかしそのようなテーパー部を設けたとしても、ケースの軸方向に対し垂直な方向における、被処理流体の配分の均質性が保たれないことがあるのが現状であった。
【0007】
そこで本発明は、連通口がヘッダの中心部に設けられた場合であっても、ケースの軸方向に対し垂直な方向において被処理流体を均質に配分することが可能な、中実糸モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、円筒状のケースと、中心部に連通口を有し、内部に該連通口を中心に外側に向けて直径が拡大する、テーパー部が設けられた、円筒状のヘッダと、複数の中実糸が束ねられた、担体と、を備え、上記担体は上記ケースに内蔵され、上記ヘッダは、上記ケースの両端部にそれぞれ嵌合され、上記ケースの内径をD、上記ケースの軸方向における長さをL、上記連通口の最小内径をD、上記ケースの軸方向における上記テーパー部の幅をWとしたときに、D/L≧1.1、D/D≦0.1、及び、W/L≦0.06の関係を満たす、中実糸モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多数本の中実糸が束ねられた担体が内蔵された中実糸モジュールであっても、ケースの軸方向に対し垂直な方向において被処理流体を均質に配分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の中実糸モジュールの一実施形態を例示する、縦断面図である。
図2】本発明の中実糸モジュールが備えるヘッダの一実施形態を例示する、縦断面図である。
図3】本発明の中実糸モジュールが備えるヘッダの他の実施形態を例示する、縦断面図である。
図4】本発明の中実糸モジュールが備えるヘッダの他の実施形態を例示する、縦断面図である。
図5】本発明の中実糸モジュールが備える中実糸の長手方向に対し垂直な方向における、断面図の一例である。
図6】本発明の中実糸モジュールが備える中実糸の長手方向に対し垂直な方向における、断面図の一例である。
図7】本発明の中実糸モジュールが備える中実糸の長手方向に対し垂直な方向における、断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の中実糸モジュールは、円筒状のケースを備える。
【0012】
円筒状のケースの材料としては、例えば、プラスチック又は金属が挙げられるが、衛生的な観点から、使い捨て利用が容易なプラスチックが好ましい。ここでプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリアクリロニトリルブタジエンスチレン(以下、「ABS」)が挙げられる。
【0013】
円筒状のケースの内径であるDは、一定程度の被処理液体処理効率を確保しつつ、中実糸モジュールの取り扱いを容易なものとする観点から、30~80mmであることが好ましく、50~70mmであることがより好ましい。
【0014】
本発明の中実糸モジュールは、中心部に連通口を有し、内部に該連通口を中心に外側に向けて直径が拡大する、テーパー部が設けられた、円筒状のヘッダを備える。そして本発明の中実糸モジュールにおいて、上記ヘッダは、上記ケースの両端部にそれぞれ嵌合されている。
【0015】
円筒状のヘッダにおける「中心部」とは、ヘッダの径方向における中心近傍をいう。また円筒状のヘッダがその中心部に有する「連通口」は、ヘッダがケースの両端部に嵌合された際に、ケースの内部と、外部との空間を連通する役割を担う孔又は空間をいう。連通口からは、外側に向けて徐々に直径が拡大する、テーパー部が設けられる。連通口は、図1に示すように、テーパー部と反対側に突出する形状であっても構わない。
【0016】
ここで「テーパー部」とは、ヘッダの内表面とヘッダの径方向とが形成する角度θ、いわゆる立ち上がり角度θが、1~30°の部位をいう。
【0017】
ヘッダの縦断面におけるテーパー部の形状は、図2~4に示すように直線又は曲線のいずれでも構わないが、被処理流体の滞留部を低減する観点から、図2に示す直線型が好ましい。なおテーパー部の立ち上がり角度θは、中実糸モジュールの内部容積を減らす観点から、10~3°が好ましい。
【0018】
円筒状のヘッダの材料としては、例えば、プラスチック又は金属が挙げられるが、使い捨て利用が容易で衛生的であり、かつ、上記ケースとヘッダとの気密性の高い嵌合が可能となる、プラスチックが好ましい。プラスチックの材料としては、上記ケースと同様のものが挙げられる。
【0019】
円筒状のヘッダを円筒状のケースに嵌合させる際には、両者をより強固に固着させて気密性を高める観点から、接着剤等を介在させても構わない。
【0020】
本発明の中実糸モジュールは、複数の中実糸が束ねられた、担体を備える。そして本発明の中実糸モジュールにおいて、上記担体は上記ケースに内蔵されている。ここで中実糸とは、中空糸のように中空部を持たない繊維をいう。
【0021】
担体を構成する中実糸の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」)、ポリアクリロニトリル(以下、「PAN」)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、セルロース又はセルローストリアセテートが挙げられるが、被処理流体中からタンパク質等の対象物質を選択的に除去することが可能な材料が好ましく、ポリスルホン、PMMA、PAN又はセルロースがより好ましい。
【0022】
担体を構成する中実糸の形状としては、担体がケースに内蔵され、被処理流体が通過した際の圧力損失を少しでも抑制するため、直線状が好ましく、また複数の直線状の中実糸が、同一方向になるように束ねられていることがより好ましく、その方向が、円筒状のケースの軸方向と一致していることがさらに好ましい。
【0023】
担体は、単一種の中実糸のみから構成されても構わないし、材料や繊維径の異なる、複数種の中実糸の組み合わせで構成されても構わない。
【0024】
上記中実糸の長手方向に対し垂直な方向における断面形状は、異形であることが好ましい。
【0025】
ここで「異形」とは、正円以外の形状をいい、例えば、楕円、多角形、図5に示すようなY字状、図6に示すような十字状、又は、図7に示すようなアスタリスク字状が挙げられるが、観点から、対称性が高く、単純な形状が好ましく、楕円、Y字状又は十字状が好ましく、体積当たりの表面積をより大きくする観点から、Y字状又は十字状がより好ましい。
【0026】
本発明の中実糸モジュールは、上記ケースの内径をD、上記ケースの軸方向における長さをL、上記連通口の最小内径をD、上記ケースの軸方向における上記テーパー部の幅をWとしたときに、D/L≧1.1、D/D≦0.1、及び、W/L≦0.06の関係を満たすことを必要とする。
【0027】
中実糸モジュールが上記のD/L≧1.1、D/D≦0.1、及び、W/L≦0.06の関係を満たすことで、被処理流体がケースの軸方向に対し垂直な方向において均質に配分され、ケースの内表面近傍の中実糸についてもその表面が有効活用されることとなり、中実糸モジュールの浄化効率を高めることが可能となる。
【0028】
本発明の中実糸モジュールは、上記中実糸の充填率が、55~70%であることが好ましい。
【0029】
ここで「充填率」とは、下記式(1)により算出される値をいう。
糸断面積 × 中実糸本数 ÷ (D × 円周率) × 100 ・・・ 式(1)
ここでいう糸断面積とは、中実糸の長手方向に対して垂直な方向における断面積をいい、中実糸モジュール内から無作為に抽出したn数100の中実糸サンプルの総断面積を、100で除した値として算出される。
【0030】
より具体的には、以下のとおり中実糸サンプルの総断面積を測定することができる。先ず、中実糸モジュール内から無作為に抽出して取り出したn数が100の中実糸サンプルを束ねて担体とし、全体にポッティング剤を浸透させて固化させて、(無作為の位置で)中実糸の長手方向に対して垂直な方向に切断する。露出した断面を、デジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス社製;VHX-7000)にて100倍の倍率で観察して撮影し、撮影画像をコンピューターに取り込む。コンピューターに取り込んだ撮影画像は画像処理ソフト(例えば、キーエンス社製;VHX-7000ソフトウェア)を用いて二値化処理し、中実糸の断面部分が暗輝度に、空隙部分が明輝度になるように閾値を決めて、中実糸の断面部分のピクセル数、すなわち、暗輝度のピクセル数を計測する。撮影画像内で既知の長さを示しているスケールバーを基準として、1ピクセル当たりの面積を算出し、1ピクセル当たりの面積の値を暗輝度のピクセル数に乗じ、さらに100で除することで、糸断面積が算出される。糸断面積を円換算した値は、中実糸モジュールを処理流体から対象物質を除去する目的で使用する場合、処理効率の観点から50~300μmが好ましく、70~200μmがより好ましい。
【符号の説明】
【0031】
100 中実糸モジュール
101 ケース
102 担体
103 ヘッダ
104 連通口
105 テーパー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7