(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076499
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】浄化モジュール
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
A61M1/36 163
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188061
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮本 大樹
(72)【発明者】
【氏名】坪井 拓也
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077BB03
4C077CC04
4C077EE01
4C077KK06
4C077KK07
4C077MM07
(57)【要約】
【課題】本発明は、ケースの端部、担体の外表面、及び、ヘッダーの内表面、で分画される所定の空間における被処理流体の滞留部が極小化された、効率性かつ安全性の高い浄化モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、円筒状のケースと、該ケース内部に充填され、その一部が該ケースの端面から延出した、担体と、上記ケースの端部と、上記延出した担体とを覆う、ヘッダーと、を備え、上記ヘッダーは、上記担体の長手方向の表面に相対する側面部と、上記担体の径方向の表面に相対する閉塞部と、上記側面部と上記閉塞部との間に位置する境界部と、にそれぞれ分画され、上記ヘッダーにおける上記側面部と上記延出した担体との間に形成される空間をA1、上記ヘッダーにおける上記閉塞部と上記延出した担体との間に形成される空間をA2、とするとき、上記A1と上記A2とが連通している浄化モジュールを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケースと、
該ケース内部に充填され、その一部が該ケースの端面から延出した、担体と、
前記ケースの端部と、前記延出した担体とを覆う、ヘッダーと、を備え、
前記ヘッダーは、前記担体の長手方向の表面に相対する側面部と、前記担体の径方向の表面に相対する閉塞部と、前記側面部と前記閉塞部との間に位置する境界部と、にそれぞれ分画され、
前記ヘッダーにおける前記側面部と前記延出した担体との間に形成される空間をA1、
前記ヘッダーにおける前記閉塞部と前記延出した担体との間に形成される空間をA2、とするとき、
前記A1と前記A2とが連通している、浄化モジュール。
【請求項2】
前記ヘッダーにおける前記境界部の内表面に、前記担体の径方向の外側に向けて直径が拡大するテーパー部が設けられている、請求項1記載の浄化モジュール。
【請求項3】
前記ヘッダーにおける前記境界部の内表面が、前記担体の径方向の外側に向けて直径が拡大するテーパーである、請求項1記載の浄化モジュール。
【請求項4】
前記ヘッダーが、前記テーパー部又は前記テーパーを含む部材H1と、それ以外の部材H2とから構成される、請求項2又は3記載の浄化モジュール。
【請求項5】
前記部材H1が、前記担体の径方向の表面に当接するフィルター部を含む、請求項4記載の浄化モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
浄化モジュールは、内部に充填された担体の特性を利用して、被処理流体中の対象物質を除去するために用いられる。浄化モジュールは一般的に上記の担体以外に、円筒状のケースと、該ケースの端部に配置されるヘッダーと、からなる。
【0003】
担体としては中実又は中空の多孔質繊維、すなわち、中実糸や中空糸が選択されることが多いが、これら多孔質繊維を束にしてケースの内部に高密に充填する場合には、ケースの軸方向の長さよりも長い多孔質繊維を束にしてケース内に挿入し、その後、ケースの端面から延出した余剰の多孔質繊維をカットする手法が通常である。しかしケースの破損等を回避するためには、多孔質繊維の束、つまり担体がケースの端面から一切延出しないようにカットをすることは不可能であり、ケースの端面から多少の担体が延出した状態となる。
【0004】
この場合ヘッダーは、ケースの端部と、多少延出した担体と、の双方を覆うように配置されるが、その配置の際に担体を押し潰すこと等が無いよう、担体よりも大きめの、若干の余裕ある内径に設計されることが通常である。
【0005】
上記のようにケース端部から延出した担体、及び、大きめに設計されたヘッダーを備える浄化モジュールが構成された結果として、該浄化モジュールは、ケースの端部、担体の外表面、及び、ヘッダーの内表面、で分画される、所定の空間を有することとなる。
【0006】
例えば特許文献1には、このような空間を有する浄化モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記のように形成された空間では、被処理流体の滞留部が生じ、例えば被処理流体が血液である場合には滞留部での凝固が懸念される等、浄化モジュールが奏する浄化作用に悪影響を与えかねないのが現状であった。
【0009】
そこで本発明は、上記空間における被処理流体の滞留部が極小化された、効率性かつ安全性の高い浄化モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、円筒状のケースと、該ケース内部に充填され、その一部が上記ケースの端面から延出した、担体と、上記ケースの端部と、上記延出した担体とを覆う、ヘッダーと、を備え、上記ヘッダーは、上記担体の長手方向の表面に相対する側面部と、上記担体の径方向の表面に相対する閉塞部と、上記側面部と上記閉塞部との間に位置する境界部と、にそれぞれ分画され、上記ヘッダーにおける上記側面部と上記延出した担体との間に形成される空間をA1、上記ヘッダーにおける上記閉塞部と上記延出した担体との間に形成される空間をA2、とするとき、上記A1と上記A2とが連通している浄化モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、極めて簡便な構造により浄化モジュール内部に形成される空間の形状を好適化することができ、その結果として、信頼性及び安全性等が顕著に向上した浄化モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の浄化モジュールの一実施形態を例示する縦断面図である。
【
図2】本発明の浄化モジュールが備えるヘッダーに設けられた、テーパー部又はテーパーの複数例を示す部分縦断面図である。
【
図3】本発明の浄化モジュールが備えるヘッダーに設けられた、テーパー部又はテーパーの構成の複数例を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のモジュールは、円筒状のケースを備えることを必要とする。
【0014】
円筒状のケースの材質としては、例えば、樹脂又は金属が挙げられる。中でも本発明の浄化モジュールの被処理流体が血液である場合には、使い捨てとなるため樹脂が好ましい。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)が挙げられる。
【0015】
本発明のモジュールは、上記ケース内部に充填され、その一部が該ケースの端面から延出した、担体を備えることを必要とする。
【0016】
ここで「ケースの端面」とは、上記ケースの最端部における、ケースの軸方向に対し垂直な方向の面をいう。
【0017】
円筒状のケース内部に充填される担体としては、例えば、複数の糸を束ねた糸束、又は、複数のビーズが挙げられるが、大きな表面積を確保でき、かつ流路抵抗が制御し易い、糸束が好ましく、多孔質繊維を束ねた糸束がより好ましい。
【0018】
担体となる糸束を構成する多孔質繊維、又は、ビーズの材質としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリスルチレン、ポリカーボネート、セルロース、セルローストリアセテート又はエチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。中でも本発明の浄化モジュールの被処理流体が血液である場合には、タンパク質の吸着特性を有する、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル又はセルロースが好ましい。なお多孔質繊維の形態としては、中空糸もしくは中実糸又はその組み合わせ(混合)のいずれも構わない。
【0019】
担体となる糸束を構成する多孔質繊維の径(中空糸の場合は糸内径、中実糸の場合は糸外径)は、浄化性能を維持しつつ製造時の破損等を回避するため、10~1000μmが好ましく、20~400μmがより好ましく、50~190μmがさらに好ましい。
【0020】
本発明の浄化モジュールは、上記ケースの端部と、上記延出した担体とを覆う、ヘッダーを備えることを必要とする。
【0021】
ヘッダーは、ケースの端部と、延出した担体との双方を覆うように配置されるが、その際に担体を押し潰すこと等が無いよう、担体よりも大きな内径に設計される。ヘッダーの材質としては、円筒状のケースと同様のものが好ましい。
【0022】
本発明の浄化モジュールが備えるヘッダーは、上記担体の長手方向の表面に相対する側面部と、上記担体の径方向の表面に相対する閉塞部と、上記側面部と上記閉塞部との間に位置する境界部と、にそれぞれ分画される。そして本発明の浄化モジュールにおいては、上記ヘッダーにおける上記側面部と上記延出した担体との間に形成される空間をA1、上記ヘッダーにおける上記閉塞部と上記延出した担体との間に形成される空間をA2、とする。
【0023】
本発明のモジュールでは、上記A1と上記A2とが連通していることを必要とする。A1とA2とが連通することで、これらの空間でそれぞれ生じる被処理流体の滞留部を低減化することができる。
【0024】
本発明の浄化モジュールが備えるヘッダーにおける上記境界部の内表面には、上記担体の径方向の外側に向けて直径が拡大する、テーパー部が設けられることが好ましい。そのようなテーパー部が設けられることで、上記A1と上記A2とが連通して形成された空間における被処理流体の滞留部を、より低減化することができる。
【0025】
上記のようなテーパー部の角度は一定でも構わないし、途中で変化しても構わない。また、上記のようなテーパー部は上記ヘッダー境界部の内表面に連続的に設けても構わないし、間欠的に設けても構わない。なお間欠的にテーパー部を設ける場合には、上記A1と上記A2とが連通して形成された空間における被処理流体の流れが円滑なものとなるよう、テーパー部同士が互いに等間隔に設けられることが好ましい。
【0026】
本発明の浄化モジュールが備えるヘッダーにおける上記境界部の内表面は、上記担体の径方向の外側に向けて直径が拡大する、テーパーであることが好ましい。すなわち、上記境界部の内表面の全領域に亘って、テーパーが設けられていることが好ましい。そのようなテーパーが設けられることで、上記A1と上記A2とが連通して形成された空間における被処理流体の滞留部を、さらに低減化することができる。
【0027】
上記のようなテーパー部又はテーパーは、被処理流体の流入口側のヘッダーと流出口側のヘッダーとの両方に設けても構わないし、一方にのみに設けても構わない。
【0028】
本発明の浄化モジュールが備えるヘッダーは、上記テーパー部又は上記テーパーを含む部材H1と、それ以外の部材H2とから構成されることが好ましい。テーパー部又はテーパーが別部材とされることで、テーパー部又はテーパーの成型や調整が容易となり、かつ、別部材である部材H1に別途の機能を付与することも可能となる。
【0029】
上記部材H1は、上記担体の径方向の表面に当接するフィルター部を含むことが好ましい。部材H1がフィルター部を含むこと、すなわち上記テーパーを含む部材H1にフィルターとしての機能を付与することで、上記A1と上記A2とが連通して形成された空間における被処理流体の滞留部を低減化しつつ、担体へ流入又は担体から流出する被処理流体の流れを、より好適化することができる。なお例えば担体が糸束である場合において、フィルター部に担体の漏出防止の機能を付与するには、フィルター部の目開きを糸(多孔質繊維)の径(中空糸の場合は糸内径、中実糸の場合は糸外径)よりも小さくすればよい。
【0030】
上記フィルター部を含む部材H1は、被処理流体の流入口側のヘッダーと流出口側のヘッダーとの両方に設けても構わないし、一方にのみに設けても構わない。
【0031】
上記フィルター部を含む部材H1の材質としては、円筒状のケース及びヘッダーと同様のものが好ましい。
【0032】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、本発明の浄化モジュールの一実施形態を例示する縦断面図である。浄化モジュール100は、円筒形状のケース101と、ケース101の内部に充填され、その一部が該ケースの端面から延出した、担体102と、ケース101の両端部と、それぞれ延出した担体102とを覆う、二個のヘッダー200とを備えており、各々のヘッダー200には、浄化モジュールの内部に通じる連通口が設けられている。浄化モジュールの使用方法は特に限定されないが、例えば、一方の連通口を被処理流体の流入口201とし、また他方の連通口を被処理流体の流出口202とすることができる。
【0034】
ケース101とヘッダー200とは、気密性が保たれるように互いに接合されることが好ましい。ケース101とヘッダー200との接合の手段としては、例えば、ねじ込み、超音波溶着による融着、接着剤を用いた接着、又は、それらの組み合わせが挙げられるが、簡易な超音波融着が好ましい。なお気密性を高めるため、ケース101とヘッダー200との間にOリングなどの弾性体を配置しても構わない。
【0035】
ヘッダー200は、閉塞部203と、側面部204と、境界部205とにそれぞれ分画され、側面部204と延出した担体102との間に形成される空間A1(301)と、閉塞部203と延出した担体102との間に形成される空間をA2(302)とが、連通している。
【0036】
図2は、本発明の浄化モジュールが備えるヘッダーに設けられた、テーパー部又はテーパーの複数例を示す部分縦断面図である。境界部205の内表面には、担体102の径方向の外側に向けて直径が拡大するテーパー部208が設けられているか、境界部205の内表面が、担体102の径方向の外側に向けて直径が拡大するテーパー208となっている。
【0037】
図3は、半発明の浄化モジュールが備えるヘッダーに設けられた、テーパー部又はテーパーの構成の複数例を示す部分縦断面図である。ヘッダー200はテーパー部又はテーパーを含む部材H1(206)と、それ以外の部材H2(207)とから構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の浄化モジュールは、水又は血液等の浄化に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
100 浄化モジュール
101 ケース
102 担体
200 ヘッダー
201 流入口
202 流出口
203 閉塞部
204 側面部
205 境界部
206 部材H1
207 部材H2
208 テーパー部又はテーパー
301 空間A1
302 空間A2