(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000765
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
F24F1/02 411A
F24F1/02 411D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099656
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小和田 芳夫
(72)【発明者】
【氏名】戸部 隆久
(72)【発明者】
【氏名】狩野 靖明
【テーマコード(参考)】
3L051
【Fターム(参考)】
3L051BJ10
(57)【要約】
【課題】空調装置に生じる振動に起因した減圧器の損傷を抑制する。
【解決手段】圧縮機20、加熱器40、減圧部70、及び冷却器30を含む冷媒回路を筐体内に収容した空調装置であって、前記冷却器30は、冷却器本体と前記冷却器本体を収容する冷却器ケースとを含み、前記減圧部は、冷却器本体と弾性部材とにより固定されているか、冷却器ケースの内側面と弾性部材とにより固定されているか、または、冷却器ケースの外側面と弾性部材とにより固定されている、空調装置を提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、加熱器、減圧部、及び冷却器を含む冷媒回路を筐体内に収容した空調装置であって、
前記冷却器は、冷却器本体と前記冷却器本体を収容する冷却器ケースとを含み、
前記減圧部は、前記冷却器本体又は前記冷却器ケースの何れか一方と弾性部材とにより固定されている、空調装置。
【請求項2】
前記減圧部は、前記冷却器本体と共に前記冷却器ケースに収容される、請求項1記載の空調装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記冷却器本体の周囲に設けられ、前記冷却器に導入され又は前記冷却器から導出される空気の漏れを防止する気洩れ防止部材である、請求項1記載の空調装置。
【請求項4】
前記減圧部がキャピラリチューブである、請求項1記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒回路を構成する機器(圧縮機、凝縮器、蒸発器、減圧部など)や送風機などの空調に必要な機器一式及びこれらを制御する制御装置を筐体に収容した小型の空調装置が知られている。
【0003】
このような空調装置の一例として、特許文献1には、筐体内部に、コンプレッサ、凝縮器としての外気用熱交換部と蒸発器としての内気用熱交換部とが一体化された複合熱交換器、複合熱交換器の側面に設けられた膨張弁(減圧部)としてのキャピラリチューブ、内気用ダクト、及び外気用ダクト等が収容されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、キャピラリチューブは、凝縮器と蒸発器の間に設けられ、凝縮器からの冷媒配管と蒸発器への冷媒配管とに接続している。つまり、キャピラリチューブと冷媒配管との接続部である冷媒入口と冷媒出口とが、それぞれ凝縮器と蒸発器に固定されている。
上記した従来の空調装置においても、キャピラリチューブは、キャピラリチューブに対する冷媒の入口が外気用熱交換部(凝縮器)に、冷媒の出口が内気用熱交換部(蒸発器)に固定され、中間部分は螺旋状に巻かれて外気用熱交換部の側面に沿って固定されずに配置されている。
【0006】
ところで、空調装置では、圧縮機の起動に伴う振動や、例えば、空調装置が車両に搭載された場合の車両の走行に伴う振動が空調装置に伝達され、振動によって空調装置を構成する各部品が筐体内において変位する。特に、蒸発器とキャピラリチューブとの重量や大きさの差異から、蒸発器とキャピラリチューブとの変位差が大きく、キャピラリチューブと冷媒配管との接続部に応力が集中して破損を生じる虞がある。
一方、上述したように、小型の空調装置は比較的狭い限られた空間に設置して使用されるものであり、より一層の小型化が求められることから、筐体に収容される機器のレイアウト変更や、筐体に収容可能な機器及び部品やそれらの数に制限がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、空調装置に生じる振動に起因した減圧器の損傷を抑制すること、を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る空調装置は、圧縮機、加熱器、減圧部、及び冷却器を含む冷媒回路を筐体内に収容した空調装置であって、前記冷却器は、冷却器本体と前記冷却器本体を収容する冷却器ケースとを含み、前記減圧部は、前記冷却器本体又は前記冷却器ケースの何れか一方と弾性部材とにより固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空調装置に生じる振動に起因した減圧器の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る空調装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る空調装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る空調装置の内部の概略構成を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る空調装置の内部の概略構成を示す背面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る空調装置の内部の概略構成を示す左側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る空調装置に適用される冷却器及び減圧器の配置について説明する説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る空調装置に適用される冷却器及び減圧器の配置の他の例について説明する説明図である。
【
図8】変形例に係る減圧器としてのキャピラリチューブの配置例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1から
図5に、本実施形態に係る空調装置1の概略構成を示す。空調装置1は、筐体10、筐体10内に収容される圧縮機20、冷却器(蒸発器)30、加熱器(凝縮器)40、第1送風機50、第2送風機60、減圧器(減圧部)70、及び、制御装置80を備えている。圧縮機20、冷却器30、加熱器40、及び減圧器70は冷媒配管91~94によって接続され、冷媒が循環する冷媒回路を構成している。
【0013】
図1~
図5に示す空調装置1では、空調装置1の前後方向に沿って冷却器30及び加熱器40の内部を通過する空気が流通する。つまり、空調装置1では、空調装置1の前後方向が冷却器30及び加熱器40における空気の流通方向となる。冷却器30については背面から正面に向かって空気を流通させ、加熱器40については正面から背面に向かって空気を流通させることで、冷却器30及び加熱器40を通過する空気と冷媒との熱交換を行わせる。
【0014】
図1に示すように、筐体10の正面において、制御装置80の収容位置に対応する位置にコントロールパネル11が設けられ、冷却器30の収容位置に対応する位置に吹出口12が設けられ、第2送風機60の収容位置に対応する位置に空気の吸込口13が設けられている。
筐体10の背面において、第1送風機50の収容位置に対応する位置に空気の吸込口(不図示)が設けられ、加熱器40の収容位置に対応する位置に排気口(不図示)が設けられている。
【0015】
冷却器30は、冷却器本体301を冷却器ケース302に収容して構成されている(
図6参照)。冷却器30は、冷却器ケース302の空気吸込用開口部を介して第1送風機50から送風された空気を導入し、取り込んだ空気を冷却器本体301において熱媒体と熱交換させて、吹出用開口部31から筐体10に設けられた吹出口12に冷風を送出する。
冷却器本体301の周囲には、冷却器ケース302に導入される空気又は導出される空気の冷却器ケース302の外部に対する漏れを防止するための気漏れ防止部材としての弾性部材303が設けられている。
【0016】
同様に、加熱器40は加熱器本体を加熱器ケース(いずれも図示せず)に収容して構成されている。加熱器40は、加熱器ケースの空気吸込用開口部を介して第2送風機60から送風された空気を導入し、取り込んだ空気を加熱器本体において熱媒体と熱交換させて、排気用開口部41から筐体10の排気口を介して送出する。
【0017】
減圧器70は、
図5及び
図6に示すように、冷却器本体301と弾性部材303との間に設けられ、冷却器本体301と弾性部材303とに固定された状態で収容されている。より具体的には、減圧器70としては、所謂キャピラリチューブを適用することができ、キャピラリチューブは、冷却器30の高さ方向に亘る大径の螺旋状に巻かれた状態となっている。この状態で、減圧器70は、冷却器本体301の送風方向と直交する側面に対して、弾性部材303によって減圧器70の変位が抑制されるように、冷却器本体301と弾性部材303との間に挟持されている。そして、減圧器70は、冷却器本体301と弾性部材303とによって挟持された状態で冷却器ケース302に収容されている。
【0018】
減圧器70の冷媒入口側は冷媒配管92に接続され、減圧器70の冷媒出口側は冷媒配管93に接続されている。冷媒配管92,93と減圧器70との接続部も冷却器ケース302内において、冷却器本体301と弾性部材303によって固定されている。
なお、減圧器70は、必ずしも冷却器本体301に固定される必要はなく、例えば、
図7に示すように、冷却器ケース302の内壁面と弾性部材303によって挟持されることで固定されてもよい。
【0019】
なお、
図6及び
図7は、冷却器本体301、冷却器ケース302、弾性部材303及び減圧器70の関係を理解が容易となるように簡素化して表現したものであり、冷媒配管92,93の図示を省略している。
【0020】
上述のように、
図5から
図7の例では、減圧器70のキャピラリチューブを冷却器30の高さ方向に亘る大径の螺旋状に巻かれた状態で冷却器ケース302に収容している。このようにすることで、キャピラリチューブを小径に巻いた場合に比して、減圧器70において空調装置1の幅方向の寸法を小さくすることができ、冷却器30を大型化させることなく冷却器ケース302に収容することができる。
【0021】
なお、減圧器70を冷却器ケース302に収容せずに、冷却器ケース302の外側面に設けた状態で減圧器70を弾性部材と冷却器ケース302の外側面とによって挟持することで固定してもよい。
【0022】
制御装置80は、インバータ(不図示)を含む各種電子部品が取り付けられた基板(不図示)を有し、例えば、電源から供給された電力の電圧や周波数を変換して出力することにより、圧縮機20を稼働させるモーターの回転数を制御する。また、制御装置80は、コントロールパネル11に入力された信号を受信し、受信した信号に従って空調装置1に対する制御を行う。
【0023】
続いて、本実施形態に係る空調装置1の筐体10内における各機器のレイアウトについて説明する。
図2から
図5に示すように、空調装置1の筐体10内には、底板15上に圧縮機20、加熱器40、及び第2送風機60を配置し、これらの鉛直方向上側に冷却器30、第1送風機50、制御装置80を配置している。
【0024】
特に、冷却器30を通過する空気の流通方向と直交する方向、かつ、冷却器30の水平方向(正面視で左右方向)において、冷却器30の一方側(正面視で右側)、かつ、冷却器30の鉛直方向下方側に圧縮機20を配置している。また圧縮機20の鉛直方向上側に、冷却器30に隣接するように制御装置80を配置している。なお、圧縮機20の前方にはアキュームレータ22が配置されている。
【0025】
より具体的には、底板15上には、正面視で加熱器40の右側に圧縮機20、加熱器40の前方側に第2送風機60が配置されている。加熱器40の鉛直方向上側かつ加熱器40よりもやや前方側に、鉛直方向において加熱器40と部分的に重なるように冷却器30が配置されている。正面視で、冷却器30の右側に制御装置80が配置され、冷却器30の背面側には第1送風機50が配置されている。
【0026】
冷却器30の上面には、冷却器30を通過して圧縮機20に戻る冷媒の冷媒流出口33が設けられている。冷媒流出口33と圧縮機20とは冷媒配管94によって接続されている。冷媒配管94は、冷媒流出口33から、制御装置80の背面側に引き回された後に制御装置80の下側を通って圧縮機20の前方側に接続される。
【0027】
加熱器40の上面には、加熱器40の一方側(正面視で左側)、かつ、加熱器40の後方側に、圧縮機20から吐出された高圧冷媒を流入させる冷媒流入口42が設けられている。また、加熱器40の上面において、冷媒流入口42より前方側に、加熱器40を通過して減圧器70へ向かって流出する冷媒流出口43が設けられている。
【0028】
つまり、加熱器40において、冷媒流入口42は、加熱器40の上面から冷媒が流入するように設けられ、冷媒流出口43は、加熱器40の上面から冷媒が流出するように設けられている。
圧縮機20と加熱器40の冷媒流入口42とは冷媒配管91によって接続され、冷媒流出口43と減圧器70とは冷媒配管92によって接続され、減圧器70と冷却器30の冷媒流入口(不図示)とは冷媒配管93によって接続されている。減圧器70、冷媒配管92及び冷媒配管93はいずれも、冷却器30に設けられている。
【0029】
(冷媒の流れについて)
上記のように接続された冷媒回路において、冷媒は、圧縮機20によって圧縮されて高圧のガス冷媒となって吐出される。高圧のガス冷媒は、冷媒配管91を通過して冷媒流入口42を介して加熱器40に流入し、第2送風機60から送風されて加熱器40を通過する空気と熱交換することにより放熱する。
【0030】
加熱器40の冷媒流出口43から流出した高圧冷媒は、冷媒配管92を通過して減圧器70に流入し、減圧器70によって減圧されて膨張し、低圧冷媒となる。減圧器70において低圧になった冷媒は、冷媒配管93を通過して冷却器30に流入する。冷却器30に流入した低圧冷媒は、第1送風機50によって送風されて冷却器30を通過する空気と熱交換することにより吸熱し、冷却器30の冷媒流出口33を介して流出する。冷却器30を流出した冷媒は、冷媒配管94を流れ、アキュームレータ22を介して圧縮機20へ戻る。圧縮機20に流入した冷媒は、再び圧縮され、上記循環を繰り返す。
【0031】
上述の通り、冷媒回路を循環する過程において、減圧器70によって減圧されて膨張した冷媒は、低圧冷媒となっている。このため、減圧器70から圧縮機20に至る経路において、特に、減圧器70、冷媒配管92,93及び冷却器本体301の外部にはドレン水が付着しやすく、付着したドレン水はそれぞれ鉛直方向下方に滴下しやすい。
【0032】
このとき、空調装置1において、減圧器70及び冷媒配管92,93は、いずれも、空調装置1の正面視で左側に集約して配置され、かつ、減圧器70及び冷媒配管92,93が冷却器本体301と共に冷却器ケース302に一体的に収容されており、外部に露出していない。さらに、圧縮機20や制御装置80などの電装品は、冷却器30を挟んで減圧器70、冷媒配管92,93とは反対側に位置している。
【0033】
したがって、減圧器70、冷媒配管92,93から、圧縮機20及び制御装置80に対してドレン水が滴下することがない。特に減圧器70に生じるドレン水が、冷却器本体301において生じるドレン水と共に、加熱器40における加熱器本体の表面に導かれることで、加熱器40をより冷却することができ、システム効率の向上及びドレン排水量を低減させることができる。
【0034】
(変形例)
図8に、減圧器70としてのキャピラリチューブの配置例について説明する。
図8(A)から
図8(D)には、冷却器本体301の周囲に弾性部材303が設けられ、減圧器70が弾性部材303の外側に配置された例を示している。この状態で、冷却器ケース302に収容することで、減圧器70が冷却器ケース302と弾性部材303とにより挟持されて固定される。
【0035】
図8(A)には、弾性部材303によって覆われた冷却器本体301の側面において、減圧器70としてのキャピラリチューブを冷却器本体301の鉛直方向に比較的小径に巻いて複数個配列するように設けた例を示している。
【0036】
図8(B)には、弾性部材303によって覆われた冷却器本体301の側面において、減圧器70としてのキャピラリチューブを冷却器本体301の鉛直方向に沿って複数回往復させるように設けた例を示している。
【0037】
図8(C)には、弾性部材303によって覆われた冷却器本体301の側面及び上面に沿って減圧器70としてのキャピラリチューブ複数回往復させるように設けた例を示している。
【0038】
図8(D)には、鉛直方向よりも奥行方向が大きく、すなわち、開口部が小さく形成された冷却器本体301における減圧器70の配置例を示している。この場合、弾性部材303によって覆われた冷却器本体301の側面に、減圧器70としてのキャピラリチューブを側面全体に亘る大径の螺旋状に設けている。
【0039】
このようにすることで、キャピラリチューブを小径の螺旋状に巻いた場合に比して、減圧器70において空調装置1の幅方向の寸法を小さくすることができ、冷却器30を大型化させることなく冷却器ケース302に収容することができる。
【0040】
以上述べた如く本実施形態によれば、減圧器70を冷却器本体301又は冷却器ケース302の何れか一方と弾性部材303とにより固定しているので、空調装置1が振動して、振動が空調装置1の構成部品に伝達された場合であっても、冷却器本体301と減圧器70との変位差が生じにくい。このため、減圧器70、減圧部と冷媒配管92,93との接続部に対して空調装置に生じる振動に起因した応力が集中せず、減圧器の損傷を抑制することができる。
【0041】
また、減圧器70を、既存の部品である冷却器本体301又は冷却器ケース302のいずれか一方と弾性部材303とによって固定しているため、減圧器の損傷を抑制しながら、部品点数を増加させず、空調装置を大型化させることがない。また、減圧器70を冷却器本体301と一体的に冷却器ケース302に収容したため、冷却器30で生じるドレン水だけでなく、減圧器70から冷却器30に至る経路において生じるドレン水も加熱器40の表面に導くことでシステム効率の向上及びドレン排水量を低減することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1:空調装置、10:筐体、20:圧縮機、30:冷却器、40:加熱器、70:減圧器(減圧部)、91~94:冷媒配管、301:冷却器本体、302:冷却器ケース、303:弾性部材