(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076501
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】管路図設計方法、管路図設計装置及び管路図設計プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240530BHJP
G06F 30/18 20200101ALI20240530BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20240530BHJP
G06F 113/14 20200101ALN20240530BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/18
G06F30/12
G06F113:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188066
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】502167083
【氏名又は名称】株式会社管総研
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】岩野 裕次
(72)【発明者】
【氏名】林 光夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 新平
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA03
5B146AA04
5B146DG01
5B146DJ15
5B146EA13
5B146EC09
5B146FA05
(57)【要約】
【課題】実際の布設工事に活用できる管割図を自動で生成可能な管路図設計方法を提供する。
【解決手段】直管及び/または切管を配置した管路図を設計する管路図設計方法であって、始点、終点、通過指示点をフィット点とするスプライン曲線を生成して表示するスプライン曲線生成ステップと、始点から終点に向けて直管及び/または切管を接合部がスプライン曲線上に位置するように仮想配置する管路仮想配置ステップと、仮想配置した直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する接合角度算出ステップと、各接合角度が所定の許容範囲に収まるか否かを判定する接合角度判定ステップと、各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、管路仮想配置ステップで仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、始点から終点に到るスプライン曲線を管割図に置き換える実管路配置ステップと、を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAD装置を用いて直管及び/または切管を配置した管路図を設計する管路図設計方法であって、
地図上で指定された始点と終点、及び、前記始点と前記終点との間に選択的に指定された通過指示点をフィット点とするスプライン曲線を生成して表示するスプライン曲線生成ステップと、
前記始点から前記終点に向けて複数の直管及び/または切管を、管同士の接合部が前記スプライン曲線上に位置するように仮想配置する管路仮想配置ステップと、
前記管路仮想配置ステップで仮想配置した複数の直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する接合角度算出ステップと、
各接合角度が所定の許容範囲に収まるか否かを判定する接合角度判定ステップと、
各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置ステップで仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、前記始点から前記終点に到る前記スプライン曲線を管割図に置き換える実管路配置ステップと、
を実行する管路図設計方法。
【請求項2】
前記フィット点を移動し、または、前記フィット点の接線または曲率を調整することで前記スプライン曲線の形状を調整するスプライン曲線調整ステップをさらに備え、
前記接合角度判定ステップで前記接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定される場合に、該当する接合部に対して前記スプライン曲線調整ステップを実行した後に、前記管路仮想配置ステップと前記接合角度算出ステップを再度実行する請求項1記載の管路図設計方法。
【請求項3】
前記接合角度判定ステップで前記接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定される場合に、該当する接合部にアラート表示するアラート表示ステップをさらに備えている請求項1または2記載の管路図設計方法。
【請求項4】
各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置ステップで設定された接合部に継手シンボルを表示する継手シンボル表示ステップを備えている請求項1記載の管路図設計方法。
【請求項5】
各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置ステップで仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、前記始点から前記終点に到る管割図及び材料表を生成する管割図生成ステップを備えている請求項1記載の管路図設計方法。
【請求項6】
CAD機能を用いて直管及び/または切管を配置した管路図を設計する管路図設計装置であって、
地図上で指定された始点と終点、及び、前記始点と前記終点との間に選択的に指定された通過指示点をフィット点とするスプライン曲線を生成して表示するスプライン曲線生成部と、
前記スプライン曲線に沿うように、前記始点から前記終点に向けて複数の直管及び/または切管を、管同士の接合部が前記スプライン曲線上に位置するように仮想配置する管路仮想配置部と、
前記管路仮想配置部で仮想配置した複数の直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する接合角度算出部と、
各接合角度が所定の許容範囲に収まるか否かを判定する接合角度判定部と、
各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置部で仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、前記始点から前記終点に到る前記スプライン曲線を管割図に置き換える実管路配置部と、
を備えている管路図設計装置。
【請求項7】
前記フィット点を移動し、または、前記フィット点の接線または曲率を調整することで前記スプライン曲線の形状を調整するスプライン曲線調整部をさらに備え、
前記接合角度判定部は、前記接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定する場合に、全ての接合部の接合角度が所定の許容範囲に収まるまで、前記スプライン曲線調整部と、前記管路仮想配置部と、前記接合角度算出部を繰返し作動させる請求項6記載の管路図設計装置。
【請求項8】
CAD機能を用いて直管及び/または切管を配置した管路図を設計する管路図設計方法をコンピュータに実行させる管路図設計プログラムであって、
地図上で指定された始点と終点、及び、前記始点と前記終点との間に選択的に指定された通過指示点をフィット点とするスプライン曲線を生成して表示するスプライン曲線生成処理と、
前記スプライン曲線に沿うように、前記始点から前記終点に向けて複数の直管及び/または切管を、管同士の接合部が前記スプライン曲線上に位置するように仮想配置する管路仮想配置処理と、
前記管路仮想配置処理で仮想配置した複数の直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する接合角度算出処理と、
各接合角度が所定の許容範囲に収まるか否かを判定する接合角度判定処理と、
各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置処理で仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、前記始点から前記終点に到る前記スプライン曲線を管割図に置き換える実管路配置処理と、
を実行する管路図設計プログラム。
【請求項9】
前記接合部に対応するフィット点を移動し、または、前記フィット点の接線または曲率を調整することで前記スプライン曲線の形状を調整するスプライン曲線調整処理をさらに備え、
前記接合角度判定処理は、前記接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定する場合に、全ての接合部の接合角度が所定の許容範囲に収まるまで、前記スプライン曲線調整処理と、前記管路仮想配置処理と、前記接合角度算出処理を繰返し実行させる請求項8記載の管路図設計プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路図設計方法、管路図設計装置及び管路図設計プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体供給施設の設置図面情報を、流体供給管の交差接続点と、一連に連なる複数の流体供給管の集合体であり且つ前記交差接続点間をつなぐ一本の管路とからなる配管網として記憶する記憶手段と、その記憶手段の記憶情報のうちの工事対象領域を特定する領域特定手段と、その領域特定手段にて特定された前記工事対象領域の前記設置図面情報を、工事用図面を作成する作図装置に出力する出力手段とが設けられた図面情報管理装置が開示されている。流体供給管として上水道管やガス管等などが対象となる。
【0003】
当該図面情報管理装置では、実際の管路の布設工事で参照できるように、設計者によって管割処理が行なわれ、交点間を接続する1本の管路が、複数本の直管に分割されて其々の直管の布設位置が明確に規定された管割図が生成される。
【0004】
従来、管割図を含む管路図設計用のアプリケーションプログラムがインストールされた計算機である管路図設計装置を用いて、新たに布設する管路や既存の管路を更新する管路を設計する場合には、設計者であるオペレータが以下の手順で管割処理を含む管路図の設計を行なっていた。
【0005】
即ち、オペレータは、表示装置の画面上に表示される地図レイヤに管路図レイヤを重畳させた状態で、地図レイヤに表示される地図を指標にして、管路図レイヤの所定位置に曲管等の異形管の配置位置を指示入力し、指示入力した複数の異形管同士の間に複数の直管を配置するように入力操作していた。このようにして異形管同士を複数の直管で接続することで、直線状の計画配管ルートが作成される。異形管を配する位置を交点と称し、交点同士の間に複数の直管が配されることになる。
【0006】
このような計画配管ルートは、地図レイヤに示される道路等に沿って配されることが多く、道路が湾曲している場合には、湾曲した道路に複数の直管が沿うようにいくつかの通過指示点を設定し、通過指示点を通過しかつ各直管の接合部での接合角度が許容接合角度を超えないように、設計者が手動操作して各直管の配置を決定することで計画配管ルートが作成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような設計者により個々の直管の配置を手動設定することで計画配管ルートに沿った管割処理を行なう作業は非常に煩雑であるので、管割処理を自動で実行する自動管割機能が組み込まれた管路図設計装置も存在する。
【0009】
自動管割機能が組み込まれた管路図設計装置は、
図1(a)に示すように、各交点IP1~IP4の其々の交点間を直線状に接続し、直線状の経路に沿って順番に直管を配置するように構成されていた。そのため、交点IP1からIP3を結ぶ主管路1のうち、交点IP2で分岐する分岐管路2を構成する場合に分岐点IP2と分岐先の交点IP4とを接続する分岐管路2が主管路1に対して任意の傾斜角度で傾斜するような場合に、上述した管路図設計装置の自動管割機能を用いて管割処理を行なうと、
図1(b)に示すように、分岐点IP2に配置される二受T字管等の異形管DPの受口が本来の形状とは異なる角度に設計されるという不都合な事態が発生していた。
【0010】
また、道路が湾曲している場合には、直管SPの接合部の許容接合角度を利用した曲げ配管ができずに直線状に配置されてしまうという不都合な事態が発生するという課題があった。
【0011】
本来は、
図1(c)に示すように、分岐点IP2に配置される二受T字管等の異形管DPの受口が本来の形状に合致し、かつ、湾曲した道路に沿うように直管SPの接合部の許容接合角度を利用した曲げ配管となるべきところ、
図1(b)に示したような管割図では、実際の布設工事は不可能であるため、現実には自動管割機能を利用することができず、設計者が従前のように手入力で布設管路を選択して配置する煩雑な管割処理を行なわざるを得ないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、実際の布設工事に活用できる管割図を自動で生成可能な管路図設計方法、管路図設計装置及び管路図設計プログラムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による管路図設計方法の第一の特徴構成は、CAD装置を用いて直管及び/または切管を配置した管路図を設計する管路図設計方法であって、地図上で指定された始点と終点、及び、前記始点と前記終点との間に選択的に指定された通過指示点をフィット点とするスプライン曲線を生成して表示するスプライン曲線生成ステップと、前記始点から前記終点に向けて複数の直管及び/または切管を、管同士の接合部が前記スプライン曲線上に位置するように仮想配置する管路仮想配置ステップと、前記管路仮想配置ステップで仮想配置した複数の直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する接合角度算出ステップと、各接合角度が所定の許容範囲に収まるか否かを判定する接合角度判定ステップと、各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置ステップで仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、前記始点から前記終点に到る前記スプライン曲線を管割図に置き換える実管路配置ステップと、を実行する点にある。
【0014】
スプライン曲線生成ステップでは、地図上で指定された始点と終点、さらに始点と終点との間に選択的に指定された通過指示点をフィット点とするスプライン曲線が生成される。例えば道路が湾曲している場合に道路に沿うように通過指示点が指定されることにより、始点と終点を通り湾曲した道路に滑らかに沿うような形状のスプライン曲線が生成される。管路仮想配置ステップでは、始点から終点に向けて複数の直管及び/または切管が、管同士の接合部がスプライン曲線上に位置するように仮想配置される。仮想配置された管同士の接合部の角度が接合角度算出ステップで算出され、各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、実管路配置ステップによりスプライン曲線が仮想配置された直管及び/または切管に置き換えられる。滑らかに描かれたスプライン曲線に沿って直管及び/または切管が自動配置されることで、高い確率で接合角度が所定の許容範囲に収まるように配置され、効率的に管割作業が進行するようになる。
【0015】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記フィット点を移動し、または、前記フィット点の接線または曲率を調整することで前記スプライン曲線の形状を調整するスプライン曲線調整ステップをさらに備え、前記接合角度判定ステップで前記接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定される場合に、該当する接合部に対して前記スプライン曲線調整ステップを実行した後に、前記管路仮想配置ステップと前記接合角度算出ステップを再度実行する点にある。
【0016】
接合角度判定ステップで接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定される場合には、接合角度が所定の許容範囲に収まるように調整する必要がある。そのために、スプライン曲線調整ステップが設けられている。スプライン曲線調整ステップでは、設計者が画面上に表示されたスプライン曲線のフィット点を移動操作し、または、フィット点の接線または曲率を例えば制御点を操作して調整することで、スプライン曲線の形状が調整される。接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定された接合部に対して、当該接合部がフィット点であれば当該フィット点を移動操作し、当該接合部の近傍にフィット点があれば、当該近傍のフィット点を移動操作することで、スプライン曲線の形状が調整される。調整後のスプライン曲線に対して管路仮想配置ステップと接合角度算出ステップが再度実行されることにより、逸脱していた接合角度が所定の許容範囲に収まるように容易に修正される。
【0017】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記接合角度判定ステップで前記接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定される場合に、該当する接合部にアラート表示するアラート表示ステップをさらに備えている点にある。
【0018】
接合角度判定ステップで接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定される場合に、アラート表示ステップが実行されて対応する接合部がアラート表示されるので、スプライン曲線調整ステップを実行する際に操作対象となるフィット点を容易に特定できるようになる。
【0019】
同第四の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置ステップで設定された接合部に継手シンボルを表示する継手シンボル表示ステップを備えている点にある。
【0020】
各接合角度が所定の許容範囲に収まると判断された場合、継手シンボル表示ステップを実行することで、管路仮想配置ステップで設定された接合部に継手シンボルが表示される。
【0021】
同第五の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置ステップで仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、前記始点から前記終点に到る管割図及び材料表を生成する管割図生成ステップを備えている点にある。
【0022】
各接合角度が所定の許容範囲に収まると判断された場合、管割図生成ステップを実行することで、始点から終点に到るスプライン曲線に沿う管割図及び材料表が自動生成される。
【0023】
本発明による管路図設計装置の第一の特徴構成は、CAD機能を用いて直管及び/または切管を配置した管路図を設計する管路図設計装置であって、地図上で指定された始点と終点、及び、前記始点と前記終点との間に選択的に指定された通過指示点をフィット点とするスプライン曲線を生成して表示するスプライン曲線生成部と、前記スプライン曲線に沿うように、前記始点から前記終点に向けて複数の直管及び/または切管を、管同士の接合部が前記スプライン曲線上に位置するように仮想配置する管路仮想配置部と、前記管路仮想配置部で仮想配置した複数の直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する接合角度算出部と、各接合角度が所定の許容範囲に収まるか否かを判定する接合角度判定部と、各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置部で仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、前記始点から前記終点に到る前記スプライン曲線を管割図に置き換える実管路配置部と、を備えている点にある。
【0024】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記フィット点を移動し、または、前記フィット点の接線または曲率を調整することで前記スプライン曲線の形状を調整するスプライン曲線調整部をさらに備え、前記接合角度判定部は、前記接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定する場合に、全ての接合部の接合角度が所定の許容範囲に収まるまで、前記スプライン曲線調整部と、前記管路仮想配置部と、前記接合角度算出部を繰返し作動させる点にある。
【0025】
本発明による管路図設計プログラムの第一の特徴構成は、CAD機能を用いて直管及び/または切管を配置した管路図を設計する管路図設計方法をコンピュータに実行させる管路図設計プログラムであって、地図上で指定された始点と終点、及び、前記始点と前記終点との間に選択的に指定された通過指示点をフィット点とするスプライン曲線を生成して表示するスプライン曲線生成処理と、前記スプライン曲線に沿うように、前記始点から前記終点に向けて複数の直管及び/または切管を、管同士の接合部が前記スプライン曲線上に位置するように仮想配置する管路仮想配置処理と、前記管路仮想配置処理で仮想配置した複数の直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する接合角度算出処理と、各接合角度が所定の許容範囲に収まるか否かを判定する接合角度判定処理と、各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置処理で仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、前記始点から前記終点に到る前記スプライン曲線を管割図に置き換える実管路配置処理と、を実行する点にある。
【0026】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記接合部に対応するフィット点を移動し、または、前記フィット点の接線または曲率を調整することで前記スプライン曲線の形状を調整するスプライン曲線調整処理をさらに備え、前記接合角度判定処理は、前記接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定する場合に、全ての接合部の接合角度が所定の許容範囲に収まるまで、前記スプライン曲線調整処理と、前記管路仮想配置処理と、前記接合角度算出処理を繰返し実行させる点にある。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した通り、本発明によれば、実際の布設工事に活用できる管割図を自動で生成可能な管路図設計方法、管路図設計装置及び管路図設計プログラムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(a)は指定された交点を結ぶ主管と分岐管のルート説明図、(b)は従来の管路図設計装置で生成された管割図の説明図、(c)は本発明の管路図設計装置により生成される最終的な管割図の説明図
【
図3】本発明による管路図設計方法を示すフローチャート
【
図4】(a)は地図レイヤに重畳された管路図レイヤに指定される始点及び終点となる交点と、通過指示点と、管路図レイヤに描画されるスプライン曲線の説明図、(b)は始点または終点に存在する既存の異形管とスプライン曲線との関係を示す説明図
【
図5】(a)はスプライン曲線に沿って配される配管の仮想配管手順の説明図、(b)は配管の継手部の接合角度が許容接合角度より大きくなる例の説明図、(c)はスプライン曲線の調整操作の説明図、(d)はスプライン曲線の調整操作後の配管の継手部の接合角度が許容接合角度より小さくなる例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による管路図設計方法、管路図設計装置及び管路図設計プログラムを図面に基づいて説明する。
[管路図設計装置の第1の態様]
図2には、管路図設計装置10の機能ブロック構成が示されている。管路図設計装置10は地図上で指定された始点から終点に到る複数の交点IPを結び、各交点IPの間に選択的に指定された通過指示点CPを通る管路(当該管路を計画線という。)の管割図(
図1(c)参照。)を作成するCAD装置で、計算機本体10Aと、計算機本体10Aに接続された入力機器10B、表示機器10C及び記憶装置10Dなどを備えている。
【0030】
入力機器10Bとしてマウスなどのポインティングデバイスやキーボードが用いられ、表示機器10Cとして液晶表示装置が用いられ、記憶装置10Dとしてハードディスク等が用いられている。また、図示していないがプリンタなどの出力機器も接続されている。
【0031】
記憶装置10Dには、管路図を作成するために必要な管路を構成する部品情報、地図情報、過去に作成された管路図等が格納されている。部品情報には直管や異形管等の管種類、呼び径、管長等の仕様情報が含まれる。
【0032】
計算機本体10Aは、CPUが搭載されたマザーボード及びメモリボードなどが搭載され、メモリボード上のメモリに管路図を設計するためのアプリケーションプログラムがインストールされている。CPUによって当該アプリケーションプログラムが実行されることにより、後述する種々の機能ブロックが具現化される。
【0033】
即ち、計算機本体10Aは、配管図レイヤ上に交点及び通過指示点を設定する交点・通過指示点設定部11、スプライン曲線生成部12、スプライン曲線調整部13、管路仮想配置部14、接合角度算出部15、接合角度判定部16、実管路は一部17の各機能ブロックを備えている。
【0034】
交点・通過指示点設定部11は、設計者であるオペレータの操作によって記憶装置10Dに格納された管布設予定地域の地図情報をメモリボード上のメモリ(以下、「内部メモリ」と記す。)に読み出し、内部メモリに設定された地図レイヤとなる領域に地図情報を展開して表示機器10Cに表示する機能ブロックである。
【0035】
表示機器10Cに表示された地図上にオペレータがマウス等のポインティングデバイスを用いて管布設のための位置をプロットすると、当該位置を示す座標を地図レイヤに重畳した管路図レイヤ上に交点IPとして描画するとともに内部メモリに記憶する。先に説明した
図1(a)の交点IP1,IP2,IP3,IP4などが例示される。各交点IP1,IP2,IP3,IP4には曲管や二受T字管等の異形管が配置される。
【0036】
各交点IPに配置される異形管同士の間が、単一または複数の直管で接続されることにより管路が構成される。布設時の利便性を考慮して当該管路は道路等に沿って配されることが一般的であり、道路が湾曲している場合にはその湾曲した形状に沿うように管路が配されることが好ましい。そのため、道路に沿うように管路図レイヤ上に単一または複数の通過指示点CPが指定される。当該通過指示点CPは交点IPと同様に管路図レイヤ上に表示されるとともに内部メモリに記憶される。
【0037】
直管同士の接合部には許容接合角度が設定され、許容接合角度を逸脱しない範囲で直管同士が接合されることにより、始点から通過指示点CPを通って終点に到る湾曲した管路が形成される。例えば、GX形ダクタイル鉄管の場合、許容接合角度は4度に設定されている。設計時には許容接合角度の1/2に設定され、施工時には許容接合角度以下となるように配管される。本実施形態でも、許容接合角度の1/2の値が設計時の許容接合角度として設定されている。
【0038】
オペレータが交点・通過指示点設定部11で設定した交点を選択すると、交点に配置可能な異形管がプルダウンメニューとして表示され、適切な異形管をマウスで選択処理することにより選択した異形管が当該交点に割り付けられる。
【0039】
スプライン曲線生成部12は、交点・通過指示点設定部11で設定された始点IPs及び終点IPeとなる一対の交点IPと、交点IP間に設定された単一または複数の通過指示点CPを通過するスプライン曲線を生成して、管路図レイヤ上に表示する機能ブロックである。
図4(a)に示すように、道路Rに沿って指定された始点IPs、終点IPe、通過指示点CPの其々を通過するスプライン曲線SCが生成され、始点IPs、終点IPe、通過指示点CPの其々がフィット点となる。
【0040】
図4(b)に示すように、始点IPs及び終点IPeに異形管が割り付けられている場合には、始点IPs及び終点IPeのベクトルを各異形管に対する直管の接合方向を示すベクトルVs,Veと一致させるとの制約条件が課されたスプライン曲線SCが生成される。
【0041】
スプライン曲線調整部13は、ポインティングデバイスを用いて選択されたフィット点が管路図レイヤ上で上下左右に移動操作され、または、選択された制御点の操作によりフィット点の接線または曲率等を調整することでスプライン曲線SCの形状を調整する機能ブロックである。制御点は対象となるスプラインを選択操作することにより表示される。
【0042】
本実施形態では交点IPと通過指示点CPがXY二次元座標系に設定される例を説明するが、交点IPに埋設深さ方向のZ座標を含めてもよい。この場合、通過指示点CPのZ座標は、隣接する交点IPのZ座標を通過指示点CPまでの距離の比率で比例配分することで算出すればよく、スプライン曲線生成部12で生成されるスプライン曲線も二次元ではなく三次元のスプライン曲線として生成されるように構成すればよい。
【0043】
管路仮想配置部14は、スプライン曲線生成部12で生成されたスプライン曲線の始点から終点に向けて配置される直管の両端がスプライン曲線上に位置する点を接合部とする処理を繰返し、終点側で直管の管延長に満たない区間に残余の長さの切管を配置する機能ブロックである。スプライン曲線を選択することで表示されるプルダウンメニューから、交点IP間を接続する直管の種類(主に呼び径と管延長)、切管の種類(主に呼び径と管厚)が選択される。なお、直管及び切管の種類の選択手法は特に限定されるものではなく、事前に専用の選択画面で選択されるように構成されていてもよい。
【0044】
具体的に、
図5(a)に示すように、始点IPsから終点に向けてスプライン曲線SCに沿った長さが直管の長さLと等しくなる位置P1を算出し、直管の一端がスプライン曲線の始点IPsに位置し、直管の他端がスプライン曲線SCの位置P1に位置する弦STの長さLstを算出する。この状態では、算出した弦の長さLstは直管の長さLより短い値となるため、弦STの長さが直管の長さLに対して所定の許容誤差の範囲に入るように、つまり弦STの長さがLに近づくように、スプライン曲線に沿った長さをLより長く補正する。このような処理を繰り返すことにより、スプライン曲線SCの上に複数本の直管の両端(接合部)が順次配列されるようになる。なお、終点IPeにつながる部位には直管の長さより短い切管が配される。
【0045】
接合角度算出部15は、管路仮想配置部14で仮想配置された複数の直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する機能ブロックである。
図5(b)に示すように、スプライン曲線SC上に直管ST1,ST2の接合部JPが配されていることから、接合部JPにおける直管ST1,ST2同士の接合角度φが算出できる。このようにして、管路仮想配置部14によって配置された全ての直管及び切管の接合部の接合角度φが接合角度算出部15で算出される。
【0046】
接合角度判定部16は、接合角度算出部15で算出された全ての接合部の接合角度φが許容接合角度に収まっているか否かを判定し、接合角度φが許容接合角度以上となっている接合部にアラート表示することで、オペレータに許容接合角度以上となっている接合部の存在を注意喚起する。アラート表示の態様として
図5(b)には感嘆符が内部に表示された三角印が例示されている。
【0047】
実管路配置部17は、接合角度判定部16による判定の結果、アラート表示が発現しない場合に、つまり各接合角度φが所定の許容範囲に収まる場合に、管路仮想配置部14で仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、始点IPsから終点IPeに到るスプライン曲線SCを、各直管及び切管の接合位置を特定した管割図に置き換える。
図1(c)には、このようにして置き換えられた管割図が例示されている。交点IP2と交点IP4との間にスプライン曲線が生成され、そのスプライン曲線に沿って直管が配されている。
【0048】
具体的には、スプライン曲線SC毎に、スプライン曲線SCの属性として各直管及び切管の接合位置を含む管材料表を含む管割図を関連付ける。つまり、「スプライン曲線SCを管割図に置き換える」との意味は、表示画面に表示されているスプライン曲線SCを管割図に変更表示する態様以外に、表示画面に表示されているスプライン曲線SCの表示態様を変えずに、スプライン曲線SCの属性として管割図を関連付ける態様も含む。実管路配置部17によりスプライン曲線SCが置き換えられた管割図は記憶装置10Dに格納される。
【0049】
接合角度判定部16により、接合角度算出部15で算出された何れかの接合角度φが許容接合角度から逸脱すると判定される場合には、スプライン曲線調整部13によりスプライン曲線SCの形状が調整される。
【0050】
図5(b)で示したように、直管ST1,ST2同士の接合角度φが許容接合角度より大きくなる場合には、オペレータが接合部JPとなるフィット点を移動操作することにより、スプライン曲線SCの形状を調整する。この例では、
図5(c)に示すように、接合部JPとなるフィット点を左下方に移動操作することで、二点鎖線で示す元のスプライン曲線SCから実線で示すスプライン曲線SCに調整される。
【0051】
図5(d)には、スプライン曲線調整部13で調整された後のスプライン曲線SCに対して、管路仮想配置部14により再度管路が仮想配置された場合に、直管ST1,ST2同士の接合角度φが許容接合角度に収まる例が示されている。
【0052】
スプライン曲線調整部13によりスプライン曲線SCの形状を調整するためのフィット点として、事前に地図上で指定された始点IPsと終点IPeと通過指示点に加えて、管路仮想配置部14で仮想配置された管路に対する所定の接合部が新たなフィット点として指定可能に構成されている。
【0053】
所定の接合部として、管路仮想配置部14で仮想配置された管路の全ての接合部、始点IPsから所定数の管路を隔てた接合部、接合角度判定部16によりアラートの対象となる接合部、接合角度判定部16によりアラートの対象となる接合部及びその両側に隣接する接合部、オペレータにより選択された接合部などを新たなフィット点とすることができる。新たなフィット点を指定する機能は、接合角度判定部16またはスプライン曲線調整13の何れかに組み込むことができる。
【0054】
なお、実管路配置部17は、接合角度判定部16による判定の結果、アラート表示が発現する場合であっても、オペレータによる選択、つまり管路仮想配置部14の実行を許容するか否かのアイコンである選択スイッチを操作ことにより、管路仮想配置部14で仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、始点IPsから終点IPeに到るスプライン曲線SCを、各直管及び切管の接合位置を特定した管割図に置き換えるように構成してもよい。
【0055】
以上説明した管路図設計装置10を用いることにより、管路図設計方法つまりCAD装置を用いて直管及び/または切管を配置した管路図を設計する管路図設計方法が実現される。
図3に示すように、表示画面に道路地図レイヤが表示され(SA1)、交点・通過指示点設定部11により、道路地図レイヤに重畳表示された管路図レイヤに、布設予定の管路に対する始点、終点を含む交点及び通過指示点が設定される(SA2)。
【0056】
次に、地図上で指定された始点と終点、及び、始点と終点との間に選択的に指定された通過指示点をフィット点とするスプライン曲線を生成して表示するスプライン曲線生成ステップが実行され(SA3)、管路仮想配置部14により、始点から終点に向けて複数の直管及び/または切管を、管同士の接合部がスプライン曲線上に位置するように仮想配置して、接合部を新たなフィット点とする管路仮想配置ステップが実行される(SA4)。
【0057】
接合角度算出部15により、管路仮想配置ステップで仮想配置した複数の直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する接合角度算出ステップが実行され(SA5)、接合角度判定部16により、各接合角度が所定の許容範囲に収まるか否かを判定する接合角度判定ステップが実行される(SA6)。
【0058】
各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に(SA6,OK)、管路仮想配置ステップで仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、始点から終点に到るスプライン曲線を管割図に置き換える実管路配置ステップが実行され、スプライン曲線に置き換えて継手のシンボルが表示され、シンボル間の距離表示処理、引出線が描かれて材料表示する旗揚げ処理等が実行され(SA7)、直管及び/または切管による管割図が生成され(SA8)、生成された管割図及び付随する部品リスト等が記憶装置10Dに記憶される(SA9)。
【0059】
ステップSA6で何れかの接合角度が所定の許容範囲から逸脱する場合には(SA6.NG)、逸脱した接合部の近傍に上述した態様のアラートが表示され(SA10)、スプライン曲線調整部13によりスプライン曲線の形状が調整された後に(SA11)、再度、管路仮想配置ステップ(SA4)、接合角度算出ステップ(SA5)が実行され、接合角度判定ステップ(SA6)で各接合角度が所定の許容範囲に収まると判定されるまで、ステップSA10,SA11,SA4,SA5の各ステップが繰返し実行される。
【0060】
なお、ステップSA6で何れかの接合角度が所定の許容範囲から逸脱する場合であっても(SA6.NG)、オペレータの選択によりステップSA7以降の実管路配置ステップを実行可能に構成してもよい。この場合、ステップSA7と同様のアラートが表示される。
【0061】
本発明による管路図設計プログラムは、CAD機能を用いて直管及び/または切管を配置した管路図を設計する管路図設計方法を上述した管路図設計装置10であるコンピュータに実行させる管路図設計プログラムである。
【0062】
当該管路図設計プログラムは、地図上で指定された始点と終点、及び、前記始点と前記終点との間に選択的に指定された通過指示点をフィット点とするスプライン曲線を生成して表示するスプライン曲線生成処理と、前記スプライン曲線に沿うように、前記始点から前記終点に向けて複数の直管及び/または切管を、管同士の接合部が前記スプライン曲線上に位置するように仮想配置して、前記接合部を新たなフィット点とする管路仮想配置処理と、前記管路仮想配置処理で仮想配置した複数の直管及び/または切管の接合部の接合角度を算出する接合角度算出処理と、各接合角度が所定の許容範囲に収まるか否かを判定する接合角度判定処理と、各接合角度が所定の許容範囲に収まる場合に、前記管路仮想配置処理で仮想配置した複数の直管及び/または切管の位置情報に基づいて、前記始点から前記終点に到る前記スプライン曲線を管割図に置き換える実管路配置処理と、を実行するように構成されている。
【0063】
そして、前記接合部に対応するフィット点を移動し、または、前記フィット点の接線または曲率を調整することで前記スプライン曲線の形状を調整するスプライン曲線調整処理をさらに備え、前記接合角度判定処理は、前記接合部の何れかの接合角度が所定の許容範囲を逸脱すると判定する場合に、全ての接合部の接合角度が所定の許容範囲に収まるまで、前記スプライン曲線調整処理と、前記管路仮想配置処理と、前記接合角度算出処理を繰返し実行させるように構成されている。
【0064】
上述した実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、該記載に基づいて本願発明の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
10:管割図作成装置
10A:計算機本体
10B:入力機器
10C:表示機器
10D:記憶装置
11:交点・通過指示点設定部
12:スプライン曲線生成部
13:スプライン曲線調整部
14:管路仮想配置部
15:接合角度算出部
16:接合角度判定部
17:実管路配置部