(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076504
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 651A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188069
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100166833
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 直子
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 渉
(72)【発明者】
【氏名】高沢 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正亮
(72)【発明者】
【氏名】大庭 健三
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA12
3L211AA14
3L211BA27
3L211BA32
3L211CA16
3L211CA18
3L211EA56
3L211EA57
3L211EA79
3L211GA26
3L211GA27
3L211GA28
(57)【要約】
【課題】 不要な除霜運転の実行を回避し、外気吸熱暖房運転の能力を可能な限り活用することで、電力の無駄を抑制することが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】 圧縮機1を含む冷媒回路Rと、室内熱交換部4と、外部熱交換部7を有する空調回路Eと、冷媒回路Rを制御する制御装置200と、を備え、制御装置200が、外部熱交換部7で吸熱する外気吸熱暖房運転と、外部熱交換部7を除霜する除霜運転とを選択的に実行できる車両用空調装置100であって、制御装置200は、目的地までの走行時間および、着霜により前記外部熱交換部7にて外気吸熱が不可になるまでの外気吸熱暖房運転の運転時間を算出し、走行時間が運転時間よりも長い場合、少なくとも運転時間が走行時間以上となるように除霜運転を実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を含む冷媒回路と、室内熱交換部と、外部熱交換部を有する空調回路と、
前記冷媒回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置が、
前記外部熱交換部で吸熱する外気吸熱暖房運転と、
前記外部熱交換部を除霜する除霜運転とを選択的に実行できる車両用空調装置であって、
前記制御装置は、
目的地までの走行時間および、着霜により前記外部熱交換部にて外気吸熱が不可になるまでの外気吸熱暖房運転の運転時間を算出し、
前記走行時間が前記運転時間よりも長い場合、少なくとも前記運転時間が前記走行時間以上となるように前記除霜運転を実行する、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御装置は、目的地情報に基づき前記外部熱交換部の着霜変化率を予測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記着霜変化率に基づき、前記運転時間を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
熱媒体が流れる熱媒体回路を備え、
前記制御装置は、前記除霜運転時に前記熱媒体により前記外部熱交換部の除霜を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記除霜運転中において、前記熱媒体回路を流れる前記熱媒体から吸熱する機器熱回収暖房運転を実行可能である、
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
蓄熱手段を備え、
前記除霜運転中において、前記蓄熱手段による暖房運転を実行可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記外部熱交換部にて外気吸熱が不可になる程度の着霜量を外気吸熱不可レベルとし、
目的地到達時における着霜量が、前記外気吸熱不可レベルの50%以上に達するように前記除霜運転を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に適用することができる空気調和装置として、圧縮機と、放熱器と、吸熱器と、外部熱交換部が接続された冷媒回路を備え、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、この放熱器において放熱した冷媒を外部熱交換部において吸熱させることで車室内を暖房し、圧縮機から吐出された冷媒を外部熱交換部において放熱させ、吸熱器において吸熱させることで車室内を冷房するものが開発されている。
【0003】
また、車室内を暖房する場合、外部熱交換部では冷媒が吸熱して低温となるため、外部熱交換部には外気中の水分が霜となって付着する。この外部熱交換部の着霜が成長すると、外気との熱交換が阻害されるため、暖房能力が低下してしまう。そこで、圧縮機から吐出された高温の冷媒を外部熱交換部に流して放熱させることで外部熱交換部を除霜するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、外気から吸熱する冷凍サイクル装置において、極力効率的に除霜を行うことを目的として、着霜状態の推定と、除霜運転の有無とを冷却水の温度によって判定し、除霜制御する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-237052号公報
【特許文献2】特開2022-51623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のように着霜状態の推定と、除霜運転の有無とを冷却水の温度によって判定する除霜制御の場合、除霜運転によって電力が無駄になる場合もある。具体的に、例えば、着霜の進行が緩やかであったり、目的地までの距離が近いなど、目的地に到着するまでに外気吸熱暖房が不可となるほど着霜が進行しない場合がある。そのような場合であっても、冷却水の温度に基づく判定によって除霜を実行してしまうと、必要以上に除霜運転を行う可能性もある。また、例えば着霜がそれほど進行していない状態で除霜運転を実行すると、外気吸熱暖房運転ができる余力を残したまま車両の走行が終了することもあり、そうなると除霜運転に係る電力の浪費や、外気吸熱暖房運転の能力の活用ができないこととなり、車両用空調装置全体としては省エネルギー化が進まず、車両の航続距離の低下を招く問題がある。
【0007】
そこで本発明は、不要な除霜運転の実行を回避し、外気吸熱暖房運転の能力を可能な限り活用することで、電力の無駄を抑制することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧縮機を含む冷媒回路と、室内熱交換部と、外部熱交換部を有する空調回路と、前記冷媒回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が、前記外部熱交換部で吸熱する外気吸熱暖房運転と、前記外部熱交換部を除霜する除霜運転とを選択的に実行できる車両用空調装置であって、前記制御装置は、目的地までの走行時間および、着霜により前記外部熱交換部にて外気吸熱が不可になるまでの外気吸熱暖房運転の運転時間を算出し、前記走行時間が前記運転時間よりも長い場合、少なくとも前記運転時間が前記走行時間以上となるように前記除霜運転を実行する、ことを特徴とする車両用空調装置に係るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不要な除霜運転の実行を回避し、外気吸熱暖房運転の能力を可能な限り活用することで、電力の無駄を抑制することが可能な車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図4】第1実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図5】(A)は第1実施形態に係る車両空調装置の制御装置のハード構成を示すブロック図であり、(B)は制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態に係る車両空調装置における空調運転パターンを示す概要図である。
【
図7】第1実施形態に係る車両空調装置における空調運転パターンを示す概要図である。
【
図8】第1実施形態に係る車両空調装置における空調運転パターンを示す概要図である。
【
図9】第1実施形態に係る車両空調装置における空調運転パターンを示す概要図である。
【
図10】第1実施形態に係る車両空調装置における空調運転パターンを示す概要図である。
【
図11】第1実施形態に係る車両空調装置における空調運転処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】第1実施形態に係る車両空調装置における空調運転処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図18】本発明の第3実施形態に係る車両空調装置を示す模式図である。
【
図19】第3実施形態に係る車両空調装置における空調運転パターンを示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置100における冷媒回路Rを含む主要な構成の一例を示す概略図である。本実施形態の車両用空調装置100は、内燃機関のみを動力とする車両に搭載されてもよいが、内燃機関のみを動力とする車両に比べて内燃機関の廃熱のみでは十分な熱量確保が難しいHEV(Hybrid Electric Vehicle)や、内燃機関の廃熱による暖房ができないEV(Electric Vehicle)等の車両に好適に用いられる。HEVやEVのような車両は、バッテリ(例えば、リチウム電池)が搭載され、外部電源からバッテリに充電された電力を、走行用のモータを含むモータユニットに供給することで駆動し、走行する。車両用空調装置100も、バッテリから供給される電力によって駆動する。
【0013】
<全体構成>
図1に示すように第1本実施形態に係る車両用空調装置100は、空調回路Eと制御装置200を含んで構成される。
図1に示す空調回路Eは一例であり、冷媒回路Rと、室内熱交換部4と、外部熱交換部7を有する。本実施形態に係る車両用空調装置100は、冷媒回路Rを用いたヒートポンプ運転を行うことにより車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び除霜)を行う。なお、以下の説明において、冷媒とは、ヒートポンプ(圧縮・凝縮・膨張・蒸発)における状態変化を伴う冷媒回路Rの循環媒体をいい、熱媒体とは、このような状態変化を伴わずに熱の吸収と放熱を行う媒体をいうものとする。
【0014】
(冷媒回路)
冷媒回路Rは、圧縮機1と、第1熱交換器2と、膨張機構16と、第2熱交換機3などが冷媒配管13により接続されて構成されている。圧縮機1は、冷媒回路Rにおける上流側から冷媒を吸入して圧縮し、冷媒を高温高圧のガスとして下流側に向けて吐出する。圧縮機1の形式は特に限定されるものではないが、例えばピストン式やスクロール式の電動コンプレッサが採用される。図示は省略するが、冷媒回路Rにおいて圧縮機1の上流側には、冷媒からの液分離を行うアキュムレータが設けられている。冷媒回路Rは、圧縮機1によって高温高圧のガスとなった冷媒を第1熱交換器2に通過させて冷媒から放熱させ、冷媒を冷却する。第1熱交換器2を通過した冷媒を、膨張機構16で減圧させ、第2熱交換器3を通過させて吸熱させる。そして低圧となっている冷媒を再び圧縮機1で圧縮する。この循環を繰り返す。
【0015】
(第1熱交換器)
第1熱交換器2は、冷媒流路2Aと熱媒体流路2Bを有する冷媒-熱媒体熱交換器であり、冷媒流路2Aが冷媒回路Rに接続し、熱媒体流路2Bが後述する第1熱媒体回路5に接続する。第1熱交換器2の冷媒流路2Aは、冷媒回路Rの一部を構成し、冷媒回路Rの放熱器として機能する。また第1熱交換器2の熱媒体流路2Bは第1熱媒体回路5の一部を構成し、第1熱媒体回路5の吸熱器として機能する。
【0016】
(膨張機構)
膨張機構16は、膨張弁やキャピラリチューブ等によって構成され、第1熱交換器2を通過した高圧の冷媒を減圧、膨張させて低圧の冷媒とする。
【0017】
(第2熱交換器)
第2熱交換器3は、冷媒流路3Aと熱媒体流路3Bを有する冷媒-熱媒体熱交換器であり、冷媒流路3Aが冷媒回路Rに接続し、熱媒体流路3Bが後述する第2熱媒体回路6に接続する。第2熱交換器3の冷媒流路3Aは、冷媒回路Rの一部を構成し、冷媒回路Rの吸熱器として機能する。また第2熱交換器3の熱媒体流路3Bは第2熱媒体回路6の一部を構成し、第2熱媒体回路6の放熱器として機能する。
【0018】
(第1熱媒体回路)
第1熱媒体回路5は、冷媒回路Rの冷媒と熱交換が可能な熱媒体が循環する回路であり、例えば、循環ポンプ51,第1熱交換器2、HVACユニット10のヒータコア4,配管50(50A,50B、50C、50D、50E,50F)、三方弁52(52A、52B)などで構成されている。循環ポンプ51の出口は配管50Aを介して第1熱交換器2の熱媒体流路2Bに連通する。熱媒体流路2Bは配管50Bを介して三方弁52Bに接続する。
【0019】
三方弁52Bは入口が配管50Bに接続し、一方の出口が配管50Cを介してヒータコア4の入口に連通し、他方の出口が配管50Fを介して三方弁52Aの一方の入口に連通している。ヒータコア4の出口は、配管50Dを介して三方弁52Aの他方の入口に接続する。三方弁52Aの出口は配管50Eを介して循環ポンプ51の入口に連通している。
【0020】
ヒータコア4は、車両に設けられたHVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)ユニット10と呼ばれる装置内に配置される。
【0021】
(HVACユニット)
HVACユニット10は、一端側から外気や内気を導入し、他端側から車室内へ空気を供給する空気流通路29によって形成されている。HVACユニット10の内部には、室内送風機27と、吸熱器9と、エアミックスダンパ28と、ヒータコア4が設けられている。吸熱器9の空気上流側における空気流通路29には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されている(
図1では吸込口25として代表して示す)。吸込口25には吸込切換ダンパ26が設けられている。吸込切換ダンパ26により、車室内の空気である内気(内気循環)と、車室外の空気である外気(外気導入)とを適宜切り換えて吸込口25から空気流通路29内に導入する。吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路29に送給するための室内送風機27が設けられている。
【0022】
室内送風機27は、HVACユニット10の一端側に設けられており、駆動されるときに、外気又は内気を吸引し、他端側へと吐出する。吸熱器9は、室内送風機27よりも下流側に設けられている。室内送風機27から吹き出された空気は、全て吸熱器9を通過する。吸熱器9の下流では、空気流通路29は二つの流路29A、29Bに分流可能となっている。二つの流路29Aと流路29Bとは下流側が合流しており、一方の流路29Aの途中にヒータコア4が配置される。
【0023】
エアミックスダンパ28は、吸熱器9下流の流路29Aを開放して流路29Bを閉鎖する位置と、流路29Aを閉鎖して流路29Bを開放する位置と、の間で回動可能である。エアミックスダンパ28が流路29Aを開放して流路29Bを閉鎖する位置にあるときには、吸熱器9を通過した空気は全て流路29Aを通過する。エアミックスダンパ28が流路29Aを閉鎖して流路29Bを開放する位置にあるときには、吸熱器9を通過した空気は全て流路29Aを迂回する。エアミックスダンパ28が流路29Aと流路29Bの双方を開放する位置にあるときには、吸熱器9を通過した空気のうち、一部が流路29Aを通過し、残りが流路29Aを迂回し、HVACユニット10の下流側にて、流路29Aを通過した空気と、流路29Aを迂回した空気とが混合される。
【0024】
(第2熱媒体回路)
第2熱媒体回路6は、熱供給機器65および冷媒回路Rの冷媒とそれぞれ熱交換可能な熱媒体が循環する回路であり、例えば、循環ポンプ63,第2熱交換器3、外部(室外)熱交換部7となるラジエータ、熱供給機器65、HVACユニット10の吸熱器9、配管60(60A~60K),三方弁62(62A,62B,62C,63D)などで構成されている。熱供給機器65は空調回路Eに熱を供給する熱源となる機器であり、ここでは一例として熱媒体を加温する水加熱ヒータ(ECH:Electric Coolant Heater)である。
【0025】
外部熱交換部7は、グリルシャッタ71を有し、近傍に室外送風機15が設けられている。グリルシャッタ71を開放状態とし、室外送風機15によって外部熱交換部7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させ、停車中にも外部熱交換部7に外気が通風されるようになっている。
循環ポンプ63の出口は配管60Aを介して第2熱交換器3の熱媒体流路3Bに連通する。熱媒体流路3Bは配管60B、三方弁62A、配管60C,三方弁62B、配管60D,三方弁62C,配管60Eを介して外部熱交換部7の一端に接続する。外部熱交換部7の他端は、配管60F,三方弁62D、配管60Gを介して熱供給機器65の入口に接続する。熱供給機器65の出口は配管60Hを介して循環ポンプ63の入口に接続する。
【0026】
三方弁62Aは入口が配管60Bを介して第2熱交換器3の熱媒体流路3Bに連通し、一方の出口が配管60Cに接続し、他方の出口が配管60Kを介してHVACユニット10の吸熱器9の入口に連通する。三方弁62Bは一方の入り口が配管60Cに接続し、他方の入口が配管60Iを介してHVACユニット10の吸熱器9の出口に連通し、出口が配管60Dに接続する。三方弁62Cは一方の入口が配管60Dに接続し、一方の出口が配管60Jに接続し、他方の出口が配管60Eを介して外部熱交換部7の一端に連通する。三方弁62Dは、一方の入り口が配管60Fを介して外部熱交換部7の他端に連通し、他方の入口が配管60Jに接続し、出口が配管60Gを介して熱供給機器65の入口に連通する。配管60Jは外部熱交換部7を迂回するバイパス経路となる。三方弁62C、62Dの切替により、両三方弁62C,62D間の熱媒体の流路を、配管60E,外部熱交換部7,配管60Fの流路と、配管60Jの流路に切り替えることができる。
【0027】
<空調運転>
以下、車両用空調装置100における空調運転の種類について説明する。車両用空調装置100は、外気吸熱暖房運転、機器熱回収暖房運転、除霜運転、除湿運転、冷房運転など選択的に実行可能である。
【0028】
<空調運転/外気吸熱暖房運転>
引き続き
図1を参照して、外気吸熱暖房運転について説明する。なお、
図1~
図4に示す回路において塗り潰しの機器(構成)は、機能が停止している構成である。また、熱媒体および冷媒の移動は矢印で示す。
【0029】
外気吸熱暖房運転では、第1熱媒体回路5において、配管50Fの流路が閉鎖されるように三方弁52A,52Bを切り替える。これにより、第1熱媒体回路5では、循環ポンプ51,配管50A、第1熱交換器2(熱媒体流路2B)、配管50B、三方弁52B、配管50C,ヒータコア4,配管50D、三方弁52A,配管50Eの順に熱媒体が循環する。
【0030】
また、第2熱媒体回路6において、配管60Kの流路が閉鎖されるように三方弁62Aを切り替え、配管60Iの流路が閉鎖されるように三方弁62Bを切り替え、配管60Jの流路が閉鎖されるように三方弁62C,62Dを切り替える。また、外部熱交換部7のグリルシャッタ71を開放し、室外送風機15を運転させる。熱供給機器(ECH)65は運転(発熱)を停止するが、その内部(配管)に熱媒体は循環可能である。
【0031】
これにより、第2熱媒体回路6では、循環ポンプ63,配管60A、第2熱交換器3(熱媒体流路3B)、配管60B、三方弁62A、配管60C、三方弁62B、配管60D,三方弁62C、配管60E、外部熱交換部7、配管60F、三方弁62D、配管60G,ECH65、配管60Hの順に熱媒体が循環する。
【0032】
車両の走行により、あるいはグリルシャッタ71の開放および室外送風機15の運転により外部熱交換部7に外気が流入すると、第2熱媒体回路6を流れる熱媒体は、外部熱交換部7において外気から吸熱し第2熱交換器3の熱媒体流路3Bに流入する。
【0033】
熱媒体は、第2熱交換器3において冷媒回路Rの冷媒流路3Aを流れる冷媒と熱交換する。第2熱交換器3を通過した第2熱媒体回路6の熱媒体は、熱交換により低温となり、外部熱交換部7に流入して外気から吸熱する。
【0034】
冷媒回路Rを流れる冷媒は、第2熱交換器3において第2熱媒体回路6の熱媒体から吸熱し、圧縮機1に流入する。圧縮機1によって高温高圧のガスとなった冷媒は第1熱交換器2の冷媒流路2Aを通過し、第1熱交換器2の熱媒体流路2Bを流れる熱媒体と熱交換し、熱媒体に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0035】
第1熱媒体回路5を循環する熱媒体は、第1熱交換器2の熱媒体流路2Bを通過する際、冷媒と熱交換し、吸熱してヒータコア4に流入する。ヒータコア4は、放熱フィンの周囲を通過する空気とチューブ内を通過する熱媒体との間で熱交換を行なう。ヒータコア4は、吸熱により加温された熱媒体が供給されるときに、放熱フィンの周囲の空気を加温(熱媒体は放熱)する。この熱交換により熱媒体は低温となる。ヒータコア4で放熱した熱媒体は、第1熱交換器2の熱媒体流路2Bに流入し、冷媒と熱交換して吸熱する。
【0036】
HVACユニット10では、吸熱器9に第2熱媒体回路6から流入する熱媒体の流路(配管60K,60I)は閉鎖されているが吸熱器9内を通過する空気の流路は確保されている。また、エアミックスダンパ28は、流路29Aを開放して流路29Bを閉鎖する位置にあり、これにより吸熱器9を通過した空気は全て流路29Aを通過する。
【0037】
したがって、室内送風機27によって吸込口25から空気流通路29内に導入された空気は、吸熱器9を経て流路29Aに設けられたヒータコア4に流入する。空気はヒータコア4を通過する高温の熱媒体と熱交換することで暖められ、車室内に供給される。
【0038】
このように、本実施形態では外気吸熱が可能な条件では、外部熱交換部(ラジエータ)7で外気を吸熱し、冷媒回路Rの吸熱源とするヒートポンプ運転により車室内を暖房する外気吸熱暖房運転が実行される。ここで、「外気吸熱が可能な条件」とは、外部熱交換部(ラジエータ)7における着霜の状態(着霜量)が、外部熱交換部7における外気吸熱が不可となるレベルに達していないことである。以下、この「着霜の状態(着霜量)が、外部熱交換部7における外気吸熱が不可となるレベル」を、単に(着霜の)「外気吸熱不可レベル」という。
【0039】
<空調運転/機器熱回収暖房運転>
次に、
図2を参照して機器熱回収暖房運転について説明する。機器熱回収暖房運転は、熱供給機器65を利用して加熱した熱媒体を冷媒回路Rで吸熱して暖房する運転をいう。この例の熱供給機器65は、ECHであるが、これに限らず、(ECHに加えて)走行用モータやバッテリなどの熱供給機器がある場合には、これらの廃熱を吸熱源として冷媒回路Rで吸熱して暖房する構成でもよい。以下、本実施形態では
図2の空調回路Eを例に、機器熱回収暖房運転を「ECH暖房運転」という場合がある。
【0040】
機器熱回収暖房運転では、第1熱媒体回路5および冷媒回路Rの構成及び動作は外気吸熱暖房運転と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0041】
第2熱媒体回路6では、配管60Kの流路と配管60Iの流路は外気吸熱暖房運転と同様に閉鎖される。一方、外部熱交換部7への入口となる配管60Eの流路と外部熱交換部7からの出口となる配管60Fの流路が閉鎖され、配管60Jの流路が開放されるように三方弁62C,62Dを切り替える。これにより、外部熱交換部7を通過していた熱媒体の経路が配管60Jでバイパスされる。また外部熱交換部7のグリルシャッタ71を閉鎖して、室外送風機15も停止する一方、熱供給機器(ECH)65は運転する(発熱させる)。
【0042】
これにより、第2熱媒体回路6では、循環ポンプ63,配管60A、第2熱交換器3(熱媒体流路3B)、配管60B、三方弁62A、配管60C、三方弁62B、配管60D,三方弁62C,配管60J、三方弁62D、配管60G,ECH65、配管60Hの順に熱媒体が循環する。
【0043】
ECH暖房運転は、外部熱交換部7の着霜が外気吸熱不可レベルに達し、外気吸熱暖房運転が不可になった場合に実行される暖房運転である。第2熱媒体回路6を流れる熱媒体をECH65で加熱し、冷媒回路Rの吸熱源とする。つまりECH65を通過した熱媒体は、第2熱交換器3において冷媒流路3Aを流れる冷媒回路Rの冷媒と熱交換する。第2熱交換器3を通過した第2熱媒体回路6の熱媒体は、熱交換により低温となり、外部熱交換部7をバイパスする配管60Jを経てECH65で加熱される(ECH65から吸熱する)。
【0044】
冷媒回路Rを流れる冷媒は、第2熱交換器3において第2熱媒体回路6の熱媒体から吸熱し、圧縮機1に流入する。圧縮機1によって高温高圧のガスとなった冷媒は第1熱交換器2の冷媒流路2Aを通過し、第1熱交換器2の熱媒体流路2Bを流れる熱媒体と熱交換し、凝縮液化する。
【0045】
第1熱媒体回路5を循環する熱媒体は、第1熱交換器2を通過する際、冷媒と熱交換し、ヒータコア4に流入する。ヒータコア4は、吸熱により加温された熱媒体が供給されるときに、放熱フィンの周囲の空気を加温(熱媒体は放熱)する。この熱交換により熱媒体は低温となる。ヒータコア4で放熱した熱媒体は、第1熱交換器2の熱媒体流路2Bに流入し、冷媒と熱交換して吸熱する。
【0046】
HVACユニット10では、室内送風機27によって吸込口25から空気流通路29内に導入された空気は、ヒータコア4に流入し、ヒータコア4を通過する高温の熱媒体と熱交換することで暖められ、車室内に供給される。
【0047】
このように、着霜が外気吸熱不可レベルに達した場合には、外部熱交換部(ラジエータ)7をバイパスした熱媒体をECH65で加熱する。すなわちECH65を冷媒回路Rの吸熱源として暖房を行う。なお、この場合図示は省略するが、第2熱媒体回路6にバッテリや走行用モータ等の熱供給機器(発熱機器)がある場合には、ECH65に加えてこれらの廃熱を利用することで、ECH65の発熱量を抑制でき、ECH暖房運転に係る消費エネルギ(消費電力量)の増加を抑制できる。
【0048】
<空調運転/除霜運転(除霜暖房運転)>
次に、
図3を参照して外部熱交換部7を除霜する除霜運転について説明する。外部熱交換部7の除霜には、例えば配管を引き回して冷媒回路Rの高温の冷媒を利用して外部熱交換部7を通過させるなど様々な方法があるが、本実施形態では、一例として、第2熱媒体回路6の熱供給機器(ECH)65を除霜の熱源として利用する構成を採用する。
【0049】
また、除霜中は外気吸熱暖房運転を実行できないため、ECH65によって暖房運転も行う。つまり本実施形態の「除霜運転」は、ECH65を熱源とする除霜運転と、ECH暖房運転を併用する除霜暖房運転ともいえる。
【0050】
除霜運転では、第1熱媒体回路5および冷媒回路Rの構成及び動作は外気吸熱暖房運転と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0051】
第2熱媒体回路6では、外部熱交換部7をバイパスする配管60Jの流路を閉鎖し、外部熱交換部7に熱媒体を通過させるように三方弁62C,62Dを切り替える以外は、
図2に示した機器熱回収暖房運転(ECH暖房運転)の構成と同様である。
【0052】
これにより、第2熱媒体回路6では、循環ポンプ63,配管60A、第2熱交換器3(熱媒体流路3B)、配管60B、三方弁62A、配管60C、三方弁62B、配管60D,三方弁62C,配管60E、外部熱交換部7、配管60F,三方弁62D、配管60G,ECH65、配管60Hの順に熱媒体が循環する。
【0053】
除霜運転は、外部熱交換部7の着霜が外気吸熱不可レベルに達し、外気吸熱暖房運転が不可になった場合に実行される暖房運転である。第2熱媒体回路6を流れる熱媒体をECH65で加熱し、冷媒回路Rの吸熱源とする。つまりECH65を通過した熱媒体は、第2熱交換器3において冷媒流路3Aを流れる冷媒回路Rの冷媒と熱交換する。第2熱交換器3を通過した第2熱媒体回路6の熱媒体は、熱交換により低温となるが、外気よりは高温である。この熱媒体を外部熱交換部7に流入させることで、外部熱交換部7の着霜を除去する。
【0054】
冷媒回路Rを流れる冷媒は、第2熱交換器3において第2熱媒体回路6の熱媒体から吸熱し、圧縮機1に流入する。圧縮機1によって高温高圧のガスとなった冷媒は第1熱交換器2の冷媒流路2Aを通過し、第1熱交換器2の熱媒体流路2Bを流れる熱媒体と熱交換し、凝縮液化する。
【0055】
第1熱媒体回路5を循環する熱媒体は、第1熱交換器2を通過する際、冷媒と熱交換し、ヒータコア4に流入する。ヒータコア4は、吸熱により加温された熱媒体が供給されるときに、放熱フィンの周囲の空気を加温(熱媒体は放熱)する。この熱交換により熱媒体は低温となる。ヒータコア4で放熱した熱媒体は、第1熱交換器2の熱媒体流路2Bに流入し、冷媒と熱交換して吸熱する。
【0056】
HVACユニット10では、室内送風機27によって吸込口25から空気流通路29内に導入された空気は、ヒータコア4に流入し、ヒータコア4を通過する高温の熱媒体と熱交換することで暖められ、車室内に供給される。
【0057】
このように、着霜が外気吸熱不可レベルに達した場合には、ECH65を除霜と暖房の熱源とすることで、除霜と暖房を両立させることができる。
図2に示した機器熱回収暖房運転と除霜運転の違いは、前者が暖房のみで除霜を行わない運転であるのに対し、後者は除霜と暖房を行う運転である。その意味で、本実施形態の除霜運転は除霜暖房運転ともいえる。
【0058】
またこの場合も図示は省略するが、第2熱媒体回路6にバッテリや走行用モータ等の熱供給機器(発熱機器)がある場合には、ECH65に加えてこれらの廃熱を利用することで、ECH65の発熱量を抑制でき、ECH暖房運転に係る消費エネルギ(消費電力量)の増加を抑制できる。
【0059】
<空調運転/併用暖房運転>
次に、
図4を参照して、外気吸熱暖房運転と、機器熱回収暖房運転を併用する暖房運転について説明する。
【0060】
併用暖房運転は、
図1に示した外気吸熱暖房運転の場合よりも外気吸熱による暖房を控え、不足する温度についてはECH65を熱源とする暖房で補う運転である。このような運転を行う理由については後述するが、併用暖房運転では外部熱交換部7と熱供給機器(ECH)65とを冷媒回路Rの吸熱源とする。
【0061】
併用暖房運転では、外部熱交換部7のグリルシャッタ71を開放して、室外送風機15を運転し、外気を流入可能とする。これ以外の構成は、
図3に示す除霜運転の場合と同様であるので、説明は省略する。
【0062】
車両の走行により、あるいはグリルシャッタ71の開放および室外送風機15の運転により外部熱交換部7に外気が流入すると、第2熱媒体回路6を流れる熱媒体は、外部熱交換部7において外気から吸熱し第2熱交換器3に流入する。熱媒体は、第2熱交換器3において冷媒回路Rの冷媒と熱交換して低温となり、外部熱交換部7に流入して外気から吸熱する。
【0063】
冷媒回路Rを流れる冷媒は、第2熱交換器3において第2熱媒体回路6の熱媒体から吸熱し、圧縮機1に流入する。圧縮機1によって高温高圧のガスとなった冷媒は第1熱交換器2を通過し、第1熱媒体回路5を循環する熱媒体と熱交換して凝縮液化する。
【0064】
第1熱媒体回路5を循環する熱媒体は、第1熱交換器2を通過する際、冷媒と熱交換し、ヒータコア4に流入する。ヒータコア4を通過する熱媒体は放熱フィンの周囲を通過する空気を加温(熱媒体は放熱)する。ヒータコア4で放熱した熱媒体は、第1熱交換器2の熱媒体流路2Bに流入し、冷媒と熱交換して吸熱する。
【0065】
HVACユニット10では、室内送風機27によって吸込口25から空気流通路29内に導入された空気は、ヒータコア4に流入し、ヒータコア4を通過する高温の熱媒体と熱交換することで暖められ、車室内に供給される。
【0066】
このように、併用暖房運転では、外部熱交換部7とECH65を冷媒回路Rの吸熱源とする。
【0067】
またこの場合も図示は省略するが、第2熱媒体回路6にバッテリや走行モータ等の熱供給機器(発熱機器)がある場合には、ECH65に加えてこれらの廃熱を利用することで、ECH65の発熱量を抑制でき、ECH暖房運転に係る消費エネルギ(消費電力量)の増加を抑制できる。
【0068】
本実施形態の車両用空調装置100では、
図1~
図4において不図示の切替弁によって冷媒回路Rにおける冷媒の循環経路を切り替えることで、第1熱交換器2を吸熱器として機能させ、第2熱交換器3を放熱器として機能させる冷房運転や除湿運転も可能であるが、これらの運転については図示および詳細な説明は省略する。
【0069】
<制御装置>
次に、
図5を参照して制御装置200について説明する。
図5(A)は、制御装置200のハード構成の一例を示すブロック図であり、同図(B)は制御装置200の機能構成の一例を示すブロック図であり、特に、本実施形態の車両用空調装置100における空調制御を実行可能な機能構成の一例について示す概略ブロック図である。
【0070】
図5(A)に示すように、制御装置200は、空調用のECU(Electronic Control Unit)で実現され、少なくとも冷媒回路Rの制御を行う。制御装置(ECU)200は、CPU(Central Processing Unit)202と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ204と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部206と、通信制御部208を含んでいる。CPU202、メモリ204、記憶部206、および通信制御部208は内部バス210を介して互いに通信可能に接続されている。
【0071】
通信制御部208は、例えば、走行用のモータの駆動制御やバッテリの充放電制御を含む車両全般の制御を司る車両用のECU300や、例えば、外気温センサ、湿度センサ、車速センサなどを含む各種センサ400、空調回路Eの各構成(の制御ドライバ)500などと通信回線で接続されており、車両用ECU300、各種センサ400、空調回路Eの各構成との間で制御信号その他情報(例えば、外気温、湿度、車速など)を送受信できるようになっている。
【0072】
また、通信制御部208は、外部装置(例えばサーバ装置)600と通信可能であり、外部装置600からの各種情報(例えば、走行経路上の環境に関する外部情報や、目的地情報など)を送受信できるようになっている。具体的には通信制御部208は、例えば、V2X(Vehicle to Everything)通信が可能であり、車車間(Vehicle to Vehicle、V2V)、歩車間(Vehicle to Pedestrian、V2P)、路車間(Vehicle to Infrastructure、V2I)、クラウド-車両間(Vehicle to Network、V2N)で情報の送受信が可能である。
【0073】
本実施形態では一例として、空調用のECU(制御装置200)の通信制御部208が外部装置600と通信する構成を示している。しかしこれに限らず、例えば、車両用ECU300が備える通信制御部(不図示)が外部装置600と通信して取得した各種情報(外部情報や目的地情報など)を空調用のECU(制御装置200)に送信し、空調用のECU(制御装置200)が受信する構成であってもよい。
【0074】
記憶部206には、空調制御を実行するための制御プログラムが記憶されている。また、ECU200は、ここでの説明を省略する空調用のECUとしての既知の構成を含む。
【0075】
ECU200では、当該制御プログラムが記憶部206から読み出されてメモリ204に展開され、メモリ204に展開された駆動抑制制御プログラムがCPU202によって実行され、車両用空調装置100の各構成(ハードウェア)と協働することで、少なくとも冷媒回路Rの制御を含む空調制御の各種機能を実現し、空調制御処理を実行する。
【0076】
図5(B)は、制御装置200の機能構成の一例を示す概略図である。制御装置200は、例えば、シミュレーション部220と、情報取得部221と、着霜量予測部222と、電力量算出部223と、除霜時期決定部224と、吸熱量抑制制御部225などを含む。これらの各部は、実体的な手段(制御基板に設けられる電子部品(回路や素子)などのハードウェア)により構成されてもよいし、制御装置200が有するソフトウェア(プログラム)により構成されてもよいし、両者の協働により構成されてもよい。
【0077】
(シミュレーション部)
シミュレーション部220は、或る地点(現在地)から目的地までの未来の空調運転に関し、複数種類の空調運転パターンについてシミュレーションを実行する。具体的に、本実施形態の車両用空調装置100では、上述した外気吸熱暖房運転、機器熱回収暖房運転、除霜運転(除霜暖房運転)、併用暖房運転を選択的に実行可能であるが、
或る地点(現在地)から目的地まで走行する場合、時間経過に沿って上記の運転の一つまたは複数を組み合わせた空調運転パターンを設定し、空調運転パターンに沿って、外部熱交換部7の着霜の状態や、消費電力量をシミュレーションする。また当該空調運転パターンを複数種類準備し、シミュレーションすることで最適な空調運転パターンを選択する。制御装置200は、複数の内から選択した空調運転パターンに沿って、現実の空調運転を実行可能である。複数種類の空調運転パターンについては後述する。
【0078】
(情報取得部)
情報取得部221は、通信制御部208を介して外部装置600などと通信し、走行経路上における環境に関する外部情報を取得する。「外部情報」とは例えば、道路交通情報通信システム(例えば、VICS(登録商標))などによってカーナビゲーションに配信される道路交通情報、目的地の環境情報(外気温・湿度など)、目的地までの走行経路上における外気温、湿度、地形図、地図情報などである。また、外部情報は通信制御部208を介して取得可能な自車の車速に関する情報も含まれる。情報取得部221はまた、目的地情報を取得する。「目的地情報」とは目的地(予測目的地)までの距離と時間の情報であり、例えば、カーナビゲーションシステムにより取得した情報あるいは、他の全地球測位システム(GPS)により取得した情報であるが、外部情報として外部装置600などから取得した情報であってもよい。
【0079】
情報取得部221は、例えばカーナビゲーションシステムに入力された目的地に関する情報に基づき、現在地から目的地までの距離と時間を取得する。また、情報取得部221は、例えばカーナビゲーションシステムに目的地に関する情報が入力されずに車両が走行している場合は、過去の走行履歴データ(類似の経路、曜日、時間等)から目的地を予測し、予測目的値までの距離と時間を取得する。
【0080】
(着霜量予測部)
着霜量予測部222は、情報取得部221が取得した目的地情報に基づき、また必要に応じて外部情報を参照し、未来の(例えば、目的地までの)外部熱交換部7における着霜の状態(着霜量)を予測する。外部熱交換部7における着霜の状態(着霜量)が所定量に達すると、外気吸熱暖房運転が不可になるため、着霜量予測部222は、予測した未来の着霜の状態により目的地に到達するまでの間に外気吸熱暖房運転が不可になるか否か(目的地まで外気吸熱暖房運転を継続できるか否か)を判定する。ここで、外気吸熱暖房運転が不可になる着霜量(そのレベル)を、以下、「外気吸熱不可レベル」という。
【0081】
具体的には着霜量予測部222は、少なくとも目的地情報(および必要に応じて外部情報、以下同様)に基づき目的地までの外部熱交換部7における着霜の状態の変化、より詳細には、A地点からB地点までの間において外部熱交換部に付着した霜の変化(増加)量(以下、「着霜変化量」という。)を予測する。制御装置200は、この予測された着霜変化量に基づき、除霜運転が必要か否かを判断する。
【0082】
また、着霜量予測部222は、予測した着霜変化量に基づき、目的地まで外気吸熱暖房運転での車両の走行を継続する場合、着霜によって外部熱交換部7にて外気吸熱が不可になる(外気吸熱暖房運転が不可になる、すなわち着霜量が外気吸熱不可レベルに達する)地点までの外気吸熱暖房運転の運転時間を算出する。
【0083】
制御装置200は、算出された外気吸熱暖房運転の運転時間と、目的地までの走行時間に基づき、目的地に到達前に外気吸熱暖房運転が不可になるか否かを判定する。そして、目的地までの走行時間が算出された外気吸熱暖房運転の運転時間よりも長い場合、少なくとも、外気吸熱暖房運転の運転時間が走行時間以上となるように除霜運転を実行する(詳細は後述する)。
【0084】
また、制御装置200は、目的地までの走行時間が外気吸熱暖房運転の運転時間よりも長い場合、外気吸熱暖房運転の運転時間と目的地までの走行時間の差が小さくなるように記空調回路を制御する吸熱量抑制制御を実行する。吸熱量抑制制御についても後に述べる。
【0085】
着霜量予測部222は、車両の走行開始時から或るタイミングで繰り返し(間欠的に)、着霜変化量に基づく着霜量の予測(外気吸熱暖房運転の運転可能時間の算出も含め、以下「着霜量予測」という。)を行う。この或るタイミングとは、例えば所定時間(例えば、5分)毎、所定距離(例えば、5km)毎など所定間隔のタイミングの他、車両の走行停止時など任意のタイミングであってもよい。
【0086】
また、シミュレーション部220は、走行中の或るタイミングで少なくとも1回、複数種類の空調運転パターンのうち少なくとも1つの空調運転パターンについてシミュレーションを行う。「走行中の或るタイミング」とは、着霜量予測部222の間欠的な着霜量予測により、目的地到達前に着霜量が外気吸熱不可レベルに到達することが検知(予測)されたタイミングである。つまり、着霜量予測部222は車両の走行開始時から間欠的に着霜量の予測を行い、その結果、目的地到達前に着霜量が外気吸熱不可レベルに到達することが検知(予測)されたタイミングで、少なくとも一つの空調運転パターンのシミュレーションが実行される。
【0087】
着霜量の予測方法は既知の方法が採用できるが、一例として、外部熱交換部(ラジエータ)7におけるクーラント(熱媒体)の出口水温の実測値と無着霜時のクーラントの出口水温の理論値の差、および外気温湿度と、着霜変化量との相関関係を事前の実験結果等から取得しておくことで、未来の着霜量を予測する方法が挙げられる。以下この予測方法について簡単に説明する。
【0088】
この場合の式1による無着霜時クーラント出口水温Tthの計算は、実験等で求めた計数k5~k8を使用して、同じ条件下で外部熱交換部7が着霜していない場合の外部熱交換部7の出口水温の理論値を求めるものである。そして無着霜時クーラント出口水温Tthの計算結果とクーラントの出口水温の実測値を比較し、その差分によって現在の着霜量を推定する。この差分が大きいほど着霜量が大きいことになる。
【0089】
つまり事前の実験等により、無着霜時クーラント出口水温Tthの計算結果とクーラントの出口水温の実測値の温度差の大きさおよび外気温湿度と、着霜変化量の相関関係を取得しておくことで、現在の着霜量に応じた未来の着霜量、すなわち現時点から所定時間経過後の着霜量を推定することできる。
【0090】
(電力量算出部)
電力量算出部223は、或る地点(シミュレーション開始時点、現在地)から未来の或る地点までにおける空調運転に係る消費電力量を予測して算出する。電力量算出部223は単一の空調運転に限らず、複数の空調運転を混在させた場合の総消費電力量を予測して算出可能である。詳細には、電力量算出部223は、外気吸熱暖房運転、機器熱回収暖房運転、除霜運転(除霜暖房運転)、併用暖房運転の一つまたは複数を組み合わせた複数種類の空調運転パターンのそれぞれについて、総予測消費電力量を算出可能である。具体的には例えば、シミュレーション開始時点から目的地まで、外気吸熱暖房運転のみを行った場合の電力量、除霜運転をすることなく、機器回収暖房運転を実行した場合の電力量、あるいは、除霜運転と機器熱回収暖房運転を行い、除霜後に吸熱暖房運転を実行した場合の電力量、などを算出可能である。
【0091】
電力量算出部223は、現在地の外気温、着霜量予測部222が算出した着霜変化量、目的地情報に基づき、目的地までの空調に係る予測消費電力量を算出する。この場合、必要に応じて取得した外部情報を参照して予測消費電力量を算出する。
【0092】
電力量算出部223は、シミュレーション部220によるシミュレーションの実行毎に予測消費電力を算出する。すなわち目的地までの走行経路上の複数地点において複数回のシミュレーションが実行される場合、これらに対応して複数回、予測消費電力を算出する。
【0093】
(除霜時期決定部)
除霜時期決定部224は、除霜運転を実行する場合にその実行開始時期を決定する。除霜を行う場合、外気温や湿度、車速など外部の環境の影響を受けやすい。例えば、外気温が相対的に低い地点で除霜を行うよりも相対的に高い地点で除霜を行う方が効率的である。除霜時期決定部224は、情報取得部221が取得する外部情報に基づき、走行経路上の複数の地点を除霜運転の実行時期の候補に決定する。
【0094】
以下一例として、外部情報が天気予報などによる走行経路上の外気温である場合を例に説明する。
【0095】
除霜時期決定部224は例えば、目的地に到着する前に、着霜量が外気吸熱不可レベル到達することとなった場合、除霜運転の実行時期として、外気吸熱不可レベルの到達時(即時)を基準として、それより早期の時期(早期実行の時期)と、基準(到達時)より遅延した時期(遅延実行の時期)を除霜運転の実行時期の候補として決定する。この早期実行の時期と、遅延実行の時期の選定に際し、外気吸熱不可レベルαに到達する地点よりも外気温が相対的に高い地点がある場合にはその地点に対応する時期が選定される。
【0096】
電力量算出部223、これらの複数の候補となった実行時期で除霜運転を行った場合の予測消費電力量をそれぞれ算出する。制御装置200(除霜時期決定部224)は、これらの候補となる実行時期のいずれかを選択して除霜運転を実行する場合、予測消費電力量が最小となる実行時期において、除霜運転を開始するように決定する。
【0097】
なお除霜運転の実行時期は、外気吸熱不可レベルαに到達時を基準に早期実行と遅延実行を候補として選定するものに限らない。例えば、走行経路上の現時点から目的地までの任意の複数地点(予測消費電力が小さくなる可能性がある地点)に対応する時期を除霜運転の開始時期(候補)として選定し、それらのうち予測消費電力が最小となる地点において除霜運転を実行するようにしてもよい。任意の複数地点の選定は、例えば、外気温、湿度、交通情報、地形、市街地であるか郊外であるか、など様々な情報に基づき、選定してもよい。
【0098】
除霜時期決定部224はまた、選定した除霜運転の実行時期の候補に基づきシミュレーション部220がシミュレーションを行った結果から、制御装置200が現実に実行する除霜時期を決定する。
【0099】
(吸熱量抑制制御部)
吸熱量抑制制御部225は、外気吸熱暖房運転の能力を最大限に活用できるように、すなわち目的地周辺において、着霜量があるレベルを超え、外気吸熱不可レベルに達する、あるいはより近づくように、調整する制御を行う。
【0100】
例えば、着霜量予測部222によって、目的地までの走行時間と、外部熱交換部7おける外気吸熱が不可になるまでの時間(外気吸熱暖房運転の運転時間)を算出し、目的地までの走行時間が外気吸熱暖房運転の運転時間よりも長い(除霜運転が必要である)と判断された場合、吸熱量抑制制御部225は、外気吸熱暖房運転の運転時間と走行時間の差が小さくなるように空調回路を制御する吸熱量抑制制御を実行する。
【0101】
一般的に、外気吸熱暖房運転のみで目的地まで到達できると消費電力量としては有利である。しかしながら、目的地までの距離が長いあるいは外気温が低いなどで除霜運転が必要となる場合もある。この場合であっても、目的地周辺で着霜量が外気吸熱不可レベルに達する、またはより近づく方が、外気吸熱暖房運転の能力を最大限に活用できるため、望ましい。
【0102】
吸熱量抑制制御部225は、目的地到達時における着霜量が、外気吸熱不可レベルを超える予測となった場合に、除霜運転を実行することなく、目的地到達時における着霜量が、外気吸熱不可レベルの例えば50%以上に達するように外気吸熱暖房運転の運転時間や暖房能力(外気吸熱量)を抑制する。外気吸熱暖房運転における外気吸熱量を抑制することで、結果として外部熱交換部7の着霜量が抑制される。
【0103】
吸熱量抑制制御部225はまた、外気吸熱量の抑制によってHVACユニット10におけるヒータコア4の温度が下がるため、吸熱量抑制制御部225は、室内送風機27の風量を低下させ、吹き出し温度の低下を最小限に抑える。
【0104】
外気吸熱暖房運転の暖房能力の抑制により車内の空調快適性が若干犠牲となる。そこで、吸熱量抑制制御部225は、この犠牲となった外気吸熱暖房運転の暖房能力を補うために、補助的にECH暖房運転を行い、車室内の温度低下を抑制する制御を行うこともできる。
【0105】
また制御装置200は、吸熱量抑制制御部225による制御とは別に、外気吸熱暖房運転の能力を最大限に活用できるように、空調運転を行う。例えば除霜運転を実行することとなった場合でも、目的地到達時における着霜量が、外気吸熱不可レベルの50%以上に達するように除霜運転(除霜量、除霜運転の時間)及びその後の外気吸熱暖房運転(運転時間)を制御することができる。
【0106】
このように、本実施形態の制御装置200は、未来の着霜量の予想や空調に係る電力(消費電力)量の予測を行うシミュレーション部220を有し、これにより、予め想定される複数種類の空調運転パターンについて着霜量や消費電力量のシミュレーションを行う。
【0107】
制御装置200は、少なくとも2つの空調運転パターンのシミュレーションの結果、算出された予想消費電力を比較し、予想消費電力が最小となる空調運転パターンを選択し、目的地までの空調運転を実行する。これにより例えば、シミュレーション開始時点(現時点)から目的地まで、機器熱回収暖房運転と除霜運転のいずれを選択するか、あるいは、除霜運転を行った後に外気吸熱暖房運転を行うか、あるいは、目的地に到達するまでの間に除霜運転が必要となった場合(着霜量が外気吸熱不可レベルに達した場合)に、即時に除霜運転を開始するか否か、など目的地情報や外部情報に応じて効率のよい空調運転を適宜選択して行うことができ、省エネルギー効果により航続距離の低下を抑制できる。
【0108】
なお、本実施形態では説明の便宜上、制御装置200の機能を
図6(B)に示す構成に区分して説明したが、これらは一例であり、制御装置200において、それぞれの機能を実現する構成(手段)は上記の例に限らない。また、上記の各機能を実現する手段が
図6(B)のようにブロック化(ユニット化)されて機能を分担する構成である必要はなく、例えば、制御装置200が全体として情報取得機能、着霜量予測機能、電力量算出機能、除霜時期決定機能、吸熱量抑制制御機能、シミュレーション機能などを実現可能な構成であればよい。
【0109】
<空調運転パターン>
次に、
図6から
図12を参照して、空調運転パターンの一例について説明する。制御装置200は、上記で説明した制御(動作)以外に、以下の空調運転パターンのシミュレーションを実現するための制御(動作)を実行可能である。
【0110】
図6から
図10に示すグラフにおいて、横軸は時間であり、縦軸は着霜量(実測、予測)および消費電力量(実測、予測)である。着霜量および消費電力量は、現在時刻T0までは実測値であり、現在時刻T0以降は予測値である。着霜量は太線、消費電力量は破線および塗り潰しで示す。また縦軸のαは、着霜量の外気吸熱不可レベルを示している。
【0111】
まず、
図6(A)は、走行中の或る時点における空調運転の状態の一例を示すグラフである。この場合、現在時刻T0において着霜量が外気吸熱不可レベルαに近い状態であり、目的地到着予定時刻TE以前の時刻Txにおいて、着霜量が外気吸熱不可レベルαに達すること、すなわち着霜量予測部222の間欠的な予測により、このまま走行を継続すると点線のように目的地到達前に(時刻Txで)に着霜量が外気吸熱不可レベルαに到達することが検知(予測)されたタイミングである。「着霜量が外気吸熱不可レベルαに到達すること」はすなわちこのまま走行を継続すると目的地到達前に除霜が必要となることを意味し、以下「着霜量が外気吸熱不可レベルαに到達すること」の検知を「要除霜」の検知という場合がある。
【0112】
本実施形態のシミュレーション部220は、
図6(A)に示す、要除霜の検知を契機として、以下の一または複数の空調運転パターンのシミュレーションを実行する。
【0113】
<空調運転パターン1>
図6(B)は、空調運転パターン1を示す。空調運転パターン1は、現在時刻T0から外気吸熱不可レベルαに到達する時刻Txまでは外気吸熱暖房運転(
図1)を行い、外気吸熱不可レベルαに到達した時刻Tx以降は除霜運転を行わず、目的地まで
図2に示す機器熱回収暖房運転(ECH暖房運転)を行うパターンである。外気吸熱不可レベルαに到達した場合、外気吸熱暖房運転は不可となるため、代わりに機器熱回収暖房運転を実行する。この場合にどの程度の消費電力量が生じるかをシミュレーションできるパターンである。
【0114】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC1として、現在時刻T0から外気吸熱不可レベル到達時刻Txまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(a)と外気吸熱不可レベル到達時刻Txから目的地到達予定時刻TEまでのECH暖房運転の予測消費電力量(b)の合計値(PC1=(a)+(b))を算出する。
【0115】
<空調運転パターン2>
図6(C)は、空調運転パターン2を示す。空調運転パターン2は、現在時刻T0における状態は
図6(B)と同様である。つまり、
図6(A)では目的地に到達するまでの間に除霜運転が必要な状態であるが、現在時刻T0においてはまだ外気吸熱暖房運転は可能な状態である。空調運転パターン2では、現在時刻T0においては即時の除霜運転は不要と判断し、外気吸熱暖房運転を停止する。また除霜運転も行うことなく、機器熱回収暖房運転(ECH暖房運転、
図3)に切り替えて実行する。そして、目的地付近で余力のある(着霜量が外気吸熱不可レベルαに未到達である)外気吸熱暖房運転(
図1)を実行する。
【0116】
このように、空調運転パターン2では、目的地に到達するまでの間に除霜運転が必要な状態であるが、即時の実行は不要と判断した場合に、機器熱回収暖房運転を実行し、目的地付近となった場合に、外気吸熱暖房運転に切り替えるパターンである。空調運転パターン1と同様に、外気吸熱暖房運転の代わりに機器熱回収暖房運転を実行する場合にどの程度の消費電力量が生じるかをシミュレーションできるパターンである。
【0117】
この場合、目的地において着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルα付近に到達することが望ましい。つまり、着霜量予測部222が予測した着霜量変化率(時間に比例する)に基づき、制御装置200(例えば、シミュレーション部220)は目的地において着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルα付近に到達することを前提に逆算し、目的地付近で外気吸熱暖房運転を開始する時刻T1を決定する。ここで、「目的地において着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルα付近に到達する」とは、目的地において着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルαの50%以上に到達することをいい、好適には、着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルαの70%~100%程度に到達することをいい、より好適には着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルαの90%~100%程度に到達することをいう。
【0118】
このように目的地付近で外気吸熱に切り替えるため、目的地までECH暖房運転を継続する場合(例えば、空調運転パターン1)と比較して消費電力を抑えることができる。
【0119】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC2として、現在時刻T0以降、時刻T1までのECH暖房運転の予測消費電力量(c)と、時刻T2から目的地到達予定時刻TEまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(d)の合計値(PC2=(c)+(d))を算出する。
【0120】
<空調運転パターン3>
図7(A)は、空調運転パターン3を示す。空調運転パターン3は、現在時刻T0以降外気吸熱不可レベルαに到達するまで(外気吸熱不可レベル到達時刻Txまで)外気吸熱暖房運転(
図1)を実行し、外気吸熱不可レベル到達時刻Txから(即時に)
図3に示す除霜運転(除霜暖房運転)を実行し、除霜が完了した(着霜が略全て除去された)時刻T1から目的地まで外気吸熱暖房運転(
図1)を実行するパターンである。
【0121】
すでに述べた通り除霜運転は、ECH65を熱源とする除霜運転と、ECH暖房運転を併用する空調運転である。着霜が外気吸熱不可レベルαに到達した場合、外気吸熱暖房運転は不可となるため、代わりにECH暖房運転を行い、このECH65を熱源として除霜運転を行うことで、暖房運転と除霜運転を両立できる。空調運転パターン3は、着霜が生じて外気吸熱暖房運転ができなくなった場合は、機器熱回収暖房運転で代替するのではなく、除霜を行って外気吸熱暖房運転再開する場合にどの程度の消費電力量が生じるかをシミュレーションできるパターンである。
【0122】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC3として、現在時刻T0以降、外気吸熱不可レベル到達時刻Txまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(e)と、外気吸熱不可レベル到達時刻Txから除霜が完了する時刻T1までの除霜運転の予測消費電力量(f)と、時刻T2から目的地到達予定時刻TEまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(g)の合計値(PC3=(e)+(f)+(g)を算出する。
【0123】
<空調運転パターン4>
図7(B)は、空調運転パターン4を示す。空調運転パターン4は、現在時刻T0以降外気吸熱不可レベルαに到達するまで(外気吸熱不可レベル到達時刻Txまで)外気吸熱暖房運転(
図1)を実行し、外気吸熱不可レベル到達時刻Txからは即時に除霜運転を実行せず、機器熱回収暖房運転(
図2)を時刻T1まで実行する。そして時刻T1から除霜運転(
図3)を実行し、除霜が完了した(着霜が略全て除去された)時刻T2から目的地まで外気吸熱暖房運転を実行するパターンである。空調運転パターン4も空調運転パターン3と同様であるが、除霜運転の開始タイミングを異ならせた場合にどの程度の消費電力量が生じるかをシミュレーションできるパターンである。
【0124】
この場合の除霜運転の開始時刻T1は、除霜時期決定部224により決定(選定)された、除霜運転の遅延実行の時期である。除霜時期決定部224は走行経路上の外部情報に基づき、効率よく除霜が行える(可能性がある)時期として、外気吸熱不可レベル到達時刻Txより遅れた(遅延実行の)時期として時刻T1を決定している。
【0125】
空調運転パターン4のシミュレーションでは、これに基づき外気吸熱不可レベル到達時刻Txからは即時に除霜運転を実行せず、遅延実行の時刻T1まで除霜運転を待機する。
【0126】
この場合例えば、例えば、
図7(A)の場合と比較して、除霜運転に係る予測消費電力量に関しては低減できる可能性がある。
【0127】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC4として、現在時刻T0以降、外気吸熱不可レベル到達時刻Txまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(h)と、外気吸熱不可レベル到達時刻Txから除霜運転の待機をする時刻T1までの機器熱回収暖房運転の予測消費電力量(i)と、時刻T1から除霜運転を開始し、除霜が完了する時刻T2までの除霜運転の予想消費電力量(j)と、除霜が完了した時刻T2から目的地到達予定時刻TEまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(k)の合計値(PC4=(h)+(i)+(j)+(k)を算出する。
【0128】
<空調運転パターン5>
図7(C)は、空調運転パターン5を示す。空調運転パターン5は、現在時刻T0以降外気吸熱暖房運転(
図1)を実行するが、外気吸熱不可レベルαに到達するよりも早期の時刻T1で外気吸熱暖房運転を停止して除霜運転(
図3)に切り替える。そして除霜が完了した(着霜が略全て除去された)時刻T2から目的地まで外気吸熱暖房運転を実行するパターンである。空調運転パターン5も空調運転パターン3と同様であるが、除霜運転の開始タイミングを空調運転パターン3、4と異ならせた場合にどの程度の消費電力量が生じるかをシミュレーションできるパターンである。
【0129】
この場合の除霜運転の開始時刻T1は、除霜時期決定部224により決定(選定)された、除霜運転の早期実行の時期である。除霜時期決定部224は走行経路上の外部情報に基づき、効率よく除霜が行える(可能性がある)時期として、外気吸熱不可レベル到達時刻Txより早い(早期実行の)時期として時刻T1を決定している。
【0130】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC5として、現在時刻T0以降、時刻T1までの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(l)と、時刻T1から除霜運転を開始し、除霜が完了する時刻T2までの除霜運転の予想消費電力量(m)と、除霜が完了した時刻T2から目的地到達予定時刻TEまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(n)の合計値(PC5=(l)+(m)+(n))を算出する。
【0131】
空調運転パターン3~5は、目的地に到達するまでの間に除霜運転が必要な状態であると判断した場合、除霜運転を実行した後に外気吸熱暖房運転に移行するパターンである。
【0132】
<空調運転パターン6>
図8を参照して空調運転パターン6について説明する。まず
図8(A)は、除霜運転の要否を判断する時点(着霜変化量に基づく着霜量予測により「要除霜」が検知された時点)において、着霜量が比較的少ない、すなわち着霜の進行が進んでいない状態を示している。このように着霜の進行が緩やかな場合に目的地到達以前に除霜運転を行うと、外気吸熱暖房運転の余力を(大きく)残した状態で目的地に到達する可能性があり、除霜運転に係るエネルギーを無駄に消費する恐れがある。
【0133】
そこで、空調運転パターン6では、「要除霜」の検知に時間のパラメータも採用する。すなわち、制御装置200(着霜量予測部222)は間欠的なタイミングで、着霜量を検知し、
図8(A)に点線で示す予測をする。制御装置200(着霜量予測部222)はまた、現在地から目的地までの走行時間(現在時刻T0から目的地到着予定時刻TEまでの時間)R0および、現在時刻T0から着霜により外部熱交換部7にて外気吸熱が不可になるまで(外気吸熱不可レベル到達時刻Txまで)の外気吸熱暖房運転(
図1)の時間(外部吸熱暖房実行可能時間)Rhを算出する。
【0134】
そして、走行時間R0が外部吸熱暖房実行可能時間Rhよりも長い場合に、「要除霜(時間)」と判定(検知)する。
【0135】
例えば、この判定の場合、
図8(A)に示すように、目的地までの距離が短い(走行時間R0>外部吸熱暖房実行可能時間Rh)場合には除霜を行わない。
【0136】
一方、「要除霜(時間)」が検知された場合は、目的地から遠い段階で(「要除霜(時間)」の検知後即時に)除霜運転を実行する。これにより、除霜運転後は目的地まで外部吸熱暖房運転を実行できるので、目的地周辺(走行終了時)において外部吸熱暖房運転の能力が無駄になる可能性を低減できる。
【0137】
図8(B)は、空調運転パターン6を示すグラフであり、このような時間を含むパラメータで着霜量予測をした結果「要除霜(時間)」が検知された状態を示している。
図8(B)において点線で示す着霜量(予測量)の場合では、算出された、現在地から目的地までの走行時間(現在時刻T0から目的地到着予定時刻TEまでの時間)R1と、外部吸熱暖房実行可能時間Rhを比較すると、R1>Rhとなり「要除霜(時間)」となる。
【0138】
この場合、目的地から遠い段階で(好適には「要除霜(時間)」の検知後即時に)除霜運転を実行し、その後、外気吸熱暖房運転を実行することで、外部吸熱暖房実行可能時間を調整する(新たな外部吸熱暖房実行可能時間Rh´を得る)。つまり除霜運転の実行時間は、新たな(除霜完了後の)外部吸熱暖房実行可能時間Rh´が走行時間R1以上となる(Rh´>R1)時間である。
【0139】
必要な除霜運転を先に(「要除霜(時間)」の検知後即時に行うことで、除霜運転後は目的地まで外部吸熱暖房運転を実行できるので、目的地周辺(走行終了時)において外部吸熱暖房運転の能力が無駄になる可能性を低減できる。
【0140】
また、着霜の進行が少ない段階で除霜運転を行うので、除霜運転に係る消費電力も少なく抑えることができる。
【0141】
さらに、本実施形態における着霜量(予測量)は、目的地情報(および必要に応じて外部情報、以下同様)に基づき着霜量予測部222により算出された着霜変化量に基づく値である。つまりこの着霜変化量に基づき、外部吸熱暖房実行可能時間Rh、Rh´を算出することで、外部吸熱暖房実行可能時間Rh、Rh´の精度を向上させることができる。これにより、適切な除霜運転の要否の選択ができ、除霜運転による消費電力の無駄を最小限にできる(空調運転パターン7,8においても同様である)。
【0142】
具体的に、空調運転パターン6は、着霜が相対的に少ない現在時刻T0において即時に除霜運転を開始し、除霜が完了した(着霜が略全て除去された)時刻T1から目的地まで外気吸熱暖房運転を実行するパターンである。
【0143】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC6として、現在時刻T0以降、時刻T1までの除霜運転の予測消費電力量(o)と、時刻T1から目的地到達予定時刻TEまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(p)の合計値(PC6=(o)+(p))を算出する。
【0144】
<空調運転パターン7>
図9(A)は、空調運転パターン7を示す。空調運転パターン7も「要除霜(時間)」の検知後に除霜運転を行うパターンであるが、空調運転パターン6における除霜運転(
図3)の際、ほぼ完全には除霜せず、着霜の一部のみを除去するパターンである。また、目的地到達時TEにおける着霜量が、外気吸熱不可レベルαの50%以上に達する(外気吸熱不可レベルαにより近づく、あるいは外気吸熱不可レベルαに達する)ように、除霜量を制御し、また除霜運転の時間(すなわち除霜後の外気吸熱暖房運転の開始時間)を制御している。ラジエータ7の着霜を全て(ほぼ完全に)除去しなくても、目的地まで外気吸熱暖房運転(
図1)が可能である。さらに、目的地到達時TEにおける着霜量が、外気吸熱不可レベルの50%以上に達する(外気吸熱不可レベルαに達する、またはより近づく)ように運転できるので、常時、外部吸熱暖房運転の状態で走行を終了できる。
【0145】
空調運転パターン7では、着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルαの50%以上、好適には、着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルαの70%~100%程度、より好適には着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルαの90%~100%程度に到達するように、除霜量、および除霜運転の時間を制御する。システム効率の良い外気吸熱暖房運転の運転可能時間を概ね使い切って走行を終了できるので、消費エネルギーの増加を抑制できる(空調運転パターン8においても同様である)。
【0146】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC7として、現在時刻T0以降、時刻T1までの除霜運転の予測消費電力量(q)と、時刻T1から目的地到達予定時刻TEまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(r)の合計値(PC7=(q)+(r))を算出する。
【0147】
<空調運転パターン8>
図9(B)は、空調運転パターン8を示す。空調運転パターン8は、
図7(C)に示した空調運転パターン5において目的地到達時TEにおける着霜量が、外気吸熱不可レベルの50%以上に達する(外気吸熱不可レベルαに達する、またはより近づく)ように、除霜の時間(および除霜量)を制御し、除霜後の外気吸熱暖房運転(
図1)の開始時間を制御するパターンである。このパターンは、除霜運転の早期実行(空調運転パターン5)ともいえるパターンであるが、目的地到達時TEにおける着霜量が、外気吸熱不可レベルの50%以上に達するように制御する点で異なっている。
【0148】
また
図9(B)の空調運転パターン8ではラジエータ7の着霜を全て(ほぼ完全に)除去する例を示しているが、目的地到達時TEにおける着霜量が、外気吸熱不可レベルの50%以上に達するように外気吸熱暖房運転を実行するパターンであれば、除霜量は
図9(A)に示すように一部の除霜であってもよい。
【0149】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC8として、現在時刻T0以降、時刻T1までの外気吸熱暖房運転の予想消費電力量(s)と、時刻T1から除霜運転を行い、除霜が完了する時刻T2までの除霜運転の予測消費電力量(t)と、時刻T2から目的地到達予定時刻TEまでの外気吸熱暖房運転の予測消費電力量(u)の合計値(PC8=(s)+(t)+(u))を算出する。
【0150】
<空調運転パターン9>
図10(A)は、空調運転パターン9を示す。空調運転パターン9も、除霜運転の要否は、空調運転パターン6と同様に時間のパラメータを含めて判定し、
図10(A)の場合は、現在時刻T0において「要除霜(時間)」が検知(予測)されている。空調運転パターン9は「要除霜(時間)」が、検知された場合であっても、除霜運転を行うことなく外気吸熱暖房運転のみで目的地まで到達させるパターンである。
【0151】
ここで、空調運転パターン9、10の「要除霜」の検知について説明する。空調運転パターン9、10においても、「要除霜」の検知に時間のパラメータを採用している。すなわち、制御装置200(着霜量予測部222)は間欠的なタイミングで、着霜量を検知し、
図10(A)に点線で示す予測をしている。制御装置200(着霜量予測部222)はまた、現在地から目的地までの走行時間(現在時刻T0から目的地到着予定時刻TEまでの時間)R3および、外部吸熱暖房実行可能時間Rhを算出し、走行時間R3が外部吸熱暖房実行可能時間Rhよりも長い場合に、「要除霜(時間)」と判定(検知)する。
【0152】
図10(A)において点線で示す着霜量(予測量)の場合、R3>Rhとなり「要除霜(時間)」となる。そして空調運転パターン9では、「要除霜(時間)」が検知された場合には、吸熱量抑制制御を行い、外気吸熱暖房運転の制御(運転状態)を変化させ、外部吸熱暖房実行可能時間を調整する(新たな外部吸熱暖房実行可能時間Rh´を得る)。
詳細には、吸熱量抑制制御は、目的地までの走行時間R3と外部吸熱暖房実行可能時間Rh´の差が小さくなるように(望ましくは走行時間R3と外部吸熱暖房実行可能時間Rh´が同程度となるように)吸熱量抑制制御を実行する。なお、現在時刻T0以降の着霜量(予測量)は、いずれも目的地情報に基づき着霜量予測部222により算出された着霜変化量に基づく値であり、この着霜変化量に基づき、外部吸熱暖房実行可能時間Rh、Rh´を算出することで、外部吸熱暖房実行可能時間Rh、Rh´の精度を向上させることができる(空調運転パターン10においても同様である)。
【0153】
空調運転パターン9では、目的地到着時には、外気吸熱暖房運転が不可、あるいはそれに近い状態となっている(そのように吸熱量、着霜量を制御する)ため、常時、システム効率の良い外気吸熱暖房運転で走行を終了できる。これにより、車両空調装置100としての消費エネルギーの増加を抑えることができる。
【0154】
空調運転パターン9では、「要除霜(時間)」が検知されているため、走行時間R3と外部吸熱暖房実行可能時間Rh´の差が小さくなるように、吸熱量抑制制御を行う。走行時間R3と外部吸熱暖房実行可能時間Rh´の差が小さいということは、目的地到達時TEにおける着霜量が外気吸熱不可レベルαに近づくことである。走行時間R3と外部吸熱暖房実行可能時間Rh´が等しい場合、目的地到達時TEにおける着霜量が外気吸熱不可レベルαと略一致する(
図10(A))。空調運転パターン9では、走行時間R3と外部吸熱暖房実行可能時間Rh´の差が小さくなるように、吸熱量抑制制御を行うが、これは、現在時刻T0以降、外気吸熱暖房運転の暖房能力を抑制し、目的地到達時TEにおける着霜量が、外気吸熱不可レベルαの50%以上に達するように、外気吸熱暖房運転を行うことを意味する。
【0155】
空調運転パターン9では、目的地到達時TEにおける着霜量は、外気吸熱不可レベルαの50%以上、好適には、着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルαの70%~100%程度、より好適には着霜量のレベルが外気吸熱不可レベルαの90%~100%程度に到達するように、吸熱量抑制制御を行う。システム効率の良い外気吸熱暖房運転の運転可能時間を概ね使い切って走行を終了できるので、消費エネルギーの増加を抑制できる(空調運転パターン10においても同様である)。
【0156】
吸熱量抑制制御は、外部吸熱暖房運転における暖房能力を抑制させる制御であり、具体的には、外気吸熱暖房運転の運転時間や暖房能力(外気吸熱量)を抑制するため、例えば、HVACユニット10におけるヒータコア4の温度を下げる、または外気の流入量を押させるために室外送風機15の送風量を弱め、あるいは停止させる。また吸熱量が下がるため、吸熱量抑制制御部225は、室内送風機27の風量を低下させ、吹き出し温度の低下を最小限に抑える。
【0157】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC9として、現在時刻T0以降、目的地到達予定時刻TEまでの抑制された外気吸熱暖房運転の予想消費電力量(v)を算出する。
【0158】
<空調運転パターン10>
図10(B)は、空調運転パターン10を示す。空調運転パターン9では外気吸熱暖房運転の暖房能力の抑制により車内の空調快適性が若干犠牲となる。そこで、空調運転パターン10では、この犠牲となった外気吸熱暖房運転の暖房能力を補うために、補助的に機器熱回収暖房運転(ECH暖房運転)を行い、車室内の温度低下を抑制する。つまりこの場合、
図4に示す併用暖房運転を行う。外気吸熱暖房運転は外気吸熱量を抑制しつつ、目的地到達時TEにおける着霜量が、外気吸熱不可レベルの50%以上に達する(外気吸熱不可レベルαに達する、またはより近づく)ように、制御される。
【0159】
この場合、電力量算出部223は、現在時刻T0から目的地到達予定時刻TEまでの総予測消費電力量PC10として、現在時刻T0以降、目的地到達予定時刻TEまでの抑制された外気吸熱暖房運転の予想消費電力量(w)と、機器熱回収暖房運転の予測消費電力量(x)の合計値(PC10=(w)+(x))を算出する。
【0160】
このようなシミュレーションにより、着霜により外気吸熱暖房運転が不可となった場合の複数の空調運転パターンが把握できる。またこれらを比較することにより、目的地、またはリアルタイムの周辺環境に応じた最良の空調運転パターンで空調運転を行うことができる。具体的には、以下の事例について把握や比較を行い、またその空調運転を実行できる。
【0161】
(1)外気吸熱暖房運転が不可になった場合の機器熱回収暖房運転と除霜運転(その後の外気吸熱暖房運転)の選択
この場合は、例えば、空調運転パターン1~5の予測消費電力量を比較する。すなわち、目的地に到達するまでの間に外気吸熱暖房運転が不可になると判断した場合(「要除霜」を検知した場合)目的地までの間に除霜運転をすることなく、機器回収暖房運転を実行した場合(空調運転パターン1、2いずれか)の第1の総予測消費電力量と、外気吸熱暖房運転が不可になる時点以降、目的地までの間に除霜運転を行い、除霜後に外気吸熱暖房運転を実行した場合(空調運転パターン3~5のいずれか)の第2の総予測消費電力量を算出し、第1の総予測消費電力量が第2の総予測消費電力量より大きい場合に、除霜運転を実行する。
【0162】
つまり、制御装置200は、空調運転パターン1~5のうち最も予測消費電力量が小さい空調運転パターンを選択する。また制御装置200は選択した空調運転パターンで現実の制御を行う。
【0163】
このようにして制御装置200は、リアルタイムの目的地情報に基づき機器熱回収暖房運転と除霜運転を選択可能である。
【0164】
このようにすることで、除霜に使用する電力と除霜によって得られる省エネ効果を比較して、除霜運転の有無を判断することができ、無駄に除霜運転が実行されることを回避できる。つまり除霜運転の有無を判断する際の消費エネルギーを最適化でき、ひいては航続距離の低下を抑制できる。
【0165】
(2)除霜運転を行う場合の除霜運転の開始時期の決定
この場合は、例えば、空調運転パターン3~5の予測消費電力量を比較する。そして制御装置200(除霜時期決定部224)は、総予測消費電力量に基づき実際の実際の除霜運転の実行時期を決定する。
【0166】
空調運転パターン3~5の予測消費電力を比較し、最小値となる空調運転パターンを選択して実行することにより、最適な除霜運転の開始時期を決定し、実行することができる。具体的には制御装置200は、着霜量が外気吸熱不可レベルαに到達後即時に除霜運転を実行する(空調運転パターン3)、除霜運転を遅延実行する(空調運転パターン4)、除霜運転を早期実行する(空調運転パターン5)のいずれかのうち、最も総予測消費電力量が小さいものを選択し、それに基づき実際の除霜運転の実行時期を決定する。
【0167】
あるいは、空調運転パターン3~5のシミュレーションにおいて、除霜時期決定部224は走行経路上の任意の複数地点の外部情報に基づき、除霜時期の候補を選定することにより、外気吸熱不可レベルαに到達した時点を基準とする遅延実行/早期実行に限らず、効率よく除霜が行える(可能性がある)時期に除霜運転を開始することができる。
【0168】
このようにリアルタイムの外部情報に基づき除霜運転の判断が可能となるため、除霜運転の判断を最適化できる。これにより、消費エネルギーの最適化ひいては航続距離の低下を抑制できる。
【0169】
(3)除霜運転の要否と除霜運転の制御
この場合は、例えば、空調運転パターン6~8の少なくともいずれかのシミュレーションを行う。必要な除霜運転を先に(「要除霜(時間)」の検知後即時に行うことで、除霜運転後は目的地まで外部吸熱暖房運転を実行できるので、目的地周辺(走行終了時)において外部吸熱暖房運転の能力が無駄になる可能性を低減できる。また、着霜の進行が少ない段階で除霜運転を行うので、除霜運転に係る消費電力も少なく抑えることができる。
【0170】
なお、この場合には、制御装置200は必ずしも、空調運転パターン6~8のシミュレーションを行い、いずれか一つを選択・実行しなくてもよい。例えば、空調運転パターン7を単独でシミュレーションし、実行する構成であってもよい。
【0171】
また、例えば、空調運転パターン6~8の少なくとも2つのパターンについて目的地付近における着霜量を比較し、外気吸熱不可レベルαに近い方を選択し、現実に実行してもよい。これにより、より、外部吸熱暖房運転の能力が無駄になる可能性を低減できる。
【0172】
またこのように、空調運転パターン6~8については、必ずしも予測消費電力量を比較する必要はなく、その場合には予測消費電力量の算出を行わなくてもよい。もちろん、空調運転パターン6~8の少なくとも2つのパターンについて予測消費電力量を比較し、最小となるパターンを現実に実行するようにしてもよい。
【0173】
(4)効率の良い外気吸熱暖房運転の制御
この場合は、例えば、空調運転パターン9,10の少なくともいずれかのシミュレーションを行う。
【0174】
いずれのパターンも目的地到着時に、外部熱交換部7が外気吸熱不可の着霜量となるように吸熱量を制御することで、現在地から目的地まで終始システム効率のよい外気吸熱暖房運転を実行でき、また、外気吸熱暖房運転で走行を終了できる。これにより、消費エネルギーの増加を抑制できる。
【0175】
なお、この場合には、制御装置200は必ずしも、空調運転パターン9,10両方のシミュレーションを行い、いずれか一つを選択・実行しなくてもよい。例えば、空調運転パターン9を単独でシミュレーションし、実行する構成であってもよい。
【0176】
また、空調運転パターン9、10については、必ずしも予測消費電力量を比較する必要はなく、その場合には予測消費電力量の算出を行わなくてもよい。
【0177】
あるいはまた、同じ条件であれば、車内の暖房快適性が若干犠牲になる空調運転パターン9と、暖房快適性は向上する空調運転パターン10は消費電力量に限れば後者の方が大きくなることは想定されるため、別の条件により、両者を比較し、制御装置200が選択、実行するものであってもよい。具体的には例えば、空調運転パターン9,10のそれぞれについて目的地付近における着霜量を比較し、外気吸熱不可レベルαに近い方を選択し、現実に実行してもよい。これにより、より、外部吸熱暖房運転の能力が無駄になる可能性を低減できる。もちろん、空調運転パターン9,10のパターンについて予測消費電力量を比較し、小さいパターンを現実に実行するようにしてもよい。
【0178】
また、上記の事例に限らず、また上記の事例の範囲を超えて、例えば、空調運転パターン1~10の少なくとも2つを選択してシミュレーションしてもよいし、空調運転パターン1~10の全ての予想消費電力量を比較し、そのうちで最小のパターンを選択し、実行するようにしてもよい。
【0179】
制御装置200は例えば、空調運転パターン1~10の少なくともいずれかをシミュレーションし、最適な空調運転パターンを決定した場合、自動で当該決定した空調運転パターンを実行する。しかしこれに限らず、最適な空調運転パターンを決定した場合、何等かの契機(指示)に基づき、当該決定した空調運転パターンを実行するようにしてもよい。
【0180】
例えば、最適な空調運転パターンを運転者に報知(カーナビゲーションのディスプレイに表示、音声出力)するなどし、運転者による決定操作を契機に空調運転パターンを実行するようにしてもよい。また、シミュレーションした全ての空調運転パターンを報知し、運転者に選択させるようにしてもよい。その際、最適な空調運転パターンとは異なるパターンが選択された場合には、運転者による決定操作を優先して実行するようにしてもよいし、最適な空調運転パターンを優先して実行するようにしてもよい。
【0181】
空調運転パターン1~10は、予め定められた条件でシミュレーションするのではなく、最新の(リアルタイムの)目的地情報や外部情報を都度取得してシミュレーションするため、精度が高く、省エネルギー効果を高めることができる。
【0182】
結果、目的地に到達するまでの間に最適な運転制御を選択的に実行することにより、省エネルギー効果を高めることが可能な車両用空調装置を提供することができる。
【0183】
また、目的地に到達するまでの間において最適な除霜運転の実行時期を決定することにより省エネルギー効果を高めることが可能な車両用空調装置を提供することができる。
【0184】
また、不要な除霜運転の実行を回避し、外気吸熱暖房運転の能力を可能な限り活用することで、電力の無駄を抑制することが可能な車両用空調装置を提供することができる。
【0185】
<空調運転制御方法>
図11および
図12を参照して、空調運転制御方法について説明する。
図11および
図12は空調運転制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0186】
まず、
図11は、空調運転パターン1~10のそれぞれ(またはいずれかを選択して)予測消費電力量をシミュレーションし、予測電力量が最小となるパターンを選択して実行する場合の処理を示すフローチャートである。
【0187】
まず、ステップS01では着霜量予測部222により間欠的に目的地における着霜量を予測する。ステップS03では、「要除霜」を検知したか否か、すなわち目的地到着前に着霜量(予測値)が外気吸熱不可レベルαに到達するか否かを判定する。空調運転パターン6~10については時間のパラメータも含めて予測する。そして「要除霜」検知した場合はステップS05に進み、到達しない場合はステップS01に戻る。
【0188】
ステップS05では、目的地までの時間が取得できるか否かを判定し、取得できる場合はステップS11に進み、取得できない場合はステップS07に進む。ステップS11では目的地までの時間を取得し、ステップS13に進む。ステップS07では、目的地を推定できる過去の走行履歴データ(類似の経路、曜日、時間等)があるか否か判定し、走行履歴データがある場合はステップ09に進み、走行履歴データがない場合は処理を終了する。ステップS09では目的地および目的地までの時間を推定し、ステップS13に進む。
【0189】
ステップS13では、空調運転パターン1~10のそれぞれ(またはいずれか)についてシミュレーションを行い、総予測消費電力量を算出する。ステップS15では、総予測消費電力量が最小の空調運転パターンを選択し、実行する。
【0190】
図12は、特に空調運転パターン6~10について、時間のパラメータを含んだ要除霜の検知を行う場合の処理の流れを示す。
【0191】
まず、ステップS11では目的地までの走行時間が取得できるか否かを判定し、取得できる場合はステップS13に進み、取得できない場合はステップS17に進む。ステップS13では目的地までの走行時間を取得し、ステップS15に進む。ステップS17では、目的地を推定できる過去の走行履歴データ(類似の経路、曜日、時間等)があるか否か判定し、走行履歴データがある場合はステップ19に進み、走行履歴データがない場合は処理を終了する。ステップS19では目的地および目的地までの走行時間を推定し、ステップS15に進む。
【0192】
ステップ15では、外部吸熱暖房実行可能時間を算出する。外部吸熱暖房実行可能時間は、目的地情報に基づき着霜量予測部222により算出された着霜変化量に基づく値であり、この着霜変化量に基づき、外部吸熱暖房実行可能時間を算出することで、精度を向上させることができる。
【0193】
ステップS21では、目的地までの走行時間が外部吸熱暖房実行可能時間より長いか否かを判定し、長い場合は除霜運転が必要と判断し、ステップS23に進み、そうでない場合は処理を終了する。
【0194】
ステップS23では、空調運転パターン6~10のそれぞれ(所望のパターン)について除霜運転を実行し、その後に、外気吸熱暖房運転を実行することで外部吸熱暖房実行可能時間が走行時間以上となるようにし、処理を終了する。
【0195】
このように、複数の空調運転パターン6~10について、予測消費電力量の算出(比較)を行わなくてもよい。またこの処理は、制御装置200がシミュレーションとして行ってもよいし、現実の運転時の処理として行ってもよい。
【0196】
〔第2実施形態〕
図13~
図16を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
図13~
図16は、本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置100の、冷媒回路Rを含む主要な構成の一例を示す概略図である。
【0197】
第2実施形態の車両用空調装置100は、冷媒回路Rの凝縮器で空気を加熱するタイプである。空調回路Eは、冷媒回路Rと、室内熱交換部4と、外部熱交換部7を有する。この例の空調回路Eは、圧縮機1を含む冷媒回路R上に、室内熱交換部4と、外部熱交換部7が配置されている構成である。
【0198】
図13を参照して、車両用空調装置100は、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機(電動圧縮機)1と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路29内に設けられ、圧縮機1から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための室内熱交換部(放熱器)4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室外膨張弁14と、冷房時には冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房時には冷媒を吸熱させる蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせるための外部熱交換部7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路29内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させて車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。室外膨張弁14や室内膨張弁8は、冷媒を減圧膨張させると共に、全開や全閉も可能とされている。
【0199】
外部熱交換部7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、外部熱交換部7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速が0km/h)にも外部熱交換部7に外気が通風されるよう構成されている。
【0200】
また、外部熱交換部7の冷媒出口側に接続された冷媒配管13Aは、逆止弁18を介して冷媒配管13Bに接続されている。尚、逆止弁18は冷媒配管13B側が順方向とされ、この冷媒配管13Bは室内膨張弁8に接続されている。
【0201】
外部熱交換部7から出た冷媒配管13Aは分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁21を介して吸熱器9の出口側に位置する冷媒配管13Cに連通接続されている。そして、この冷媒配管13Dの接続点より下流側の冷媒配管13Cに逆止弁20が接続され、この逆止弁20より下流側の冷媒配管13Cがアキュムレータ12に接続され、アキュムレータ12は圧縮機1の冷媒吸込側に接続されている。尚、逆止弁20はアキュムレータ12側が順方向とされている。
【0202】
放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁14の手前(冷媒上流側)で冷媒配管13Jと冷媒配管13Fに分岐しており、分岐した一方の冷媒配管13Jが室外膨張弁14を介して外部熱交換部7の冷媒入口側に接続されている。また、分岐した他方の冷媒配管13Fは除湿時に開放される電磁弁22を介して逆止弁18の冷媒下流側であって、室内膨張弁8の冷媒上流側に位置する冷媒配管13Bに連通接続されている。
【0203】
これにより、冷媒配管13Fは室外膨張弁14、外部熱交換部7及び逆止弁18の直列回路に対して並列に接続されたかたちとなり、室外膨張弁14、外部熱交換部7及び逆止弁18をバイパスする回路となる。
【0204】
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路29には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(
図14では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路29内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環)と、車室外の空気である外気(外気導入)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路29に送給するための室内送風機27が設けられている。
【0205】
また、放熱器4の空気上流側における空気流通路29内には、吸熱器9を通過した後の空気流通路29内の空気(内気や外気)を放熱器4に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路29には、FOOT(フット)、VENT(ベント)、DEF(デフ)の各吹出口(
図13では代表して吹出口29Oで示す)が形成されており、この吹出口29Oには上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
【0206】
更に、車両用空調装置100は、バッテリ55や走行用モータ69に熱媒体を循環させてこれらバッテリ55や走行用モータ69の温度を調整するための被温調対象温度調整装置(熱媒体回路)6を備えている。実施例においてはバッテリ55や走行用モータ69が車両に搭載された被温調対象となる。尚、本発明における被温調対象としての走行用モータ69は電動モータそのものに限らず、これを駆動するためのインバータ回路等の電気機器も含む概念とする。
【0207】
実施例の被温調対象温度調整装置(熱媒体回路)6は、バッテリ55や走行用モータ69に熱媒体を循環させるための循環装置としての循環ポンプ63と、熱交換器3(冷媒-熱媒体熱交換器)と、ECH65を備え、それらとバッテリ55及び走行用モータ69が熱媒体配管68にて接続されている。ECH65とバッテリ55及び走行用モータ69は、第1実施形態における熱供給機器に対応する。
【0208】
この実施例の場合、循環ポンプ63の吐出側に冷媒-熱媒体熱交換器3の熱媒体流路3Bの入口が接続され、この熱媒体流路3Bの出口はECH65に接続し、その先で熱媒体配管68Aと熱媒体配管68Bに分岐している。そして、このうちの熱媒体配管68Aに流路制御装置としての第1電磁弁81、及びバッテリ55の直列回路が接続され、熱媒体配管68Bに流路制御装置としての第2電磁弁82、及び走行用モータ69の直列回路が接続されている。そして、バッテリ55の出口側の熱媒体配管68Aと走行用モータ69の出口側の熱媒体配管68Bは合流した後、循環ポンプ63の吸込側に接続されている。尚、上記各電磁弁81、82は流量を調整可能な電動弁にて構成してもよい。
【0209】
そして、各電磁弁81、82が開いている状態で循環ポンプ63が運転されると、循環ポンプ63から吐出された熱媒体は冷媒-熱媒体熱交換器3の熱媒体流路3Bに流入する。この冷媒-熱媒体熱交換器3の熱媒体流路3Bを出た熱媒体は分流され、分流された一方の熱媒体は第1電磁弁81を経てバッテリ55に至り、熱媒体はそこでバッテリ55と熱交換する。分流された他方の熱媒体は第2電磁弁82を経て走行用モータ69に至り、熱媒体はそこで走行用モータ69と熱交換する。これらバッテリ55及び走行用モータ69と熱交換した熱媒体は合流した後、循環ポンプ63に吸い込まれることで熱媒体配管68内を循環される。また、第1電磁弁81が閉じると熱媒体はバッテリ55には流れず、第2電磁弁82が閉じると熱媒体は走行用モータ69には流れなくなる。
【0210】
一方、冷媒回路Rの冷媒配管13Fの出口であって、室内膨張弁8の冷媒上流側に位置する冷媒配管13Bには分岐回路としての分岐配管72の一端が接続されている。この分岐配管72には電動弁から構成された補助膨張弁73が設けられている。この補助膨張弁73は冷媒-熱媒体熱交換器3の冷媒流路3Aに流入する冷媒を減圧膨張させると共に全閉も可能とされている。
【0211】
分岐配管72の他端は冷媒-熱媒体熱交換器3の冷媒流路3Aに接続されており、この冷媒流路3Aの出口には冷媒配管74の一端が接続され、冷媒配管74の他端は逆止弁20の冷媒下流側であってアキュムレータ12の手前(冷媒上流側)の冷媒配管13Cに接続されている。そして、これら補助膨張弁73等も冷媒回路Rの一部を構成すると同時に、被温調対象温度調整装置6の一部をも構成することになる。
【0212】
補助膨張弁73が開いている場合、冷媒配管13Fや外部熱交換部7から出た冷媒(一部又は全ての冷媒)は分岐配管72に流入し、補助膨張弁73で減圧された後、冷媒-熱媒体熱交換器3の冷媒流路3Aに流入して、そこで蒸発する。冷媒は冷媒流路3Aを流れる過程で熱媒体流路3Bを流れる熱媒体から吸熱した後、アキュムレータ12を経て圧縮機1に吸い込まれることになる。
【0213】
外部熱交換部7に着霜があり外部吸熱ができない条件では、外部熱交換部7をバイパスした冷媒をECH65で加熱した熱媒体と熱交換することで、ECH65を冷媒回路Rの吸熱原とする。この際、熱媒体回路6のバッテリ55や走行用モータ69などの熱供給機器の廃熱も利用することで、ECH65の発熱量を抑制し、消費エネルギー増加を抑制できる。
【0214】
また、このような被温調対象温度調整装置6では、バッテリ55及び走行用モータ69と、熱媒体とを熱交換させるためにバッテリ55及び走行用モータ69の上流において、熱媒体配管68Aと熱媒体配管68Bを流れれる熱媒体を加熱するヒータを設ける。本実施形態では、熱媒体配管68A、68Bの分岐部の上流にECH65を配置しているため、熱媒体配管68A、68Bのそれぞれに加熱ヒータを配置する必要がなく、ヒータの数を低減できる。
【0215】
<空調運転/外気吸熱暖房運転>
まず、
図13を参照して外気吸熱暖房運転について説明する。
図13は暖房運転における冷媒回路Rの冷媒の流れ(矢印)を示している。外気吸熱暖房運転では、電磁弁21を開放し、室内膨張弁8を全閉とする。また、電磁弁22を閉じる。
【0216】
そして、圧縮機1、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が放熱器4に通風される割合を調整する状態とする。これにより、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路29内の空気が通風されるので、空気流通路29内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0217】
放熱器4内で液化した冷媒は放熱器4を出た後、冷媒配管13E、13Jを経て室外膨張弁14に至る(
図13に破線矢印で示す)。室外膨張弁14に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる(吸熱)。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び冷媒配管13D、電磁弁21を経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機1に吸い込まれ(
図13に実線矢印で示す)、この循環を繰り返す。放熱器4にて加熱された空気は吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
【0218】
<空調運転/機器熱回収暖房運転>
次に、
図14を参照して機器熱回収暖房運転について説明する。機器熱回収暖房運転では、電磁弁22を開き、室外膨張弁14を閉鎖する。また補助膨張弁73を開いてその弁開度を制御する状態とする。そして、被温調対象温度調整装置(熱媒体回路)6の循環ポンプ63を運転する。これにより、放熱器4から出た冷媒が冷媒配管13Fを経て室内膨張弁8の冷媒上流側に至る(
図14に破線矢印で示す)。冷媒は次に補助膨張弁73で減圧された後、分岐配管72を経て熱交換器(冷媒-熱媒体熱交換器)3の冷媒流路3Aに流入して蒸発する。このときに吸熱作用を発揮する。この冷媒流路3Aで蒸発した冷媒は、冷媒配管74及びアキュムレータ12を順次経て圧縮機1に吸い込まれる循環を繰り返す(
図14に実線矢印で示す)。
【0219】
一方、循環ポンプ63から吐出された熱媒体は熱媒体配管68内を熱交換器(冷媒-熱媒体熱交換器)3の熱媒体流路3Bに至り、そこで冷媒流路3A内で蒸発する冷媒により吸熱され、熱媒体は冷却される。この熱交換機3の熱媒体流路3Bを出た熱媒体は、第1及び第2電磁弁81、82が開いている状態で分流され、分流された一方の熱媒体は第1電磁弁81を経てバッテリ55に至り、当該バッテリ55と熱交換する。分流された他方の熱媒体は第2電磁弁82を経て走行用モータ69に至り、当該走行用モータ69と熱交換する。そして、これらバッテリ55及び走行用モータ69と熱交換した熱媒体は合流した後、循環ポンプ63に吸い込まれる循環を繰り返す(
図14に矢印で示す)。
【0220】
<空調運転/除霜運転(除霜暖房運転)>
次に、
図15を参照して外部熱交換部7を除霜する除霜運転について説明する。除霜運転では、圧縮機1を運転し、室外送風機15は停止する。また、室内膨張弁8を全閉とし、補助膨張弁73は開いて冷媒を減圧する状態とする。尚、室外膨張弁14は全開とする。更に、電磁弁21を閉じる。そして、循環ポンプ63を運転し、冷媒-熱媒体熱交換器3において冷媒と熱媒体を熱交換させる状態とする。
【0221】
これにより、圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4を経て冷媒配管13Eから室外膨張弁14に至る。このとき室外膨張弁14は全開とされているので、冷媒は冷媒配管13Jを通過し、そのまま外部熱交換部7に流入する。外部熱交換部7に流入した高温のガス冷媒によって外部熱交換部7は除霜されていく。冷媒は放熱して凝縮液化した後、外部熱交換部7から出る。
【0222】
外部熱交換部7を出た冷媒は冷媒配管13Aを経て冷媒配管13Bに入るが、このとき室内膨張弁8は全閉とされているので、外部熱交換部7を出た全ての冷媒は補助膨張弁73で減圧された後、冷媒-熱媒体熱交換器3の冷媒流路3Aに流入して蒸発する。このときに吸熱作用を発揮する。この冷媒流路3Aで蒸発した冷媒は冷媒配管74、冷媒配管13C、及び、アキュムレータ12を順次経て圧縮機1に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0223】
一方、各電磁弁81、82が開いている状態で、循環ポンプ63から吐出された熱媒体は冷媒-熱媒体熱交換器3の熱媒体流路3Bに流入する。この冷媒-熱媒体熱交換器3の熱媒体流路3Bを出た熱媒体はECH65で加熱され、その後分流される。分流された一方の熱媒体は第1電磁弁81を経てバッテリ55に至り、熱媒体はそこでバッテリ55と熱交換する。分流された他方の熱媒体は第2電磁弁82を経て走行用モータ69に至り、熱媒体はそこで走行用モータ69と熱交換する。これらバッテリ55及び走行用モータ69と熱交換した熱媒体は合流した後、循環ポンプ63に吸い込まれることで熱媒体配管68内を循環される。
【0224】
外部熱交換部7に着霜があり外部吸熱ができない条件における除霜運転では、ECH65を除霜と暖房の熱源とすることで、暖房運転と除霜運転を両立する。この際、熱媒体回路6のバッテリ55や走行用モータ69などの熱供給機器の廃熱も利用することで、ECH65の発熱量を抑制し、消費エネルギー増加を抑制できる。
【0225】
<空調運転/併用暖房運転>
次に、
図16を参照して併用暖房運転について説明する。
図15に示した機器熱回収暖房運転の状態で、室外膨張弁14開き、外部熱交換部7のグリルファン(不図示)を開いて、室外送風機15を運転する。そして、被温調対象温度調整装置6の循環ポンプ63を運転する。これにより、放熱器4から出た冷媒の一部が室外膨張弁14の冷媒上流側で分流され、外部熱交換部7をバイパスする冷媒配管13Fを経て室内膨張弁8の冷媒上流側に至る。冷媒は次に分岐配管72に入り、補助膨張弁73で減圧された後、分岐配管72を経て冷媒-熱媒体熱交換器3の冷媒流路3Aに流入して蒸発する。このときに吸熱作用を発揮する。この冷媒流路3Aで蒸発した冷媒は、冷媒配管74、冷媒配管13C及びアキュムレータ12を順次経て圧縮機1に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0226】
放熱器4から出た冷媒の一部は室外膨張弁14に至り、そこで減圧された後、外部熱交換部7に流入する。外部熱交換部7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる(吸熱)。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、外部熱交換部7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び冷媒配管13D、電磁弁21、逆止弁20を経てアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機1に吸い込まれる循環を繰り返す。放熱器4にて加熱された空気は吹出口29Oから吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
【0227】
空調運転パターン10の場合、すなわち、外気吸熱暖房運転の暖房能力を抑制し、それを補うために、補助的に機器熱回収暖房運転(ECH暖房運転)を行う併用暖房運転では、外部熱交換部7とECH65を冷媒回路Rの吸熱原とする。この際、熱媒体回路6のバッテリ55や走行用モータ69などの熱供給機器の廃熱も利用することで、EHC65の発熱量を抑制し、消費エネルギーの増加を抑制できる。
【0228】
外部熱交換部7に着霜があり外部吸熱ができない条件では、外部熱交換部7をバイパスした冷媒をECH65で加熱した熱媒体と熱交換することで、ECH65を冷媒回路Rの吸熱原とする。この際、熱媒体回路6のバッテリ55や走行用モータ69などの熱供給機器の廃熱も利用することで、ECH65の発熱量を抑制し、消費エネルギー増加を抑制できる。
〔第3実施形態〕
【0229】
図17および
図18を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図17および
図18は、本発明の第3実施形態に係る車両用空調装置100における冷媒回路Rを含む主要な構成の一例を示す概略図である。
図17および
図18に示す回路において塗り潰しの機器(構成)は、機能が停止している構成である。また、熱媒体および冷媒の移動は矢印で示す。
【0230】
第3実施形態は、第1実施形態と同様の熱媒体回路を介して空気を加熱するタイプの空調回路Eで、さらに第2熱媒体回路6に蓄熱手段(蓄熱部550)および発熱部551を有する構成である。冷媒回路Rおよび第1熱媒体回路5、HVACユニット10の構成は第1実施形態と同様であるので説明は省略し、第2熱媒体回路6について説明する。
【0231】
第3実施形態の第2熱媒体回路6は、熱供給機器65および冷媒回路Rの冷媒とそれぞれ熱交換可能な熱媒体が循環する回路であり、例えば、循環ポンプ63,第2熱交換器3、外部(室外)熱交換部7となるラジエータ、熱供給機器(ECH)65、配管161(161A~161P),三方弁162(162A~162D)、四方弁163A、163Bなどで構成されている。
【0232】
循環ポンプ63の出口は配管161Aを介して第2熱交換器3の熱媒体流路3Bに連通する。熱媒体流路3Bは配管161B、三方弁162A、配管161Cを介して四方弁163Aの一方の入口に接続する。四方弁163Aは一方の入口に配管161C,他方の入口に配管161Nが接続し、一方の出口に配管161D、他方の出口に配管161Iが接続する。配管161Dは三方弁162B、配管161Fを介して発熱部551に接続し、発熱部551は配管161Eを介して蓄熱部550に接続する。蓄熱部550は配管161Gを介して三方弁162Cの入口に接続する。三方弁162Cは、一方の出口が配管161Hに接続し他方の出口が配管161Oを介して四方弁163Bに接続する。配管161Hは循環ポンプ160の入口に接続し、循環ポンプ160の出口は配管161Pを介して三方弁162Bに接続する。
【0233】
三方弁162Dは入口に配管161Iが接続し一方の出口に配管161J,他方の出口に配管161Lがそれぞれ接続する。配管161Jは四方弁163Bの第1の入口に接続し、四方弁163Bの第2の入口には配管161O、第3の入口には配管161Lが接続する。四方弁163Bの出口は配管161Kを介してECH65の一端に連通する。ECH65の他端は、配管161Aを介して循環ポンプ160の入口に接続する。三方弁162Dの一方の出口は配管161Lを介して、外部熱交換部7の一端に接続し、外部熱交換部7の他端は配管161Lを介して四方弁163Bに接続する。
【0234】
図17は外気吸熱暖房運転に加えて蓄熱を行う回路図であり、冷媒および熱媒体の循環は矢印で示す。外気吸熱暖房運転に加えて蓄熱を行う場合、四方弁163Aは配管161C、161Iが連通するように開放し、配管161Nと配管161Dの間は閉鎖される。三方弁162Bは、配管161Pと161Eが連通し、三方弁162Cは配管161G、161Hが連通するように開放される。三方弁162Dは配管161Iと161Lが連通するように開放され、四方弁163Bは配管161L,161Kが連通するように開放される。
【0235】
これにより、冷媒回路R、第1熱媒体回路5および第2熱媒体回路6の冷媒および熱媒体の循環は第1実施形態と同様の動作で外気吸熱暖房運転が行われる。第3実施形態ではこれに加え、発熱部551、配管161F、蓄熱部550,配管161G,配管161H、循環ポンプ160は、閉じた流路となり、この閉じた流路を循環ポンプ160によって熱媒体が循環する。熱媒体は、発熱部551を通過する際に吸熱し、蓄熱部550で放熱する。これを繰り返し、蓄熱部550は蓄熱される。
【0236】
このように外気吸熱が可能な条件では、外部熱交換部7で外気を吸熱し、冷媒回路Rの吸熱源とする。また蓄熱部550は熱媒体の循環により蓄熱するが、図示を省略するバッテリやモータ等の熱供給機器が例えば第2熱媒体回路6に接続する場合には、それらの廃熱を蓄熱部550に蓄熱することで、外気吸熱が不可となった場合における吸熱源発熱供給源とすることができる。また、蓄熱利用が可能な場合は、蓄熱部550の吸熱源とすることで着霜スピードを抑制できる。
【0237】
図18は、除霜運転と暖房運転を行う回路構成である。ここで暖房運転とは、蓄熱部550,蓄熱部551およびECH65を吸熱源とする暖房運転であり、上述の機器熱回収暖房運転に相当する。つまり、
図18は、第1実施形態の除霜(暖房)運転と同様である。
【0238】
この場合、四方弁163Aは配管161C,161D、161Iが連通するように開放され、三方弁162Bは配管161D,161Eが連通するように開放される。三方弁162Cは配管161G,161Oが連通するように開放され、三方弁162Dは、配管161I,161Lが連通し、四方弁163Bは配管161L,161K、161Oが連通するように開放される。これにより、第2熱媒体回路6における熱媒体は、蓄熱部551,蓄熱部550,ECH65、循環ポンプ160,第2熱交換器3の流路と、当該流路から四方弁163Aにより分流されて外部熱交換部7を通過しECH65に至る流路が形成される。
【0239】
外部熱交換部7の着霜により外気吸熱ができない条件では、外部熱交換部7を配管161E,161F,161O,161Kによりバイパスした熱媒体をECH65で加熱することで、ECH65を冷媒回路Rの吸熱源とすることができる。このとき、蓄熱部550が吸熱源として利用できる所定の蓄熱量を超えている場合は、蓄熱部550も吸熱源として利用することで、ECH65の消費エネルギーの増加を抑制できる。このように、第3実施形態によれば、除霜運転中において、蓄熱部550による暖房運転を実行可能である。
【0240】
図19は、第3実施形態の回路を用いて空調制御を行う場合の一例を示す図であり、空調運転パターン7の変形例である。この例では蓄熱部550の蓄熱量(太一点鎖線で示す)があるレベル(蓄熱レベルβ)に到達した場合には、外気吸熱不可レベルαに到達する以前であっても一部のみ除霜運転を実行するパターンである。現在時刻T0において目的地到達以前に外気吸熱不可レベルαに到達すること(要除霜)が検知されているが、時刻T0において即時に除霜運転は行わず、蓄熱部550の蓄熱量が蓄熱レベルβに到達した時刻T1から除霜運転(
図18)を開始する。除霜運転中において蓄熱部550による暖房運転が可能である。この例では除霜運転は完全に除霜する前に停止し、その後外気吸熱暖房運転(
図17)を実行している。
【0241】
この例では、除霜運転を行わないと判断した場合は、蓄熱量が蓄熱レベルβに達するか否かによらず、外気吸熱暖房運転を継続する。
【0242】
〔変形例〕
【0243】
<着霜変化量の算出方法>
制御装置200の着霜量予測部222における着霜変化量の算出(推定)は以下方法によるものであってもよい。
【0244】
<1>現在の着霜量の推定
まず、以下(1)~(3)のいずれかの方法により、現在の着霜量を推定する。
(1)外部熱交換器(ラジエータ)7の風上側と風下側の風量差を用いる方法
着霜が生じている場合、ラジエータ7を通過する空気が減少するため、ラジエータ7を通過する空気が減少した場合に着霜していると判断する。予め実験等により、ラジエータ7の風上側と風下側の風量差の大きさと、着霜量との相関関係を取得しておき、車両の走行時にはラジエータ7の風上側と風下側の風量差の実測値と、予め取得した相関関係により、現状の着霜量を推定する。[0]
【0245】
(2)外気温度とラジエータ7の出口水温の差を用いる方法
外気温度とラジエータ7の出口水温の差が大きい場合、熱交換ができていないため、着霜していると判断する。予め実験等により、外気温度とラジエータ7の出口水温の温度差の大きさと着霜量の相関関係を取得しておき、車両の走行時には外気温度とラジエータ7の出口水温の温度差の実測値と、予め取得した相関関係により、現状の着霜量を推定する。[0]
【0246】
(3)ラジエータ7出入口水温の差を用いる方法
ラジエータ7の出入口水温の差を算出することで、ラジエータ7における熱交換量を算出する。出入口水温の差(水温差)が少ない場合、熱交換ができていないため、着霜していると判断する。予め実験等により、ラジエータ7の出入口水温の温度差の大きさと着霜量と相関関係を取得しておき、車両の走行時にはラジエータ7の出入口水温の温度差の実測値と、予め取得した相関関係により、現状の着霜量を推定する[0]。[0][0]
【0247】
<2>未来の着霜量の推定
次に下記(1)、(2)のいずれかの方法で未来の着霜量を推定する。
(1)各種センサの情報による予測
上記(1)~(3)のいずれかの方法により推定した現在(現状)の着霜量に基づき、現在時刻までの所定間隔(例えば、地点A~B)における着霜変化率(=(地点Bの着霜量-地点Aの着霜量)/地点A~地点B間の走行時間)を算出する。また上記に併せて、その際の運転条件(暖房の目標温度、外気温湿度、車速、交通情報等)も記憶する。そして、目的地情報をもとに目的地までの外気温湿度の変化等の運転条件変化を予測し、記憶した過去の運転条件と運転条件変化をもとに着霜変化量を予測し、未来の或る時点における着霜量を推定する。
【0248】
(2)実験結果等の情報を参考にした予測
上記(1)~(3)のいずれかの方法により実験等により暖房の目標温度および外気温湿度と、着霜変化量との相関関係を事前に記憶しておく。そして目的地情報をもとに目的地までの外気温湿度の変化を予測し、暖房の目標温度とあわせて未来の着霜変化量を予測し、未来の或る時点における着霜量を推定する。
【0249】
なおこれらは一例であり、他の既知の方法によって着霜変化率、あるいは未来の着霜量を推定してもよい。
【0250】
以上説明した本実施形態によれば、除霜運転に使用する電力と除霜によって得られる省エネルギー効果を比較して除霜運転の要否を判断するため、無駄な除霜運転を回避でき、除霜運転に係る消費エネルギーを最適化でき、航続距離の低下を抑制できる。
【0251】
また、外部情報および/または目的地情報を用いて着霜量予測、および除霜運転に好適な条件を把握して、除霜運転の要否を判断するため、除霜運転の判断に係る精度が向上する。これにより、除霜運転に係る消費エネルギーを最適化でき、航続距離の低下を抑制できる。
【0252】
また、除霜運転を最適なタイミングで行うことができ、省エネルギー効果を高めることができる。
【0253】
ここで本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0254】
1 圧縮機(電動圧縮機)
2A 冷媒流路
2B 熱媒体流路
3 熱交換器
3A 冷媒流路
3B 熱媒体流路
4 室内熱交換部(ヒータコア)
6 熱媒体回路
7 外部熱交換部
8 室内膨張弁
10 HVACユニット
100 車両用空調装置
200 制御装置(ECU)
220 シミュレーション部
221 情報取得部
222 着霜量予測部
223 電力量算出部
224 除霜時期決定部
225 吸熱量抑制制御部