(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076516
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】自動駐車装置及び自動駐車方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20240530BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240530BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W40/02
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188083
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅津 誠
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241BB03
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC33Z
3D241DC34Z
3D241DC41Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL09
5H181LL17
(57)【要約】
【目的】 利便性を向上させることができる自動駐車装置を提供する。
【解決手段】 プロセッサは、自車両が手動操作により駐車スポットPSaに入庫される手動入庫時に前記センサから取得した複数の情報からなる手動駐車情報に基づいて、駐車スポットPSaの外側から駐車スポットPSaへ至る経路Raに沿って自車両を自動操作により移動させるための第一情報を取得して記憶装置に記憶させる第一登録処理と、前記駐車スポットPSaに隣接する駐車スポットPSが存在する場合に、前記手動駐車情報に基づいて、前記第二駐車スポットの外側から駐車スポットPSbへ至る経路Rbに沿って自車両を自動操作により移動させるための第二情報を取得して前記記憶装置に記憶させる第二登録処理と、を実行可能である。、
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺に位置する物標に関する情報及び自車両の操作装置の操作に関する情報を取得するセンサと、
所定の情報に基づいて自車両を制御して、所定の駐車スポットへ自車両を自動的に入庫させるプロセッサと、
を備えた自動駐車装置であって、
前記プロセッサは、
自車両が手動操作により第一駐車スポットに入庫される手動入庫時に前記センサから取得した複数の情報からなる手動駐車情報に基づいて、前記第一駐車スポットの外側から前記第一駐車スポットへ至る第一経路に沿って自車両を自動操作により移動させるための第一情報を取得して記憶装置に記憶させる第一登録処理と、
前記第一駐車スポットに隣接する第二駐車スポットが存在する場合に、前記手動駐車情報に基づいて、前記第二駐車スポットの外側から前記第二駐車スポットへ至る第二経路に沿って自車両を自動操作により移動させるための第二情報を取得して前記記憶装置に記憶させる第二登録処理と、
前記第一駐車スポットに入庫可能である場合に前記第一情報に基づいて自車両を自動操作により前記第一駐車スポットへ入庫させる第一自動入庫処理と、
前記第一駐車スポットに入庫不能であり前記第二駐車スポットに入庫可能である場合に前記第二情報に基づいて自車両を自動操作により前記第二駐車スポットへ入庫させる第二自動入庫処理と、
を実行可能に構成された、自動駐車装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動駐車装置であって、
前記プロセッサは、
前記第一情報及び前記第二情報が前記記憶装置に記憶されている状態で自車両が前記第一駐車スポットの外側の所定位置に到達した場合に、当該所定位置から前記第一情報に基づいて自車両を制御して自車両の移動を開始させるとともに、自車両の移動中に前記センサから取得した情報に基づいて、自車両が前記第一駐車スポットに入庫可能であるか否かを判断し、
自車両が前記第一駐車スポットに入庫可能であると判断した場合に前記第一自動入庫処理を実行し、
自車両が前記第一駐車スポットに入庫不能であると判断し且つ前記第二駐車スポットに入庫可能である場合に前記第二自動入庫処理を実行する、
自動駐車装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動駐車装置において、
前記プロセッサは、
前記手動駐車情報を構成する複数の情報のうち、前記所定位置にて前記センサから取得した自車両の周囲に存在する物標に関する情報を初期位置情報(ID)として記憶装置に記憶させておき、その後、前記センサから情報を取得するごとに、その情報と前記初期位置情報との類似度を演算し、当該類似度に基づいて、自車両が所定位置に到達したか否かを判定する、自動駐車装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1つに記載の自動駐車装置において、
前記第一情報及び第二情報は、自車両の駆動力を制御する情報、自車両の制動力を制御する情報及び自車両の進行方向を制御する情報を含む、自動駐車装置。
【請求項5】
自車両の周辺に位置する物標に関する情報及び自車両の操作装置の操作に関する情報を取得する情報取得ステップと、
所定の情報に基づいて自車両を制御して、所定の駐車スポットへ自車両を自動的に入庫させる自動入庫ステップと、
を含む自動駐車方法であって、
自車両が手動操作により第一駐車スポットに入庫される手動入庫時に前記センサから取得した複数の情報からなる手動駐車情報に基づいて、前記第一駐車スポットの外側から前記第一駐車スポットへ至る第一経路に沿って自車両を自動操作により移動させるための第一情報を取得して記憶装置に記憶させる第一登録ステップと、
前記第一駐車スポットに隣接する第二駐車スポットが存在する場合に、前記手動駐車情報に基づいて、前記第二駐車スポットの外側から前記第二駐車スポットへ至る第二経路に沿って自車両を自動操作により移動させるための第二情報を取得して前記記憶装置に記憶させる第二登録ステップと、
を含み、
前記自動入庫ステップは、
前記第一駐車スポットに入庫可能である場合に前記第一情報に基づいて自車両を自動操作により前記第一駐車スポットへ入庫させる第一自動入庫ステップと、
前記第一駐車スポットに入庫不能であり前記第二駐車スポットに入庫可能である場合に前記第二情報に基づいて自車両を自動操作により前記第二駐車スポットへ入庫させる第二自動入庫ステップと、
を含む、自動駐車方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両を自動的に駐車スポットへ入庫させる自動駐車装置及び自動駐車方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両を駐車スポットへ入庫させる運転操作を支援可能な駐車支援装置が提案されている(下記特許文献1を参照。)。この駐車支援装置のプロセッサは、ナビゲーションシステムから自車両の現在位置を逐次取得する。プロセッサは、現在位置に基づいて、自車両が予め登録された駐車スポットの近傍に到達したことを検知すると、当該駐車スポットに対応する所定の駐車支援処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、運転者が主体的に運転操作を実行して自車両を駐車スポットへ入庫させた場合に、その際に自車両が走行した経路を表す情報(運転操作装置の操作パターン)を記憶可能な自動駐車装置が提案されている。この自動駐車装置(以下、「従来装置」と証拠する。)のプロセッサは、当該駐車スポットへの次回以降の入庫時に、記憶しておいた上記の情報に基づいて自車両の駆動装置、制動装置、操舵装置などを制御して、自車両を自動的に駐車スポットへ入庫させる自動入庫処理を実行可能である。ただし、当該駐車スポット内に障害物(例えば、他車両)が存在している場合には、プロセッサは自動入庫処理を実行できない。したがって、この場合、運転者は、空いている他の駐車スポットを探し、主体的に運転操作を実行して当該他の駐車スポットへ自車両を入庫させる必要がある。
【0005】
本発明の目的の一つは、利便性を向上させた自動駐車装置を提供することである。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の自動駐車装置(1)は、
自車両の周辺に位置する物標に関する情報及び自車両の操作装置の操作に関する情報を取得するセンサ(20)と、
所定の情報に基づいて自車両を制御して、所定の駐車スポット(PSa、PSb)へ自車両を自動的に入庫させるプロセッサ(10)と、
を備える。
前記プロセッサは、
自車両が手動操作により第一駐車スポットに入庫される手動入庫時に前記センサから取得した複数の情報からなる手動駐車情報(D1)に基づいて、前記第一駐車スポットの外側から前記第一駐車スポットへ至る第一経路(Ra)に沿って自車両を自動操作により移動させるための第一情報(PDa)を取得して記憶装置(10b)に記憶させる第一登録処理と、
前記第一駐車スポットに隣接する第二駐車スポット(PSb)が存在する場合に、前記手動駐車情報に基づいて、前記第二駐車スポットの外側から前記第二駐車スポットへ至る第二経路(Rb)に沿って自車両を自動操作により移動させるための第二情報(PDb)を取得して前記記憶装置に記憶させる第二登録処理と、
前記第一駐車スポットに入庫可能である場合に前記第一情報に基づいて自車両を自動操作により前記第一駐車スポットへ入庫させる第一自動入庫処理と、
前記第一駐車スポットに入庫不能であり前記第二駐車スポットに入庫可能である場合に前記第二情報に基づいて自車両を自動操作により前記第二駐車スポットへ入庫させる第二自動入庫処理と、
を実行可能に構成される。
【0007】
本発明の自動駐車装置は、運転者が手動で第一駐車スポットへ自車両を入庫させた場合に、その際に取得した手動駐車情報に基づいて、第一情報及び第二情報を取得して記憶しておく。自動駐車装置は、既設の第一情報に従って自車両を制御して、第一駐車スポットへ自車両を自動的に入庫させることができる。また、自動駐車装置は、第一駐車スポットへ自車両を入庫させることができない場合に、既設の第二情報に従って自車両を制御して、第二駐車スポットへ自車両を自動的に入庫させることができる。上記のように、運転者が第二駐車スポットに手動で自車両を駐車させなくとも、第二情報が取得されて記憶される。このように、従来装置に比べて、本発明の自動駐車装置の利便性が高い。
【0008】
本発明の一態様に係る自動駐車装置において、
前記プロセッサは、
前記第一情報及び前記第二情報が前記記憶装置に記憶されている状態で自車両が前記第一駐車スポットの外側の所定位置に到達した場合に、当該所定位置から前記第一情報に基づいて自車両を制御して自車両の移動を開始させるとともに、自車両の移動中に前記センサから取得した情報に基づいて、自車両が前記第一駐車スポットに入庫可能であるか否かを判断し、
自車両が前記第一駐車スポットに入庫可能であると判断した場合に前記第一自動入庫処理を実行し、
自車両が前記第一駐車スポットに入庫不能であると判断し且つ前記第二駐車スポットに入庫可能である場合に前記第二自動入庫処理を実行する。
【0009】
これによれば、自車両が前記所定位置に到達した時点で、センサが第一駐車スポット及び第二駐車スポットの空き状況を検知できなくても、自動操作による入庫を開始させることができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る自動駐車装置において、前記プロセッサは、前記手動駐車情報を構成する複数の情報のうち、前記所定位置にて前記センサから取得した自車両の周囲に存在する物標に関する情報を初期位置情報(ID)として記憶装置に記憶させておき、その後、前記センサから情報を取得するごとに、その情報と前記初期位置情報との類似度を演算し、当該類似度に基づいて、自車両が所定位置に到達したか否かを判定する。
【0011】
これによれば、プロセッサは、自車両が所定位置に到達したか否かを、比較的高精度に判定できる。
【0012】
本発明の他の態様に係る自動駐車装置において、前記第一情報及び第二情報は、自車両の駆動力を制御する情報(AD)、自車両の制動力を制御する情報(BD)及び自車両の進行方向を制御する情報(SP、θ)を含む。
【0013】
これによれば、プロセッサは、予め演算されて記憶されている情報を直接的に用いて自車両(駆動装置等)を制御できる。
【0014】
また、本発明に係る自動駐車方法は、上記の自動駐車装置を構成する各装置が実行するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動駐車装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、取得した運転操作情報及び物標情報を一定期間だけ保持する機能の概略を示すタイムチャートである。
【
図3】
図3は、第一の駐車スポットに自車両を駐車する過程を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第二の駐車スポットに自車両を駐車する過程を示す平面図である。
【
図5】
図5は、駐車スポットの登録機能を実現するためのプログラムのフローチャートである。
【
図6】
図6は、自動入庫機能を実現するためのプログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(概略) 本発明の一実施形態に係る自動駐車装置1は、自動運転機能を備えた車両V(以下、「自車両」と称呼する。)に搭載される。自動駐車装置1は、自車両を駐車スポットへ自動的に入庫させる機能(自動入庫機能)を有する。
【0017】
(具体的構成)
図1に示したように、自動駐車装置1は、自動駐車ECU10、車載センサ20、駆動装置30、制動装置40及びステアリング装置50を備えている。
【0018】
自動駐車ECU10は、CPU10a、ROM10b(フラッシュメモリ)、RAM10c、タイマー10dなどを含む。
【0019】
車載センサ20は、自車両の周囲に存在する物標に関する情報(以下、「物標情報」と称呼する。)を取得する周囲センサを含む。車載センサ20は、例えば、周囲センサとしてのミリ波レーダー21、ソナー22及びカメラ23を含む。
【0020】
ミリ波レーダー21は、送受信部と信号処理部とを備えている。送受信部が、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する。)を自車両の前方へ放射し、放射範囲内に位置する立体物によって反射されたミリ波(反射波)を受信する。信号処理部は、送受信部がミリ波を放射してから反射波を受信するまでの時間、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰度などに基づいて、自車両と立体物との距離、自車両に対する立体物の相対位置(方向)等を認識し、当該認識結果を自動駐車ECU10に送信する。
【0021】
ソナー22は、超音波を間欠的に自車両の周辺領域に放射し、立体物によって反射された超音波(反射波)を受信する。ソナー22は、超音波を送信してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、自車両と立体物との距離、自車両に対する立体物の相対位置(方向)等を認識し、当該認識結果を自動駐車ECU10に送信する。
【0022】
カメラ23は、撮像装置及び画像解析装置を含む。撮像装置は、例えば、CCDを内蔵する。撮像装置は、自車両の前部、後部、左側面部及び右側面部に設置されている。撮像装置は、所定のフレームレートで自車両の周辺領域をそれぞれ撮影して、画像データをそれぞれ取得する。各撮像装置は、画像データを画像解析装置に送信する。画像解析装置は、取得した画像データを解析して、その画像から自車両の周囲に存在する物標を認識する。例えば、画像解析装置は、駐車スポットに隣接する領域に駐車されている他車両、駐車スポットの壁、路面に描画された駐車枠線などを認識し、当該認識結果を、自動駐車ECU10に送信する。
【0023】
さらに、車載センサ20は、運転操作装置の操作に関する情報(以下、「運転操作情報」と称呼する。)を取得する操作センサを含む。車載センサ20は、例えば、操作センサとしてのアクセルペダルセンサ24、ブレーキペダルセンサ25、シフトレバーポジションセンサ26、及びステアリングセンサ27を含む。
【0024】
アクセルペダルセンサ24は、自車両のアクセルペダルAPの踏み込み深さADを検出する。アクセルペダルセンサ24は、踏み込み深さADを自動駐車ECU10に送信する。ブレーキペダルセンサ25は、自車両のブレーキペダルBPの踏み込み深さBDを検出する。ブレーキペダルセンサ25は、踏み込み深さBDを自動駐車ECU10に送信する。シフトレバーポジションセンサ26は、自車両のシフトレバーSLのポジションであるシフトレバーポジションSP(「前進」、「後退」、「駐車」など)を検出する。シフトレバーポジションセンサ26は、シフトレバーポジションSPを自動駐車ECU10に送信する。
【0025】
ステアリングセンサ27は、自車両のステアリングホイールSWの操舵角(舵角又は転舵角とも称呼される)θを検出する。ステアリングセンサ27は、操舵角θを自動駐車ECU10に送信する。
【0026】
さらに、車載センサ20は、ナビゲーションシステム28を含む。ナビゲーションシステム28は、複数のGPS信号に基づいて、自車両の現在地(緯度及び経度)を検知する。ナビゲーションシステム28は、検知した現在地を自動駐車ECU10に送信する。
【0027】
さらに、車載センサ20は、スイッチ29を含む。スイッチ29は、運転者が後述する自動入庫処理を開始することを要求するための操作装置を含む。
【0028】
駆動装置30は、駆動力を駆動輪に付与する。駆動装置30は、エンジンECU、内燃機関、変速機、駆動力を車輪に伝達する駆動力伝達機構などを含む。エンジンECUは、他のECU(自動駐車ECU10)から目標の駆動力を表す情報(制御信号)を取得し、当該情報に基づいて、内燃機関のスロットル弁を駆動して、駆動輪に付与される駆動力が制御する。内燃機関が発生する駆動力は、変速機及び駆動力伝達機構を介して駆動輪に伝達される。また、エンジンECUは、他のECUから変速機のシフトポジションに関する情報(制御信号)を取得し、当該情報に基づいて、シフトポジションを制御する。
【0029】
なお、自動駐車装置1が適用される車両が、ハイブリッド車両(HEV)である場合、エンジンECUは、車両駆動源としての「内燃機関及び電動機」の何れか一方又は両方によって発生する車両の駆動力を制御することができる。また、自動駐車装置1が適用される車両が電気車両(BEV)である場合、エンジンECUに代えて、車両駆動源としての「電動機」によって発生する車両の駆動力を制御する電動機ECUを用いればよい。
【0030】
制動装置40は、車輪(ブレーキディスク)に対して制動力を付与する。制動装置40は、ブレーキECU、ブレーキキャリパなどを含む。ブレーキECUは、他のECUから目標の制動力を表す情報(制御信号)を取得し、当該情報に基づいて、ブレーキキャリパを制御して、ブレーキディスクに対して付与される制動力を制御する。
【0031】
ステアリング装置50は、操舵輪(左前輪及び右前輪)の舵角を制御する。ステアリング装置50は、ステアリングECU、ステアリング機構などを含む。ステアリング装置50は、さらに、ステアリング機構を駆動して舵角を変更するアクチュエータを含む。ステアリングECUは、他のECUから目標の舵角を表す情報(制御信号)を取得し、当該情報に基づいてアクチュエータを駆動して、操舵輪の舵角を制御される。
【0032】
(作動) 自動駐車ECU10は、運転者が運転操作を実行している状況において、操作センサ(アクセルペダルセンサ24、ブレーキペダルセンサ25、シフトレバーポジションセンサ26及びステアリングセンサ27)から運転操作情報(踏み込み深さAD、踏み込み深さBD、シフトレバーポジションSP及び操舵角θ)を逐次取得する。そして、自動駐車ECU10は、取得した運転操作情報をRAM10c(リングバッファ)に記憶させる。つまり、自動駐車装置1は、
図2に示したように、現時点t1から所定時間Δtだけ遡った時点t0までの期間T内に取得した複数の運転操作情報を時系列データD1として記憶しており、時点t0より前の運転操作情報を破棄する。この時系列データD1は、期間T内の運転操作の態様を表している。自動駐車ECU10は、この時系列データD1に基づいて自車両の駆動装置等を制御することにより、期間Tにおいて自車両が走行した経路と略同一の経路に沿って自車両を移動させることができる。ここで、期間Tの長さ(つまり、時間Δt)は、一般的な駐車エリアにおいて入庫開始から入庫完了までに要する時間に基づいて予め決定されている。ただし、運転者が期間Tの長さを手動で設定可能であってもよい。
【0033】
加えて、自動駐車ECU10は、運転者が運転操作を実行している状況において、周囲センサ(ミリ波レーダー21、ソナー22及びカメラ23)から物標情報を逐次取得する。そして、自動駐車ECU10は、取得した物標情報をRAM10c(リングバッファ)に記憶させる。つまり、自動駐車装置1は、期間T内に取得した物標情報を時系列データD2として記憶しており、時点t0より前の物標情報を破棄する。
【0034】
<駐車スポットの登録> 運転者は、以下説明するように、自動入庫機能を利用するための事前準備として、駐車スポットPSa,PSb(後述する(位置Pa及び制御パターンPDa,PDb)を登録する。
【0035】
<第一登録処理>
図3は、運転者が主体的に運転操作を実行して、手動操作により駐車スポットPSaの近傍の位置P0から駐車スポットPSaへ自車両を入庫させた場面(手動運転による入庫場面)を示す平面図である。この例において、自車両の入庫が完了した時点t1から時間Δtだけ遡った時点t0では、自車両が位置P0に位置している。この時点t0では、自車両が駐車スポットPSa,PSbから比較的遠く離れているために、周囲センサは、同駐車スポット内の物標を認識できない。運転者は、時点t0から、自車両を駐車スポットPSaに後ろ向き駐車させるために、自車両の向きを調整しつつ自車両を進行(前進及び後進)させ、時点t1にて、自車両の入庫が完了する。以下の説明において、自車両が手動操作により入庫されるとき、すなわち手動入庫時に、自車両が走行した経路を「経路Rm」と称呼する。なお、当該入庫が完了した時点t1では、その直前の期間T(すなわち、入庫を開始してから完了するまでの期間)内に取得された手動駐車情報(複数の運転操作情報からなる時系列データD1及び複数の物標情報からなる時系列データD2)がRAM10cに記憶された状態にある。
【0036】
自動駐車ECU10は、イグニッションスイッチがオン状態にある場合、シフトレバーポジションSPを監視している。自動駐車ECU10は、シフトレバーポジションSPが駐車ポジションに移行したことを検知すると、自車両の入庫が完了したと判定する。自動駐車ECU10は、自車両の入庫が完了したと判定すると、駐車スポットPSaを登録するか否かを選択するための画像を図示しない表示器に表示させる。運転者が、スイッチ29を操作して、駐車スポットPSaを登録することを選択すると、自動駐車ECU10は、ナビゲーションシステム28から、自車両の重心の緯度及び経度を取得する。そして、自動駐車ECU10は、当該緯度及び経度を、駐車スポットPSaの位置Pa(位置情報)としてROM10bに記憶させる。加えて、自動駐車ECU10は、RAM10cに記憶されている時系列データD1を、制御パターンPDa(第一情報)としてROM10bに記憶させる。詳しくは後述するように、自動駐車ECU10は、制御パターンPDaに基づいて駆動装置等を制御することにより、経路Rmと略同一の経路Ra(第一経路)に沿って自車両を自動的に移動させる。
【0037】
加えて、自動駐車ECU10は、時系列データD2を構成する物標情報のうちの時点t0に対応する物標情報を初期位置情報IDとしてROM10bに記憶させる。
【0038】
<第二登録処理> また、自動駐車ECU10は、駐車スポットPSaへの自車両の入庫が完了したと判定すると、駐車スポットPSaに隣接する駐車スポットPSbが存在するか否かを判定する。自動駐車ECU10は、駐車スポットPSbが存在すると判定した場合、駐車スポットPSbを駐車スポットPSaの代替の駐車スポットとして利用するか否かを選択するための画像を図示しない表示器に表示させる。運転者がスイッチ29を操作して、駐車スポットPSbを利用することを選択すると、自動駐車ECU10は、時系列データD1,D2に基づいて、経路Rm上の地点のうち、位置P0に最も近い位置Pxであって、駐車スポットPSa及び駐車スポットPSb内の物標を検知できる位置Pxを特定する(
図3及び
図4を参照。)。そして、自動駐車ECU10は、時系列データD1,D2に基づいて、位置Pxから、障害物を避けつつ駐車スポットPSbへ自車両を到達させることができる経路Rb(第二経路(自車両と各物標との相対位置情報の時系列データ))を演算する。そして、自動駐車ECU10は、位置Pxから経路Rbに沿って自車両が移動するように駆動装置等を制御するための制御パターンPDbを演算して、ROM10bに記憶させる。
【0039】
<第一自動入庫処理> 第一登録処理が完了している状態(位置Pa及び制御パターンPDaが記憶されている状態)では、自動駐車ECU10は、ナビゲーションシステム28から現在の位置を逐次取得する。そして、自動駐車ECU10は、位置Paを中心とする半径Rメートルの円形の領域A内に自車両が進入したか否かを逐次判定する。自動駐車ECU10は、自車両が領域A内に進入したと判定した場合、以下説明するように、自車両が位置P0に到達したか否かを判定する。具体的には、自動駐車ECU10は、周囲センサから物標情報を逐次取得する。自動駐車ECU10は、周囲センサから物標情報を取得するごとに、当該物標情報と初期位置情報IDとのパターンマッチング処理を実行する。その結果(マッチング度)が閾値(例えば90%)を超える場合に、自動駐車ECU10は、自車両が位置P0に到達したと判定する。
【0040】
自動駐車ECU10は、自車両が位置P0に到達したと判定すると、自動入庫処理(自動入庫制御)を開始するか否かを選択するための画像を表示器に表示させる。運転者がスイッチ29を操作して、自動入庫処理を開始することを選択すると、自動駐車ECU10は、制御パターンPDaに基づいて駆動装置等を制御する。これにより、自車両が経路Rmと略同一の経路Raに沿って自動的に進行する。自動駐車ECU10は、自車両を位置Pxへ到達させる(制御パターンPDaを位置Pxに対応するステップまで進める)と、その時点で、周囲センサから物標情報を取得し、当該物標情報に基づいて、駐車スポットPSaに自車両を入庫可能か否か(空車か否か)を判定する。駐車スポットPSa内に自車両の入庫に支障を来す物標(障害物)が存在しなければ、自動駐車ECU10は、自車両を駐車スポットPSaに入庫可能であると判定する。一方、駐車スポットPSa内に障害物が存在する場合(例えば、駐車スポットPSaに他車両が駐車されている場合)、自動駐車ECU10は、駐車スポットPSaに自車両を入庫不能であると判定する。
【0041】
自動駐車ECU10は、駐車スポットPSaに自車両を入庫可能であると判定すると、引き続き、制御パターンPDaに従って駆動装置等を制御して、自車両を進行させて、駐車スポットPSaに入庫ささせる。
【0042】
<第二自動入庫処理> 一方、自動駐車ECU10は、位置Pxにおいて、駐車スポットPSaに自車両を入庫不能であると判定すると、第二登録処理が完了しているか否か(制御パターンPDbが記憶されているか否か)を判定する。第二登録処理が完了している場合、自動駐車ECU10は、周囲センサから取得した物標情報に基づいて、「駐車スポットPSbに自車両を入庫可能か否か」を判定する。
【0043】
自動駐車ECU10は、駐車スポットPSbに自車両を入庫可能であると判定すると、制御パターンPDbに従って駆動装置等を制御して、自車両を進行させ、駐車スポットPSbに入庫させる。
【0044】
一方、自動駐車ECU10は、駐車スポットPSbに自車両を入庫不能であると判定すると、表示器に自動入庫処理を継続不能であることを表示して、自動入庫処理を終了(中断)する。
【0045】
なお、自動駐車ECU10は、自動入庫処理を実行している間、周囲センサから物標情報を逐次取得する。そして、自動駐車ECU10は、当該物標情報に基づいて、自車両の通過予定である領域に位置する障害物を検知した場合に、当該障害物を回避するように制御パターンPDa(PDb)を補正する。自動駐車ECU10は、新たに検知した障害物を回避できない場合には、自動入庫処理を継続不能であることを運転者に報知して、自動入庫処理を終了(中断)する。
【0046】
つぎに、
図5を参照して、上記の駐車スポットの登録機能を実現するために自動駐車ECU10のCPU10a(以下、「CPU」と称呼する。)が実行するプログラムPR1について説明する。
【0047】
CPUは、イグニッションスイッチがオン状態である場合、所定の周期でプログラムPR1の実行を開始する。CPUは、ステップ100からプログラムPR1の実行を開始し、ステップ101に進む。
【0048】
CPUは、ステップ101に進むと、運転者が手動で自車両を駐車させたか否か(手動駐車が完了したか否か)を判定する。CPUは、シフトレバーポジションSPが駐車ポジションへ移行したことを検知すると、手動駐車が完了したと判定する。CPUは、手動駐車が完了したと判定した場合(101:Yes)、ステップ102に進む。一方、CPUは、手動駐車が完了したと判定しなかった場合(101:No)、ステップ101に戻る。
【0049】
CPUは、ステップ102に進むと、自車両が駐車されている駐車スポットPSaを登録するか否かを選択するための画像を表示器に表示させる。運転者が駐車スポットPSaを登録することを選択した場合(102:Yes)、CPUは、ステップ103に進む。一方、運転者が駐車スポットPSaを登録することを選択しなかった場合(102:No)、CPUは、ステップ107に進み、プログラムPR1の実行を終了する。
【0050】
CPUは、ステップ103に進むと、駐車スポットPSaを登録する。すなわち、CPUは、現在地を位置PaとしてROM10bに記憶させる。また、CPUは、制御パターンPDa及び初期位置情報IDをROM10bに記憶させる。そして、CPUは、ステップ104に進む。
【0051】
CPUは、ステップ104に進むと、周囲センサから取得した情報に基づいて、自車両の右側又は左側に、駐車スポットPSbが存在するか否かを判定する。CPUは、駐車スポットPSbが存在すると判定した場合(104:Yes)、ステップ105に進む。一方、CPUは、駐車スポットPSbが存在しないと判定した場合(104:No)、ステップ107に進む。
【0052】
CPUは、ステップ105に進むと、駐車スポットPSbを登録するか否かを選択するための画像を表示器に表示させる。運転者が駐車スポットPSbを登録することを選択した場合(105:Yes)、CPUは、ステップ106に進む。一方、運転者が駐車スポットPSbを登録することを選択しなかった場合(105:No)、CPUは、ステップ107に進む。
【0053】
CPUは、ステップ106に進むと、駐車スポットPSbを登録する。すなわち、CPUは、時系列データD1,D2に基づいて制御パターンPDbを演算して、ROM10bに記憶させる。そして、CPUは、ステップ107に進む。
【0054】
つぎに、
図6を参照して、上記の自動入庫機能を実現するためにCPU10aが実行するプログラムPR2について説明する。
【0055】
CPUは、イグニッションスイッチがオン状態である場合に、所定の周期でプログラムPR2の実行を開始する。
【0056】
CPUは、ステップ201に進むと、駐車スポットPSaが登録済であるか否かを判定する。駐車スポットPSaが登録済である場合(201:Yes)、CPUは、ステップ202に進む。一方、駐車スポットPSaが未登録である場合(201:No)、CPUは、ステップ215に進みプログラムPR2の実行を終了する。
【0057】
CPUは、ステップ202に進むと、ナビゲーションシステム28から取得した情報に基づいて、自車両が領域A内に位置しているか否かを判定する。自車両が領域A内に位置している場合(202:Yes)、CPUは、ステップ203に進む。一方、自車両が領域Aの外側に位置している場合(202:No)、CPUは、ステップ215に進む。
【0058】
CPUは、ステップ203に進むと、周囲センサから取得した情報と初期位置情報IDとのマッチング結果に基づいて、自車両が位置P0に到達したか否かを判定する。CPUは、自車両が位置P0に到達したと判定すると(203:Yes)、ステップ204に進む。一方、自車両が位置P0に到達していないと判定した場合(203:No)、CPUは、ステップ202に戻る。
【0059】
CPUは、ステップ204に進むと、自動入庫を開始するか否かを選択する画像を表示器に表示させる。運転者が自動入庫を開始することを選択した場合(204:Yes)、CPUは、ステップ205に進む。一方、運転者が自動入庫を開始することを選択しなかった場合(204:No)、CPUは、ステップ215に進む。
【0060】
CPUは、ステップ205に進むと、制御パターンPDaに従って自車両(駆動装置等)を制御する。そして、CPUは、ステップ206に進む。
【0061】
CPUは、ステップ206に進むと、制御パターンPDaの進度に基づいて、自車両が位置Pxに到達したか否かを判定する。CPUは、自車両が位置Pxに到達したと判定した場合(206:Yes)、ステップ207に進む。一方、CPUは、自車両が未だ位置Pxに到達していないと判定した場合(206:No)、ステップ205に戻る。
【0062】
CPUは、ステップ207に進むと、周囲センサから取得した情報に基づいて、「駐車スポットPSaに自車両を入庫可能か否か」を判定する。CPUは、駐車スポットPSaに自車両を駐車可能であると判定した場合(207:Yes)、ステップ208に進む。一方、CPUは、駐車スポットPSaに自車両を入庫不能であると判定した場合(207:No)、後述するステップ210に進む。
【0063】
CPUは、ステップ208に進むと、引き続き、制御パターンPDaに従って自車両(駆動装置等)を制御して、自車両を所定距離Δdだけ進行させる。そして、CPUは、ステップ209に進む。
【0064】
CPUは、ステップ209に進むと、自車両の入庫が完了したか否か(制御パターンPDaの末端に達したか否か)を判定する。CPUは、自車両の入庫が完了したと判定した場合、ステップ215に進む。一方、CPUは、未だ自車両の入庫が完了していないと判定した場合(209:No)、ステップ208に戻る。
【0065】
CPUは、ステップ210に進むと、駐車スポットPSbが登録済であるか否かを判定する。駐車スポットPSbが登録済である場合(210:Yes)、CPUは。ステップ211に進む。一方、駐車スポットPSbが未登録である場合(2101:No)、CPUは、ステップ214に進む。
【0066】
CPUは、ステップ211に進むと、周囲センサから取得した情報に基づいて、「駐車スポットPSbに自車両を入庫可能か否か」を判定する。CPUは、駐車スポットPSbへ自車両を入庫可能であると判定した場合(211:Yes)、ステップ212に進む。一方、CPUは、駐車スポットPSbへ自車両を入庫不能であると判定した場合(212:No)、後述するステップ214に進む。
【0067】
CPUは、ステップ212に進むと、制御パターンPDbに従って自車両(駆動装置等)を制御して、自車両を所定距離Δdだけ進行させる。そして、CPUは、ステップ213に進む。
【0068】
CPUは、ステップ213に進むと、自車両の入庫が完了したか否か(制御パターンPDbの末端に達したか否か)を判定する。CPUは、自車両の駐車が完了したと判定した場合、ステップ215に進む。一方、CPUは、未だ自車両の入庫が完了していないと判定した場合(213:No)、ステップ212に戻る。
【0069】
CPUは、ステップ214に進むと、自動入庫処理を実行不能であることを運転者に報知する。そして、CPUは、ステップ215に進む。
【0070】
(効果) 自動駐車装置1は、運転者が手動で自車両を駐車スポットPSaへ入庫させた場合に、その際に取得した手動駐車情報(時系列データD1及び時系列データD2)に基づいて、制御パターンPDa,PDbを取得して記憶する。自動駐車装置1は、駐車スポットPSaの近傍の位置P0から、既設の制御パターンPDaに従って自車両を制御して、駐車スポットPSaへ自車両を自動的に入庫させることができる。また、自動駐車装置1は、駐車スポットPSa内に障害物が存在するために当該駐車スポットPSaへ自車両を入庫させることができない場合に、既設の制御パターンPDbに従って自車両を制御して、駐車スポットPSbへ自車両を自動的に入庫させることができる。上記のように、運転者が駐車スポットPSbに手動で自車両を駐車させなくとも、駐車スポットPSbへ自車両を自動的に入庫させるための制御パターンPDbが演算されて記憶される。このように、従来装置に比べて、自動駐車装置の利便性が高い。
【0071】
また、運転者が駐車スポットPSaに自車両を手動で入庫させた際に、その経路Rmの近傍の物標に最も接近した際に当該物標に関する高精度の情報を取得している。制御パターンPDbは、この高精度の物標情報に基づいて演算される。よって、制御パターンPDbは、駐車スポットPSbから比較的離れた位置(例えば、位置Px)にて取得した物標情報のみに基づいて演算した制御パターンよりも高精度である。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、自動駐車ECU10は、制御パターンPDa(PDb)に代えて、経路Ra(Rb)をROM10bに記憶させてもよい。この場合、自動駐車ECU10は、第一入庫処理(第二入庫処理)の実行時に、経路Ra(Rb)に基づいて、制御パターンPDa(PDb)を演算すればよい。
【符号の説明】
【0073】
1…自動駐車装置、10…自動駐車ECU、20…車載センサ、30…駆動装置、40…制動装置、50…ステアリング装置