(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076524
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】昇降機の診断運転装置および診断運転方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20240530BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188091
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真敬
(72)【発明者】
【氏名】主税 雅裕
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
【Fターム(参考)】
3F303BA01
3F303CB46
3F304BA17
3F304BA26
3F304EA22
(57)【要約】
【課題】
当日の需要に基づいて、乗客への利便性を考慮したタイミングで診断運転を実行させる昇降機の診断運転装置および診断運転方法を提供する。
【解決手段】
エレベータ11の診断運転を実行させる昇降機の診断運転装置1において、エレベータ11が設置された建屋10内の人流データ6を取得する人流データ取得部2と、当日の人流データ6に基づいて、現在がエレベータ11の需要が低い時間帯であるかを判断する需要判断部3と、エレベータ11の需要が低い時間帯にエレベータ11の制御装置12に対してエレベータ11の診断運転を実行させる指令を出力する診断運転指令部4とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの診断運転を実行させる昇降機の診断運転装置において、
前記エレベータが設置された建屋内の人流データを取得する人流データ取得部と、
当日の前記人流データに基づいて、現在が前記エレベータの需要が低い時間帯であるかを判断する需要判断部と、
前記エレベータの需要が低い時間帯に前記エレベータの制御装置に対して前記エレベータの診断運転を実行させる指令を出力する診断運転指令部とを有することを特徴とする昇降機の診断運転装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記需要判断部は、階床ごとに前記エレベータの需要が低い時間帯であるかを判断し、
前記診断運転指令部は、全階床で前記エレベータの需要が低い時間帯である場合に、最上下階床間を往復運転する走行状態診断を実行させる指令を出力することを特徴とする昇降機の診断運転装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記需要判断部は、階床ごとに前記エレベータの需要が低い時間帯であるかを判断し、
前記診断運転指令部は、階床ごとに異なるタイミングで、診断対象の階床における前記エレベータの需要が低い時間帯に、各階かご停止位置診断および各階ドア動作診断のうち少なくとも一方を実行させる指令を出力することを特徴とする昇降機の診断運転方法。
【請求項4】
エレベータの診断運転を実行させる昇降機の診断運転方法において、
前記エレベータが設置された建屋内の人流データを取得する人流データ取得ステップと、
当日の前記人流データに基づいて、現在が前記エレベータの需要が低い時間帯であるかを判断する需要判断ステップと、
前記エレベータの需要が低い時間帯に前記エレベータの制御装置に対して前記エレベータの診断運転を実行させる指令を出力する診断運転指令ステップとを有することを特徴とする昇降機の診断運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機の診断運転装置および診断運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの診断運転に関する技術としては、例えば特許文献1がある。特許文献1の要約には、「所定のタイミングで建物内のエレベータの機器の稼動状態を診断するための遠隔診断運転を実行させる遠隔診断装置は、通常運転中に、所定の単位時間ごとのエレベータの総走行時間および走行回数を集計する。そして、遠隔診断運転の開始タイミングが到来すると、集計した情報内の該当する時間帯の総走行時間および走行回数に基づいて当該時間帯の遠隔診断運転の実行可能予測時間を算出し、算出した実行可能予測時間が、予め設定された遠隔診断運転の所要時間より長ければ、当該時間帯において遠隔診断運転を実行可能と判定する。」ことが記載されている。また、特許文献1の請求項3には、「前記遠隔診断装置は、前記単位時間ごとの前記エレベータの総走行時間および走行回数を、曜日ごと、日付ごと、または、平日と休日との分類ごとに集計」することが記載されている。さらに、特許文献1の段落0031には、「遠隔診断運転の予定日が到来したときに、当該日が該当する判定テーブル情報に基づいて、当該日の中で呼びが発生する可能性が最も低い時間帯を選択し、遠隔診断運転を実行させるようにしてもよい。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち、特許文献1では、所定の単位時間ごとのエレベータの総走行時間および走行回数についての過去の統計に基づいてエレベータの呼びが発生する可能性が低い時間帯に遠隔診断運転を実行することが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、診断運転を行う当日の実際の階床ごとのエレベータの需要を把握していない。したがって、診断運転を行う当日に過去の統計とは異なる人の流れがあった場合には、乗客がエレベータを利用したいタイミングで遠隔診断運転を行ってしまい、乗客への利便性を阻害する懸念が有った。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、当日の需要に基づいて、乗客への利便性を考慮したタイミングで診断運転を実行させる昇降機の診断運転装置および診断運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の昇降機の診断運転装置は、例えば、エレベータの診断運転を実行させる昇降機の診断運転装置において、前記エレベータが設置された建屋内の人流データを取得する人流データ取得部と、当日の前記人流データに基づいて、現在が前記エレベータの需要が低い時間帯であるかを判断する需要判断部と、前記エレベータの需要が低い時間帯に前記エレベータの制御装置に対して前記エレベータの診断運転を実行させる指令を出力する診断運転指令部とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の昇降機の診断運転方法は、例えば、エレベータの診断運転を実行させる昇降機の診断運転方法において、前記エレベータが設置された建屋内の人流データを取得する人流データ取得ステップと、当日の前記人流データに基づいて、現在が前記エレベータの需要が低い時間帯であるかを判断する需要判断ステップと、前記エレベータの需要が低い時間帯に前記エレベータの制御装置に対して前記エレベータの診断運転を実行させる指令を出力する診断運転指令ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、当日の人流データを用いることにより、当日の需要に基づいて、乗客への利便性を考慮したタイミングで診断運転を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施例の人流データと診断運転を実行するタイミングを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、実施例の全体構成を示す機能ブロック図である。
図2は、実施例の人流データと診断運転を実行するタイミングを説明する図である。なお、
図2において、横軸は時間であり、縦軸は階床ごとの人流データ6の人流値である。ここでは、1階と、n-1階と、n階を図示している。
【0013】
図1に示すように、実施例の診断運転装置1は、エレベータ11の診断運転を実行させる昇降機の診断運転装置である。ここでは、診断対象であるエレベータ11が設置された建屋10の外の管制センターなどに診断運転装置1が設けられて遠隔診断を行う場合を例として説明する。診断運転装置1は、例えば管制センターなどに設けられた計算機システムによって実現することができる。診断運転装置1の各機能部は、計算機システムのプロセッサで実行されるプログラムや、計算機システムの記憶部や、通信部や、入力部などによって実現することができる。なお、これに限らず、診断運転装置1が建屋10内に設けられていてもよいし、エレベータ11の制御装置12の機能の一部として設けられていてもよい。
【0014】
診断運転装置1は、人流データ取得部2と、需要判断部3と、診断運転指令部4と、記憶部5とを有する。
【0015】
人流データ取得部2は、人流データ取得ステップにおいて、エレベータ11が設置された建屋10内の人流データ6を取得する。人流データ取得部2は、例えば、1時間ごとなどの所定の単位時間ごとに、建屋10内に設置された人流検知装置13から、人流データ6を取得する。人流データ取得部2は、取得された人流データ6を、
図2に示すように、階床ごと、かつ、所定の単位時間ごとに集計して、記憶部5に格納する。
【0016】
ここで、人流検知装置13は、人流情報を検知するための機器である。人流検知装置13としては、例えば、建屋10のエレベータホールに設置されたカメラや、エレベータ11のかご内カメラや、人感センサや、入退管理装置などを用いることができ、階床ごとに設置される。ここで、人感センサは、温度差の変化により人が入退したことを感知する機器である。また、入退管理装置は、社員証などの個人を特定するカードなどを読み取って入退を感知する情報機器である。
【0017】
需要判断部3は、需要判断ステップにおいて、当日の人流データ6に基づいて、現在がエレベータ11の需要が低い時間帯であるかを判断する。需要判断部3は、例えば、記憶部5に格納された一番新しい単位時間における人流データ6を参照し、階床ごとに人流値と閾値とを比較し、人流値が閾値以下である場合にその階床のエレベータ11の需要が低い時間帯であると判断する。需要判断部3における判断結果は、診断運転指令部4に出力される。需要判断部3における処理は、例えば所定の単位時間ごとに実行される。例えば、人流データ取得部2における処理が終わるのに同期して実行されることが望ましい。
【0018】
診断運転指令部4は、診断運転指令ステップにおいて、エレベータ11の需要が低い時間帯にエレベータ11の制御装置12に対してエレベータ11の診断運転を実行させる指令を出力する。具体的には、診断運転指令部4は、
図2に示すように、全階床でエレベータ11の需要が低い時間帯である場合に、最上下階床間を往復運転する走行状態診断20を実行させる指令を出力する。また、診断運転指令部4は、階床ごとに異なるタイミングで、診断対象の階床におけるエレベータ11の需要が低い時間帯に、各階診断21として、各階かご停止位置診断および各階ドア動作診断のうち少なくとも一方を実行させる指令を出力する。なお、
図2では1つの単位時間の間に1つの階床の各階診断21を実行する例を示しているが、これに限られない。1つの単位時間の間に2つ以上の階床の各階診断21を実行してもよい。この場合でも、各階診断21は異なる階床で同時に実行することはできないので、階床ごとに異なるタイミングで各階診断21を実行することになる。
【0019】
診断運転指令部4における処理は、例えば所定の単位時間ごとに実行される。例えば、需要判断部3における処理が終わるのに同期して実行されることが望ましい。
【0020】
本実施例のように、当日の人流データ6を用いることにより、当日の需要に基づいて、乗客への利便性を考慮したタイミングで診断運転を実行させることができる。また、走行状態診断20は全階床でエレベータ11の需要が低い時間帯に実行し、各階診断21は階床ごとにエレベータ11の需要が低い時間帯を判断して異なるタイミングで実行することにより、乗客への利便性を阻害する可能性を低くしつつ効率的に診断運転を実行することができる。
【0021】
次に、診断運転指令部4における具体的な処理について説明する。
【0022】
診断運転指令部4は、記憶部5に格納された診断運転履歴7を参照し、前回の診断運転から所定の時間が経過している場合には、記憶部5に格納された診断運転フラグ8の中の対応するフラグをオンに変更する。診断運転フラグ8は、走行状態診断20のフラグと、各階診断21のフラグとを有する。各階診断21のフラグは、階床ごとに分かれており、階床ごとに、各階かご停止位置診断のフラグと各階ドア動作診断フラグとを有する。また、診断運転履歴7には、それぞれのフラグに対応した診断運転の実行結果とその実行時刻が記録されている。
【0023】
診断運転指令部4は、診断運転フラグ8の中でオンになっているフラグがある場合には、需要判断部3における判断結果に基づいて、フラグに対応する診断運転が実行可能であるかを判断する。この判断方法は、前述した通りである。
【0024】
診断運転指令部4は、フラグに対応する診断運転が実行可能である場合は、エレベータ11の制御装置12に対して、フラグに対応する診断運転を実行させる指令を出力する。
【0025】
制御装置12は、この指令を受信すると、エレベータ11の診断運転を実行し、実行の成否を含む実行結果と、実行時刻とを診断運転指令部4に送信する。
【0026】
診断運転指令部4は、制御装置12から受信した結果を、記憶部5の診断運転履歴7に格納する。また、診断運転が実行された場合には、記憶部5の診断運転フラグ8のうち対応するフラグをオフに変更する。
【0027】
以上の処理を繰り返すことで、実施例の診断運転が実現できる。
【0028】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 診断運転装置
2 人流データ取得部
3 需要判断部
4 診断運転指令部
5 記憶部
6 人流データ
7 診断運転履歴
8 診断運転フラグ
10 建屋
11 エレベータ
12 制御装置
13 人流検知装置
20 走行状態診断
21 各階診断