(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076525
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】エレベータ機器の故障検知装置、故障検知システム、および、故障検知方法
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
B66B3/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188092
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 悠太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真敬
【テーマコード(参考)】
3F303
【Fターム(参考)】
3F303BA01
3F303CB31
3F303CB42
3F303CB44
3F303EA02
3F303EA03
(57)【要約】
【課題】エレベータ機器の自然故障と破損を区別して外部に提供する、エレベータ機器の故障検知装置を提供する。
【解決手段】エレベータのかご内釦の故障を検知する故障検知装置であって、防犯カメラの撮影映像に基づいて、かご内釦の故障が自然故障か人為的故障かを判定する映像処理ユニットと、該映像処理ユニットの判定結果を外部に発報する発報部と、を備えたエレベータ機器の故障検知装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご内釦の故障を検知する故障検知装置であって、
防犯カメラの撮影映像に基づいて、前記かご内釦の故障が自然故障か人為的故障かを判定する映像処理ユニットと、
該映像処理ユニットの判定結果を外部に発報する発報部と、
を備えたことを特徴とするエレベータ機器の故障検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の故障検知装置において、
前記映像処理ユニットは、予め用意された正常な全点灯時の釦映像と、撮影された全点灯時の釦映像を比較し、両釦映像が一致する場合にかご内釦が正常と判定し、両釦映像が相違する場合にかご内釦が故障していると判定することを特徴とする故障検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の故障検知装置において、
かご内釦が故障していると判定された場合、
前記映像処理ユニットは、予め用意された正常な全消灯時の釦映像と、撮影された全消灯時の釦映像を比較し、両釦映像が一致する場合にかご内釦が自然故障していると判定し、両釦映像が相違する場合にかご内釦が人為的故障していると判定することを特徴とする故障検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の故障検知装置において、
かご内釦が人為的故障していると判定された場合、
前記映像処理ユニットは、故障検知直前のエレベータ利用者の撮影映像から該エレベータ利用者の動作または顔を抽出し、
前記発報部は、前記映像処理ユニットが抽出した前記エレベータ利用者の顔または動作を外部に通知することを特徴とする故障検知装置。
【請求項5】
かご内釦を撮影できるようにかご内に設置された防犯カメラと、
該防犯カメラで撮影した映像を記録する映像記録装置と、
該映像記録装置で記録された映像が入力される請求項1から請求項4の何れか一項に記載の故障検知装置と、
を備えたことを特徴とするエレベータ機器の故障検知システム。
【請求項6】
エレベータのかご内釦の故障を検知する故障検知方法であって、
防犯カメラの撮影映像に基づいて、前記かご内釦の故障が自然故障か人為的故障かを判定する映像処理ステップと、
該映像処理ステップでの判定結果を営業所または管理会社に発報する発報ステップと、
を備えたことを特徴とするエレベータ機器の故障検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご内釦の故障を検知したときに、遠隔地の営業所や管理会社に故障を通知する、故障検知装置、故障検知システム、および、故障検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの釦の故障を遠隔地に通知する従来技術として、特許文献1がある。この文献の要約書には、課題として「遠隔地であっても容易に行先階登録ボタンの光源が球切れや故障したことがわかる点検システム及び点検方法を提供する。」との記載があり、解決手段として「かごは、利用者がかごを行先階に移動させるための複数の行先階登録ボタン810を有する操作盤と、操作盤を撮像する撮像装置と、を含み、エレベータ制御装置は、画像を保存する記憶部と、記憶部に保存されている全点灯された状態の行先階登録ボタン810の画像と、撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の行先階登録ボタン810の画像と、を比較して、点灯している行先階登録ボタン810の位置が一致するか否かを判定する画像判定部と、を含む、エレベータ用点検システム。」との記載がある。
【0003】
このように、特許文献1では、記憶部に保存されている正常時の全点灯画像と、撮像装置で撮像した全点灯画像を比較し、差分が発生した場合はボタン光源の球切れや故障を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、経年劣化による自然故障と、いたずら等による人為的故障を区別できないため、故障通知を受けた営業所や管理会社では、自然故障と人為的故障を区別した対応を採ることが困難であった。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたもので、その目的は、自然故障と人為的故障を区別して営業所や管理会社に通知する、エレベータ機器の故障検知装置、故障検知システム、および、故障検知方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の故障検知装置は、エレベータのかご内釦の故障を検知する故障検知装置であって、防犯カメラの撮影映像に基づいて、かご内釦の故障が自然故障か人為的故障かを判定する映像処理ユニットと、該映像処理ユニットの判定結果を外部に発報する発報部と、を備えたものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエレベータ機器の故障検知装置、故障検知システム、故障検知方法によれば、自然故障と人為的故障を区別して営業所や管理会社に通知するため、故障通知を受けた営業所や管理会社では、自然故障と人為的故障を区別した対応を採ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施例の故障検知システムの機能ブロック図。
【
図3】一実施例の故障検知システムのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の一実施例に係る故障検知システム100を説明する。なお、本実施例の故障検知システム100で監視するエレベータは、エレベータ利用者(以下、単に「利用者」と称する)が自由に乗り降り可能な一般的な乗客用エレベータであり、利用者がいたずら等によりエレベータ機器を破損する可能性があるものとする。また、以下では、かご内の釦の故障を検知する状況を例示するが、本発明をホールの釦や液晶パネル等の故障を検出するために用いてもよい。
【0011】
まず、
図1の機能ブロック図を用いて、本実施例の故障検知システム100の概要を説明する。ここに示すように、本実施例の故障検知システム100は、防犯カメラ1と、乗降判定装置2と、映像記録装置3と、故障検知装置10を備える。以下、各装置を順次説明する。
【0012】
<防犯カメラ1>
防犯カメラ1は、かご内を撮影し、撮影した映像を映像記録装置3へ送信するカメラである。
図2は、防犯カメラ1で撮影したかご内映像Pの一例である。
図2のかご内映像Pから自明なように、本実施例の防犯カメラ1は、かご内全体を撮影できる位置に、ドアや操作盤の方向を向けて設置されている。その結果、防犯カメラ1は、利用者の乗降時に利用者の顔を撮影したり、利用者の乗車中動作を撮影したりすることができる。なお、以下では、かご内映像Pのうち、操作盤の釦近傍の映像を特に「釦映像p」と称することとする。
【0013】
<乗降判定装置2>
乗降判定装置2は、利用者の乗り降りを判定するための装置であり、例えば、かご上に設置される。利用者の乗降判定には、防犯カメラ1を利用する方法や、荷重センサ(図示せず)を利用する方法が考えられる。防犯カメラ1を利用する場合は、例えば、撮影したかご内映像Pと無人時のかご内映像と比較し、両映像の差異の有無から利用者の乗降を判定する方法が考えられる。また、荷重センサを利用する場合は、かごの床下に取り付けた荷重センサでかご内重量を検出し、かご内重量の増減で利用者の乗り降りを判定する方法が考えられる。利用者の乗降を検知した場合、乗降判定装置2は、その検知結果を映像記録装置3へ送信する。
【0014】
<映像記録装置3>
映像記録装置3は、防犯カメラ1から受信したかご内映像Pを記録するハードディスクドライブなどの記録装置であり、例えば、かご上に設置される。また、映像記録装置3は、外部からの指令に応じて選択した期間のかご内映像Pを故障検知装置10に送信する。なお、映像記録装置3には、かご内が無人であり、かつ、操作盤が正常であるときに撮影された、釦全点灯時の釦映像p1と、釦全消灯時の釦映像p2も予め記録されているものとする。
【0015】
<故障検知装置10>
故障検知装置10は、かご内操作盤の釦の故障を検知したときに、技術者が駐在する営業所4や、エレベータを管理する管理会社5に、故障発生を通知する装置である。なお、故障検知装置10は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、ハードディスク等の補助記憶装置、および、通信装置などのハードウェアを備えたコンピュータである。そして、演算装置が所定のプログラムを実行することで、後述する各機能を実現するが、以下では、このような周知技術を適宜省略しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、故障検知装置10は、映像処理ユニット11と、発報内容選定部12と、発報部13を備えている。また、映像処理ユニット11は、釦ランプ切れ判定部11aと、釦破損判定部11bと、利用者抽出部11cを備えている。以下、各部を順次概説する。
【0017】
釦ランプ切れ判定部11aは、防犯カメラ1で撮影した利用者降車後のかご内映像Pをもとに、かご内釦のランプ切れの有無を判定する。
【0018】
釦破損判定部11bは、防犯カメラ1で撮影した利用者降車後のかご内映像Pをもとに、かご内釦の破損の有無を判定する。
【0019】
利用者抽出部11cは、防犯カメラ1で撮影したエレベータ運転中のかご内映像Pをもとに、利用者の顔や動作を抽出する。
【0020】
発報内容選定部12は、映像処理ユニット11から受信したデータをもとに、発報内容を選定する。
【0021】
発報部13は、発報内容選定部12で選定した発報内容を、営業所4や管理会社5に設置したコンピュータに通知する。なお、以下では、営業所4や管理会社5に設置したコンピュータを、単に、営業所4や管理会社5と称することもある。
【0022】
<フローチャート>
次に、
図3のフローチャートに従い、本実施例の故障検知システム100の各部による処理内容を詳細に説明する。なお、
図3の前提条件として、エレベータを利用して他の階床へ移動しようとしている利用者の現在いる階床に、利用者によって呼ばれたかごが到着しているものとする。
【0023】
ステップS1では、乗降判定装置2は、防犯カメラ1の出力、または、荷重センサの出力に基づいて、かごへの利用者の乗車を検知する。
【0024】
ステップS2では、防犯カメラ1はかご内の撮影を開始し、映像記録装置3は撮影されたかご内映像Pの録画を開始する。
【0025】
ここで、利用者がかご内釦を操作するなどして行先階を登録すると、かごは登録された行先階に向け上昇または下降を開始する。なお、以下では、利用者が行先階を登録したものとして本発明を説明するが、行先階が登録されなかった場合(すなわち、ある階床から乗車した利用者が、そのまま同じ階床で降車した場合)にも、本発明を適用することができる。
【0026】
かごが所望の行先階に到着して利用者が降車すると(或いは、利用者が行先階を登録せずに同じ階床で降車すると)、ステップS3では、乗降判定装置2は、防犯カメラ1の出力、または、荷重センサの出力に基づいて、かごからの利用者の降車を検知する。
【0027】
ステップS4では、防犯カメラ1はかご内の撮影を終了し、映像記録装置3はかご内映像Pの録画を停止する。
【0028】
ステップS5では、乗降判定装置2は、一定時間(例えば、10分)が経過する前に、次の利用者がいるかを判定する。そして、次の利用者がいた場合は、ステップS1に戻り、次の利用者がいなかった場合は、ステップS6へ進む。
【0029】
ステップS6では、故障検知装置10は、かご内釦の故障の有無を判定する。具体的には、故障検知装置10は、かごの制御装置(図示せず)に、かご内釦を全点灯させる指令を生成させ、また、防犯カメラ1と映像記録装置3は、このときの釦映像pを録画する。そして、映像処理ユニット11は、映像記録装置3に予め登録されている正常点灯時の釦映像p1と、撮影した釦映像pを比較する。両映像の比較結果が一致する場合は、かご内釦の故障はないと判定してステップS7へ移行する。一方、両映像の比較結果が相違する場合は、かご内釦に何らかの故障があると判定してステップS8へ移行する。なお、本ステップにおける「一致」とは、完全一致を意味せず、両映像の差異が所定値よりも小さい状態を意味する。同様に、本ステップにおける「相違」とは、極僅かな相違を含まず、両映像の差異が所定値よりも大きい状態を意味する。
【0030】
何れのかご内釦も正常に点灯すれば、撮影した釦映像pは
図4の釦映像p1に類似するものとなり、何れかのかご内釦(例えば、行先階として3階を登録するための釦(3階釦))が正常に点灯しなれば、撮影した釦映像pは
図4の釦映像p3のようなものとなる。従って、釦映像p3中の故障f1の部位のように、撮影した釦映像p内に正常時の釦映像p1と相違する暗い部位があれば、何らかの釦故障が発生していると容易に判定することができる。
【0031】
ステップS7では、故障検知装置10は、釦の故障はないと判定できたため、故障検知処理を正常終了する。
【0032】
一方、ステップS8では、故障検知装置10は、釦の故障の種別を判定する。具体的には、故障検知装置10の映像処理ユニット11は、かごの制御装置(図示せず)に、かご内釦を全消灯させる指令を生成させ、また、防犯カメラ1と映像記録装置3は、このときの釦映像pを録画する。そして、映像処理ユニット11は、映像記録装置3に予め登録されている正常消灯時の釦映像p2と、撮影した釦映像pを比較する。両映像の比較結果が一致する場合は、釦ランプ切れ判定部11aは、かご内釦のランプが切れていると判定してステップS9へ移行する。一方、両映像の比較結果が相違する場合は、釦破損判定部11bは、釦自体が人為的に破損している可能性が非常に高いと判定してステップS11へ移行する。
【0033】
何れのかご内釦も破損がなければ、撮影した釦映像pは
図4の釦映像p2に類似するものとなり、何れかのかご内釦(例えば、3階釦)が破損していれば、撮影した釦映像pは
図4の釦映像p4のようなものとなる。従って、釦映像p4中の故障f2の部位のように、撮影した釦映像p内に正常時の釦映像p2と相違する部位があれば、何らかの釦破損が発生していると容易に判定することができる。
【0034】
ステップS9では、発報内容選定部12は、釦ランプ切れ判定部11aがかご内釦のランプ切れと判定したことを、その判定の根拠であるかご内映像P(例えば、
図4の釦映像p3)とともに発報部13へ送信する。
【0035】
ステップS10では、発報部13は、受信した情報をもとに、営業所4へランプ切れを通知する。発報部13から通知を受けた営業所4の技術者は、故障検知装置10から受信したかご内映像Pをもとに釦の状態を確認し、故障検知装置10の判定が正しければ、次回点検時にランプの交換を計画する。
【0036】
一方、ステップS11では、発報内容選定部12は、釦破損判定部11bがかご内釦の破損と判定したことを、その判定の根拠であるかご内映像P(例えば、
図4の釦映像p4)とともに発報部13へ送信する。
【0037】
かご内釦が破損している場合、破損検知直前の利用者が人為的にかご内釦を破壊した可能性が高い。そこで、ステップS12では、利用者抽出部11cは、釦破損の直前の利用者を撮影したかご内映像Pを映像記録装置3から取得し、その利用者の顔や動作を撮影した映像を抽出する。その後、利用者抽出部11cは、抽出した利用者映像を、発報内容選定部12を介して発報部13に送信する。
【0038】
ステップS13では、発報部13は、釦破損を営業所4へ通知する。通知を受けた営業所4の技術者は、故障検知装置10から受信したかご内映像Pをもとに釦の状態を確認し、故障検知装置10の判定が正しければ、次回点検時に釦の交換を計画する。
【0039】
ステップS14では、発報部13は、かご内釦が人為的に破損した可能性を管理会社5へ通知する。通知を受けた管理会社5の管理者は、故障検知装置10から受信した利用者映像をもとに人為的な破損であるかを確認し、破損が人為的であれば、警察に届け出る等、必要な対応を採る。なお、故障検知装置10から受信した利用者映像については、プライバシーの観点から一定期間後に自動消去することが望ましい。
【0040】
以上で説明したように、本実施例によれば、自然故障と人為的故障を区別して営業所や管理会社に通知するため、故障通知を受けた営業所や管理会社では、自然故障と人為的故障を区別した対応を採ることが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
100 故障検知システム
1 防犯カメラ
2 乗降判定装置
3 映像記録装置
4 営業所
5 管理会社
10 故障検知装置
11 映像処理ユニット
11a 釦ランプ切れ判定部
11b 釦破損判定部
11c 利用者抽出部
12 発報内容選定部
13 発報部
P かご内映像
p 釦映像