IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特開-空気調和装置 図1
  • 特開-空気調和装置 図2
  • 特開-空気調和装置 図3
  • 特開-空気調和装置 図4
  • 特開-空気調和装置 図5
  • 特開-空気調和装置 図6
  • 特開-空気調和装置 図7
  • 特開-空気調和装置 図8
  • 特開-空気調和装置 図9
  • 特開-空気調和装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076528
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20240530BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240530BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20240530BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/64
F24F140:00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188095
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田渕 健資
(72)【発明者】
【氏名】柴田 凌
(72)【発明者】
【氏名】下谷 亮
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260AB04
3L260CB01
3L260EA07
3L260FA16
3L260FB13
3L260FB16
(57)【要約】
【課題】複数の室外熱交換器の使用台数の頻繁な増減に伴う騒音の発生や信頼性の低下および快適性の劣化を抑制できる空気調和装置を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る空気調和装置は、複数の室外熱交換器と、前記複数の室外熱交換器に送風する室外ファンとを有する室外機と、前記室外機に冷媒配管で接続される少なくとも1つの室内機と、前記室外ファンの回転数を制御する制御装置とを備える。前記制御装置は、前記室外熱交換器の使用台数を増加するときは、台数増加後の室外熱交換器における熱交換量が台数増加前の室外熱交換器における熱交換量以下となるように前記室外ファンの回転数を決定し、前記室外熱交換器の使用台数を減少するときは、台数減少後の室外熱交換器における熱交換量が台数減少前の室外熱交換器における熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、複数の室外熱交換器と、前記複数の室外熱交換器ごとに設けられ各室外熱交換器の一方の冷媒出入口の接続を前記圧縮機の冷媒吐出口または冷媒吸入口へと切り替える複数の流路切替弁と、前記複数の室外熱交換器に送風する室外ファンとを有する室外機と、前記室外機に冷媒配管で接続される少なくとも1つの室内機と、前記室外ファンの回転数を制御する制御装置と、を備えた空気調和装置であって、
前記制御装置は、
必要とされる空調能力により前記室外熱交換器の使用台数を増加するかどうかを判定し、前記室外熱交換器の使用台数を増加すると判定したときは、台数増加後の室外熱交換器における熱交換量が台数増加前の室外熱交換器における熱交換量以下となるように前記室外ファンの回転数を決定し、
必要とされる空調能力により前記室外熱交換器の使用台数を減少するかどうかを判定し、前記室外熱交換器の使用台数を減少すると判定したときは、台数減少後の室外熱交換器における熱交換量が台数減少前の室外熱交換器における熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定する
空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和装置であって、
前記台数増加前の室外熱交換器における熱交換量の最大値を第1熱交換量とし、前記台数増加後の室外熱交換器における熱交換量の最小値を第2熱交換量としたとき、前記制御装置は、前記室外熱交換器の使用台数を増加すると判定したときは、前記第1熱交換量が前記第2熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定する
空気調和装置。
【請求項3】
請求項1に記載の空気調和装置であって、
前記台数減少後の室外熱交換器における熱交換量の最大値を第1熱交換量とし、前記台数減少前の室外熱交換器における熱交換量の最小値を第2熱交換量としたとき、前記制御装置は、前記室外熱交換器の使用台数を減少すると判定したときは、前記第1熱交換量が前記第2熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定する
空気調和装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の空気調和装置であって、
前記第1熱交換量で前記第2熱交換量を除した値を熱交換量変化率としたとき、前記制御装置は、前記熱交換量変化率が所定の第1閾値以下となるように前記室外ファンの回転数を決定する
空気調和装置。
【請求項5】
請求項4に記載の空気調和装置であって、
前記制御装置は、前記熱交換量変化率が前記第1閾値よりも小さい値である所定の第2閾値以上となるように前記室外ファンの回転数を決定する
空気調和装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1つに記載の空気調和装置であって、
前記制御装置は、前記熱交換量として、前記各室外熱交換器の体積と、前記室外ファンによる送風量と、前記送風量に対する前記各室外熱交換器に流れる空気量の比率とに基づいて定められる評価指標を用いる
空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に関し、さらに詳しくは、複数の室外熱交換器を有する室外機を備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の室外熱交換器を有する室外機を備えた空気調和装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の空気調和装置は、室内機から要求される空調能力に応じて、使用する室外熱交換器の台数および室外ファンの回転数を切り替えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/11141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、室内機からの要求能力の増加や外気温度の変化による空調負荷の増加に伴って室外熱交換器の使用台数を増加させるとき、その台数増加により室外熱交換器の凝縮能力あるいは蒸発能力が、必要とされる能力を大きく超えてしまう場合がある。一方、室内機からの要求能力の減少や外気温度の変化による空調負荷の減少に伴って室外熱交換器の使用台数を減少させるとき、その台数減少により室外熱交換器の凝縮能力あるいは蒸発能力が、必要とされる能力を大きく下回ってしまう場合がある。このように室外熱交換器の使用台数を増減させる際に能力の過大あるいは過小が発生すると、空気調和装置は、能力が過大の場合は室外熱交換器の使用台数を減少させ、能力が過少の場合は室外熱交換器の使用台数を増加させるため、室外熱交換器の使用台数が頻繁に増減を繰り返すおそれがある。
【0005】
複数の室外熱交換器を有する場合、室外熱交換器毎に当該室外熱交換器における冷媒の流れる方向を切り替える流路切替弁が設けられる。上記のように空気調和装置の運転中に室内機からの要求能力の変化や外気温度の変化による空調負荷の変化によって室外熱交換器の使用台数が頻繁に増減を繰り返す場合、室外熱交換器の使用台数の増減に応じて流路切替弁が切り替えられるためその動作音が頻発して騒音となり、また、当該流路切替弁の頻繁な切り替え動作に起因して劣化が早まるといった問題となる。さらに、室外熱交換器の能力変化が頻繁に繰り返されることにより、空調空間の温度が安定せずに快適性が劣化するという問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、複数の室外熱交換器の使用台数の頻繁な増減に伴う騒音の発生や信頼性の低下および快適性の劣化を抑制できる空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る空気調和装置は、圧縮機と、複数の室外熱交換器と、前記複数の室外熱交換器ごとに設けられ各室外熱交換器の一方の冷媒出入口の接続を前記圧縮機の冷媒吐出口または冷媒吸入口へと切り替える複数の流路切替弁と、前記複数の室外熱交換器に送風する室外ファンとを有する室外機と、前記室外機に冷媒配管で接続される少なくとも1つの室内機と、前記室外ファンの回転数を制御する制御装置と、を備えた空気調和装置であって、
前記制御装置は、
必要とされる空調能力により前記室外熱交換器の使用台数を増加するかどうかを判定し、前記室外熱交換器の使用台数を増加すると判定したときは、台数増加後の室外熱交換器における熱交換量が台数増加前の室外熱交換器における熱交換量以下となるように前記室外ファンの回転数を決定し、
必要とされる空調能力により前記室外熱交換器の使用台数を減少するかどうかを判定し、前記室外熱交換器の使用台数を減少すると判定したときは、台数減少後の室外熱交換器における熱交換量が台数減少前の室外熱交換器における熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定する。
【0008】
前記台数増加前の室外熱交換器における熱交換量の最大値を第1熱交換量とし、前記台数増加後の室外熱交換器における熱交換量の最小値を第2熱交換量としたとき、前記制御装置は、前記室外熱交換器の使用台数を増加すると判定したときは、前記第1熱交換量が前記第2熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定してもよい。
【0009】
前記台数減少後の室外熱交換器における熱交換量の最大値を第1熱交換量とし、前記台数減少前の室外熱交換器における熱交換量の最小値を第2熱交換量としたとき、前記制御装置は、前記室外熱交換器の使用台数を減少すると判定したときは、前記第1熱交換量が前記第2熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定してもよい。
【0010】
前記第1熱交換量で前記第2熱交換量を除した値を熱交換量変化率としたとき、前記制御装置は、前記熱交換量変化率が所定の第1閾値以下となるように前記室外ファンの回転数を決定してもよい。
【0011】
前記制御装置は、前記熱交換量変化率が前記第1閾値よりも小さい値である所定の第2閾値以上となるように前記室外ファンの回転数を決定してもよい。
【0012】
前記制御装置は、前記熱交換量として、前記各室外熱交換器の体積と、前記室外ファンによる送風量と、前記送風量に対する前記各室外熱交換器に流れる空気量の比率とに基づいて定められる評価指標を用いてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の室外熱交換器の使用台数の頻繁な増減に伴う騒音の発生や信頼性の低下および快適性の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和装置の一構成例を示す冷媒回路図である。
図2】上記空気調和装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】冷房主体運転を行っている室外熱交換器の使用台数と、使用台数の増加前後における室外熱交換器の熱交換量(凝縮能力)および当該室外熱交換器における冷媒の凝縮温度との関係を示す図である。
図4】上記空気調和装置において室外熱交換器の使用台数と室外ファンの回転数の制御範囲との関係を示す模式図である。
図5】上記制御装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】上記空気調和装置の一作用を説明する図であって、冷房主体運転を行っている室外熱交換器の使用台数と、使用台数の増加前後における室外熱交換器の熱交換量(凝縮能力)および当該室外熱交換器における冷媒の凝縮温度との関係を示している。
図7】上記空気和調和装置において凝縮器として機能する室外熱交換器の第1熱交換量と第2熱交換量との関係を示す図である。
図8】上記空気調和装置の一作用を説明する図であって、暖房主体運転を行っている室外熱交換器の使用台数と、使用台数の増加前後における室外熱交換器の熱交換量(蒸発能力)および当該室外熱交換器における冷媒の蒸発温度との関係を示している。
図9】上記空気和調和装置において蒸発器として機能する室外熱交換器の第1熱交換量と第2熱交換量との関係を示す図である。
図10】本発明の他の実施形態を示す空気調和装置の冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る空気調和装置10の一構成例を示す冷媒回路図である。空気調和装置10は、複数の室内機を備え、冷房もしくは暖房のいずれか一方を各室内機で選択的に行う(冷暖フリー方式)。本実施形態では、1台の室外機2aに3台の室内機8a、8b、8cが並列に接続された空気調和装置を例に挙げて説明する。
【0017】
[空気調和装置]
まず図1を参照して、空気調和装置10の構成と動作例について説明する。
【0018】
図1に示すように、空気調和装置10は、室外機2aと、3台の室内機8a、8b、8cと、3台の分流ユニット6a、6b、6cとを備えている。これら室外機2a、室内機8a~8cおよび分流ユニット6a~6cが、高圧ガス管30と、低圧ガス管31と、液管32とで相互に接続されることによって、空気調和装置10の冷媒回路が構成される。
【0019】
この空気調和装置10では、室外機2aや分流ユニット6a~6cに備えられた各種弁類の開閉状態に応じて、暖房運転(全ての室内機が暖房運転)、暖房主体運転(暖房運転を行っている室内機で要求される能力の合計値が冷房運転を行っている室内機で要求される能力の合計値を上回る場合)、冷房運転(全ての室内機が冷房運転)、冷房主体運転(冷房運転を行っている室内機で要求される能力の合計値が暖房運転を行っている室内機で要求される能力の合計値を上回る場合)といった各種運転が可能である。
【0020】
(室外機)
室外機2aは、圧縮機21と、第1四方弁22および第2四方弁23と、第1室外熱交換器24と、第2室外熱交換器25と、室外ファン26と、アキュムレータ27と、第1室外熱交換器24に接続された第1室外膨張弁40と、第2室外熱交換器25に接続された第2室外膨張弁41と、を備えている。
【0021】
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の吐出側は、第1四方弁22のポートaと第2四方弁23のポートeとに吐出配管28で接続され、閉鎖弁44に吐出配管28および室外機高圧ガス管33で接続されている。吐出配管28は圧縮機21の吐出側と接続点Aとの間を接続する冷媒配管であり、室外機高圧ガス管33は接続点Aと閉鎖弁44との間を接続する冷媒配管である。また、圧縮機21の吸入側は、アキュムレータ27の流出側に吸入配管42で接続されており、アキュムレータ27の流入側は、室外機低圧ガス管34で閉鎖弁45に接続されている。
【0022】
第1四方弁22および第2四方弁23は、複数の室外熱交換器(第1室外熱交換器24、第2室外熱交換器25)ごとに設けられた複数の流路切替弁に相当する。第1四方弁22および第2四方弁23は、冷媒回路における冷媒の流れる方向を切り替えるための弁であり、第1四方弁22は、第1室外熱交換器24の一方の冷媒出入口の接続を圧縮機21の冷媒吐出口または冷媒吸入口へと切り替え、第2四方弁23は、第2室外熱交換器25の一方の冷媒出入口の接続を圧縮機21の冷媒吐出口または冷媒吸入口へと切り替える。
【0023】
第1四方弁22は、a、b、c、dの4つのポートを備えている。第1四方弁22では、ポートaに接続された冷媒配管が接続点Aで吐出配管28および室外機高圧ガス管33に接続されている。また、ポートbと第1室外熱交換器24の一端(一方の冷媒出入口)とが冷媒配管で接続され、ポートcに接続された冷媒配管が接続点Dで室外機低圧ガス管34に接続され、ポートdは閉止されている。
【0024】
第2四方弁23は、e、f、g、hの4つのポートを備えている。第2四方弁23では、ポートeに接続された冷媒配管が接続点Aで吐出配管28および室外機高圧ガス管33に接続された冷媒配管と接続されている。またポートfと第2室外熱交換器25の一端(一方の冷媒出入口)とが冷媒配管で接続され、ポートgに接続された冷媒配管が接続点Cで第1三方弁22のポートcに接続された冷媒配管と接続され、ポートhは閉止されている。
【0025】
第1室外熱交換器24の一端(一方の冷媒出入口)は上述したように冷媒配管を介して第1四方弁22のポートbに接続され、他端(他方の冷媒出入口)は冷媒配管を介して第1室外膨張弁40の一方のポートに接続されている。第1室外膨張弁40の他方のポートは、閉鎖弁46と室外機液管35で接続されている。また、第2室外熱交換器25の一端(一方の冷媒出入口)は上述したように冷媒配管を介して第2四方弁23のポートfに接続され、他端(他方の冷媒出入口)は冷媒配管を介して第2室外膨張弁41の一方のポートに接続されている。第2室外膨張弁41の他方のポートは、室外機液管35における接続点Bに冷媒配管で接続されている。
【0026】
アキュムレータ27は、流入側が室外機低圧ガス管34に接続され、流出側が圧縮機21の吸入側と吸入配管42で接続されている。アキュムレータ27は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを圧縮機21に吸入させる。室外ファン26は、図示しないファンモータによって回転することで、室外機2a内に外気を取り込み、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25において冷媒と外気とを熱交換させた後、熱交換した外気を室外機2a外部に放出する。
【0027】
以上説明した構成の他に、室外機2aには各種のセンサが設けられている。図1に示すように吐出配管28には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検出する高圧センサ50と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ53とが設けられている。また、室外機低圧ガス管34における接続点Dとアキュムレータ27の流入側との間には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する低圧センサ51と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ54とが設けられている。
【0028】
第1室外熱交換器24には、第1室外熱交換器24内を流れる冷媒の温度を検出する第1熱交温度センサ56が設けられている。また、第2室外熱交換器25には、第2室外熱交換器25内を流れる冷媒の温度を検出する第2熱交温度センサ57が設けられている。さらには、室外機2a内に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ58が備えられている。
【0029】
(室内機)
3台の室内機8a~8cは、室内熱交換器81と、室内膨張弁82と、室内ファン83と、を備えている。なお、室内機8a~8cの構成は全て同じであるため、以下の説明では、室内機8aの構成についてのみ説明を行い、その他の室内機8b、8cについては説明を省略する。
【0030】
室内熱交換器81は、一端(一方の冷媒出入口)が室内膨張弁82の一方のポートに冷媒配管で接続され、他端(他方の冷媒出入口)が後述する分流ユニット6aに冷媒配管87で接続されている。室内熱交換器81は、室内機8aが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機8aが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
【0031】
室内膨張弁82は、一方のポートが上述したように室内熱交換器81に接続され、他方のポートが液管32に接続されている。室内膨張弁82は、室内熱交換器81が蒸発器として機能する場合は、その開度が要求される冷房能力に応じて調整され、室内熱交換器81が凝縮器として機能する場合は、その開度が要求される暖房能力に応じて調整される。
【0032】
室内ファン83は、図示しないファンモータによって回転することで、室内機8a内に室内空気を取り込み、室内熱交換器81において冷媒と室内空気とを熱交換させた後、熱交換した空気を室内へ供給する。
以上説明した構成の他に、室内機8aには各種のセンサが設けられている。室内熱交換器81の室内膨張弁82側の冷媒配管には冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ84が、また、室内熱交換器81の分流ユニット6a側の冷媒配管には冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ85が、それぞれ備えられている。また、室内機8aの図示しない室内空気の吸込口付近には、室内機8a内に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室温センサ86が備えられている。
【0033】
(分流ユニット)
空気調和装置10には、3台の室内機8a~8cに対応する3台の分流ユニット6a~6cが備えられている。分流ユニット6a~6cは、第1電磁弁61a~61cと、第2電磁弁62a~62cと、第1分流管63a~63cと、第2分流管64a~64cとを備えている。なお、分流ユニット6a~6cの構成は全て同じであるため、以下の説明では、分流ユニット6aの構成についてのみ説明を行い、その他の分流ユニット6b、6cについては説明を省略する。
【0034】
第1分流管63aの一端は高圧ガス管30に接続されており、第2分流管64aの一端は低圧ガス管31に接続されている。また、第1分流管63aの他端と第2分流管64aの他端とが相互に接続され、この接続部と室内熱交換器81とが冷媒配管87で接続されている。第1分流管63aには第1電磁弁61aが、また、第2分流管64aには第2電磁弁62aが、それぞれ設けられており、第1電磁弁61aおよび第2電磁弁62aをそれぞれ開閉することによって、分流ユニット6aに対応する室内機8aの室内熱交換器81が圧縮機21の吐出側(高圧ガス管30側)または吸入側(低圧ガス管31側)に接続されるよう、冷媒回路における冷媒の流路を切り替えることができる。
【0035】
以上説明した接続によって、空気調和装置10の冷媒回路が構成され、冷媒回路に冷媒を流すことによって冷凍サイクルが成立する。
【0036】
(制御装置)
室外機2aには、制御装置90が備えられている。図2は、制御装置90の構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御装置90は、CPU91、記憶部92、通信部93、センサ入力部94、回転数検出部95を有する。
【0037】
記憶部92は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、室外機2aの制御プログラムや制御パラメータ、各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン26等の制御状態等を記憶している。
【0038】
通信部93は、室内機8a~8cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部94は、室外機2aの各種センサでの検出結果を取り込んでCPU91に出力する。回転数検出部95は、圧縮機21のモータの回転数を検出してCPU91に出力する。回転数検出部95は、モータの駆動軸に取り付けられたエンコーダ等でモータの回転数を直接検出するように構成されてもよいし、モータに供給される駆動電流からモータの回転数を検出するように構成されてもよい。
【0039】
CPU91は、記憶部92に格納されたプログラムを実行することで、圧縮機21を含む室外機2aの各装置を制御する制御部である。プログラムは、例えば予め制御装置90にインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールや更新が実行されてもよい。
【0040】
CPU91は、上述した室外機2aの各センサでの検出結果を、センサ入力部94を介して取り込む。また、CPU91は、室内機8a~8cから送信される制御信号を、通信部93を介して取り込む。さらには、CPU91は、前述したように圧縮機21のモータの回転数を回転数検出部95から取り込む。CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン26の駆動制御を行う。また、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、第1四方弁22、第2四方弁23、第1膨張弁40、第2膨張弁41等の切り替え制御を行う。
【0041】
なお、分流ユニット6a~6cにおける第1電磁弁61a~61cおよび第2電磁弁62a~62cの開閉制御は、分流ユニット6a~6cに対応する室内機8a~8cの図示しない制御装置が行っている。
【0042】
[空気調和装置の基本的な運転動作]
次に、空気調和装置10の基本的な運転動作について説明する。なお、運転動作の説明においては、第1室外熱交換器24と第2室外熱交換器25をともに使用するものとしている。
【0043】
(全暖房運転)
図1に示すように、全ての室内機8a~8cが暖房運転を行う場合、室外機2aの第1四方弁22をポートbとポートcとが連通する(図1において実線で示す)よう切り替えることで第1室外熱交換器24を蒸発器として機能させ、第2四方弁23をポートfとポートgとが連通する(図1において実線で示す)よう切り替えることで第2室外熱交換器25を蒸発器として機能させる。
【0044】
室内機8a~8cでは、各々に対応する分流ユニット6a~6cの第1電磁弁61a~61cを開いて第1分流管63a~63cを冷媒が流れるようにするとともに、第2電磁弁62a~62cを閉じて第2分流管64a~64cを遮断する。これにより、室内機8a~8cの室内熱交換器81は全て凝縮器として機能する。
【0045】
室外機2aの圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出配管28および室外機高圧ガス管33を流れ、閉鎖弁44を介して高圧ガス管30に流入する。高圧ガス管30に流入した高圧の冷媒は、分流ユニット6a~6cに分かれて流入する。分流ユニット6a~6cに流入した高圧の冷媒は、開となっている第1電磁弁61a~61cが備えられた第1分流管63a~63cを流れて分流ユニット6a~6cから流出し、冷媒配管87を介して分流ユニット6a~6cに対応する室内機8a~8cに流入する。
【0046】
各室内機8a~8cに流入した高圧の冷媒は、室内熱交換器81に流入して室内空気と熱交換を行って凝縮する。これにより、室内空気が暖められ、室内機8a~8cが設置された室内の暖房が行われる。室内熱交換器81から流出した高圧の冷媒は、室内膨張弁82を通過して減圧される。室内膨張弁82の開度は、室内熱交換器81の冷媒出口における冷媒の過冷却度に応じて決定される。冷媒の過冷却度は、例えば、室外機2aの高圧センサ50で検出した圧力から算出した高圧飽和温度(室内熱交換器81内の凝縮温度に相当)から、冷媒温度センサ84で検出した室内熱交換器81の冷媒出口における冷媒温度を引くことで求められる。
【0047】
各室内機8a~8cから流出した中間圧の冷媒は液管32に流入し、閉鎖弁46を介して室外機2aに流入する。室外機2aに流入した中間圧の冷媒は、室外機液管35を流れ、接続点Bで分流して第1室外膨張弁40および第2室外膨張弁41を通過して減圧されて低圧の冷媒となる。
【0048】
第1室外膨張弁40の開度は、第1室外熱交換器24の冷媒出口における冷媒の過熱度に応じて決定される。また、第2室外膨張弁41の開度は、第2室外熱交換器25の冷媒出口における冷媒の過熱度に応じて決定される。冷媒の過熱度は、例えば、第1熱交温度センサ56や第2熱交温度センサ57で検出した第1室外熱交換器24や第2室外熱交換器25内の冷媒温度から、室外機2aの低圧センサ51で検出した圧力から算出した低圧飽和温度(第1室外熱交換器24内や第2室外熱交換器25内の蒸発温度に相当)を引くことで求められる。
【0049】
第1室外膨張弁40や第2室外膨張弁41で減圧された低圧の冷媒は、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25に流入して外気と熱交換を行って蒸発する。そして、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25から流出した低圧の冷媒は、第1四方弁22および第2四方弁23を介して接続点Cで合流し、接続点D、アキュムレータ27を介して圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0050】
(全冷房運転)
次に、全ての室内機8a~8cが冷房運転を行う場合について説明する。全ての室内機8a~8cが冷房運転を行う場合、室外機2aの第1四方弁22をポートaとポートbとが連通する(図1において破線で示す)よう切り替えることで第1室外熱交換器24を凝縮器として機能させ、第2四方弁23をポートeとポートfとが連通する(図1において破線で示す)よう切り替えることで第2室外熱交換器25を凝縮器として機能させる。
【0051】
室内機8a~8cでは、各々に対応する分流ユニット6a~6cの第1電磁弁61a~61cを閉じて第1分流管63a~63cを遮断するとともに、第2電磁弁62a~62cを開いて第2分流管64a~64cを冷媒が流れるようにする。これにより、室内機8a~8cの室内熱交換器81は全て蒸発器として機能する。
【0052】
室外機2aの圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、第1四方弁22および第2四方弁23側と高圧ガス管30側へ分流する。第1四方弁22および第2四方弁23側を流れる冷媒は、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25に流入し、外気と熱交換を行って凝縮する。高圧ガス管30側へ流れる冷媒は、各分流ユニット6a~6cの第1電磁弁61a~61cが閉じられているため、室内機8a~8cへ流入することなく、室外機高圧ガス管33と高圧ガス管30の中で滞留する。
【0053】
室外機2aの第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25で凝縮した冷媒は、制御装置90により全開状態とされた第1室外膨張弁40および第2室外膨張弁41を通過し、閉鎖弁46を介して液管32に流入する。液管32に流入した中間圧の冷媒は、各室内機8a~8cへ分かれて流入する。
【0054】
各室内機8a~8cへ流入した中間圧の冷媒は、室内膨張弁82で減圧されて低圧の冷媒となり室内熱交換器81に流入する。室内熱交換器81に流入した低圧の冷媒は、室内空気と熱交換を行って蒸発し、これにより室内機8a~8cが設置された室内の冷房が行われる。ここで、室内膨張弁82は、冷媒温度センサ84、85で検出した冷媒温度から、蒸発器である室内熱交換器81の出口での冷媒過熱度を求め、これに応じて開度を決定している。
【0055】
室内熱交換器81から流出した低圧の冷媒は冷媒配管87を介して分流ユニット6a~6eに流入し、開となっている第2電磁弁62a~62cが備えられた第2分流管64a~64bを流れて低圧ガス管31に流入する。そして、各分流ユニット6a~6cから低圧ガス管31に流入し低圧ガス管31内で合流した低圧の冷媒は、室外機2aに流入する。室外機2aに流入した低圧の冷媒は、室外機低圧ガス管34を通過し、アキュムレータ27を介して圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0056】
次に、室内機8a~8cで冷房運転と暖房運転とが混在する暖房主体運転および冷房主体運転(以下、冷暖混在運転ともいう)について説明する。
室内機8a~8cで冷房運転と暖房運転とが混在する場合、冷房運転を行っている室内機が要求する冷房能力の合計値と暖房運転を行っている室内機が要求する暖房能力の合計値の比較結果に応じて、冷媒回路の状態が決定される。本実施形態では一例として、室内機8a、8bが暖房運転/室内機8cが冷房運転を行っており、暖房運転を行っている2台の室内機8a、8bで要求される暖房能力が冷房運転を行っている1台の室内機8cで要求される冷房能力よりも大きい場合に、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25をそれぞれ蒸発器として機能させる暖房主体運転を行う。また、室内機8a、8bが冷房運転/室内機8cが暖房運転を行い、冷房運転を行っている2台の室内機8a、8bで要求される冷房能力が暖房運転を行っている1台の室内機8cで要求される暖房能力よりも大きい場合に、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25をそれぞれ凝縮器として機能させる冷房主体運転を行う。
【0057】
(暖房主体運転)
暖房主体運転では、室外機2aにおいて、第1四方弁22はポートbとポートcとが連通する(図1において実線で示す)ように切り替えられ、第2四方弁23はポートfとポートgとが連通する(図1において実線で示す)ように切り替えられる。これにより、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25はいずれも蒸発器として機能する。
【0058】
また、暖房運転を行う2台の室内機8a、8bに対応する2台の分流ユニット6a、6bの第1電磁弁61a、61bは開いて第1分流管63a、63bを連通させるとともに、第2電磁弁62a、62bは閉じて第2分流管64a、64bを遮断する。これにより、2台の室内機8a、8bの室内熱交換器81は凝縮器となる。一方、冷房運転を行う室内機8cに対応する分流ユニット6cの第1電磁弁61cは閉じて第1分流管63cを遮断するとともに、第2電磁弁62cは開いて第2分流管64cを連通させる。これにより、室内機8cの室内熱交換器81は蒸発器となる。
【0059】
室外機2aの圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、高圧ガス管30を流れて分流ユニット6a、6bに分かれて流入する。分流ユニット6a、6bに流入した高圧の冷媒は、開となっている第1電磁弁61a、61bが備えられた第1分流管63a、63bを流れて分流ユニット6a、6bから流出し、冷媒配管87を介して対応する室内機8a、8bに流入する。
【0060】
室内機8a、8bに流入した高圧の冷媒は、室内熱交換器81に流入して室内空気と熱交換を行って凝縮し、これにより室内機8a、8bが設置された室内の暖房が行われる。室内熱交換器81で凝縮した高圧の冷媒は、室内膨張弁82を通過して減圧されて中間圧の冷媒となる。ここで、室内膨張弁82は、室内機8a、8bの制御部が、冷媒温度センサ84で検出した冷媒温度および室外機2aから得た高圧飽和温度から、凝縮器である室内熱交換器81での冷媒過冷却度を求め、これに応じて開度が決定される。
【0061】
室内機8a、8bから流出した中間圧の冷媒は、液管32に流入する。そして、液管32内で合流した中間圧の冷媒は、一部が室外機2aに流入し、残りは液管32を流れて室内機8cに流入する。
【0062】
室外機2aに流入した中間圧の冷媒は、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25の過熱度に応じた開度とされた第1室外膨張弁40および第2室外膨張弁41を通過する際に減圧して低圧の冷媒となり、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25に流入する。第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25に流入した低圧の冷媒は、外気と熱交換を行って蒸発する。そして、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25から流出した低圧の冷媒は、第1四方弁22および第2四方弁23を通過した後アキュムレータ27を通過して圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0063】
一方、室内機8cに流入した中間圧の冷媒は、室内膨張弁82で減圧されて低圧の冷媒となり室内熱交換器81に流入する。室内熱交換器81に流入した低圧の冷媒は、室内空気と熱交換を行って蒸発し、これにより室内機8cが設置された室内の冷房が行われる。ここで、室内機8cの室内膨張弁82は、冷媒温度センサ84、85で検出した冷媒温度から、蒸発器である室内熱交換器81での冷媒過熱度を求め、これに応じて開度が決定される。
【0064】
室内熱交換器8cから流出した低圧の冷媒は冷媒配管87を介して分流ユニット6cに流入し、開となっている第2電磁弁62cが備えられた第2分流管64cを流れて低圧ガス管31に流入する。低圧ガス管31に流入した低圧の冷媒は、分岐管71、低圧ガス分管31a、31bを通して室外機2aに流入し、アキュムレータ27を通過して圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0065】
(冷房主体運転)
冷房主体運転では、室外機2aにおいて、第1四方弁22はポートaとポートbとが連通する(図1において破線で示す)ように切り替えられ、第2四方弁23はポートeとポートfとが連通する(図1において破線で示す)ように切り替えられる。これにより、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25はいずれも凝縮器として機能する。
【0066】
また、冷房運転を行う2台の室内機8a、8bに対応する2台の分流ユニット6a、6bの第1電磁弁61a、61bは閉じて第1分流管63a、63bを遮断するとともに、第2電磁弁62a、62bは開いて第2分流管64a、64bを連通させる。これにより、2台の室内機8a、8bの室内熱交換器81は蒸発器となる。一方、暖房運転を行う室内機8cに対応する分流ユニット6cの電磁弁61cは開いて第1分流管63cを連通させるとともに、第2電磁弁62cは閉じて第2分流管64cを遮断する。これにより、室内機8cの室内熱交換器81は凝縮器となる。
【0067】
室外機2aの圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、第1四方弁22および第2四方弁23側と高圧ガス管30側へ分流する。第1四方弁22および第2四方弁23を通過した高圧の冷媒は、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25に流入し外気と熱交換を行って凝縮する。第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25で凝縮した冷媒は、制御装置90により圧縮機21の吐出圧力と液圧との差に応じた開度とされた第1室外膨張弁40および第2室外膨張弁41を通過して中間圧の冷媒となり、液管32を流れて室内機8a、8bへ分かれて流入する。
【0068】
室内機8a、8bへ流入した中間圧の冷媒は、室内膨張弁82で減圧され低圧の冷媒となって室内熱交換器81に流入する。室内熱交換器81に流入した低圧の冷媒は、室内空気と熱交換を行って蒸発し、これにより室内機8a、8bが設置された室内の冷房が行われる。ここで、室内膨張弁82は、冷媒温度センサ84、85で検出した冷媒温度から、蒸発器である室内熱交換器81での冷媒過熱度を求め、これに応じて開度が決定される。
【0069】
室内機8a、8bの室内熱交換器81から流出した低圧の冷媒は冷媒配管87を介して分流ユニット6a、6bに流入し、開となっている第2電磁弁62a、62bが備えられた第2分流管64a、64bを流れて低圧ガス管31に流入する。そして、各分流ユニット6a、6bから低圧ガス管31に流入した低圧の冷媒は、低圧ガス管31内で合流後、室外機2aに流入し、アキュムレータ27を通過して圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0070】
一方、高圧ガス管30を流れて分流ユニット6cに流入した高圧の冷媒は、開となっている電磁弁61cが備えられた第1分流管63cを流れて室内機8cに流入する。分流ユニット6cから冷媒配管87を介して室内機8cに流入した高圧の冷媒は、室内熱交換器81に流入して室内空気と熱交換を行って凝縮し、これにより室内機8cが設置された室内の暖房が行われる。室内熱交換器81から流出した高圧の冷媒は、室内膨張弁82を通過して減圧され中間圧の冷媒となる。ここで、室内機8cの室内膨張弁82は、冷媒温度センサ84で検出した冷媒温度および室外機2a、2bから得た高圧飽和温度から、凝縮器である室内熱交換器81での冷媒過冷却度を求め、これに応じて開度が決定される。
【0071】
そして、室内機8cから流出し液管32に流出した中間圧の冷媒は、室外機2aへ流入する。室外機2aに流入した中間圧の冷媒は、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25の過熱度に応じた開度とされた第1室外膨張弁40および第2室外膨張弁41を通過する際に減圧して低圧の冷媒となり、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25に流入する。第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25に流入した低圧冷媒は、外気と熱交換を行って蒸発する。そして、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25から流出した低圧の冷媒は、第1四方弁22および第2四方弁23を通過した後アキュムレータ27を通過して圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0072】
なお、全暖房運転および暖房主体運転では、室内機が要求する暖房能力が小さければ、室外熱交換器の使用台数は1台でよい。室外熱交換器の使用台数が1台の場合には、室外機2aにおいて、第1四方弁22はポートbとポートcとが連通する(図1において実線で示す)ように切り替えられ、第2四方弁23はポートeとポートfとが連通する(図1において破線で示す)ように切り替えられるとともに、第2室外膨張弁41が全閉とされる。これにより、第1室外熱交換器24のみが蒸発器として使用され、第2室外熱交換器25の使用が停止される。室外熱交換器の使用台数は、後述するように、暖房運転を行う室内機からの要求能力の増減や外気温度の変化による空調負荷の増減に応じて切り替えられる。
【0073】
同様に、全冷房運転および冷房主体運転では、室内機が要求する冷房能力が小さければ、室外熱交換器の使用台数は1台でよい。室外熱交換器の使用台数が1台の場合には、室外機2aにおいて、第1四方弁22はポートaとポートbとが連通する(図1において破線で示す)ように切り替えられ、第2四方弁23はポートfとポートgとが連通する(図1において実線で示す)ように切り替えられるとともに、第1室外膨張弁40が全閉とされる。これにより、第1室外熱交換器24のみが凝縮器として使用され、第2室外熱交換器25の使用が停止される。室外熱交換器の使用台数は、後述するように、冷房運転を行う室内機からの要求能力の増減や外気温度の変化による空調負荷の増減に応じて切り替えられる。
【0074】
(熱交換器の使用台数の切り替え時の課題)
複数の室外熱交換器を備えた空気調和装置は、室内機からの要求能力が増加し、あるいは外気温度の変化により空調負荷が増加したときは室外熱交換器の使用台数を増加させ、室内機からの要求能力が減少し、あるいは外気温度の変化により空調負荷が減少したときは室外熱交換器の使用台数を減少させる。例えば、冷房運転時においては、冷房運転を行う室内機の台数の増減等に応じて、凝縮器として機能する室外熱交換器の使用台数が増減し、暖房運転時においては、暖房運転を行う室内機の台数の増減等に応じて、蒸発器として機能する室外熱交換器の使用台数が増減する。また、冷房主体運転時あるいは暖房主体運転時においては、冷房運転を行う室内機の台数と暖房運転を室内機の台数双方の増減に応じて、凝縮器あるいは蒸発器として機能する室外熱交換器の使用台数が増減する。
【0075】
ここで、室外熱交換器の使用台数を増加させるとき、その台数増加により室外熱交換器の凝縮能力あるいは蒸発能力が、必要とされる能力を大きく超えてしまう場合がある。また、室外熱交換器の使用台数を減少させるとき、その台数減少により室外熱交換器の凝縮能力あるいは蒸発能力が、必要とされる能力を大きく下回ってしまう場合がある。このように室外熱交換器の使用台数を増減させる際に能力の過大あるいは過小が発生すると、空気調和装置は、能力が過大の場合は室外熱交換器の使用台数を減少させ、能力が過少の場合は室外熱交換器の使用台数を増加させるため、室外熱交換器の使用台数が頻繁に増減を繰り返すおそれがある。
【0076】
例えば図1を参照して説明すると、空気調和装置10が1台の室外熱交換器を使用して冷房運転を行っているときは、使用する室外熱交換器(第1室外熱交換器24)の流路切替弁(第1四方弁22)は当該第1室外熱交換器24の入口を圧縮機21の冷媒吐出側に接続(ポートaとポートbとが連通)するように切り替えられ、使用しない室外熱交換器(第2室外熱交換器25)の流路切替弁(第2四方弁23)は当該第2室外熱交換器の出口を圧縮機21の冷媒吸入側に接続(ポートfとポートgとが連通)するように切り替えられる。このため、室外熱交換器の使用台数が頻繁に増減を繰り返すと、使用する/しないを切り替える室外熱交換器側の流路切替弁(今回の例では、第2室外熱交換器25の第2四方弁23)が頻繁に切り替えられるため、流路切替弁の動作に伴う騒音の発生や流路切替弁の劣化が早まって信頼性の低下を招くおそれがある。
【0077】
室外熱交換器が凝縮器として機能する場合、室外熱交換器の使用台数の増減に伴って室外熱交換器の凝縮能力が増減し、室外熱交換器の凝縮能力の増減に伴って凝縮温度が変動する。より具体的には、凝縮能力が増えると凝縮温度は低下し、凝縮能力が減ると凝縮温度は上昇する。例えば、空気調和装置が冷房主体運転を行っているときに、暖房運転を行う室内機の室内熱交換器は凝縮器として機能するため、室外熱交換器の使用台数の増減が繰り返されることによって室外熱交換器の凝縮能力の増減が繰り返されると、当該室内機の室内熱交換器における凝縮温度が変動することで当該室内機の暖房能力の低下および上昇が繰り返されるので、安定した暖房運転を継続できない。
【0078】
一方、室外熱交換器が蒸発器として機能する場合、室外熱交換器の使用台数の増減に伴なって室外熱交換器の蒸発能力が増減し、室外熱交換器の蒸発能力の増減に伴って蒸発温度が変動する。より具体的には、蒸発能力が増えると蒸発温度は上昇し、蒸発能力が減ると蒸発温度は低下する。例えば、空気調和装置が暖房主体運転を行っているときに、冷房運転を行う室内機の室内熱交換器は蒸発器として機能するため、室外熱交換器の使用台数の増減が繰り返されることによって室外熱交換器の蒸発能力の増減が繰り返されると、当該室内機の室内熱交換器における蒸発温度が変動することで当該室内機の冷房能力の低下および上昇が繰り返されるので、安定した冷房運転を継続できない。
【0079】
一例として図3に、冷房主体運転を行っている室外熱交換器の使用台数と、使用台数の増加前後における室外熱交換器の熱交換量(凝縮能力)および当該室外熱交換器における冷媒の凝縮温度との関係を示す。(A)は、室外熱交換器の使用台数を1台から2台に増加させたときの模式図である。使用される室外熱交換器は、図中網掛けて示している。(B)は、室外熱交換器の使用台数とその熱交換量との関係の一例を示す図である。そして(C)は、室外熱交換器の使用台数を1台から2台に増加させたときの室外熱交換器を流れる冷媒の凝縮温度の変化の一例を示す図である。
【0080】
室外熱交換器の熱交換量は、一般的に、室外熱交換器における冷媒流量と、各室外熱交換器の体積と、室外ファンによる送風量(室外ファンの台数と回転数との積)と、上記送風量に対する各室外熱交換器に流れる空気量の比率とに基づいて求めることができる。
【0081】
ここで、各室外熱交換器に流れる空気量の比率は、2台の室外熱交換器に対する室外ファンの数や配置レイアウトによって異なる。本実施形態では図3(A)に示すように1台の室外ファン26に対して2台の室外熱交換器24,25がそれぞれ風上側または風下側に配置されており、当該室外ファン26から送出される風量が各室外熱交換器24,25に所定の割合で分配される。この例では、風上側に位置する第1室外熱交換器24と風下側に位置する第2室外熱交換器25との間の風量比は、3:1(0.75:0.25)とされる。なお、各室外熱交換器に対応するように室外ファンが2台設置される場合には、上記風量比は1:1(0.5:0.5)である。図3(B)に示すように室外熱交換器の熱交換量は、室外ファンの回転数が高くなるほど増加する。
【0082】
このように室外熱交換器の熱交換量は、主として室外熱交換器の使用台数と室外ファンの風量に応じて増減する。以下の説明では、これら室外熱交換器の使用台数と室外ファンの回転数との積を、熱交換量の大きさを評価するための台数・回転数積算値[台・rpm]ともいう。
【0083】
室外ファンの回転数は、室外熱交換器を凝縮器として機能させるときと蒸発器として機能させるときとで異なっていてもよく、また、室外熱交換器の使用台数によって異なる値に設定されてもよい。室外ファンの回転数は固定値である場合に限られず、任意の回転数の範囲で可変に制御されてもよい。
【0084】
一例として、凝縮器として機能する室外熱交換器の使用台数が1台のときの室外ファンの回転数の制御範囲が0~500rpmmであり、使用台数が2台のときの室外ファンの回転数の制御範囲が500rpm~室外ファン回転数の最大値である場合について説明する。
【0085】
図3(C)は、凝縮器として機能する室外熱交換器における冷媒の凝縮温度の時間変化の一例を示す説明図であって、圧縮機の回転数が一定に維持された状態で、時刻T1において室外熱交換器の使用台数が1台から2台に切り替えられたときの様子を示している。同図において、制御上限は、制御装置90が室外熱交換器の使用台数を増加させる必要があるか否かを判断する上で基準とする温度である。制御上限は、凝縮温度が保護制御開始温度に到達して圧縮機が停止される保護制御とならないように、保護制御開始温度より所定温度低い温度に設定されている。また、制御下限は、制御装置90が室外熱交換器の使用台数を減少させる必要があるか否かを判断する上で基準とする温度である。制御装置90は、第1熱交温度センサ56や第2熱交温度センサ57で検出される冷媒の温度が制御下限と制御上限との間の温度となるように室外ファン23の回転数を制御する。
【0086】
室外熱交換器1台では凝縮能力が不足して凝縮温度を制御上限以下に維持できなくなったとき、制御装置90は、室外熱交換器の使用台数を1台から2台に増加させる(図3(C)の時刻T1)。このとき図3(B)に示すように、増加直前の室外熱交換器の熱交換量が室外熱交換器1台のときの熱交換量の最大値をHE1maxとし、増加直後の室外熱交換器の熱交換量が室外熱交換器2台のときの熱交換量の最小値をHE2minとした場合、増加直前における室外熱交換器の熱交換量HE1maxの台数・回転数積算値は500[台・rpm](1台×500rpm)であるのに対して、増加直後における室外熱交換器の熱交換量HE2minの台数・回転数積算値は1000[台・rpm](2台×500rpm)である。したがって、図3(B)に示すように室外熱交換器の熱交換量が使用台数の増加直後に急激に上昇してしまい、必要とされる凝縮能力を大きく超えてしまう。
【0087】
使用台数の増加直後における室外熱交換器の熱交換量(凝縮能力)が、必要とされる凝縮能力よりも過大であると、使用台数の増加前後で室外ファンの回転数が同じであれば、室外熱交換器における冷媒の凝縮温度が急激に低下しやすい。例えば図3(C)に示すように、室外熱交換器の使用台数を1台から2台に増加させたとき、台数増加後の室外熱交換器の熱交換量が過大であると、室外熱交換器における冷媒の凝縮温度が制御上限(例えば54.5℃)から制御下限(例えば42℃)以下に急激に低下する場合がある。凝縮温度が制御下限以下である状態が所定時間継続すると、冷媒の凝縮温度を上げるために室外熱交換器の使用台数を再び1台に切り替える必要が生じる。一方、室外熱交換器の使用台数が1台ではもともと熱交換量が過小であったため、使用台数を1台に切り替えた後もすぐに凝縮温度が安定上限に達し、再び使用台数を2台に切り替える必要が生じることになる。
【0088】
このように、室外熱交換器の使用台数の増加により室外熱交換器の凝縮能力が必要とされる能力を大きく超えてしまう場合には、室外熱交換器の使用台数の増減が頻繁に繰り返されることがある。この場合、室外熱交換器の使用台数の増減に応じて四方弁が切り換えられるためその動作音が頻発して騒音となり、また、当該四方弁の頻繁な動作に起因して劣化が早まるといった問題となる。さらに、室外熱交換器の能力変化が頻繁に繰り返されることにより、空調空間の温度が安定せずに快適性が劣化するという問題がある。例えば冷房主体運転時に凝縮器として機能する室外熱交換器の凝縮能力が変化すれば、暖房機の空調制御に影響が及ぶ。
【0089】
このような問題は、室外熱交換器の使用台数を増加させるときだけでなく、室外熱交換器の使用台数を減少させるときにも同様に発生し得る。つまり、室外熱交換器の使用台数が2台から1台に減少すると、室外熱交換器の凝縮能力が大幅に低下するため冷媒の凝縮温度が大幅に上昇し、それが安定上限を超える場合がある。この場合、室外熱交換器の使用台数を再び増加させると、室外熱交換器の使用台数が2台では熱交換量が過大であったため、使用台数を2台に切り替えた後も凝縮温度が安定下限に達し、再び使用台数を1台に切り替える必要が生じることなる。
なお上述の問題は、冷房主体運転を行っているときだけでなく、暖房主体運転を行っている場合にも同様に発生し得る。
【0090】
そこで本実施形態の空気調和装置10は、室外ファン26の回転数を最適化することで、複数の室外熱交換器の使用台数の頻繁な増減に伴う騒音の発生や信頼性の低下および快適性の劣化を抑制する。以下、室外ファン26の駆動を制御する制御装置90の詳細について説明する。
【0091】
[本実施形態の制御装置の詳細]
図4は、室外熱交換器(第1室外熱交換器24、第2室外熱交換器25)の使用台数と室外ファン26の回転数の制御範囲との関係を示す模式図である。
【0092】
なお図4において中央の太線Cより右側には、凝縮器として機能する室外熱交換器の台数切り替え時における室外ファン26の回転数の制御範囲を示しており、太線Cより左側には、蒸発器として機能する室外熱交換器の使用台数と室外ファン26の回転数の制御範囲との関係を示している。ここでは圧縮機21の回転数は一定であるとして以下説明する。
【0093】
室外熱交換器が凝縮器として機能する場合、凝縮温度が図3(C)に示す制御上限と制御下限との間に収まるように室外ファン26の回転数が上記制御範囲で制御される。図4に示す例では、室外熱交換器の使用台数の増加時における室外ファン26の回転数の制御範囲は、室外熱交換器1台のときが0~720rpmであり、室外熱交換器2台のときが360rpm~最大回転数(max)である。また、当該室外熱交換器の使用台数の減少時における室外ファン26の回転数の制御範囲は、室外熱交換器2台のときが300rpm~最大回転数(max)であり、室外熱交換器1台のときが0~600rpmである。つまり、室外ファン26の回転数が上限値に達しても凝縮能力の不足が原因で凝縮温度を制御上限以下にできない場合に、凝縮能力を上げるために室外熱交換器の使用台数を1台から2台に増加させるとき、増加直前の室外ファン26の回転数は720rpm、増加直後の室外ファン26の回転数は360rpmにそれぞれ設定される。また、室外ファン26の回転数が下限値に達しても凝縮温度が制御上限と制御下限との間に収まらないため室外熱交換器の使用台数を2台から1台に減少させるとき、減少直前の室外ファン26の回転数は300rpm、減少直後の室外ファン26の回転数は600rpmにそれぞれ設定される。
【0094】
一方、室外熱交換器が蒸発器として機能する場合についても同様に、図4に示す例では、室外熱交換器の使用台数の増加時における室外ファン26の回転数の制御範囲は、室外熱交換器1台のときが300~680rpmであり、室外熱交換器2台のときが340rpm~最大回転数(max)である。また、当該室外熱交換器の使用台数の減少時における室外ファン26の回転数の制御範囲は、室外熱交換器2台のときが300rpm~最大回転数(max)であり、室外熱交換器1台のときが300~600rpmである。つまり、使用台数が1台から2台への増加直前の室外ファン26の回転数は680rpm、増加直後の室外ファン26の回転数は340rpmにそれぞれ設定され、使用台数を2台から1台への減少直前の室外ファン26の回転数は300rpm、減少直後の室外ファン26の回転数は600rpmにそれぞれ設定される。
【0095】
室外熱交換器の使用台数を増減させる前後における室外ファン26の回転数は、台数変更前の回転数を台数変更後の回転数の2倍としたが、これに限られず、後述するように台数変更前の回転数を台数変更後の回転数の2倍未満であってもよい。なお、室外熱交換器を蒸発器として機能させる場合に室外ファン26の制御回転数の下限値を0rpmとしないのは、室外熱交換器において冷媒が蒸発しきらずに液相状態で圧縮機21に吸入されること(液バック)を防止するためである。
【0096】
図5は、本実施形態の空気調和装置10において、制御装置90が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、室外熱交換器が凝縮器として機能する場合を例に挙げて説明する。
【0097】
(室外熱交換器が凝縮器として機能する場合)
空気調和装置10の運転が開始すると、制御装置90は、通信部93を介して各室内機8a~8cの運転情報を取得する(ステップ101)。室内機8a~8cの情報としては、室内機8a~8cの空調状態に関する情報であって、例えば室内機8a~8cの「冷房」「暖房」などの運転モード、室内機8a~8cから要求される冷房能力や暖房能力などの空調能力が挙げられる。室外熱交換器(第1室外熱交換器24、第2室外熱交換器25)が凝縮器として機能する空気調和装置10の運転モードとしては、全冷房運転または冷房主体運転が挙げられる。
【0098】
続いて制御装置90は、ステップ101で取得した室内機8a~8cの運転情報に基づいて、室外熱交換器の使用台数を決定する(ステップ102)。本実施形態では室内機8a~8cから要求される空調能力が1台の室外熱交換器の熱交換量(凝縮能力)で賄える場合は第1室外熱交換器24のみを使用し、1台の室外熱交換器熱交換量(凝縮能力)では賄えない場合は第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25の両方を使用する。
【0099】
室外熱交換器の使用台数が1台のときは、第1四方弁22はポートaとポートbとが連通するように切り替えられ、第2四方弁23はポートfとポートgとが連通するように切り替えられる(第2室外膨張弁41は全閉)。これにより、第1室外熱交換器24のみが凝縮器として機能し、第2室外熱交換器25は使用停止の状態とされる。室外ファン26の回転数は、第1室外熱交換器24における冷媒の凝縮温度が、図3(C)に示す制御下限と制御上限との間の温度となるように制御される。
【0100】
一方、室外熱交換器の使用台数が2台のときは、第1四方弁22はポートaとポートbとが連通するように切り替えられ、第2四方弁23はポートeとポートfとが連通するように切り替えられる。これにより、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25のいずれもが凝縮器として機能する。室外ファン26の回転数は、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25における冷媒の凝縮温度が、図3(C)に示す制御下限と制御上限との間の温度となるように制御される。
【0101】
制御装置90は、例えば室内機が要求する空調能力の変動により、室外熱交換器の使用台数の変更が必要か否かを判定する(ステップ103)。制御装置90は、室外熱交換器の使用台数の変更は不要と判定した場合(ステップ103においてNo)、引き続き現在の室外熱交換器の台数で運転を継続する。一方、制御装置90は、室外熱交換器の使用台数の変更が必要と判定した場合(ステップ103においてYes)、必要とされる空調能力により室外熱交換器の使用台数を増加させるかどうかを判定する(ステップ104)。
【0102】
上述のように、室外ファン26の回転数は、凝縮温度が図3(C)に示す制御上限と制御下限との間に収まるように、室外熱交換器の使用台数毎に定められた制御範囲で制御される。例えば室外熱交換器の使用台数が1台のとき、第1室外熱交換器24における冷媒の凝縮温度が制御上限と制御下限との間に収まっている場合は、室外熱交換器の使用台数を増加させずに現状の使用台数(1台)で運転を継続する。これに対して、室外ファン26の回転数が上限値(720rpm)でも冷媒の凝縮温度の上昇を制御上限以下に抑えられない場合は室外熱交換器の使用台数を増加させる(凝縮能力を向上させる)必要があると判定される(ステップ104においてYes)。
【0103】
一方、室外熱交換器の使用台数が2台のとき、第1、第2室外熱交換器24,25における冷媒の凝縮温度が制御上限と制御下限との間に収まっている場合は、室外熱交換器の使用台数を減少させずに現状の使用台数(2台)で運転を継続する。これに対して、室外ファン26の回転数が下限値(300rpm)でも冷媒の凝縮温度の低下を制御下限以上に抑えられない場合は室外熱交換器の使用台数を減少させる(凝縮能力を低下させる)必要があると判定される(ステップ104においてNo)。
【0104】
室外熱交換器の使用台数を増加すると判定したとき(ステップ104においてYes)、制御装置90は、台数増加後の室外熱交換器における熱交換量が、台数増加前の室外熱交換器における熱交換量以下となるように室外ファン26の回転数を決定する(ステップ105a)。これにより、台数増加直後において室外熱交換器での冷媒の凝縮温度の急激な低下が抑えられる。
【0105】
図6は、室外ファン26の回転数を図4に示す制御範囲とすることによって得られる空気調和装置10の一作用を説明する図であって、室外熱交換器の使用台数と、使用台数の増加前後における室外熱交換器の熱交換量(凝縮能力)および当該室外熱交換器における冷媒の凝縮温度との関係を示している。(A)は、室外熱交換器の使用台数とその熱交換量との関係の一例を示す図である。室外熱交換器の熱交換量は、室外ファン26の回転数が高くなるほど増加する。そして(B)は、室外熱交換器を流れる冷媒の凝縮温度の変化の一例を示す図であり、この例では時刻T1で室外熱交換器の使用台数が1台から2台に変更される。
【0106】
ステップ105aにおいて、制御装置90は、図6(A)に示すように、台数増加前の室外熱交換器における熱交換量の最大値(HE1max)を第1熱交換量とし、台数増加後の室外熱交換器における熱交換量の最小値(HE2min)を第2熱交換量としたとき、第1熱交換量が第2熱交換量以上(HE1max≧HE2min)となるように室外ファン26の回転数を決定する。図6(A)において、破線は、第1熱交換量が第2熱交換量と同一(HE1max=HE2min)である場合を示し、二点鎖線は、第1熱交換量が第2熱交換量よりも大きい(HE1max>HE2min)場合を示している。
【0107】
図6(B)に示すように、第1熱交換量が第2熱交換量と同一(HE1max=HE2min)である場合は、室外熱交換器の台数の増加前後で凝縮温度を変化させることなく一定に維持できる。また、第1熱交換量が第2熱交換量より大きい(HE1max>HE2min)場合は、室外熱交換器における冷媒の凝縮温度は図6(B)に二点鎖線で示すように一時的に上昇した後、元の凝縮温度に収束する。このように、HE1max≧HE2minの関係を満たす熱交換量が得られるように室外ファン26の回転数を制御することで、図3(C)に示したような凝縮能力の過多に起因する室外熱交換器における冷媒の凝縮温度の急激な低下を阻止できる。
【0108】
室外熱交換器の使用台数とその熱交換量との関係については、図7に示すように、第1熱交換量(HE1max)と第2熱交換量(HE2min)との差分をA、第1熱交換量の大きさ(室外熱交換器の使用台数が1台のときの熱交換量の総変化量)をBとしたとき、第2熱交換量は、(B-A)と表される。そして、第1熱交換量で第2熱交換量を除した値を熱交換量変化率((B-A)/B)としたとき、制御装置90は、熱交換量変化率が所定の第1閾値以下となるように室外ファン26の回転数を決定する。
【0109】
第1閾値が1より大きい場合、第2熱交換量が第1熱交換量よりも大きくなり(HE1max<HE2min)、図3(B)、(C)に示したように室外熱交換器の熱交換量が使用台数の増加直後に急激に上昇してしまい、必要とされる凝縮能力を大きく超えて凝縮温度の急激な低下を招くおそれがある。したがって、第1閾値は1以下であることが好ましい。また、第1閾値は1(HE1max=HE2min)であることがより好ましく、この場合は室外熱交換器の使用台数の増減の前後で熱交換量の変動がないため、発揮される空調能力に変動がなく安定する。
【0110】
また制御装置90は、熱交換量変化率((B-A)/B)が第1閾値よりも小さい値である所定の第2閾値以上となるように室外ファン26の回転数を決定する。第1閾値が1未満の場合、第2熱交換量は第1熱交換量よりも小さくなるため(図6(A)の二点鎖線)、台数増加直後の室外熱交換器における冷媒の凝縮温度は、台数増加前に比べて上昇する(図6(B)の二点鎖線)。このときの凝縮温度の上昇幅は、第1熱交換量と第2熱交換量との差分Aが大きくなるほど大きくなり、凝縮温度が図3(C)や図6(B)に示す所定の高圧保護制御開始温度に達すると、圧縮機21の保護のために圧縮機21が停止されて空気調和装置10の運転が停止される。このため第2閾値は、凝縮温度が高圧保護制御開始温度(例えば57.6℃)以下に抑えられる任意の値に設定され、例えば0.5以上であることが好ましい。
【0111】
また、本実施形態では、凝縮器として機能する室外熱交換器を増加させる場合、使用台数が1台のときの室外ファン26の回転数の上限値は720rpmであり、使用台数が2台のときの室外ファン26の回転数の下限値は360rpmである(図4参照)。したがって、使用台数が1台のときの熱交換量の台数・回転数積算値は720[台・rpm](1台×720rpm)であり、使用台数が2台のときの熱交換量の台数・回転数積算値も720[台・pm](2台×360rpm)であるため、室外熱交換器の使用台数を1台から2台に増やしても、第1熱交換量と第2熱交換量を同じ値(HE1max=HE2min、熱交換量変化率:(B-A)/B=1)にすることができる。
【0112】
なお、第1熱交換量(HE1max)および第2熱交換量(HE2min)、図4に示す室外ファン26の回転数、第2閾値の各々は、試験などによってあらかじめ測定された値が用いられる。これらの測定値は制御装置90の記憶部92に格納され、室外熱交換器の使用台数の変更の際に参照される。
【0113】
また、制御装置90は、室外熱交換器の熱交換量を上述した試験によって求める方法の他に、各室外熱交換器(第1室外熱交換器24、第2室外熱交換器25)の体積と、室外ファン26による送風量と、上記送風量に対する各室外熱交換器に流れる空気量の比率とに基づいて定められる評価指標を用いてもよい。この場合も室外熱交換器の体積と上記空気量の比率に関する情報をあらかじめ記憶部92に格納しておけば、室外熱交換器の使用台数と室外ファン26の回転数から室外熱交換器の熱交換量を推定できるので、この推定値から熱交換量変化率((B-A)/B)を算出し、その値が1(第1閾値)以下となるように室外ファン26の回転数を決定するようにしてもよい。
【0114】
さらに室外熱交換器の使用台数の増加は、室外熱交換器の熱交換量がその最大値(HE1max)に達する前に行われてもよい。この場合、上述のように推定された熱交換量に基づいて熱交換量変化率((B'-A)/B'(B'は台数増加直前の熱交換量))を算出し、その変化率が例えば0.5以上1以下となるように台数増加前後の室外ファン26の回転数をそれぞれ制御してもよい。
【0115】
また、室外ファン26の回転数がちょうど1/2倍(室外熱交換器の台数増加時)となるファン回転数を選択できる第1熱交換量Bを選ぶことで熱交換量比率を1にすることができるため、このような回転数が選択できる場合は第1熱交換量がその最大値(HE1max)に達する前に室外熱交換器の使用台数を増加させてもよい。また、予め定められたステップでしか室外ファン26の回転数を選択することができない場合は、熱交換量比率が最も1に近い値となるステップ(回転数)で室外熱交換器の使用台数を増加させてもよい。
【0116】
以上のようにステップ105aにおいて室外ファン26の回転数を決定した後、制御装置90は、第2四方弁23をポートeとポートfとが連通するように切り替えるとともに(ステップ106)、第2室外膨張弁41の開度を第1室外熱膨張弁40と同じ開度に調整する。さらに制御装置90は、室外熱交換器の使用台数が2台のときの回転数下限値(360rpm)に室外ファン26の回転数を調整する(ステップ107)。これにより、室外熱交換器の使用台数が2台に変更される。その後、制御装置90は、凝縮温度が制御上限と制御下限の間の温度となるように室外ファン26の回転数を360rpm~最大値の間で制御する(ステップ108)。
【0117】
一方、2台の室外熱交換器を凝縮器として使用して全冷房運転または冷房主体運転を行っている場合において、例えば暖房運転を行う室内機の数が増加するなど、必要とされる空調能力により室外熱交換器の使用台数を減少する必要があると判定したとき(ステップ104においてNo)、制御装置90は、台数減少後の室外熱交換器における熱交換量が台数減少前の室外熱交換器における熱交換量以上となるように室外ファン26の回転数を決定する(ステップ105b)。
【0118】
ステップ105bにおいては、図7に示すように、台数減少後の室外熱交換器における熱交換量の最大値(HE1max)を第1熱交換量とし、台数減少前の室外熱交換器における熱交換量の最小値(HE2min)を第2熱交換量としたとき、制御装置90は、室外熱交換器の使用台数を減少すると判定したときは、第1熱交換量が第2熱交換量以上(HE1max≧HE2min)となるように室外ファン26の回転数を決定する。これにより、台数減少時において室外熱交換器における冷媒の凝縮温度を一定に維持することができる。
【0119】
室外熱交換器の使用台数を減少させるときは、その使用台数を増加させるときと同様に、第1熱交換量で第2熱交換量を除した値を熱交換量変化率((B-A)/B)としたとき、制御装置90は、この熱交換量変化率が第2の閾値以上、第1閾値以下(本実施形態では0.5以上、1以下)となるように室外ファン26の回転数を決定する。これにより、台数減少時において室外熱交換器における冷媒の凝縮温度の急激な低下を防ぎつつ、凝縮器として機能する室外熱交換器の高圧維持を図ることができる。
【0120】
本実施形態では、凝縮器として機能する室外熱交換器を減少させる場合、使用台数が2台のときの室外ファン26の回転数の下限値は300rpmであり、使用台数が1台のときの室外ファン26の回転数の上限値は600rpmである(図5参照)。したがって、使用台数が2台のときの熱交換量の台数・回転数積算値は600[台・rpm](2台×300rpm)であり、使用台数が1台のときの熱交換量の台数・回転数積算値も600[台・pm](1台×600rpm)であるため、室外熱交換器の使用台数を2台から1台に切り替える際は、第1熱交換量と第2熱交換量を同じ値(HE1max=HE2min、(B-A)/B=1)にすることができる。
【0121】
以上のようにステップ105bにおいて室外ファン26の回転数を決定した後、制御装置90は、第2四方弁23をポートfとポートgとが連通するように切り替えるとともに、第2室外膨張弁41を全閉にする(ステップ106)。さらに制御装置90は、室外熱交換器の使用台数が1台のときの回転数上限値(600rpm)に室外ファン26の回転数を調整する(ステップ107)。これにより、室外熱交換器の使用台数が1台に変更される。その後、制御装置90は、凝縮温度が制御上限と制御下限の間の温度となるように室外ファン26の回転数を0rpm~600rpmの間で制御する(ステップ108)。以上の処理を繰り返し実行することで、空気調和装置10は全冷房運転または冷房主体運転を継続する。
【0122】
(室外熱交換器が蒸発器として機能する場合)
続いて、室外熱交換器が蒸発器として機能する場合について説明する。室外熱交換器(第1室外熱交換器24、第2室外熱交換器25)が蒸発器として機能する空気調和装置10の運転モードとしては、全暖房運転または暖房主体運転が挙げられる。全暖房運転または暖房主体運転においても制御装置90は図5に示したフローチャートに従って処理を実行する。以下、上述とは異なる部分を中心に説明する。
【0123】
室外熱交換器の使用台数が1台のときは、第1四方弁22はポートbとポートcとが連通するように切り替えられ、第2四方弁23はポートfとポートgとが連通するように切り替えられる(第2室外膨張弁41は全閉)。これにより、第1室外熱交換器24のみが蒸発器として機能し、第2室外熱交換器25は使用停止の状態とされる。室外ファン26の回転数は、室外熱交換器における冷媒の蒸発温度が、制御下限と制御上限との間の温度となるように制御される。
【0124】
一方、室外熱交換器の使用台数が2台のときは、第1四方弁22はポートbとポートcとが連通するように切り替えられ、第2四方弁23はポートfとポートgとが連通するように切り替えられる。これにより、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25のいずれもが蒸発器として機能する。室外ファン26の回転数は、第1室外熱交換器24および第2室外熱交換器25における冷媒の凝縮温度が、制御下限と制御上限との間の温度となるように制御される。
【0125】
制御装置90は、例えば室内機が要求する空調能力の変動により、室外熱交換器の使用台数の変更が必要か否かを判定する(ステップ103)。制御装置90は、室外熱交換器の使用台数の変更が不要と判定した場合(ステップ103においてNo)、引き続き室外熱交換器の台数で運転を継続する。一方、制御装置90は、室外熱交換器の使用台数の変更が必要と判定した場合(ステップ103においてYes)、必要とされる空調能力により室外熱交換器の使用台数を増加させるかどうかを判定する(ステップ104)。
【0126】
室外ファン26の回転数は、蒸発温度が制御上限と制御下限(後述する図8(B)参照)との間に収まるように、室外熱交換器の使用台数毎に定められた制御範囲で制御される。例えば室外熱交換器の使用台数が1台のとき、第1室外熱交換器24における冷媒の蒸発温度が制御上限と制御下限との間に収まっている場合は、室外熱交換器の使用台数を増加させずに現状の使用台数(1台)で運転を継続する。これに対して、室外ファン26の回転数が上限値(680rpm)でも冷媒の蒸発温度の低下を制御下限以上に抑えられない場合は室外熱交換器の使用台数を増加させる(蒸発能力を向上させる)必要があると判定される(ステップ104においてYes)。
【0127】
一方、室外熱交換器の使用台数が2台のとき、第1、第2室外熱交換器24,25における冷媒の蒸発温度が制御上限と制御下限との間に収まっている場合は、室外熱交換器の使用台数を減少させずに現状の使用台数(2台)で運転を継続する。これに対して、室外ファン26の回転数が下限値(300rpm)でも冷媒の蒸発温度が制御上限以下に抑えられない場合は室外熱交換器の使用台数を減少させる(蒸発能力を低下させる)必要があると判定される(ステップ104においてNo)。
【0128】
室外熱交換器の使用台数を増加すると判定したとき(ステップ104においてYes)、制御装置90は、台数増加後の室外熱交換器における熱交換量が、台数増加前の室外熱交換器における熱交換量以下となるように室外ファン26の回転数を決定する(ステップ105a)。これにより、台数増加直後において室外熱交換器での冷媒の蒸発温度の急激な上昇が抑えられる。
【0129】
図8は、室外ファン26の回転数を図4に示す制御範囲とすることによって得られる空気調和装置10の一作用を説明する図であって、室外熱交換器の使用台数と、使用台数の増加前後における室外熱交換器の熱交換量(蒸発能力)および当該室外熱交換器における冷媒の蒸発温度との関係を示している。(A)は、室外熱交換器の使用台数とその熱交換量との関係の一例を示す図である。室外熱交換器の熱交換量は、室外ファン26の回転数が高くなるほど増加する。そして(B)は、室外熱交換器を流れる冷媒の蒸発温度の変化の一例を示す図であり、この例では時刻T2で室外熱交換器の使用台数が1台から2台に変更される。
【0130】
ステップ105aにおいて、制御装置90は、図8(A)に示すように、台数増加前の室外熱交換器における熱交換量の最大値(HE1max)を第1熱交換量とし、台数増加後の室外熱交換器における熱交換量の最小値(HE2min)を第2熱交換量としたとき、第1熱交換量が第2熱交換量以上(HE1max≧HE2min)となるように室外ファン26の回転数を決定する。図8(A)において、破線は、第1熱交換量が第2熱交換量と同一(HE1max=HE2min)である場合を示し、二点鎖線は、第1熱交換量が第2熱交換量よりも大きい(HE1max>HE2min)場合を示している。
【0131】
図8(B)に示すように、第1熱交換量が第2熱交換量と同一(HE1max=HE2min)である場合は、室外熱交換器の台数の増加前後で蒸発温度を変化させることなく一定に維持できる。また、第1熱交換量が第2熱交換量と同一(HE1max=HE2min)である場合は、室外熱交換器における冷媒の蒸発温度は一時的に低下した後、元の蒸発温度に収束する。このように、HE1max≧HE2minの関係を満たす熱交換量が得られるように室外ファン26の回転数を制御することで、蒸発能力の過多に起因する室外熱交換器における冷媒の蒸発温度の急激な上昇を阻止できる。
【0132】
室外熱交換器の使用台数とその熱交換量との関係については、図9に示すように、第1熱交換量(HE1max)と第2熱交換量(HE2min)との差分をC、第1熱交換量の大きさ(室外熱交換器の使用台数が1台のときの熱交換量の総変化量)をDとしたとき、第2熱交換量は、(D-C)と表される。そして、第1熱交換量で第2熱交換量を除した値を熱交換量変化率((D-C)/D)としたとき、制御装置90は、熱交換量変化率が所定の第1閾値以下となるように室外ファン26の回転数を決定する。
【0133】
第1閾値が1より大きい場合、第2熱交換量が第1熱交換量よりも大きくなり(HE1max<HE2min)、室外熱交換器の熱交換量が使用台数の増加直後に急激に上昇してしまい、必要とされる蒸発能力を大きく超えて蒸発温度の急激な上昇を招くおそれがある。このため第1閾値は1以下であることが好ましく、第1閾値は1であることが最も好ましい。
【0134】
また制御装置90は、熱交換量変化率((D-C)/D)が第1閾値よりも小さい値である所定の第2閾値以上となるように室外ファン26の回転数を決定する。第1閾値が1未満の場合、第2熱交換量は第1熱交換量よりも小さくなるため(図8(A))、台数増加直後の室外熱交換器における冷媒の蒸発温度は、台数増加前に比べて低下する(図6(B))。このときの蒸発温度の低下幅は、第1熱交換量と第2熱交換量との差分Cが大きくなるほど大きくなり、蒸発温度が所定の低圧保護制御開始温度に達すると、蒸発器として機能する室外熱交換器の低圧保護の観点から、空気調和装置10の運転が停止される。このため第2閾値は、蒸発温度が所定の低圧保護制御開始温度(例えば-30℃)以下に抑えられる任意の値に設定され、例えば0.5以上であることが好ましい。
【0135】
一方、本実施形態では、蒸発器として機能する室外熱交換器を増加させる場合、使用台数が1台のときの室外ファン26の回転数の上限値は680rpmであり、使用台数が2台のときの室外ファン26の回転数の下限値は340rpmである(図5参照)。したがって、使用台数が1台のときの熱交換量の台数・回転数積算値は680[台・rpm](1台×680rpm)であり、使用台数が2台のときの熱交換量の台数・回転数積算値は680[台・pm](2台×340rpm)であるため、室外熱交換器の使用台数を1台から2台に切り替える際は、第1熱交換量と第2熱交換量を同じ値(HE1max=HE2min、(D-C)/D=1)にすることができる。
【0136】
以上のようにステップ105aにおいて室外ファン26の回転数を決定した後、制御装置90は、第2四方弁23をポートfとポートgとが連通する状態を維持するとともに、第2室外膨張弁41の開度を閉止状態から徐々に大きくする(ステップ106)。さらに制御装置90は、室外熱交換器の使用台数が2台のときの回転数下限値(340rpm)に室外ファン26の回転数を調整する(ステップ107)。これにより、室外熱交換器の使用台数が2台に変更される。その後、蒸発温度が制御上限と制御下限の間の温度となるように室外ファン26の回転数を空調状態に応じて340rpm~最大値の間で制御する(ステップ108)。
【0137】
一方、2台の室外熱交換器を蒸発器として使用して全暖房運転または暖房主体運転を行っている場合において、例えば冷房運転を行う室内機の数が減少するなど、必要とされる空調能力により室外熱交換器の使用台数を減少する必要があると判定したとき(ステップ104においてNo)、制御装置90は、台数減少後の室外熱交換器における熱交換量が台数減少前の室外熱交換器における熱交換量以上となるように室外ファン26の回転数を決定する(ステップ105b)。
【0138】
ステップ105bにおいては、図9に示すように、台数減少後の室外熱交換器における熱交換量の最大値(HE1max)を第1熱交換量とし、台数減少前の室外熱交換器における熱交換量の最小値(HE2min)を第2熱交換量としたとき、制御装置90は、室外熱交換器の使用台数を減少すると判定したときは、第1熱交換量が第2熱交換量以上(HE1max≧HE2min)となるように室外ファン26の回転数を決定する。これにより、台数減少時において室外熱交換器における冷媒の蒸発温度を一定に維持することができる。
【0139】
室外熱交換器の使用台数を減少させるときは、その使用台数を増加させるときと同様に、第1熱交換量で第2熱交換量を除した値を熱交換量変化率((D-C)/D)としたとき、制御装置90は、この熱交換量変化率が第2の閾値以上、第1閾値以下(本実施形態では0.5以上、1以下)となるように室外ファン26の回転数を決定する。これにより、台数減少時において室外熱交換器における冷媒の蒸発温度の急激な低下を防ぎつつ、蒸発器として機能する室外熱交換器の低圧維持を図ることができる。
【0140】
本実施形態では、蒸発器として機能する室外熱交換器を減少させる場合、使用台数が2台のときの室外ファン26の回転数の下限値は300rpmであり、使用台数が1台のときの室外ファン26の回転数の上限値は600rpmである(図5参照)。したがって、使用台数が2台のときの熱交換量の台数・回転数積算値は600[台・rpm](2台×300rpm)であり、使用台数が1台のときの熱交換量の台数・回転数積算値も600[台・pm](1台×600rpm)であるため、室外熱交換器の使用台数を2台から1台に切り替える際は、第1熱交換量と第2熱交換量を同じ値(HE1max=HE2min、(D-C)/D=1)にすることができる。
【0141】
以上のようにステップ105bにおいて室外ファン26の回転数を決定した後、制御装置90は、第2四方弁23をポートeとポートfとが連通する状態を維持するとともに、第2室外膨張弁41を全閉にする(ステップ106)。さらに制御装置90は、室外熱交換器の使用台数が1台のときの回転数上限値(600rpm)に室外ファン26の回転数を調整する(ステップ107)。これにより、室外熱交換器の使用台数が1台に変更される。その後、制御装置90は、蒸発温度が制御上限と制御下限の間の温度となるように室外ファン26の回転数を空調状態に応じて300rpm~600rpmの間で制御する(ステップ108)。以上の処理を繰り返し実行することで、空気調和装置10は全暖房運転または暖房主体運転を継続する。
【0142】
以上のように本実施形態によれば、室外熱交換器の使用台数を増加するときは、台数増加後の室外熱交換器における熱交換量が台数増加前の室外熱交換器における熱交換量以下となるように室外ファンの回転数を決定し、室外熱交換器の使用台数を減少するときは、台数減少後の室外熱交換器における熱交換量が台数減少前の室外熱交換器における熱交換量以上となるように室外ファンの回転数を決定するようにしているため、室外熱交換器の使用台数の増減時における冷媒の凝縮温度あるいは蒸発温度の急激な変動を防ぐことができる。
【0143】
これにより、各室内機における暖房性能あるいは冷房性能の低下による居住者の快適性の劣化を防ぐことができる。また、室外熱交換器の使用台数の増減時における凝縮温度あるいは蒸発温度の急激な変動を防ぐことができるため、室外熱交換器の使用台数の頻繁な切り替え動作を阻止し、これにより流路切替弁の動作音の騒音化や劣化による信頼性の低下を防ぐことができる。
【0144】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0145】
例えば以上の実施形態では、1台の室外機2aを備えた空気調和装置10を例に挙げて説明したが、2台以上の室外機を備えた空気調和装置にも同様に適用可能である。
【0146】
図10は、2台の室外機2a,2bと3台の室内機8a~8cとを備えた空気調和装置20の冷媒回路図である。同図において室外機2a,2bはそれぞれ同一の構成を有し、各室外機2a,2bの室外機高圧ガス管33は、閉止弁44、高圧ガス分管30a,30bおよび分流ユニット70を介して高圧ガス管に接続される。また、各室外機2a,2bの室外機低圧ガス管34は、閉止弁45、低圧ガス分管31a,31bおよび分流ユニット71を介して低圧ガス管31に接続される。そして、各室外機2a,2bの室外機液管35は、閉止弁46、液分管32a,32bおよび分流ユニット72を介して液管32に接続される。
【0147】
図10に示す空気調和装置20は、各室外機2a,2bが2台の室外熱交換器を有するため、合計4台の室外熱交換器を備える。空気調和装置20は、室内機8a~8cからの要求能力の増減や外気温度の変化による空調負荷の増減などによって、室外熱交換器の使用台数が1台~4台の間で切り替えられる。この際、使用台数の増加時においては台数増加後の室外熱交換器における熱交換量が台数増加前の室外熱交換器における熱交換量以下となるように室外ファン26の回転数が決定され、使用台数の減少時においては台数減少後の室外熱交換器における熱交換量が台数減少前の室外熱交換器における熱交換量以上となるように室外ファンの回転数が決定される。これにより上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0148】
また以上の実施形態では、冷暖混在運転が可能な冷暖フリー方式の空気調和装置を例に挙げて説明したが、これに限られず、全ての室内機において冷房もしくは暖房のいずれか一方を行う運転方式(冷暖切替方式)を採用する空気調和装置にも、本発明は適用可能である。
【0149】
さらに以上の実施形態では、室外熱交換器の使用台数を増減する際に切り替えられる流路切替弁として四方弁(第1四方弁22、第2四方弁23)が採用されたが、当該流路切替弁として三方弁が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0150】
2a,2b…室外機
8a,8b,8c…室内機
10,20…空気調和装置
21…圧縮機
22…第1四方弁
23…第2四方弁
24…第1室外熱交換器
25…第2室外熱交換器
30…高圧ガス管
31…低圧ガス管
32…液管
81…室内熱交換器
90…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、複数の室外熱交換器と、前記複数の室外熱交換器ごとに設けられ各室外熱交換器の一方の冷媒出入口の接続を前記圧縮機の冷媒吐出口または冷媒吸入口へと切り替える複数の流路切替弁と、前記複数の室外熱交換器に送風する室外ファンとを有する室外機と、前記室外機に冷媒配管で接続される少なくとも1つの室内機と、前記室外ファンの回転数を制御する制御装置と、を備えた空気調和装置であって、
前記制御装置は、
必要とされる空調能力により前記室外熱交換器の使用台数を増加するかどうかを判定し、前記室外熱交換器の使用台数を増加すると判定したときは、台数増加後の室外熱交換器における熱交換量が台数増加前の室外熱交換器における熱交換量以下となるように前記室外ファンの回転数を決定し、台数増加後は前記決定した回転数に前記室外ファンの回転数を調整し、
必要とされる空調能力により前記室外熱交換器の使用台数を減少するかどうかを判定し、前記室外熱交換器の使用台数を減少すると判定したときは、台数減少後の室外熱交換器における熱交換量が台数減少前の室外熱交換器における熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定し、台数減少後は前記決定した回転数に前記室外ファンの回転数を調整する
空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和装置であって、
前記台数増加前の室外熱交換器における熱交換量の最大値を第1熱交換量とし、前記台数増加後の室外熱交換器における熱交換量の最小値を第2熱交換量としたとき、前記制御装置は、前記室外熱交換器の使用台数を増加すると判定したときは、前記第1熱交換量が前記第2熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定する
空気調和装置。
【請求項3】
請求項1に記載の空気調和装置であって、
前記台数減少後の室外熱交換器における熱交換量の最大値を第1熱交換量とし、前記台数減少前の室外熱交換器における熱交換量の最小値を第2熱交換量としたとき、前記制御装置は、前記室外熱交換器の使用台数を減少すると判定したときは、前記第1熱交換量が前記第2熱交換量以上となるように前記室外ファンの回転数を決定する
空気調和装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の空気調和装置であって、
前記第1熱交換量で前記第2熱交換量を除した値を熱交換量変化率としたとき、前記制御装置は、前記熱交換量変化率が所定の第1閾値以下となるように前記室外ファンの回転数を決定する
空気調和装置。
【請求項5】
請求項4に記載の空気調和装置であって、
前記制御装置は、前記熱交換量変化率が前記第1閾値よりも小さい値である所定の第2閾値以上となるように前記室外ファンの回転数を決定する
空気調和装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1つに記載の空気調和装置であって、
前記制御装置は、前記熱交換量として、前記各室外熱交換器の体積と、前記室外ファンによる送風量と、前記送風量に対する前記各室外熱交換器に流れる空気量の比率とに基づいて定められる評価指標を用いる
空気調和装置。