(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076530
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240530BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240530BHJP
H01L 23/34 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
H01L23/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188101
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 匠太
(72)【発明者】
【氏名】市倉 優太
(72)【発明者】
【氏名】伊東 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 尚威
(72)【発明者】
【氏名】田多 伸光
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 和靖
(72)【発明者】
【氏名】奥野 公晴
(72)【発明者】
【氏名】大部 利春
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA30
5F136DA27
5F136EA02
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】電流のばらつきを抑制できる半導体モジュールを提供することである。
【解決手段】実施形態の半導体モジュールは、第1金属部材と、第2金属部材と、半導体パッケージと、を持つ。第1金属部材及び第2金属部材は、互いに対向して配置される。半導体パッケージは、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に複数配置される。前記第1金属部材及び前記第2金属部材の少なくとも一方は、絶縁部を備える。絶縁部は、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に前記複数の半導体パッケージのうち電力端子の近辺の半導体パッケージの電流経路を迂回させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置される第1金属部材及び第2金属部材と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に配置される複数の半導体パッケージと、を備え、
前記第1金属部材及び前記第2金属部材の少なくとも一方は、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に前記複数の半導体パッケージのうち電力端子の近辺の半導体パッケージの電流経路を迂回させる絶縁部を備える、
半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1金属部材は、前記第2金属部材の上方に配置され、
前記第1金属部材と前記第2金属部材とを接続する絶縁ケースを更に備え、
前記絶縁ケースの上部は、前記第1金属部材と締結され、
前記複数の半導体パッケージは、前記第1金属部材と締結され、
前記電力端子及び前記絶縁部は、前記第1金属部材に設けられる、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記第1金属部材は、上面視で4辺を含む外形の板状であり、
前記絶縁部は、上面視で前記第1金属部材の4辺のうち3辺に沿う形状である、
請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記絶縁ケースの上部と前記第1金属部材とが締結される部分を絶縁締結部とし、
前記複数の半導体パッケージと前記第1金属部材とが締結される部分を半導体締結部とし、
前記絶縁締結部は、上面視で前記絶縁部よりも内側かつ前記半導体締結部よりも外側に配置される、
請求項2又は3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記半導体パッケージは、前記半導体パッケージの内部から外部に延びる第1導電部材を備え、
前記第1導電部材の延びた先は、前記第1金属部材の下面に締結される、
請求項2又は3に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記半導体パッケージは、前記半導体パッケージの内部から外部に延びる第2導電部材を備え、
前記第2導電部材の延びた先は、前記第2金属部材の上面に締結される、
請求項2又は3に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記複数の半導体パッケージは、上面視でマトリックス状に配置される、
請求項2又は3に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記半導体パッケージは、前記半導体パッケージの内部から外部に延びる第1導電部材を備え、
前記絶縁部は、上面視で互いに平行に配置される一対の第1切欠きと、前記一対の第1切欠きと交差する第2切欠きと、を備え、
上面視で前記第1切欠きの最小長さは、前記第1切欠きと前記第2切欠きとが交差する位置から最も近い前記第1導電部材の位置までの長さを超える、
請求項2又は3に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記絶縁部は、上面視で互いに平行に配置される一対の第1切欠きと、前記一対の第1切欠きと交差する第2切欠きと、を備え、
前記電力端子は、上面視で前記第2切欠きと平行に配置され、
上面視で前記電力端子の長さは、前記第2切欠きの長さよりも短く、
上面視で前記電力端子の長手方向中心位置は、前記第2切欠きの長手方向中心位置と同じである、
請求項2又は3に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記半導体パッケージは、
前記半導体パッケージの内部に配置される複数の半導体素子と、
前記半導体パッケージの内部から外部に延びた先が前記第1金属部材の下面に締結される第1導電部材と、
前記半導体パッケージの内部から外部に延びた先が前記第2金属部材の上面に締結される第2導電部材と、を備え、
前記半導体素子の上面は、前記第1導電部材に接続され、
前記半導体素子の下面は、前記第2導電部材に接続される、
請求項2又は3に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、耐圧数kVでMW級の電力変換器を構築するためには、半導体素子の電流容量を大きくすることが求められる。そのために、複数の半導体素子を並列実装した半導体モジュールが提案されている。しかし、半導体素子に流れる電流がばらつくと、電流が集中する半導体素子の発熱によって故障する可能性がある。そのため、電流のばらつきを抑えることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、電流のばらつきを抑制できる半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体モジュールは、第1金属部材と、第2金属部材と、半導体パッケージと、を持つ。第1金属部材及び第2金属部材は、互いに対向して配置される。半導体パッケージは、前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に複数配置される。前記第1金属部材及び前記第2金属部材の少なくとも一方は、絶縁部を備える。絶縁部は、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に前記複数の半導体パッケージのうち電力端子の近辺の半導体パッケージの電流経路を迂回させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1の矢視IIにおける実施形態の半導体モジュールの側面図。
【
図3】
図1の矢視IIIにおける実施形態の半導体モジュールの側面図。
【
図6】実施形態の第1切欠きの長さと電流最大値との関係を示す図。
【
図7】比較例(切欠きなしの場合)の平均電流以上の領域を示す図。
【
図8】実施形態(切欠きありの場合)の平均電流以上の領域を示す図。
【
図9】実施形態の第1切欠きの長さと平均電流以上の半導体素子の数との関係を示す図。
【
図10】短絡故障した上金属ブロックから周辺の上金属ブロックへの荷重の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の半導体モジュールを、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の半導体モジュール1の上面図である。
図2は、
図1の矢視IIにおける実施形態の半導体モジュール1の側面図である。
図3は、
図1の矢視IIIにおける実施形態の半導体モジュール1の側面図である。各図においては、半導体モジュール1の構成要素を透過して示す場合がある。
実施形態の半導体モジュール1は、天板2(第1金属部材の一例)と、底板3(第2金属部材の一例)と、絶縁ケース4と、半導体パッケージPと、を備える。
【0009】
天板2及び底板3は、互いに対向して配置される。例えば、天板2及び底板3は、電気伝導性及び熱伝導性に優れた材料で形成される。例えば、天板2及び底板3は、銅又はアルミニウムを主成分に含む。例えば、天板2及び底板3は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金などの金属で形成される。
【0010】
天板2及び底板3は、水平面に沿う板状に形成される。天板2は、底板3の上方に配置される。天板2は、水平面に沿って一様な厚さ(上下方向の長さ)を有する。例えば、天板2の厚さは、2mm以上12mm以下である。
【0011】
天板2は、底板3と絶縁ケース4を介して接続される。絶縁ケース4は、天板2の下面(裏面)と底板3の上面(表面)に対して垂直に固定される。例えば、絶縁ケース4は、接着剤又は締結部材により、天板2及び底板3と接続されている。例えば、絶縁ケース4は、樹脂などの電気絶縁性を有する絶縁材料で形成される。絶縁ケース4の上端は、天板2の下面に接続される。絶縁ケース4の下端は、底板3の上面に接続される。これにより、底板3、天板2及び絶縁ケース4で囲まれる空間は、密閉空間とされる。
【0012】
本実施形態では、絶縁ケース4の上部は、天板2と締結される。以下、絶縁ケース4の上部と天板2とを締結するねじ11を「絶縁天板締結ねじ11」ともいう。図中においては、絶縁天板締結ねじ11の上面視外形を円形で示す。
【0013】
本実施形態では、複数の半導体パッケージPは、天板2と締結される。以下、半導体パッケージPと天板2とを締結するねじ12を「半導体天板締結ねじ12」ともいう。図中においては、半導体天板締結ねじ12の上面視外形を矩形で示す。
【0014】
図の例では、半導体パッケージPの上部と天板2とを締結する例を示すが、これに限定されない。例えば、半導体パッケージPの側面から金属ブロック(第1導電部材の一例)が出る場合は、金属ブロックが出た先と天板2とを締結してもよい。例えば、半導体パッケージPと天板2とを締結する態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0015】
本実施形態の電力端子5及び切欠き30(絶縁部の一例)は、天板2に設けられる。切欠き30は、底板3には形成されていない。
【0016】
底板3は、絶縁ケース4よりも側方に突出した接続端子5(以下「下側接続端子6」ともいう。)を有する。
電力端子5は、天板2において絶縁ケース4よりも側方に突出した部分から上方に延びている。電力端子5は、天板2側の接続端子(上側接続端子)に相当する。実施形態では、下側接続端子6から上側接続端子(電力端子5)へ通電される。
【0017】
半導体パッケージPは、天板2と底板3との間に複数配置される。複数の半導体パッケージPは、半導体モジュール1内に並列実装される。複数の半導体パッケージPは、絶縁ケース4の内部空間(密閉空間)に配置される。複数の半導体パッケージPは、上面視でマトリックス状(行列状)に配置される。
【0018】
複数の半導体パッケージPのそれぞれは、上金属ブロック21(第1導電部材の一例)と、下金属ブロック22(第2導電部材の一例)と、半導体素子23と、封止部材24と、を備える。
【0019】
上金属ブロック21は、半導体素子23の上部電極として機能する直方体形状(ブロック形状)の部材である。上金属ブロック21の形状は、ブロック形状に限定されない。例えば、上金属ブロック21の形状は、クランク形状等の他の形状であってもよい。例えば、上金属ブロック21の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0020】
下金属ブロック22は、半導体素子23の下部電極として機能する直方体形状(ブロック形状)の部材である。例えば、上金属ブロック21及び下金属ブロック22は、銅などの電気抵抗が小さい金属材料で形成されている。上金属ブロック21は、天板2に接続される。下金属ブロック22は、底板3に接続される。半導体素子23は、上金属ブロック21と下金属ブロック22との間に配置される。半導体素子23は、上金属ブロック21及び下金属ブロック22に接続される。
【0021】
例えば、半導体素子23は、電力変換に用いられるパワー半導体素子である。例えば、半導体素子23は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の制御電極を有するスイッチング素子である。例えば、半導体素子23は、FRD(Fast Recovery Diode)等のダイオードであってもよい。
【0022】
半導体パッケージPは、複数の半導体素子23を備える。例えば、1つの半導体パッケージPに複数の半導体素子23が搭載された場合、複数の半導体素子23はすべて同一でなくてもよい。例えば、1つの半導体パッケージP内にIGBT等のスイッチング素子とFRD等のダイオードとが混在していてもよい。
【0023】
半導体素子23の上面は、上金属ブロック21に接続される。例えば、半導体素子23の他方の面(上面)には、エミッタ電極、ソース電極、カソード電極が形成される。これらの電極は、例えば、はんだ、導電性接着剤、銀ペースト等で上金属ブロック21に接続される。
【0024】
半導体素子23の下面は、下金属ブロック22に接続される。例えば、半導体素子23の一方の面(下面)には、コレクタ電極、ドレイン電極、アノード電極が形成される。これらの電極は、例えば、はんだ、導電性接着剤、銀ペースト等で下金属ブロック22に接続される。
【0025】
半導体素子23は、封止部材24に覆われる。例えば、封止部材24は、樹脂などの電気絶縁性を有する絶縁材料で形成される。例えば、封止部材24は、半導体素子23等を覆う直方体形状(6面体形状)に形成される。
【0026】
上金属ブロック21及び下金属ブロック22は、1個の半導体パッケージPに対してそれぞれ1つずつ設けられる。上金属ブロック21及び下金属ブロック22は、封止部材24の6面の内の一面から半導体パッケージPの外部に出る。封止部材24は、上金属ブロック21及び下金属ブロック22が半導体パッケージPの内部から外部に出る部分以外を覆っている。
【0027】
上金属ブロック21は、封止部材24の上面(天板2下面を向く一面)から半導体パッケージPの外部に出て天板2に接続される。本実施形態では、上金属ブロック21の延びた先は、天板2の下面に締結される。上金属ブロック21は、半導体天板締結ねじ12で天板2に接続される。上金属ブロック21は、半導体天板締結ねじ12によって天板2の向き(上方)へ荷重がかかった状態となる。この荷重は、半導体素子23に初期応力を発生させる。
【0028】
図の例では、上金属ブロック21が封止部材24の上面から半導体パッケージPの外部に出て天板2に接続される例を示すが、これに限定されない。例えば、半導体パッケージPの側面から金属ブロックが出る場合は、金属ブロックが出た先が天板2に接続されてもよい。例えば、半導体パッケージPの側面を外部出口としてもよい。例えば、半導体パッケージPと天板2とを接続する態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0029】
下金属ブロック22は、封止部材24の下面(底板2上面を向く一面)から半導体パッケージPの外部に出て底板3に接続される。本実施形態では、下金属ブロック22の延びた先は、底板3の上面に締結される。なお、下金属ブロック22は、例えば、はんだ、導電性接着剤、銀ペースト等で底板3の上面に接続されてもよい。
【0030】
半導体パッケージPは、上金属ブロック21及び下金属ブロック22によって天板2及び底板3と電気的に接続されている。複数の半導体パッケージPは、上金属ブロック21及び下金属ブロック22を介して、天板2と底板3との間に、電気的に並列接続されている。実施形態においては、下側接続端子6から通電される。電流は、半導体パッケージPの上下方向を流れる。
【0031】
通常動作(正常動作)時、各半導体パッケージPが有する下金属ブロック22に電流が分流する。図の例では、通常動作時において複数の半導体パッケージPのそれぞれに電流が分流する。その後、電流は天板2に沿って電力端子5に向けて流れる。
【0032】
例えば、通常動作時に半導体素子23が発生した熱は、半導体モジュール1の両側にある天板2及び底板3に熱伝導する。このため、半導体素子23を冷却することができる。例えば、半導体パッケージPの一方側のみを金属部材と接続した構成と比較して、冷却性能を向上させることができる。例えば、底板3は冷却器を兼ねていてもよい。
【0033】
次に、天板2側の構成について説明する。
天板2は、上面視で矩形(4辺を含む外形の一例)の板状である。電力端子5は、上面視で天板2の4辺のうち1辺に設けられる。電力端子5は、上面視で天板2の2つの短辺のうち1つの短辺に設けられる。
【0034】
図の例では、天板2が上面視で長方形である例を示すが、これに限定されない。例えば、天板2は、上面視で正方形であってもよい。例えば、天板2の上面視形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0035】
図の例では、電力端子5が上面視で天板2の1つの短辺に設けられる例を示すが、これに限らない。例えば、電力端子5は、上面視で天板2の1つの長辺に設けられてもよい。例えば、天板2が上面視で正方形の場合は、電力端子5は上面視で天板2の1つの辺に設けられてもよい。例えば、電力端子5の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0036】
例えば、電力端子5は、電気伝導性及び熱伝導性に優れた材料で形成される。例えば、電力端子5は、銅又はアルミニウムを主成分に含む。例えば、電力端子5は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金などの金属で形成される。例えば、電力端子5は、外部導体との締結部分の数(外部導体の数)に対応する数(
図3の例では2つ)の締結孔を有してもよい。
【0037】
天板2は、絶縁部として機能する切欠き30を備える。切欠き30は、天板2の上面から下面まで貫通する孔である。切欠き30は、通電時(底板3から天板2へ通電した場合)に複数の半導体パッケージPのうち電力端子5の近辺の半導体パッケージPの電流経路を迂回させる。
【0038】
電力端子5の近辺の半導体パッケージPには、複数の半導体パッケージPのうち電力端子5に最も近い半導体パッケージ(以下「最近辺半導体パッケージ」ともいう。)と、最近辺半導体パッケージの次に電力端子5に近い半導体パッケージと、が含まれる。切欠き30は、通電時に複数の半導体パッケージPのうち少なくとも最近辺半導体パッケージの電流経路を迂回させればよい。
【0039】
切欠き30は、上面視で天板2の4辺のうち3辺に沿う形状である。切欠き30は、上面視で天板2の2つの長辺と1つの短辺とに沿う形状である。切欠き30は、2本の第1切欠き31と、1本の第2切欠き32との2種類により構成される。切欠き30は、上面視で互いに平行に配置される一対の第1切欠き31と、一対の第1切欠き31と交差する第2切欠き32と、を備える。切欠き30は、上面視で第1切欠き31及び第2切欠き32を合わせてコの字に形成される。
【0040】
第1切欠き31は、上面視で電力端子5と垂直となる天板2の辺(長辺)に対して平行である。第2切欠き32は、上面視で電力端子5と平行となる天板2の辺(短辺)に対して平行である。2本の第1切欠き31は、上面視で互いに同じ形状である。2本の第1切欠き31は、上面視で電力端子5と平行となる天板の辺(短辺)と直交する中心線を対称軸として線対称である。
【0041】
第1切欠き31は、上面視で第1切欠き31と第2切欠き32とが交差する位置C(以下「切欠き交点C」ともいう。)から電力端子5とは反対方向(電力端子5から離れる方向)に直線状に延びる。第1切欠き31は、切欠き交点Cから電力端子5とは反対方向に長さを変えることが可能である。天板2において電力端子5が設けられる辺の対辺側には、切欠き30は形成されない。
【0042】
上面視で天板2の4辺の内側には、切欠き30、絶縁天板締結ねじ11及び半導体天板締結ねじ12が存在する。以下、絶縁ケース4の上部と天板2とが締結される部分を絶縁締結部とする。絶縁締結部は、上面視で絶縁天板締結ねじ11が存在する部分に相当する。以下、複数の半導体パッケージPと天板2とが締結される部分を半導体締結部とする。半導体締結部は、上面視で半導体天板締結ねじ12が存在する部分に相当する。絶縁締結部(絶縁天板締結ねじ11)は、上面視で切欠き30よりも内側かつ半導体締結部(半導体天板締結ねじ12)よりも外側に配置される。
【0043】
本実施形態の電力端子5は、上面視で第2切欠き32と平行に配置される。上面視で電力端子5の長さは、第2切欠き32の長さよりも短い。上面視で電力端子5の長手方向中心位置は、第2切欠き32の長手方向中心位置と同じである。
【0044】
図4は、実施形態の第1切欠き31の最小長さLminの説明図である。
例えば、電流のバランスをとる効果を得るためには、第1切欠き31は、上面視で電力端子5と垂直かつ電力端子5から離れる方向にできるだけ長く延ばすことが好ましい。本実施形態では、上面視で第1切欠き31の最小長さLminは、切欠き交点Cから最も近い上金属ブロック21の位置までの長さを超える。
図4の例では、第1切欠き31の最小長さLminは、切欠き交点Cから最も近い上金属ブロック21が締結される半導体天板締結ねじ12までの長さを超える。
【0045】
図5は、実施形態の切欠きの効果の説明図である。
図中の矢印は、上金属ブロック21(上金属ブロック21が締結される半導体天板締結ねじ12に相当)から電力端子5までの電流経路を示す。各矢印は、切欠きなし電流経路、切欠きあり電流経路(電力端子近辺)、切欠きあり電流経路(電力端子遠方)をそれぞれ示している。破線矢印は、切欠き30が存在しない場合の電力端子5の近辺の電流経路である。実線矢印は、切欠き30が存在する場合の電力端子5の近辺の電流経路である。1点鎖線矢印は、切欠き30が存在する場合の電力端子5の遠方の電流経路である。
【0046】
切欠き30が存在することで、電流は破線矢印に沿って流れない。破線矢印の経路を絶たれた電流は、第1切欠き31の存在により遠回りして実線矢印に沿って流れる。実線矢印に沿う電流の流れは、1点鎖線矢印に沿う電流の流れに近くなる。これにより、電流のアンバランスを抑えることができる。
【0047】
上記の理由は、以下の通りである。切欠き30の存在によって、実線矢印の電流経路のインダクタンスが破線矢印の電流経路のインダクタンスよりも大きくなることで、1点鎖線矢印の電流経路のインダクタンスに近づく。第1切欠き31を更に長くすることで、実線矢印の電流経路のインダクタンスは更に大きくなり、1点鎖線矢印の電流経路のインダクタンスに更に近づく。実線矢印の電流経路と1点鎖線矢印の電流経路とでは、実質的にインダクタンスの大きさが揃い、電流のバランスも揃うようになるためである。
【0048】
図6は、実施形態の第1切欠き31の長さと電流最大値との関係を示す図である。
図6の縦軸は、定格電流を流したときに全ての上金属ブロック21に流れる電流の中の最大値(電流最大値)に相当する。
図6の横軸は、天板2の1辺(天板2の1つの長辺長さに相当)に対する第1切欠き31の長さの割合に相当する。図中においては、複数の切欠き設計値を線形で示した破線を示す。
【0049】
第1切欠き31の長さと電流最大値との関係は、負の相関となる。第1切欠き31の長さを長くするほどインダクタンスが増加することで、電流最大値を抑制することができる。電力端子5近辺のインダクタンスが増加することで、電力端子遠方のインダクタンスに近づく。これにより、全ての位置のインダクタンスが均等化する(実質的に揃う)ようになる。インダクタンスが均等化すると、電力端子5近辺の電流は抑制される(電流が小さくなる)。すると、電流があまり流れていなかった位置の上金属ブロック21にも電流が流れ始める。これにより、電流のバランスがよくなる。
【0050】
図7は、比較例(切欠きなしの場合)の平均電流以上の領域を示す図である。
図8は、実施形態(切欠きありの場合)の平均電流以上の領域を示す図である。図中のハッチング箇所は、平均電流以上の領域を示す。図中においては、天板2上面及び半導体天板締結ねじ12を示し、切欠き等の図示を省略する。
【0051】
切欠きなしの場合は、電力端子5近辺の上金属ブロック21(上金属ブロック21が締結される半導体天板締結ねじ12に相当)の位置に平均電流以上の電流が集中する。切欠きありの場合は、電力端子5近辺の上金属ブロック21以外の位置でも平均電流以上の電流が流れる。この理由は、電流の大きさ1,2番手のように大きい電流の一部が、電流の大きさ3番手以降の電流に順次加算されることで、平均電流を超える位置の数が増えたためである。電流の大きさ3番手以降の電流は、電流の大きさ1,2番手に比べて小さい電流の一例である。
【0052】
切欠きありの場合は、平均電流を超える位置の数が増加しても、電流の大きさ1,2番手の電流値が小さくなることで、電流の集中を解消することができる。切欠きありの場合は、電流集中が解消されることで、半導体素子23の発熱による短絡故障のリスクを抑えることができる。
【0053】
図9は、実施形態の第1切欠き31の長さと平均電流以上の半導体素子23の数との関係を示す図である。
図9の縦軸は、全半導体素子数に対する平均電流以上の半導体素子数の割合に相当する。
図9の横軸は、天板2の1辺(天板2の1つの長辺長さに相当)に対する第1切欠き31の長さの割合に相当する。図中においては、複数の切欠き設計値を線形で示した破線を示す。
【0054】
第1切欠き31の長さと平均電流以上の半導体素子数との関係は、正の相関となる。第1切欠き31の長さを長くするほど平均電流以上の半導体素子数が増加する。平均電流以上の半導体素子数が増加することで、上述の通り電流集中が解消されるため、半導体素子23の発熱による短絡故障のリスクが低減する。
【0055】
本実施形態の半導体モジュール1は、上金属ブロック21(導体に相当)の同一平面上に磁束を働かせる構造を有しない。そのため、上金属ブロック21から電力端子5までの間は、第1切欠き31の長さでインダクタンスを調整することができる。したがって、切欠き30の作用により、上金属ブロック21を複雑化することなく、電流のバランスをよくすることができる。
【0056】
以上に説明されたように、本実施形態の半導体モジュール1は、天板2と、底板3と、半導体パッケージPと、を持つ。天板2及び底板3は、互いに対向して配置される。半導体パッケージPは、天板2と底板3との間に複数配置される。天板2は、切欠き30を備える。切欠き30は、底板3から天板2へ通電した場合に複数の半導体パッケージPのうち電力端子5の近辺の半導体パッケージPの電流経路を迂回させる。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
底板3から天板2へ通電した場合、切欠き30により、複数の半導体パッケージPのうち電力端子5の近辺の半導体パッケージPの電流経路が迂回される。これにより、複数の半導体パッケージPのうち電力端子5の近辺の半導体パッケージPの電流経路は、他の半導体パッケージPの電流経路に近くなる。したがって、電流のばらつきを抑制できる半導体モジュール1を提供することができる。
【0057】
例えば、大容量用途向けの電力変換器に適用する半導体モジュールでは、電流容量を得るために複数の半導体素子が同一平面上に配置される。このため、半導体素子に流れる電流にばらつき、対策を行わないと電流が集中する半導体素子の発熱によって故障してしまう問題がある。一般的に電流集中の問題は、半導体素子とコンデンサとを接続するバスバーの工夫によって解決される。しかし、バスバーの工夫は、インダクタンスを小さくすること及び揃えること等である。この場合、バスバーが複雑化してしまい、コストが高くなる。一方、コストを抑えると、バスバー形状の工夫が難しくなり、電流集中の問題解決が困難となる。つまり、コストと性能とはトレードオフの関係にあるため、トレードオフの解消が求められる。例えば、天板に複数の電流経路となる導体(金属ブロック)があると、電流のばらつきを抑えることが困難である。
【0058】
これに対し本実施形態では、電流のばらつきを抑えるため、天板2に切欠き30を設け、インダクタンスを揃えている。切欠き30は、電流が集中していた位置のインダクタンスを大きくする効果がある。インダクタンスを大きくすることで、電流のばらつきを抑えることができる。切欠き30は、天板2を加工した部分であるため、工程数及び材料を少なくし、コストを抑えることができる。つまり、本実施形態によれば、切欠き30により、高性能化及び低コスト化を両立することができる。したがって、コストと性能とのトレードオフを解消することができる。
【0059】
図10は、短絡故障した上金属ブロック21Aから周辺の上金属ブロック21Bへの荷重の説明図である。図中のハッチング箇所は、短絡故障した上金属ブロック21Aの周辺領域を示す。
例えば、何らかの要因により半導体素子23に短絡故障が発生した場合、半導体素子23が発熱(例えばジュール発熱)することがある。すると、短絡故障が発生した半導体素子23(以下「故障チップ」ともいう。)の構成(例えば半導体材料のシリコン)が溶融し、気化することがある。すると、半導体パッケージP内の圧力上昇により、上金属ブロック21が天板側に押し上げられる。天板2は、圧力上昇による上金属ブロック21の押し上げにより、上方向へ変形する。天板2の変形により、故障チップと直接つながる上金属ブロック21A(以下「起点ブロック21A」ともいう。)の周囲の上金属ブロック21B(以下「周囲ブロック21B」ともいう。)に荷重を伝える。これにより、故障チップ以外の半導体素子23(以下「健全チップ」ともいう。)の短絡故障が誘発される。
【0060】
例えば、周囲ブロック21Bが引き上げられることで、周囲ブロック21Bと直接つながる半導体素子23に追加応力が発生する。初期応力と追加応力とにより、半導体素子23にクラックが発生する。すると、半導体素子23のコレクタとエミッタとの電極間が短絡する(短絡故障)。以下、初期故障した半導体素子23以外の半導体素子23が、追加応力等の発生によって短絡故障することを「伴連れ短絡故障」ともいう。
【0061】
例えば、隣り合う2つの上金属ブロック21の間に切欠き30を設ける場合がある。しかし、起点ブロック21Aから周囲ブロック21Bに伝わる荷重が小さくなり、伴連れ短絡故障を起こしにくい。例えば、短絡故障した周囲ブロック21Bは、荷重を受けて天板2を押し上げ、天板2から飛び出す可能性がある。この場合、短絡維持ができなくなるため、天板2から飛び出さないように抑えつける必要がある。例えば、上面視で絶縁天板締結ねじ11が切欠き30の外側に配置されると、荷重を受けた上金属ブロック21を抑えることが困難になる。
【0062】
これに対し本実施形態では、複数の上金属ブロック21の全部を囲うように切欠き30を設けている。これにより、一方の上金属ブロック21A側(半導体素子23)に短絡故障が発生した場合に、他方の上金属ブロック21B側(半導体素子23)に伝わる荷重を大きくすることができる。したがって、伴連れ短絡故障を起こし易くすることができる。
【0063】
さらに本実施形態では、複数の上金属ブロック21の全部の外側と切欠き30との間に絶縁天板締結ねじ11を設けている。これにより、荷重を受けた上金属ブロック21を天板2に抑え易くすることができる。したがって、故障チップが天板2から飛び出す可能性を低くすることができる。
【0064】
このように本実施形態では、故障時の短絡維持も可能となる。故障時の短絡維持は、大容量用途向けの電力変換器に適用する半導体モジュール1において必要な機能であるため、好適に適用することができる。
【0065】
例えば、上面視で電力端子5の長手方向中心位置が、天板2の一辺の端部寄りに配置される場合、電力端子5から近い一端部寄り側の上金属ブロック21に電流が集中する。すると、電力端子5から遠い他端部寄り側の上金属ブロック21には電流が流れにくくなる。このように電力端子5及び切欠き30の位置関係によっては、電流のばらつきを抑制することが困難となる。
これに対し本実施形態では、上面視で電力端子5の長手方向中心位置は、第2切欠き32の長手方向中心位置と同じである。したがって、電流のばらつきを抑制する上で好適である。
【0066】
本実施形態の天板2は、底板3の上方に配置される。半導体モジュール1は、天板2と底板3とを接続する絶縁ケース4を更に備える。絶縁ケース4の上部は、天板2と締結される。複数の半導体パッケージPは、天板2と締結される。電力端子5及び切欠き30は、天板2に設けられる。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
複数の半導体パッケージPは、天板2との締結により、天板2の向きに荷重がかかった状態となる。この荷重は、半導体素子23に初期応力を発生させる。したがって、締結による簡単な構造で、半導体素子23に初期応力を発生させることができる。
加えて、絶縁ケース4の上端を高くすることで、組み立て時に複数の半導体パッケージPに予荷重をかけてあそびを無くすことができる。
【0067】
本実施形態の天板2は、上面視で4辺を含む外形の板状である。切欠き30は、上面視で天板2の4辺のうち3辺に沿う形状である。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
切欠き30は、天板2の3辺に沿う形状に天板2を加工するだけで済む。そのため、工程数及び材料を少なくし、コストを抑えることができる。つまり、切欠き30により、高性能化及び低コスト化を両立することができる。したがって、コストと性能とのトレードオフを解消することができる。
【0068】
本実施形態の絶縁ケース4の上部と天板2とが締結される部分を絶縁締結部とする。複数の半導体パッケージPと天板2とが締結される部分を半導体締結部とする。絶縁締結部は、上面視で切欠き30よりも内側かつ半導体締結部よりも外側に配置される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
絶縁締結部が上面視で切欠き30よりも外側に配置される場合と比較して、荷重を受けた半導体素子23を抑えやすい。したがって、故障チップが天板2から飛び出す可能性を低くすることができる。
【0069】
本実施形態の半導体パッケージPは、半導体パッケージPの内部から外部に延びる上金属ブロック21を備える。上金属ブロック21の延びた先は、天板2の下面に締結される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
半導体パッケージPの内部は、上金属ブロック21の延びた先と天板2の下面との締結により、天板2の向きに荷重がかかった状態となる。この荷重は、半導体素子23に初期応力を発生させる。したがって、上金属ブロック21の延びた先の締結による簡単な構造で、半導体素子23に初期応力を発生させることができる。
【0070】
本実施形態の半導体パッケージPは、半導体パッケージPの内部から外部に延びる下金属ブロック22を備える。下金属ブロック22の延びた先は、底板3の上面に締結される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
半導体パッケージPの内部は、下金属ブロック22の延びた先と底板3の上面との締結により、底板3の向きに荷重がかかった状態となる。この荷重は、半導体素子23に初期応力を発生させる。したがって、下金属ブロック22の延びた先の締結による簡単な構造で、半導体素子23に初期応力を発生させることができる。
【0071】
本実施形態の複数の半導体パッケージPは、上面視でマトリックス状に配置される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
大容量用途向けの電力変換器に適用する半導体モジュールにおいて、電流容量を得るために好適な配置とすることができる。
【0072】
本実施形態の切欠き30は、上面視で互いに平行に配置される一対の第1切欠き31と、一対の第1切欠き31と交差する第2切欠き32と、を備える。上面視で第1切欠き31の最小長さLminは、切欠き交点Cから最も近い上金属ブロック21の位置までの長さを超える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
上面視で第1切欠き31の最小長さLminが、切欠き交点Cから最も近い上金属ブロック21の位置までの長さ以下の場合と比較して、電流のバランスをとる効果が得られやすい。したがって、電流のばらつきを抑制する上で好適である。
【0073】
本実施形態の電力端子5は、上面視で第2切欠き32と平行に配置される。上面視で電力端子5の長さは、第2切欠き32の長さよりも短い。上面視で電力端子5の長手方向中心位置は、第2切欠き32の長手方向中心位置と同じである。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
上面視で電力端子5の長手方向中心位置が、第2切欠き32の長手方向中心位置と異なる場合と比較して、切欠き30によるインダクタンスを揃える効果を大きくすることができる。すなわち、半導体素子23から電力端子5に流れる電流のバランスをとる効果が得られやすい。したがって、電流のばらつきを抑制する上で好適である。
【0074】
本実施形態の半導体パッケージPは、半導体パッケージPの内部に配置される複数の半導体素子23と、半導体パッケージPの内部から外部に延びた先が天板2の下面に締結される上金属ブロック21と、半導体パッケージPの内部から外部に延びた先が底板3の上面に締結される下金属ブロック22と、を備える。半導体素子23の上面は、上金属ブロック21に接続される。半導体素子23の下面は、下金属ブロック22に接続される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
大容量用途向けの電力変換器に適用する半導体モジュールにおいて、電流容量を得るために好適な構成とすることができる。
【0075】
次に、実施形態の変形例について説明する。
実施形態の電力端子は、天板の一辺の中央に配置される。これに対して、電力端子は、天板の一辺の中央に配置されなくてもよい。
図11は、第1変形例の半導体モジュールの上面図である。例えば、
図11に示すように、電力端子5は、天板2の一辺の一端寄りに配置されてもよい。この場合、寄せた側と反対側の第1切欠き31Bは、寄せた側の第1切欠き31Aよりも短くするとよい。これにより、
図1と同様の効果を得ることができる。
図12は、第2変形例の半導体モジュールの上面図である。例えば、
図12に示すように、電力端子5は、天板の一辺の他端寄り(
図11とは反対寄り)に配置されてもよい。この場合、寄せた側と反対側の第1切欠き31Bは、寄せた側の第1切欠き31Aよりも短くするとよい。これにより、
図1と同様の効果を得ることができる。
例えば、電力端子の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0076】
実施形態の天板(第1金属部材)は、底板(第2金属部材)の上方に配置される。これに対して、天板(第1金属部材)は、底板(第2金属部材)の上方に配置されなくてもよい。例えば、第1金属部材は、第2金属部材の下方又は左右側方に配置されてもよい。例えば、各金属部材は、板状でなく、ブロック形状であってもよい。例えば、各金属部材の配置及び形状等の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0077】
実施形態の電力端子及び絶縁部は、第1金属部材に設けられる。これに対して、電力端子及び絶縁部は、第1金属部材に設けられなくてもよい。例えば、電力端子及び絶縁部は、第2金属部材に設けられてもよい。例えば、電力端子は、第1金属部材及び第2金属部材の少なくとも一方に設けられてもよい。例えば、絶縁部は、第1金属部材及び第2金属部材の少なくとも一方に設けられてもよい。例えば、電力端子及び絶縁部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0078】
実施形態の第1金属部材は、上面視で矩形の板状である。これに対して、第1金属部材は、他の形状(例えば、矩形以外の多角形)であってもよい。例えば、第1金属部材は、上面視で円形であってもよい。例えば、第1金属部材の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0079】
実施形態の絶縁部は、上面視で第1金属部材の4辺のうち3辺に沿う形状(コの字形状)である。これに対して、絶縁部は、他の形状(例えば、J字形状、L字形状、U字形状)であってもよい。例えば、絶縁部は、切欠き(空間)でなくてもよい。例えば、絶縁部は、切欠き内部の空間に絶縁体が設けられてもよい。例えば、絶縁部は、絶縁部材で構成されてもよい。例えば、絶縁部の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0080】
実施形態の絶縁締結部は、上面視で絶縁部よりも内側かつ半導体締結部よりも外側に配置される。これに対して、絶縁締結部は、上面視で絶縁部よりも内側かつ半導体締結部よりも外側に配置されなくてもよい。例えば、絶縁締結部は、上面視で絶縁部よりも外側に配置されてもよい。例えば、絶縁締結部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0081】
実施形態の第1導電部材の延びた先は、第1金属部材の下面に締結される。これに対して、第1導電部材の延びた先は、第1金属部材の下面に締結されなくてもよい。例えば、第1導電部材の延びた先は、第1金属部材の下面にはんだ等で接続されていてもよい。例えば、第1導電部材の延びた先と第1金属部材の下面との接続態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0082】
実施形態の第2導電部材の延びた先は、第2金属部材の上面に締結される。これに対して、第2導電部材の延びた先は、第2金属部材の上面に締結されなくてもよい。例えば、第2導電部材の延びた先は、第2金属部材の上面にはんだ等で接続されてもよい。例えば、第2導電部材の延びた先と第2金属部材の上面との接続態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0083】
実施形態の複数の半導体パッケージは、上面視でマトリックス状に配置される。これに対して、複数の半導体パッケージは、上面視でマトリックス状に配置されなくてもよい。例えば、複数の半導体パッケージは、上面視で一列(一方向のみ)に並んで配置されてもよい。例えば、複数の半導体パッケージの配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0084】
実施形態の上面視で第1切欠きの最小長さは、切欠き交点から最も近い第1導電部材の位置までの長さを超える。これに対して、上面視で第1切欠きの最小長さは、切欠き交点から最も近い第1導電部材の位置までの長さ以下であってもよい。例えば、上面視で第1切欠きの最小長さと、切欠き交点から最も近い第1導電部材の位置までの長さとの関係は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0085】
実施形態の電力端子は、上面視で第2切欠きと平行に配置される。これに対して、電力端子は、上面視で第2切欠きと平行に配置されなくてもよい。例えば、電力端子は、上面視で第2切欠きに対して斜めに配置されてもよい。例えば、電力端子と第2切欠きとの配置関係は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0086】
実施形態の上面視で電力端子の長さは、第2切欠きの長さよりも短い。これに対して、上面視で電力端子の長さは、第2切欠きの長さ以上であってもよい。例えば、上面視で電力端子の長さと、第2切欠きの長さとの関係は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0087】
実施形態の上面視で電力端子の長手方向中心位置は、第2切欠きの長手方向中心位置と同じである。これに対して、上面視で電力端子の長手方向中心位置は、第2切欠きの長手方向中心位置と異なってもよい。例えば、上面視で電力端子の長手方向中心位置は、第2切欠きの長手方向中心位置との関係は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0088】
実施形態の半導体パッケージは、半導体パッケージの内部に複数の半導体素子を備える。これに対して、半導体パッケージは、半導体パッケージの内部に複数の半導体素子を備えなくてもよい。例えば、半導体パッケージは、半導体パッケージの内部に1つの半導体素子を備えてもよい。例えば、半導体パッケージの内部に配置される半導体素子の数(半導体パッケージの構成態様)は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0089】
実施形態の半導体モジュールは、底板(第2金属部材)から天板(第1金属部材)へ通電される。これに対して、底板(第2金属部材)から天板(第1金属部材)へ通電されなくてもよい。例えば、天板(第1金属部材)から底板(第2金属部材)へ通電されてもよい。例えば、半導体モジュールにおける通電方向は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0090】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、絶縁部は、第1金属部材及び第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に複数の半導体パッケージのうち電力端子の近辺の半導体パッケージの電流経路を迂回させる。これにより、電流のばらつきを抑制できる半導体モジュールを提供することができる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0092】
(付記1)
互いに対向して配置される第1金属部材及び第2金属部材と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材との間に配置される複数の半導体パッケージと、を備え、
前記第1金属部材及び前記第2金属部材の少なくとも一方は、前記第1金属部材及び前記第2金属部材の一方から他方へ通電した場合に前記複数の半導体パッケージのうち電力端子の近辺の半導体パッケージの電流経路を迂回させる絶縁部を備える、
半導体モジュール。
【0093】
(付記2)
前記第1金属部材は、前記第2金属部材の上方に配置され、
前記第1金属部材と前記第2金属部材とを接続する絶縁ケースを更に備え、
前記絶縁ケースの上部は、前記第1金属部材と締結され、
前記複数の半導体パッケージは、前記第1金属部材と締結され、
前記電力端子及び前記絶縁部は、前記第1金属部材に設けられる、
付記1に記載の半導体モジュール。
【0094】
(付記3)
前記第1金属部材は、上面視で4辺を含む外形の板状であり、
前記絶縁部は、上面視で前記第1金属部材の4辺のうち3辺に沿う形状である、
付記2に記載の半導体モジュール。
【0095】
(付記4)
前記絶縁ケースの上部と前記第1金属部材とが締結される部分を絶縁締結部とし、
前記複数の半導体パッケージと前記第1金属部材とが締結される部分を半導体締結部とし、
前記絶縁締結部は、上面視で前記絶縁部よりも内側かつ前記半導体締結部よりも外側に配置される、
付記2又は3に記載の半導体モジュール。
【0096】
(付記5)
前記半導体パッケージは、前記半導体パッケージの内部から外部に延びる第1導電部材を備え、
前記第1導電部材の延びた先は、前記第1金属部材の下面に締結される、
付記2から4の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0097】
(付記6)
前記半導体パッケージは、前記半導体パッケージの内部から外部に延びる第2導電部材を備え、
前記第2導電部材の延びた先は、前記第2金属部材の上面に締結される、
付記2から5の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0098】
(付記7)
前記複数の半導体パッケージは、上面視でマトリックス状に配置される、
付記2から6の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0099】
(付記8)
前記半導体パッケージは、前記半導体パッケージの内部から外部に延びる第1導電部材を備え、
前記絶縁部は、上面視で互いに平行に配置される一対の第1切欠きと、前記一対の第1切欠きと交差する第2切欠きと、を備え、
上面視で前記第1切欠きの最小長さは、前記第1切欠きと前記第2切欠きとが交差する位置から最も近い前記第1導電部材の位置までの長さを超える、
付記2から7の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0100】
(付記9)
前記絶縁部は、上面視で互いに平行に配置される一対の第1切欠きと、前記一対の第1切欠きと交差する第2切欠きと、を備え、
前記電力端子は、上面視で前記第2切欠きと平行に配置され、
上面視で前記電力端子の長さは、前記第2切欠きの長さよりも短く、
上面視で前記電力端子の長手方向中心位置は、前記第2切欠きの長手方向中心位置と同じである、
付記2から8の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【0101】
(付記10)
前記半導体パッケージは、
前記半導体パッケージの内部に配置される複数の半導体素子と、
前記半導体パッケージの内部から外部に延びた先が前記第1金属部材の下面に締結される第1導電部材と、
前記半導体パッケージの内部から外部に延びた先が前記第2金属部材の上面に締結される第2導電部材と、を備え、
前記半導体素子の上面は、前記第1導電部材に接続され、
前記半導体素子の下面は、前記第2導電部材に接続される、
付記2から9の何れか一つに記載の半導体モジュール。
【符号の説明】
【0102】
1…半導体モジュール、2…天板(第1金属部材)、3…底板(第2金属部材)、4…絶縁ケース、5…電力端子、11…絶縁天板締結ねじ(絶縁締結部)、12…半導体天板締結ねじ(半導体締結部)、21…上金属ブロック(第1導電部材)、22…下金属ブロック(第2導電部材)、23…半導体素子、30…切欠き(絶縁部)、31…第1切欠き、32…第2切欠き、C…切欠き交点(第1切欠きと第2切欠きとが交差する位置)、P…半導体パッケージ、Lmin…第1切欠きの最小長さ