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  • 特開-正極前駆体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076543
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】正極前駆体
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/30 20130101AFI20240530BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20240530BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20240530BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20240530BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20240530BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20240530BHJP
   H01G 11/32 20130101ALI20240530BHJP
【FI】
H01G11/30
H01G11/06
H01G11/42
H01G11/50
H01G11/24
H01G11/26
H01G11/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188125
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】楠坂 啓太
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AB02
5E078AB06
5E078BA13
5E078BA26
5E078BA32
5E078BA52
5E078BA62
5E078BA65
5E078BA66
5E078BA67
5E078BA70
5E078BA73
(57)【要約】
【課題】負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高エネルギー密度かつ高入出力な非水系ハイブリッドキャパシタを製造することができる正極前駆体を提供すること。
【解決手段】正極集電体と、上記正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有する正極前駆体であって、上記正極活物質層は、正極活物質及び正極活物質以外のアルカリ金属化合物を含有し、上記正極活物質は炭素材料であり、上記炭素材料は活性炭を含み、正極前駆体表面のSEMにより得られる観察倍率10000倍の画像において、アルカリ金属化合物の同一粒子内に明部とシワ状暗部が海島状態で存在し、上記シワ状暗部の合計面積率をS%とするとき、0.3≦S≦15.0である、正極前駆体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有する正極前駆体であって、前記正極活物質層は、正極活物質及び正極活物質以外のアルカリ金属化合物を含有し、前記正極活物質は炭素材料であり、前記炭素材料は活性炭を含み、
前記正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる観察倍率10000倍の画像において、前記アルカリ金属化合物の同一粒子内に明部とシワ状暗部が海島状態で存在し、前記シワ状暗部の合計面積率をS%とするとき、0.3≦S≦15.0である、正極前駆体。
【請求項2】
前記正極前駆体の正極活物質層中における前記アルカリ金属化合物の重量比をX質量%とするとき、5≦X≦50である、請求項1に記載の正極前駆体。
【請求項3】
前記シワ状暗部の1個当たりの面積が2000nm以上5μm以下である、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【請求項4】
前記正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により得られる酸素マッピングにおける輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対する、前記シワ状暗部の面積重複率をS%とするとき、0.5≦S≦80.0である、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【請求項5】
前記正極前駆体表面のSEM-EDXにより得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をS%とするとき、5≦S≦60であり、かつ0.50≦S/X≦2.00である、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【請求項6】
ブロードイオンビーム(BIB)加工した前記正極前駆体断面のSEM-EDXにより得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をS%とするとき、5≦S≦60であり、かつ0.50≦S/X≦2.00である、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【請求項7】
前記アルカリ金属化合物が炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【請求項8】
前記アルカリ金属化合物が炭酸リチウムである、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【請求項9】
前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cm/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cm/g)とするとき、0.3<V≦0.8、及び0.5≦V≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【請求項10】
前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cm/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cm/g)とするとき、0.8<V≦2.5、及び0.8<V≦3.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【請求項11】
前記アルカリ金属化合物の平均粒子径をXとするとき、0.1μm≦X≦10μmであり、前記正極活物質の平均粒子径をYとするとき、2μm≦Y≦20μmであり、X<Yである、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【請求項12】
前記正極前駆体は非水系ハイブリッドキャパシタの正極製造用である、請求項1または2に記載の正極前駆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は正極前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全及び省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
【0003】
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
【0004】
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
【0005】
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
【0006】
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5~1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)も高く、上記高出力が要求される分野で最適のデバイスと考えられてきた。しかし、そのエネルギー密度は1~5Wh/L程度に過ぎない。そのため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
【0007】
一方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、耐久性を高めるための研究が精力的に進められている。
【0008】
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(蓄電素子の放電容量の何%を放電した状態かを示す値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかし、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)については、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性を持たせるためには、放電深度が0~100%の範囲よりも狭い範囲での使用となる。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、リチウムイオン電池の耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
【0009】
上記のように、高エネルギー密度、高出力特性、及び耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。しかし、上述した既存の蓄電素子には、それぞれ一長一短がある。そのため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
【0010】
キャパシタのエネルギーは1/2・C・V(式中、Cは静電容量であり、かつVは電圧である)で表される。
【0011】
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系ハイブリッドキャパシタ)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着及び脱着による非ファラデー反応によって;負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵及び放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
【0012】
上述の電極材料とその特徴をまとめると、電極に活性炭等の材料を用い、活性炭表面のイオンの吸着及び脱離(非ファラデー反応)により充放電を行う場合は、高出力かつ高耐久性を実現するが、エネルギー密度が低くなる(例えば1倍とする。)。電極に酸化物や炭素材料を用い、ファラデー反応により充放電を行う場合は、エネルギー密度が高くなる(例えば活性炭を用いた非ファラデー反応の10倍とする。)が、耐久性及び出力特性に課題がある。
【0013】
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高出力かつ高耐久性を有するが、エネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
【0014】
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)だが、出力特性及び耐久性に課題がある。ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10~50%しか使用できない。
【0015】
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭(エネルギー密度1倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオン二次電池の特徴を兼ね備えた新規の非対称キャパシタである。リチウムイオンキャパシタは、高出力かつ高耐久性でありながら、高エネルギー密度(正極1倍×負極10倍=10)を有し、リチウムイオン二次電池の様に放電深度を制限する必要がないことが特徴である。
【0016】
上記で説明した蓄電素子(特にリチウムイオンキャパシタおよびリチウムイオン二次電池)について様々な検討が行われている。
【0017】
例えば、特許文献1には、正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物の分解を促進し、負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高容量な非水系ハイブリッドキャパシタ用である正極前駆体が開示されている。
【0018】
特許文献2には、高エネルギー密度、高入出力特性、及び高負荷充放電サイクル耐久性に優れた非水系リチウム型蓄電素子が提案されており、特定の細孔分布や空隙部、SEM-EDXにより得られる酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率を有する炭素材料を正極活物質として含む正極が開示されている。
【0019】
特許文献3には、負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高エネルギー密度かつ高入出力な非水系ハイブリッドキャパシタを製造することができる正極前駆体が提案されており、特定のSEM-EDXにより得られる酸素マッピングに対する炭素マッピングの面積重複率を有する炭素材料を正極活物質として含む正極前駆体が開示されている。
【0020】
特許文献4には、初期入出力特性に優れ、高いエネルギー密度を有し、高負荷充放電サイクル特性、高温保存耐久性に優れる非水系リチウム型蓄電素子が提案されており、特定の顕微ラマン分光測定により得られる炭酸イオンマッピングの面積比率を有する活性炭からなる正極活物質を含む正極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2017/126687号
【特許文献2】国際公開第2017/126698号
【特許文献3】特開2018-56402号公報
【特許文献4】特開2018-26393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
特許文献1~4に記載の正極または正極前駆体を得る方法では、特定の元素やイオンのマッピングにより、正極活物質層内での正極活物質やアルカリ金属化合物の分布について考慮している。しかしながら、特許文献1~4に記載の方法では、非水系ハイブリッドキャパシタの製造時の負極へのプレドープ時間短縮、並びに非水系ハイブリッドキャパシタの高エネルギー密度化及び低抵抗化において更なる改善の余地があった。
【0023】
したがって、本開示は、負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高エネルギー密度かつ高入出力な非水系ハイブリッドキャパシタを製造することができる正極前駆体を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本開示の実施形態の例を以下の項目[1]~[12]に列記する。
[1]
正極集電体と、上記正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有する正極前駆体であって、上記正極活物質層は、正極活物質及び正極活物質以外のアルカリ金属化合物を含有し、上記正極活物質は炭素材料であり、上記炭素材料は活性炭を含み、
上記正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる観察倍率10000倍の画像において、上記アルカリ金属化合物の同一粒子内に明部とシワ状暗部が海島状態で存在し、上記シワ状暗部の合計面積率をS%とするとき、0.3≦S≦15.0である、正極前駆体。
[2]
上記正極前駆体の正極活物質層中における上記アルカリ金属化合物の重量比をX質量%とするとき、5≦X≦50である、項目1に記載の正極前駆体。
[3]
上記シワ状暗部の1個当たりの面積が2000nm以上5μm以下である、項目1または2に記載の正極前駆体。
[4]
上記正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により得られる酸素マッピングにおける輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対する、上記シワ状暗部の面積重複率をS%とするとき、0.5≦S≦80.0である、項目1~3のいずれか一項に記載の正極前駆体。
[5]
上記正極前駆体表面のSEM-EDXにより得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をS%とするとき、5≦S≦60であり、かつ0.50≦S/X≦2.00である、項目1~4のいずれか一項に記載の正極前駆体。
[6]
ブロードイオンビーム(BIB)加工した上記正極前駆体断面のSEM-EDXにより得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をS%とするとき、5≦S≦60であり、かつ0.50≦S/X≦2.00である、項目1~5のいずれか一項に記載の正極前駆体。
[7]
上記アルカリ金属化合物が炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種以上である、項目1~6のいずれか一項に記載の正極前駆体。
[8]
上記アルカリ金属化合物が炭酸リチウムである、項目1~7のいずれか一項に記載の正極前駆体。
[9]
上記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cm/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cm/g)とするとき、0.3<V≦0.8、及び0.5≦V≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である、項目1~8のいずれか一項に記載の正極前駆体。
[10]
上記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cm/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cm/g)とするとき、0.8<V≦2.5、及び0.8<V≦3.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である、項目1~8のいずれか一項に記載の正極前駆体。
[11]
上記アルカリ金属化合物の平均粒子径をXとするとき、0.1μm≦X≦10μmであり、上記正極活物質の平均粒子径をYとするとき、2μm≦Y≦20μmであり、X<Yである、項目1~10のいずれか一項に記載の正極前駆体。
[12]
上記正極前駆体は非水系ハイブリッドキャパシタの正極製造用である、項目1~11のいずれか一項に記載の正極前駆体。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高エネルギー密度かつ高入出力な非水系ハイブリッドキャパシタを製造することのできる正極前駆体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】正極前駆体の表面SEM画像の例(マーキングなし)
図2】正極前駆体の表面SEM画像の例(マーキングあり)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態の例を詳細に説明するが、本開示はこれらの実施形態に限定されるものではない。本開示の各数値範囲における上限値及び下限値は、任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
【0028】
《非水系ハイブリッドキャパシタ》
非水系ハイブリッドキャパシタは一般に、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素として有する。電解液としては、アルカリ金属塩等の電解質を溶解させた有機溶媒(以下「非水系電解液」という。)を用いる。
【0029】
本開示において、プレドープ前における正極のことを「正極前駆体」、プレドープ後における正極のことを「正極」と定義する。
【0030】
<正極前駆体>
本開示における正極前駆体は、正極集電体と、上記正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有する。上記正極活物質層は、正極活物質及び正極活物質以外のアルカリ金属化合物を含有し、上記正極活物質は炭素材料であり、上記炭素材料は活性炭を含む。上記正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる観察倍率10000倍の画像において、上記アルカリ金属化合物の同一粒子内に明部とシワ状暗部が海島状態で存在し、上記シワ状暗部の合計面積率をS%とするとき、0.3≦S≦15.0である。正極前駆体は、非水系ハイブリッドキャパシタの所望の構成に応じて、単に、プレドープ前の電極、プレドープ前の片側電極、ハーフセル、塗工電極、乾燥電極等と呼ばれることがある。
【0031】
[正極活物質層]
正極前駆体に含まれる正極活物質層は、活性炭を含む炭素材料である正極活物質、及び上記正極活物質以外のアルカリ金属化合物を含む。正極活物質層は、上記以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。蓄電素子を組み立てる際に、負極にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましい。プレドープ方法としては、上記アルカリ金属化合物を含む正極前駆体と、負極と、セパレータと、非水系電解液とを用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。
【0032】
-正極活物質-
上記正極活物質は炭素材料である。炭素材料としては、活性炭を含む。正極活物質としては、1種の炭素材料を単独で使用してもよく、2種類以上の炭素材料を混合して使用してもよく、活性炭以外の炭素材料を含んでもよい。活性炭以外の炭素材料としては、カーボンナノチューブ、導電性高分子、及び多孔性の炭素材料等が挙げられる。正極活物質は、炭素材料以外の材料、例えば、アルカリ金属と遷移金属との複合酸化物等を含んでもよい。
【0033】
正極活物質の総質量に対する炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、又は100質量%であってもよい。他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、炭素材料の含有率は、正極活物質の総質量に対して、好ましくは90質量%以下であり、又は80質量%以下であってもよい。
【0034】
活性炭の種類及びその原料は特に制限されない。しかし、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cm/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cm/g)とするとき、
(1)高い入出力特性を得るためには、0.3<V≦0.8、及び0.5≦V≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である活性炭(以下「活性炭1」ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V≦2.5、及び0.8<V≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である活性炭(以下「活性炭2」ともいう。)が好ましい。
【0035】
以下、上記(1)活性炭1及び上記(2)活性炭2について、個別に順次説明する。
【0036】
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量Vは、蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cm/gより大きい値であることが好ましい。一方で、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cm/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは0.35cm/g以上0.7cm/g以下、更に好ましくは0.4cm/g以上0.6cm/g以下である。
【0037】
活性炭1のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cm/g以上であることが好ましい。一方で、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cm/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは0.6cm/g以上1.0cm/g以下、更に好ましくは0.8cm/g以上1.0cm/g以下である。
【0038】
活性炭1のマイクロ孔量Vに対するメソ孔量Vの比(V/V)は、0.3≦V/V≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら入出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、V/Vが0.3以上であることが好ましい。一方で、高入出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、V/Vは、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.4≦V/V≦0.7、更に好ましくは0.55≦V/V≦0.7である。活性炭1のV、V及びV/Vについては、それぞれ上記で説明された好適な範囲の上限と下限を、任意に組み合わせることができる。
【0039】
活性炭1の平均細孔径は、得られる蓄電素子の入出力を高くする点から、17Å以上(すなわち、17×10-10m以上)であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが更に好ましい。容量を高くする点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
【0040】
活性炭1のBET比表面積は、1,500m/g以上3,000m/g以下であることが好ましく、1,500m/g以上2,500m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。上記BET比表面積の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
【0041】
上記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
【0042】
活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
【0043】
これらの原料から上記活性炭1を得るための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
【0044】
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400~700℃、好ましくは450~600℃において、30分~10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
【0045】
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。このうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
【0046】
この賦活方法では、賦活ガスを好ましくは0.5~3.0kg/h、より好ましくは0.7~2.0kg/hの割合で供給しながら、上記炭化物を、好ましくは3~12時間、より好ましくは5~11時間、更に好ましくは6~10時間掛けて800~1,000℃まで昇温して賦活することが好ましい。
【0047】
上記炭化物の賦活処理に先立ち、予め上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が好ましい。
【0048】
上記炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、上記の特徴を有する活性炭1を製造することができる。
【0049】
(活性炭2)
活性炭2のメソ孔量Vは、蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする観点から、0.8cm/gより大きい値であることが好ましい。Vは、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cm/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは1.0cm/g以上2.0cm/g以下、さらに好ましくは、1.2cm/g以上1.8cm/g以下である。
【0050】
他方、活性炭2のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cm/gより大きい値であることが好ましい。Vは、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cm/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは1.0cm/gより大きく2.5cm/g以下、更に好ましくは1.5cm/g以上2.5cm/g以下である。
【0051】
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値としては、2,300m/g以上4,000m/g以下であることが好ましい。BET比表面積の下限としては、3,000m/g以上であることがより好ましく、3,200m/g以上であることが更に好ましい。BET比表面積の上限としては、3,800m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が2,300m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が4,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
【0052】
上記のような特徴を有する活性炭2は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
【0053】
活性炭2の原料として用いられる炭素源としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており特に好ましい。
【0054】
これらの原料を炭化する方式、或いは賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は好ましくは400~700℃、下限は、好ましくは450℃以上、更に好ましくは500℃以上、上限は、好ましくは650℃以下であり、焼成時間は好ましくは0.5~10時間程度である。
【0055】
上記炭化処理後の炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活法がある。高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ金属賦活法が好ましい。
【0056】
この賦活方法では、炭化物と水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で好ましくは600~900℃、より好ましくは650℃~850℃の範囲において、0.5~5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
【0057】
炭化物とアルカリ金属化合物との質量比(=炭化物:アルカリ金属化合物)は好ましくは1:1以上であり、アルカリ金属化合物の量が増えるほどメソ孔量が増え、質量比1:3.5付近を境に急激に細孔量が増える傾向があるので、炭化物とアルカリ金属化合物との質量比は1:3以上であることが好ましい。炭化物とアルカリ金属化合物との質量比は、アルカリ金属化合物が増えるほど細孔量が大きくなるが、その後の洗浄等の処理効率を考慮すると、1:5.5以下であることが好ましい。
【0058】
マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
【0059】
活性炭2のV、V及びBET比表面積については、それぞれ上記で説明された好適な範囲の上限と下限を、任意に組み合わせることができる。
【0060】
(活性炭の使用態様)
活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって上記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
【0061】
正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料、例えば、上記特定のV及び/若しくはVを有さない活性炭を含んでもよく、又は活性炭以外の材料、例えば、アルカリ金属と遷移金属との複合酸化物等を含んでもよい。活性炭1の含有量、又は活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量は、それぞれ、全正極活物質の50質量%より多いことが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%であることがより更に好ましい。
【0062】
正極活物質層における正極活物質の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、35質量%以上95質量%以下であることが好ましい。正極活物質の含有割合の下限としては、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。正極活物質の含有割合の上限としては、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。この範囲の含有割合とすることにより、好適な充放電特性を発揮する。
【0063】
-アルカリ金属化合物-
アルカリ金属化合物としては、正極前駆体中で分解して、アルカリ金属イオンを放出することが可能である化合物を用いる。アルカリ金属イオンを陽イオンとする炭酸塩、酸化物、水酸化物、フッ化物、塩化物、シュウ化物、ヨウ化物、窒化物、硫化物、リン化物、硝酸化物、硫酸化物、リン酸化物、シュウ酸化物、ギ酸化物及び酢酸化物からなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。中でも、炭酸塩、酸化物、及び水酸化物がより好適であり、空気中での取り扱いが可能であり、吸湿性が低いという観点からアルカリ金属炭酸塩がさらに好適に用いられる。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられ、中でも、単位重量当たりの容量が高いという観点から炭酸リチウムがさらに好適に用いられる。アルカリ金属化合物は、正極前駆体に含有されるアルカリ金属化合物の総質量を基準として、炭酸リチウムを10質量%以上含むことが好ましい。正極前駆体中に含まれるアルカリ金属化合物は1種でもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0064】
正極前駆体は、アルカリ金属化合物の他に、アルカリ土類金属炭酸塩、例えばBeCO、MgCO、CaCO、SrCO、及びBaCOからなる群から選択される少なくとも一つ、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属シュウ酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩を1種以上含んでいてもよい。
【0065】
正極活物質層中におけるアルカリ金属化合物の重量比を、正極活物質層の全質量を基準としてX質量%とするとき、5≦X≦50であることが好ましい。Xの下限としては、10以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましい。Xの上限としては、45以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましい。上記Xの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
【0066】
理論に限定されないが、Xが5以上であれば、正極前駆体を非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだ時に、負極へのプレドープと充放電に関与できるアルカリ金属イオンが十分に確保されるために静電容量Fがより高く、より高いエネルギー密度を示す非水系ハイブリッドキャパシタが得られると考えられる。また、アルカリ金属化合物が酸化分解した後に残る適度な空孔が正極中に形成されることで、より高い入出力特性を示す非水系ハイブリッドキャパシタが得られると考えられる。Xが50以下であれば、正極前駆体中の電子伝導性が高まるためにアルカリ金属化合物の分解が促進されることでプレドープが短時間で十分に進行すると共に、正極中の正極活物質比率を十分に確保できるため、より高エネルギー密度な非水系ハイブリッドキャパシタが得られると考えられる。
【0067】
正極前駆体が、アルカリ金属化合物の他に上記アルカリ土類金属化合物を含む場合は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の総質量が、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として5質量%以上50質量%以下の割合で含まれるように正極前駆体を作製することが好ましい。
【0068】
(アルカリ金属化合物及び正極活物質の平均粒子径)
正極前駆体において、上記アルカリ金属化合物の平均粒子径をXとするとき、0.1μm≦X≦10μmであることが好ましい。Xの下限としては、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましく、Xの上限としては、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。上記Xの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
【0069】
が0.1μm以上であれば、正極前駆体中でのアルカリ金属化合物の分散均一性に優れる。Xが10μm以下であれば、アルカリ金属化合物の表面積が増えるために正極前駆体を非水系ハイブリッドキャパシタ用に組み込んだときに分解反応が効率よく進行する。
【0070】
正極前駆体において、上記正極活物質の平均粒子径をYとするとき、2μm≦Y≦20μmであることが好ましい。Yの下限としては、2.5μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。Yの上限としては、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。上記Yの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
【0071】
が2μm以上であれば、正極前駆体の電極密度が高く維持できるため高エネルギー密度が得られる。Yが20μm以下であれば、電解質イオンとの反応面積が増加するために高い入出力特性を発現できる。
【0072】
正極前駆体において、上記アルカリ金属化合物及び上記正極活物質の平均粒子径の関係はX<Yであることが好ましい。
【0073】
-正極活物質層の任意成分-
正極前駆体の正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質、アルカリ金属化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0074】
(導電性フィラー)
導電性フィラーとしては、特に制限されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等を用いることができる。正極前駆体の正極活物質層における導電性フィラーの使用量は、正極活物質100質量%に対して、好ましくは0質量%超30質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上15質量%以下である。導電性フィラーは、アルカリ金属化合物と接触させることでプレドープ時の酸化分解を促進し、さらに高入出力特性の観点から、正極活物質層は導電性フィラーを含有することが好ましい。導電性フィラーの使用量が30質量%以下であれば、正極活物質層における正極活物質の含有割合が多くなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度を確保することができる。
【0075】
(結着剤)
結着剤の種類としては、特に制限されず、例えばゴム系高分子、フッ素含有物、ポリイミド等が挙げられるが、ゴム系高分子及び/又はフッ素含有物を含むことが好ましい。正極活物質層に含まれる結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
正極前駆体の正極活物質層の結着剤としてゴム系高分子を含む場合、上記ゴム系高分子としては、ジエン系重合体、アクリル系重合体、フッ素ゴム等が挙げられるが、正極活物質との結着性が高く、電極の強度又は柔軟性に優れる観点から、ジエン系重合体、又はアクリル系重合体が好ましい。それらの中でも、重合体の主鎖中に不飽和結合を含まず、電気化学的安定性が高いという観点から、アクリルラテックスがより好ましい。アクリルラテックスとしては、特に限定されないが、アクリル酸エステル及び/若しくはメタクリル酸エステルの重合体、又はこれらと共重合可能な単量体との共重合体であることが好ましい。
【0077】
正極前駆体の正極活物質層の結着剤としては、上記ゴム系高分子にフッ素が含有されていてもよく、上記フッ素含有物と上記ゴム系高分子を併用してもよく、上記フッ素含有物と上記ゴム系高分子の複合粒子であってもよい。
【0078】
正極前駆体の正極活物質層における結着剤の使用量は、正極活物質100質量%に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上27質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上25質量%以下である。結着剤の使用量が1質量%以上であれば、十分な電極強度が発現される。結着剤の使用量が30質量%以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現されると共に、プレドープ時にアルカリ金属化合物の酸化分解由来のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープも促進される。
【0079】
(分散安定剤)
分散安定剤としては、特に制限されず、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができ、溶媒の種類に応じて使い分けられる。セルロース誘導体としては、セルロース系ポリマー、又はセルロース系ポリマーのアンモニウム塩若しくはアルカリ金属塩などの塩類が挙げられ、好ましくはカルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩が用いられ、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩がより好ましい。分散安定剤の使用量は、正極活物質100質量%に対して、好ましくは、0質量%超又は0.1質量%以上、10質量%以下である。分散安定剤の使用量が10質量%以下であれば、正極スラリー中の固形分が沈降せずに分散安定性に優れ、かつ正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
【0080】
[正極集電体]
正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こりにくい材料であれば特に制限されず、金属箔が好ましい。正極集電体としての金属箔は、アルミニウム箔が特に好ましい。
【0081】
正極集電体は凹凸や貫通孔を持たない金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
その中でも、正極集電体は貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
【0082】
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限されず、例えば、1~100μmが好ましい。
【0083】
[正極前駆体の製造]
非水系ハイブリッドキャパシタの正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術に準じて製造することが可能である。例えば、正極活物質、アルカリ金属化合物、結着剤、及び水溶性高分子、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を、水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。得られた正極前駆体をプレスして、正極活物質層の厚み又は嵩密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型して正極シートを作成した後、導電性接着剤(「導電性ペースト」ともいう)を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
【0084】
上記正極前駆体の塗工液は、正極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水若しくは有機溶媒を追加してもよく、及び/又はそれらに結着剤若しくは分散安定剤が溶解若しくは分散した液状若しくはスラリー状の物質を追加して調製してもよい。水又は有機溶媒に結着剤又は分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、正極活物質を含む各種材料粉末を追加して、塗工液を調製してもよい。ドライブレンドする方法として、例えばボールミル等を使用して正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて導電性フィラーを予備混合して、導電性の低いアルカリ金属化合物に導電性フィラーをコーティングさせる予備混合をしてもよい。予備混合により、後述のプレドープにおいて正極前駆体でアルカリ金属化合物が分解し易くなる。上記塗工液の溶媒に水を使用する場合には、アルカリ金属化合物を加えることで塗工液がアルカリ性になることもあるため、必要に応じてpH調整剤を添加してもよい。
【0085】
正極前駆体の塗工液は、既知のスラリーの形態だけでなく、既知の懸濁液、分散液、乳化液、組成物又は混合物の形態も含んでよく、単に、スラリー、塗液等と呼ばれることがある。
【0086】
上記正極前駆体の塗工液の分散方法としては、特に制限されず、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることができる。ディスパー等の高速撹拌羽の場合、良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。プラネタリーミキサー等の低速撹拌羽の場合、良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速0.1m/s以上5m/s以下で分散することが好ましい。上記高速撹拌羽の場合は周速が1m/s以上、上記低速撹拌羽の場合は周速が0.1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。上記高速撹拌羽の場合は周速が50m/s以下、上記低速撹拌羽の場合は周速が5m/s以下であれば、分散による熱又はせん断力により各種材料が破壊されるにくく、再凝集が生じにくくなるため好ましい。
【0087】
後述のように、正極前駆体中におけるアルカリ金属化合物の表面形状の制御が重要であるが、その制御を左右する因子の一つとして、塗工液の組成及び分散方法がある。具体的には、アルカリ金属化合物における結着剤や分散安定剤等による被覆部、アルカリ金属化合物の溶解部若しくは溶解後の再析出部、及びアルカリ金属化合物同士の再凝集を適切に制御するように、塗工液の組成、分散方法、例えば周速を調整することが好ましい。
【0088】
上記塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm未満では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒子径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり好ましくない。粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジ発生等が少なく、安定に塗工ができる。
【0089】
上記正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)は、好ましくは1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。粘度(ηb)が20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
【0090】
塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
【0091】
上記正極前駆体の塗膜の形成方法は特に制限されず、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることができる。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工で形成してもよい。多層塗工の場合には、塗膜各層内のアルカリ金属化合物の含有量が異なるように塗工液組成を調整してもよい。塗工速度は、好ましくは0.1m/分以上100m/分以下、より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工できる。塗工速度が100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
【0092】
上記正極前駆体の塗膜の乾燥方法は、特に制限されず、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。複数の乾燥方法を組み合わせて塗膜を乾燥させてもよい。乾燥温度は、好ましくは25℃以上200℃以下、より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることができる。乾燥温度が200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着剤の偏在、及び正極集電体や正極活物質層の酸化を抑制できる。
【0093】
上記正極前駆体のプレス方法としては、特に制限されず、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることができる。正極活物質層の厚み、嵩密度及び電極強度は、後述するプレス圧力、隙間、及びプレス部の表面温度により調整できる。
【0094】
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓みやシワが生じることがなく、所望の正極活物質層厚みや嵩密度に調整できる。
【0095】
当業者であれば、プレスロール同士の隙間は、所望の正極活物質層の厚みや嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体厚みに応じて任意の値を設定できる。当業者であれば、プレス速度は、正極前駆体に撓みやシワが生じにくい任意の速度に設定できる。
【0096】
プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要によりプレス部を加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは融点プラス30℃以下、さらに好ましくは融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、プレス部の表面温度は、好ましくは90℃以上200℃以下、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下である。
【0097】
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
【0098】
プレス圧力、隙間、速度、及びプレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
【0099】
[正極前駆体の元素マッピング]
正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物は、非水系ハイブリッドキャパシタを形成したときに高電圧を印加することで酸化分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極で還元することでプレドープが進行する。そのため、上記酸化反応を促進させることで上記プレドープ工程を短時間で行うことができる。上記酸化反応を促進させるためには、絶縁物であるアルカリ金属化合物を正極活物質と接触させて電子伝導を確保することと、反応して放出される陽イオンを電解液中に拡散させることが重要である。そのため、正極活物質表面を適度にアルカリ金属化合物が覆うことが重要である。
【0100】
正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をS%とするとき、5≦S≦60であることが好ましい。Sの下限としては、10以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましい。Sの上限としては、55以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましい。上記Sの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
【0101】
上記の正極活物質層中におけるアルカリ金属化合物の重量比Xと、正極前駆体表面の酸素マッピングの面積Sとから算出されるS/Xとしては、0.50≦S/X≦2.00であることが好ましい。S/Xの下限としては、0.55以上であることがより好ましく、0.60以上であることが更に好ましい。S/Xの上限としては、1.80以下であることがより好ましく、1.60以下であることが更に好ましい。上記S/Xの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
【0102】
が5以上であればアルカリ金属化合物と正極活物質の電子伝導が確保されるためにプレドープが促進される。Sが60以下であれば電解液中のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープが促進される。S/Xが0.50以上であれば正極前駆体中の電解液の拡散が促進されるためにプレドープが促進される。S/Xが2.00以下であればアルカリ金属化合物と正極活物質の電子伝導が確保されるためにプレドープが促進される。
【0103】
ブロードイオンビーム(BIB)加工した正極前駆体断面のSEM-EDXにより得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をS%とするとき、5≦S≦60であることが好ましい。Sの下限としては、10以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましい。Sの上限としては、55以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましい。上記Sの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
【0104】
上記の正極活物質層中におけるアルカリ金属化合物の重量比Xと、正極前駆体断面の酸素マッピングの面積Sとから算出されるS/Xとしては、0.50≦S/X≦2.00であることが好ましい。S/Xの下限としては、0.55以上であることがより好ましく、0.60以上であることが更に好ましい。S/Xの上限としては、1.80以下であることがより好ましく、1.60以下であることが更に好ましい。上記S/Xの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
【0105】
が5以上であればアルカリ金属化合物と正極活物質の電子伝導が確保されるためにプレドープが促進される。Sが60以下であれば電解液中のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープが促進される。S/Xが0.50以上であれば正極前駆体中の電解液の拡散が促進されるためにプレドープが促進される。S/Xが2.00以下であればアルカリ金属化合物と正極活物質の電子伝導が確保されるためにプレドープが促進される。
【0106】
[正極前駆体のシワ状暗部]
本開示の正極前駆体は、正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる観察倍率10000倍の画像において、アルカリ金属化合物の同一粒子内に明部とシワ状暗部が海島状態(明部が海、シワ状暗部が島)で存在する。本開示において「シワ状暗部」とは、正極前駆体表面のSEM画像において周囲より暗く、表面にエンボス模様のような皺が観察される領域を指す。図1は、後述する測定方法に従い撮影された本開示の正極前駆体の表面SEM画像の例である。図2は、図1の画像においてシワ状暗部にマーキングをした画像であり、シワ状暗部は、太線で囲まれた部分(ただし、その中の細線で囲まれた部分を除く。)で示されている。上記シワ状暗部の合計面積率をS%とするとき、0.3≦S≦15.0である。
【0107】
の下限としては、0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。Sの上限としては、14.0以下であることが好ましく、13.0以下であることがより好ましい。上記Sの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、Sは、好ましくは0.4≦S≦14.0、更に好ましくは0.5≦S≦13.0である。
【0108】
上述のように、アルカリ金属化合物の酸化分解反応の促進のために、正極活物質表面を適度にアルカリ金属化合物が覆うことが重要であるが、それに加えて、アルカリ金属化合物の表面形状の制御が重要である。すなわち、アルカリ金属化合物の同一粒子内に明部とシワ状暗部が海島状態で存在することである。理論に限定されないが、上記明部はアルカリ金属化合物の元来の表面であり、上記シワ状暗部はアルカリ金属化合物における結着剤や分散安定剤等による被覆部、又はアルカリ金属化合物の溶解部若しくは溶解後の再析出部と推測される。よって、正極前駆体表面におけるシワ状暗部の合計面積率Sは、正極前駆体表面全体に対する、上記被覆部、溶解部又は再析出部の面積率を指すと推測される。
【0109】
正極前駆体において、アルカリ金属化合物の一部が結着剤や分散安定剤等によって被覆されている場合、電子伝導の確保が不十分となると考えられる。そのため、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだ時に酸化分解が十分に進まず、プレドープ工程が長時間必要となる、又はプレドープが不十分となり、エネルギー密度及び出力特性の低下に繋がると推測される。また、正極前駆体において、アルカリ金属化合物の一部に溶解部若しくは溶解後の再析出部がある場合、正極前駆体の塗工液の時点でアルカリ金属化合物の一部が溶解・再析出しており、正極前駆体における粒子状のアルカリ金属化合物の減少及び電子伝導の不十分な微粉化したアルカリ金属化合物の増加が起こると考えられる。そのため、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだ時に酸化分解が十分に進まず、プレドープ工程が長時間必要となる、又はプレドープが不十分となり、エネルギー密度及び出力特性の低下に繋がると推測される。他方、アルカリ金属化合物の一部が溶解して表面積が大きくなることで、正極前駆体中の電解液の拡散が促進されてプレドープが促進されるとも考えられる。そのため、アルカリ金属化合物の表面形状を適切に制御することにより、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだ時に酸化分解が十分に進行し、プレドープ工程を短縮でき、又はプレドープが十分に進行し、エネルギー密度及び出力特性が向上すると推測される。
【0110】
上記のように、アルカリ金属化合物に被覆部、溶解部又は再析出部が存在することは、プレドープ時間、エネルギー密度及び出力特性においてデメリットとなる可能性がある一方、適切に制御すれば利点となり得る。この点、理論に限定されないが、正極前駆体表面におけるシワ状暗部の合計面積率Sが0.3以上であれば、正極前駆体中の電解液の拡散が促進されるためにプレドープが促進されると考えられる。また、Sが15.0以下であれば、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の電子伝導が十分に確保されるために、アルカリ金属化合物の分解が促進されることでプレドープが十分に進行すると考えられる。また、負極電位が十分に下がり、かつ、アルカリ金属化合物が酸化分解した後に残る適度な空孔が正極中に形成されることで、高エネルギー密度及び高入出力特性を兼ね備えた非水系ハイブリッドキャパシタが得られると考えられる。
【0111】
シワ状暗部の1個当たりの面積としては、好ましくは2000nm以上5μm以下、好ましくは0.050μm以上4.500μm以下、より好ましくは0.100μm以上4.000μm以下である。シワ状暗部の1個当たりの面積が上記範囲内であると、正極前駆体中の電解液拡散性とアルカリ金属化合物の電子伝導が十分に確保されるためにプレドープがより促進される。
【0112】
上記正極前駆体表面のSEM-EDXにより得られる酸素マッピングにおける輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対する、上記シワ状暗部の面積重複率をS%とするとき、0.5≦S≦80.0であることが好ましい。Sの下限としては、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。Sの上限としては、70.0以下であることが好ましく、60.0以下であることがより好ましい。上記Sの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、Sは、好ましくは1.0≦S≦70.0、より好ましくは2.0≦S≦60.0である。
【0113】
正極前駆体における酸素マッピングは、正極活物質層に使用する材料種に依存するが、主にアルカリ金属化合物の存在領域を指す。よって、酸素マッピングに対するシワ状暗部の面積重複率Sは、主にアルカリ金属化合物上の、上記被覆部、溶解部又は再析出部の面積率を指すと推測される。理論に限定されないが、正極前駆体における酸素マッピングに対するシワ状暗部の面積重複率Sが0.5以上であれば、正極前駆体中の電解液の拡散が促進されるためにプレドープがより促進されると考えられる。一方、Sが80.0以下であれば、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の電子伝導が十分に確保されるために、アルカリ金属化合物の分解が促進されることでプレドープがより十分に進行すると考えられる。また、負極電位が十分に下がり、かつ、アルカリ金属化合物が酸化分解した後に残る適度な空孔が正極中に形成されることで、より高エネルギー密度及び高入出力特性を兼ね備えた非水系ハイブリッドキャパシタが得られると考えられる。
【0114】
[正極前駆体のその他の物性]
上記正極活物質層の厚みは、正極集電体の片面当たり、好ましくは20μm以上200μm以下、より好ましくは片面当たり25μm以上100μm以下、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。正極活物質層の厚みが20μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。正極活物質層の厚みが200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な入出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、従ってエネルギー密度を高めることができる。上記正極活物質層の厚みの範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。本明細書において、集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における正極活物質層の厚みとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚みの平均値をいう。
【0115】
<負極>
負極は、一般的に、負極集電体と、負極集電体の片面又は両面に存在する負極活物質層と、を有する。
【0116】
[負極活物質層]
負極活物質層は、アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出できる負極活物質を含むことが好ましい。負極活物質層は、負極活物質以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0117】
-負極活物質-
上記負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出することが可能な物質を用いることができる。負極活物質としては、具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫及び錫化合物等が例示される。負極活物質の総質量に対する炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、又は100質量%であってもよい。他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、炭素材料の含有率は、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。上記炭素材料の含有率の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
【0118】
上記炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;カーボンナノ粒子;活性炭;人造黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;炭素質材料前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。上記炭素質材料前駆体としては、熱処理により炭素質材料となるものであれば特に制限されず、例えば、石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、並びに合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)が挙げられる。
【0119】
-負極活物質層の任意成分-
負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0120】
導電性フィラーの種類は特に制限されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が例示される。導電性フィラーの使用量は、負極活物質100質量%に対して、好ましくは0質量%超30質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上15質量%以下である。
【0121】
結着剤としては、特に制限されず、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量%に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは2質量%以上27質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上25質量%以下である。結着剤の使用量が1質量%以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で結着剤の使用量が30質量%以下であれば、負極活物質へのアルカリ金属イオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
【0122】
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。分散安定剤の使用量は、負極活物質100質量%に対して、好ましくは、0質量%超又は0.1質量%以上、10質量%以下である。分散安定剤の使用量が10質量%以下であれば、負極活物質へのアルカリ金属イオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
【0123】
[負極集電体]
負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化がおこりにくい金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。非水系ハイブリッドキャパシタにおける負極集電体としては、銅箔が好ましい。
【0124】
上記金属箔は凹凸や貫通孔を持たない金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
その中でも、負極集電体は貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
【0125】
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1~100μmが好ましい。
【0126】
[負極の製造]
負極は、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において負極活物質層は負極集電体に固着している。
【0127】
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより負極を得ることができる。さらに得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚や嵩密度を調整してもよい。
【0128】
負極活物質層の厚みは、片面当たり、5μm以上100μm以下が好ましい。この厚みが5μm以上であれば、負極活物質層を塗工した際にスジ等が発生せず塗工性に優れる。この厚みが100μm以下であれば、セル体積を縮小することによって高いエネルギー密度を発現できる。負極活物質層の厚みの範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における負極活物質層の厚みとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚みの平均値をいう。
【0129】
負極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.30g/cm以上1.8g/cm以下である。嵩密度が0.30g/cm以上であれば、十分な強度を保つことができるとともに、負極活物質間の十分な導電性を発現することができる。嵩密度が1.8g/cm以下であれば、負極活物質層内でイオンが十分に拡散できる空孔が確保できる。
【0130】
<セパレータ>
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層され、又は積層及び捲回され、正極前駆体、セパレータ、及び負極を有する電極積層体又は電極捲回体を形成することができる。
【0131】
上記セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面または両面に、有機または無機の微粒子から構成される膜が積層されていてもよい。セパレータの内部に有機または無機の微粒子が含まれていてもよい。
【0132】
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。35μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の入出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
【0133】
有機または無機の微粒子から構成される膜の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。10μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の入出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
【0134】
<外装体>
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムから構成される3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
【0135】
<非水系電解液>
非水系ハイブリッドキャパシタに用いる電解液は非水系電解液が好ましい。すなわち電解液は、非水溶媒を含む。上記非水系電解液は、上記非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のアルカリ金属塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、アルカリ金属塩を電解質として含む。非水系電解液に含まれる非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表される環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等に代表される鎖状カーボネートが挙げられる。
【0136】
《非水系ハイブリッドキャパシタの製造方法》
<組立>
典型的には、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して電極積層体を得て、電極積層体に正極端子および負極端子を接続する。あるいは、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回して電極捲回体を得て、電極捲回体に正極端子及び負極端子を接続する。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
【0137】
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定されず、抵抗溶接や超音波溶接などの方法を用いることができる。
【0138】
端子を接続した電極積層体または電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法に限定されず、真空乾燥などにより乾燥する。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の重量あたり、1.5質量%以下が好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性を悪化させるため、好ましくない。
【0139】
乾燥した電極積層体または電極捲回体は、好ましくは露点-40℃以下のドライ環境下にて、金属缶やラミネートフィルムに代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残した状態で封止することが好ましい。露点-40℃より高いと、電極積層体または電極捲回体に水分が付着してしまい、系内に水が残存し、自己放電特性を悪化させることがある。外装体の封止方法は特に限定されず、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いることができる。
【0140】
<注液、含浸、封止>
組立の後に、外装体の中に収納された電極積層体または電極捲回体に、非水系電解液を注液する。注液した後に、正極前駆体、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に含浸することが望ましい。正極前駆体、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するプレドープにおいて、ドープが不均一に進むため、得られる非水系ハイブリッドキャパシタの抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。上記含浸の方法としては、特に制限されず、例えば、注液後の非水系ハイブリッドキャパシタを、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後には、外装体が開口した状態の非水系ハイブリッドキャパシタを減圧しながら封止することで密閉する。
【0141】
<プレドープ>
好ましいプレドープ方法としては、上記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のアルカリ金属化合物を分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極でアルカリ金属イオンを還元することにより負極活物質層にアルカリ金属イオンをプレドープする方法が挙げられる。
【0142】
プレドープにおいて、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の酸化分解に伴い、CO等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
【0143】
<エージング>
プレドープの終了後に、非水系ハイブリッドキャパシタにエージングを行うことが好ましい。エージングにおいて電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にアルカリ金蔵イオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
【0144】
上記エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
【0145】
<ガス抜き>
エージングの終了後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系ハイブリッドキャパシタの抵抗が上昇してしまう。
【0146】
上記ガス抜きの方法としては、特に制限されず、例えば、上記外装体を開口した状態で非水系ハイブリッドキャパシタを減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。
【実施例0147】
以下、実施例及び比較例を示して本開示の実施形態の例を具体的に説明するが、しかしながら、本開示は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0148】
《測定及び評価方法》
<蓄電素子の静電容量>
蓄電素子の静電容量F(F)とは、以下の方法によって得られる値である。先ず、非水系ハイブリッドキャパシタと対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとする。ここで得られたQを用いて、F=Q/(3.8-2.2)により算出される値をいう。
【0149】
ここで電流のCレートとは、上限電圧から下限電圧まで定電流放電を行う際、1時間で放電が完了する電流値のことを1Cという。本明細書では、上限電圧3.8Vから下限電圧2.2Vまで定電流放電を行う際に1時間で放電が完了する電流値のことを1Cとする。
【0150】
<蓄電素子の内部抵抗>
蓄電素子の内部抵抗Ra(Ω)とは、以下の方法によって得られる値である。先ず、非水系ハイブリッドキャパシタを25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。続いて、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間-電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をVoとしたときに、降下電圧ΔV=3.8-Vo、及びRa=ΔV/(20Cの電流値)により算出される値である。
【0151】
<蓄電素子の電力量>
蓄電素子の電力量E(Wh)とは、以下の方法によって得られる値である。すなわち、先に述べた方法で算出された静電容量F(F)を用いて、F×(3.8-2.2)/2/3600により算出される値をいう。
【0152】
<蓄電素子の体積>
蓄電素子の体積V(L)は、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が積重された領域が、外装体によって収納された部分の体積を指す。
【0153】
例えば、ラミネートフィルムによって収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が存在する領域が、カップ成形されたラミネートフィルムの中に収納されるが、この蓄電素子の体積(V)は、このカップ成形部分の外寸長さ(l)と外寸幅(w)、およびラミネートフィルムを含めた蓄電素子の厚み(t)により、V=l×w×tで計算される。
【0154】
角型の金属缶に収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、蓄電素子の体積としては、単にその金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この蓄電素子の体積(V)は、角型の金属缶の外寸長さ(l)と外寸幅(w)、外寸厚み(t)により、V=l×w×tで計算される。
【0155】
円筒型の金属缶に収納された電極捲回体の場合においても、蓄電素子の体積としては、その金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この蓄電素子の体積(V)は、円筒型の金属缶の底面または上面の外寸半径(r)、外寸長さ(l)により、V=3.14×r×r×lで計算される。
【0156】
<BET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径>
BET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、及び平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
【0157】
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E. P. Barrett, L. G. Joyner and P. Halenda, J. Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))。
【0158】
MP法とは、「t-プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45 (1968))。
【0159】
平均細孔径とは、液体窒素温度下で、各相対圧力下における窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる、試料の質量あたりの全細孔容積を上記BET比表面積で除して求めたものを指す。
【0160】
<粘度及びTI値>
粘度(ηb)及びTI値は、それぞれ以下の方法により求められる値である。まず、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度2s-1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度(ηa)を取得する。ずり速度を20s-1に変更した他は上記と同様の条件で測定した粘度(ηb)を取得する。上記で得た粘度の値を用いて、TI値は、TI値=ηa/ηbの式により、算出される。ずり速度を2s-1から20s-1へ上昇させる際は、1段階で上昇させてもよいし、上記の範囲で多段的にずり速度を上昇させ、適宜そのずり速度における粘度を取得しながら上昇させてもよい。
【0161】
<分散度>
分散度は、JIS K5600に規定された粒ゲージによる分散度評価試験により求められる値である。すなわち、粒のサイズに応じた所望の深さの溝を有する粒ゲージに対して、溝の深い方の先端に十分な量の試料を流し込み、溝から僅かに溢れさせる。スクレーパーの長辺がゲージの幅方向と平行になり、粒ゲージの溝の深い先端に刃先が接触するように置き、スクレーパーをゲージの表面になるように保持しながら、溝の長辺方向に対して直角に、ゲージの表面を均等な速度で、溝の深さ0まで1~2秒間かけて引き、引き終わってから3秒以内に20°以上30°以下の角度で光を当てて観察し、粒ゲージの溝に粒が現れる深さを読み取る。
【0162】
<正極前駆体におけるアルカリ金属化合物の定量方法 Xの算出>
正極前駆体中に含まれるアルカリ金属化合物の定量方法を以下に記載する。正極前駆体を蒸留水で洗浄し、蒸留水による洗浄前後の正極重量変化からアルカリ金属化合物を定量する。測定する正極前駆体の面積は10cm×5cmとする。
【0163】
以下、正極前駆体の正極活物質層中におけるアルカリ金属化合物の定量方法を記載する。切断した正極前駆体について重量を測定しM[g]とする。続いて、25℃環境下、正極前駆体の重量の100倍(100M[g])の蒸留水に正極を3日間以上十分に浸漬させ、アルカリ金属化合物を水中に溶出させる。この時、蒸留水が揮発しないよう容器に蓋をする等の対策を施す。3日間以上浸漬させた後、蒸留水から正極前駆体を取り出し、真空乾燥する。真空乾燥の条件としては、例えば、温度:100~200℃、圧力:0~10kPa、時間:5~20時間の範囲で正極前駆体中の残存水分量が1質量%以下になる条件とする。水分の残存量については、カールフィッシャー法により定量する。真空乾燥後の正極前駆体の重量をM[g]とし、続いて、得られた正極前駆体の集電体の重量を測定するため、スパチュラ、ブラシ、刷毛等を用いて集電体上の正極活物質層を取り除く。得られた正極集電体の重量をM[g]とすると、正極前駆体の活物質層中に含まれるアルカリ金属化合物の重量比X[質量%]は、式(1)にて算出する。
X=100×(M-M)/(M-M) 式(1)
【0164】
<アルカリ金属元素の定量方法 ICP-MS>
正極前駆体について、濃硝酸、濃塩酸、王水等の強酸を用いて酸分解し、得られた溶液を2%~3%の酸濃度になるように純水で希釈する。酸分解については、適宜加熱、加圧し分解することもできる。得られた希釈液をICP-MSにより解析するが、この際に内部標準として既知量の元素を加えておく。測定対象のアルカリ金属元素が測定上限濃度以上になる場合には、上記希釈液を、酸濃度を維持したまま更に希釈する。得られた測定結果に対し、化学分析用の標準液を用いて予め作成した検量線を基に、各元素を定量する。
【0165】
<アルカリ金属化合物及び正極活物質の平均粒子径X及びY
正極スラリー又は正極前駆体中におけるアルカリ金属化合物及び正極活物質の平均粒子径X及びYの測定方法は、正極集電体上に塗膜形成した正極前駆体の状態において、正極前駆体断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による画像、及び走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)による画像から算出する。正極断面の形成方法としては、正極前駆体上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB(Broad Ion Beam)加工を用いる。
【0166】
(アルカリ金属化合物と正極活物質の判別方法)
アルカリ金属化合物及び正極活物質は、観察倍率を2000倍にして測定した正極前駆体断面のSEM-EDX画像による酸素マッピングにより判別する。SEM-EDX画像の測定方法条件は、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%~60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整する。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をアルカリ金属化合物と判別する。
【0167】
(算出方法)
及びYは、上記正極前駆体断面SEMと同視野にて測定した断面SEM-EDXから得られた画像を、画像解析することで求める。上記正極前駆体断面のSEM画像にて判別されたアルカリ金属化合物の粒子X、及びそれ以外の粒子を正極活物質の粒子Yとし、断面SEM画像中に観察されるX、Yそれぞれの粒子全てについて、断面積Sを求め、下記式(2)にて算出される粒子径dを求める。
d=2×(S/π)1/2 式(2)
{式中、円周率をπとする。}
得られた粒子径dを用いて、下記式(3)において体積平均粒子径X及びYを求める。
(Y)=Σ[4/3π×(d/2)]×d]/Σ[4/3π×(d/2)]] 式(3)
正極前駆体断面の視野を変えて5ヶ所以上測定し、それぞれのX及びYの平均値をもって平均粒子径X及びYとする。
【0168】
<正極前駆体表面及び断面の酸素マッピングの面積S及びS
正極前駆体表面及び断面の酸素マッピングの面積S及びSの測定方法としては、正極前駆体表面及び正極前駆体断面のSEM-EDXにより得られる元素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積として求める。正極前駆体断面の形成方法については、正極前駆体上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いる。SEM-EDXの元素マッピングの測定条件としては、画素数は128×128ピクセル~512×512ピクセルの範囲とする。マッピング像において最大輝度値に達する画素がなく、輝度値の平均値が最大輝度値の40%~60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整する。
【0169】
<正極前駆体表面のシワ状暗部の1個当たりの面積及び合計面積率S
正極前駆体表面のシワ状暗部の1個当たりの面積及び合計面積率Sは、正極前駆体表面のSEMにより得られる画像を解析して求める。測定条件としては、正極前駆体表面のSEMにより観察倍率10000倍の画像を得る。SEM画像の測定条件については、加速電圧1kV、エミッション電流10μA、測定画素数1280×960ピクセルとして測定する。試料の帯電を防止するために、真空蒸着により金を表面処理する。海島状態で存在する明部とシワ状暗部を識別すするために、コントラストを高く調整する。シワ状暗部の観察画像例としては、線幅5nm以上25nm以下の溝状の黒線で一部または全周が囲まれた面積1000nm以上の島状部同士が二つ以上連結した状態で観察される(図1及び2を参照)。
【0170】
<正極前駆体表面の酸素マッピングに対するシワ状暗部の面積重複率S
正極前駆体表面の酸素マッピングに対するシワ状暗部の面積重複率Sの測定方法としては、正極前駆体表面のSEM-EDXにより得られる元素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積に対する、SEM画像の上記シワ状暗部と重複する面積との比として求める。SEM-EDXの測定条件としては、観察倍率はシワ状暗部を識別する観点から10000倍とする。酸素マッピング像において最大輝度値に達する画素がなく、輝度値の平均値が最大輝度値の40%~60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整する。酸素マッピング像を十分に識別する観点で、積算を十分に確保する必要があり、積算回数を50回以上又は測定時間を3分以上とする。
【0171】
《製造例》
<正極活物質の調製>
[活性炭1の調製]
破砕したヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、450℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で上記賦活炉内へ導入し、800℃まで8時間掛けて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
【0172】
この活性炭1について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2000J)を用いて平均粒子径を測定した結果、4.8μmであった。ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB-1 AS-1-MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2250m/g、メソ孔量(V)が0.50cm/g、マイクロ孔量(V)が0.84cm/g、V/V=0.60であった。
【0173】
[活性炭2の調製]
破砕したヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、600℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で上記賦活炉内へ導入し、1000℃まで5時間掛けて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭2を得た。
【0174】
この活性炭2について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2000J)を用いて平均粒子径を測定した結果、8.5μmであった。ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB-1 AS-1-MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が1920m/g、メソ孔量(V)が0.35cm/g、マイクロ孔量(V)が0.75cm/g、V/V=0.47であった。
【0175】
[活性炭3の調製]
フェノール樹脂を、窒素雰囲気下、焼成炉中580℃において2時間炭化処理した後、ボールミルにて粉砕し、分級を行って平均粒子径6.8μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃において1時間加熱して賦活化を行い、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄した後、蒸留水でpH5~6の間で安定するまで煮沸洗浄し、乾燥を行うことにより、活性炭3を得た。
【0176】
この活性炭3について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2000J)を用いて平均粒子径を測定した結果、6.7μmであった。ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB-1 AS-1-MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が3328m/g、メソ孔量(V)が1.55cm/g、マイクロ孔量(V)が2.01cm/g、V/V=0.77であった。
【0177】
[活性炭4の調製]
フェノール樹脂を、窒素雰囲気下、焼成炉中700℃において2時間炭化処理した後、ボールミルにて粉砕し、分級を行って平均粒子径11.8μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:4で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中650℃において3時間加熱して賦活化を行い、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄した後、蒸留水でpH5~6の間で安定するまで煮沸洗浄し、乾燥を行うことにより、活性炭4を得た。
【0178】
この活性炭4について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2000J)を用いて平均粒子径を測定した結果、11.5μmであった。ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB-1 AS-1-MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2684m/g、メソ孔量(V)が1.12cm/g、マイクロ孔量(V)が1.48cm/g、V/V=0.76であった。
【0179】
<正極前駆体の製造>
【0180】
[正極前駆体(組成a)の製造]
上記で得た活性炭1~4のいずれか1つを正極活物質として用いて、下記方法で正極前駆体(組成a)を製造した。
【0181】
正極活物質として、活性炭1~4のいずれか1つを62.3質量%;アルカリ金属化合物として、表1に示す平均粒子径を有する炭酸リチウム等を26.3質量%;導電性フィラーとして、ファーネスブラックを4.3質量%;分散安定剤として、CMC(カルボキシメチルセルロース)を1.2質量%、及びPVP(ポリビニルピロリドン)を1.8質量%;並びに蒸留水を、PRIMIX社製のプラネタリー式の低速撹拌羽を有する混練機ハイビスミックスに入れて、表1に示す周速の条件で混練した。その後、結着剤として、アクリルラテックスを4.1質量%(固形分換算値、濃度40質量%の水分散液として添加)、及び蒸留水を仕込み固形分重量比34質量%になるように適量加え、周速0.2m/sの条件下で更に混練して正極スラリーを得た。上記正極スラリーを、東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚み15μmのアルミニウム箔の片面及び両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥後、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施して、正極前駆体(組成a)を得た。
【0182】
[正極前駆体(組成b)の製造]
活性炭1~4のいずれか1つを48.0質量%、炭酸リチウムを40.0質量%、ファーネスブラックを3.0質量%、CMCを1.8質量%、PVPを2.2質量%、アクリルラテックスを5.0質量%、及び蒸留水を仕込み固形分重量比36質量%とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成b)を得た。
【0183】
[正極前駆体(組成c)の製造]
活性炭1~4のいずれか1つを53.1質量%、炭酸リチウムを33.5質量%、ファーネスブラックを3.5質量%、CMCを1.1質量%、PVPを1.0質量%、アクリルラテックスを7.8質量%、及び蒸留水を仕込み固形分重量比38質量%とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成c)を得た。
【0184】
[正極前駆体(組成d)の製造]
活性炭1~4のいずれか1つを73.5質量%、炭酸リチウムを14.6質量%、ファーネスブラックを2.2質量%、CMCを3.0質量%、PVPを2.7質量%、アクリルラテックスを4.0質量%、及び蒸留水を仕込み固形分重量比30質量%とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成d)を得た。
【0185】
[正極前駆体(組成e)の製造]
活性炭1~4のいずれか1つを88.0質量%、炭酸リチウムを4.7質量%、ファーネスブラックを1.5質量%、CMCを1.4質量%、PVPを1.5質量%、及びアクリルラテックスを2.9質量%、及び蒸留水を仕込み固形分重量比40質量%とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成e)を得た。
【0186】
[正極前駆体(組成f)の製造]
活性炭1~4のいずれか1つを33.7質量%、炭酸リチウムを51.1質量%、ファーネスブラックを4.8質量%、CMCを2.5質量%、PVPを1.3質量%、及びアクリルラテックスを6.6質量%、及び蒸留水を仕込み固形分重量比26質量%とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成f)を得た。
【0187】
《実施例1》
<正極前駆体の製造>
活性炭1、並びに表1に示す炭酸リチウム及び周速を用い、上記の組成aにおける、両面正極前駆体1及び片面正極前駆体1を得た。得られた両面及び片面正極前駆体1の正極活物質層の厚みを小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS-551を用いて、両面及び片面正極前駆体1の任意の10か所で測定した厚みの平均値から、アルミニウム箔の厚みを引いて求めた。その結果、両面及び片面正極前駆体1の正極活物質層の厚みは、片面あたり70μmであった。
【0188】
<Xの算出>
上記両面正極前駆体1を10cm×5cmの大きさに切断して試料1Aとし、重量Mを測定した。試料1Aを31.0gの蒸留水に含浸させ、25℃環境下3日間経過するまで維持することで、試料1A中の炭酸リチウムを蒸留水中に溶出させた。試料1Aを取り出し、150℃、3kPaの条件にて12時間真空乾燥した。この時の重量Mを測定した。スパチュラ、ブラシ、刷毛を用いて正極集電体上の活物質層を取り除き、正極集電体の重量Mを測定した。以上のM、M及びMから上記式(1)に従いXを算出した。得られた結果を表1に示す。
【0189】
<S、S、X及びYの算出>
[試料の調製]
上記両面正極前駆体1から1cm×1cmの小片を切り出し、10Paの真空中にてスパッタリングにより表面に金をコーティングして試料1Bとした。
【0190】
[表面SEM及びEDX測定]
上記作製した試料1Bについて、大気暴露下で正極前駆体表面のSEM、及びEDXを測定した。測定条件を以下に記す。
(SEM-EDX測定条件1)
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE-SEM S-4700
・加速電圧:10kV
・エミッション電流:1μA
・測定倍率:2000倍
・電子線入射角度:90°
・X線取出角度:30°
・デッドタイム:15%
・マッピング元素:C,O
・測定画素数:256×256ピクセル
・測定時間:60sec.
・積算回数:50回
・明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%~60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
(SEM-EDXの解析)
上記条件1で測定した表面SEM及びEDXから得られた画像を、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて上述した方法で画像解析することでS及びS/Xを算出した。その結果を表1に示す。
【0191】
[断面SEM及びEDX測定]
上記両面正極前駆体1から1cm×1cmの小片を切り出し、日本電子製のSM-09020CPを用い、アルゴンガスを使用し、加速電圧4kV、ビーム径500μmの条件にて両面正極前駆体1の面方向に垂直な断面を作製して、10Paの真空中にて金をスパッタリングにより断面にコーティングして試料1Cとした。続いて上述のSEM-EDX測定条件1にて、大気暴露下で正極前駆体断面のSEM及びEDXを測定した。
【0192】
上記条件1で測定した断面SEM及びEDXから得られた画像を、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて上述した方法で画像解析することでS、S/X、X及びYを算出した。その結果を表1に示す。
【0193】
<シワ状暗部の1個当たりの面積及びSの算出>
[試料の調製]
上記両面正極前駆体1から1cm×1cmの小片を切り出し、10Paの真空中にて3分30秒の真空蒸着により表面に金をコーティングして試料1Dとした。
【0194】
[表面SEM測定]
上記作製した試料1Dについて、大気暴露下で正極前駆体表面のSEMを測定した。測定条件を以下に記す。
(SEM測定条件2)
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE-SEM S-4800
・加速電圧:1kV
・エミッション電流:10μA
・作動距離:5.5mm
・測定倍率:10000倍
・測定画素数:1280×960ピクセル
(SEMの解析)
上記条件2で測定した表面SEMから得られた画像をグラフィックソフト(ペイント3D)にてシワ状暗部を指定して、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて上述した方法で画像解析することでシワ状暗部の1個当たりの面積及び合計面積率Sを算出した。その結果を表1に示す。
【0195】
<Sの算出>
[表面SEM及びEDX測定]
上記作製した試料1Dについて、大気暴露下で正極前駆体表面のSEMを測定した。測定条件を以下に記す。
(SEM-EDX測定条件3)
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE-SEM S-4800
・加速電圧:5kV
・エミッション電流:10μA
・作動距離:15mm
・測定倍率:10000倍
・マッピング元素:C,O
・測定画素数:1280×960ピクセル
・測定時間:500sec.
・明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%~60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
(SEM-EDXの解析)
上記条件3で測定した表面SEM及びEDXから得られた画像をグラフィックソフト(ペイント3D)にてシワ状暗部を指定して、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて上述した方法で画像解析することでSを算出した。その結果を表1に示す。
【0196】
<負極活物質の調製>
BET比表面積が3.4m/g、平均粒子径が5.1μmの市販の人造黒鉛150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)15gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置した。窒素雰囲気下、1000℃まで8時間かけて昇温し、同温度で4時間保持することにより、両者を熱反応させ、複合炭素材料1を得た。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料1を炉から取り出した。
【0197】
得られた複合炭素材料1について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は5.0μm、BET比表面積は6.5m/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料の人造黒鉛に対する質量比率は2%であった。
【0198】
<負極の製造>
複合炭素材料1を負極活物質として用いて、以下のように負極1を製造した。
複合炭素材料1を80質量%、アセチレンブラックを8質量%、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を12質量%、並びにNMP(N-メチルピロリドン)を混合し、その混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE-35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,548mPa・s、TI値は2.5であった。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚み10μmの電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して負極1を得た。得られた負極1を、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。上記で得られた負極1の負極活物質層の厚みを小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS-551を用いて、負極1の任意の10か所で測定した厚みの平均値から、銅箔の厚みを引いて求めた。その結果、負極1の負極活物質層の厚みは、片面あたり45μmであった。
【0199】
<非水系電解液の調製>
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、得られる非水系電解液に対してLiN(SOF)及びLiPFの濃度比が75:25(モル比)であり、かつLiN(SOF)及びLiPFの濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を混合溶媒中に溶解して非水系電解液を得た。
【0200】
得られた非水系電解液におけるLiN(SOF)及びLiPFの濃度は、それぞれ、0.9mol/L及び0.3mol/Lであった。
【0201】
<非水系ハイブリッドキャパシタの作製>
[蓄電素子の組立、乾燥]
得られた両面正極前駆体1、両面負極1、及び片面正極前駆体1を10cm×10cm(100cm)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体1を用い、更に両面負極1を21枚と両面正極前駆体1を20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体とした。この電極積層体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。乾燥した電極積層体を露点-45℃のドライ環境下にて、アルミラミネート包材から構成される外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、シール圧1.0MPaの条件でヒートシールした。
【0202】
[蓄電素子の注液、含浸、封止]
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、温度25℃、露点-40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入して、プレドープ処理前の非水系ハイブリッドキャパシタを形成した。続いて、減圧チャンバーの中に上記非水系ハイブリッドキャパシタを入れ、常圧から-87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。常圧から-87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す操作を4回繰り返したのち、蓄電素子を15分間静置した。常圧から-91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す操作を合計7回繰り返した。(常圧から、それぞれ-95、-96、-97、-81、-97、-97、及び-97kPaまで減圧した)。以上の手順により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
【0203】
非水系電解液を含浸させた電極積層体が収納された外装体を減圧シール機に入れ、-95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止し、非水系ハイブリッドキャパシタを得た。
【0204】
[プレドープ]
得られた非水系ハイブリッドキャパシタに対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT-3100U)を用いて、40℃環境下、電流値0.5Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を2.5時間継続する手法により初期充電を行い、負極にプレドープを行った。
【0205】
[エージング]
プレドープ後の非水系ハイブリッドキャパシタを25℃環境下、0.5Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。続いて、非水系ハイブリッドキャパシタを60℃の恒温槽に10時間保管した。
【0206】
[ガス抜き]
温度25℃、露点-40℃のドライエアー環境下で、エージング後の非水系ハイブリッドキャパシタのアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に上記非水系ハイブリッドキャパシタを入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から-80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す操作を合計3回繰り返した。減圧シール機に非水系ハイブリッドキャパシタを入れ、-90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。以上の手順により、非水系ハイブリッドキャパシタを完成させた。
【0207】
<非水系ハイブリッドキャパシタの評価>
[静電容量、Ra・Fの測定]
得られた非水系ハイブリッドキャパシタについて、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、上述した方法により、静電容量Fと25℃における内部抵抗Raを算出し、Ra・Fとエネルギー密度E/Vとを得た。得られた結果を表1に示す。
【0208】
《実施例2~21及び比較例1~5》
正極前駆体の正極活物質、アルカリ金属化合物の種類、配合比及びその平均粒子径、組成並びに周速をそれぞれ表1に示すとおりとした他は実施例1と同様にして実施例2~21と比較例1~5の正極前駆体及び非水系ハイブリッドキャパシタをそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた評価結果を表1に示す。
【0209】
《比較例6》
<正極前駆体(組成g)の製造>
活性炭1を87.5質量%、ファーネスブラックを3.0質量%、PVPを1.5質量%、CMCを3.0質量%、及び蒸留水をPRIMIX社製のプラネタリー式の低速撹拌羽を有する混練機ハイビスミックスを用いて表1に示す周速の条件で混練した。その後、結着剤として、アクリルラテックスを5.0質量%(固形分換算値、濃度40質量%の水分散液として添加)、及び蒸留水を仕込み固形分重量比36質量%になるように適量を加え、周速0.2m/sの条件下で混練して正極スラリーを得た。上記正極スラリーを、東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚み15μmのアルミニウム箔の片面及び両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥後、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。得られた正極前駆体(組成g)について、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を表1に示す。
【0210】
<非水系ハイブリッドキャパシタの製造、評価>
得られた正極前駆体(組成g)と負極活物質単位質量当たり211mAh/gに相当する金属リチウム箔を負極1の負極活物質層表面に貼り付けた負極を用いた他は実施例1と同様にして非水系ハイブリッドキャパシタの組立及び注液、含浸、封止を実施した。
【0211】
次いで、プレドープとして、上記で得た非水系ハイブリッドキャパシタを環境温度45℃の恒温槽の中で72時間保管し、金属リチウムをイオン化させて負極1にドープした。得られた非水系ハイブリッドキャパシタについて、実施例1と同様にしてエージング、ガス抜きを実施して非水系ハイブリッドキャパシタを製造し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0212】
《比較例7》
正極活物質を活性炭4とした他は比較例6と同様にして比較例7の正極前駆体及び非水系ハイブリッドキャパシタを作製し、各種の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0213】
【表1】
【0214】
表1中の「-」は、当該欄の成分を使用しなかった、又は当該欄の値を算出しなかったことを示す。
【0215】
上記で説明したとおり、正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物が分解し、充放電に関与できるアルカリ金属イオンが負極にプレドープされること、または電解液中に放出されることで、非水系ハイブリッドキャパシタの充放電が進行するようになる。
【0216】
実施例1~21及び比較例1~7の対比から分かるように、正極前駆体のアルカリ金属化合物の正極前駆体の表面SEMにより得られるシワ状暗部の合計面積率S[%]が0.3≦S≦15.0であれば、正極前駆体を非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときにRa・Fが小さく(内部抵抗が低い、すなわち入出力特性が高い)、かつエネルギー密度E/Vが高い特性を持つ非水系ハイブリッドキャパシタが得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本開示の正極前駆体は、例えば、自動車のハイブリット駆動システムの分野、瞬間電力ピークのアシスト用途等における非水系ハイブリッドキャパシタの正極前駆体として好適に利用できる。本開示の非水系ハイブリッドキャパシタは、リチウムイオンキャパシタとして適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されるため好ましい。
【符号の説明】
【0218】
1 シワ状暗部
2 明部
図1
図2