(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076550
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】モーター駆動装置及びモーター駆動方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20240530BHJP
G05B 13/02 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H02P29/00
G05B13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188138
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】坪内 耕介
(72)【発明者】
【氏名】松岡 玲
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅
(72)【発明者】
【氏名】及川 淳
【テーマコード(参考)】
5H004
5H501
【Fターム(参考)】
5H004GA03
5H004GA08
5H004HA14
5H004HB14
5H004KB02
5H004KB04
5H004KB06
5H004KC48
5H501BB11
5H501CC01
5H501DD06
5H501GG05
5H501GG11
5H501HA08
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501JJ23
5H501JJ24
5H501JJ26
5H501KK06
5H501LL22
(57)【要約】
【課題】過渡的な制御信号に対する駆動電流の追従性を向上できるモーター駆動装置及びモーター駆動方法を提供する。
【解決手段】モーター駆動装置は、外部からの制御信号に従って駆動電流を制御して出力するモーター駆動装置であって、駆動電流をモーターに出力する駆動電流出力部と、制御信号で指示される電流目標値と、駆動電流出力部から出力された電流出力値とに基づいて、駆動電流出力部の動作を制御するフィードバック制御部と、電流目標値と電流出力値との偏差、及び、電流目標値の変化量に基づいて、フィードバック制御部の制御ゲインを設定するゲイン設定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの制御信号に従って駆動電流を制御して出力するモーター駆動装置であって、
前記駆動電流を前記モーターに出力する駆動電流出力部と、
前記制御信号で指示される電流目標値と、前記駆動電流出力部から出力された電流出力値とに基づいて、前記駆動電流出力部の動作を制御するフィードバック制御部と、
前記電流目標値の変化量及び前記電流目標値と前記電流出力値との偏差に基づいて、前記フィードバック制御部の制御ゲインを設定するゲイン設定部と、を備える、
モーター駆動装置。
【請求項2】
前記ゲイン設定部は、前記変化量及び前記偏差が大きいほど前記制御ゲインを高く設定し、前記変化量及び前記偏差が小さいほど前記制御ゲインを低く設定する、
請求項1に記載のモーター駆動装置。
【請求項3】
前記ゲイン設定部は、
前記変化量が、複数の変化量しきい値によって区分けされたいずれの変化量範囲に属するかを判定するとともに、
前記偏差が、複数の偏差しきい値によって区分けされたいずれの偏差範囲に属するかを判定し、
前記変化量の属する前記変化量範囲と前記偏差の属する前記偏差範囲との組み合わせに基づいて、前記制御ゲインを設定する、
請求項1又は2に記載のモーター駆動装置。
【請求項4】
前記ゲイン設定部は、前記変化量範囲と前記偏差範囲との組み合わせに対応付けて予め設定されているゲイン設定値の中から、前記制御ゲインを選択する、
請求項3に記載のモーター駆動装置。
【請求項5】
前記フィードバック制御部は、前記偏差に比例して操作量を制御する比例制御、前記偏差を時間的に蓄積して操作量を制御する積分制御、及び前記偏差の変化に応じて操作量を制御する微分制御を行う、
請求項1に記載のモーター駆動装置。
【請求項6】
外部からの制御信号に従って駆動電流を制御して出力するモーター駆動方法であって、
前記駆動電流を前記モーターに出力する第1工程と、
前記制御信号で指示される電流目標値と、前記第1工程で出力された電流出力値とに基づいて、前記第1工程をフィードバック制御する第2工程と、を備え、
前記第2工程は、前記電流目標値の変化量及び前記電流目標値と前記電流出力値との偏差に基づいて、制御ゲインを設定する工程を含む、
モーター駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モーター駆動装置及びモーター駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モーター制御装置からの制御信号に従って駆動電流を制御してモーターに出力するモーター駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。モーター制御装置は、例えば、センサー等の出力に基づいてモーターの駆動状態を検出し、モーターが所望の駆動状態となるように、モーター駆動装置に対して制御信号を送信して駆動電流の目標値(以下、「電流目標値」と称する)を指示する。
【0003】
モーター駆動装置では、例えば、制御信号で指示された電流目標値と現在の駆動電流の出力値(以下、「電流出力値」と称する)に基づいて、駆動電流出力部の動作を制御する、いわゆるフィードバック制御が行われる。一般に、フィードバック制御を行う場合、制御ゲインは、1つに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モーター駆動装置には、入力される制御信号に正確に追従して駆動電流を出力することが要求される。しかしながら、制御ゲインが固定された一般的なフィードバック制御では、電流目標値が変化する過渡的な制御信号が入力されたときに、応答速度の高速化と安定性の向上とを両立させることが難しい。
【0006】
例えば、制御ゲインを高く設定すると、制御信号への応答性は向上するが、オーバーシュートや発振が起こりやすく、安定性が低下する(
図4C参照)。一方、制御ゲインを低く設定すると、上記の問題は発生しにくくなるが、制御信号への応答性が悪化する(
図4B参照)。
【0007】
本開示の目的は、過渡的な制御信号に対する駆動電流の追従性を向上できるモーター駆動装置及びモーター駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るモーター駆動装置は、
外部からの制御信号に従って駆動電流を制御して出力するモーター駆動装置であって、
前記駆動電流を前記モーターに出力する駆動電流出力部と、
前記制御信号で指示される電流目標値と、前記駆動電流出力部から出力された電流出力値とに基づいて、前記駆動電流出力部の動作を制御するフィードバック制御部と、
前記電流目標値の変化量及び前記電流目標値と前記電流出力値との偏差に基づいて、前記フィードバック制御部の制御ゲインを設定するゲイン設定部と、を備える。
【0009】
本開示に係るモーター駆動方法は、
外部からの制御信号に従って駆動電流を制御して出力するモーター駆動方法であって、
前記駆動電流を前記モーターに出力する第1工程と、
前記制御信号で指示される電流目標値と、前記第1工程で出力された電流出力値とに基づいて、前記第1工程をフィードバック制御する第2工程と、を備え、
前記第2工程は、前記電流目標値の変化量及び前記電流目標値と前記電流出力値との偏差に基づいて、制御ゲインを設定する工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るモーター駆動装置及びモーター駆動方法によれば、過渡的な制御信号に対する駆動電流の追従性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るモーター駆動装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、ゲイン設定テーブルの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、設定される制御ゲインの一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】
図4A~
図4Cは、制御信号CMDに対する駆動電流の追従性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施の形態に係るモーター駆動装置1の概略構成を示す図である。
【0014】
図1に示すように、モーター駆動装置1は、駆動電流出力部10及び駆動電流制御部20を有する。駆動電流出力部10は、電源からの入力電圧を変換してモーター101に駆動電流を出力する。駆動電流制御部20は、コントローラー102からの制御信号CMDに従って駆動電流出力部10の動作を制御する。
【0015】
モーター101は、例えば、単相直流モーターである。モーター101は、回転型モーターであってもよいし、直動型モーターであってもよい。モーター101は、モーター駆動装置1から供給される駆動電流の向き及び大きさに応じた駆動方向及び駆動速度で動作する。
【0016】
コントローラー102は、モーター101に取り付けられたセンサー等の出力に基づいてモーター101の駆動状態を検出し、モーター101が所望の駆動状態となるように、モーター駆動装置1に対して制御信号CMDを送信する。
【0017】
駆動電流出力部10は、スイッチング回路11、出力フィルター回路12、電流検出部13及びゲートドライブ回路14等を有する。
【0018】
スイッチング回路11は、例えば、4つのスイッチング素子(例えば、MOSFET)を有するフルブリッジ回路(Hブリッジ回路とも呼ばれる)で構成される。フルブリッジ回路の対角に配置された2組のスイッチング素子に交互に導通させるとともに、ONパルス幅を可変することにより、出力電流を制御することができる。
【0019】
出力フィルター回路12は、例えば、インダクター及びコンデンサーを有する。出力フィルター回路12は、スイッチング回路11から出力された電流を平滑化し、モーター101に駆動電流を出力する。なお、出力フィルター回路12は、回路形態によっては省略される場合もある。
【0020】
電流検出部13は、駆動電流の電流出力値I0を検出し、PID制御部21に出力する。
【0021】
ゲートドライブ回路14は、PWM制御部22からの駆動信号PWM信号に基づいて、スイッチング回路11のスイッチング素子のオン/オフを制御する。
【0022】
駆動電流制御部20は、機能モジュールとして、PID制御部21、PWM制御部22及びゲイン設定部23等を有する。駆動電流制御部20は、例えば、演算/制御装置としてのCPU(Central Processing Unit)、主記憶装置としてのROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有する、公知のマイコン制御回路で構成される。CPUは、例えば、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムを実行することにより、駆動電流制御部20の各機能モジュールを実現する。
【0023】
なお、駆動電流制御部20の機能モジュールの一部又は全部は、処理に応じて設けられたDSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)等の電子回路によって構成されてもよい。
【0024】
PID制御部21は、電流検出部13で検出された電流出力値I0及びコントローラー102からの制御信号CMDで指示された電流目標値Icmdに基づいて、電流出力値I0と電流目標値Icmdとが一致するようにPWM制御するための操作量Cを算出し、PWM制御部22に出力する。
【0025】
PID制御部21は、電流目標値Icmdと電流出力値I0との差(偏差e)に比例して操作量Cを制御する比例制御(P)、偏差eを時間的に蓄積して操作量Cを制御する積分制御(I)、及び偏差eの変化に応じて操作量Cを制御する微分制御(D)を行う。
【0026】
PID制御部21における制御ゲインは、比例制御に使用される比例ゲイン、積分制御に使用される積分ゲイン、及び微分制御に使用される微分ゲインを含む。
【0027】
PWM制御部22は、PID制御部21から出力された操作量Cに基づいてデューティ比を算出し、当該デューティ比を有する駆動信号PWMを生成してゲートドライブ回路14に出力する。
【0028】
ゲイン設定部23は、偏差算出部231、変化量算出部232及びゲイン決定部233を有する。ゲイン設定部23は、PID制御部21で使用される制御ゲインG、すなわち、比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインを設定する。従来は、制御ゲインGが1つに固定されていたのに対して、本実施の形態では、制御ゲインGが変更可能となっている。
【0029】
ゲイン設定部23において、偏差算出部231は、電流目標値Icmdと電流出力値I0との偏差eを算出する。変化量算出部232は、電流目標値Icmdの単位時間当たりの変化量ΔIcmdを算出する。変化量ΔIcmdは、電流目標値Icmdの傾きで表される。ゲイン決定部233は、偏差算出部231で算出された偏差eと、変化量算出部232で算出された変化量ΔIcmdに基づいて、制御ゲインGを設定する。
【0030】
具体的には、ゲイン決定部233は、変化量ΔI
cmd及び偏差eが大きいほど制御ゲインGを高く設定する。また、ゲイン決定部233は、変化量ΔI
cmd及び偏差eが小さいほど制御ゲインGを低く設定する。すなわち、ゲイン設決定部233は、変化量ΔI
cmd及び偏差eが大きい場合には、制御信号CMDに対する応答性を重視して制御ゲインGを設定し、変化量ΔI
cmd及び偏差eが小さい場合には、電流出力値I
0の安定性を重視して制御ゲインGを設定する。ゲイン決定部233における制御ゲインGの決定は、例えば、
図2に示すゲイン設定テーブルを参照して行われる。
【0031】
図2に示すゲイン設定テーブルでは、複数の変化量しきい値X0、X1、・・・によって変化量範囲が区分けされている。また、複数の偏差しきい値Y0、Y1、・・・によって偏差範囲が区分けされている。そして、変化量ΔI
cmdの属する変化量範囲と、偏差eの属する偏差範囲との組合せに対応付けて、ゲイン設定値G(X,Y)が設定されている。ゲイン設定値G(X,Y)は、変化量ΔI
cmd及び偏差eが大きいほど高く設定される。
【0032】
コントローラー102からモーター駆動装置1に、電流目標値I
cmdを指示する過渡的な制御信号CMDが入力された場合に設定される制御ゲインGの一例について、
図3を用いて説明する。
図3には、モーター駆動装置1に電流目標値I
cmdを指示する制御信号CMDが入力されたときの、電流出力値I
0、電流目標値の変化量ΔI
cmd、電流目標値I
cmdと電流出力値I
0との差(偏差e)、及び、設定される制御ゲインGの関係が示されている。
【0033】
図3において、電流目標値I
cmdは、タイミングT0からタイミングT2まで一定の変化量ΔI
cmdで増加し、タイミングT2以降は一定となっている。例えば、コントローラー102は、モーター101においてトルクの増大が検出された場合に、
図3に示すように、電流目標値I
cmdを増大して駆動電流を増大させることを指示する。
【0034】
タイミングT0~T1において、変化量ΔI
cmdは一定であり、変化量範囲X1~X2に属している。また、偏差eは、偏差範囲Y0~Y1に属している。
図2のゲイン設定テーブルを参照して、制御ゲインGはG(X1,Y0)に設定される。
【0035】
タイミングT1~T2において、変化量ΔI
cmdは一定であり、変化量範囲X1~X2に属している。また、偏差eは、偏差範囲Y1~Y2に属している。
図2のゲイン設定テーブルを参照して、制御ゲインGはG(X1,Y1)に設定される。ゲイン設定値G(X1,Y1)は、ゲイン設定値G(X1,Y0)より高いので、応答性を重視した制御が行われる。
【0036】
タイミングT2~T3において、変化量ΔI
cmdは0であり、変化量範囲X0~X1に属している。また、偏差eは、偏差範囲Y1~Y2に属している。
図2のゲイン設定テーブルを参照して、制御ゲインGはG(X0,Y1)に設定される。ゲイン設定値G(X0,Y1)は、ゲイン設定値G(X1,Y1)より低いので、安定性を重視した制御が行われる。つまり、変化量ΔI
cmdが0となった後は、偏差eは収束していくので、オーバーシュートや発振が抑制されるように、応答性よりも安定性が重視される。
【0037】
タイミングT3~T4において、変化量ΔI
cmdは0であり、変化量範囲X0~X1に属している。また、偏差eは、偏差範囲Y0~Y1に属している。
図2のゲイン設定テーブルを参照して、制御ゲインGはG(X0,Y0)に設定される。ゲイン設定値G(X0,Y0)は、ゲイン設定値G(X0,Y1)より低いので、より安定性を重視した制御が行われる。つまり、偏差eがしきい値Y1を下回った後は、電流出力値I
0が電流目標値I
cmdに一致するように、さらに安定性が重視される。
【0038】
図4は、制御信号CMD(電流目標値I
cmd)に対する駆動電流の追従性を示す図である。
図4Aは、実施の形態に係る電流制御、すなわち、変化量ΔI
cmd及び偏差eに基づいて制御ゲインGを設定して電流制御が行われた場合の追従性を示している。
図4Bは、制御ゲインGが低い値で固定されている場合、
図4Cは、制御ゲインGが高い値で固定されている場合について示している。
【0039】
制御ゲインGが低い値で固定されている場合、
図4Bに示すように、電流出力値I
0が電流目標値I
cmdに到達するまでに時間がかかり、制御信号CMDに対する応答性が悪い。また、制御ゲインGが高い値で固定されている場合、
図4Cに示すように、応答速度は速いが、オーバーシュートや発振が起こりやすく、安定性が低下する。これに対して、変化量ΔI
cmd及び偏差eに基づいて制御ゲインGを適宜調整した場合、
図4Aに示すように、駆動電流の応答性及び安定性を両立でき、制御信号CMD(電流目標値I
cmd)に対する追従性が格段に向上する。
【0040】
このように、実施の形態に係るモーター駆動装置1及びモーター駆動方法は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0041】
すなわち、モーター駆動装置1は、コントローラー102(外部)からの制御信号CMDに従って駆動電流を制御して出力するモーター駆動装置であって、駆動電流をモーター101に出力する駆動電流出力部10と、制御信号CMDで指示される電流目標値Icmdと、駆動電流出力部10から出力された電流出力値I0とに基づいて、駆動電流出力部10の動作を制御するPID制御部21(フィードバック制御部)と、電流目標値の変化量ΔIcmd、及び、電流目標値Icmdと電流出力値Iとの偏差eに基づいて、PID制御部21の制御ゲインGを設定するゲイン設定部23と、を備える。
【0042】
また、実施の形態に係るモーター駆動方法は、コントローラー102(外部)からの制御信号CMDに従って駆動電流を制御して出力するモーター駆動方法であって、駆動電流をモーターに出力する第1工程(駆動電流出力部10の動作)と、制御信号CMDで指示される電流目標値Icmdと、第1工程で出力された電流出力値I0とに基づいて、第1工程をフィードバック制御する第2工程(駆動電流制御部20の動作)と、を備え、第2工程は、電流目標値の変化量ΔIcmd、及び、電流目標値Icmdと電流出力値I0との偏差eに基づいて、制御ゲインGを設定する工程(ゲイン設定部23の動作)を含む。
【0043】
モーター駆動装置1及びモーター駆動方法によれば、制御ゲインを適宜変更して適切なフィードバック制御が行われるので、過渡的な制御信号CMDに対する駆動電流の追従性を格段に向上することができる。
【0044】
また、モーター駆動装置1において、ゲイン設定部23は、変化量ΔIcmd及び偏差eが大きいほど制御ゲインGを高く設定し、変化量ΔIcmd及び偏差eが小さいほど制御ゲインGを低く設定する。これにより、電流目標値Icmdの立ち上がり、又は立ち下がり時は応答性を重視したフィードバック制御が行われ、電流目標値Icmdの変化が少ない(典型的には0)場合は安定性を重視したフィードバック制御が行われる。したがって、過渡的な制御信号CMDに対する駆動電流の追従性が向上する。
【0045】
また、モーター駆動装置1において、ゲイン設定部23は、変化量ΔIcmdが、複数の変化量しきい値X0、X1、・・・によって区分けされたいずれの変化量範囲に属するかを判定するとともに、偏差eが、複数の偏差しきい値Y0、Y1、・・・によって区分けされたいずれの偏差範囲に属するかを判定し、変化量ΔIcmdの属する変化量範囲と偏差eの属する偏差範囲との組み合わせに基づいて制御ゲインGを設定する。これにより、ゲイン設定部23における処理負荷が軽減されるので、電流制御の高速化を図ることができ、駆動電流の追従性がさらに向上する。
【0046】
また、モーター駆動装置1において、前記ゲイン設定部23は、変化量範囲と偏差範囲との組み合わせに対応付けて予め設定されているゲイン設定値G(X,Y)の中から、制御ゲインGを選択する。これにより、ゲイン設定部23における処理負荷がさらに軽減されるので、電流制御の高速化を図ることができ、駆動電流の追従性がさらに向上する。
【0047】
また、モーター駆動装置1において、PID制御部21(フィードバック制御部)は、偏差eに比例して操作量を制御する比例制御、偏差eを時間的に蓄積して操作量を制御する積分制御、及び偏差eの変化に応じて操作量を制御する微分制御を行う。これにより、制御信号CMDに対して駆動電流を効率よく追従させることができる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0049】
例えば、実施の形態では、フィードバック制御の一例としてPID制御を行う場合について説明したが、本発明は、PI制御やPD制御等、その他のフィードバック制御においても適用することができる。
【0050】
また、実施の形態では、ゲイン設定部233がゲイン設定テーブルを参照して制御ゲインを設定する場合について説明したが、ゲイン決定部233は、偏差e及び変化量cmdを変数とする関数を用いて、制御ゲインを演算により決定してもよい。
【0051】
また例えば、実施の形態では、駆動電流出力部10がスイッチング方式の回路構成を有する場合について説明したが、駆動電流出力部10は、リニア方式等、スイッチング方式以外の回路構成を有していてもよい。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 モーター駆動装置
10 駆動電流出力部
20 駆動電流制御部
21 PID制御部(フィードバック制御部)
22 PWM制御部
23 ゲイン設定部
101 モーター
102 コントローラー
231 偏差算出部
232 変化量算出部
233 ゲイン決定部