IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFE建材株式会社の特許一覧

特開2024-76556合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法
<>
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図1
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図2
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図3
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図4
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図5
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図6
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図7
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図8
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図9
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図10
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図11
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図12
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図13
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図14
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図15
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図16
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図17
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図18
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図19
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図20
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図21
  • 特開-合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076556
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20240530BHJP
   E21D 11/14 20060101ALI20240530BHJP
   E21D 5/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/14
E21D5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188145
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜也
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155BB01
2D155EB01
2D155EB05
2D155EB10
2D155KB04
2D155KB05
(57)【要約】
【課題】本開示は、鉄筋かごと鋼殻との固定を迅速かつ容易に行うことができる合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法を提供するものである。
【解決手段】合成セグメントは、地中に土留構造として埋設される筒状体を構成する合成セグメントであって、内部にコンクリートが充填される鋼殻と、鋼殻の内部に配筋される鉄筋を組み立てた状態の鉄筋かごと、を備え、鋼殻は、鉄筋かごを固定する固定部を有し、固定部は、鉄筋かごが押し付けられることで鉄筋かごの鉄筋と接合するものである。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に土留構造として埋設される筒状体を構成する合成セグメントであって、
内部にコンクリートが充填される鋼殻と、
前記鋼殻の内部に配筋される鉄筋を組み立てた状態の鉄筋かごと、
を備え、
前記鋼殻は、
前記鉄筋かごを固定する固定部を有し、
前記固定部は、
前記鉄筋かごが押し付けられることで前記鉄筋かごの前記鉄筋と接合する合成セグメント。
【請求項2】
前記固定部は、
弾性変形可能な部材で構成されており、前記鉄筋かごの前記鉄筋が配置される中空部を有し、外力により前記中空部の入口が開放する請求項1に記載の合成セグメント。
【請求項3】
前記鋼殻は、
前記筒状体の周方向に延び、前記筒状体の軸方向において板面を対向させて配置された一対の主桁と、
前記一対の主桁のそれぞれの前記周方向の両端部に接合された一対の継手板と、
前記一対の主桁及び前記一対の継手板により構成された枠体に対し前記筒状体の外周側に接合されたスキンプレートと、
を有し、
前記固定部は、
前記スキンプレートに固定されている請求項2に記載の合成セグメント。
【請求項4】
前記固定部は、
折り曲げられた棒鋼により形成されており、
前記棒鋼の弾性力を利用して前記鉄筋かごが取り付けられる請求項3に記載の合成セグメント。
【請求項5】
前記固定部は、
前記筒状体の周方向における前記鉄筋かごの回転によって、前記鉄筋かごを構成する前記鉄筋と結合する請求項1~4のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項6】
前記固定部は、
前記筒状体の軸方向における前記鉄筋かごの移動によって、前記鉄筋かごを構成する前記鉄筋と結合する請求項1~4のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項7】
前記固定部は、
前記筒状体の径方向における前記鉄筋かごの移動によって、前記鉄筋かごを構成する前記鉄筋と結合する請求項1~4のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項8】
前記鉄筋かごは、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の周方向に延びる主筋と、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の軸方向に延びる配力筋と、
を有し、
前記配力筋が、前記固定部と接合する前記鉄筋である請求項5に記載の合成セグメント。
【請求項9】
前記鉄筋かごは、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の周方向に延びる主筋と、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の軸方向に延びる配力筋と、
を有し、
前記主筋が、前記固定部と接合する前記鉄筋である請求項6に記載の合成セグメント。
【請求項10】
前記鉄筋かごは、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の周方向に延びる主筋と、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の軸方向に延びる配力筋と、
を有し、
前記主筋又は前記配力筋が、前記固定部と接合する前記鉄筋である請求項7に記載の合成セグメント。
【請求項11】
前記固定部は、
直線状に延びるように形成されており、前記スキンプレートに固定される第1延設部と、
前記筒状体の径方向において、前記第1延設部と対向するように設けられた部分であり、前記第1延設部に対して特定の間隔を空けて設けられている第2延設部と、
曲線状に形成された部分であって、前記第1延設部と前記第2延設部とを接続する部分である第1曲線部と、
前記第1延設部に隣接して配置されており、前記固定部に当接した前記鉄筋の移動により前記第1延設部から離間し、前記固定部の弾性力によって前記第1延設部に近づくように設けられている係合部と、
曲線状に形成された部分であって、前記第2延設部と前記係合部とを接続する部分である第2曲線部と、
を有し、
前記固定部は、
前記第1延設部と、前記第2延設部と、前記係合部と、前記第1曲線部と、前記第2曲線部とによって環状に形成された環状部を含み、前記環状部は前記中空部を形成し、前記環状部の内部に前記鉄筋かごの前記鉄筋が配置される請求項3又は4に記載の合成セグメント。
【請求項12】
前記固定部は、
直線状に延びるように形成されており、前記スキンプレートに固定される第1延設部と、
前記第1延設部に向かって凸となるL字状に形成された部分を有し、前記第1延設部と対向するように構成されており、前記固定部に当接した前記鉄筋の移動により前記第1延設部から離間し、前記固定部の弾性力によって前記第1延設部に近づくように設けられている係合部と、
曲線状に形成された部分であり、前記第1延設部と前記係合部とを接続する部分である弧状部と、
を有し、
前記固定部は
前記第1延設部と、前記係合部と、前記弧状部とによって環状に形成された環状部を含み、前記環状部は前記中空部を形成し、前記環状部の内部に前記鉄筋かごの前記鉄筋が配置される請求項3又は4に記載の合成セグメント。
【請求項13】
前記固定部は、
円弧状に形成されており、前記スキンプレートに固定される弧状部と、
前記弧状部の一方の端部と一体に形成されており、L字形状に形成された第1係合部と、
前記弧状部の他方の端部と一体に形成されており、逆L字形状に形成された第2係合部と、
を有し、
前記固定部は、
前記固定部に当接した前記鉄筋の移動により前記第1係合部と前記第2係合部とが離間し、前記固定部の弾性力によって前記第1係合部と前記第2係合部とが近づくように形成されており、
前記固定部は
前記弧状部と、前記第1係合部と、前記第2係合部とによって環状に形成された環状部を含み、前記環状部は前記中空部を形成し、前記環状部の内部に前記鉄筋かごの前記鉄筋が配置される請求項3又は4に記載の合成セグメント。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項に記載の合成セグメントを周方向及び軸方向に複数組み合わせて形成された、土留構造物。
【請求項15】
地中に土留構造として埋設される筒状体を構成する合成セグメントの製造方法であって、
前記筒状体の周方向に延び、前記筒状体の軸方向において板面を対向させて配置された一対の主桁、前記一対の主桁のそれぞれの前記周方向の両端部に接合された一対の継手板、並びに前記一対の主桁及び前記一対の継手板により構成された枠体に対し前記筒状体の外周側に接合されるスキンプレートを接合し、鉄筋かごが接合される固定部を前記スキンプレートに固定して鋼殻を組み立てる工程と、
前記鋼殻の内部において前記周方向に延びる主筋、及び、前記鋼殻の内部において前記軸方向に延びる配力筋を接合して前記鉄筋かごを組み立てる工程と、
前記鋼殻の内部に前記鉄筋かごを配置し、前記鉄筋かごの鉄筋を前記固定部に当接させた状態で前記鉄筋かごを移動させることで前記鉄筋かごの前記鉄筋を前記固定部に接合させ、前記鉄筋かごを前記鋼殻に固定する工程と、
を備えた合成セグメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地中に埋設される土留構造物を形成する合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛直方向の地下構造物を構築する土留構造物の圧入工法として、アーバンリング工法(登録商標)が知られている。アーバンリング工法は、土留パネルを沈設地点でリング状の構造物に組み立てて、圧入装置でリング状の構造物を地中に圧入する。そして、リング状の構造物を地中に圧入した後、リング状の構造物の内部を掘削して排土し、その上に新たなリング状の構造物を増設するといった作業工程を所定の深度まで繰り返すことにより、立坑等の地下構造物を構築するものである。
【0003】
また、トンネル構築法の一つにシールド工法がある。シールド工法とは、立坑内に設置した掘進機を一定長さ掘進させる毎に、その後部で、例えば、円弧状の合成セグメントをリング状に組み立ててセグメントリングを構築し、これを順次、延長させて円筒形の覆工を形成してシールドトンネルを構築する工法である。
【0004】
上記のような立坑又はトンネル等に用いられる合成セグメントは、土留構造物の軸方向端面を形成する主桁、周方向の端面を形成する継手板及び外周面を形成するスキンプレートを有する鋼殻の内部に鉄筋かごを配置し、コンクリート等の充填材を充填して形成されている(例えば、特許文献1を参照)。合成セグメントは、鋼殻と充填材とを一体に形成することにより、強度及び剛性を確保しているため、周囲の地盤からの土圧に対し対抗できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-127763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の合成セグメントは、鉄筋かごの鉄筋と、鋼殻とを溶接により固定している。このような合成セグメントの場合、鉄筋かごは複数の鉄筋に分割されており、いくつかの鉄筋が部分的に鋼殻に溶接されている。また、鋼殻内において、複数の鉄筋同士が溶接等あるいは他の手段により接合されて鉄筋かごが組み立てられ、鉄筋かごが鋼殻に固定されている。したがって、合成セグメントの製造工程において、コンクリートの打設工程の前に、鉄筋かごを溶接によって鋼殻に固定する必要があり、打設工場において溶接作業を行うことにより速やかに打設工程を行うことができず合理的ではない。そのため、コンクリートの打設工程にあたり、鉄筋かごと鋼殻との固定が、迅速かつ容易に行われることが望まれている。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、鉄筋かごと鋼殻との固定を迅速かつ容易に行うことができる合成セグメント、土留構造物及び合成セグメントの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る合成セグメントは、地中に土留構造として埋設される筒状体を構成する合成セグメントであって、内部にコンクリートが充填される鋼殻と、鋼殻の内部に配筋される鉄筋を組み立てた状態の鉄筋かごと、を備え、鋼殻は、鉄筋かごを固定する固定部を有し、固定部は、鉄筋かごが押し付けられることで鉄筋かごの鉄筋と接合するものである。
【0009】
本開示に係る土留構造物は、上記の合成セグメントを周方向及び軸方向に複数組み合わせて形成されたものである。
【0010】
本開示に係る合成セグメントの製造方法は、地中に土留構造として埋設される筒状体を構成する合成セグメントの製造方法であって、筒状体の周方向に延び、筒状体の軸方向において板面を対向させて配置された一対の主桁、一対の主桁のそれぞれの周方向の両端部に接合された一対の継手板、並びに一対の主桁及び一対の継手板により構成された枠体に対し筒状体の外周側に接合されるスキンプレートを接合し、鉄筋かごが接合される固定部をスキンプレートに固定して鋼殻を組み立てる工程と、鋼殻の内部において周方向に延びる主筋、及び、鋼殻の内部において軸方向に延びる配力筋を接合して鉄筋かごを組み立てる工程と、鋼殻の内部に鉄筋かごを配置し、鉄筋かごの鉄筋を固定部に当接させた状態で鉄筋かごを移動させることで鉄筋かごの鉄筋を固定部に接合させ、鉄筋かごを鋼殻に固定する工程と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示の合成セグメント及び土留構造物は、鋼殻が鉄筋かごを固定する固定部を有し、鋼殻の固定部は、鉄筋かごが押し付けられることで鉄筋かごの鉄筋と接合する。合成セグメント及び土留構造物は、鉄筋かごの鉄筋を鋼殻の固定部に接合させることで、鉄筋かごを鋼殻に固定できる。そのため、合成セグメント及び土留構造物は、鉄筋かごを溶接により鋼殻に固定する必要がなく、鉄筋かごと鋼殻との固定を迅速かつ容易に行うことができる。また、本開示の合成セグメントの製造方法は、鋼殻の内部に鉄筋かごを配置し、鉄筋かごの鉄筋を固定部に当接させた状態で鉄筋かごを移動させることで鉄筋かごの鉄筋を固定部に接合させ、鉄筋かごを鋼殻に固定する工程を有するものである。そのため、合成セグメントの製造方法は、鉄筋かごを溶接により鋼殻に固定する必要がなく、鉄筋かごと鋼殻との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る土留構造物の概念図である。
図2】実施の形態1に係るセグメントリングを軸方向ADに見た概念図である。
図3】実施の形態1に係る合成セグメントの一例を内周側から見た斜視図である。
図4】実施の形態1に係る合成セグメントの一例を外周側から見た斜視図である。
図5】実施の形態1に係る合成セグメントの一例を周方向CDに見た側面図である。
図6】実施の形態1に係る合成セグメントを内周側から見た内部構造の一例を示す正面図である。
図7】実施の形態1に係る合成セグメントを軸方向ADに見た内部構造の一例を示す平面図である。
図8】実施の形態1に係る合成セグメントを周方向CDに見た内部構造の一例を示す断面図である。
図9】実施の形態1に係る合成セグメントの固定部の概念図である。
図10】実施の形態1に係る合成セグメントの固定部に対して鉄筋を移動させた状態の概念図である。
図11】実施の形態1に係る合成セグメントの固定部に鉄筋が接続した状態の概念図である。
図12】実施の形態1に係る合成セグメントを構成する鋼殻及び鉄筋かごを軸方向ADに見た概念図である。
図13図12に示す鉄筋かごを周方向CDに移動させた概念図である。
図14】実施の形態1に係る合成セグメントを構成する鉄筋かごを鋼殻内に設置させた概念図である。
図15図14の状態における鉄筋かごの鉄筋と、固定部との関係を示す概念図である。
図16】実施の形態1に係る合成セグメントを構成する鉄筋かごを鋼殻に固定させた状態を軸方向ADに見た概念図である。
図17図16の状態における鉄筋かごの鉄筋と、固定部との関係を示す概念図である。
図18】実施の形態2に係る合成セグメントを内周側から見た内部構造の一例を示す正面図である。
図19】実施の形態3に係る合成セグメントの固定部の概念図である。
図20】実施の形態3に係る合成セグメントにおいて鉄筋を結合する際の固定部の概念図である。
図21】実施の形態4に係る合成セグメントの固定部の概念図である。
図22】実施の形態4に係る合成セグメントにおいて鉄筋を結合する際の固定部の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に係る合成セグメント及び土留構造物について図面等を参照しながら説明する。なお、図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、上、下、左、右、前、後、表及び裏等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向及び向きを限定するものではない。
【0014】
実施の形態1.
[土留構造物200]
図1は、実施の形態1に係る土留構造物200の概念図である。なお、図1に示す、軸方向ADは、土留構造物200の軸方向を表しており、周方向CDは、土留構造物200の周方向を表している。また、径方向RDは、土留構造物200の径方向を表しており、Y1側は、土留構造物200の内周側を表しており、Y2側は、土留構造物200の外周側を表している。
【0015】
土留構造物200は、土留壁として、例えばトンネルの覆工に用いられ、地山を掘削して形成された掘削孔の壁面に設置される。土留構造物200は、地中に設置され、土留壁として、地下鉄、道路トンネル、上下水道、電力、通信のとう道、共同溝等を構成するトンネル、あるいは、立坑等に用いられる。また、土留構造物200は、圧入ケーソン工法の土留壁として用いられてもよい。土留構造物200が圧入ケーソン工法の土留壁として用いられる場合、土留構造物200は、圧入工法等の施工法において地中の掘削面を覆い、地盤220に沈設される。
【0016】
土留構造物200は、地中に土留構造として埋設される筒状体である。土留構造物200は、筒状に形成されており、中空の部分210を有している。土留構造物200が圧入ケーソン工法の土留壁として用いられる場合、土留構造物200は、地中において筒状の軸方向ADが上下方向となるように配置される。
【0017】
土留構造物200は、軸方向ADに見た場合に円形状に形成されており、全体として円筒形状に形成されているが、円筒形状に限定されるものではない。土留構造物200は、筒状体であれば、例えば、軸方向ADに見た場合に、長円形状あるいは小判形状、あるいは、角が丸みを帯びた四角形状等、他の形状に形成されていてもよい。
【0018】
土留構造物200は、後述する少なくとも1つのセグメントリング110を有するか、又は、セグメントリング110を複数有し、複数のセグメントリング110が、トンネルの延びる軸方向ADに連続して接続されて形成されている。また、土留構造物200は、後述する合成セグメント100を筒状体の周方向CD及び軸方向ADに複数組み合わせて形成されている。
【0019】
[セグメントリング110]
図2は、実施の形態1に係るセグメントリング110を軸方向ADに見た概念図である。セグメントリング110は、地中の掘削面を覆う構造物である。セグメントリング110は、軸方向ADに見た場合に環状に形成されており、全体として筒状に形成されている。セグメントリング110は、例えば、円筒形状に形成されているが、円筒形状に限定されるものではない。
【0020】
土留構造物200は、複数のセグメントリング110が土留構造物200の延びる方向、すなわち、軸方向ADに沿って連結されることで構築される。なお、土留構造物200は、1つのセグメントリング110によって構成されてもよい。土留構造物200が例えばシールド工法に用いられる場合には、土留構造物200は、トンネルの断面の1周分(1リング)ずつセグメントリング110が配置されることにより構築される。したがって、セグメントリング110は、土留構造物200において、トンネルの延びる方向の1単位を構成する。
【0021】
セグメントリング110は、周方向CDにおいて、複数個の合成セグメント100に分割されている。すなわち、複数の合成セグメント100が環状に配置され、隣接する合成セグメント100同士が互いに連結されることによりセグメントリング110が形成される。なお、図2に示すセグメントリング110は、周方向CDにおいて、合成セグメント100の大きさが略等しいように記載されているが、合成セグメント100の大きさは周方向CDにおける設置位置によってそれぞれ異なる大きさに形成されてもよい。
【0022】
図1に示すように、土留構造物200において、軸方向ADに隣接するセグメントリング110は、セグメントリング110を構成する合成セグメント100の位置が周方向CDにずれた配置状態で組み立てられている。より具体的には、土留構造物200において、セグメントリング110を構成する合成セグメント100が千鳥配置の関係となるように構築されている。
【0023】
[合成セグメント100]
図3は、実施の形態1に係る合成セグメント100の一例を内周側から見た斜視図である。図4は、実施の形態1に係る合成セグメント100の一例を外周側から見た斜視図である。図5は、実施の形態1に係る合成セグメント100の一例を周方向CDに見た側面図である。図3図5を用いて合成セグメント100について説明する。
【0024】
合成セグメント100は、地中に土留構造として埋設される筒状体を構成する。より詳細には、合成セグメント100は、環状に配置され周方向CDに互いに連結されることにより地中の掘削面を覆う筒状に形成されたセグメントリング110を構成する。合成セグメント100は、土留構造物200の周方向CD及び軸方向ADに複数連結されることにより、土留構造物200を構築する。合成セグメント100は、複数の鋼材を組み合わせて構成される箱形の構造である。合成セグメント100は、セグメントリング110の軸方向ADに見た場合に円弧状に形成されており、全体として湾曲した形状に形成されている。
【0025】
合成セグメント100は、内部にコンクリート80が充填される鋼殻10と、鋼殻10の内部に配筋される鉄筋45を組み立てた状態の鉄筋かご40(図6参照)と、を備える。また、合成セグメント100は、鋼殻10の内部に充填されたコンクリート80を備える。合成セグメント100は、箱状に形成された鋼殻10と、鉄筋かご40と、鋼殻10の内部に充填材として充填されたコンクリート80との合成構造であり、鋼殻10と、鉄筋かご40と、コンクリート80とが一体化されて構成されている。
【0026】
[鋼殻10]
鋼殻10は、図3図5に示すように、筒状体の周方向CDに延び、筒状体の軸方向ADに離間して設けられ、軸方向ADにおいて板面を対向させて配置された一対の主桁11を有する。また、鋼殻10は、一対の主桁11のそれぞれの周方向CDの両端部に接合された一対の継手板12を有する。また、鋼殻10は、一対の主桁11及び一対の継手板12により構成された枠体に対し筒状体の外周側に接合されるスキンプレート16を有する。鋼殻10は、これらの一対の主桁11と、一対の継手板12と、スキンプレート16とを互いに溶接により固定して一体化することで箱状に形成されている。
【0027】
一対の主桁11は、土留構造物200及びセグメントリング110の軸方向ADにおいて、隣り合う合成セグメント100同士が当接する部分であり、隣り合う合成セグメント100同士が接続される部分である。一対の主桁11は、土留構造物200及びセグメントリング110の軸方向ADにおいて、合成セグメント100の両端部に位置するものである。すなわち、主桁11は、土留構造物200及びセグメントリング110の軸方向ADにおいて、スキンプレート16の両端部に設けられており、軸方向ADにおいて、合成セグメント100の一方の端面と他方の端面とを形成する。
【0028】
主桁11は、平板状に形成されている。主桁11は、トンネルの断面形状に応じて軸方向ADに見た平面視で円弧状に形成されており、環状体であるセグメントリング110の一部を構成する扇形状に形成されている。主桁11の板面は、周方向CD及び径方向RDに延び、周方向CD及び径方向RDに平行である。
【0029】
図3に示すように、一対の主桁11の内、一方の主桁11には、軸方向ADに積み重ねた上下に隣り合う合成セグメント100同士を連結するためのボルト孔13が複数形成されている。ボルト孔13の数は、複数に限定されるものでなく、単数でもよい。ボルト孔13は、一例として周方向CDの中央の領域及び両端部の領域に、1つずつ形成されている。
【0030】
また、図3に示すように、コンクリート80において、ボルト孔13に対応する箇所には、ボルトボックス81が設けられている。ボルトボックス81は、合成セグメント100において、コンクリート80と主桁11との間にボルト孔13を露出させる空間を形成する。ボルトボックス81は、軸方向ADにおいて、隣接する合成セグメント100の主桁11同士を締結するためのボルトを締結するために利用される作業用の空間となる。
【0031】
図3及び図4に示すように、一対の主桁11の内、他方の主桁11には、軸方向ADに積み重ねた上下に隣り合う合成セグメント100同士を連結するためのボス14が複数形成されている。ボス14の数は、複数に限定されるものでなく、単数でもよい。ボス14には、ボルトを螺設するための雌ねじを有する取付孔が形成されている。
【0032】
軸方向ADにおいて隣り合う2つの合成セグメント100は、主桁11同士を突き合わせ、ボルトにより接合される。主桁11同士の接合は、ボルトボックス81を利用し、ボルトをボルト孔13に挿通し、隣り合う合成セグメント100の主桁11に設けられたボス14の雌ねじに螺合させる。ボルト孔13に挿通されたボルトの軸部をボス14の雌ねじに螺合させ、締結することにより、軸方向ADにおいて隣り合う2つの合成セグメント100は連結される。
【0033】
ボルト孔13及びボス14の形成数は、図示例に限定されず、例えば合成セグメント100の大きさ及び形状等を考慮して決定される。なお、軸方向ADにおいて隣接する合成セグメント100同士の連結は、ボルト等により連結される構造に限定されるものではなく、例えばワンタッチ継手により行ってもよく、また、他の周知の技術を用いて行ってもよい。
【0034】
一対の継手板12は、土留構造物200及びセグメントリング110の周方向CDにおいて、隣り合う合成セグメント100同士が当接する部分であり、隣り合う合成セグメント100同士が接続される部分である。一対の継手板12は、周方向CDにおいて、合成セグメント100の両端部を構成する部材である。
【0035】
図3及び図5に示すように、継手板12は、板状に形成されており、矩形状の鋼板からなる。継手板12は、軸方向AD且つ径方向RDに延びるように形成されている。継手板12は、一対の主桁11の長手方向の両端部同士の間に架け渡され、固定されている。なお、主桁11の長手方向は、周方向CDである。継手板12が位置する合成セグメント100の端部には、1つのセグメントリング110を形成するために合成セグメント100同士を連結するための継手が取り付けられていてもよい。
【0036】
継手板12は、合成セグメント100の周方向CDの両端部において、一対の主桁11と、一対の主桁11の間に配置されたスキンプレート16とによって形成された開口を覆うように配置されている。継手板12は、スキンプレート16の円弧方向の両端部に設けられており、合成セグメント100の周方向CDの側面を形成する。
【0037】
図3及び図5に示すように、継手板12には、掘削孔の周方向CDに配置した左右に隣り合う合成セグメント100を連結するためのボルト孔15が複数形成されている。ボルト孔15の数は、複数に限定されるものでなく、単数でもよい。また、図3に示すように、コンクリート80において、ボルト孔15に対応する箇所には、ボルトボックス82が設けられている。
【0038】
ボルトボックス82は、合成セグメント100において、コンクリート80と継手板12との間にボルト孔15を露出させる空間を形成する。ボルトボックス82は、周方向CDにおいて、隣接する合成セグメント100の継手板12同士を締結するためのボルトを締結するために利用される作業用の空間となる。
【0039】
周方向CDにおいて左右に隣り合う合成セグメント100は、継手板12を突き合わせ、ボルト孔15に挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。図示したボルト孔15の形成数は一例であって、これに限定されるものではなく、例えば合成セグメント100の大きさ及び形状等を考慮して決定される。なお、周方向CDにおいて隣接する合成セグメント100同士の連結は、ボルトとナットとにより連結される構造に限定されるものではなく、例えばワンタッチ継手により行ってもよく、また、他の周知の技術を用いて行ってもよい。
【0040】
スキンプレート16は、合成セグメント100の地山側に面する板状の部材であり、矩形の鋼板を面方向に円弧状に曲げて成形したものである。スキンプレート16は、曲面を有する板状に形成されている。スキンプレート16は、周方向CD且つ軸方向ADに延びるように形成されている。スキンプレート16は、軸方向ADに見た平面視で円弧状に形成されていると共に、径方向RDに見た側面視で四角形状に形成されている。
【0041】
図4及び図5に示すように、スキンプレート16は、一対の主桁11及び一対の継手板12を接合して得られた枠体の地山側の端面の開口部を塞ぐように接合される。すなわち、スキンプレート16は、合成セグメント100を構成する主桁11及び継手板12の外周側に取り付けられている。スキンプレート16は、合成セグメント100が地中に設置された状態において、掘削孔の壁面に面しており、土留構造物200の外周側の周壁を構成する。
【0042】
図6は、実施の形態1に係る合成セグメント100を内周側から見た内部構造の一例を示す正面図である。図7は、実施の形態1に係る合成セグメント100を軸方向ADに見た内部構造の一例を示す平面図である。図8は、実施の形態1に係る合成セグメント100を周方向CDに見た内部構造の一例を示す断面図である。なお、合成セグメント100の内部構造を説明するために、図7及び図8では全てのコンクリート80の図示を省略し、図6では右側半分のコンクリート80の図示を省略する。また、図6では、径方向RDにおいて、第1主筋41側の構成を示すため、第2主筋42の図示を省略する。また、図8は、図6のA-A線位置の断面を矢視方向に見た断面図である。図6図8を用いて、合成セグメント100のコンクリート80内の構造について更に説明する。
【0043】
[鉄筋かご40]
図6図8に示すように、合成セグメント100は、コンクリート80内に、鉄筋かご40を備える。鉄筋かご40は、コンクリート80内に配筋する鉄筋45を予め組み立てたものである。鉄筋かご40は、複数の鉄筋45が組み合わされて籠状に形成されている。鉄筋かご40は、箱状に形成されてもよく、あるいは、板状に形成されてもよい。鉄筋かご40は、例えば溶接又は番線等を用いて複数の鉄筋45が結束されて一体化されている。
【0044】
鉄筋かご40は、複数の鉄筋45を有する。より詳細には、鉄筋かご40は、鋼殻10の内部において周方向CDに延びる第1主筋41及び第2主筋42と、鋼殻10の内部において軸方向ADに延びる配力筋43と、を有する。鉄筋45は、第1主筋41、第2主筋42及び配力筋43の総称である。鉄筋かご40は、第1主筋41、第2主筋42及び配力筋43を接合して籠状に組み立てられている。
【0045】
第1主筋41及び第2主筋42は、合成セグメント100の軸方向力と曲げモーメントを負担する鉄筋45である。第1主筋41は、合成セグメント100の周方向CDに延びるように設けられている。第1主筋41は、合成セグメント100の軸方向ADに見た場合に円弧状に形成されている。なお、第1主筋41の形状は、円弧状に限定されるものではなく、上述した長円形状の土留構造物200等において、合成セグメント100の軸方向ADに見た場合に土留構造物200の形状に沿う形状であればよい。
【0046】
鉄筋かご40は、合成セグメント100の軸方向ADに沿って複数の第1主筋41を有し、複数の第1主筋41は、それぞれ軸方向ADに間隔を空けて配置されている。なお、図6図8では、鉄筋かご40が複数の第1主筋41を有する例を示しているが、第1主筋41の数は、複数に限定されるものでなく、合成セグメント100の大きさ等によっては、単数でもよい。
【0047】
第1主筋41は、第2主筋42に対して外周側(Y2側)に配置されている。第1主筋41は、径方向RDにおいて、第2主筋42よりもスキンプレート16に近い位置に配置される。すなわち、第1主筋41は、径方向RDにおいて、第2主筋42の配設位置とスキンプレート16との間に配置される。
【0048】
第2主筋42は、合成セグメント100の周方向CDに延びるように設けられている。第2主筋42は、合成セグメント100の軸方向ADに見た場合に円弧状に形成されている。なお、第2主筋42の形状は、円弧状に限定されるものではなく、上述した長円形状の土留構造物200等において、合成セグメント100の軸方向ADに見た場合に土留構造物200の形状に沿う形状であればよい。
【0049】
鉄筋かご40は、合成セグメント100の軸方向ADに沿って複数の第2主筋42を有し、複数の第2主筋42は、それぞれ軸方向ADに間隔を空けて配置されている。なお、図6図8では、鉄筋かご40が複数の第2主筋42を有する例を示しているが、第2主筋42の数は、複数に限定されるものでなく、合成セグメント100の大きさ等によっては、単数でもよい。
【0050】
第2主筋42は、第1主筋41に対して内周側(Y1側)に配置されている。第2主筋42は、径方向RDにおいて、第1主筋41よりもスキンプレート16から遠い位置に配置される。すなわち、第2主筋42は、第1主筋41に対してスキンプレート16の配置側とは反対側に配置される。
【0051】
鉄筋かご40は、第1主筋41と第2主筋42とが互いに径方向RDに間隔を空けて配置されている。鉄筋かご40は、径方向RDに第1主筋41及び第2主筋42の2列の主筋を備えているが、径方向RDにおいて単列の主筋を備えてもよく、3列以上の主筋を備えていてもよい。すなわち、鉄筋かご40は、第1主筋41のみを有していてもよく、第1主筋41及び第2主筋42の他に1以上の主筋を有していてもよい。
【0052】
配力筋43は、第1主筋41及び第2主筋42を拘束するように囲む鉄筋45である。配力筋43は、いわゆる配力筋の役割を有すると共に、フープ筋あるいは帯筋等の役割を有する。配力筋43は、例えば、第1主筋41及び第2主筋42に掛かった荷重を隣り合う第1主筋41及び第2主筋42に伝達し、荷重を分散させる。また、配力筋43は、合成セグメント100に作用するせん断力に抵抗する。
【0053】
配力筋43は、環状に形成されており、第1主筋41及び第2主筋42を外側から囲むように、ロの字形状に形成されている。なお、配力筋43は、ロの字の一部を切り欠いた形状に形成されていてもよい。第1主筋41及び第2主筋42は、環状に形成された配力筋43の内側に固定されている。なお、合成セグメント100に必要な強度等が確保できれば、第1主筋41又は第2主筋42は、環状に形成された配力筋43の外側に固定されてもよい。
【0054】
配力筋43は、軸方向ADに延びると共に、径方向RDに延びるように形成されている。配力筋43は、外側配力筋部43a及び内側配力筋部43bと、第1配力筋部43c及び第2配力筋部43dとを有する。
【0055】
外側配力筋部43a及び内側配力筋部43bは、配力筋43において、合成セグメント100の軸方向ADに延びるように設けられている。外側配力筋部43aは、内側配力筋部43bに対して外周側(Y2側)に配置されている。外側配力筋部43aは、径方向RDにおいて、内側配力筋部43bよりもスキンプレート16に近い位置に配置される。内側配力筋部43bは、外側配力筋部43aに対して内周側(Y1側)に配置されている。内側配力筋部43bは、径方向RDにおいて、外側配力筋部43aよりもスキンプレート16から遠い位置に配置される。
【0056】
第1配力筋部43c及び第2配力筋部43dは、配力筋43において、合成セグメント100の径方向RDに延びるように設けられている。軸方向ADにおいて、第1配力筋部43cは、外側配力筋部43a及び内側配力筋部43bに対して一方の端部側に設けられており、第2配力筋部43dは、外側配力筋部43a及び内側配力筋部43bに対して他方の端部側に設けられている。
【0057】
外側配力筋部43aの一方の端部と第1配力筋部43cの外周側の端部とが折り曲げられており、それらが接続されており、外側配力筋部43aの他方の端部と第2配力筋部43dの外周側の端部とが折り曲げられており、それらが接続されている。同様に、内側配力筋部43bの一方の端部と第1配力筋部43cの内周側の端部とが折り曲げられており、それらが接続されており、内側配力筋部43bの他方の端部と第2配力筋部43dの内周側の端部とが折り曲げられており、それらが接続されている。
【0058】
配力筋43は、一本の棒鋼を折り曲げて形成されていてもよいし、複数の棒鋼を組み合わせて形成されていてもよい。配力筋43は、並列している複数の第1主筋41及び第2主筋42の間を接続することにより、一体の鉄筋かご40を形成する。
【0059】
配力筋43は、鉄筋かご40において、第1主筋41及び第2主筋42の長手方向、つまり周方向CDに沿って複数配置されている。なお、配力筋43の数は、複数に限定されるものでなく、単数でもよい。
【0060】
[固定部50]
図9は、実施の形態1に係る合成セグメント100の固定部50の概念図である。鋼殻10は、鉄筋かご40を固定する固定部50を有する。固定部50は、鉄筋かご40を鋼殻10内に固定する治具である。固定部50は、鉄筋かご40が押し付けられることで鉄筋かご40の鉄筋45と接合する。固定部50は、押圧による弾性変形を利用して鉄筋かご40が取り付けられ、鉄筋かご40と係合する。鉄筋かご40の鉄筋45を固定部50に当接させ、固定部50に押し付けることで、鉄筋かご40の鉄筋45は、固定部50に接続され、鉄筋かご40は、鋼殻10に固定される。
【0061】
図6及び図8に示すように、鋼殻10は、合成セグメント100の軸方向ADに沿って複数の固定部50を有し、複数の固定部50は、それぞれ軸方向ADに間隔を空けて配置されている。また、図6及び図7に示すように、鋼殻10は、合成セグメント100の周方向CDに沿って複数の固定部50を有し、複数の固定部50は、それぞれ周方向CDに間隔を空けて配置されている。
【0062】
図6及び図8に示す例では、鋼殻10は、軸方向ADに沿って2つの固定部50を有している。固定部50は、周方向CDに設置される他の固定部50との関係において、鉄筋かご40を固定できるのであれば、軸方向ADにおいて1つの固定部50のみが設けられてもよい。また、鋼殻10には、軸方向ADにおいて3つ以上の固定部50が設けられてもよい。
【0063】
図6及び図7に示す例では、鋼殻10は、周方向CDに沿って6つの固定部50を有している。固定部50は、軸方向ADに設置される他の固定部50との関係において、鉄筋かご40を固定できるのであれば、周方向CDにおいて5つ以下の固定部50が設けられてもよい。また、鋼殻10には、周方向CDにおいて7つ以上の固定部50が設けられてもよい。
【0064】
固定部50は、スキンプレート16に固定されている。固定部50は、鋼殻10のスキンプレート16の内周側(Y1側)の面に溶接されており、スキンプレート16に固定されている。すなわち、固定部50は、コンクリート80が充填されるスキンプレート16の面に固定されている。固定部50は、スキンプレート16に直接固定されてもよく、スキンプレート16との間に鋼材等、他の部材を介してスキンプレート16に固定されてもよい。
【0065】
図9に示すように、固定部50は、折り曲げられた棒鋼により形成されており、棒鋼の弾性力を利用して鉄筋かご40が取り付けられる。固定部50は、渦巻状に折り曲げられて形成されている。固定部50は、折り曲げられた一本の棒鋼により形成されており、環状に形成された部分を有する。固定部50は、一方の端部が棒鋼の一部と当接して環状の部分を形成し、他方の端部が環状の部分から突出するように形成されている。
【0066】
固定部50は、例えば、丸鋼により構成される。ただし、固定部50は、丸鋼と同様の機能及び強度が確保できれば他の素材により構成されてもよい。例えば、固定部50は、折り曲げられた鋼板等の鋼材により構成されてもよい。
【0067】
図9に示すように、固定部50は、第1延設部51と、第2延設部52と、係合部53と、第1曲線部54と、第2曲線部55とを有する。固定部50は、第1延設部51、第2延設部52、係合部53、第1曲線部54及び第2曲線部55が一体に形成されている。
【0068】
第1延設部51は、直線状に延びる部分である。第1延設部51は、固定部50において、スキンプレート16に固定される部分である。また、第1延設部51は、固定部50と鉄筋かご40の鉄筋45とを係合させる際に、鉄筋45の移動をガイドする部分である。第1延設部51は、固定部50の一方の端部50aを含んでいる。
【0069】
第2延設部52は、筒状体の径方向RDにおいて、第1延設部51と対向するように設けられた部分であり、第1延設部51に対して特定の間隔を空けて設けられた部分である。第2延設部52は、直線状に延びる部分である。なお、第2延設部52は、直線状に延びる形状に限定するものではなく、曲線状あるいは波線状等、他の形状に形成されてもよい。固定部50は、第1延設部51が外周側(Y2側)に配置され、第2延設部52が内周側(Y1側)に配置されるようにスキンプレート16に固定される。
【0070】
係合部53は、後述する中空部50cの入口を形成する部分である。係合部53が第1延設部51から離れることで、中空部50cの入口が開口し、係合部53が第1延設部51に近づくことで、中空部50cの入口が閉鎖する。係合部53は、第1延設部51に隣接して配置されており、固定部50に当接した鉄筋45の移動により固定部50に加わる力によって第1延設部51から離間し、固定部50の弾性力によって第1延設部51に近づくように設けられている。
【0071】
係合部53は、第1延設部51と当接する部分であり、第1延設部51に沿って設けられている部分である。なお、係合部53は、固定部50において、第1延設部51に当接していることが望ましいが、中空部50cに配置された鉄筋45が中空部50cから外れなければ、係合部53と、第1延設部51との間に隙間が形成されていてもよい。係合部53は、固定部50の他方の端部50bを含んでいる。
【0072】
第1曲線部54は、曲線状に形成された部分であり、例えば、円弧状に形成されている部分である。第1曲線部54の一方の端部は、第1延設部51と一体に形成されており、第1曲線部54の他方の端部は、第2延設部52と一体に形成されている。すなわち、第1曲線部54は、第1延設部51と、第2延設部52とを接続する部分である。
【0073】
第2曲線部55は、曲線状に形成された部分であり、例えば、円弧状に形成されている部分である。第2曲線部55の一方の端部は、第2延設部52と一体に形成されており、第2曲線部55の他方の端部は、係合部53と一体に形成されている。すなわち、第2曲線部55は、第2延設部52と、係合部53とを接続する部分である。
【0074】
固定部50は、第1延設部51の一部と、第2延設部52と、係合部53と、第1曲線部54と、第2曲線部55とによって、環状に形成された環状部56を含む。環状部56は、例えば長円形状に形成されているが、長円形状に限定するものではなく、円形状、小判形状、あるいは、角が丸みを帯びた四角形状等、他の形状に形成されていてもよい。環状部56の内周側の壁面は中空部50cを構成し、中空部50cは、固定部50の貫通孔を形成する。環状部56の内部となる中空部50cには、鉄筋かご40の鉄筋45が配置される。環状部56は、中空部50cを形成する。
【0075】
軸方向ADに見た場合に、第2曲線部55と、第1延設部51との間には、第2曲線部55の曲線状の表面と、第1延設部51の直線状の表面とによって三角形状の隙間57が形成されている。第1延設部51の端部50aは、環状部56から突出するように設けられている。
【0076】
なお、図9では、鋼殻10において、第1延設部51の端部50aが環状部56に対して右側に突出する向きに固定部50が配置されているが、第1延設部51の端部50aが環状部56に対して左側に突出する向きに固定部50が配置されてもよい。すなわち、鋼殻10において、隙間57が環状部56に対して右側に位置するように固定部50が配置されているが、隙間57が環状部56に対して左側に位置するように固定部50が配置されてもよい。
【0077】
図10は、実施の形態1に係る合成セグメント100の固定部50に対して鉄筋45を移動させた状態の概念図である。図11は、実施の形態1に係る合成セグメント100の固定部50に鉄筋45が接続した状態の概念図である。図10及び図11を用いて、固定部50と鉄筋45との接続方法について説明する。なお、図11において点線で示した円は、固定部50に接続する前の鉄筋45を示している。
【0078】
図10に示すように、鉄筋かご40の鉄筋45を、第1延設部51に沿って環状部56に向かって移動させる。隙間57(図9参照)に到達した鉄筋45は、第1延設部51と係合部53とに沿って移動し、鉄筋45の外周面と第2曲線部55の湾曲面との当接によって、係合部53が第1延設部51から離間する方向に移動する。係合部53が第1延設部51から離間すると、第1延設部51と係合部53との間に空間が形成され、中空部50cの入口50dを開放する。固定部50は、弾性変形可能な部材で構成されており、鉄筋かご40の鉄筋45が配置される中空部50cを有し、外力により中空部50cの入口50dが開放する。
【0079】
鉄筋45が、固定部50の中空部50c内に配置されると、係合部53と第1延設部51との間に鉄筋45が存在しなくなるので、固定部50の弾性力によって、係合部53が第1延設部51に近づく方向に移動する。係合部53が第1延設部51に近づくことで、中空部50cの入口50d(図10参照)は閉鎖される。図11に示すように、中空部50cに配置された鉄筋45は、環状部56によって囲まれており、固定部50の環状部56に固定される。
【0080】
[合成セグメント100の製造方法]
図12は、実施の形態1に係る合成セグメント100を構成する鋼殻10及び鉄筋かご40を軸方向ADに見た概念図である。なお、図12は、鋼殻10の内部構成を示すために主桁11を透過させた状態で示している。次に、図6及び図12を用いて、地中に土留構造として埋設される筒状体を構成する合成セグメント100の製造方法を説明する。図12に示すように、合成セグメント100は、鋼殻10と、鉄筋かご40とが別々に製造される。
【0081】
まず、鋼殻10を組み立てる工程について説明する。鋼殻10は、一対の主桁11及び一対の継手板12が接合されて枠体が形成され、枠体の径方向RDの外側にスキンプレート16が配置される。一対の主桁11、一対の継手板12及びスキンプレート16は、例えば治具上に配置されて鋼殻10の形に組み合わされ、各部材間を溶接などの接合手段により接合される。
【0082】
一対の主桁11、一対の継手板12及びスキンプレート16が組み合わされた後、鋼殻10の内部の構造を設置する工程が行われる。例えば、鉄筋かご40が接合される固定部50が、溶接によりスキンプレート16に接合される。固定部50は、第1延設部51(図9参照)が周方向CDに延びるような向きで、スキンプレート16に配置されて固定される。
【0083】
固定部50は、一対の主桁11、一対の継手板12及びスキンプレート16が組み合わされた後にスキンプレート16に固定されてもよく、一対の主桁11、一対の継手板12及びスキンプレート16が組み合わされる前にスキンプレート16に固定されてもよい。
【0084】
また、合成セグメント100の周方向CDを接続するためのボルトボックス82(図3参照)を構成する各部材が主桁11、継手板12及びスキンプレート16に接合される。鋼殻10が組み立てられた後、鋼殻10は、例えばコンクリート80を打設する工場などに移動される。
【0085】
次に、鉄筋かご40を組み立てる工程について説明する。鉄筋かご40は、鋼殻10への設置前に予め組み立てられている。合成セグメント100は、図12に示すように、鋼殻10と、鉄筋かご40とを別々に製造し、それぞれを組み合わせることにより製造される。すなわち、鉄筋かご40を構成する主要な部分は、鋼殻10に取り付けながら徐々に組み立てられるものではない。
【0086】
上述したように鉄筋かご40は、第1主筋41、第2主筋42及び配力筋43を有する。第1主筋41、第2主筋42及び配力筋43が組み合わされて鉄筋かご40が製造される。鉄筋かご40は、鋼殻10の内部において周方向CDに延びる第1主筋41及び第2主筋42、並びに、鋼殻10の内部において軸方向ADに延びる配力筋43がそれぞれ接合されて組み立てられる。第1主筋41と配力筋43とは、溶接によって固定されており、あるいは、番線を用いて結束されて固定されている。同様に、第2主筋42と配力筋43とは、溶接によって固定されており、あるいは、番線を用いて結束されて固定されている。
【0087】
次に、予め組み立てられた鉄筋かご40と、予め組み立てられた鋼殻10に固定する工程が行われる。作業者は、鋼殻10の内部に鉄筋かご40を配置し、鉄筋かご40の鉄筋45を固定部50に当接させた状態で鉄筋かご40を移動させることで鉄筋かご40の鉄筋45を固定部50に接合させ、鉄筋かご40を鋼殻10に固定する。当該工程について図面を用いて更に詳細に説明する。
【0088】
図13は、図12に示す鉄筋かご40を周方向CDに移動させた概念図である。なお、図13は、鋼殻10の内部構成を示すために主桁11を透過させた状態で示している。次に、鋼殻10の内部に鉄筋かご40が設置される工程が行われる。図13に示すように、作業者は、予め組み立てられた鋼殻10と、予め組み立てられた鉄筋かご40とを組み合わせる。作業者は、鉄筋かご40を、鋼殻10内に挿入する。この際、鉄筋かご40は、鉄筋かご40と鋼殻10との最終的な結合状態に対して、鉄筋かご40を周方向CDに回転させた状態で、鋼殻10内へ挿入される。作業者は、固定部50の環状部56に対して第1延設部51(図9参照)が突出する方向に、鉄筋かご40を回転させる。
【0089】
図14は、実施の形態1に係る合成セグメント100を構成する鉄筋かご40を鋼殻10内に設置させた概念図である。図15は、図14の状態における鉄筋かご40の鉄筋45と、固定部50との関係を示す概念図である。なお、図14及び図15は、鋼殻10の内部構成を示すために主桁11を透過させた状態で示している。図14及び図15に示すように、鉄筋かご40を鋼殻10に設置させる場合に、鉄筋かご40の鉄筋45と、固定部50の第1延設部51とを当接させる。なお、図14及び図15に示す例では、第1延設部51に当接させる鉄筋45は、配力筋43である。すなわち、配力筋43が、固定部50と接合する鉄筋45である。
【0090】
図16は、実施の形態1に係る合成セグメント100を構成する鉄筋かご40を鋼殻10に固定させた状態を軸方向ADに見た概念図である。図17は、図16の状態における鉄筋かご40の鉄筋45と、固定部50との関係を示す概念図である。なお、図16及び図17は、鋼殻10の内部構成を示すために主桁11を透過させた状態で示している。図16に示すように、鉄筋かご40を周方向CDに回転させ、固定部50と鉄筋かご40の配力筋43とを結合させる。なお、固定部50と配力筋43とを結合させる際の、鉄筋かご40の回転方向は、鉄筋かご40を鋼殻10に挿入させる際に回転させた方向と反対の方向である。すなわち、作業者は、配力筋43を第1延設部51に沿って、環状部56の方向へ移動させるように鉄筋かご40を回転させる。
【0091】
固定部50は、筒状体の周方向CDにおける鉄筋かご40の回転によって、鉄筋かご40を構成する鉄筋45と結合する。鉄筋かご40を固定部50に当接させながら周方向CDに回転させることで、配力筋43と固定部50とが結合し、鉄筋かご40と鋼殻10とが接続される。合成セグメント100は、固定部50によって、鉄筋かご40を鋼殻10に溶接することなく、鉄筋かご40を鋼殻10に設置することができる。
【0092】
鉄筋かご40は、径方向RDにおいて、鋼殻10の内側に設置された固定部50の上に載置される。これにより鉄筋かご40の第1主筋41、第2主筋42及び配力筋43は、スキンプレート16から距離を空けて配置される。これにより、第1主筋41及び第2主筋42は、充填されるコンクリート80の内部に適正なかぶり厚さを持って配置される。
【0093】
鋼殻10の内側に鉄筋かご40が配置された後は、コンクリート80が鋼殻10内に充填される。鋼殻10の開口側に型枠を設置し、鋼殻10の両サイド端部(継手板12近傍)に設置された充填口より鋼殻10及び型枠で構成される空間内にコンクリート80が充填される。コンクリート80が固化した後、型枠が外され、合成セグメント100が完成する。
【0094】
[合成セグメント100の作用効果]
従来の合成セグメントの製造工程では、鉄筋かごを構成する鉄筋は、分割されており、部分的に鋼殻に溶接されている場合がある。そして、このような場合、コンクリートの打設工場において、鉄筋かごを溶接する作業を行う必要があり、コンクリートの打設工程と鉄筋かごの溶接工程とが混在してしまい作業が合理的でない場合がある。
【0095】
合成セグメント100は、鋼殻10が鉄筋かご40を固定する固定部50を有し、固定部50は、鉄筋かご40が押し付けられることで鉄筋かご40の鉄筋45と接合する。合成セグメント100は、鉄筋かご40の鉄筋45を鋼殻10の固定部50に接合させることで、鉄筋かご40を鋼殻10に固定できる。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【0096】
合成セグメント100の製造方法は、鋼殻10の内部に鉄筋かご40を配置し、鉄筋かご40の鉄筋45を固定部50に当接させた状態で鉄筋かご40を移動させることで鉄筋かご40の鉄筋45を固定部50に接合させる。そして、合成セグメント100の製造方法は、鉄筋かご40の鉄筋45を固定部50に接合させることで、鉄筋かご40を鋼殻10に固定する。合成セグメント100の製造方法は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がないため、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【0097】
また、固定部50は、弾性変形可能な部材で構成されており、鉄筋かご40の鉄筋45が配置される中空部50cを有し、外力により中空部50cの入口50dが開放する。固定部50が上記の構成を備えることで、固定部50は、固定部50の入口50dに鉄筋かご40の鉄筋45が押し付けられることにより、入口50dが開放される。そして、その入口50dから中空部50c内に鉄筋かご40の鉄筋45が入った後、固定部50は、弾性変形により入口50dが閉塞され、固定部50と鉄筋かご40の鉄筋45とが接合され、鋼殻10に鉄筋かご40が固定される。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【0098】
また、固定部50は、スキンプレート16に固定されている。作業者は、予め組み立てられた鉄筋かご40を、スキンプレート16に予め固定されている固定部50に押し付けることで鉄筋かご40の鉄筋45と接合することができる。作業者は、鉄筋かご40の鉄筋45を固定部50に接合させることで、鉄筋かご40を鋼殻10に固定できる。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【0099】
また、固定部50は、折り曲げられた棒鋼により形成されており、棒鋼の弾性力を利用して鉄筋かご40が取り付けられる。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【0100】
また、固定部50は、折り曲げられた棒鋼により形成されており、棒鋼の直径及び構造等により、鉄筋45とスキンプレート16との間に一定の距離を確保することができる。そのため、合成セグメント100は、充填されるコンクリート80の内部において適正なかぶり厚さを持って第1主筋41等の鉄筋45を配置できる。また、合成セグメント100は、固定部50によって、充填されるコンクリート80の内部において適正なかぶり厚さを持って第1主筋41等の鉄筋45を配置できるため、かぶり厚さを確保するためのスペーサーを用いる必要がない。
【0101】
また、固定部50は、筒状体の周方向CDにおける鉄筋かご40の回転によって、鉄筋かご40を構成する鉄筋45と結合する。作業者は、当該構成によって、予め組み立てられた鉄筋かご40を回転させるだけで予め組み立てられた鋼殻10に固定できる。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【0102】
また、配力筋43が、固定部50と接合する鉄筋かご40の鉄筋45である。作業者は、当該構成によって、予め組み立てられた鉄筋かご40を回転させるだけで予め組み立てられた鋼殻10に固定できる。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【0103】
また、固定部50は、第1延設部51と、第2延設部52と、係合部53と、第1曲線部54と、第2曲線部55とによって環状に形成された環状部56を含み、環状部56は中空部50cを形成し、環状部56の内部に鉄筋かご40の鉄筋45が配置される。合成セグメント100は、環状部56に鉄筋45が配置されるため、鉄筋45が固定部50から外れにくくなる。そのため、合成セグメント100は、コンクリート80の打設時において合成セグメント100に振動を加えても鉄筋45が固定部50から外れにくくなり、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を維持できる。
【0104】
実施の形態2.
図18は、実施の形態2に係る合成セグメント100を内周側から見た内部構造の一例を示す正面図である。なお、図18では、径方向RDにおいて、第1主筋41側の構成を示すため、第2主筋42の図示を省略する。実施の形態1に係る合成セグメント100と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、図18を用いて、実施の形態2が実施の形態1と異なる点を中心に説明し、実施の形態2で説明しない構成は実施の形態1と同様である。
【0105】
実施の形態2の合成セグメント100は、実施の形態1の合成セグメント100に対して固定部50の向きと、固定部50に接続される鉄筋45とが異なるものである。
【0106】
実施の形態1の合成セグメント100は、第1延設部51が周方向CDに沿って延びるように固定部50が配置されているのに対し、実施の形態2の合成セグメント100は、第1延設部51が軸方向ADに沿って延びるように固定部50が配置されている。また、実施の形態1の合成セグメント100では固定部50と配力筋43とが接続されるのに対し、実施の形態2の合成セグメント100では固定部50と第1主筋41とが接続される。
【0107】
合成セグメント100の製造工程において、固定部50は、溶接によりスキンプレート16に接合される。固定部50は、第1延設部51(図9参照)が軸方向ADに延びるような向きで、スキンプレート16に配置されて固定される。
【0108】
作業者は、鉄筋かご40を、鋼殻10内に挿入する。この際、鉄筋かご40は、鉄筋かご40と鋼殻10との最終的な結合状態に対して、鉄筋かご40を軸方向ADに移動させた状態で、鋼殻10内へ挿入される。作業者は、固定部50の環状部56に対して第1延設部51(図9参照)が突出する方向に、鉄筋かご40を移動させる。
【0109】
鉄筋かご40を鋼殻10に設置させる場合に、鉄筋かご40の鉄筋45と、固定部50の第1延設部51とを当接させる。第1延設部51に当接させる鉄筋45は、第1主筋41である。すなわち、第1主筋41が、固定部50と接合する鉄筋45である。
【0110】
鉄筋かご40を軸方向ADに移動させ、固定部50と鉄筋かご40の第1主筋41とを結合させる。なお、固定部50と第1主筋41とを結合させる際の、鉄筋かご40の移動方向は、鉄筋かご40を鋼殻10に挿入させる際に移動させた方向と反対の方向である。すなわち、作業者は、第1主筋41を第1延設部51に沿って、環状部56の方向へ移動させるように鉄筋かご40を移動させる。
【0111】
固定部50は、筒状体の軸方向ADにおける鉄筋かご40の移動によって、鉄筋かご40を構成する鉄筋45と結合する。鉄筋かご40を固定部50に当接させながら移動させることで、第1主筋41と固定部50とが結合し、鉄筋かご40と鋼殻10とが接続される。合成セグメント100は、固定部50によって、鉄筋かご40を鋼殻10に溶接することなく、鉄筋かご40を鋼殻10に設置することができる。
【0112】
[合成セグメント100の作用効果]
固定部50は、筒状体の軸方向ADにおける鉄筋かご40の移動によって、鉄筋かご40を構成する鉄筋45と結合する。作業者は、当該構成によって、予め組み立てられた鉄筋かご40を軸方向ADに移動させるだけで予め組み立てられた鋼殻10に固定できる。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【0113】
また、第1主筋41が、固定部50と接合する鉄筋かご40の鉄筋45である。作業者は、当該構成によって、予め組み立てられた鉄筋かご40を軸方向ADに移動させるだけで予め組み立てられた鋼殻10に固定できる。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。
【0114】
また、固定部50を有する実施の形態2に係る合成セグメント100は、実施の形態1の合成セグメント100と同様の構成を有する部分については、同様の効果を発揮させることができる。
【0115】
実施の形態3.
図19は、実施の形態3に係る合成セグメント100の固定部150の概念図である。図20は、実施の形態3に係る合成セグメント100において鉄筋45を結合する際の固定部150の概念図である。実施の形態1及び実施の形態2に係る合成セグメント100と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、図19及び図20を用いて、実施の形態3が実施の形態1及び実施の形態2と異なる点を中心に説明し、実施の形態3で説明しない構成は実施の形態1及び実施の形態2と同様である。
【0116】
実施の形態3に係る合成セグメント100は、固定部150の構造が実施の形態1及び実施の形態2の固定部50と異なるものである。なお、固定部150の配置、設置の向き及び設置の数等、構造以外の固定部150の構成は、実施の形態1及び実施の形態2の固定部50と同様である。
【0117】
[固定部150]
鋼殻10は、固定部150を有する。固定部150は、鉄筋かご40を鋼殻10内に固定する治具である。固定部150は、押圧による弾性変形を利用して鉄筋かご40が取り付けられ、鉄筋かご40と係合する。鉄筋かご40の鉄筋45を固定部150に当接させ、固定部150に押し付けることで、鉄筋かご40の鉄筋45は、固定部150に接続され、鉄筋かご40は、鋼殻10に固定される。
【0118】
図19に示すように、固定部150は、折り曲げられた棒状の鋼材であり、環状に形成された部分を有する。固定部150は、アメリカンピン状に形成されており、弧状に折り曲げられた部分と、先端部が反り上がった部分とを有するように形成されている。固定部150は、例えば、丸鋼により構成される。ただし、固定部150は、丸鋼と同様の機能及び強度が確保できれば他の素材により構成されてもよい。
【0119】
図19に示すように、固定部150は、第1延設部151と、係合部152と、弧状部153とを有する。固定部150は、第1延設部151、係合部152及び弧状部153が一体に形成されている。
【0120】
第1延設部151は、直線状に延びる部分である。第1延設部151は、固定部150において、スキンプレート16に固定される部分である。また、第1延設部151は、固定部150と鉄筋かご40の鉄筋45とを係合させる際に、鉄筋45の移動をガイドする部分である。第1延設部151は、固定部150の一方の端部150aを含んでいる。
【0121】
係合部152は、径方向RDにおいて、第1延設部151と対向するように設けられた部分である。係合部152は、第1延設部151に向かって凸となるL字状に形成された部分を有し、L字状の曲折した部分であって、曲折した部分の外周側の部分が、第1延設部151と対向するように構成されている。
【0122】
係合部152は、第1延設部151と当接する部分であり、第1延設部151に沿って設けられている部分である。なお、係合部152は、固定部150において、第1延設部151に当接していることが望ましいが、後述する中空部150cに配置された鉄筋45が中空部150cから外れなければ、係合部152と、第1延設部51との間に隙間が形成されていてもよい。係合部152は、固定部150の他方の端部150bを含んでいる。
【0123】
係合部152は、後述する中空部150cの入口150dを形成する部分である。係合部152が第1延設部151から離れることで、中空部150cの入口150dが開口し、係合部152が第1延設部151に近づくことで、中空部150cの入口150dが閉鎖する。係合部152は、固定部150に当接した鉄筋45の移動により固定部150に加わる力によって第1延設部151から離間し、固定部150の弾性力によって第1延設部151に近づくように設けられている。
【0124】
係合部152は、曲線部152aと、先端部152bと、接続部152cとを有する。曲線部152aは、円弧状に折り曲げられた部分である。曲線部152aは、L字状に形成された係合部152の角部分を形成する部分である。先端部152bは、曲線部152aに対して接続部152cとは反対側の部分を構成する。先端部152bは、直線状に形成されているが、第1延設部151から離れるように曲線状に反った形状でもよい。先端部152bは、固定部150の他方の端部150bを構成する。接続部152cは、曲線部152aと弧状部153との間を構成する部分である。
【0125】
弧状部153は、曲線状に形成された部分であり、例えば、円弧状に形成されている部分である。弧状部153の一方の端部は、第1延設部151と一体に形成されており、弧状部153の他方の端部は、係合部152と一体に形成されている。すなわち、弧状部153は、第1延設部151と、係合部152とを接続する部分である。
【0126】
固定部150は、第1延設部151と、係合部152と、弧状部153とによって、環状に形成された環状部156を含む。環状部156の内周側の壁面、すなわち、第1延設部151、係合部152及び弧状部153の内周側の壁面は、中空部150cを構成し、中空部150cは、固定部150の貫通孔を形成する。環状部156は、中空部150cを形成する。環状部156の内部である中空部150cには、鉄筋かご40の鉄筋45が配置される。
【0127】
軸方向ADに見た場合に、係合部152の先端部152b側の部分と、第1延設部151との間には、曲線部152aの曲線状の表面と、第1延設部151の直線状の表面とによって三角形状の隙間157が形成されている。固定部150は、第1延設部151の延びる方向において、第1延設部151の端部50aが、係合部152の先端部152bよりも突出するように形成されている。
【0128】
図19及び図20を用いて、固定部150と鉄筋45との接続方法について説明する。図20に示すように、鉄筋かご40の鉄筋45を、第1延設部151に沿って環状部156に向かって移動させる。隙間157(図19参照)に到達した鉄筋45は、第1延設部151と係合部152とに沿って移動し、鉄筋45の外周面と曲線部152aの湾曲面との当接によって、係合部152が第1延設部151から離間する方向に移動する。係合部152が第1延設部151から離間すると、第1延設部151と係合部152との間に空間が形成され、中空部150cの入口150dを開放する。
【0129】
図19に示すように、鉄筋45が、固定部150の中空部150c内に配置されると、係合部152と第1延設部151との間に鉄筋45が存在しなくなるので、固定部150の弾性力によって、係合部152が第1延設部151に近づく方向に移動する。係合部152が第1延設部151に近づくことで、中空部150cの入口150dは閉鎖される。中空部150cに配置された鉄筋45は、環状部156によって囲まれており、固定部150の環状部156に固定される。第1主筋41又は配力筋43が、固定部150と接合する鉄筋45である。
【0130】
[合成セグメント100の作用効果]
固定部150は、第1延設部151と、係合部152と、弧状部153とによって環状に形成された環状部156を含み、環状部156の内部に鉄筋かご40の鉄筋45が配置される。合成セグメント100は、環状部156に鉄筋45が配置されるため、鉄筋45が固定部150から外れにくくなる。そのため、合成セグメント100は、コンクリート80の打設時において合成セグメント100に振動を加えても鉄筋45が固定部150から外れにくくなり、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を維持できる。
【0131】
また、固定部150を有する実施の形態3に係る合成セグメント100は、実施の形態1及び実施の形態2の合成セグメント100と同様の構成を有する部分については、同様の効果を発揮させることができる。
【0132】
実施の形態4.
図21は、実施の形態4に係る合成セグメント100の固定部250の概念図である。図22は、実施の形態4に係る合成セグメント100において鉄筋45を結合する際の固定部250の概念図である。実施の形態1~実施の形態3に係る合成セグメント100と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、図21及び図22を用いて、実施の形態4が実施の形態1~実施の形態3と異なる点を中心に説明し、実施の形態4で説明しない構成は実施の形態1~実施の形態3と同様である。
【0133】
実施の形態4に係る合成セグメント100は、固定部250の構造が実施の形態1~実施の形態3の固定部50及び固定部150と異なるものである。なお、固定部250の配置、設置の向き及び設置の数等、構造以外の固定部250の構成は、実施の形態1~実施の形態3の固定部50及び固定部150と同様である。
【0134】
[固定部250]
鋼殻10は、固定部250を有する。固定部250は、鉄筋かご40を鋼殻10内に固定する治具である。固定部250は、押圧による弾性変形を利用して鉄筋かご40が取り付けられ、鉄筋かご40と係合する。鉄筋かご40の鉄筋45を固定部250に当接させ、固定部250に押し付けることで、鉄筋かご40の鉄筋45は、固定部250に接続され、鉄筋かご40は、鋼殻10に固定される。
【0135】
図21に示すように、固定部250は、折り曲げられた棒状の鋼材であり、環状に形成された部分を有する。固定部250は、弧状に折り曲げられた部分と、先端部が互いに反対側に向かって反った部分とを有するように形成されている。固定部250は、例えば、丸鋼により構成される。ただし、固定部250は、丸鋼と同様の機能及び強度が確保できれば他の素材により構成されてもよい。
【0136】
図21に示すように、固定部250は、弧状部251と、第1係合部252と、第2係合部253とを有する。固定部250は、弧状部251、第1係合部252及び第2係合部253が一体に形成されている。
【0137】
弧状部251は、固定部250において、スキンプレート16に固定される部分である。弧状部251は、曲線状に形成された部分であり、例えば、円弧状に形成されている部分である。弧状部251の一方の端部は、第1係合部252と一体に形成されており、弧状部251の他方の端部は、第2係合部253と一体に形成されている。すなわち、弧状部251は、第1係合部252と、第2係合部253とを接続する部分である。
【0138】
第1係合部252及び第2係合部253は、固定部250と鉄筋かご40の鉄筋45とを係合させる際に、鉄筋45の移動をガイドする部分である。また、第1係合部252及び第2係合部253は、固定部250と鉄筋かご40の鉄筋45とを係合させる際に、後述する中空部250cの入口250dを形成する部分である。
【0139】
第1係合部252は、弧状部251の一方の端部と一体に形成されており、L字状に形成されている。第1係合部252は、L字状の曲折した部分であって、曲折した部分の外周側の部分が、第2係合部253と対向するように構成されている。第2係合部253は、弧状部251の他方の端部と一体に形成されており、逆L字状に形成されている。第2係合部253は、逆L字状の曲折した部分であって、曲折した部分の外周側の部分が、第1係合部252と対向するように構成されている。第1係合部252は、固定部250の一方の端部250aを含んでおり、第2係合部253は、固定部250の他方の端部250bを含んでいる。
【0140】
第1係合部252及び第2係合部253は、向かい合うように形成されており、互いに当接する。第1係合部252及び第2係合部253は、固定部250において、互いに当接していることが望ましい。しかし、固定部250は、後述する中空部250cに配置された鉄筋45が中空部250cから外れなければ、第1係合部252と第2係合部253との間に隙間が形成されていてもよい。
【0141】
第1係合部252及び第2係合部253は、後述する中空部250cの入口250dを形成する部分である。第1係合部252及び第2係合部253が互いに離れることで、中空部250cの入口250dが開口し、第1係合部252及び第2係合部253が互いに近づくことで、中空部250cの入口250dが閉鎖する。第1係合部252及び第2係合部253は、互いに離間し、または、互いに近づくように設けられている。第1係合部252及び第2係合部253は、鉄筋45による固定部250に加わる力によって互いに離間し、固定部250の弾性力によって互いに近づく。
【0142】
第1係合部252は、曲線部252aと、先端部252bとを有する。曲線部252aは、円弧状に折り曲げられた部分である。曲線部252aは、L字状に形成された第1係合部252の角部分を含む部分である。先端部252bは、曲線部252aに対して弧状部251とは反対側の部分を構成する。先端部252bは、直線状に形成されているが、第2係合部253から離れるように曲線状に反った形状でもよい。先端部252bは、固定部250の一方の端部250aを構成する。
【0143】
第2係合部253は、曲線部253aと、先端部253bとを有する。曲線部253aは、円弧状に折り曲げられた部分である。曲線部253aは、逆L字状に形成された第2係合部253の角部分を含む部分である。先端部253bは、曲線部253aに対して弧状部251とは反対側の部分を構成する。先端部253bは、直線状に形成されているが、第1係合部252から離れるように曲線状に反った形状でもよい。先端部253bは、固定部250の他方の端部250bを構成する。
【0144】
固定部250は、弧状部251と、第1係合部252と、第2係合部253とによって、環状に形成された環状部256を含む。環状部256の内周側の壁面、すなわち、弧状部251、第1係合部252及び第2係合部253の内周側の壁面は、中空部250cを構成し、中空部250cは、固定部250の貫通孔を形成する。環状部256は、中空部250cを形成する。環状部256の内部である中空部250cには、鉄筋かご40の鉄筋45が配置される。
【0145】
軸方向ADに見た場合に、第1係合部252と、第2係合部253との間には、曲線部252aの曲線状の表面と、曲線部253aの曲線状の表面とによって三角形状の隙間257が形成されている。
【0146】
図21及び図22を用いて、固定部250と鉄筋45との接続方法について説明する。作業者は、鉄筋かご40を筒状体の径方向RDに移動させ、固定部250と鉄筋かご40の鉄筋45とを結合させる。この場合の鉄筋45は、固定部250の設置位置によって、第1主筋41でもよく、配力筋43でもよい。すなわち、第1主筋41又は配力筋43が、固定部250と接合する鉄筋45である。
【0147】
図22に示すように、鉄筋かご40の鉄筋45を、第1係合部252と第2係合部253との間の隙間257(図21参照)に配置し、環状部256に向かって移動させる。隙間257に配置された鉄筋45は、第1係合部252と第2係合部253とに沿って移動し、鉄筋45の外周面と曲線部252a及び曲線部253aの湾曲面との当接によって、第1係合部252及び第2係合部253が互いに離間する方向に移動する。第1係合部252及び第2係合部253が互いに離間すると、第1係合部252及び第2係合部253との間に空間が形成され、中空部250cの入口250dを開放する。
【0148】
図21に示すように、鉄筋45が、固定部250の中空部250c内に配置されると、第1係合部252及び第2係合部253との間に鉄筋45が存在しなくなる。そのため、固定部250は、固定部250の弾性力によって、第1係合部252及び第2係合部253が互いに近づく方向に移動する。第1係合部252及び第2係合部253が互いに近づくことで、中空部250cの入口250dは閉鎖される。中空部250cに配置された鉄筋45は、環状部256によって囲まれており、固定部250の環状部256に固定される。
【0149】
固定部250は、固定部250に当接した鉄筋45の移動により第1係合部252と第2係合部253とが離間し、固定部250の弾性力によって第1係合部252と第2係合部253とが近づくように形成されている。固定部250は、筒状体の径方向RDにおける鉄筋かご40の移動によって、鉄筋かご40を構成する鉄筋45と結合する。鉄筋かご40を固定部250に当接させながら移動させることで、第1主筋41又は配力筋43と固定部250とが結合し、鉄筋かご40と鋼殻10とが接続される。合成セグメント100は、固定部250によって、鉄筋かご40を鋼殻10に溶接することなく、鉄筋かご40を鋼殻10に設置することができる。
【0150】
[合成セグメント100の作用効果]
固定部250は、筒状体の径方向RDにおける鉄筋かご40の移動によって、鉄筋かご40を構成する鉄筋45と結合する。作業者は、当該構成によって、予め組み立てられた鉄筋かご40を径方向RDに移動させるだけで予め組み立てられた鋼殻10に固定できる。そのため、合成セグメント100は、鉄筋かご40を溶接により鋼殻10に固定する必要がなく、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を迅速かつ容易に行うことができる。また、作業者は、当該構成によって、鉄筋かご40を鋼殻10に押し付けるだけで鉄筋かご40を鋼殻10に固定できるため、鉄筋かご40を周方向CD又は軸方向ADに移動させるよりも容易に鉄筋かご40を鋼殻10に固定できる。
【0151】
また、第1主筋41又は配力筋43が、固定部250と接合する鉄筋かご40の鉄筋45である。合成セグメント100は、固定部250の設置位置によって、固定部250と接合する鉄筋45を第1主筋41又は配力筋43とすることができる。
【0152】
また、固定部250は、弧状部251と、第1係合部252と、第2係合部253とによって環状に形成された環状部256を含み、環状部256の内部に鉄筋かご40の鉄筋45が配置される。合成セグメント100は、環状部256に鉄筋45が配置されるため、鉄筋45が固定部250から外れにくくなる。そのため、合成セグメント100は、コンクリート80の打設時において合成セグメント100に振動を加えても鉄筋45が固定部250から外れにくくなり、鉄筋かご40と鋼殻10との固定を維持できる。
【0153】
また、固定部250を有する実施の形態4に係る合成セグメント100は、実施の形態1~実施の形態3の合成セグメント100と同様の構成を有する部分については、同様の効果を発揮させることができる。
【0154】
[土留構造物200]
土留構造物200は、合成セグメント100を周方向CD及び軸方向ADに複数組み合わせて形成されている。土留構造物200は、合成セグメント100を有しているため、上述した実施の形態1~実施の形態4の合成セグメント100の効果を発揮させることができる。
【0155】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0156】
上記に説明した合成セグメント100は、以下の付記1~14に示す各特徴の組み合わせも含み得るものである。その組み合わせについて下記に示す。
[付記1]
地中に土留構造として埋設される筒状体を構成する合成セグメントであって、
内部にコンクリートが充填される鋼殻と、
前記鋼殻の内部に配筋される鉄筋を組み立てた状態の鉄筋かごと、
を備え、
前記鋼殻は、
前記鉄筋かごを固定する固定部を有し、
前記固定部は、
前記鉄筋かごが押し付けられることで前記鉄筋かごの前記鉄筋と接合する合成セグメント。
[付記2]
前記固定部は、
弾性変形可能な部材で構成されており、前記鉄筋かごの前記鉄筋が配置される中空部を有し、外力により前記中空部の入口が開放する付記1に記載の合成セグメント。
[付記3]
前記鋼殻は、
前記筒状体の周方向に延び、前記筒状体の軸方向において板面を対向させて配置された一対の主桁と、
前記一対の主桁のそれぞれの前記周方向の両端部に接合された一対の継手板と、
前記一対の主桁及び前記一対の継手板により構成された枠体に対し前記筒状体の外周側に接合されたスキンプレートと、
を有し、
前記固定部は、
前記スキンプレートに固定されている付記1又は2に記載の合成セグメント。
[付記4]
前記固定部は、
折り曲げられた棒鋼により形成されており、
前記棒鋼の弾性力を利用して前記鉄筋かごが取り付けられる付記1~3のいずれか1つに記載の合成セグメント。
[付記5]
前記固定部は、
前記筒状体の周方向における前記鉄筋かごの回転によって、前記鉄筋かごを構成する前記鉄筋と結合する付記1~4のいずれか1つに記載の合成セグメント。
[付記6]
前記固定部は、
前記筒状体の軸方向における前記鉄筋かごの移動によって、前記鉄筋かごを構成する前記鉄筋と結合する付記1~4のいずれか1つに記載の合成セグメント。
[付記7]
前記固定部は、
前記筒状体の径方向における前記鉄筋かごの移動によって、前記鉄筋かごを構成する前記鉄筋と結合する付記1~4のいずれか1つに記載の合成セグメント。
[付記8]
前記鉄筋かごは、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の周方向に延びる主筋と、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の軸方向に延びる配力筋と、
を有し、
前記配力筋が、前記固定部と接合する前記鉄筋である付記5に記載の合成セグメント。
[付記9]
前記鉄筋かごは、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の周方向に延びる主筋と、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の軸方向に延びる配力筋と、
を有し、
前記主筋が、前記固定部と接合する前記鉄筋である付記6に記載の合成セグメント。
[付記10]
前記鉄筋かごは、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の周方向に延びる主筋と、
前記鋼殻の内部において前記筒状体の軸方向に延びる配力筋と、
を有し、
前記主筋又は前記配力筋が、前記固定部と接合する前記鉄筋である付記7に記載の合成セグメント。
[付記11]
前記固定部は、
直線状に延びるように形成されており、前記スキンプレートに固定される第1延設部と、
前記筒状体の径方向において、前記第1延設部と対向するように設けられた部分であり、前記第1延設部に対して特定の間隔を空けて設けられている第2延設部と、
曲線状に形成された部分であって、前記第1延設部と前記第2延設部とを接続する部分である第1曲線部と、
前記第1延設部に隣接して配置されており、前記固定部に当接した前記鉄筋の移動により前記第1延設部から離間し、前記固定部の弾性力によって前記第1延設部に近づくように設けられている係合部と、
曲線状に形成された部分であって、前記第2延設部と前記係合部とを接続する部分である第2曲線部と、
を有し、
前記固定部は、
前記第1延設部と、前記第2延設部と、前記係合部と、前記第1曲線部と、前記第2曲線部とによって環状に形成された環状部を含み、前記環状部は前記中空部を形成し、前記環状部の内部に前記鉄筋かごの前記鉄筋が配置される付記3又は付記3に従属する付記4~10のいずれか1つに記載の合成セグメント。
[付記12]
前記固定部は、
直線状に延びるように形成されており、前記スキンプレートに固定される第1延設部と、
前記第1延設部に向かって凸となるL字状に形成された部分を有し、前記第1延設部と対向するように構成されており、前記固定部に当接した前記鉄筋の移動により前記第1延設部から離間し、前記固定部の弾性力によって前記第1延設部に近づくように設けられている係合部と、
曲線状に形成された部分であり、前記第1延設部と前記係合部とを接続する部分である弧状部と、
を有し、
前記固定部は
前記第1延設部と、前記係合部と、前記弧状部とによって環状に形成された環状部を含み、前記環状部は前記中空部を形成し、前記環状部の内部に前記鉄筋かごの前記鉄筋が配置される付記3又は付記3に従属する付記4~10のいずれか1つに記載の合成セグメント。
[付記13]
前記固定部は、
円弧状に形成されており、前記スキンプレートに固定される弧状部と、
前記弧状部の一方の端部と一体に形成されており、L字形状に形成された第1係合部と、
前記弧状部の他方の端部と一体に形成されており、逆L字形状に形成された第2係合部と、
を有し、
前記固定部は、
前記固定部に当接した前記鉄筋の移動により前記第1係合部と前記第2係合部とが離間し、前記固定部の弾性力によって前記第1係合部と前記第2係合部とが近づくように形成されており、
前記固定部は
前記弧状部と、前記第1係合部と、前記第2係合部とによって環状に形成された環状部を含み、前記環状部は前記中空部を形成し、前記環状部の内部に前記鉄筋かごの前記鉄筋が配置される付記3又は付記3に従属する付記4~10のいずれか1つに記載の合成セグメント。
[付記14]
付記1~13のいずれか1つに記載の合成セグメントを周方向及び軸方向に複数組み合わせて形成された、土留構造物。
[付記15]
地中に土留構造として埋設される筒状体を構成する合成セグメントの製造方法であって、
前記筒状体の周方向に延び、前記筒状体の軸方向において板面を対向させて配置された一対の主桁、前記一対の主桁のそれぞれの前記周方向の両端部に接合された一対の継手板、並びに前記一対の主桁及び前記一対の継手板により構成された枠体に対し前記筒状体の外周側に接合されるスキンプレートを接合し、鉄筋かごが接合される固定部を前記スキンプレートに固定して鋼殻を組み立てる工程と、
前記鋼殻の内部において前記周方向に延びる主筋、及び、前記鋼殻の内部において前記軸方向に延びる配力筋を接合して前記鉄筋かごを組み立てる工程と、
前記鋼殻の内部に前記鉄筋かごを配置し、前記鉄筋かごの鉄筋を前記固定部に当接させた状態で前記鉄筋かごを移動させることで前記鉄筋かごの前記鉄筋を前記固定部に接合させ、前記鉄筋かごを前記鋼殻に固定する工程と、
を備えた合成セグメントの製造方法。
【符号の説明】
【0157】
10 鋼殻、11 主桁、12 継手板、13 ボルト孔、14 ボス、15 ボルト孔、16 スキンプレート、40 鉄筋かご、41 第1主筋、42 第2主筋、43 配力筋、43a 外側配力筋部、43b 内側配力筋部、43c 第1配力筋部、43d 第2配力筋部、45 鉄筋、50 固定部、50a 端部、50b 端部、50c 中空部、50d 入口、51 第1延設部、52 第2延設部、53 係合部、54 第1曲線部、55 第2曲線部、56 環状部、57 隙間、80 コンクリート、81 ボルトボックス、82 ボルトボックス、100 合成セグメント、110 セグメントリング、150 固定部、150a 端部、150b 端部、150c 中空部、150d 入口、151 第1延設部、152 係合部、152a 曲線部、152b 先端部、152c 接続部、153 弧状部、156 環状部、157 隙間、200 土留構造物、210 部分、220 地盤、250 固定部、250a 端部、250b 端部、250c 中空部、250d 入口、251 弧状部、252 第1係合部、252a 曲線部、252b 先端部、253 第2係合部、253a 曲線部、253b 先端部、256 環状部、257 隙間、AD 軸方向、CD 周方向、RD 径方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22