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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076570
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】化粧品用油剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20240530BHJP
   C11C 3/10 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
A61K8/37
C11C3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188176
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝
(72)【発明者】
【氏名】小沼 祐己
【テーマコード(参考)】
4C083
4H059
【Fターム(参考)】
4C083AC351
4C083AC352
4C083CC01
4C083EE06
4C083FF01
4H059BA30
4H059BB04
4H059CA35
4H059EA01
(57)【要約】
【課題】基剤臭・劣化臭を感じない化粧品用の油脂混合物及びそれを含む化粧品用組成物並びに化粧品を提供することを目的とする。
【解決手段】天然油脂原料由来の脂肪酸組成を有する、脂肪酸低級アルキルエステルの混合物を含む化粧品用油剤であって、前記脂肪酸低級アルキルエステル混合物を構成する脂肪酸全質量に対する、C6~C12の脂肪酸の合計質量割合が0.01~10質量%であり、かつ、リノール酸及びリノレン酸の合計質量割合が25質量%以下である、上記化粧品用油剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然油脂原料由来の脂肪酸組成を有する、脂肪酸低級アルキルエステルの混合物を含む化粧品用油剤であって、
前記脂肪酸低級アルキルエステル混合物の脂肪酸部分を構成する脂肪酸全質量に対する、C6~C12の脂肪酸の合計質量割合が0.01~10質量%であり、かつ、リノール酸及びリノレン酸の合計質量割合が25質量%以下である、上記化粧品用油剤。
【請求項2】
脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキルが、エチルである、請求項1記載の化粧品用油剤。
【請求項3】
イソ吉草酸エチルの質量割合が、0.01ppm以上である、請求項2記載の化粧品用油剤。
【請求項4】
前記脂肪酸低級アルキルエステル混合物の脂肪酸部分を構成する脂肪酸全質量に対する、C6~C12の脂肪酸の合計質量割合が0.02~5.0質量%である、請求項1記載の化粧品用油剤。
【請求項5】
脂肪酸低級アルキルの脂肪酸組成が天然油脂原料由来の組成である、請求項1記載の化粧品用油剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧品用油剤を含む、化粧品。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧品用油剤の製造方法であって、低級アルキルアルコールによる油脂のエステル交換反応を行うことを含む製造方法。
【請求項8】
さらに短工程蒸留を行うことを含む、請求項7記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品用油剤、それを含む化粧品用組成物及び化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品の基剤としてテクスチャのコントロールや機能性の付与のために油剤が用いられている。その油剤としてよく用いられるトリグリセリドはべたつきが大きいという問題がある。また、べたつきが小さい炭化水素系の油剤は独特の基剤臭と揮発性という問題がある。
また、従来から化粧品の油剤として用いられているオレイン酸及びその誘導体のような高級脂肪酸は、使用感が軽いものの基剤臭と劣化臭が問題となっている(特許文献1及び2)。
特に、無香料や微香性の化粧品に使用する場合において、油剤由来の嫌な匂いである基剤臭や劣化臭を抑制することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-016533号公報
【特許文献2】特開2006-169129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、基剤臭・劣化臭を感じさせない化粧品用油剤及びそれを含む化粧品用組成物並びに化粧品を提供することである。
本発明のさらなる目的は、基剤臭・劣化臭を感じさせず、さらに天然物由来である化粧品用油剤及びそれを含む化粧品用組成物並びに化粧品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは研究の結果、特定の脂肪酸低級アルキルエステルの混合物を用いると、油剤由来の嫌な匂いである基剤臭や劣化臭が抑制された油剤が得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち本発明は以下の態様を提供する。
〔1〕天然油脂原料由来の脂肪酸組成を有する、脂肪酸低級アルキルエステルの混合物を含む化粧品用油剤であって、
前記脂肪酸低級アルキルエステル混合物の脂肪酸部分を構成する脂肪酸全質量に対する、C6~C12の脂肪酸の合計質量割合が0.01~10質量%であり、かつ、リノール酸及びリノレン酸の合計質量割合が25質量%以下である、上記化粧品用油剤。
〔2〕脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキルが、エチルである、前記〔1〕記載の化粧品用油剤。
〔3〕イソ吉草酸エチルの質量割合が、0.01ppm以上である、前記〔2〕記載の化粧品用油剤。
〔4〕前記脂肪酸低級アルキルエステル混合物の脂肪酸部分を構成する脂肪酸全質量に対する、C6~C12の脂肪酸の合計質量割合が0.02~5.0質量%である、前記〔1〕記載の化粧品用油剤。
〔5〕脂肪酸低級アルキルの脂肪酸組成が天然油脂原料由来の組成である、前記〔1〕記載の化粧品用油剤。
〔6〕前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の化粧品用油剤を含む、化粧品。
〔7〕前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の化粧品用油剤の製造方法であって、低級アルキルアルコールによる油脂のエステル交換反応を行うことを含む製造方法。
〔8〕さらに短工程蒸留を行うことを含む、前記〔7〕記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化粧品用油剤を用いると、従来の油剤を用いた時に生じる基剤臭と劣化臭が抑制される。
本発明の化粧品用油剤は好ましい果実臭を有しており、果実臭により基剤臭として感じられる嫌な匂いがマスクされるため、基剤臭が抑制されるものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<化粧品用油剤>
本明細書において化粧品は、頭髪用化粧品、皮膚用化粧品、仕上用化粧品、香水・オーデコロン、その他に分類されるものであり(化粧品公正取引協議会ホームページhttps://www.cftc.jp/index.htmlより)、皮膚、頭髪等に用いられるものである。前記の化粧品に特定の効果を期待するために有効成分を配合した、医薬部外品(いわゆる薬用化粧品)もある。
化粧品の基剤(化粧品の基本成分)は、水性成分、油性成分、粉体成分及び界面活性剤から構成されており、本発明書において、「化粧品用油剤」とは、化粧品の基剤としての「油性成分」のことをさす。油剤(油性成分)は、油溶性であって単体では水溶性ではない成分である。より具体的には、油剤は一般には、油脂類、ろう類、炭化水素類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類などを意味するが(日本化粧品技術者会ホームページ、https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/1812)、本明細書において「化粧品の油剤」あるいはその混合物という場合には、特に、一定の組成を有する脂肪酸低級アルキルエステルの混合物のことを指している場合がある。化粧品の基剤中の油剤は、皮膚(爪を含む)、口唇、毛髪、などの化粧品が対象とする部位の保水、保湿、保護、あるいは柔軟性やつやを出すなど、さまざまな目的で用いられる。日本化粧品技術者会によると、化粧品の油性成分(油剤に相当)は、スキンケア化粧品では適度なエモリエント性をもつ被膜をつくり、メークアップ化粧品では顔料の皮膚への展延性、付着性を与え、またヘアケア化粧品では髪へのつやとセット性を与えるなど、それぞれの目的に合わせて選択配合されるものである。しかし、油剤は、化粧品の油性成分として用いられる限りにおいて、これらの目的に限定されるものではない。
【0008】
本発明の化粧品用油剤は、天然油脂原料由来の脂肪酸組成を有する、脂肪酸低級アルキルエステルの混合物を含む化粧品用油剤であって、前記脂肪酸低級アルキルエステル混合物の脂肪酸部分を構成する脂肪酸全質量に対する、C6~C12の脂肪酸の合計質量割合が0.01~10質量%であり、かつ、リノール酸及びリノレン酸の合計質量割合が25質量%以下である。
「脂肪酸低級アルキルエステル」は、脂肪酸の低級アルキルエステル化合物を意味する。本発明において「脂肪酸低級アルキルエステルの混合物」は、天然油脂原料由来の脂肪酸組成を有する。すなわち、本発明において、脂肪酸低級アルキルエステルの混合物の脂肪酸部分を構成する脂肪酸組成は、天然油脂原料由来の脂肪酸組成を有している。天然油脂原料由来の脂肪酸組成とは、天然油脂のトリグリセリドを全て脂肪酸とグリセリンに加水分解したときの脂肪酸組成を意味する。
【0009】
本発明において、天然油脂原料は、特に限定されるものではないが、脂肪酸組成としてオレイン酸が比較的多量に含まれるものが好ましく、より好ましくは、オレイン酸の全脂肪酸組成質量に対する質量割合が20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、よりさらに好ましくは40質量%以上である。オレイン酸の質量割合の上限は特に限定されるものではないが、90質量%以下であることが好ましい。
天然油脂原料は、より具体的には、パーム、パームオレインあるいはパームステアリン等のパーム分別油、ナタネ、ハイオレイックナタネ、ヒマワリ、ハイオレイックヒマワリ、コーン、大豆、ヤシまたはこれらのいずれか2以上のブレンドが好ましい。より好ましくは、パーム、パームオレインあるいはパームステアリン等のパーム分別油、ナタネ、ハイオレイックナタネ、ヒマワリ、ハイオレイックヒマワリ、コーン、大豆またはこれらのいずれか2以上のブレンドであり、さらに好ましくはパームオレイン、ハイオレイックナタネ、ハイオレイックヒマワリまたはこれらのいずれか2以上のブレンドである。
【0010】
本発明の「脂肪酸低級アルキルエステルの混合物」において脂肪酸部分を構成する脂肪酸合計質量に対し、C6~C12の飽和脂肪酸の合計質量割合は0.01~10質量%である。好ましくは6.0質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは3.0質量%以下であり、さらにより好ましくは1.0質量%以下である。また、好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上である。C6~C12の飽和脂肪酸の合計質量割合これらの範囲にあることにより、本発明の油剤に好ましい果実臭が付与されて、従来の好ましくない基剤臭が抑制されるものと考えられる。
【0011】
本発明の「脂肪酸低級アルキルエステルの混合物」において脂肪酸部分を構成する脂肪酸合計質量に対し、リノール酸及びリノレン酸の合計質量割合が25質量%以下である。より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、よりさらに好ましくは11質量%以下であり、なお好ましくは10質量%以下である。かかる範囲にあることにより一週間保存後の酸化劣化臭が抑制されるからである。下限値は特に好ましい範囲はないが、1.0質量%以上程度であってもよく、3.0質量%以上程度であってもよい。
本発明の「脂肪酸低級アルキルエステルの混合物」において脂肪酸部分を構成する脂肪酸合計質量に対し、C16以上の飽和脂肪酸(より好ましくはC16~C22の飽和脂肪酸)の質量割合が60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、よりさらに好ましくは20質量%以下である。かかる範囲にあることにより保存時に結晶の析出が抑えられるからである。
【0012】
本発明の「脂肪酸低級アルキルエステル」の「低級アルキル」は、C1~C5アルキルであることが好ましく、C1~C3アルキルであることがより好ましく、C2アルキル(エチル)であることがよりさらに好ましい。
本発明の「脂肪酸低級アルキルエステル」の混合物の全質量に対する、イソ吉草酸エチルの質量割合は、0.01ppm以上であることが好ましく、0.04ppm以上であることがより好ましく、0.05ppm以上であることがよりさらに好ましく、0.9ppm以上であることがなお好ましい。また、3ppm以下であることが好ましく、2ppm以下であることがより好ましい。これらの範囲にあることにより、本発明の油剤に好ましい果実臭が付与されて、従来の基剤臭が抑制されるものと考えられる。
【0013】
<化粧品用油剤の製造方法>
本発明の化粧品用油剤は、低級アルキルアルコールによる油脂のエステル交換反応を行うことを含む製造方法により製造することができる。
エステル交換反応は公知の方法により適宜行うことができる。例えば、原料油脂のトリグリセリドと低級アルキルアルコールとを混合し、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の塩基化合物を加えてアルコリシスを行うことができる。アルコリシスの温度と時間は適宜設定することが可能であるが、例えば、室温から40℃の範囲で10~200分程度攪拌することにより行うことができる。
エステル交換反応後の処理も常法により適宜行うことができる。例えば、反応混合物を水相と油相に分配して、油相部分から油剤を得ることができる。
得られた油剤をさらに蒸留してもよい。蒸留方法は公知の方法により適宜行うことができるが、例えば、短工程蒸留を行ってもよい。短工程蒸留の条件は適宜決定できるが、例えば、120~140℃、好ましくは130℃前後において、フィード速度を2~4kg/hの速度で行うことができる。
【実施例0014】
[分析方法]
(i)構成脂肪酸
基準油脂分析試験法(2.4.1.2-2013メチルエステル化法(三フッ化ホウ素-メタノール法))および2.4.2.3-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)を用いて分析した。
(ii) イソ吉相酸エチルの定量
油剤中のイソ吉草酸エチル量はガスクロマトグラフ質量分析計を用い、絶対検量線法により定量を行った。具体的には、油剤20μlをマイクロチューブにサンプリングし、加熱脱着ユニットにて香気成分の捕集を行い、香気成分をガスクロマトグラフへ導入した。
GC/MS測定条件は以下の通りである。
装置:GC:Agilent Technologies社製 Agilent 7890A
MS:Agilent Technologies社製 5975C
加熱脱着装置:Gerstel社製 TDU
カラム:Inert cap pure WAX 30m×0.25mmi.d. df=0.25μm
温度条件:40℃(1分)~3℃/分~100℃~10℃/分~230℃(22分)
キャリアガス:ヘリウム
定圧:20.1psi
(iii)脂肪酸エチルエステル率
油剤中の脂肪酸エチルエステル率はガスクロマトグラフ分析計を用い算出した。具体的には、油剤約30mgをヘキサン1.5mlに溶解させ、ガスクロマトグラフへ導入した。
GC測定条件は以下の通りである。
装置:
カラム:Inert cap pure WAX 1m×0.25mmi.d. df=0.25μm
温度条件:50℃(1分)~10℃/分~320℃(8分)
キャリアガス:ヘリウム
線速度一定:28.8cm/sec
スプリット比:100
【0015】
[製造例1]
ハイオレイックヒマワリ油200gを500mL容ナス型フラスコに計り取り、そこに事前にエタノール(99.5%)62.75gに対して水酸化カリウム2gを溶かした溶液を加え、密栓をした。このフラスコを30℃の水浴中で撹拌し、150分間エタノリシス反応を行った。反応後の溶液を分液ロートに移し、水100gで分液を行い、水相を捨てた。残りの油相に更に100gの水を加え、分液を行い、水相を捨てた。残った油相を300mLナス型フラスコに移し、80℃の水浴中で撹拌しつつ30分間真空乾燥を行い、油剤を185g(純度97.9%、収率84.5%)得た。油剤の脂肪酸組成は前記分析方法で求めた。脂肪酸組成を表1に示す。
【0016】
[製造例2]
製造例1に記載した方法に準じ、反応釜にて仕込み量をそれぞれ90倍にして行った。反応後、9kgの水を加え、分液を行い、水相を捨てた。残った油相を、80℃に加熱し、撹拌しつつ30分間真空乾燥を行い、油剤を得た。得られた油剤を、短行程蒸留装置を用い、加熱部温度を130℃、フィード速度を3.0kg/hとして蒸留し、留分を得た(15.9kg)。油剤の脂肪酸組成は前記分析方法で求めた。脂肪酸組成を表1に示す。
【0017】
[製造例3]~[製造例18]
製造例3、4、6~10、12~16については、製造例1と同様にして各原料油を用いて油剤を得た。
製造例5、11については、製造例2と同様にして各原料油を用いて油剤を得た。
製造例4の原料の「ブレンド1」はハイオレイックヒマワリ油とヤシ油を99.9:0.1でブレンドした油剤である。
製造例6の原料の「ブレンド2」はハイオレイックヒマワリ油とヤシ油を99:1でブレンドした油剤である。
製造例10の原料の「ブレンド3」はハイオレイックヒマワリ油とヤシ油を90:10でブレンドした油剤である。
製造例13の原料の「ブレンド4」はハイオレイックヒマワリ油とヤシ油を80:20でブレンドした油剤である。
製造例16の原料の「ブレンド5」はハイオレイックヒマワリ油とヤシ油を70:30でブレンドした油剤である。
製造例17及び18の原料は、市販されている製品を購入して用いた(市販品1及び市販品2)。
【0018】
[官能評価]
得られた油剤を下記の評価基準に従って、果実臭の官能評価を行った。官能評価は、良く訓練された9人のパネラーにより行われた。官能評価結果を表1に示す。
1点:刺激臭を感じる。
2点:やや過度に果実臭を感じる、もしくは果実臭を感じない。
3点:微弱に果実臭を感じる。
4点:果実臭を感じる。
【0019】
得られた油剤を下記の評価基準に従って、劣化臭の官能評価を行った。官能評価は、良く訓練された9人のパネラーにより行われた。官能評価結果を表1に示す。
1点:強く酸化劣化臭を感じる。
2点:酸化劣化臭を感じる。
3点:少し酸化劣化臭を感じる。
4点:僅かに酸化劣化臭を感じる。
5点:酸化劣化臭を感じない。
【0020】
表1からわかるとおり、C6~C12の脂肪酸の合計質量割合が0.01~10質量%であり、かつ、リノール酸(C18-2cis)及びリノレン酸(C18-3cis)の合計質量割合が25質量%以下である場合(製造例1~8)には、果実臭が感じられるため、いわゆる基剤臭として知られる刺激臭が抑制され、また1週間保存後に劣化臭を感じさせないという効果を奏する。一方、C6~C12の脂肪酸の合計質量割合が0.01~10質量%の範囲外にある場合(例えば、製造例10、11、13~18)には、果実臭が十分に感じられなかった。また、リノール酸(C18-2cis)及びリノレン酸(C18-3cis)の合計質量割合が25質量%を越える場合には(製造例9~12)、1週間保存後に劣化臭を感じさせるものとなっていた。
なお、従来から果実臭を有することが知られているイソ吉相酸エチルは、含まれている方がより果実臭が感じられる傾向があるものの、必ずしもイソ吉相酸エチルの量と本発明における果実臭には量的な相関性がなく、一種類の化合物ではなく、複数の脂肪酸エチルの組み合わせによる香りと考えられる。
【0021】
表1 (表内の数値は特に断らない限り、脂肪酸合計質量に対する質量%である)
【0022】
表1(続き)

【0023】
[参考例]
製造例2の短工程蒸留の条件について以下のとおり変更して検討した。下記表においてFAEEは脂肪酸エチルエステルを意味する。FAEE率(%)は、蒸留前の質量に対する蒸留後の混合物の質量割合を意味し、前記分析方法で求めた。フィード速度(kg/h)は1時間当たりに蒸留機に供給する油剤量(kg)を意味し、FAEE生産性(kg/h)は、1時間あたりの蒸留後混合物の質量(kg)を意味する。130℃の加熱温度でフィード条件を3~4kg/hとしたときに比較的良い収率で得ることができた。