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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076577
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】インプリントモールドおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
G02B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188183
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 幸司
【テーマコード(参考)】
2H249
【Fターム(参考)】
2H249AA03
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA39
2H249AA51
2H249AA66
(57)【要約】
【課題】形状や寸法の異なる複数種類の微細構造が高精度に形成されたインプリントモールドを提供する。
【解決手段】基板の同一面上に、第一DOE形成部10と、第二DOE形成部20と、第三DOE形成部30とが形成されたインプリントモールド1において、第一DOE形成部10と第二DOE形成部20とは、それぞれ深さの異なるバイナリー構造を有する。第三DOE形成部30は、上面の高さが連続的に変化する立体部31を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の同一面上に、第一微細構造形成部と、第二微細構造形成部と、第三微細構造形成部とが形成されたインプリントモールドであって、
前記第一微細構造形成部と前記第二微細構造形成部とは、それぞれ深さの異なるバイナリー構造を有し、
前記第三微細構造形成部は、上面の高さが連続的に変化する立体部を有する、
インプリントモールド。
【請求項2】
前記第一微細構造形成部のバイナリー構造が延びる方向と、前記第二微細構造形成部のバイナリー構造が延びる方向とが異なる、
請求項1に記載のインプリントモールド。
【請求項3】
前記立体部は上面に斜面を有する、
請求項1に記載のインプリントモールド。
【請求項4】
前記第一微細構造形成部と第二微細構造形成部とが、間隔を空けずに隣接している、
請求項1に記載のインプリントモールド。
【請求項5】
バイナリー構造を有する第一微細構造形成部と、前記第一微細構造形成部よりも深いバイナリー構造を有する第二微細構造形成部とを有するインプリントモールドを製造する方法であって、
一方の面にハードマスク層を有する基板を準備するステップAと、
前記ハードマスク層上に、前記第一微細構造形成部および前記第二微細構造形成部に対応した開口を有する第一レジストパターンを形成するステップBと、
前記第一レジストパターンをマスクとしたエッチングにより、開口内に露出した前記ハードマスク層と、その下の前記基板を所定の深さ掘って前記第一微細構造形成部を形成するステップCと、
前記ステップCの後に、前記第二微細構造形成部に対応した開口を有し、前記第一微細構造形成部を覆う第二レジストパターンを形成するステップDと、
前記第二レジストパターンをマスクとしたエッチングにより、開口内に露出した前記基板を所定の深さ掘って前記第二微細構造形成部を形成するステップEと、
前記ステップEの後に、残存する前記ハードマスク層を除去する除去ステップと、
を備える、
インプリントモールドの製造方法。
【請求項6】
上面の高さが連続的に変化する立体部を有する第三微細構造形成部に対応した開口を有する第三レジストパターンを前記ハードマスク層上に形成するステップFと、
前記ステップFの後に、前記第三レジストパターンをマスクとしたエッチングにより、開口内に露出した前記ハードマスク層を除去するステップGと、
前記ステップGの後に、前記第三微細構造形成部に対応した開口と、前記立体部に対応した形状とを有する非化学増幅型レジストパターンを形成するステップHと、
前記非化学増幅型レジストパターンをマスクとしたエッチングにより、前記第三微細構造形成部を形成するステップIと、
をさらに備える、
請求項5に記載のインプリントモールドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造を転写するためのインプリントモールド、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メガネ型のデジタルデバイスで、グラス越しに見える現実世界にデジタル情報を重ねて視認させる機能を持つ、ARグラス(AR:Augmented Reality、拡張現実)もしくはMRグラス(MR:Mixed Reality、複合現実)と呼ばれるデバイスの検討が進んでいる。
このようなデバイスでは、装着者の目から離れた場所で投影された映像を、グラス内を伝送させて装着者の目の前方まで導き、さらにグラスから目に向かって投影する必要がある。
【0003】
上述の伝送手段として、微細な周期的構造体による光の回折現象を利用した回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)が期待されている。DOEを用いる場合、グラス内に光を取り込む素子、グラス内で光の進む方向を変える素子、グラスから光を出射させる素子など、複数種類のDOEが必要となる。
【0004】
微細な凹凸構造を効率よく形成する手段として、インプリントモールドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
インプリントモールドを用いてARグラス等を作製する場合、それぞれのDOEに対応した複数のインプリントモールドを作製し、対象物に順次転写する方法が考えられるが、ARグラス等において上記伝送を実現させるためには、複数種類のDOEが高精度に位置合わせされている必要があるため、この方法では実現が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-90017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単一のインプリントモールドですべてのDOEを転写することができれば、転写時に複数のDOEの位置関係がずれることがなく、好ましい。
しかし、一つのインプリントモールドに寸法や形状が異なる複数種類のDOEを形成することは容易でない。詳細は後述するが、寸法や形状の差異が大きい場合は、プロセス上の問題も生じる。
【0007】
本発明は、形状や寸法の異なる複数種類の微細構造が高精度に形成されたインプリントモールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、基板の同一面上に、第一微細構造形成部と、第二微細構造形成部と、第三微細構造形成部とが形成されたインプリントモールドである。
第一微細構造形成部と第二微細構造形成部とは、それぞれ深さの異なるバイナリー構造を有する。
第三微細構造形成部は、上面の高さが連続的に変化する立体部を有する。
【0009】
本発明の第二の態様は、バイナリー構造を有する第一微細構造形成部と、第一微細構造形成部よりも深いバイナリー構造を有する第二微細構造形成部とを有するインプリントモールドを製造するためのインプリントモールドの製造方法である。
この製造方法は、一方の面にハードマスク層を有する基板を準備するステップAと、ハードマスク層上に、第一微細構造形成部および第二微細構造形成部に対応した開口を有する第一レジストパターンを形成するステップBと、第一レジストパターンをマスクとしたエッチングにより、開口内に露出した前記ハードマスク層と、その下の基板を所定の深さ掘って第一微細構造形成部を形成するステップCと、ステップCの後に、第二微細構造形成部に対応した開口を有し、第一微細構造形成部を覆う第二レジストパターンを形成するステップDと、第二レジストパターンをマスクとしたエッチングにより、開口内に露出した基板を所定の深さ掘って第二微細構造形成部を形成するステップEと、ステップEの後に、残存する前記ハードマスク層を除去する除去ステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るインプリントモールドは、形状や寸法の異なる複数種類の微細構造が高精度に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るインプリントモールドの斜視図である。
図2】同インプリントモールドの模式断面図である。
図3】同インプリントモールドの製造時における一過程を示す図である。
図4】同インプリントモールドの製造時における一過程を示す図である。
図5】同インプリントモールドの製造時における一過程を示す図である。
図6】(a)から(c)は、いずれも第一マーク及び第二マークの平面視形状の例を示す図である。
図7】同インプリントモールドの製造時における一過程を示す図である。
図8】同インプリントモールドの製造時における一過程を示す図である。
図9】同インプリントモールドの製造時における一過程を示す図である。
図10】同インプリントモールドの製造時における一過程を示す図である。
図11】変形例に係るステップGを行った後の基板を示す図である。
図12】同インプリントモールドの変形例に係る模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図1から図12を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るインプリントモールド1を示す斜視図である。インプリントモールド1は、ケイ素(Si)や二酸化ケイ素(SiO)を主材料とする基板の一方の面上に、第一DOE形成部10、第二DOE形成部20、および第三DOE形成部30の3つの微細構造形成部を備えている。
インプリントモールド1、インプリントモールド1を転写した反転モールド、もしくは反転モールドを転写したレプリカモールドを用いると、3つのDOE形成部に対応した微細構造を1度の転写で対象物に形成でき、DOE形成部どうしの位置関係も良好に保持される。
【0013】
図2に、インプリントモールド1の模式断面図を示す。各DOE形成部10、20、30は実際には離れて配置されているが、図2では一覧できるように各DOE形成部の単位構造を並べて示している。
【0014】
第一DOE形成部10および第二DOE形成部20は、水平な底面を有する溝状構造を単位とする。このような構造は、溝形成部の底面高さと、溝未形成部の上面高さとの2種類の高さしか有さないため、「バイナリー構造」とも称される。
第一DOE形成部10および第二DOE形成部20は、いずれもバイナリー構造を有するが、溝形成部の底面高さが異なっているとともに、インプリントモールド1上において延びる方向も異なっている。
【0015】
第三DOE形成部30は、溝状構造の底面から立ち上がる立体部31を有し、立体部31は上側に斜面を有する。すなわち、第三DOE形成部30は高さ方向の寸法が連続的に変化しているため、多種の高さ方向寸法を有している。
【0016】
インプリントモールド1には、DOE形成部に加えて、DOE形成部を位置合わせしつつ形成するための第一マーク41および第二マーク42が形成されている。第一マーク41および第二マーク42は、第一DOE形成部10等と同様のバイナリー構造を有する。
【0017】
上記のように構成されたインプリントモールド1の製造方法の一例について説明する。
まず、図3に示すように、一方の面にハードマスク層101が形成された基板100を準備する(ステップA)。基板100は、最終的にインプリントモールドとなるため、所望の材料からなるものを選択する。ハードマスク層101の材質はアルミニウム、クロム、シリコン酸化膜等とできる。
【0018】
次に、ハードマスク層101上にレジスト層を形成する。次に、電子線描画により第一DOE形成部10、第二DOE形成部20、第一マーク41、および第二マーク42のパターンをレジスト層に描画する。その後、ベークや現像等のフォトリソグラフィ工程により第一DOE形成部10、第二DOE形成部20、第一マーク41、および第二マーク42に対応した形状にレジスト層をパターニングする(ステップB)。これにより、図4に示すように、ハードマスク層101上に第一レジストパターン110が形成される。
【0019】
次に、第一レジストパターン110をマスクとしたエッチングを行い、第一レジストパターン110の開口内に露出したハードマスク層101を除去し、さらにその下の基板100を所定の深さだけ掘る(ステップC)。ステップCでは、第一DOE形成部10および第二DOE形成部20のうち浅い方の第一DOE形成部10の底面の深さまでエッチングを行う。
ステップC後の基板100を図5に示す。第一DOE形成部10、第二DOE形成部20、第一マーク41、および第二マーク42が同じ深さだけ掘られており、この時点で第一DOE形成部10が概ね完成する。
【0020】
第一マーク41および第二マーク42の平面視形状の例を図6に示す。図6に示すマーク43、44、45のいずれも、第一方向D1に延びる部位と、第一方向D1に直交する第二方向D2に延びる部位とを有しており、第一マーク41および第二マーク42として好適に使用できる。これにより、以降の工程において行われるレジストパターンの描画位置を、第一方向D1および第二方向D2の両方において高精度に行うことができる。
第一マーク41および第二マーク42の平面視形状は図6に示したものに限られず、第一方向D1および第二方向D2に延びる部位を有していれば様々な形状を採用できる。
各方向D1、D2における必要最小限の寸法は概ね2μmであるため、幅2μm以上の直線であれば、上述の条件を満たすと言える。
【0021】
次に、基板100全体を覆うようにレジスト層を形成した後、レジスト層越しに第一マーク41を読みながら、第二DOE形成部20を含む範囲が開口となって露出するようにレジスト層に描画を行う。その後、ベークや現像等のフォトリソグラフィ工程によりレジスト層をパターニングする(ステップD)。これにより、図7に示すように、第一DOE形成部10および第二マーク42を覆う第二レジストパターン120が形成される。ステップDでは、第一マーク41の読み取り時にも電子線が照射されるため、第一マーク41およびその周囲を含む範囲も露出する。
【0022】
次に、第二レジストパターン120をマスクとしたエッチングを行い、第二DOE形成部20を所定の深さまで掘る(ステップE)。ステップEでは、第一マーク41も第二DOE形成部20とともにエッチングされるが、第一DOE形成部10および第二マーク42は第二レジストパターン120により保護されてエッチングされず、ステップC終了後の状態が保持される。
ステップEが終了すると、図8に示すように、第二DOE形成部20が概ね完成する。
【0023】
次に、基板100全体を覆うようにレジスト層を形成した後、レジスト層越しに第一マーク41を読みながら、第三DOE形成部30の形成範囲が開口となって露出するように描画を行う。その後、ベークや現像等のフォトリソグラフィ工程によりレジスト層をパターニングする(ステップF)。これにより、図9に示すように、第一DOE形成部10、第二DOE形成部20、および第二マーク42を覆う第三レジストパターン130が形成される。ステップFでは、ステップDと同様に、第一マーク41およびその周囲を含む範囲も露出する。
【0024】
次に、第三レジストパターン130をマスクとしたエッチングを行い、開口内に露出したハードマスク層101を除去する(ステップG)。
【0025】
さらに、基板100全体を覆うようにレジスト層を形成する。このレジスト層は、第一ないし第三レジストパターンとは異なる材料を用いる。具体的には、非化学増幅型のレジストを用いる。
次に、このレジスト層越しに第二マーク42を読みながら、第三DOE形成部30の形成範囲が開口となって露出するようにレジスト層に描画を行う。このとき、第三DOE形成部30の形成範囲を含む開口内には、立体部31に対応した形状が形成されるようにグレースケール描画を合わせて行う、その後、ベークや現像等のフォトリソグラフィ工程によりレジスト層をパターニングする(ステップH)。これにより、図10に示すように、第一DOE形成部10および第二DOE形成部20を覆う第四レジストパターン(非化学増幅型レジストパターン)140が形成される。第四レジストパターンのうち、立体部31に対応した形状140aは、基板100上に直接形成される。
【0026】
次に、第四レジストパターン140をマスクとしたエッチングを行い、第三DOE形成部30を所定の深さまで掘る(ステップI)。ステップIでは、第二マーク42も第三DOE形成部30とともにエッチングされるが、第一DOE形成部10、第二DOE形成部20、および第一マーク41は第四レジストパターン140により保護されてエッチングされず、ステップE終了後の状態が保持される。
【0027】
最後に、第四レジストパターン140およびハードマスク層101を除去する(除去ステップ)と、基板100の一方の面に第一ないし第三DOE形成部10、20、30が形成された、図2に示すインプリントモールド1が完成する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係るインプリントモールドの製造方法によれば、ハードマスク層と、非化学増幅型のレジストを用いたグレースケール描画とを組み合わせることにより、深さの異なる2種類以上のバイナリー構造と、斜面を有する微細構造とが同一の基板上に形成されたインプリントモールドを製造することを実現できる。
【0029】
第一微細構造形成部におけるバイナリー構造の深さと第二微細構造形成部におけるバイナリー構造の深さとの差が大きい等の場合、レジスト層のみを用いて第一微細構造形成部および第二微細構造形成部を形成することは、実際には容易ではない。すなわち、使用するレジストのエッチングレート(選択比)によっては、第二レジストパターンをかなり厚くしないと、より深いバイナリー構造を形成する際に、浅い方のバイナリー構造や、バイナリー構造が存在しない第一DOE形成部10と第二DOE形成部20との間の部分等までエッチングされてしまう可能性がある。これを防ぐためには、第二レジストパターンを形成する際にレジストの厚塗りが必要となり、工程の難度が上昇する。
また、バイナリー構造の平面視形状が細い場合は、溝状構造において幅に対する深さの比率(アスペクト比)が大きくなりやすい。アスペクト比が大きく(例えば2.5以上)なると、溝となる部位の間に位置するレジストが倒れやすくなるため、バイナリー構造の形成が困難となる。
【0030】
本実施形態に係る製造方法においては、ハードマスク層が存在する状態でステップEが行われるため、万一第二レジストパターンが消失した場合も、ハードマスクによりバイナリー構造の存在しない部分が保護される。このため、第二レジストパターンを形成する際にレジストを過度に厚塗りする必要がなく、使用できるレジストの選択肢も広がり、プロセスの自由度を向上できる。さらに、バイナリー構造のアスペクト比が大きい場合にも好適に対応できる。
【0031】
上述した例では、ステップIもハードマスク層の存在下で行われるため、立体部31の周囲が過度にエッチングされにくいという利点もある。
【0032】
加えて、第一マーク41および第二マーク42の周囲もハードマスク層に覆われているため、位置合わせに用いるアライメントマークとしての耐久性が向上するという利点もある。
【0033】
上記説明では、ステップEの後に第三レジストパターンを形成するステップFが行われているが、このステップは省略されてもよい。この場合は、ステップGにおいて、第三DOE形成部30の形成範囲および第一マーク41を含むすべてのハードマスク層101が除去され、図11に示すように基板100のみとなる。その後は、上記説明と同様にステップHおよびIを行うことで、基板100の一方の面に第一ないし第三DOE形成部10、20、30が形成されたインプリントモールドを形成できる。
【0034】
上記手順により形成されたインプリントモールド1Aを図12に示す。インプリントモールド1Aに形成された第一ないし第三DOE形成部10、20、30は、インプリントモールド1と同様に、高度に位置合わせされている。
インプリントモールド1Aでは、第二マーク42の周囲がハードマスク層により保護されないため、ステップIにおいて第二マーク42の周囲もエッチングされて他の領域よりも上面が低くなるが、第二マーク42はインプリントモールドが完成するとその役割を終えるため、問題ない。
【0035】
以上、本発明について、実施形態を用いて説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更は自由に組み合わせることができる。
【0036】
・第三DOE形成部は、必ずしも最後に形成される必要はなく、第一DOE形成部および第二DOE形成部よりも前に形成されてもよい。この場合は、ステップFからIをステップBの前に行い、ステップBにおいて第一レジストパターン110で完成した第三DOE形成部を覆えばよい。
プロセスとしては、第三DOE形成部の形成の難度が最も高いため、第三DOE形成部を先に形成し、問題がないことを確認してから残りのDOE形成部を形成することで、インプリントモールドの生産における歩留まりを向上できるという利点がある。
【0037】
・本発明に係るインプリントモールドは、斜面の向きや深さが異なる複数の第三DOEを有してもよい。
また、上述した第一DOE形成部10や第二DOE形成部20の領域内に、複数の深さのバイナリー構造が存在していてもよい。このような態様は、第一微細構造形成部と第二微細構造形成部とが間隔を空けずに隣接していると捉えることができ、上述したものと概ね同様の手順で作製できる。
【0038】
・上述した例では、第一マークと第二マークの2つのマークを使用する態様を説明したが、これは本発明において必須ではない。すなわち、上述したすべてのステップで同じマークが使用されてもよい。マークの周囲がハードマスク層に覆われた態様は、耐久性の観点からこのような場合に適している。
【0039】
・本発明に係るインプリントモールドは、上述した複数種類の回折格子を備えるものに限定されない。例えば、上面の高さが連続的に変化するマイクロレンズと、バイナリー構造の凹凸構造とが基板の同一面に形成されたような、他の混載タイプのインプリントモールドにも広く適用できる。
【0040】
・本発明に係るインプリントモールドの製造方法は、第三微細構造形成部を備えないインプリントモールドの製造にも好適に適用できる。すなわち、ステップFからIを省略することで、第一微細構造形成部および第二微細構造形成部におけるバイナリー構造の深さの差が大きい場合であっても、レジストの厚塗り等を必要とせずに好適にインプリントモールドを作製することに寄与できる。
【符号の説明】
【0041】
1、1A インプリントモールド
10 第一DOE形成部(第一微細構造形成部)
20 第二DOE形成部(第二微細構造形成部)
30 第三DOE形成部(第三微細構造形成部)
31 立体部
100 基板
101 ハードマスク層
110 第一レジストパターン
120 第二レジストパターン
140 第四レジストパターン(非化学増幅型レジストパターン)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12