(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076578
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188184
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 祐太
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL07
4C038KM01
4C038KX02
4C038KY01
4C038VB13
4C038VC02
(57)【要約】
【課題】検出装置において、フレームレートを高め、血中酸素飽和度を効率よく取得できる。
【解決手段】検出装置は、光を検出する第1光センサと、前記第1光センサに隣接して設けられて、光を検出する第2光センサと、所定の波長の光を出射する第1光源と、前記第1光源が出射する光の波長とは異なる波長の光を出射する第2光源と、前記第1光源と前記第2光源とを同時に発光させる制御部と、前記第1光センサによる検出値と前記第2光センサによる検出値とに基づいて、血中酸素飽和度を取得する処理を行う信号処理部と、を含み、前記第1光センサおよび前記第2光センサは、生体内部で反射または生体を透過する光を検出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を検出する第1光センサと、
前記第1光センサに隣接して設けられて、光を検出する第2光センサと、
所定の波長の光を出射する第1光源と、
前記第1光源が出射する光の波長とは異なる波長の光を出射する第2光源と、
前記第1光源と前記第2光源とを同時に発光させる制御部と、
前記第1光センサによる検出値と前記第2光センサによる検出値とに基づいて、血中酸素飽和度を取得する処理を行う信号処理部と、
を含み、
前記第1光センサおよび前記第2光センサは、生体内部で反射または生体を透過する光を検出する
検出装置。
【請求項2】
前記第1光センサは、前記第2光センサと前記第1光源とによって挟まれる位置に設けられ、
前記第2光センサは、前記第1光センサと前記第2光源とによって挟まれる位置に設けられる
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記第2光センサは、前記第1光センサと前記第1光源とによって挟まれる位置に設けられ、
前記第2光センサは、前記第1光センサと前記第2光源とによって挟まれる位置に設けられる
請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1光センサの検出値の交流成分をAC(Pix1)、
前記第1光センサの検出値の直流成分をDC(Pix1)、
前記第2光センサの検出値の交流成分をAC(Pix2)、
前記第2光センサの検出値の直流成分をDC(Pix2)、
とした場合に、
前記信号処理部は、血中酸素飽和度SpO2を下記の式によって計算する請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の検出装置。
SpO2=b′-a′・R′
ただし、a′およびb′は予め決められた所定の係数であり、
R′={AC(Pix1)/DC(Pix1)}/{AC(Pix2)/DC(Pix2)}
である。
【請求項5】
前記第2光センサに隣接して設けられて、光を検出する第3光センサをさらに含み、
前記第3光センサは、生体内部で反射または生体を透過する光を検出し、
前記信号処理部は、
前記第1光センサ、前記第2光センサおよび前記第3光センサのうち、任意の2つの光センサによる検出値を用いて血中酸素飽和度SpO2をそれぞれ計算し、
計算した血中酸素飽和度SpO2の平均値を計算する
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の検出装置。
【請求項6】
前記第2光センサに隣接して設けられて、光を検出する第3光センサと、
前記第3光センサに隣接して設けられて、光を検出する第4光センサと、
をさらに含み、
前記第3光センサおよび前記第4光センサは、生体内部で反射または生体を透過する光を検出し、
前記信号処理部は、
第1光センサで検出した検出値と第3光センサで検出した検出値に基づいて第1血中酸素飽和度SpO2を計算し、第1光センサで検出した検出値と第4光センサで検出した検出値に基づいて第2血中酸素飽和度SpO2を計算し、第2光センサで検出した検出値と第3光センサで検出した検出値に基づいて第3血中酸素飽和度SpO2を計算し、第1光センサで検出した検出値と第4光センサで検出した検出値に基づいて第4血中酸素飽和度SpO2を計算し、さらに、
前記第1血中酸素飽和度SpO2と、前記第2血中酸素飽和度SpO2と、前記第3血中酸素飽和度SpO2と、前記第4血中酸素飽和度SpO2との平均値を計算する
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の検出装置。
【請求項7】
前記信号処理部は、4つの光センサを用いる場合、4つの血中酸素飽和度SpO21、
SpO22、SpO23およびSpO24を下記の式によって計算し、
SpO21=b1-a1・R1、R1={AC(Pix1)/DC(Pix1)}/{AC(Pix3)/DC(Pix3)}、
SpO22=b2-a2・R2、R2={AC(Pix1)/DC(Pix1)}/{AC(Pix4)/DC(Pix4)}、
SpO23=b3-a3・R3、R3={AC(Pix2)/DC(Pix2)}/{AC(Pix3)/DC(Pix3)}、
SpO24=b4-a4・R4、R4={AC(Pix2)/DC(Pix2)}/{AC(Pix4)/DC(Pix4)}、
さらに、4つの血中酸素飽和度の平均値SpO2を下記の式によって計算する請求項5に記載の検出装置。
SpO2=(SpO21+SpO22+SpO23+SpO24)/4
【請求項8】
前記第1光センサおよび前記第2光センサは、有機フォトダイオードである請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚から体の内部に光を入射し、動脈を透過又は反射する光を検出して取得される経皮データに基づき、血液中の酸素飽和度(以下、血中酸素飽和度SpO2と称する)を取得する検出装置が知られている。血中酸素飽和度SpO2とは、血液中のヘモグロビンの全てに酸素が結合したと仮定した場合の総酸素量に対し、実際にヘモグロビンに結合している酸素量の比である。血中酸素飽和度SpO2を取得する場合、例えば、赤外光により取得された脈波と、赤色光により取得された脈波とを用いる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、血中酸素飽和度SpO2を取得するためには、異なる2波長光による脈波を取得する必要がある。異なる2波長光による脈波を取得する場合、例えば、時分割的に異なるタイミングでデータを取得することが考えられる。すなわち、第1の波長光による脈波のデータを取得した後、第2の波長光による脈波のデータを取得する時分割的処理が考えられる。しかしながら、血中酸素飽和度を効率よく取得することを考えると、上記の時分割的処理には限界がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、血中酸素飽和度を効率よく取得できる検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のある態様による検出装置は、光を検出する第1光センサと、前記第1光センサに隣接して設けられて、光を検出する第2光センサと、所定の波長の光を出射する第1光源と、前記第1光源が出射する光の波長とは異なる波長の光を出射する第2光源と、前記第1光源と前記第2光源とを同時に発光させる制御部と、前記第1光センサによる検出値と前記第2光センサによる検出値とに基づいて、血中酸素飽和度を取得する処理を行う信号処理部と、を含み、前記第1光センサおよび前記第2光センサは、生体内部で反射または生体を透過する光を検出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、フレームレートを高めることにより、血中酸素飽和度を効率よく取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、比較例による検出装置の主要な構成部分を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の検出装置の主要な構成を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す動作例の場合に光センサの使用状態を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の検出装置の動作例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す動作例の場合に光センサの使用状態を示す図である。
【
図8】
図8は、検出装置において、10個の画素を使用する場合の例を示す図である。
【
図9】
図9は、4つの画素を使用してSpO2を計算する場合の例を示す図である。
【
図10】
図10は、4つの画素のうち、2つの画素を組み合わせる場合の組み合わせテーブルの例を示す図である。
【
図11】
図11は、複数の画素を使用して血中酸素飽和度SpO2を計算し、それらの平均値を計算する処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、光センサと光源との配置の変形例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
【
図16】
図16は、センサ領域の検出領域と被検出体との位置関係を示す概略図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係る検出装置の複数の部分検出領域を示す回路図である。
【
図18B】
図18Bは、変形例に係る検出装置のセンサ領域の概略断面構成を示す断面図である。
【
図19】
図19は、検出装置の動作例を表すタイミング波形図である。
【
図22】
図22は、
図19における行読み出し期間に含まれる1つのゲート線の駆動期間の動作例を表すタイミング波形図である。
【
図23】
図23は、比較例によるセンサ領域の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。
【
図24】
図24は、本開示の検出装置のセンサ領域の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。
【
図25】
図25は、実施形態に係る検出装置のセンサ領域と第1光源および第2光源との関係を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、本開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本開示と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0011】
(比較例)
本開示の理解を容易にするために、最初に比較例について説明する。
図1は、比較例による検出装置の主要な構成部分を示す図である。
図1に示すように、比較例による検出装置は、赤色光源61Rと、緑色光源61Gと、光センサPAA0とを備える。図中の「R」は赤色光の光源であることを示し、図中の「G」は緑色光の光源であることを示す。他の図においても同様である。
【0012】
緑色光源61Gは、緑色光を出射する。緑色光は、例えば、490nm以上550nm以下の波長を有する。赤色光源61Rは、赤色光を出射する。赤色光は、例えば、640nm以上770nm以下の波長を有する。すなわち、緑色光源61Gと、赤色光源61Rとは互いに異なる波長の光を出射する。光センサPAA0は、光を検出する。光センサPAA0は、赤色光源61Rと緑色光源61Gとに共通に設けられている。光センサPAA0は、赤色光および緑色光を検出できる。
【0013】
図1に示す比較例では、赤色光源61Rと緑色光源61Gとを交互に点灯させ、光センサPAA0によって受光する。
図2は、
図1に示す検出装置の動作例を示す図である。
図2において、横軸は時間の経過を示し、縦軸は動作の内容を示す。
図2に示すように、本例では、最初に、赤色光源61Rを点灯させて赤色光を出射し、光センサPAA0によって赤色光を検出する(期間P11)。そして、光センサPAA0による検出データを読み出す(期間P12)。次に、緑色光源61Gを点灯させて緑色光を出射し、光センサPAA0によって緑色光を検出する(期間P13)。そして、光センサPAA0による検出データを読み出す(期間P14)。このように、
図1および
図2に示す比較例では、互いに異なる波長の光を出射する赤色光源61Rと緑色光源61Gとを交互に点灯させ、時分割でそれぞれのデータを取得する。
【0014】
(検出装置の主要な構成)
図3は、本開示の検出装置の主要な構成を示す図である。
図3に示すように、本開示の検出装置は、赤色光源61Rと、緑色光源61Gと、光センサPAA1と、光センサPAA2と、制御回路122と、信号処理回路44とを備える。信号処理回路44は、本開示の信号処理部に相当する。
【0015】
第1光源である緑色光源61Gは、緑色光を出射する。第2光源である赤色光源61Rは、赤色光を出射する。すなわち、緑色光源61Gと、赤色光源61Rとは互いに異なる波長の光を出射する。
【0016】
制御回路122は、赤色光源61Rと緑色光源61Gとを発光させる制御部として機能する。制御回路122は、緑色光源61Gと赤色光源61Rとを同時に発光させる。
【0017】
第1光センサである光センサPAA1は、光を検出する。第2光センサである光センサPAA2は、光センサPAA1に隣接して設けられる。第1光センサである光センサPAA1は、第2光センサである光センサPAA2と第1光源である緑色光源61Gとによって挟まれる位置に設けられる。第2光センサである光センサPAA2は、第1光センサである光センサPAA1と第2光源である赤色光源61Rとによって挟まれる位置に設けられる。
【0018】
信号処理回路44は、光センサPAA1による検出値と、光センサPAA2による検出値とに基づいて、血中酸素飽和度を取得する処理を行う。
【0019】
図3に示す検出装置において、緑色光源61Gから出射される緑色光は、図示しない生体に入射する。赤色光源61Rから出射される赤色光は、図示しない生体に入射する。光センサPAA1およびPAA2は、図示しない生体を透過した光または図示しない生体において反射した光を検出する。
【0020】
ここで、
図3に示す検出装置を
図2の場合と同様に動作させる場合について考える。
図4は、
図3に示す検出装置の動作例を示す図である。
図4において、横軸は時間の経過を示し、縦軸は動作の内容を示す。
図4に示すように、赤色光源61Rと緑色光源61Gとを交互に点灯させる場合、最初に、赤色光源61Rを点灯させて赤色光を出射し、光センサPAA1によって赤色光を検出する(期間P11)。そして、光センサPAA1による検出データを読み出す(期間P12)。次に、緑色光源61Gを点灯させて緑色光を出射し、光センサPAA1によって緑色光を検出する(期間P13)。そして、光センサPAA1による検出データを読み出す(期間P14)。このように、互いに異なる波長の光を出射する赤色光源61Rと緑色光源61Gとを交互に点灯させる場合、時分割でそれぞれのデータを取得する。
【0021】
図5は、
図4に示す動作例の場合に光センサPAA1およびPAA2の使用状態を示す図である。
図5に示すように、期間P11および期間P12においては、赤色光源61Rを点灯させ、緑色光源61Gは消灯させる。光センサPAA1によって赤色光を検出し、光センサPAA1による検出データを読み出す。また、期間P13および期間P14においては、緑色光源61Gを点灯させ、赤色光源61Rは消灯させる。光センサPAA1によって緑色光を検出し、光センサPAA1による検出データを読み出す。したがって、赤色光源61Rと緑色光源61Gとを交互に点灯させる場合、期間P11からP14までにおいて、光センサPAA1が使用され、光センサPAA2については使用されない。
【0022】
図4を参照して説明した動作例に対し、本開示の検出装置においては、以下のように動作させる。
図6は、本開示の検出装置の動作例を示す図である。
図6において、横軸は時間の経過を示し、縦軸は動作の内容を示す。
図6に示すように、本例では、赤色光源61Rと緑色光源61Gとを同時に点灯させる(期間P21)。すなわち、互いに異なる波長の光を出射する赤色光源61Rと緑色光源61Gとを同時に点灯させる。そして、光センサPAA1およびPAA2による検出データを読み出す(期間P22)。このように、互いに異なる波長の光を出射する赤色光源61Rと緑色光源61Gとを同時に点灯させ、光センサPAA1およびPAA2からそれぞれのデータを取得する。
【0023】
図7は、
図6に示す動作例の場合に光センサPAA1およびPAA2の使用状態を示す図である。
図7に示すように、期間P21において赤色光源61Rと緑色光源61Gとを同時に点灯させる。そして、光センサPAA1によって赤色光と緑色光とを含む光を検出し、光センサPAA1による検出データを読み出す。それと同時に、光センサPAA2によって赤色光と緑色光とを含む光を検出し、光センサPAA2による検出データを読み出す。つまり、期間P21からP22までにおいて、光センサPAA1およびPAA2が使用され、それぞれのデータを取得する。
【0024】
図3に戻り、光センサPAA1に着目する。光センサPAA1は、赤色光源61Rからの距離よりも、緑色光源61Gからの距離が短い位置に設けられる。光センサPAA1から赤色光源61Rまでの距離に比べて、光センサPAA1から緑色光源61Gまでの距離の方が短い。したがって、光センサPAA1が検出する光のうち、緑色光(G)を例えば100%とすると、赤色光(R)は例えば50%である。つまり、光センサPAA1において、赤色光の検出値は緑色光の検出値の半分程度になる。
【0025】
また、光センサPAA2に着目する。光センサPAA2は、緑色光源61Gからの距離よりも、赤色光源61Rからの距離が短い位置に設けられる。光センサPAA2から緑色光源61Gまでの距離に比べて、光センサPAA2から赤色光源61Rまでの距離の方が短い。したがって、光センサPAA2が検出する光のうち、赤色光(R)を例えば100%とすると、緑色光(G)は例えば50%である。つまり、光センサPAA2において、緑色光の検出値は赤色光の検出値の半分程度になる。以上のように、光センサPAA1、PAA2において、赤色光源61Rからの赤色光と、緑色光源61Gからの緑色光との到達割合が異なる。なお、赤色光は、緑色光よりも遠くまで届くことが知られている。緑色光については、生体内での減衰が大きいため、遠くまで届く成分が小さい。
【0026】
図2、
図4を参照して説明したように、緑色光源61Gと赤色光源61Rとを交互に点灯させ、時分割でそれぞれのデータを取得すると、フレームレートを高めることができない。ここで、フレームレートとは、1フレームに相当する時間においてデータを取得できる回数である。これに対し、
図6を参照して説明したように、赤色光源61Rと緑色光源61Gとを同時に点灯させることにより、データを取得するフレームレートを高めることができる。同時に点灯させてデータを取得する場合、時分割でそれぞれのデータを取得する場合に比べてフレームレートが2倍になる。フレームレートを高めることにより、血中酸素飽和度SpO2を効率よく計算することができる。
【0027】
緑色光源61Gと赤色光源61Rとを交互に点灯させて時分割でそれぞれのデータを取得する場合、血中酸素飽和度SpO2は脈波データを用いて式(1)により計算される。
【数1】
【0028】
上記の式(1)において、「a」および「b」は、実測値に基づいて予め決定される所定の係数である。式(1)において、Rは次の式(2)で定義される。
【数2】
【0029】
上記の式(2)において、AC(Red)は赤色光の測定値の交流成分、DC(Red)は赤色光の測定値の直流成分、AC(Gr)は緑色光の測定値の交流成分、DC(Gr)は緑色光の測定値の直流成分、である。交流成分は、脈波の成分を含む。
【0030】
ところで、光センサを平面状に縦横に配置して、光を検出するための検出領域を構成することがある。このような検出領域に含まれる2つの画素が上記の2つの光センサPAA1、PAA2であってもよい。つまり、各画素が光センサとしての機能を有する。
図3のように、2つの光源を同時に点灯させて、2つの画素のデータを取得する場合、以下のようになる。すなわち、画素Pix1と、画素Pix2とを用いるとすると、血中酸素飽和度SpO2は脈波データを用いて式(3)により計算される。
【数3】
上記の式(3)において、「a’」および「b’」は、実測値に基づいて予め決定される所定の係数である。「a’」、「b’」は、「a」、「b」とは異なる値である。式(3)において、R’は次の式(4)で定義される。
【数4】
【0031】
上記の式(4)において、AC(Pix1)は第1画素の測定値の交流成分、DC(Pix1)は第1画素の測定値の直流成分、AC(Pix2)は第2画素の測定値の交流成分、DC(Pix2)は第2画素の測定値の直流成分、である。交流成分は、脈波の成分を含む。
【0032】
上記は2つの光センサPAA1およびPAA2に対応する第1画素および第2画素を使用する場合について説明したが、3つ以上の画素を使用してもよい。
図8は、検出装置において、10個の画素を使用する場合の例を示す図である。
図8に示すように、本例では、画素Pix1からPix10と、緑色光源61Gと、赤色光源61Rとを使用する。画素Pix1からPix10は、緑色光源61Gと赤色光源61Rとに挟まれた位置に設けられている。
【0033】
図8において、緑色光源61Gと、赤色光源61Rとを同時に点灯する。すると、画素Pix1からPix10のそれぞれにおいて、緑色光と赤色光との比率が異なる光が検出される。このため、任意の2つの画素に着目すれば、上記の式(3)および式(4)によってSpO2を計算できる。2つの画素に順次着目してSpO2を複数回計算し、それらの計算結果の平均値を求めてもよい。例えば、画素Pix1と画素Pix9とを用いて第1のSpO2、画素Pix1と画素Pix9とを用いて第2のSpO2、画素Pix2と画素Pix9とを用いて第3のSpO2、画素Pix2と画素Pix10とを用いて第4のSpO2、をそれぞれ計算することができ、4つの計算結果の平均値を求めてもよい。なお、それぞれの画素に独立したノイズ成分が含まれる場合、平均化したSpO2を算出することでノイズ成分を効果的に除去できる。
【0034】
多くの画素を使用する場合の、より具体的な血中酸素飽和度SpO2の計算について、以下に説明する。
図9は、検出装置において4つの画素を使用してSpO2を計算する場合の例を示す図である。
図9においては、第1光センサである画素Pix1、第2光センサである画素Pix2に加えて、第3光センサである画素Pix3および第4光センサである画素Pix4を用いる。つまり、
図9においては、4つの画素を用いる。
図10は、4つの画素のうち、2つの画素を組み合わせる場合の組み合わせテーブルの例を示す図である。
図10は、画素(A)と画素(B)とを組み合わせる場合の組み合わせテーブルの例を示す。この組み合わせテーブルは、後述するように、記憶回路46に記憶され、信号処理回路44によって参照される。
【0035】
図9に示すように、本例では、4つの画素Pix1、Pix2、Pix3およびPix4と、緑色光源61Gと、赤色光源61Rとを使用する。4つの画素Pix1からPix4は、緑色光源61Gと赤色光源61Rとに挟まれた位置に設けられている。
【0036】
図10に示すように、血中酸素飽和度SpO2
1を計算する場合、画素Pix1と画素Pix3とを使用する。つまり、画素Pix1のデータと画素Pix3のデータとを使用する。そして、以下の式(5)および式(6)により、血中酸素飽和度SpO2
1を計算する。
【数5】
【0037】
【0038】
図10に示すように、血中酸素飽和度SpO2
2を計算する場合、画素Pix1と画素Pix4とを使用する。つまり、画素Pix1のデータと画素Pix4のデータとを使用する。そして、以下の式(7)および式(8)により、血中酸素飽和度SpO2
2を計算する。
【数7】
【0039】
【0040】
図10に示すように、血中酸素飽和度SpO2
3を計算する場合、画素Pix2と画素Pix3とを使用する。つまり、画素Pix2のデータと画素Pix3のデータとを使用する。そして、以下の式(9)および式(10)により、血中酸素飽和度SpO2
3を計算する。
【数9】
【0041】
【0042】
図10に示すように、血中酸素飽和度SpO2
4を計算する場合、画素Pix2と画素Pix4とを使用する。そして、つまり、画素Pix2のデータと画素Pix4のデータとを使用する。以下の式(11)および式(12)により、血中酸素飽和度SpO2
4を計算する。
【数11】
【0043】
【0044】
最後に、上記の式(5)、式(7)、式(9)および式(11)の計算値の平均値を算出する。すなわち、以下の式(13)により、血中酸素飽和度SpO2の平均値を計算する。
【数13】
【0045】
なお、上記の式(5)、式(7)、式(9)および式(11)において、係数a
1、a
2、a
3およびa
4、ならびに、係数b
1、b
2、b
3およびb
4は、実測値に基づいて予め決定される所定の係数である。係数a
1、a
2、a
3およびa
4、ならびに、係数b
1、b
2、b
3およびb
4については、緑色光源61Gからの緑色光と赤色光源61Rからの赤色光との混合比率が異なるため、それぞれ異なる値になる。つまり、画素の組み合わせごとに、別々の係数が用いられる。これらの係数は、SpO2算出パラメータテーブルとして、記憶回路46(
図14参照)に記憶される。
【0046】
上記のように複数の画素を使用して血中酸素飽和度SpO2を計算し、それらの平均値を計算する処理について、
図11を参照して説明する。
図11は、複数の画素を使用して血中酸素飽和度SpO2を計算し、それらの平均値を計算する処理を示すフローチャートである。この処理は、主に、信号処理回路44において行われる。
【0047】
図11において、制御回路122は、赤色光源61Rと緑色光源61Gとを同時に点灯し、全画素の脈波データを測定する(ステップS101)。信号処理回路44は、測定結果を記憶回路46(
図14参照)に記憶する(ステップS102)。次に、信号処理回路44は、記憶回路46に記憶されている組み合わせテーブルを参照し(ステップS103)、予め決められた組み合わせの2画素を選択する(ステップS104)。
【0048】
さらに、信号処理回路44は、ステップS104において選択した2画素の組み合わせについて、組み合わせ別のSpO2算出パラメータテーブルを参照する(ステップS105)。信号処理回路44は、ステップS104において選択した2画素のデータを記憶回路46から読み出し、それらを用いて血中酸素飽和度SpO2を計算する(ステップS106)。信号処理回路44は、血中酸素飽和度SpO2の計算結果を記憶回路46に記憶する(ステップS107)。
【0049】
次に、信号処理回路44は、全ての画素の組み合わせについて計算を行ったか否かを判定する(ステップS108)。ステップS108の判定の結果、光センサの全ての組み合わせについて計算を行った場合(ステップS108においてYes)、ステップS109に進み、信号処理回路44は、全ての組み合わせについての血中酸素飽和度SpO2の平均値を算出する(ステップS109)。信号処理回路44は、計算した血中酸素飽和度SpO2の値を出力し(ステップS110)、処理を終了する。
【0050】
一方、信号処理回路44は、ステップS108の判定の結果、光センサの全ての組み合わせについて計算を行っていない場合(ステップS108においてNo)、すなわち計算を行っていない組み合わせがある場合は、ステップS103に戻り、処理を継続する。以上の処理により、複数の画素を用い、画素の組み合わせごとに血中酸素飽和度SpO2を計算し、各計算結果の平均値を計算することができる。なお、ステップS106において記憶回路46から読み出したデータを例えばバッファ(不図示)に一時的に保持しておき、次の血中酸素飽和度SpO2の計算の際に再度用いてもよい。例えば、
図10の血中酸素飽和度SpO2
1の計算の際に用いた画素Pix1のデータをバッファに保持しておけば、次の血中酸素飽和度SpO2
2の計算の際にそのデータを再度用いることができる。これにより、2画素のデータを記憶回路46から毎回読み出すよりも計算の処理時間を短縮できる。
【0051】
(配置の変形例)
図12は、光センサと光源との配置の変形例を示す図である。
図12に示すように、第1光センサである光センサPAA1と第2光センサである光センサPAA2とが隣接して設けられる。また、並んで設けられる光センサPAA1および光センサPAA2に対し、光センサPAA2に近い位置に第1光源である緑色光源61Gと第2光源である赤色光源61Rとが設けられる。つまり、光センサPAA1に比べて光センサPAA2に近い位置に、緑色光源61Gと赤色光源61Rとが設けられる。このとき、第2光センサPAA2は、光センサPAA1と第1光源である緑色光源61Gとによって挟まれる位置に設けられる。また、光センサPAA2は、光センサPAA1と第2光源である赤色光源61Rとによって挟まれる位置に設けられる。光センサPAA1は画素Pix1であってもよく、光センサPAA2は画素Pix2であってもよい。
図12においては、光センサPAA1、光センサPAA2の場合について説明する。
【0052】
上述したように、赤色光源61Rから光センサまでの距離と緑色光源61Gから光センサまでの距離とが同じであれば、赤色光源61Rおよび緑色光源61Gと光センサとの間の距離が遠いほど光センサにおいて検出される光の強度は、緑色光よりも赤色光の方が大きい。このため、赤色光源61Rおよび緑色光源61Gに近い位置に設けられる光センサPAA2において検出される光については、例えば、緑色光(G)が100%、赤色光(R)が100%である。これに対し、赤色光源61Rおよび緑色光源61Gから遠い位置に設けられる光センサPAA1において検出される光については、例えば、緑色光(G)が30%、赤色光(R)が70%である。このように、赤色光源61Rおよび緑色光源61Gからの距離同じ位置に光センサを設けても、2つの光センサにおいて検出される光については、緑色光(G)の成分と赤色光(R)の成分とが同じ比率にならない。したがって、
図12のように光源および光センサを配置した場合であっても、赤色光源61Rと緑色光源61Gとを同時に点灯させることにより、光センサの検出値に基いて、血中酸素飽和度SpO2の値を計算できる。この場合、上記の式(1)および式(2)を用い、係数「a」および「b」を実測値に基づいて予め決定しておけば、血中酸素飽和度SpO2の値を計算できる。
【0053】
上述したように、光センサを平面状に縦横に配置して、光を検出するための検出領域を構成することがある。以下、このような検出領域を用いる場合の実施形態について、より詳細に説明する。
【0054】
図13は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。
図13に示すように、検出装置1は、センサ基材21と、センサ領域10と、ゲート線駆動回路15と、信号線選択回路16と、検出回路48と、制御回路122と、電源回路123と、複数の第1光源61と、複数の第2光源62と、を有する。第1光源61は緑色光源61Gに対応し、第1光源62は赤色光源61Rに対応する。センサ領域10に含まれる2つの画素、例えばPixAは、
図3中の光センサPAA1およびPAA2に相当する。センサ領域10に含まれる10個の画素、例えばPixBは、
図8中の画素Pix1からPix10に相当する。センサ領域10に含まれる4つの画素、例えばPixCは、
図9中の画素Pix1からPix4に相当する。
図13では、第1光源基材51に複数の第1光源61が設けられ、第2光源基材52に複数の第2光源62が設けられる例を示したが、
図13に示す第1光源61および第2光源62の配置は、あくまで一例であり適宜変更することができる。例えば、
図12を参照して説明したように、第1光源基材51に、第1光源61および第2光源62が配置されていてもよい。
【0055】
検出装置1は、ホスト200と電気的に接続される。ホスト200は、例えば検出装置1が適用される機器(不図示)の上位制御装置である。ホスト200は、検出装置1から出力されるデータに基づき、所定の生体情報取得処理を行う。
【0056】
センサ基材21には、フレキシブルプリント基板71を介して制御基板121が電気的に接続される。フレキシブルプリント基板71には、検出回路48が設けられている。制御基板121には、制御回路122、電源回路123、および出力回路126が設けられている。
【0057】
制御回路122は、例えばロジック制御信号を出力する制御IC(Control Integrated Circuit)である。制御回路122は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)であっても良い。
【0058】
制御回路122は、センサ領域10、ゲート線駆動回路15および信号線選択回路16に制御信号を供給して、センサ領域10の検出動作を制御する。また、制御回路122は、第1光源61および第2光源62に制御信号を供給して、第1光源61および第2光源62の点灯又は非点灯を制御する。
【0059】
電源回路123は、センサ電源電位VDDSNS(
図17参照)等の電圧信号をセンサ領域10、ゲート線駆動回路15および信号線選択回路16に供給する。また、電源回路123は、電源電圧を第1光源61および第2光源62に供給する。
【0060】
出力回路126は、例えばUSBコントローラICであり、制御回路122とホスト200との間の通信制御を行う。
【0061】
センサ基材21は、検出領域AAと、周辺領域GAとを有する。検出領域AAは、センサ領域10が有する複数の光センサPD(
図17参照)が設けられた領域である。周辺領域GAは、検出領域AAの外周と、センサ基材21の端部との間の領域であり、光センサPDが設けられない領域である。
【0062】
ゲート線駆動回路15および信号線選択回路16は、周辺領域GAに設けられる。具体的には、ゲート線駆動回路15は、周辺領域GAのうち第2方向Dyに沿って延在する領域に設けられる。信号線選択回路16は、周辺領域GAのうち第1方向Dxに沿って延在する領域に設けられ、センサ領域10と検出回路48との間に設けられる。
【0063】
なお、第1方向Dxは、センサ基材21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、センサ基材21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。また、第3方向Dzは、第1方向Dxおよび第2方向Dyと直交する方向であり、センサ基材21の法線方向である。
【0064】
複数の第1光源61は、第1光源基材51に設けられ、第2方向Dyに沿って配列される。複数の第2光源62は、第2光源基材52に設けられ、第2方向Dyに沿って配列される。第1光源基材51および第2光源基材52は、それぞれ、制御基板121に設けられた端子部124、125を介して、制御回路122および電源回路123と電気的に接続される。
【0065】
複数の第1光源61および複数の第2光源62は、例えば、無機LED(Light Emitting Diode)や、有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)等が用いられる。複数の第1光源61および複数の第2光源62は、それぞれ異なる波長の第1光および第2光を出射する。
【0066】
第1光源61から出射された第1光は、例えば、被験者の指Fg(
図25参照)や手首等の被検出体の表面で反射されセンサ領域10に入射する。これにより、センサ領域10は、指Fg等の表面の凹凸の形状を検出することで指紋を検出することができる。第2光源62から出射された第2光は、例えば、指Fg等の内部で反射し又は指Fg等を透過してセンサ領域10に入射する。これにより、センサ領域10は、被験者の指や手首等の内部の生体に関する情報を検出できる。生体に関する情報は、例えば、被験者の脈波、脈拍、血管像等である。すなわち、検出装置1は、指紋を検出する指紋検出装置や、静脈などの血管パターンを検出する静脈検出装置として構成されてもよい。
【0067】
第1光は、490nm以上550nm以下の波長を有し、第2光は、640nm以上770nm以下の波長を有する。この場合、第1光は、例えば、緑色の可視光(緑色光)であり、第2光は、例えば、赤色の可視光(赤色光)である。第1光源61から出射された第1光および第2光源62から出射された第2光に基づいて、センサ領域10は、生体に関する情報として、脈波、脈拍や血管像に加えて、血中酸素濃度を検出することができる。このように、検出装置1は、第1光源61および複数の第2光源62を有し、第1光に基づいた検出と、第2光に基づいた検出とを行うことで、種々の生体に関する情報を検出することができる。
【0068】
図14は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
図14に示すように、検出装置1は、さらに検出制御回路11と検出回路40とを有する。
【0069】
センサ領域10は、複数の光センサPDを有する。センサ領域10が有する光センサPDは有機フォトダイオード(OPD:Organic Photodiode)であり、照射される光に応じた電気信号を、検出信号Vdetとして信号線選択回路16に出力する。また、センサ領域10は、ゲート線駆動回路15から供給されるゲート駆動信号Vgclにしたがって検出を行う。
【0070】
検出制御回路11は、ゲート線駆動回路15、信号線選択回路16および検出回路40にそれぞれ制御信号を供給し、これらの動作を制御する回路である。検出制御回路11は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号をゲート線駆動回路15に供給する。また、検出制御回路11は、選択信号ASW等の各種制御信号を信号線選択回路16に供給する。また、検出制御回路11は、各種制御信号を第1光源61および第2光源62に供給して、それぞれの点灯および非点灯を制御する。
【0071】
ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて複数のゲート線GCL(
図15参照)を駆動する回路である。ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを順次又は同時に選択し、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLに接続された複数の光センサPDを選択する。
【0072】
信号線選択回路16は、複数の信号線SGL(
図15参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。信号線選択回路16は、例えばマルチプレクサである。信号線選択回路16は、検出制御回路11から供給される選択信号ASWに基づいて、選択された信号線SGLと検出回路48とを電気的に接続する。これにより、信号線選択回路16は、光センサPDの検出信号Vdetを検出回路40に出力する。
【0073】
検出回路40は、検出回路48と、信号処理回路44と、記憶回路46と、検出タイミング制御回路47とを備える。検出タイミング制御回路47は、検出制御回路11から供給される制御信号に基づいて、検出回路48と、信号処理回路44と、が同期して動作するように制御する。
【0074】
検出回路48は、センサ領域10から出力される各光センサPDの検出信号に基づき、各光センサPDの検出値を生成する。検出回路48は、例えばアナログフロントエンド回路(AFE:Analog Front End)である。
【0075】
検出回路48は、少なくとも検出信号増幅回路42およびA/D変換回路43の機能を有する信号処理回路である。検出信号増幅回路42は、検出信号Vdetを増幅する。A/D変換回路43は、検出信号増幅回路42から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0076】
本開示において、信号処理回路44および記憶回路46は、制御回路122に含まれる。
【0077】
信号処理回路44は、検出回路48から出力される各光センサPDの検出値に基づき、生体に関する情報を生成するための生体データを取得する。本開示において、生体に関する情報は、緑色光や赤色光により取得された脈波を含む。
【0078】
記憶回路46は、信号処理回路44で処理された信号を一時的に保存する。また、本開示において、記憶回路46には、信号処理回路44において生体データの取得を行う際に、後述する生体データ取得領域設定処理フローにおいて設定される生体データ取得領域や、各種設定情報が格納される。記憶回路46は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を含む態様であっても良い。また、記憶回路46は、レジスタ回路等であっても良い。
【0079】
次に、検出装置1の回路構成例について説明する。
図15は、検出装置を示す回路図である。
図15に示すように、センサ領域10は、行列状に配列された複数の部分検出領域PAAを有する。複数の部分検出領域PAAには、それぞれ光センサPDが設けられている。
【0080】
ゲート線GCLは、第1方向Dxに延在し、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAと接続される。また、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)は、第2方向Dyに配列され、それぞれゲート線駆動回路15に接続される。なお、以下の説明において、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を区別して説明する必要がない場合には、単にゲート線GCLと表す。また、
図15では説明を分かりやすくするために、8本のゲート線GCLを示しているが、あくまで一例であり、ゲート線GCLは、M本(Mは自然数、例えばM=256)配列されていてもよい。
【0081】
信号線SGLは、第2方向Dyに延在し、第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAの光センサPDに接続される。また、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)は、第1方向Dxに配列されて、それぞれ信号線選択回路16およびリセット回路17に接続される。なお、以下の説明において、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)を区別して説明する必要がない場合には、単に信号線SGLと表す。
【0082】
また、説明を分かりやすくするために、12本の信号線SGLを示しているが、あくまで一例であり、信号線SGLは、N本(Nは自然数、例えばN=252)配列されていてもよい。また、
図15では、信号線選択回路16とリセット回路17との間にセンサ領域10が設けられている。これに限定されず、信号線選択回路16とリセット回路17とは、信号線SGLの同じ方向の端部にそれぞれ接続されていてもよい。
【0083】
ゲート線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号を、制御回路122(
図13参照)から受け取る。ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を時分割的に順次選択する。ゲート線駆動回路15は、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、ゲート線GCLに接続された複数の第1スイッチング素子Trにゲート駆動信号Vgclが供給され、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAが、検出対象として選択される。
【0084】
なお、ゲート線駆動回路15は、指紋の検出および異なる複数の生体に関する情報(脈波、脈拍、血管像、血中酸素濃度等、以下、単に「生体情報」とも称する)のそれぞれの検出モードごとに、異なる駆動を実行してもよい。例えば、ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを束ねて駆動してもよい。
【0085】
具体的には、ゲート線駆動回路15は、制御信号に基づいて、ゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)のうち、所定数のゲート線GCLを同時に選択する。例えば、ゲート線駆動回路15は、6本のゲート線GCL(1)からゲート線GCL(6)を同時に選択し、ゲート駆動信号Vgclを供給する。ゲート線駆動回路15は、選択された6本のゲート線GCLを介して、複数の第1スイッチング素子Trにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、第1方向Dxおよび第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAを含むブロック単位PAG1、PAG2が、それぞれ検出対象として選択される。ゲート線駆動回路15は、所定数のゲート線GCLを束ねて駆動し、所定数のゲート線GCLごとに順次ゲート駆動信号Vgclを供給する。
【0086】
信号線選択回路16は、複数の選択信号線Lselと、複数の出力信号線Loutと、第3スイッチング素子TrSと、を有する。複数の第3スイッチング素子TrSは、それぞれ複数の信号線SGLに対応して設けられている。6本の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)は、共通の出力信号線Lout1に接続される。6本の信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)は、共通の出力信号線Lout2に接続される。出力信号線Lout1、Lout2は、それぞれ検出回路48に接続される。
【0087】
ここで、信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)を第1信号線ブロックとし、信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)を第2信号線ブロックとする。複数の選択信号線Lselは、1つの信号線ブロックに含まれる第3スイッチング素子TrSのゲートにそれぞれ接続される。また、1本の選択信号線Lselは、複数の信号線ブロックの第3スイッチング素子TrSのゲートに接続される。
【0088】
具体的には、選択信号線Lsel1、Lsel2、…、Lsel6は、それぞれ信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)に対応する第3スイッチング素子TrSと接続される。また、選択信号線Lsel1は、信号線SGL(1)に対応する第3スイッチング素子TrSと、信号線SGL(7)に対応する第3スイッチング素子TrSと、に接続される。選択信号線Lsel2は、信号線SGL(2)に対応する第3スイッチング素子TrSと、信号線SGL(8)に対応する第3スイッチング素子TrSと、に接続される。
【0089】
制御回路122(
図13参照)は、選択信号ASWを順次選択信号線Lselに供給する。これにより、信号線選択回路16は、第3スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて信号線SGLを時分割的に順次選択する。また、信号線選択回路16は、複数の信号線ブロックでそれぞれ1本ずつ信号線SGLを選択する。このような構成により、検出装置1は、検出回路48を含むIC(Integrated Circuit)の数、又はICの端子数を少なくすることができる。
【0090】
なお、信号線選択回路16は、複数の信号線SGLを束ねて検出回路48に接続してもよい。具体的には、制御回路122(
図13参照)は、選択信号ASWを同時に選択信号線Lselに供給する。信号線選択回路16は、第3スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて複数の信号線SGL(例えば6本の信号線SGL)を選択し、複数の信号線SGLと検出回路48とを接続する。これにより、ブロック単位PAG1、PAG2で検出された信号が検出回路48に出力される。この場合、ブロック単位PAG1、PAG2に含まれる複数の部分検出領域PAA(光センサPD)からの信号が統合されて検出回路48に出力される。
【0091】
ゲート線駆動回路15および信号線選択回路16の動作により、ブロック単位PAG1、PAG2ごとに検出を行うことで、1回の検出で得られる検出信号Vdetの強度が向上するのでセンサ感度を向上させることができる。
【0092】
本開示において、検出装置1は、ブロック単位PAG1、PAG2に含まれる部分検出領域PAA(光センサPD)の数を変更することができる。これにより、取得する情報に応じて、1インチ当たりの解像度(ppi(pixel per inch)値、以下「精細度」と称する)を設定することができる。
【0093】
例えば、ブロック単位PAG1、PAG2に含まれる部分検出領域PAA(光センサPD)の数を相対的に少なくする。これにより、検出時間が長くなり低フレームレート(例えば、20fps以下)となる反面、高精細(例えば、300ppi以上)な検出を行うことができる。以下、低フレームレート且つ高精細な検出を行うモードを「第1モード」と称する。低フレームレート且つ高精細な検出を行う第1モードを選択することで、例えば、指の表面の指紋を高精細に取得することができる。
【0094】
また、例えば、ブロック単位PAG1、PAG2に含まれる部分検出領域PAA(光センサPD)の数を相対的に多くする。これにより、低精細となる(例えば、50ppi以下)反面、1フレームにおいて検出を短時間で繰り返し実行することができる高フレームレート(例えば、100fps以上)で検出を行うことができる。以下、高フレームレート且つ低精細な検出を行うモードを「第2モード」と称する。高フレームレート且つ低精細な検出を行う第2モードを選択することで、例えば、脈波の時間的な変化を精度よく検出することができる。また、この第2モードにおいて、より高いフレームレート(例えば、1000fps以上)で取得した脈波を用いることで、脈波伝搬速度の算出や血圧等の算出が可能となる。
【0095】
また、例えば、血管像(静脈パターン)を取得する場合には、ブロック単位PAG1、PAG2に含まれる部分検出領域PAA(光センサPD)の数を、第1モードと第2モードとの中間値とする。これにより、フレームレートが第1モードよりも高く第2モードよりも低い中フレームレート(例えば、20fpsより大きく100fps未満)、且つ、精細度が第1モードよりも低く第2モードよりも高い中精細(例えば、50ppiより大きく300ppi未満)で検出を行うことができる。以下、中フレームレート且つ中精細な検出を行うモードを「第3モード」と称する。この中フレームレート且つ中精細な検出を行う第3モードは、例えば、静脈などの血管パターンを取得する場合に適している。
【0096】
図15に示すように、リセット回路17は、基準信号線Lvr、リセット信号線Lrstおよび第4スイッチング素子TrRを有する。第4スイッチング素子TrRは、複数の信号線SGLに対応して設けられている。基準信号線Lvrは、複数の第4スイッチング素子TrRのソース又はドレインの一方に接続される。リセット信号線Lrstは、複数の第4スイッチング素子TrRのゲートに接続される。
【0097】
制御回路122は、リセット信号RST2をリセット信号線Lrstに供給する。これにより、複数の第4スイッチング素子TrRがオンになり、複数の信号線SGLは基準信号線Lvrと電気的に接続される。電源回路123は、基準信号COMを基準信号線Lvrに供給する。これにより、複数の部分検出領域PAAに含まれる容量素子Ca(
図17参照)に基準信号COMが供給される。
【0098】
図16は、センサ領域の検出領域と被検出体との位置関係を示す概略図である。
図16では、被検出体として被験者の指Fgを例示している。指Fgは、検出領域AAに載置される。指Fgは、検出領域AAの一部分を覆うように載置される。なお、被検出体は、被験者の指Fgに限らず、手首などであってもよい。
【0099】
図17は、実施形態に係る検出装置の複数の部分検出領域を示す回路図である。なお、
図17では、検出回路48の回路構成も併せて示している。
図17に示すように、部分検出領域PAAは、光センサPDと、容量素子Caと、第1スイッチング素子Tr1とを含む。容量素子Caは、光センサPDに形成される容量(センサ容量)であり、等価的に光センサPDと並列に接続される。さらに、信号線容量Ccは、信号線SGLに形成される寄生容量であり、等価的に、信号線SGLと、光センサPDのアノードおよび容量素子Caの一端側との間に形成される。
【0100】
図17では、複数のゲート線GCLのうち、第2方向Dyに並ぶ2つのゲート線GCL(m)、GCL(m+1)を示す。また、複数の信号線SGLのうち、第1方向Dxに並ぶ2つの信号線SGL(n)、SGL(n+1)を示す。部分検出領域PAAは、ゲート線GCLと信号線SGLとで囲まれた領域である。
【0101】
第1スイッチング素子Trは、光センサPDに対応して設けられる。第1スイッチング素子Trは、薄膜トランジスタにより構成されるものであり、この例では、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFT(Thin Film Transistor)で構成されている。
【0102】
第1方向Dxに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのゲートは、ゲート線GCLに接続される。第2方向Dyに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのソースは、信号線SGLに接続される。第1スイッチング素子Trのドレインは、光センサPDのカソードおよび容量素子Caに接続される。
【0103】
光センサPDのアノードには、電源回路123からセンサ電源信号VDDSNSが供給される。また、信号線SGLおよび容量素子Caには、電源回路123から、信号線SGLおよび容量素子Caの初期電位となる基準信号COMが供給される。
【0104】
部分検出領域PAAに光が照射されると、光センサPDには光量に応じた電流が流れ、これにより容量素子Caに電荷が蓄積される。第1スイッチング素子Trがオンになると、容量素子Caに蓄積された電荷に応じて、信号線SGLに電流が流れる。信号線SGLは、信号線選択回路16の第3スイッチング素子TrSを介して検出回路48に接続される。これにより、検出装置1は、部分検出領域PAAごとに、又はブロック単位PAG1、PAG2ごとに光センサPDに照射される光の光量に応じた信号を検出できる。なお、第1光源61および第2光源62の光量の初期設定については、後述する。
【0105】
検出回路48は、読み出し期間Pdet(
図19参照)にスイッチSSWがオンになり、信号線SGLと接続される。検出回路48の検出信号増幅回路42は、信号線SGLから供給された電流の変動を電圧の変動に変換して増幅する。検出信号増幅回路42の非反転入力部(+)には、固定された電位を有する基準電位(Vref)が入力され、反転入力端子(-)には、信号線SGLが接続される。実施形態では、基準電位(Vref)電圧として基準信号COMと同じ信号が入力される。また、検出信号増幅回路42は、容量素子CbおよびリセットスイッチRSWを有する。リセット期間Prst(
図19参照)において、リセットスイッチRSWがオンになり、容量素子Cbの電荷がリセットされる。
【0106】
次に、光センサPDの構成について説明する。
図18Aは、センサ領域の概略断面構成を示す断面図である。
図18Aに示すように、センサ領域10は、センサ基材21と、TFT層22と、絶縁層23と、光センサPDと、絶縁層24a、24b、24c、25を備える。センサ基材21は、絶縁性の基材であり、例えば、ガラスや樹脂材料が用いられる。センサ基材21は、平板状に限定されず、曲面を有していてもよい。この場合、センサ基材21は、フィルム状の樹脂であってもよい。センサ基材21は、第1面と、第1面の反対側の第2面とを有する。第1面に、TFT層22、絶縁層23、光センサPD、絶縁層24、25の順に積層される。
【0107】
TFT層22は、上述したゲート線駆動回路15や信号線選択回路16等の回路が設けられる。また、TFT層22には、第1スイッチング素子Tr等のTFT(Thin Film Transistor)や、ゲート線GCL、信号線SGL等の各種配線が設けられる。センサ基材21およびTFT層22は、所定の検出領域ごとにセンサを駆動する駆動回路基板であり、バックプレーン又はアレイ基板とも呼ばれる。
【0108】
絶縁層23は、有機絶縁層であり、TFT層22の上に設けられる。絶縁層23は、TFT層22に形成される第1スイッチング素子Trや、各種導電層で形成される凹凸を平坦化する平坦化層である。
【0109】
光センサPDは、絶縁層23の上に設けられる。光センサPDは、下部電極35、半導体層31および上部電極34を有し、この順で積層される。
【0110】
下部電極35は、絶縁層23の上に設けられ、コンタクトホールH1を介してTFT層22の第1スイッチング素子Trと電気的に接続される。下部電極35は、光センサPDのカソードであり、検出信号Vdetを読み出すための電極である。下部電極35は、例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。又は、下部電極35は、これらの金属材料が複数積層された積層膜であってもよい。下部電極35は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電材料であってもよい。
【0111】
半導体層31は、アモルファスシリコン(a-Si)である。半導体層31は、i型半導体層32a、p型半導体層32bおよびn型半導体層32cを含む。i型半導体層32a、p型半導体層32bおよびn型半導体層32cは、光電変換素子の一具体例である。
図18Aでは、センサ基材21の表面に垂直な方向において、n型半導体層32c、i型半導体層32aおよびp型半導体層32bの順に積層されている。ただし、反対の構成、つまり、p型半導体層32b、i型半導体層32aおよびn型半導体層32cの順に積層されていてもよい。また半導体層31は、有機半導体からなる光電変換素子であってもよい。
【0112】
n型半導体層32cは、a-Siに不純物がドープされてn+領域を形成する。p型半導体層32bは、a-Siに不純物がドープされてp+領域を形成する。i型半導体層32aは、例えば、ノンドープの真性半導体であり、p型半導体層32bおよびn型半導体層32cよりも低い導電性を有する。
【0113】
上部電極34は、光センサPDのアノードであり、電源信号VDDSNSを光電変換層に供給するための電極である。上部電極34は、例えばITO等の透光性導電層であり、全ての光センサPDに対して共通に設けられる。
【0114】
絶縁層23の上に絶縁層24aおよび絶縁層24bが設けられている。絶縁層24aは、上部電極34の周縁部を覆い、上部電極34と重なる位置に開口が設けられている。接続配線36は、上部電極34のうち、絶縁層24aが設けられていない部分で上部電極34と接続される。絶縁層24bは、上部電極34および接続配線36を覆って絶縁層24aの上に設けられる。絶縁層24bの上に平坦化層である絶縁層24cが設けられる。絶縁層24cの上に絶縁層25が設けられる。ただし、絶縁層25は、なくてもよい。
【0115】
図18Bは、変形例に係る検出装置のセンサ領域の概略断面構成を示す断面図である。
図18Bに示すように、変形例の検出装置1Aにおいて、光センサPDAは、絶縁層23aの上に設けられる。絶縁層23aは、絶縁層23を覆って設けられた無機絶縁層であり、例えば窒化シリコン(SiN)で形成される。光センサPDAは、光電変換層31Aと、下部電極35(カソード電極)と、上部電極34(アノード電極)と、を有する。センサ基材21の第1面S1に垂直な方向において、下部電極35、光電変換層31A、上部電極34の順に積層される。
【0116】
光電変換層31Aは、照射される光に応じて特性(例えば、電圧電流特性や抵抗値)が変化する。光電変換層31Aの材料として、有機材料が用いられる。具体的には、光電変換層31Aとして、例えば、低分子有機材料であるC60(フラーレン)、PCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル:Phenyl C61-butyric acid methyl ester)、CuPc(銅フタロシアニン:Copper Phthalocyanine)、F16CuPc(フッ素化銅フタロシアニン)、rubrene(ルブレン:5,6,11,12-tetraphenyltetracene)、PDI(Perylene(ペリレン)の誘導体)等を用いることができる。
【0117】
光電変換層31Aは、これらの低分子有機材料を用いて蒸着型(Dry Process)で形成することができる。この場合、光電変換層31Aは、例えば、CuPcとF16CuPcとの積層膜、又はrubreneとC60との積層膜であってもよい。光電変換層31Aは、塗布型(Wet Process)で形成することもできる。この場合、光電変換層31Aは、上述した低分子有機材料と高分子有機材料とを組み合わせた材料が用いられる。高分子有機材料として、例えばP3HT(poly(3-hexylthiophene))、F8BT(F8-alt-benzothiadiazole)等を用いることができる。光電変換層31Aは、P3HTとPCBMとが混合した状態の膜、又はF8BTとPDIとが混合した状態の膜とすることができる。
【0118】
下部電極35と、上部電極34とは、光電変換層31Aを挟んで対向する。上部電極34は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電性材料が用いられる。下部電極35は、例えば、銀(Ag)やアルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。又は、下部電極35は、これらの金属材料の少なくとも1以上を含む合金材料であってもよい。
【0119】
下部電極35の膜厚を制御することで、透光性を有する半透過型電極として下部電極35を形成できる。例えば、下部電極35は、膜厚10nmのAg薄膜で形成することで、60%程度の透光性を有する。この場合、光センサPDAは、センサ基材21の両面側から照射される光、例えば第1面S1側から照射される光L1および第2面S2側から照射される光の両方を検出できる。
【0120】
図18Bでは図示を省略するが、上部電極34を覆って絶縁層24が設けられてもよい。絶縁層は、パッシベーション膜であり、光センサPDAを保護するために設けられている。
【0121】
図18Bに示すように、TFT層22には、光センサPDAに電気的に接続される第1スイッチング素子Trが設けられる。第1スイッチング素子Trは、半導体層81、ソース電極82、ドレイン電極83およびゲート電極84、85を有する。光センサPDAの下部電極35は、絶縁層23、23aに設けられたコンタクトホールH11を介して、第1スイッチング素子Trのドレイン電極83と電気的に接続される。
【0122】
第1スイッチング素子Trは、半導体層81の上側および下側の両方にゲート電極84、85が設けられた、いわゆるデュアルゲート構造である。ただし、これに限定されず、第1スイッチング素子Trはトップゲート構造でもよく、ボトムゲート構造でもよい。
【0123】
なお、
図18Bでは、周辺領域GAに設けられた第2スイッチング素子TrAおよび端子部72を、模式的に示している。第2スイッチング素子TrAは、例えば、ゲート線駆動回路15(
図13参照)に設けられたスイッチング素子である。第2スイッチング素子TrAは、半導体層86、ソース電極87、ドレイン電極88およびゲート電極89を有する。第2スイッチング素子TrAは、半導体層86の上側にゲート電極89が設けられた、いわゆるトップゲート構造である。半導体層86の下側で、半導体層86とセンサ基材21との間には、遮光層90が設けられる。ただし、これに限定されず、第2スイッチング素子TrAはボトムゲート構造でもよく、デュアルゲート構造でもよい。
【0124】
第1スイッチング素子Trの半導体層81と、第2スイッチング素子TrAの半導体層86とは、異なる層に設けられる。第1スイッチング素子Trの半導体層81は、例えば酸化物半導体である。第2スイッチング素子TrAの半導体層86は、例えばポリシリコンである。
【0125】
次に、検出装置1の動作例について説明する。
図19は、検出装置の動作例を表すタイミング波形図である。
図20は、
図19におけるリセット期間の動作例を表すタイミング波形図である。
図21は、
図19における読み出し期間の動作例を表すタイミング波形図である。
図22は、
図19における行読み出し期間VRに含まれる1つのゲート線の駆動期間の動作例を表すタイミング波形図である。
図23および
図24は、検出装置のセンサ領域の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。
【0126】
図19に示すように、検出装置1は、リセット期間Prst、露光期間Pexおよび読み出し期間Pdetを有する。電源回路123は、リセット期間Prst、露光期間Pexおよび読み出し期間Pdetに亘って、センサ電源信号VDDSNSを光センサPDのアノードに供給する。センサ電源信号VDDSNSは光センサPDのアノード-カソード間に逆バイアスを印加する信号である。例えば、光センサPDのカソードには実質0.75Vの基準信号COMがされているが、アノードに実質-1.25Vのセンサ電源信号VDDSNSを印加することにより、アノード-カソード間は実質2.0Vで逆バイアスされる。制御回路122は、リセット信号RST2を”H”とした後にゲート線駆動回路15にスタート信号STVおよびクロック信号CKを供給し、リセット期間Prstが開始する。リセット期間Prstにおいて、制御回路122は、基準信号COMをリセット回路17に供給し、リセット信号RST2によってリセット電圧を供給するための第4スイッチング素子TrRをオンさせる。これにより各信号線SGLにはリセット電圧として基準信号COMが供給される。基準信号COMは、例えば0.75Vとされる。
【0127】
リセット期間Prstにおいて、ゲート線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CKおよびリセット信号RST1に基づいて、順次ゲート線GCLを選択する。ゲート線駆動回路15は、ゲート駆動信号Vgcl{Vgcl(1)~Vgcl(M)}をゲート線GCLに順次供給する。ゲート駆動信号Vgclは、高レベル電圧である電源電圧VDDと低レベル電圧である電源電圧VSSとを有するパルス状の波形を有する。
図19では、M本(例えばM=256)のゲート線GCLが設けられており、各ゲート線GCLに、ゲート駆動信号Vgcl(1)、…、Vgcl(M)が順次供給され、複数の第1スイッチング素子Trは各行毎に順次導通され、リセット電圧が供給される。リセット電圧として例えば、基準信号COMの電圧0.75Vが供給される。
【0128】
具体的には、
図20に示すように、ゲート線駆動回路15は、期間V(1)において、ゲート線GCL(1)に、高レベル電圧(電源電圧VDD)のゲート駆動信号Vgcl(1)を供給する。制御回路122は、ゲート駆動信号Vgcl(1)が高レベル電圧(電源電圧VDD)の期間に、選択信号ASW1、…、ASW6のいずれか1つ(
図20では選択信号ASW1)を、信号線選択回路16に供給する。これにより、ゲート駆動信号Vgcl(1)により選択された部分検出領域PAAの信号線SGLが検出回路48に接続される。この結果、第3スイッチング素子TrSと検出回路48との間の接続配線にもリセット電圧(基準信号COM)が供給される。
【0129】
同様に、ゲート線駆動回路15は、期間V(2)、…、V(M-1)、V(M)において、ゲート線GCL(2)、…、GCL(M-1)、GCL(M)に、それぞれ高レベル電圧のゲート駆動信号Vgcl(2)、…、Vgcl(M-1)、Vgcl(M)を供給する。
【0130】
これにより、リセット期間Prstでは、全ての部分検出領域PAAの容量素子Caは、順次信号線SGLと電気的に接続されて、基準信号COMが供給される。この結果、容量素子Caの容量がリセットされる。なお、部分的にゲート線、および信号線SGLを選択することにより部分検出領域PAAのうち一部の容量素子Caの容量をリセットすることも可能である。
【0131】
露光するタイミングの例として、ゲート線非選択時露光制御方法と常時露光制御方法がある。ゲート線非選択時露光制御方法においては、検出対象の光センサPDに接続された全てのゲート線GCLにゲート駆動信号{Vgcl(1)~(M)}が順次供給され、検出対象の全ての光センサPDにリセット電圧が供給される。その後、検出対象の光センサPDに接続された全てのゲート線GCLが低電圧(第1スイッチング素子Trがオフ)になると露光が開始され、露光期間Pexの間に露光が行われる。露光が終了すると前述のように検出対象の光センサPDに接続されたゲート線GCLにゲート駆動信号{Vgcl(1)~(M)}が順次供給され、読み出し期間Pdetに読み出しが行われる。常時露光制御方法においては、リセット期間Prst、読み出し期間Pdetにおいても露光を行う制御(常時露光制御)をすることも可能である。この場合は、リセット期間Prstにゲート駆動信号Vgcl(1)がゲート線GCLに供給された後に、露光期間Pex(1)が開始する。ここで、露光期間Pex{(1)・・・(M)}とは光センサPDから容量素子Caへ充電される期間とされる。リセット期間Prstに容量素子Caにチャージされた電荷が光照射によって光センサPDに逆方向電流(カソードからアノードへ)が流れ、容量素子Caの電位差は減少する。なお、各ゲート線GCLに対応する部分検出領域PAAでの、実際の露光期間Pex(1)、…、Pex(M)は、開始のタイミングおよび終了のタイミングが異なっている。露光期間Pex(1)、…、Pex(M)は、それぞれ、リセット期間Prstでゲート駆動信号Vgclが高レベル電圧の電源電圧VDDから低レベル電圧の電源電圧VSSに変化したタイミングで開始される。また、露光期間Pex(1)、…、Pex(M)は、それぞれ、読み出し期間Pdetでゲート駆動信号Vgclが電源電圧VSSから電源電圧VDDに変化したタイミングで終了する。各露光期間Pex(1)、…、Pex(M)の露光時間の長さは等しい。
【0132】
露光期間Pex{(1)・・・(M)}及では、各部分検出領域PAAで、光センサPDに照射された光に応じて電流が流れる。この結果、各容量素子Caに電荷が蓄積される。
【0133】
読み出し期間Pdetが開始する前のタイミングで、制御回路122は、リセット信号RST2を低レベル電圧にする。これにより、リセット回路17の動作が停止する。なお、リセット信号はリセット期間Prstのみ高レベル電圧としてもよい。読み出し期間Pdetでは、リセット期間Prstと同様に、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLにゲート駆動信号Vgcl(1)、…、Vgcl(M)を順次供給する。
【0134】
具体的には、
図21に示すように、ゲート線駆動回路15は、行読み出し期間VR(1)において、ゲート線GCL(1)に、高レベル電圧(電源電圧VDD)のゲート駆動信号Vgcl(1)を供給する。制御回路122は、ゲート駆動信号Vgcl(1)が高レベル電圧(電源電圧VDD)の期間に、選択信号ASW1、…、ASW6を、信号線選択回路16に順次供給する。これにより、ゲート駆動信号Vgcl(1)により選択された部分検出領域PAAの信号線SGLが順次、又は同時に検出回路48に接続される。この結果、検出信号Vdetが部分検出領域PAAごとに検出回路48に供給される。
【0135】
同様に、ゲート線駆動回路15は、行読み出し期間VR(2)、…、VR(M-1)、VR(M)において、ゲート線GCL(2)、…、GCL(M-1)、GCL(M)に、それぞれ高レベル電圧のゲート駆動信号Vgcl(2)、…、Vgcl(M-1)、Vgcl(M)を供給する。すなわち、ゲート線駆動回路15は、行読み出し期間VR(1)、VR(2)、…、VR(M-1)、VR(M)ごとに、ゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。各ゲート駆動信号Vgclが高レベル電圧となる期間ごとに、信号線選択回路16は選択信号ASWに基づいて、順次信号線SGLを選択する。信号線選択回路16は、信号線SGLごとに順次、1つの検出回路48に接続する。これにより、読み出し期間Pdetで、検出装置1は、全ての部分検出領域PAAの検出信号Vdetを検出回路48に出力することができる。
【0136】
以下、
図22を参照して、
図19における1つのゲート駆動信号Vgcl(j)の供給期間である行読み出し期間VR中の動作例について説明する。
図19では、最初のゲート駆動信号Vgcl(1)に行読み出し期間VRの符号を付しているが、他のゲート駆動信号Vgcl(2)、…、Vgcl(M)についても同様である。jは、1からMのいずれかの自然数である。
【0137】
図22および
図17に示すように、第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)は予め基準電位(Vref)電圧にリセットされている。基準電位(Vref)電圧はリセット電圧とされ、例えば0.75Vとされる。次にゲート駆動信号Vgcl(j)がハイレベルとなり当該行の第1スイッチング素子Trがオンし、各行の信号線SGLは当該部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷に応じた電圧になる。ゲート駆動信号Vgcl(j)の立ち上がりから期間t1の経過後、選択信号ASW(k)がハイになる期間t2が生じる。選択信号ASW(k)がハイになって第3スイッチング素子TrSがオンすると、当該第3スイッチング素子TrSを介して検出回路48と接続されている部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に充電された電荷により、第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)(
図17参照)が当該部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷に応じた電圧に変化する(期間t3)。
図22の例では期間t3のようにこの電圧はリセット電圧から下がっている。その後、スイッチSSWがオン(SSW信号のハイレベルの期間t4)すると当該部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷が検出回路48の検出信号増幅回路42の容量(容量素子Cb)へ電荷が移動し、検出信号増幅回路42の出力電圧は容量素子Cbに蓄積された電荷に応じた電圧となる。このとき検出信号増幅回路42の反転入力部はオペアンプのイマジナリショート電位となるため、基準電位(Vref)に戻っている。検出信号増幅回路42の出力電圧はA/D変換回路43で読み出す。
図22の例では、各列の信号線SGLに対応する選択信号ASW(k)、ASW(k+1)、…の波形がハイになって第3スイッチング素子TrSを順次オンさせ、同様の動作を順次行うことで当該ゲート線GCLに接続された部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷を順次読み出している。なお、
図22におけるASW(k)、ASW(k+1)…は、例えば、
図22におけるASW1からASW6のいずれかである。
【0138】
具体的には、スイッチSSWがオンになる期間t4が生じると、部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)から検出回路48の検出信号増幅回路42の容量(容量素子Cb)へ電荷が移動する。このとき検出信号増幅回路42の非反転入力(+)は、基準電位(Vref)電圧(例えば、0.75[V])にバイアスされている。このため、検出信号増幅回路42の入力間のイマジナリショートにより第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)も基準電位(Vref)電圧になる。また、容量素子Cbの電圧は、選択信号ASW(k)に応じて第3スイッチング素子TrSがオンした箇所の部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷に応じた電圧となる。検出信号増幅回路42の出力は、イマジナリショートによって第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)が基準電位(Vref)電圧になった後に、容量素子Cbの容量に応じた電圧になり、この出力電圧をA/D変換回路43で読み取る。なお、容量素子Cbの電圧とは、例えば、容量素子Cbを構成するコンデンサに設けられる2つの電極間の電圧である。
【0139】
なお、期間t1は、例えば20[μs]である。期間t2は、例えば60[μs]である。期間t3は、例えば44.7[μs]である。期間t4は、例えば0.98[μs]である。
【0140】
図23は、比較例によるセンサ領域の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。
図23は、上述した比較例の場合(
図2)と同様に、第1光源61と第2光源62とを交互に点灯させた場合、すなわち時分割的に点灯させた場合を示す。
図23に示す例では、期間t(1)、期間t(2)、期間t(3)、期間t(4)のそれぞれの1フレームの検出において、リセット期間Prst、露光期間Pexおよび読み出し期間Pdetが設けられている。リセット期間Prstおよび読み出し期間Pdetにおいて、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCL(1)からゲート線GCL(M)まで順次走査する。
【0141】
図23に示すように、期間t(1)、期間t(2)、期間t(3)、期間t(4)のそれぞれにおいて、検出装置1は、上述したリセット期間Prst、露光期間Pex{(1)・・・(M)}および読み出し期間Pdetを実行する。リセット期間Prstおよび読み出し期間Pdetにおいて、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCL(1)からゲート線GCL(M)まで順次走査する。以下の説明において、各期間tでの検出、すなわち、リセット期間Prstおよび読み出し期間Pdetでゲート線GCL(1)からゲート線GCL(M)まで走査され、各列の信号線SGLから検出信号Vdetを取得する検出を、1フレームの検出と表す。そして、期間t(1)および期間t(3)に第1光源61が点灯され、期間t(2)および期間t(4)に第2光源62が点灯される例を示している。すなわち、
図23に示す例において、制御回路122は、1フレームの検出ごとに、第1光源61と第2光源62とを交互に点灯、非点灯を切り換える。
【0142】
図23に示したように、期間t(1)における1フレームの検出では、制御回路122(検出制御部11)は、露光期間Pexにおいて第1光源61を点灯させ、第2光源62を非点灯とする。また、期間t(2)における1フレームの検出では、制御回路122(検出制御部11)は、露光期間Pexにおいて第1光源61を非点灯とし、第2光源62を点灯させる。同様に、期間t(3)における1フレームの検出では、露光期間Pexにおいて第1光源61を点灯させ、第2光源62を非点灯とし、期間t(4)における1フレームの検出では、露光期間Pexにおいて第1光源61を非点灯とし、第2光源62を点灯させる。
【0143】
このように、
図23に示した比較例の場合、第1光源61および第2光源62は、1フレームの検出ごとに時分割的に点灯・非点灯が制御される。これにより、第1光により光センサPDで検出された第1検出信号と、第2光により光センサPDで検出された第2検出信号とが、時分割で検出回路48に出力される。
【0144】
図24は、本開示の検出装置のセンサ領域の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。第1光源61と第2光源62とを時分割的に点灯させる上記の比較例に対し、本開示では第1光源61と第2光源62とを同時に点灯させる。
図24に示すように、制御回路122は、期間t(1)において、第1光源61および第2光源62を同時に点灯させる。第1光源61と第2光源62とを期間t(2)、期間t(3)および期間t(4)においても同様に、第1光源61および第2光源62を同時に点灯させる。制御回路122は、各期間において露光期間Pexおよび読み出し期間Pdetを実行する。このため、時分割的に点灯させる
図23の場合に比べてフレームレートを高めることができる。
【0145】
なお、
図19から
図23では、ゲート線駆動回路15がゲート線GCLを個別に選択する例を示したが、これに限定されない。ゲート線駆動回路15は、2以上の所定数のゲート線GCLを同時に選択し、所定数のゲート線GCLごとに順次ゲート駆動信号Vgclを供給してもよい。また、信号線選択回路16も、2以上の所定数の信号線SGLを同時に1つの検出回路48に接続してもよい。また更には、ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを間引いて走査してもよい。
【0146】
図21に示すように、行読み出し期間VR(1)において、ゲート駆動信号Vgcl(1)が高レベル電圧(電源電圧VDD)の期間に、選択信号ASW1、…、ASW6が、信号線選択回路16に順次供給される。すなわち、時刻t11で選択信号ASW1が低レベル電圧になった後も、時刻t13でゲート駆動信号Vgcl(1)が低レベル電圧になるまでの露光期間Pex-1に、継続して露光される。露光期間Pex-1に応じた電荷が、光センサPDから、選択信号ASW1に対応する信号線SGL(1)にチャージされる。
【0147】
同様に、各選択信号ASW1、…、ASW6に応じた露光期間Pex-1、…、Pex-6のそれぞれで、各信号線SGLに電荷がチャージされる。例えば、露光期間Pex-6は時刻t12で選択信号ASW6が低レベル電圧になった後、時刻t13でゲート駆動信号Vgcl(1)が低レベル電圧になるまでの期間であり、列ごとに露光期間Pexが異なる。
【0148】
そして、次の行読み出し期間VR(2)では、2行目の検出信号Vdetに、前の行読み出し期間VR(1)の露光期間Pex-1(SGL(1))・・・・Pex-6(SGL(6))の期間でチャージされた電荷分が合計された信号が、検出回路48に供給される。
【0149】
上述したように、検出装置1は、例えば、出射する光の波長が異なる複数種の光源(第1光源61、第2光源62)を具備した構成とすることで、被験者の指の表面で反射した光を検出することによって取得される指紋や、被験者の指や手首等の内部で反射あるいは透過した光を検出することによって取得される種々の生体情報を取得可能となる。
【0150】
以下、検出装置1により取得される生体に関する情報の具体例として、血液中の酸素飽和度(以下、血中酸素飽和度(SpO2)と称する)を算出するための生体情報である脈波を取得する例について説明する。
図25は、実施形態に係る検出装置のセンサ領域と第1光源および第2光源との関係を模式的に示す平面図である。
【0151】
図25に示すように、検出装置1は、フィルタ63を有する。フィルタ63は、走査方向SCANにおいて、センサ領域10の一端から他端まで検出領域AAと重なって配置される。フィルタ63は、第1光源61から出射された第1光および第2光源62から出射された第2光を透過させる透過帯域を有する。実施形態に係る構成において、フィルタ63は必ずしも必要ではなく、フィルタ63を有さない構成であっても良い。
【0152】
図25に示す構成において、走査方向SCANは、ゲート線駆動回路15がゲート線GCLを走査する方向である。つまり、1本のゲート線GCLは、検出領域AAにおいて第1方向Dxに延在して設けられ、検出領域AAに設けられた複数の部分検出領域PAAと接続される。また、1本の信号線SGLは、検出領域AAにおいて第2方向Dyに延在して設けられ、検出領域AAの複数の光センサPDと接続される。
【0153】
第1光源基材51と第2光源基材52とは、平面視で、検出領域AAを挟んで第1方向Dxに対向する。第1光源基材51の、第2光源基材52と対向する面に複数の第1光源61が設けられている。また、第2光源基材52の、第1光源基材51と対向する面に複数の第2光源62が設けられている。複数の第1光源61および複数の第2光源62は、検出領域AAの外周に沿って第1方向Dxに並んで設けられている。
【0154】
第1光源61は、第1方向Dxと平行方向に第1光を出射する。これにより、検出領域AAに第1光が照射される。また、第2光源62は、第1方向Dxと平行方向に第2光を出射する。これにより、検出領域AAに第2光が照射される。
【0155】
図26Aは、
図25に示す検出装置を第1方向Dxから見た側面図である。
図26Aは、
図13の第1光源基材51側から検出装置を見た図である。
図26Bは、
図25に示す検出装置を第1方向Dxの逆側から見た側面図である。
図26Bは、
図13の第2光源基材52側から検出装置を見た図である。
図26Aおよび
図26Bに示すように、被験者の指Fgや手首等の被検出体は、フィルタ63を介してセンサ領域10の上に接触又は近接する。第1光源61および第2光源62は、センサ領域10およびフィルタ63よりも上方に配置され、第1方向Dxで被験者の指Fgや手首等の被検出体を挟んで配置される。
【0156】
ここでは、例えば、第1光源61から出射される第1光として、490nm以上550nm以下の波長を有する緑色の可視光(緑色光)が採用され、第2光源62から出射される第2光として、640nm以上770nm以下の波長を有する赤色の可視光(赤色光)が採用される。ヒトの血中酸素飽和度(SpO2)を取得する場合、第1光(緑色光)により取得された脈波と、第2光(赤色光)により取得された脈波とを用いる。なお、第1光および第2光の組み合わせは、緑色光および赤色光に限定されず、SpO2を算出可能な組み合わせであればよい。例えば、赤外光および赤色光でもよい。この場合、第1光と第2光とで、酸化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンとの反射率比が異なる組み合わせである必要がある。
【0157】
ヘモグロビンが酸素を取り込んだ量によって光の吸収量が変化するので、照射した第1光、第2光から血液(ヘモグロビン)に吸収された光を差し引いた量の光を光センサPDで検出する。血中酸素のほとんどは赤血球中のヘモグロビンと可逆的に結合しており、ごく一部が血漿中に溶解している。より具体的には、血液全体として、その許容量の何%の酸素が結合しているかの値が酸素飽和度である。第1光と第2光の2波長にて、照射した光から血液(ヘモグロビン)に吸収された光を差し引いた量から血中酸素飽和度を算出することが可能となる。
【0158】
酸素飽和度(SpO2)は、血液中のヘモグロビンが酸素と結合した場合(O2Hb:酸素化ヘモグロビン)と結合していない場合(HHb:還元ヘモグロビン)の比で決まる。赤色光の吸光特性は、HHb>>O2Hbであり、HHbの吸光度が著しく大きいのに対して、例えば、赤外光の吸光特性は、HHb≒O2Hbであり、わずかにO2Hbの吸光度が大きい。
【0159】
第1光源61から出射された第1光は、第1方向Dxと平行方向に進行し、被験者の指Fgや手首に入射する。第1光源61から出射された第1光は、生体内部へ浸透し、被験者の指Fgや手首の内部で反射される。被験者の指Fgや手首の内部で反射された反射光は、第3方向Dzに進行して、フィルタ63を通ってセンサ領域10の検出領域AAに入射する。
【0160】
第2光源62から出射された第2光は、第1方向Dxと平行方向に進行し、被験者の指Fgや手首に入射する。第2光源62から出射された第2光は、生体内部へ浸透し、被験者の指Fgや手首の内部で反射される。被験者の指Fgや手首の内部で反射された反射光は、第3方向Dzに進行して、フィルタ63を通ってセンサ領域10の検出領域AAに入射する。
【0161】
なお、複数の第1光源61および複数の第2光源62の配置は、
図25、
図26Aおよび
図26Bに示す例に限定されない。例えば、
図26Aに示す被験者の指Fgや手首等の被検出体の上方、具体的には、第3方向Dzから第1光又は第2光が照射される態様であっても良い。あるいは、複数の第1光源61および複数の第2光源62は、例えば、検出領域AAの直下に設けられた、いわゆる直下型の光源であっても良い。
【符号の説明】
【0162】
1 検出装置
10 センサ領域
11 検出制御回路
40 検出回路
44 信号処理回路
46 記憶回路
48 検出回路
61G 緑色光源
61R 赤色光源
61 第1光源
62 第2光源
122 制御回路
AA 検出領域
PAA1、PAA2 光センサ