(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076592
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】支承構造
(51)【国際特許分類】
B65G 21/00 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
B65G21/00 C
B65G21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188208
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 輝
(72)【発明者】
【氏名】谷口 実
(57)【要約】
【課題】上部構造の転倒を抑制する。
【解決手段】上部構造と下部構造の間に配置される支承構造1は、下部構造に固定された下部部材2と、下部部材の上面部に配置されたスライドベアリング3と、上部構造に固定され、スライドベアリング上に水平方向にスライド可能に配置された上部部材4と、下部部材に設けられ、上部部材のスライドを規制するスライド規制部材5と、下部部材に設けられ、上部部材の上昇を規制する上昇規制部材6とを備える。上部部材は、その下端部に水平方向に突出するフランジ部13を有し、上昇規制部材は、フランジ部より高い位置に位置され、前記フランジ部に当接して上部部材の上昇を規制する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造と下部構造の間に配置される支承構造であって、
前記下部構造に固定された下部部材と、
前記下部部材の上面部に配置されたスライドベアリングと、
前記上部構造に固定され、前記スライドベアリング上に水平方向にスライド可能に配置された上部部材と、
前記下部部材に設けられ、前記上部部材のスライドを規制するスライド規制部材と、
前記下部部材に設けられ、前記上部部材の上昇を規制する上昇規制部材と、
を備え、
前記上部部材は、その下端部に水平方向に突出するフランジ部を有し、
前記上昇規制部材は、前記フランジ部より高い位置に位置され、前記フランジ部に当接して前記上部部材の上昇を規制する
ことを特徴とする支承構造。
【請求項2】
前記スライド規制部材と前記上昇規制部材は、共通のL形鋼により形成される
請求項1に記載の支承構造。
【請求項3】
前記スライドベアリングは、前記下部部材の上面部に固定される
請求項1に記載の支承構造。
【請求項4】
前記スライドベアリングは、前記下部部材の上面部に固定されるベアリング基板と、前記ベアリング基板上に固定される樹脂製のスライド板とを有する
請求項1に記載の支承構造。
【請求項5】
前記上部部材は、その下面部にステンレス製のスライド板を有する
請求項1に記載の支承構造。
【請求項6】
前記下部構造は、バイオマス燃料を貯留するサイロであり、前記上部構造は、前記バイオマス燃料を搬送するベルトコンベヤであり、
前記下部部材と前記上部部材は、それぞれ上下方向に延びる下部支柱および上部支柱である
請求項1に記載の支承構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は支承構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バイオマス燃料(木質ペレット等)を燃焼させて発電するバイオマス発電所には、バイオマス燃料を貯留する複数のサイロが設置されている。そしてこれらサイロにベルトコンベヤを使ってバイオマス燃料を搬送している。
【0003】
ベルトコンベヤは、ばら物の荷であるバイオマス燃料を実質的に搬送するベルトコンベヤ本体と、ベルトコンベヤ本体を取り囲んで収容するギャラリフレームとを有する。ベルトコンベヤは、サイロの上方に位置され、ベルトコンベヤの重量の一部はサイロによって支持される。
【0004】
地震等によってベルトコンベヤがサイロに対して水平方向に相対移動しようとすることがある。この相対移動を許容しつつ、上部構造としてのベルトコンベヤを、下部構造としてのサイロ上に支持するため、ベルトコンベヤとサイロの間には支承構造が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
支承構造として例えば、サイロに固定された下部部材と、ベルトコンベヤに固定された上部部材と、下部部材の上面部に配置されたスライドベアリングとを有するものが考えられる。この場合、上部部材は、スライドベアリング上に水平方向にスライド可能に配置される。
【0007】
しかしこの支承構造だと、地震等によってベルトコンベヤが大きく相対移動したとき、上部部材が下部部材から外れたり、上部部材が下部部材から上昇したりして、ベルトコンベヤが転倒してしまう虞がある。
【0008】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、上部構造の転倒を抑制することができる支承構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一の態様によれば、
上部構造と下部構造の間に配置される支承構造であって、
前記下部構造に固定された下部部材と、
前記下部部材の上面部に配置されたスライドベアリングと、
前記上部構造に固定され、前記スライドベアリング上に水平方向にスライド可能に配置された上部部材と、
前記下部部材に設けられ、前記上部部材のスライドを規制するスライド規制部材と、
前記下部部材に設けられ、前記上部部材の上昇を規制する上昇規制部材と、
を備え、
前記上部部材は、その下端部に水平方向に突出するフランジ部を有し、
前記上昇規制部材は、前記フランジ部より高い位置に位置され、前記フランジ部に当接して前記上部部材の上昇を規制する
ことを特徴とする支承構造が提供される。
【0010】
好ましくは、前記スライド規制部材と前記上昇規制部材は、共通のL形鋼により形成される。
【0011】
好ましくは、前記スライドベアリングは、前記下部部材の上面部に固定される。
【0012】
好ましくは、前記スライドベアリングは、前記下部部材の上面部に固定されるベアリング基板と、前記ベアリング基板上に固定される樹脂製のスライド板とを有する。
【0013】
好ましくは、前記上部部材は、その下面部にステンレス製のスライド板を有する。
【0014】
好ましくは、前記下部構造は、バイオマス燃料を貯留するサイロであり、前記上部構造は、前記バイオマス燃料を搬送するベルトコンベヤであり、
前記下部部材と前記上部部材は、それぞれ上下方向に延びる下部支柱および上部支柱である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、上部構造の転倒を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】バイオマス燃料の貯蔵設備の一部を示す概略側面図である。
【
図2】左右後側の支承構造周辺を示す概略後面図である。
【
図4】
図3のIV-IV断面図(後面断面図)である。
【
図6】スライドベアリング付近の構造を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0018】
図1には、本実施形態の支承構造が適用されるバイオマス燃料の貯蔵設備の一部を概略的に示す。この貯蔵設備は、バイオマス燃料(例えば木質ペレット)を燃焼させて発電するバイオマス発電所に設置される。
【0019】
貯蔵設備は、バイオマス燃料からなるばら物の荷を貯留する複数のサイロ(一つのみ図示)51と、サイロ51に荷を搬送すべく空中に設置されたベルトコンベヤ52とを備える。サイロ51は図外右側にも複数(例えば3つ)設けられ、合計で複数(例えば4つ)のサイロ51が図の左右方向に直列で配置されている。
【0020】
前後左右上下の各方向を図示の通り定める。前後および左右方向は水平方向に平行であり、上下方向は鉛直方向に平行である。ベルトコンベヤ52は矢印aで示すように荷を概ね後方から前方に向かって搬送する。
【0021】
貯蔵設備は、ベルトコンベヤ52の上流端部が位置された乗継建屋53を備える。乗継建屋53の上層階において、別の場所から送られてきた荷が、シュート54からベルトコンベヤ52の入口部に供給される。ベルトコンベヤ52は、乗継建屋53から、最も前方に位置するサイロ51(図示せず。例えば四つ目のサイロ)まで延びる。
図1には、荷の搬送方向における一つ目(最も後方)のサイロ51が示される。
【0022】
最も前方のサイロ51を除く各サイロ51の入口の真上の位置において、ベルトコンベヤ52にはスクレーパ装置55が設けられる。スクレーパ装置55は、ベルトコンベヤ52の荷を、必要に応じて選択的にサイロ51の入口に掻き落とす。
【0023】
図2に示すように、ベルトコンベヤ52は、荷を実質的に搬送するベルトコンベヤ本体56と、ベルトコンベヤ本体56を支持すると共に収容するギャラリフレーム57とを有する。ベルトコンベヤ52は、サイロ51の上方に位置され、ベルトコンベヤ52の重量の一部はサイロ51によって支持される。ベルトコンベヤ本体56は、コンベヤベルト59、ベルトサポートローラ60およびローラサポートストリンガフレーム61を含む。
【0024】
地震や暴風等によってベルトコンベヤ52がサイロ51に対して水平方向に相対移動しようとすることがある。この相対移動を許容しつつベルトコンベヤ52をサイロ51上に支持するため、ベルトコンベヤ52とサイロ51の間には支承構造1が配置されている。一つのサイロ51に対し、サイロ入口より後方(上流側)の位置に左右に1つずつ支承構造1が設けられ、サイロ入口より前方(下流側)の位置に左右に1つずつ支承構造1が設けられる。こうしてベルトコンベヤ52は一つのサイロ51に対し、前後左右の計4箇所で支持される。
【0025】
なお、ベルトコンベヤ52およびサイロ51はそれぞれ特許請求の範囲にいう上部構造および下部構造を構成する。ベルトコンベヤ52の重量の一部は、乗継建屋53と一つ目のサイロ51との間に設けられた中間支柱58によっても支持される。
【0026】
図3~
図5に支承構造1の要部を示す。なお
図3~
図5は、
図1および
図2の円b内に示されるような右後の支承構造1を示す。
図3は平面図、
図4は
図3のIV-IV断面図(後面断面図)、
図5は
図3の右側面図である。便宜上、
図3においては上部支柱4を省略し、
図5においては右側のL形鋼17を省略している。
【0027】
支承構造1は、下部部材としての下部支柱2と、下部支柱2の上面部9に配置されたスライドベアリング3と、スライドベアリング3上に水平方向にスライド可能に配置された上部部材としての上部支柱4と、下部支柱2に設けられ、上部支柱4のスライドを規制するスライド規制部材5と、下部支柱2に設けられ、上部支柱4の上昇を規制する上昇規制部材6とを備える。
【0028】
上部支柱4は、その下端部に水平方向に突出するフランジ部7を有する。上昇規制部材6は、フランジ部7より高い位置に位置され、フランジ部7に当接して上部支柱4の上昇を規制する。
【0029】
下部支柱2は、H形鋼、L形鋼等の鋼材および鋼板を溶接等により組み立てて構成されている。下部支柱2は上下方向に延び、その下端部はサイロ51に固定されている。より詳しくは、下部支柱2の下端部は、サイロ51の側壁の上端面部に載置状態で固定されている。
【0030】
下部支柱2の上端部には、前後左右に突出する支持台部8が形成されている。この支持台部8の上面部が、水平で平坦な下部支柱2の上面部9をなす。よって以下、支持台部8の上面部も符号9で表す。
【0031】
支持台部8の上面部9の中央部には、平面視(
図3)で四角形(具体的には正方形)のベアリング支持板10が溶接によって固定されている。このベアリング支持板10の上面部に、一回り小さい四角形(具体的には正方形)のスライドベアリング3が溶接によって固定されている。
【0032】
上部支柱4は、H形鋼等の鋼材および鋼板を溶接等により組み立てて構成されている。上部支柱4は上下方向に延び、その上端部はベルトコンベヤ52のギャラリフレーム57に固定されている。
【0033】
上部支柱4は、H形鋼により形成され上下方向に延びる上部支柱本体11と、上部支柱本体11の下端面に溶接により固定され、その下端面から前後左右に突出する平面視四角形(具体的には長方形)のフランジ支持板12と、フランジ支持板12の下端面に溶接により固定され、フランジ支持板12の下端面から前後左右に突出する平面視四角形(具体的には長方形)のフランジ板13とを有する。このうちフランジ板13が前述のフランジ部7を形成する。
【0034】
図4および
図5に示すように上部支柱4が基準位置にあるとき、上部支柱4は下部支柱2に対し同軸に位置される。図中の符号Cはこうした同軸状態にあるときの両者の中心軸を示す。ベアリング支持板10およびスライドベアリング3は下部支柱2の中心軸と同軸に位置されている。
【0035】
図6に示すように、スライドベアリング3は、下層のベアリング基板14と上層のスライド板(ベアリング側スライド板)15とを一体的に有する。ベアリング基板14は鋼製で、ベアリング支持板10の上面部に溶接によって固定される。スライド板15は樹脂製で、ベアリング基板14より薄く、ベアリング基板14の上面部に接着によって固定される。スライド板15の上面部は平坦な水平面とされる。スライド板15をなす樹脂は、低摩擦係数で自己潤滑性であり、耐候性、耐薬品性に優れるといった特性を有する。当該樹脂は、例えば四フッ化エチレン樹脂を含む。ベアリング基板14とスライド板15は共に平面視四角形(具体的には正方形)であるが、スライド板15は溶接の影響を避けるため、ベアリング基板14より一回り小さい四角形とされている。
【0036】
他方、上部支柱4のフランジ板13の下面部には、ステンレス製のスライド板(支柱側スライド板)16が固定されている。スライド板16は、フランジ板13より薄く、フランジ板13の下面部に溶接によって固定されている。スライド板16の下面部は平坦な水平面とされる。これにより、上部支柱4のスライド板16がスライドベアリング3のスライド板15に接触してスライドすることとなり、スライド板16を設けない場合よりも、スライド動作を円滑にすることができる。
【0037】
上部支柱4のスライド板16は、スライドベアリング3のスライド板15よりも前後左右方向に大きく、フランジ板13の下面部のほぼ全体に亘って設けられ、上部支柱4が最大量スライドしたときであってもスライドベアリング3のスライド板15に接触し得る大きさとなっている。
【0038】
こうして上部支柱4はスライドベアリング3上を前後左右の任意の水平方向にスライドし、下部支柱2に対して水平方向に相対移動することができる。よって地震や暴風等によってベルトコンベヤ52がサイロ51に対して水平方向に相対移動しようとしても、それが許容される。
【0039】
一方、スライド規制部材5は、こうした上部支柱4のスライドを規制し、スライド量を一定値以下に制限する。また上昇規制部材6は、仮に上部支柱4が下部支柱2に対し上昇しようとしたとしてもその上昇を規制し、上昇量を極小の一定値以下に制限する。
【0040】
本実施形態の場合、スライド規制部材5と上昇規制部材6は、共通のL形鋼17により形成される。これにより部品の共用化を図れ、コストダウンを達成することができる。
【0041】
スライド規制部材5は、上部支柱4の右側へのスライドを規制する右側スライド規制部材5Rと、上部支柱4の前側へのスライドを規制する前側スライド規制部材5Fと、上部支柱4の後側へのスライドを規制する後側スライド規制部材5Bとを含む。また上昇規制部材6は、右側スライド規制部材5Rと共通のL形鋼17により形成された右側上昇規制部材6Rと、前側スライド規制部材5Fと共通のL形鋼17により形成された前側上昇規制部材6Fと、後側スライド規制部材5Bと共通のL形鋼17により形成された後側上昇規制部材6Bとを含む。
【0042】
なお左側のスライド規制部材5と上昇規制部材6がないのは、これらが
図2の円c内に示される左後の支承構造1に設けられるからである。後に詳しく述べるが、左後の支承構造1と右後の支承構造1は左右対称とされる。
【0043】
図3および
図4に示すように、右側スライド規制部材5Rと右側上昇規制部材6Rを形成する右側のL形鋼17は、前後方向の長さLrと左右方向の幅Wrとを有し、上下方向に延びるウェブ部18と、ウェブ部18の上端から左側に向かって延びるフランジ部19とを有する。L形鋼17はスライドベアリング3よりも右側の位置に配置される。ウェブ部18の下端部は、支持台部8の上面部9の右端縁に沿って配置され、上面部9に溶接によって固定される。ウェブ部18が実質的に右側スライド規制部材5Rを形成する。基準位置にある上部支柱4のフランジ板13とウェブ部18との間には左右方向の隙間20Rがあり、この隙間20Rの大きさG1rが、上部支柱4が基準位置から右側にスライドするときの最大スライド量を規定する。すなわち、上部支柱4が最大スライド量G1rだけ右側にスライドしたとき、フランジ板13がウェブ部18に当接し、上部支柱4のそれ以上のスライドが規制される。これにより、上部支柱4が過度に右側にスライドしてスライドベアリング3および下部支柱2から外れるのを防止できる。
【0044】
他方、フランジ部19が実質的に右側上昇規制部材6Rを形成する。フランジ部19はフランジ板13より高い位置に位置される。すなわち、フランジ部19の下面19Aの高さ位置は、フランジ板13の上面13Aの高さ位置より、隙間G2rの大きさだけ、高い位置とされる。
【0045】
上部支柱4が右側にスライドし、フランジ板13がフランジ部19の下に入ったとき、フランジ板13とフランジ部19の間には上下方向の小さな隙間G2rができる。このとき仮に上部支柱4が上昇したとしても、フランジ板13がフランジ部19に即座に当接し、上昇量は隙間G2rの範囲内に限られる。このため上部支柱4が下部支柱2に対して上昇するのを抑制できる。
【0046】
また、仮にベルトコンベヤ5が転倒しようとして、上部支柱4が下部支柱2に対し左側に傾きながら上昇しようとしたとしても、その上昇がフランジ部19によって直ちに規制されるので、ベルトコンベヤ5の転倒を防止もしくは抑制することができる。
【0047】
なお本実施形態の場合、基準位置にある上部支柱4のフランジ板13とフランジ部19の間には、組立性等の観点から、小さな大きさの左右方向の隙間G3rが設けられている。しかしながらこのような隙間は無くてもよい。
図3には便宜上、上部支柱4のフランジ板13を仮想線で示す。
【0048】
次に
図3および
図5に示すように、前側スライド規制部材5Fと前側上昇規制部材6Fを形成する前側のL形鋼17は、左右方向の長さLfと前後方向の幅Wfとを有し、上下方向に延びるウェブ部18と、ウェブ部18の上端から後側に向かって延びるフランジ部19とを有する。
【0049】
ここでL形鋼17は支持台部8に直接取り付けられておらず、以下に述べるような前側アセンブリ21fとされた後に支持台部8に取り付けられるようになっている。
【0050】
すなわち、前側アセンブリ21fは、L形鋼17と、L形鋼17が溶接によって固定される支持板22と、L形鋼17および支持板22に溶接によって固定され、L形鋼17の取付強度を強化する複数(具体的には3枚)の補強板23とを備える。
【0051】
支持板22は、左右長が前後長より長い長方形状とされる。L形鋼17のウェブ部18の下端部は、支持板22の前端縁に沿って配置され、支持板22の上面部に溶接によって固定される。L形の3枚の補強板23が、支持板22およびL形鋼17の長手方向(左右方向)に等間隔で配置され、L形鋼17のフランジ部19の上面部と、ウェブ部18の外側面部と、支持板22の上面部とに溶接によって固定される。補強板23はその厚さ方向が左右方向に一致するように配置される。
【0052】
前側アセンブリ21fは、スライドベアリング3よりも前側の位置に配置され、支持台部8の上面部9に、複数(具体的には4つ)のボルト24およびナット25により着脱可能に取り付けられる。ボルト24およびナット25は支持板22の長手方向(左右方向)に等間隔で配置される。ボルト24は、支持板22と支持台部8の上面部9とに貫通形成されたボルト挿通孔(図示せず)に上方から挿通され、ナット25はボルト24に下方から締め込まれる。
【0053】
フランジ板13に対するL形鋼17の関係は前記とほぼ同様である。ウェブ部18が実質的に前側スライド規制部材5Fを形成する。基準位置にある上部支柱4のフランジ板13とウェブ部18との間には左右方向の隙間20Fがあり、この隙間20Fの大きさG1fが、上部支柱4が基準位置から前側にスライドするときの最大スライド量を規定する。すなわち、上部支柱4が最大スライド量G1fだけ前側にスライドしたとき、フランジ板13がウェブ部18に当接し、上部支柱4のそれ以上のスライドが規制される。これにより、上部支柱4が過度に前側にスライドしてスライドベアリング3および下部支柱2から外れるのを防止できる。
【0054】
他方、フランジ部19が実質的に前側上昇規制部材6Fを形成する。フランジ部19はフランジ板13より高い位置に位置される。すなわち、フランジ部19の下面19Aの高さ位置は、フランジ板13の上面13Aの高さ位置より、隙間G2fの大きさだけ、高い位置とされる。
【0055】
上部支柱4が前側にスライドし、フランジ板13がフランジ部19の下に入ったとき、フランジ板13とフランジ部19の間には上下方向の小さな隙間G2fができる。このとき仮に上部支柱4が上昇したとしても、フランジ板13がフランジ部19に即座に当接し、上昇量は隙間G2fの範囲内に限られる。このため上部支柱4が下部支柱2に対して上昇するのを抑制できる。
【0056】
また、仮にベルトコンベヤ5が転倒しようとして、上部支柱4が下部支柱2に対し後側に傾きながら上昇しようとしたとしても、その上昇がフランジ部19によって直ちに規制されるので、ベルトコンベヤ5の転倒を防止もしくは抑制することができる。
【0057】
なお本実施形態の場合、基準位置にある上部支柱4のフランジ板13とフランジ部19の間には、組立性等の観点から、小さな大きさの前後方向の隙間G3fが設けられている。しかしながらこのような隙間は無くてもよい。
【0058】
前側のL形鋼17におけるフランジ部19の下面19Aの高さHfは、
図4に示した右側のL形鋼17におけるフランジ部19の下面19Aの高さHrと等しくされる。しかしながらこれらの高さは異ならせてもよい。
【0059】
後側スライド規制部材5Bと後側上昇規制部材6Bを形成する後側のL形鋼17と、これを含む後側アセンブリ21bとの構成および配置は、前側のL形鋼17および前側アセンブリ21fと前後対称である点を除き同様なので、図中同様の符号を付し、説明を省略する。但し前側との区別のため、図中の符号には、後側の構成を意味する添字「b」、「B」を、前側の構成を意味する添字「f」、「F」に代わって付する。
【0060】
詳細は図示省略するが、
図2の円c内に示した左後の支承構造1は、上述した右後の支承構造1と左右対称とされている。従って、ベルトコンベヤ5の右向きのスライドは右後の支承構造1における右側スライド規制部材5Rにより規制され、ベルトコンベヤ5の左向きのスライドは左後の支承構造1における左側スライド規制部材により規制されることとなる。
【0061】
ベルトコンベヤ5が右向きにスライドしたとき、右側の上部支柱4の上昇が右側上昇規制部材6Rによって規制され、ベルトコンベヤ5が左向きにスライドしたとき、左側の上部支柱4の上昇が左側上昇規制部材によって規制される。
【0062】
地震や暴風等によってベルトコンベヤ52が相対移動ないし変位した場合、上部支柱4は通常、基準位置になく、基準位置からスライドして外れている。従って上部支柱4のフランジ板13は、いずれかのL形鋼17のフランジ部19の下に入っている。そのため、上部支柱4が上昇しようとしても、フランジ部19によってその上昇が規制され、ひいては任意の方向の上部支柱4およびベルトコンベヤ52の傾斜もしくは転倒が防止される。
【0063】
右後の支承構造1と左後の支承構造1は互いに連結されている。すなわち
図2に示すように、右後の支承構造1の下部支柱2と、左後の支承構造1の下部支柱2とは、左右方向に延びる連結梁26と、左右の筋交い27とにより連結されている。連結梁26は下部支柱2の上端部の支持台部8同士を連結する。こうした連結により、左右の支承構造1の全体の剛性を増すことができる。
【0064】
前後方向における他の支承構造1、例えば
図1に示す右前と左前の支承構造1も、前記同様とされる。
【0065】
このように本実施形態によれば、上部支柱4のスライドを規制するスライド規制部材5と、上部支柱4の上昇を規制する上昇規制部材6とを設けたので、上部支柱4が下部支柱2から外れたり、上部支柱4が下部支柱2から上昇したりするのを抑制することができ、ベルトコンベヤ5の転倒を確実に抑制することができる。
【0066】
特に上昇規制部材6を、上部支柱4のフランジ板13より高い位置に位置させ、フランジ板13に当接して上部支柱4の上昇を規制するものとした。このため、シンプルな構成で上部支柱4およびベルトコンベヤ5の上昇および転倒を抑制することができる。
【0067】
また、スライド規制部材5と上昇規制部材6を共通のL形鋼により形成したので、部品点数の削減により低コスト化を図れる。
【0068】
上部支柱4が、その下面部にステンレス製のスライド板16を有するので、スライドベアリング3上での上部支柱4のスライド動作を円滑にすることができる。
【0069】
本実施形態の支承構造1は、バイオマス燃料を貯留するサイロ51上にベルトコンベヤ52を支持するものである。こうした場合、ベルトコンベヤ52は空中の高い位置に設置されるため、必然的に地震や風等によって揺れ動き易くなる。しかしながら本実施形態の支承構造1は、こうしたベルトコンベヤ52の水平方向の揺動を許容する一方で、上部支柱4が下部支柱2から外れたり浮き上がったりするのを抑制し、ベルトコンベヤ5の転倒を抑制する。従って本実施形態の支承構造1は、こうした適用に最適である。
【0070】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は様々考えられる。
【0071】
(1)例えば、上記における溶接による固定箇所では、溶接以外の方法(例えばネジ止め、リベット止め、接着等)で固定を行ってもよい。
【0072】
(2)前記実施形態では、1つのスライドベアリング3に対して1本ずつの上部支柱4および下部支柱2を設けたが、スライドベアリング3、上部支柱4および下部支柱2の少なくとも一つを複数としてもよい。
【0073】
(3)
図5に示すような前側および後側のL形鋼17の少なくとも一方は、可能であれば、支持台部8に直接取り付けられてもよい。
【0074】
(4)
図5に示すような前側および後側のアセンブリ21f、21bの少なくとも一方について、ボルト24が挿通されるボルト挿通孔を前後方向に長い長孔とし、アセンブリを前後に位置調節できるようにしてもよい。同様に、
図4に示すような右側のL形鋼17と、図示しない左側のL形鋼17との少なくとも一方を、左右に位置調節できるようにしてもよい。
【0075】
(5)前記実施形態では
図4に示すように、右側(右後)の支承構造1において左側のスライド規制部材5と上昇規制部材6を省略したが、それらを設けてもよい。同様に、前記実施形態では左側(左後)の支承構造1(
図2の符号c参照)において右側のスライド規制部材5と上昇規制部材6を省略したが、それらを設けてもよい。右側の支承構造1と左側の支承構造1は連結しなくてもよい。
【0076】
(6)前記実施形態ではサイロ51上にベルトコンベヤ52を支持する支承構造1を開示したが、本開示に係る支承構造は他の任意の例に適用することが可能である。
【0077】
本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 支承構造
2 下部支柱
3 スライドベアリング
4 上部支柱
5 スライド規制部材
6 上昇規制部材
7 フランジ部
9 上面部
14 ベアリング基板
15 スライド板
16 スライド板
17 L形鋼
51 サイロ
52 ベルトコンベヤ