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特開2024-76596矩形基板の反転装置及びそれを備えた基板搬送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076596
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】矩形基板の反転装置及びそれを備えた基板搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240530BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B25J15/06 A
H01L21/68 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188216
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】上田 知昭
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707BS02
3C707ES03
3C707ET08
3C707EV19
3C707EV27
3C707FS04
3C707FT02
3C707FT11
3C707JS02
3C707MT05
3C707MT10
3C707NS12
5F131AA03
5F131AA12
5F131BA13
5F131CA12
5F131CA15
5F131CA24
5F131DA02
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DA54
5F131DA62
5F131DB37
5F131DB52
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB76
5F131FA14
5F131FA26
5F131FA32
5F131FA33
(57)【要約】
【課題】矩形基板の厚み違い等に拘わらず安定した反転動作を行うことを可能にする、基板反転装置を実現する。
【解決手段】矩形基板Wを把持して反転させるハンド21を備えたものであり、ハンド21に、矩形基板Wの表面を非接触で保持する非接触吸着部22と、矩形基板Wの対向2辺Wa、Waに対する同対向方向及び厚み方向への位置ずれを規制する規制部23とを設けることとした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形基板を把持して反転させるハンドを備えたものにおいて、
前記ハンドに、前記矩形基板の表面を非接触で保持する非接触吸着部と、前記矩形基板の2辺が対向する方向及び厚み方向への位置ずれを規制する規制部とを設けたことを特徴とする、基板反転装置。
【請求項2】
前記非接触吸着部は、前記ハンドに縦横に配置した複数の吸着パッドを通じて矩形基板を非接触吸着するように構成される、請求項1に記載の基板反転装置。
【請求項3】
前記規制部には、規制状態で、基板の対向2辺に対する対向方向の規制距離が前記矩形基板の同方向寸法よりも大きく、基板厚み方向の規制距離が前記矩形基板の厚み寸法よりも大きい基板受容部が形成される、請求項1に記載の基板反転装置。
【請求項4】
前記規制部は、前記矩形基板の辺に沿った間欠位置に設けてある、請求項1に記載の基板反転装置。
【請求項5】
前記ハンドに、前記矩形基板のうち接触が許容される部位を接触支持する接触支持部を更に設けており、この接触支持部は、前記非接触吸着部における矩形基板と非接触吸着部の間に必要なギャップを損ねないように設定される、請求項1に記載の基板反転装置。
【請求項6】
0.2~4.0mmの範囲の異なる厚みの矩形基板が、処理装置間、または処理装置と基板容器との間に搬送され、請求項1~5の何れかに記載の基板反転装置を備えていることを特徴とする、基板搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形基板の厚み違い等に拘わらず安定した反転動作を行うことを可能にする、矩形基板の反転装置及びそれを備えた基板搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板やガラス基板は製造工程、例えば露光工程、検査工程など、各工程において必要に応じて表裏面が反転され、必要な処理が施される。
【0003】
例えば、特許文献1では、露光装置においてフットプリントを拡大することなく表裏面を露光するために、ステージと反転機を備えた装置が開示されている。
【0004】
高密度パッケージ基板と称される矩形基板に関する工程においても、矩形基板を反転させる必要が生じる場合がある。
【0005】
この種矩形基板の反転時の把持方法として、一般的に下記の方法が用いられている。
i) 矩形基板の幅方向から矩形基板を挟む
ii) 真空パッドで基板表面を接触吸着する
iii) ベルヌーイの定理等を用いた非接触吸着器のみで、基板表面を非接触吸着する
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-67887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、それぞれの方法は矩形基板の大きさ、厚み、重量に応じて最適な方法が選定されるため、矩形基板のように配線パターンや実装部品等の違いに起因して複数種類の矩形基板が混在する場合には対応出来ない。
【0008】
加えて、i)の場合、薄い矩形基板では矩形基板が撓んでしまい易く、ii)の場合、そもそも接触を嫌う矩形基板には適用できず、また薄い矩形基板では部分的に強く吸引するため、局部的に応力が発生し易く、iii)の場合、重い矩形基板では大量のエアが必要になるという課題がある。
【0009】
本発明は、これらの課題に着目してなされたものであって、矩形基板の厚み違い等に拘わらず安定した反転動作を行うことを可能にする、基板反転装置及びそれを備えた基板搬送システムを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明の基板反転装置は、矩形基板を把持して反転させるハンドを備えたものにおいて、前記ハンドに、前記矩形基板の表面を非接触で保持する非接触吸着部と、前記矩形基板の2辺が対向する方向及び厚み方向への位置ずれを規制する規制部とを設けたことを特徴とする。
【0012】
このように構成すれば、矩形基板の保持は基本的に非接触吸着によるので、接触を嫌う矩形基板に好適に適用できるとともに、矩形基板の大きさや厚み、重量に影響されずに、また、局所的に応力を発生させずに、矩形基板を保持することができる。この場合、非接触吸着だと矩形基板が面方向にスライドすることがあるが、対向2辺を規制することで反転時のみならず基板支持状態でのスライドも防止することができる。さらに、規制部によって厚み方向を規制することで、反転時の振動を抑制することができ、重い矩形基板であっても非接触吸着部のみに負荷が掛かることも防止することができる。
【0013】
前記非接触吸着部を、前記ハンドに縦横に配置した複数の吸着パッドを通じて矩形基板を非接触吸着するように構成すれば、矩形基板を安定して分散支持することができる。
【0014】
前記規制部の規制状態で、基板の対向2辺に対する対向方向の規制距離が前記矩形基板の同方向寸法よりも大きく、基板厚み方向の規制距離が前記矩形基板の厚み寸法よりも大きい基板受容部を形成すれば、矩形基板が位置ずれしたり撓んだときのみ規制部によって補助的に矩形基板を支持することができ、規制部によって矩形基板を無理に撓ませたり、規制部が非接触吸着部に必要とされる吸着隙間の形成を妨げることもない。
【0015】
前記規制部を、前記矩形基板の辺に沿った間欠位置に設けておけば、矩形基板をステージ上の支持突起に載せる場合、支持突起を避けるように規制部を設けることで、支持突起と規制部の干渉を回避することができる。
【0016】
前記ハンドに、前記矩形基板のうち接触が許容される部位を接触支持する接触支持部を更に設けており、この接触支持部は、前記非接触吸着部における矩形基板と非接触吸着部の間に必要なギャップを損ねないように設定しておけば、矩形基板の支持力を有効に高めることができる。
【0017】
0.2~4.0mmの範囲の異なる厚みの矩形基板が、処理装置間、または処理装置と基板容器との間に搬送される場合に、上記の基板反転装置を備えて基板搬送システムを構成すれば、板の厚み等を事前に検出する必要がなく、厚みが違う矩形基板が供給されても対応ができるため、同じ制御で次工程に搬送することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した本発明によれば、矩形基板の厚み違い等に拘わらず安定した反転動作を行うことができ、パーティクルの発生も抑制することが可能になる。また、矩形基板の厚み等を事前に検出する必要がなく、同じ制御で次工程に搬送することができるため、制御や工程の簡素化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の基板反転装置が適用される基板搬送システムの概略図。
図2】同基板反転装置の動作説明図。
図3】同基板反転装置のハンドに設けた非接触吸着部及び規制部を示す図。
図4】同非接触吸着部の原理図。
図5】反転実行時のハンドと矩形基板の関係を模式的に示す平面図。
図6】撓みを考慮する必要がない矩形基板を反転させる様子を示す図。
図7】撓みを考慮する必要がある矩形基板を反転させる様子を示す図。
図8】本発明の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、この基板反転装置が適用される基板搬送システムSを示している。
この基板搬送システムSは、処理装置Aと基板容器Bの間に、矩形基板Wの搬送を行う搬送ロボット1を有する搬送装置Cが設置されている。この搬送装置Cでは、処理装置Aから出てくる矩形基板Wが表裏反転している場合に矩形基板Wを反転させて搬送ロボット1に引き渡す必要があるため、基板反転装置2が設けられている。基板反転装置2は、処理装置Aからステージ3上に払い出された矩形基板Wの表裏面を検出し、反転機2で保持した後、矩形基板Wの裏面が上面になっていると判断した場合は、矩形基板Wを反転させて次工程に移送する。
【0022】
ここでの次工程はアライナ4である。アライナ4はロボット1に矩形基板Wを適正な位置、姿勢でキャッチさせるためのもので、アライナ4上における矩形基板Wの位置や姿勢を検出し、不適切と判断した場合は、アライナ4を使ってロボット1が矩形基板Wをキャッチする際のX、Y、θ方向の修正(アライメント)が行われる。X、Yは平面直交2方向、θは鉛直軸回りの角度である。
【0023】
アライメントされた矩形基板Wは、搬送ロボット1により基板容器Bに収納される。矩形基板Wがアライメントされていないと基板容器B内に適切に収容できないため、アライナ4における工程は重要である。
【0024】
基板容器Bから処理装置Aに矩形基板Wを搬送する際には、上記と逆の流れになる。
【0025】
この実施形態が対象とする矩形基板Wは、前述したようにプリント基板やガラス基板とは異なり、パターン配線や実装部品等が3次元的に積層される高密度パッケージ基板と称される基板である。
【0026】
図2は基板反転装置2の動作説明図である。ステージ3上には基板Wを支持する支持突起31が設けてあり、基板反転装置2のハンド21はこの支持突起31を避けてステージ3上に進入できる形状を有している。支持突起31は便宜上ステージ3上の中央1か所に表示しているが、実際には図3に想像線で示すように矩形基板の対向2辺Wa近傍と中央部を複数個所で支持する位置に配されている。
【0027】
ステージ3上に矩形基板Wが払い出されると(ステップS1)、基板反転装置2がX方向に移動して矩形基板Wを取りに行く(ステップS2)。具体的には、ハンド21をステージ3と矩形基板Wの間に差し込み、ハンド21を上昇させることによって矩形基板Wをすくい上げて保持する(ステップS3)。その後、基板反転装置2は-X方向に移動してステージ3から離れ(ステップS4)、その位置で基板反転装置2のハンド21を水平軸m1回りに180°回転させて矩形基板Wを表裏反転させる(ステップS5)。
【0028】
しかる後、図1の状態から鉛直軸m2回りに180°旋回してアライナ4に基板Wを載置し、再び鉛直軸m2回りに180°旋回して次の矩形基板Wをステージ3に取りに行く。
【0029】
アライナ4にも支持突起41が設けてあり、基板反転装置2は、矩形基板Wを反転させていないときは降下しながら支持突起41の上に矩形基板Wを載置した後、矩形基板Wとアライナ4の上面との隙間からハンド21を引き出すが、矩形基板Wを反転させたときは支持突起41の上に矩形基板Wを落下させた後、上昇してハンド21をアライナ4上から退避させる動作を行う。
【0030】
このような動作中、少なくとも反転させるためにはハンド21は矩形基板Wを落下しないように保持する必要がある。
【0031】
その際、前述したように処理装置Aから払い出されるこの種の矩形基板Wは、プリント基板やガラス基板等と違って、厚みや重さが必ずしも画一的ではない。このため、異なる厚み等であっても確実に矩形基板Wを保持して安定した反転動作を行う必要がある。
【0032】
そこでこの実施形態は、図3に示すように、ハンド21に、矩形基板Wの表面を非接触で保持する非接触吸着部22と、矩形基板Wの対向2辺Waが対向する方向及び矩形基板Wの厚み方向への当該矩形基板Wの位置ずれを規制する規制部23とを設けている。
【0033】
ハンド21は、回転軸21a(図2のm1)の先端に概略U字状をなすフレーム21bを有している。非接触吸着部22は、このフレーム21bのうち、基端から分岐した各々の分岐部の複数個所に吸着パッド22aを縦横(ここでは2列5行)に分散配置することによって構成されている。
【0034】
この実施形態の非接触吸着部22を構成する吸着パッド22aは、図4に概念的に示すようにサイクロン方式によって吸着を行うのもので、供給ポートPから白抜き矢印T1で示すようにエアが供給されると、エアは吸着パッド22aの内部の円周に沿って設けたノズルnから矢印T2で示すように旋回流となって噴出し、その際の旋回流により内部に真空を発生させて、その真空により矩形基板Wを黒塗り矢印T3で示すように吸い上げる。吸着パッド22aと矩形基板Wの間には旋回流があるため、矩形基板Wは吸着パッド22aに接触せず所定ギャップを隔てて非接触で矩形基板Wの吸着状態を維持する。この吸着方式は矩形基板Wの大きさや厚み、重量に影響されず、エア供給量も矩形基板Wの重さによらず最も重いものに合わせて一定に設定しておけるものである。
【0035】
そのため吸着パッド22aには、図3に示す回転軸21a及びフレーム21bに沿ってエア供給路(不図示)が設けてある。
【0036】
規制部23は、回転軸21aの先端にフレーム21bとともに一体回転可能に設けたクランプ機構24を通じて、規制状態と規制解除状態を切り替えるように構成される。クランプ機構24は、フレーム21bの外側に位置する一対の補助フレーム24aを有し、これら一対の補助フレーム24aをフレーム21bに対して両側から挟む方向に接離可能としたもので、規制部23は、補助フレーム24の長手方向の間欠位置(この実施形態では4箇所)に配置されている。
【0037】
規制部23は、平面視板状をなし(図5参照)、正面視V溝状(図6参照)をなすもので、クランプ機構24を通じて左右のV溝状の受容部23aが相近づく方向に動作することで、受容部23a内に基板Wの対向する2辺Wa、Waを収容して規制するように構成される。その際の受容部23aによる基板Wの対向2辺Wa、Waに対する対向方向の規規制距離L1は、矩形基板Wの対向2辺Wa、Wa方向の寸法(幅方向)W1よりも僅かに大きく、受容部23aによる基板厚み方向の規制距離L2は、矩形基板Wの厚み寸法W2よりも僅かに大きくなるように設定されている。
【0038】
矩形基板Wの他の対向2辺については、図示しない第2の規制部によって位置ずれが規制されている。
【0039】
図5は反転実行時のハンド21と矩形基板Wの関係を模式的に示す平面図である。ステップS1の状態からステップS2の状態になることでハンド21が矩形基板Wの下に入り込む。このとき、クランプ機構24によって規制部23は矩形基板Wから離れており、非接触吸着部22も作動していない。
【0040】
次に、ステップS3で非接触吸着部23aを作動させつつハンド21を上昇させて矩形基板Wをフレーム21b上にすくい上げるとともに、クランプ機構24を作動させて規制部23で矩形基板Wを規制する。そして、そのままステージ3から退避する。
【0041】
そして、退避位置でハンド21を反転させることで、矩形基板Wの表裏が反転したステップS5の状態になる。
【0042】
図6図7は上記図2図5の各ステップに対応して矩形基板W、非接触吸着部22、規制部23の関係を示す模式図である。
【0043】
このうち、図6は撓みを考慮する必要がない厚み(例えば1.0~4.0mm)の矩形基板Wを扱う場合である。この場合は、左右の規制部23のみで矩形保持Wすることも可能であり、非接触吸着部22を設ける必要がないとも言える。
【0044】
しかしながら、ヤング率や基板サイズによっては、このような厚みでも反転動作により矩形基板Wが撓み、振動が生じる場合がある。振動が生じると、規制部23との接触部からパーティクルが生じるなどの問題がある。
【0045】
そこで、非接触吸引部22を設けることで、振動の発生抑制、又は早期低減を図ることが可能となる。
【0046】
先ず、ステージ3に設けた支持突起31上に矩形基板Wが配置される(ステップS1)。次に、反転装置2が移動し、ハンド21が矩形基板Wの下に入って矩形基板Wを取りに行く(ステップS2)。そこで、非接触吸着部22を作動させつつハンド21を上昇させて矩形基板Wをすくい上げる。その際、クランプ機構24を作動させて、規制部23を矩形基板Wの対向2辺Waを規制する位置まで移動させる(ステップS3)。その後、ステージ3から離れ(ステップS4)で、ハンド21を反転させる(ステップS5)。
【0047】
ステップS4からステップS5に反転させた際に、規制部23を設けておくことで矩形基板Wが振動することなく、パーティクル低減を期待することができる。
【0048】
また、図7は撓みを考慮する必要がある厚み(例えば0.2~0.8mm)の矩形基板Wを扱う場合である。この場合は、左右の規制部23で規制したとしても、矩形基板Wのたわみにより矩形基板Wが規制部23から外れて脱落し得る。そのため、非接触吸着部22が必要となる。しかし、非接触吸着部22による保持力が矩形基板Wの重量を十分に上回る場合であっても規制部23による保持が必要である。その理由は、吸着されていない部位(例えば矩形基板の対向2辺Wa近傍)では吸着力が働かないため、図7のステップS5の状態で規制部23が無ければ矩形基板Wの辺Waが垂れ下がり、それが原因で矩形基板Wと非接触吸着部22が所定ギャップ以上に離れることで、基板Wが脱離してしまう。
【0049】
そこで、非接触吸着部22と規制部23によって矩形基板Wを保持することが有効なものとなっている。手順S1~S5は図6における手順S1~S5と同様である。
【0050】
すなわち、基板Wが薄く撓み易い場合(例えば0.2~0.8mm)にはステップS4で矩形基板Wは端部(辺Wa近傍)で撓み、規制部23に乗っかる形で保持される。反転後も、ステップS5で矩形基板Wの端部(辺Wa近傍)は規制部23に乗っかる形で保持され、矩形基板Wと非接触吸着部22の吸着パッド22aが所定の距離以上離間することなく、矩形基板Wの保持が継続されることになる。
【0051】
以上のように、本実施形態の基板反転装置2は、矩形基板Wを把持して反転させるハンド21を備えたものであり、ハンド21に、矩形基板Wの表面を非接触で保持する非接触吸着部22と、矩形基板Wの対向2辺Wa、Waに対する同対向方向及び厚み方向への位置ずれを規制する規制部23とを設けたものである。
【0052】
このようにすれば、矩形基板Wの保持は基本的に非接触吸着部22によってなされるので、接触を嫌う矩形基板に好適に適用できるとともに、矩形基板Wの大きさや厚み、重量に影響されずに、また、局所的に応力を発生させずに、矩形基板Wを保持することができる。この場合、非接触吸着だと矩形基板Wが面方向にスライドすることがあるが、対向2辺を規制することで反転時のみならず基板支持状態でのスライドも防止することができる。さらに、規制部23によって厚み方向を規制することで、反転時の振動を抑制することができ、矩形基板Wが重い場合に非接触吸着部22のみに負荷が掛かることも防止することができる。
【0053】
また、非接触吸着部22は、ハンド21に縦横に配置した複数の吸着パッド22aを通じて矩形基板Wを非接触吸着するように構成されているので、矩形基板Wを安定して分散支持することができる。
【0054】
特に本実施形態の非接触吸着部22は、サイクロン方式のものであり、吸着力が高いが矩形基板Wに回転方向の力が掛かる。そこで、非接触吸着部22を複数の吸着パッド22aから構成しておくことで、併せて回転を抑えることができる。
【0055】
その規制部23には、規制状態で、基板Wの対向2辺Wa、Waに対する対向方向の規制距離L1が矩形基板Wの同方向(幅方向)寸法W1よりも大きく、基板厚み方向の規制距離L2が矩形基板Wの厚み寸法W2よりも大きい基板受容部23aを形成している。このような規制部23であれば、矩形基板Wが位置ずれしたり撓んだときのみ規制部23によって補助的に矩形基板Wを支持することができ、規制部23によって矩形基板Wを無理に撓ませたり、規制部23が非接触吸着部22に必要とされる吸着隙間の形成を妨げることもない。
【0056】
本実施形態の規制部23は、矩形基板Wの辺Waに沿った間欠位置に設けてあるので、矩形基板Wをステージ3上の支持突起31に載せる場合、規制部23が支持突起31を避ける位置関係とすることで、支持突起31と規制部23の干渉を回避することができる。
【0057】
そして、このような基板反転装置2を備えて基板搬送システムCを構成しているので、矩形基板Wの厚み等を事前に検出する必要がなく、厚みが違う矩形基板が供給されても対応が可能で、同じ制御で次工程に搬送することができるため、制御や工程の簡素化を図ることが可能となる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0059】
例えば、図8に示すように、矩形基板Wに接触が許容される部位Wbがあれば、ハンド21に、接触が許容されない部位を吸着する非接触吸着部22以外に、接触が許容される部位Wbを接触支持する接触支持部25を更に設けてもよい。この接触支持部25は、非接触吸着部22における矩形基板Wと非接触吸着部22の間に必要とされるギャップGpを損ねないように設定される。
【0060】
ギャップGpは、非接触吸引部22のリフト力と矩形基板Wの重量が釣り合う距離として定義できる。非接触吸引部22のハンド表面からの突出量が、例えば1~20mmとすると、非接触吸着部22のハンド表面からの突出量+ギャップGpは、一例として、1mmを超えて30mm以下の値になる。よって、接触支持部25のハンド表面からの突出量を、非接触吸着部22のハンド表面からの突出量+ギャップGpとほぼ同じ値(1mmを超えて30mm以下の値)に設定することが好ましい。このようにすれば、矩形基板Wの支持力を有効に高めることができる。
【0061】
また、上記実施形態では非接触吸着部にサイクロン方式のものを使用したが、ベルヌーイ方式のもの等であっても構わない。
【0062】
また、上記実施形態では処理装置Aから基板容器Bに矩形基板Wを搬送する流れについて説明したが、逆方向の流れについても同様である。また、処理装置Aから別の処理装置に矩形基板Wを搬送する流れについても同様である。
【0063】
また、本実施形態の基板反転装置2を備えていれば、周辺の構成が異なる他の基板搬送システムへの本発明の適用も可能である。
【0064】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
2…基板反転装置
21…ハンド
22…非接触吸着部
22a…吸着パッド
23…規制部
25…接触支持部
C…基板搬送システム
L1…2辺の対向方向の規制距離
L2…基板厚み方向の規制距離
W…矩形基板
Wa…対向2辺
W1…幅方向寸法
W2…厚み寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8