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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076598
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】蒸気調整弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20240530BHJP
   F16K 1/46 20060101ALI20240530BHJP
   F24H 1/12 20220101ALI20240530BHJP
   F24D 17/00 20220101ALI20240530BHJP
【FI】
F16K31/68 Z
F16K1/46 Z
F24H1/12 Z
F24D17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188221
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小西 謙悟
【テーマコード(参考)】
3H052
3H057
3L034
3L073
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA02
3H052CD03
3H052CD09
3H052EA02
3H052EA05
3H057AA03
3H057BB37
3H057CC04
3H057DD03
3H057EE08
3H057FA24
3H057FB05
3H057FC05
3H057FD19
3H057GG08
3H057HH03
3H057HH12
3L034BA33
3L034BB07
3L073AA08
3L073AA15
3L073AA18
3L073AB12
3L073AC01
3L073AD05
3L073AE05
(57)【要約】
【課題】蒸気と給水が混合することを防ぐことができる給湯システムの蒸気調整弁を提供する。
【解決手段】蒸気調整弁4は、常温の水Wを、蒸気Sを熱源として加熱して給水温度を調整する給湯システムSYに用いられる。蒸気調整弁4は、水Sが流れる給水ライン28と、蒸気Sが流れる蒸気ライン30と、給水ライン28の水温により伸縮する駆動源32と、駆動源32により駆動されて蒸気ライン30を開閉する弁体34と、給水ライン28と蒸気ライン30とをシールする複数のシール部材74と、複数のシール部材74の間に設けられて外部に開口する連通路84とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温の水を、蒸気を熱源として加熱して給水温度を調整する給湯システムの蒸気調整弁であって、
前記水が流れる給水ラインと、
前記蒸気が流れる蒸気ラインと、
前記給水ラインの水温により伸縮する駆動源と、
前記駆動源により駆動されて前記蒸気ラインを開閉する弁体と、
前記給水ラインと前記蒸気ラインとをシールする複数のシール部材と、
複数の前記シール部材の間に設けられて外部に開口する連通路と、
を備えた蒸気調整弁。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気調整弁において、さらに、前記連通路の出口開口に取り付けられた点検バルブを備えた蒸気調整弁。
【請求項3】
第1の流体の温度により、第2の流体の流量を調整する温度調整弁であって、
前記第1の流体が流れる第1のラインと、
前記第2の流体が流れる第2のラインと、
前記第1の流体の温度により伸縮する駆動源と、
前記駆動源により駆動されて前記第2のラインを開閉する弁体と、
前記第1のラインと前記第2のラインとをシールする複数のシール部材と、
複数の前記シール部材の間に設けられて外部に開口する連通路と、
を備えた温度調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温の給水を、蒸気を熱源として加熱し、給水流量に関わらず給水温度を調整して、一定に保つ給湯システムの蒸気調整弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
常温の給水を、蒸気を熱源として加熱し、給水流量に関わらず給水温度を調整して、一定に保つ給湯システムが知られている(例えば、特許文献1)。このような給湯システムは電気が不要であるので、蒸気と給水があれば、設置できる利点がある。この給湯システムは、主な構成機器として、給水を蒸気で加熱する熱交換器と、熱交換器の出口の熱水温度に合わせて蒸気流量を調整する蒸気調整弁と、高温の熱水と常温の水を設定温度に合わせて混合比を変更する湯水混合栓とを備えている。特許文献1の蒸気調整弁は、サーモワックスを用いて蒸気の流量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5463096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示すように、従来の蒸気調整弁100では、蒸気ライン102と給湯ライン104を分けるOリング106が1つである。したがって、このOリング106が劣化すると、内部で漏れが発生し、蒸気Sが給水ライン104に混合する恐れがある。この状態に気づかずに使用すると、意図しない高温の水Wが出水する可能性や、給水ライン104への蒸気Sの浸入により給水Wの水質に影響を与える可能性がある。
【0005】
本発明は、蒸気と給水が混合することを防ぐことができる給湯システムの蒸気調整弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の蒸気調整弁は、常温の水を、蒸気を熱源として加熱して給水温度を調整する給湯システムの蒸気調整弁であって、前記水が流れる給水ラインと、前記蒸気が流れる蒸気ラインと、前記給水ラインの水温により伸縮する駆動源と、前記駆動源により駆動されて前記蒸気ラインを開閉する弁体と、前記給水ラインと前記蒸気ラインとをシールする複数のシール部材と、複数の前記シール部材の間に設けられて外部に開口する連通路とを備えている。
【0007】
この構成によれば、給水ラインと蒸気ラインを隔てるシール部材を複数設置し、シール部材の間に外部に通じる連通路が設けられている。これにより、1つのシール部材が劣化した場合でも、蒸気または水が連通路を通じて外部に排出されるので、給水ラインまたは蒸気ラインに直接混合されるのを防ぐことができる。また、連通路から蒸気または水が外部に排出されていることが目視で確認できるので、シール部材の劣化をユーザに知らせることができる。その結果、速やかなシール部材の交換が可能となり、長時間にわたって蒸気または水が漏れるのを回避できる。
【0008】
本発明において、さらに、前記連通路の出口開口に取り付けられた点検バルブを備えていてもよい。この構成によれば、点検者が点検バルブを操作することで、シール部材の劣化を確認できる。これにより、速やかなシール部材の交換が可能となり、長時間にわたって蒸気または水が漏れるのを回避できる。
【0009】
本発明の温度調整弁は、第1の流体の温度により第2の流体の流量を調整する温度調整弁であって、前記第1の流体が流れる第1のラインと、前記第2の流体が流れる第2のラインと、前記第1の流体の温度により伸縮する駆動源と、前記駆動源により駆動されて前記第2のラインを開閉する弁体と、前記第1のラインと前記第2のラインとをシールする複数のシール部材と、複数の前記シール部材の間に設けられて外部に開口する連通路とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の給湯システムの蒸気調整弁によれば、給水ラインまたは蒸気ラインに直接混合されるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】給湯システムの基本構造を示す概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る蒸気調整弁を示す断面図である。
図3図2のサーモワックス感温部とその周辺を拡大して示す図である。
図4】従来の蒸気調整弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。最初に、図1を用いて、給湯システムSYの基本構造について説明する。給湯システムSYは、常温の水W(給水)を、蒸気Sを熱源として加熱し、給水流量に関わらず給水温度を調整し、一定に保つ。本実施形態の給湯システムSYは、電気が不要であり、蒸気Sと水Wがあれば、設置できる利点がある。以下の説明において、「上流」および「下流」とは、蒸気Sまたは水Wの流れ方向の「上流」および「下流」をいう。また、以下の説明において、“水W”を“給水W”と呼ぶこともある。
【0013】
給湯システムSYは、主な構成機器として、給水Wを蒸気Sで加熱する熱交換器2と、熱交換器2から導出される熱水Wの温度に合わせて蒸気Sの流量を調整する蒸気調整弁4と、高温の熱水Wと常温の水Wとの混合比を設定温度に合わせて変更する湯水混合栓6とを備えている。
【0014】
熱交換器2は、例えば、複数のプレートを重ねて、その間に蒸気Sの通路と水Wの通路を、プレートを介して交互に配置した「プレートヒーター」である。ただし、熱交換器2は、プレートヒーターに限定されない。
【0015】
熱交換器2の水入口2aに水供給通路8が接続され、熱交換器2の水出口2bに熱水通路11が接続され、熱交換器2の蒸気入口2cに蒸気供給通路12が接続され、熱交換器2の蒸気出口2dに蒸気排出通路14が接続されている。水入口2aからの水Wと、蒸気入口2cからの蒸気Sが熱交換器2で熱交換され、熱交換後の熱水Wが水出口2bから導出され、熱交換後の蒸気Sが蒸気出口2dから導出される。
【0016】
水供給通路8には、常温の水W、例えば、水道水Wが流れる。水供給通路8に、第1逆止弁10が設けられている。第1逆止弁10は、熱交換器2から水供給通路8に水Wが逆流するのを防ぐ。
【0017】
熱水通路11には、熱交換器2で熱交換された熱水Wが流れる。熱水通路11に、前述の蒸気調整弁4と湯水混合栓6が設けられている。詳細には、熱交換器2の水出口2bから導出された熱水Wが、蒸気調整弁4の給水入口4aから蒸気調整弁4に流入し、蒸気調整弁4の給水出口4bから流出される。蒸気調整弁4に流入した熱水Wの温度により、蒸気調整弁4の開度が調整される。給水出口4bから流出された熱水Wが、湯水混合栓6に導入される。
【0018】
水供給通路8における第1逆止弁10よりも上流側から混合用冷水通路16が分岐されている。混合用冷水通路16は、湯水混合栓6に接続されている。湯水混合栓6において、熱水通路11からの熱水Wと、混合用冷水通路16からの常温の水Wが混合されて、所望の温度の温水(湯)Wが生成され、温水通路13を介して給湯される。混合用冷水通路16に、第2逆止弁18が設けられている。第2逆止弁18は、湯水混合栓6から混合用冷水通路16に水(湯)Wが逆流するのを防ぐ。
【0019】
蒸気供給通路12には、熱源である蒸気Sが流れる。蒸気供給通路12に蒸気調整弁4が設けられている。詳細には、蒸気Sが蒸気調整弁4の蒸気入口4cから蒸気調整弁4に流入し、蒸気調整弁4の蒸気出口4dから流出される。上述のように、蒸気調整弁4に流入した蒸気Sの流量は、給水入口4aから流入した熱水Wの温度により調整される。蒸気出口4dから流出された蒸気Sは、熱交換器2に導入される。蒸気調整弁4の詳細は後述する。
【0020】
蒸気排出通路14には、熱交換器2の蒸気出口2dから導出された蒸気Sが流れる。蒸気排出通路14にスチームトラップ20が設けられている。スチームトラップ20は、ドレンDを排出し、蒸気Sをトラップする。
【0021】
以下に、図2および図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る蒸気調整弁4を説明する。以下の説明において、図2の蒸気側を上側、給水側を下側という。図2に示すように、蒸気調整弁4は、上端と下端が開口した筒状のケーシング22と、上側の開口を塞ぐ上蓋24、下側の開口を塞ぐ下蓋26とを有している。上蓋24および下蓋26は、複数のボルトによりケーシング22に着脱自在に取り付けられている。ケーシング22、上蓋24および下蓋26は、例えば、ステンレス製である。ただし、ケーシング22、上蓋24および下蓋26の材質は、これに限定されない。
【0022】
蒸気調整弁4は、水Wが流れる給水ライン28と、蒸気Sが流れる蒸気ライン30と、給水ライン28の水温により伸縮する駆動源32と、駆動源32により駆動されて蒸気ライン30を開閉する弁体34とを備えている。
【0023】
給水ライン28は、ケーシング22の内部に形成されている。給水ライン28は、駆動源32が配置された駆動源収容部36と、給水入口4aから駆動源収容部36に向かう一次側給水ライン28aと、駆動源収容部36を通過後に給水出口4bに向かう二次側給水ライン28bとを有している。
【0024】
駆動源32は、給水ライン28の水温により膨張・収縮するサーモワックス38を有している。この駆動源32のサーモワックス38が、給水ライン28の駆動源収容部36に配置されている。より詳細には、サーモワックス38の感温部38aが、給水ライン28の駆動源収容部36に配置されている。サーモワックス38の感温部38aは、一次側給水ライン28aの軸心AX1および二次側給水ライン28bの軸心AX2よりも弁体側(上側)に位置している。
【0025】
蒸気調整弁4は、さらに、サーモワックス38の膨張・収縮により上下方向に移動するピストン40を有している。ピストン40は上下方向に延びる軸部材で、基端部(下端部)40aがサーモワックス38に当接し、先端部(上端部)40bに弁体34が取り付けられている。本実施形態では、ケース39の内部にサーモワックス38とピストン40が収納されてユニット化されている。つまり、ピストン40は、ケース39にガイドされて上下方向に移動する。
【0026】
弁体34は、大径の筒部34aと、小径の弁体部34bと、筒部34aと弁体部34bとを結ぶ傾斜部34cとを有している。傾斜部は、上方に向かって徐々に縮径する錐形状である。
【0027】
筒部34aは、一端側(下端側)が開口し、他端(上端)が頂壁34aaで閉塞された筒状で、中空部にピストン40およびケース39の一部が挿通されている。ピストン40の先端部40bに円盤形状のばねホルダ42が取り付けられている。ばねホルダ42の外径は、筒部34aの中空部の内径とほぼ同じで、若干小さく設定されている。
【0028】
筒部34aの頂壁34aaと、ばねホルダ42の上面との間に、第1ばね部材44が介装されている。第1ばね部材44は、例えば、コイルばねで、開方向(下方)に付勢されている。筒部34aの周壁34abが、ばねガイドとして機能する。
【0029】
蒸気ライン30は、ケーシング22の内部およびケーシング22と上蓋24との間に形成されている。蒸気ライン30に弁体34が配置されている。蒸気ライン30の蒸気入口4cは上蓋24の周壁に設けられ、蒸気出口4dはケーシング22の周壁に設けられている。
【0030】
上蓋24に、筒状のインレットガイド46を介して筒状の弁座部材48が支持されている。弁座部材48は、外側筒部48aと、内側筒部48bと、両筒部48a,48bの上端部を連結する環状の連結部48cとを有している。弁座部材48は、外側筒部48aの外周面がインレットガイド46の内周面に接触した状態で上蓋24に支持されている。
【0031】
弁座部材48の内側筒部48bの中空孔は蒸気ライン30の一部を構成している。内側筒部48bの下端部48baが弁座を構成している。つまり、弁体34の弁体部34bが、上昇して内側筒部48bの弁座(下端部)48baに当接することで、蒸気ライン30が閉じる。
【0032】
弁座部材48と弁体34との間に、第2ばね部材50が介装されている。第2ばね部材50は、例えば、コイルばねで、開方向(下方)に付勢されている。詳細には、第2ばね部材50は、上端が弁座部材48の連結部48cに当接し、下端が弁体34の筒部34aに設けられた段差部34acに当接している。本実施形態では、筒状のばねガイド部材52を介して第2ばね部材50の下端が弁体34の段差部34acに当接している。第2ばね部材50の外側に、ばねガイド54を設けてもよい。
【0033】
給水ライン28の水の温度が低い時は、第2ばね部材50のばね力により、弁体34は下方に移動し、弁体34は弁座48baから離れている(図2の状態)。つまり、蒸気ライン30は開放され、蒸気Sが熱交換器2(図1)に供給される。
【0034】
熱交換器2に蒸気Sが供給されることで、熱交換器2から供給される給水ライン28の水の温度が上昇する。給水ライン28の水の温度が上昇すると、サーモワックス38が作動し、ピストン40により上向きの力が働く。この駆動源32による上向きの力が、第2ばね部材50のばね力よりも大きくなると、弁体34が上方に移動し、弁体34が弁座48baに着座する。つまり、蒸気ライン30は閉じられ、蒸気Sの熱交換器2(図1)への供給が停止する。
【0035】
本実施形態では、サーモワックス38の温度が90℃になると、弁体34が弁座48baに着座する。ただし、弁体着座後もサーモワックス38の温度が上昇する可能性があり、着座後もピストン40が伸びようとすることがある。第1のばね部材44は、このピストン40の力を受けるように設定されている。
【0036】
熱交換器2への蒸気Sの供給が停止されることで、熱交換器2から供給される給水ライン28の水の温度が低下する。給水ライン28の水の温度が低下すると、ピストン40に作用する上向きの力が小さくなる。第2ばね部材50のばね力が、駆動源32による上向きの力がよりも大きくなると、弁体34が下方に移動し、弁体34が弁座48baから離れる。つまり、蒸気ライン30は開放され、図2の状態に戻る。以降、同様の動作が繰り返される。
【0037】
蒸気ライン30は、サーモワックス38の感温部38aよりも反弁体側(下側)に蒸気Sを供給する補助加熱通路56を有している。補助加熱通路56は、ケーシング22の内部に形成され、下蓋26により閉塞されている。すなわち、蒸気ライン30は、サーモワックス38の感温部38aを挟んで、弁体側(上側)と反弁体側(下側)に形成されている。
【0038】
給水ライン28と蒸気ライン30は、バルブガイド部材58により区画されている。バルブガイド部材58は、筒状の部材からなり、ケーシング22の内部に嵌合されている。バルブガイド部材58の上側(弁体側)および下側(反弁体側)に蒸気ライン30が配置され、バルブガイド部材58の内部に、給水ライン28、詳細には駆動源収容部36が配置されている。
【0039】
バルブガイド部材58は、給水ライン28と弁体側(上側)の蒸気ライン30を区画する第1の部分60と、給水ライン28と反弁体側(下側)の蒸気ライン30を区画する第2の部分62とを有している。バルブガイド部材58の中空部における第1の部分60と第2の部分62の領域が駆動源収容部36である。
【0040】
第1の部分60に上下方向に延びる軸挿通孔60aが形成され、この軸挿通孔60aにケース39が嵌合されている。
【0041】
第2の部分62は、その内周面に嵌合された筒状部材64を有している。筒状部材64は、ケーシング22や下蓋26よりも熱伝導率の高い金属で形成されている。本実施形態では、筒状部材64は銅製である。ただし、筒状部材64の材質は、これに限定されない。
【0042】
筒状部材64は、その外周面が第2の部分62の内周面に当接する第1の筒部66と、第1の筒部66の上方に位置する第2の筒部68とを有している。第1の筒部66と第2の筒部68は、同芯状に形成され、第2の筒部68は第1の筒部66よりも小径である。
【0043】
第1の筒部66と第2の筒部68は、底壁70により連結されている。つまり、第1の筒部66は、下方に開口し、上端が底壁70で閉塞された有底の筒部である。一方、第2の筒部68は、上方に開口し、下端が底壁70で閉塞された有底の筒部である。
【0044】
第2の筒部68の内部空間は給水ライン28の駆動源収容部36に連通しており、第2の筒部68の内部空間に、サーモワックス38の感温部38aが配置されている。筒状部材64に補助給水通路69が形成されている。補助給水通路69は、一次側給水ライン28aおよび二次側給水ライン28bに連通し、サーモワックス38の感温部38aに水を直接供給する。
【0045】
図3に示すように、補助給水通路69は、筒状部材64の第2の筒部68に形成されている。本実施形態では、補助給水通路69は、第2の筒部68を径方向に切り欠いて形成した環状の溝である。ただし、補助給水通路69の配置、構造は、これに限定されない。
【0046】
第1の筒部66の内部空間は、蒸気ライン30の補助加熱通路56に連通している。換言すれば、第1の筒部66の内部空間が、補助加熱通路56におけるサーモワックス38の感温部38aに向かって膨出する拡張部分72を構成している。
【0047】
拡張部分72は、蒸気ライン30のうちで最もサーモワックス38の感温部38aに近い領域である。拡張部分72は、底壁70を挟んで、サーモワックス38の感温部38aに近接している。拡張部分72がない場合に比べて、底壁70は薄くなる。つまり、拡張部分72を設けることで、蒸気ライン30(拡張部分72)とサーモワックス38の感温部38aが近接する。
【0048】
図2に示すように、蒸気調整弁4は、給水ライン28と蒸気ライン30とをシールする複数のシール部材74を有している。シール部材74は、バルブガイド部材58の第1の部分60とケーシング22との間、バルブガイド部材58の第1の部分60とケース39との間、バルブガイド部材58の第2の部分62とケーシング22との間、およびバルブガイド部材58の第2の部分62と筒状部材64の第1の筒部66との間に配置されている。
【0049】
バルブガイド部材58の第1の部分60とケーシング22との間の第1のシール部材76は、バルブガイド部材58の第1の部分60の外周面とケーシング22の内周面との隙間をシールする。バルブガイド部材58の第1の部分60とケース39との間の第2のシール部材78は、バルブガイド部材58の第1の部分60の内周面とケース39の外周面との隙間をシールする。
【0050】
バルブガイド部材58の第2の部分62とケーシング22との間の第3のシール部材80は、バルブガイド部材58の第2の部分62の外周面とケーシング22の内周面との隙間をシールする。バルブガイド部材58の第2の部分62と筒状部材64の第1の筒部66との間の第4のシール部材82は、バルブガイド部材58の第2の部分62の内周面と筒状部材64の第1の筒部66の外周面との隙間をシールする。
【0051】
これら第1~第4のシール部材76,78,80,82が前述のシール部材74を構成する。第1~第4のシール部材76,78,80,82は、例えば、樹脂製のOリングである。ただし、各シール部材76,78,80,82の構造、材質はこれに限定されない。各シール部材76,78,80,82の構造、材質は同じであってもよく、異なっていてもよい。あるいは、各シール部材76,78,80,82のうちの2つまたは3つが同じ構造、材質であってもよい。
【0052】
第1~第4のシール部材76,78,80,82は、それぞれ複数設けられている。本実施形態では、第1~第4のシール部材76,78,80,82は、2つずつ設けられている。第1~第4のシール部材76,78,80,82の数は、これに限定されない。2つの第1のシール部材76,76は、同じ構造、材質であることが好ましいが、異なっていてもよい。第2~第4のシール部材78,80,82についても同じである。
【0053】
2つの各シール部材76,78,80,82の間に、連通路84が設けられている。詳細には、ケーシング22における第1のシール部材76,76の間に第1連通路86が設けられている。第1連通路86は、ケーシング22を貫通して径方向に延びる通路で、一端がバルブガイド部材58の第1の部分60とケーシング22との隙間に連通し、他端が外部(大気)に開放されている。したがって、第1のシール部材76が劣化して漏れが発生した場合、漏れた流体は該隙間から第1連通路86を流れて外部に排出される。第1連通路86は、周方向に離間して複数(例えば、4つ)設けられている。ただし、第1連通路86の数は、これに限定されない。
【0054】
バルブガイド部材58の第1の部分60における第2のシール部材78,78の間に第2連通路88が設けられている。第2連通路88は、バルブガイド部材58の第1の部分60を貫通して径方向に延びる通路で、一端がバルブガイド部材58の第1の部分60とケース39との隙間に連通し、他端が第1連通路86に連通している。つまり、第2連通路88は、第1連通路86を介して外部(大気)に開放されている。
【0055】
したがって、第2のシール部材78が劣化して漏れが発生した場合、漏れた流体は該隙間から第2連通路88および第1連通路86を流れて外部に排出される。第2連通路88も、周方向に離間して複数(例えば、4つ)設けられている。ただし、第2連通路88の数は、これに限定されない。
【0056】
ケーシング22における第3のシール部材80,80の間に第3連通路90が設けられている。第3連通路90は、ケーシング22を貫通して径方向に延びる通路で、一端がバルブガイド部材58の第2の部分62とケーシング22との隙間に連通し、他端が外部(大気)に開放されている。したがって、第3のシール部材80が劣化して漏れが発生した場合、漏れた流体は該隙間から第3連通路90を流れて外部に排出される。第3連通路90も、周方向に離間して複数(例えば、4つ)設けられている。ただし、第3連通路90の数は、これに限定されない。
【0057】
バルブガイド部材58の第1の部分60における第4のシール部材82,82の間に第4連通路92が設けられている。第4連通路92は、バルブガイド部材58の第2の部分62を貫通して径方向に延びる通路で、一端がバルブガイド部材58の第1の部分60と第2の部分62との隙間に連通し、他端が第3連通路90に連通している。つまり、第4連通路92は、第3連通路90を介して外部(大気)に開放されている。
【0058】
したがって、第4のシール部材82が劣化して漏れが発生した場合、漏れた流体は該隙間から第4連通路92および第3連通路90を流れて外部に排出される。第4連通路92も、周方向に離間して複数(例えば、4つ)設けられている。ただし、第4連通路92の数は、これに限定されない。これら第1から第4連通路86,88,90,92により上記連通路84が構成されている。
【0059】
各連通路86,88,90,92から排出される流体は、例えば、ドレンにて、目視できる状態で排出される。したがって、外部から目視で、流体の漏れを確認できる。また、連通路84の出口84aにホースを取り付けて、漏れた流体を所定の箇所に排出できるようにしてもよい。
【0060】
図2に二点鎖線で示すように、連通路84の出口84aに点検バルブ94を取り付けてもよい。点検バルブ94を閉めておくことで、流体の漏れが発生しても、流体が外部に流れ続けるのを防ぐことができる。流体の漏れが発生している場合、点検者が、点検バルブ94を開くことで漏れを確認でき、迅速に対応できる。また、連通路84からの排水を検知するセンサを設けてもよい。
【0061】
第1~第4のシール部材76,78,80,82の少なくとも一つが3つ以上設けられる場合、複数のシール部材74の間の領域は2つ以上となる。この場合、2つ以上の領域のすべてに連通路84を設けてもよく、2つ以上の領域の少なくとも一つに連通路84を設けてもよい。
【0062】
図4の従来例のように、Oリング106が1つの場合、Oリング106が劣化すると、蒸気Sと水Wが混合する恐れがある。また、蒸気調整弁100では、給湯時と停止時でOリング106に負荷される圧力の方向が変わることがある。具体的には、給湯時には、給水ライン104の圧力が蒸気ライン102の圧力よりも高いので、給水ライン104から矢印A2方向に力がかかる。給湯停止時に蒸気調整弁100の閉弁遅れで蒸気ライン102の圧力が上がり、給水ライン104の圧力よりも高くなると、蒸気ライン102から矢印A1方向に力がかかる。このように、Oリング106は、厳しい環境に配置されており、劣化し易い。
【0063】
上記構成によれば、図2に示すように、給水ライン28と蒸気ライン30を隔てるシール部材74を複数設置し、シール部材74,74の間に外部に通じる連通路84が設けられている。これにより、1つのシール部材74が劣化した場合でも、蒸気Sまたは水Wが連通路84を通じて外部に排出されるので、給水ライン28または蒸気ライン30に直接混合されるのを防ぐことができる。
【0064】
また、シール部材74を2つ設けることで、給湯時と停止時でシール部材74に負荷される圧力の方向が変わらない。具体的には、一方のシール部材74には蒸気ライン30からの力のみがかかり、他方のシール部材74には給水ライン28からの力のみがかかる。したがって、シール部材74が劣化し難い。
【0065】
さらに、連通路84から蒸気Sまたは水Wが外部に排出されていることが目視で確認できるので、シール部材74の劣化をユーザに知らせることができる。その結果、速やかなシール部材74の交換が可能となり、長時間にわたって蒸気Sまたは水Wが漏れるのを回避できる。連通路84の出口84aに点検バルブ94を取り付ければ、点検者が点検バルブ94を操作することで、シール部材74の劣化を確認できる。これにより、周囲に人がいないときに漏れた蒸気Sや水Wが排出され続けるのを防ぎつつ、速やかなシール部材74の交換が可能となり、長時間にわたって蒸気Sまたは水Wが漏れるのを回避できる。
【0066】
また、図4の従来例では、サーモワックス110の応答が熱交換器2(図1)内の給水温度変化から遅れることがある。特に、給湯を停止した時は、給水Wの流れが無くなってしまうので、給湯時よりも応答が遅くなる。給湯停止時に蒸気調整弁100の閉弁が遅れると、給湯を停止した後も蒸気Sが熱交換器2(図1)へ送られ、熱交換器2内の給水Wが必要以上に加熱される。また、図4の従来例では、サーモワックス100の感温部100aが給水ライン104の底部にあり、給水Wが感温部100aに直接当たり難く、これも反応が遅れる一因となっていた。
【0067】
上記構成によれば、図2に示すように、補助加熱通路56により蒸気Sをサーモワックス38の感温部38a近傍に供給し、給湯停止時は補助加熱通路56の蒸気Sからサーモワックス38の感温部38aへ熱を伝えることで閉弁を早めることができる。特に、図3に示すように、サーモワックス38の感温部38aに向かって膨出する拡張部分72が設けられている。これにより、サーモワックス38の感温部38aと蒸気Sとの距離が近くなる。つまり、筒状部材64の底部70の厚さD1が小さくなり、熱伝導性の良い銅で筒状部材64が構成されることと相俟って、給湯停止時の蒸気調整弁4の閉弁を効果的に早めることができる。
【0068】
図2に示すように、サーモワックス38の感温部38aが、一次側給水ライン28aの軸心AX1および二次側給水ライン28bの軸心AX2よりも弁体側(上側)に位置している。これにより、給水ライン28の水Wがサーモワックス38の感温部38aに直接当たり易くなり、従来例のような反応遅れを回避できる。
【0069】
上述のように、拡張部分72を設けて、サーモワックス38の感温部38aと蒸気Sとの距離が近くなると、給湯時にサーモワックス38の感温部38aの温度が下がらず、開弁量(蒸気流量)が不足し、給湯温度が低下することが懸念される。
【0070】
上記構成では、図3に示すように、筒状部材64の底部70に補助給水通路69が設けられ、この補助給水通路69によりサーモワックス38の感温部38aに水が供給されている。これにより、給湯時にサーモワックス38の感温部38aの周囲の水温が十分に低下するので、給湯時に開弁操作が促進され、蒸気流量が不足するのを防ぐことができる。
【0071】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、給湯システムSYの蒸気調整弁4について説明したが、本発明は蒸気調整弁4以外の温度調整弁にも適用できる。その場合、駆動源を動作させる第1の流体は水でなくてもよく、流量が調整される第2の流体は蒸気でなくもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
4 蒸気調整弁(温度調整弁)
28 給水ライン(第1のライン)
30 蒸気ライン(第2のライン)
32 駆動源
34 弁体
74 シール部材
84 連通路
94 点検バルブ
SY 給湯システム
S蒸気(第2の流体)
W 水(第1の流体)
図1
図2
図3
図4