(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076606
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】取付ベース、および火災感知器本体の着脱方法
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240530BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240530BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240530BHJP
B64D 9/00 20060101ALI20240530BHJP
G08B 17/10 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
G08B17/00 G
B64C27/08
B64C39/02
B64D9/00
G08B17/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188234
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 紘之
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085CA30
5C085FA13
5G405AA01
5G405AB02
5G405CA55
5G405FA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マルチコプターで火災感知器本体を取付ベースに取り付けたり取り外したりする際に、火災感知器本体を回転させるために必要なトルクを得にくい点を解決するための取付ベースおよび火災感知器本体の着脱方法を提供する。
【解決手段】火災感知器の取付ベース1は、第1刃受け金具141と、第1刃受け金具よりも上方に設けられた第2刃受け金具と、外部に露出し、外部から電力の供給を受けられる通電端子145と、第1刃受け金具および第2刃受け金具に接続し、通電端子を通じて電力を受けるアクチュエータ143と、を有し、第1刃受け金具と第2刃受け金具の間に火災感知器本体の刃金具を挟んで火災感知器を固定可能であり、通電端子に電力が供給されることにより、アクチュエータが駆動して第1刃受け金具と第2刃受け金具が離間する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災感知器本体の取付ベースであって、
第1刃受け金具と、
前記第1刃受け金具よりも上方に設けられた第2刃受け金具と、
外部に露出し、外部から電流の供給を受けられる通電端子と、
前記第1刃受け金具および前記第2刃受け金具に接続し、前記通電端子を通じて電流を受けるアクチュエータと、を有し、
前記第1刃受け金具と前記第2刃受け金具の間に火災感知器本体の刃金具を挟んで火災感知器本体を取り付け可能であり、
前記通電端子に電流が供給されることにより、前記アクチュエータが駆動して前記第1刃受け金具と前記第2刃受け金具が離間することを特徴とする
取付ベース。
【請求項2】
前記第1刃受け金具は固定され、前記第2刃受け金具は前記アクチュエータにより、前記第1刃受け金具から離間する方向に移動可能であることを特徴とする
請求項1に記載された取付ベース。
【請求項3】
前記取付ベースは円形をなすものであり、
前記通電端子は、前記取付ベースの外周に複数設けられていることを特徴とする
請求項1に記載された取付ベース。
【請求項4】
火災感知器本体を搭載することができるマルチコプターと、
設置部に固定され、前記火災感知器本体を取り付け可能な取付ベースと、を用い、
前記マルチコプターは、電流を供給する接触子を有し、
前記取付ベースは、
第1刃受け金具と、
前記第1刃受け金具よりも上方に設けられた第2刃受け金具と、
外部に露出し、外部から電流の供給を受けられる通電端子と、
前記第1刃受け金具および前記第2刃受け金具に接続し、前記通電端子を通じて電流を受けるアクチュエータと、を有し、
前記マルチコプターは、前記取付ベースが設置される位置まで飛行し、
前記マルチコプターの前記接触子から前記通電端子を介して前記取付ベースに電流を供給することにより、前記アクチュエータが駆動して前記第1刃受け金具と前記第2刃受け金具が離間し、その離間によりできた空間に前記火災感知器本体の刃金具を挿入したり、前記刃金具を抜き去ったりすることを可能としたことを特徴とする
火災感知器本体の着脱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器の取付ベース、および火災感知器本体の着脱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
煙感知器等の火災感知器は、天井等に予め固定された取付ベースに火災感知器本体を取り付けて、建物に設置される。また、取付ベースに取り付けられた火災感知器本体は、検査等を行うために取り外される。特許文献1の火災感知器では、火災感知器本体である感知器本体を取付ベースであるベース本体に取り付けたり取り外したりするために、ベース本体に刃受け金具と接触バネを備えている。
【0003】
図1に、特許文献1のように天井板Cに取り付ける、従来例の火災感知器を示す。
図1(a)は、天井板Cの穴に取り付けた取付ベース8の断面図と、取付ベース8に取り付ける前の火災感知器本体2を示す。また、
図1(b)は、取付ベース8の断面図と、取付ベース8に取り付けられた火災感知器本体2を示す。
【0004】
火災感知器は、天井板Cに予め固定される取付ベース8と、取付ベース8に取り外し可能に取り付けられる火災感知器本体2から構成される。取付ベース8は、取付ベース本体81と、取付ベース本体81の周りに設けられた鍔部82と、取付ベース本体81の上部に設けられた固定部材89を備える。本明細書では、取付ベース等が天井板Cに取り付けられた状態で上下を記載する。固定部材89は、取付ベース本体81の裏側に設けられた押さえ片891と、角形雌ネジ892と、押さえ片891を貫通して角形雌ネジ892にねじ込まれた雄ネジ893とを備える。押さえ片891と角形雌ネジ892と雄ネジ893は、2組設けられている。
【0005】
取付ベース8を天井板Cに固定する際には、押さえ片891の両端が取付ベース本体81の裏側に立った状態で、天井板Cに開けた穴に固定部材89と取付ベース本体81を差し込む。そして、雄ネジ893を回すことにより、角形雌ネジ892と裏突部811の間で押さえ片891を締め込んで、押さえ片891を拡げる。拡がった押さえ片891の外側端と鍔部82との間に天井板Cを挟んで、
図1(a)に示すように天井板Cに取付ベース8が固定される。
【0006】
火災感知器本体2は作業者の手で保持され、
図1(a)に示すように下方から取付ベース8に近づけられる。そして、嵌合空間83に差し入れたのち、回転させることにより、
図1(b)に示すように取付ベース8に取り付けられる。また、
図1(b)の取り付け状態において、作業者が火災感知器本体2を取り付け時と逆方向に回転させることにより、火災感知器本体2を取付ベース8から取り外すことができる。
【0007】
図2に、天井板Cに取り付けた取付ベース8の下面図を示す。取付ベース8の嵌合空間83の中には、2組の接触バネ841と刃受け金具842が設けられている。刃受け金具842は接触バネ841の裏側に位置している。取付ベース8の周囲は天井板Cであり、押さえ片891は天井板Cの上側にあるため、
図2では見えていない。接触バネ841は基部841aが刃受け金具842に固定され、端部841bは刃受け金具842と逆方向へ折れ曲がっている。端部841bは刃受け金具842の方向へ付勢されている。
【0008】
図3に火災感知器本体2の上面図を示す。火災感知器本体2には、感知器背面板21の対向する位置に2つの刃金具22が取り付けられている。
図4に、
図3で示した刃金具22の拡大図を示す。
図4(a)は、刃金具22の上面図であり、
図4(b)は、刃金具22の側面図である。刃金具22は、一枚の導体板を折り曲げて接触部221、中間部222、固定部223とした構成となっている。接触部221と中間部222の間は一方向に折り曲げられ、中間部222と固定部223の間は逆方向に折り曲げられている。固定部223には、固定ネジ孔224が設けられている。固定ネジ孔224にネジを螺入することにより固定部223を感知器背面板21に固定して、刃金具22が感知器背面板21に固定される。
【0009】
火災感知器本体2を取付ベース8に取り付ける際には、火災感知器本体2を嵌合空間83のなかで回転させることにより、刃金具22の接触部221が、取付ベース8の接触バネ841と刃受け金具842の間に差し込まれる。そして、接触部221が接触バネ841と刃受け金具842の間に挟持される。これにより、火災感知器本体2が取付ベース8に取り付けられると共に、導電性の刃金具22と接触バネ841と刃受け金具842により電気的に接続される。また、火災感知器本体2を取り付けの際と逆方向に回転させることにより、刃金具22が接触バネ841と刃受け金具842の間から抜けて、火災感知器本体2を取付ベース8から取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
取付ベースへの火災感知器本体の取り付けや取り外しは、作業者が火災感知器本体を手で持って回転させることにより行われる。一般のオフィスビル等でこれらの作業を行う場合には、脚立を用いればよいが、天井が高いアトリウムや劇場等の天井に設けた火災感知器に対してこれらの作業を行うためには、高い足場を組むなどする必要があり、高コストとなる。そこで、マルチコプタータイプのドローンを用いることが考えられる。
【0012】
火災感知器本体の刃金具は取付ベースの刃受け金具と接触バネの間に挟まれており、火災感知器本体を回転させるためにはある程度のトルクを要する。しかし、マルチコプターは、旋回操縦することによりトルクを発生させることができるが、飛行しているために刃金具が挟まれた火災感知器本体を回転させるために十分なトルクを得ることが難しい。
【0013】
本発明は、マルチコプターで火災感知器本体を取付ベースに取り付けたり取り外したりする際に、火災感知器本体を回転させるために必要なトルクを得にくい点を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態における取付ベースは、火災感知器の取付ベースであって、第1刃受け金具と、前記第1刃受け金具よりも上方に設けられた第2刃受け金具と、外部に露出し、外部から電力の供給を受けられる通電端子と、前記第1刃受け金具および前記第2刃受け金具に接続し、前記通電端子を通じて電力を受けるアクチュエータと、を有し、前記第1刃受け金具と前記第2刃受け金具の間に火災感知器の刃金具を挟んで火災感知器を固定可能であり、前記通電端子に電力が供給されることにより、前記アクチュエータが駆動して前記第1刃受け金具と前記第2刃受け金具が離間することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、マルチコプターを利用して高所に設置された取付ベースから火災感知器本体を取り外したり、火災感知器本体を取付ベースに取り付けたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図9】実施例1において、マルチコプターが火災感知器の近傍を飛行する状況を示す図。
【
図10】実施例1において、マルチコプターが取付ベースに接続した状況を示す図。
【
図11】実施例1において、取付ベースの近傍を、火災感知器本体を搭載したマルチコプターが飛行する状況を示す図。
【
図12】実施例2の取付ベースにおける取付部材の刃受け金具近傍を示す図。
【
図13】実施例3において、取付部材の近傍を、火災感知器本体を搭載したマルチコプターが飛行する状況を示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例0017】
前述のとおり、本明細書では、取付ベース等が天井板Cに取り付けられた状態で上下を記載する。
図5に、本発明の実施形態における取付ベース1の下面図を示す。取付ベース1は、取付ベース本体11と、その外側に拡がる円錐台の側面形状をした鍔部12を備えている。取付ベース本体11の内側は、火災感知器本体2を嵌合するための空間である嵌合空間13となっている。この火災感知器本体2は、
図3、4で示した従来例の火災感知器本体2と同じものである。
【0018】
取付ベース本体11には、嵌合空間13の上部に、火災感知器本体2を取り付けるための取付部材14が設けられている。取付部材14は、第1刃受け金具141と、第2刃受け金具142と、アクチュエータ143と、離間部材144と、外部に露出した通電端子145を備えている。第2刃受け金具142は第1刃受け金具141の上方に設けられており、
図5では隠れた位置にあるため記載されていない。取付ベース1は円形をなしており、通電端子145は、取付ベース1の外周に位置する鍔部12の対向する2箇所に幅を有した円弧状に設けられている。鍔部12には、通電端子145の他にLEDランプ15が設けられている。実施例1のアクチュエータ143は、直線型のソレノイドアクチュエータである。
【0019】
取付ベース1は、従来例の取付ベース8の固定部材89と同様に、固定部材19を備えている。固定部材19の雄ネジ193が2箇所に設けられている。また、角形雌ネジ192は取付ベース本体11の裏側に隠れている。押さえ片191は記載を省略している。
【0020】
図6に、実施例1における取付部の第1方向拡大図を示す。第1方向は、
図5のAの矢印の方向である。
図5で手前側を下方としてAの方向を見ると、
図6のように離間部材144が左側になる。また、
図7に、実施例1における取付部の第2方向拡大図を示す。第2方向は、
図5のBの矢印の方向である。
図6、と
図7(a)は、取付ベース1の第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間に、火災感知器本体2の刃金具22における接触部221が挟まれた状態を示している。また
図7(b)は、第2刃受け金具142と刃金具22との間に隙間が生じた状態を示し、
図7(c)は、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間から刃金具22が抜けた状態を示す。
【0021】
第1刃受け金具141は固定され、第2刃受け金具142はアクチュエータ143が駆動することにより、第1刃受け金具141から離間する方向に移動可能である。刃金具22を上に乗せるために、第1刃受け金具141は厚手の金属からなり、刃受けのベースとなっている。刃受けのベースと言う意味では、従来例の刃受け金具842に相当する。また、第2刃受け金具142は弾性を有した板バネであって、従来例の接触バネ841に相当する。実施例1では、従来例の接触バネ841と刃受け金具842が上下反転したような構成となっている。このようにすることによって、第2刃受け金具142が薄くて柔軟性が大きくても、第1刃受け金具141の上に刃金具22を安定して載置することができる。
【0022】
また、
図6、7には、先端144bの近傍がテーパー面144cとなった離間部材144が記載されている。
図6に示すように、離間部材144の基部144aは、アクチュエータ143のプランジャー143aの先端に固定されている。そして、離間部材144の先端144bおよびその近傍のテーパー面144cは、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間に差し込まれている。
【0023】
通電端子145からアクチュエータ143に電流が供給されると、プランジャー143aが
図6のPの方向に移動する。そうすると、離間部材144の先端144bがPの方向に押し出され、テーパー面144cが第2刃受け金具142をRの方向に押し上げる。
図7(a)は、プランジャー143aがPの方向へ移動する前の状態を示し、
図7(b)はプランジャー143aがPの矢印の方向へ移動した後の状態を示す。
図7(b)では、プランジャー143aの移動により離間部材144が第2刃受け金具142をRの矢印の方向へ押し上げて、刃金具22の接触部221と第2刃受け金具142の間に隙間が生じている。
【0024】
これにより、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間に挟まれていた刃金具22は
図7(b)のMの矢印の方向へ自由に移動することができ、取付ベース1に取り付けられていた火災感知器本体2を容易に回転して取り外すことができる。
【0025】
火災感知器本体2を取り外してアクチュエータ143への電流が途絶えると、プランジャー143aは
図6に示すPの矢印とは反対方向へ戻るような構造になっている。これにより、離間部材144の大部分が第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間から抜けて、
図7(c)の状態となる。
【0026】
火災感知器本体2を取付ベース1に取り付ける際には、
図7(c)の状態でアクチュエータ143に電流が供給される。そうすると、プランジャー143aがPの矢印の方向へ進むことにより、離間部材144によって第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間を開く。これにより、その場でドローンが僅かに旋回することで第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間に容易に刃金具22を差し込むことができる。
【0027】
実施例1では、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間に火災感知器本体2の刃金具22を挟んで、火災感知器本体2を取り付け可能である。そして、通電端子145に電流が供給されることにより、アクチュエータ143が駆動して第1刃受け金具141と第2刃受け金具142が離間する。
【0028】
(取付ベース1の回路構成)
図8に、実施例1における取付ベース1の回路構成を示す。2つの通電端子145は、整流器146を介して2つのアクチュエータ143に接続している。通電端子145へ電圧が供給されると、2つの通電端子145のどちらの電圧が高くても整流器146により整流される。そして、アクチュエータ143に電流が流され、プランジャー143aが突出する。このようにして、2つの通電端子145の間に電流が供給されることにより、どちらが高電圧であっても、2つのアクチュエータ143からプランジャー143aが突出する。また、通電端子145の間の電流がなくなると、アクチュエータ143のプランジャー143aが後退する。
【0029】
また、整流器146の出力は
図5に示したLEDランプ15に接続している。そのため、アクチュエータ143に電流が流されて第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間が開いている間は、LEDランプ15が点灯する。LEDランプ15の点灯状態を視認することにより、作業者は、通電が開始され、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間が開いていること、または通電がなされず、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間が閉じていることを判断することができる。
【0030】
(マルチコプター3による火災感知器本体2の着脱)
図9に、実施例1における天井板Cに設けられた火災感知器と、火災感知器の近傍を飛行するマルチコプター3を示す。火災感知器は、設置部である天井板Cに固定された取付ベース1と、取付ベース1に取り外し可能に取り付けられた火災感知器本体2からなる。取付ベース1は、固定部材19により、天井板Cに固定されている。固定部材19は、押さえ片191、角形雌ネジ192、雄ネジ193を2つずつ備えている。そして、雄ネジ193を回すことにより、角形雌ネジ192と裏突部111の間で押さえ片191を締め込んで、押さえ片191を拡げ、拡がった押さえ片191の両端と鍔部12との間に天井板Cを挟んで取付ベース1が固定されている。
【0031】
ドローンの一種であるマルチコプター3は、複数のプロペラ31を備えており、上昇、下降や左右への移動だけでなく、ホバーリングや左右への旋回を行うことができる。マルチコプター3は、プロペラ31を回転させるモーター32、モーター32の回転速度を制御するESC33、制御部34、送受信部35、バッテリー36を備えている。制御部34は、複数のモーター32の回転数を制御することにより、ホバーリング、上昇、下降、左右への移動、左右への旋回といったマルチコプター3の飛行制御を行う。
【0032】
実施例1のマルチコプター3は、上部に感知器保持部37、一対の接触バネ38、カメラ39を備えている。感知器保持部37は、上部が窪んだ円柱状部材であり、上部の窪みに火災感知器本体2を載置することができる。感知器保持部37の上部はすり鉢状の窪みとなっており、滑り止めのため、内部にゴムパッド(図示せず)を備えている。感知器保持部37の両側には、上方へ向けて一対の接触バネ38が設けられている。接触バネ38の先端近傍には、通電端子145と接触する接触子381が形成され、一対の接触子381の間には所定の電圧が付与されている。また、カメラ39は、上方へ向けて感知器保持部37の側面に取り付けられている。
【0033】
マルチコプター3による火災感知器本体2の着脱方法は以下の通りである。コントローラー(図示せず)から送受信部35へ無線の操縦信号を送信することにより、制御部34の制御によって、マルチコプター3は飛行制御される。また、カメラ39からの映像は制御部34を介して送受信部35へ送られ、無線によって映像信号が表示装置(図示せず)へ送信される。作業者は、目視や表示装置の表示を見ることを行いながら、コントローラーを操縦してマルチコプター3を飛行制御することができる。カメラ39は上方を向いているため、マルチコプター3が取付ベース1に接近して微妙な位置調整等を行う際に表示装置の表示が有用である。また、カメラ39による映像は、マルチコプター3の自動操縦に用いることもできる。
【0034】
高所の天井板Cに設置した取付ベース1に取り付けられている火災感知器本体2を取り外す場合は、
図9のように、天井板Cに取り付けられた火災感知器に向けてマルチコプター3を飛行させる。そして、
図10のように、マルチコプター3の接触子381を取付ベース1の通電端子145に接触させる。通電端子145は、
図5に記載したように取付ベース1の鍔部12において幅を有した円弧状に設けられており、2つの通電端子145が対向する位置に離間して配置されている。実施例1のマルチコプター3における2つの接触子381は、2つの通電端子145に接触する位置に配置されている。
【0035】
マルチコプター3を適切な旋回位置として、感知器保持部37を火災感知器本体2に当接させると、
図10に示すように2つの接触子381が2つの通電端子145に接触する。2つの接触子381の間には、電位差が生じるように電圧が印加されている。そして、接触子381が通電端子145に接触すると、マルチコプター3の接触バネ38から取付ベース1の通電端子145に電流が流れる。そうすると、
図8に示した整流器146の機能により、電流が整流されて2つのアクチュエータ143はプランジャー143aを突出させる。高電圧の接触子381が、2つの通電端子145のどちらに接触しても、整流器146の機能によりプランジャー143aを突出させる方向の電流を生じさせる。通電端子145に接触している間のみ電流が流れる構成としているため、バッテリー36の消費を抑えることができる。
【0036】
突出したプランジャー143aは、
図7(b)に示したように離間部材144のテーパー面144cが第2刃受け金具142を押し上げて、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間隔を拡げる。これにより、刃金具22の接触部221が第1刃受け金具141と第2刃受け金具142から開放される。
【0037】
図7(b)のように、接触部221が開放された状態でマルチコプター3を旋回させると、火災感知器本体2は感知器保持部37の中のゴムパッドによる滑り止めの作用によって、一緒に回転する。そして、火災感知器本体2の回転により、小さいトルクであっても、間隔が開いた第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間から、Mの矢印の方向へ刃金具22を容易に抜くことができる。マルチコプター3が旋回して刃金具22が第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間から抜けるまでの間、
図10に示すように、2つの接触子381は円弧状の通電端子145に接触しながら移動する。接触子381と通電端子145が接触している間は、アクチュエータ143へ電流が流れ続けて、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間はマルチコプター3が旋回している時にも開いたままとなる。
【0038】
マルチコプター3がさらに旋回して、接触子381のいずれか一方が通電端子145から外れると、電流が途絶え、プランジャー143aが元の位置に戻るような構造になっている。そして、離間部材144が
図6のPの矢印の反対方向へ引かれて、
図7(c)のように第1刃受け金具141と第2刃受け金具142が接近又は接した状態となる。また、マルチコプター3の下降により、接触子381のいずれか一方が通電端子145から外れても、
図7(c)の状態となる。
【0039】
このようにして、
図11のように、マルチコプター3の感知器保持部37に火災感知器本体2を収容して、高所に取り付けられている取付ベース1から火災感知器本体2を取りはずすことができる。火災感知器本体2を取り外した後に、マルチコプター3を下降させて火災感知器本体2を回収する。
【0040】
また、取付ベース1に火災感知器本体2を取り付ける場合には、取り外しの場合の逆の工程を行えばよい。まず、マルチコプター3の感知器保持部37に火災感知器本体2を搭載して、マルチコプター3を上昇させ、
図11のように取付ベース1に接近させる。そして、
図10のように、火災感知器本体2を取付ベース1の嵌合空間13の中に収容する。これにより、2つの接触子381が通電端子145に接触し、電流が供給される。そうすると、アクチュエータ143のプランジャー143aが突出して、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間隔をあける。
【0041】
マルチコプター3を、取り外しの時と逆に旋回させると、火災感知器本体2も一緒に回転する。そして、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間隔が開いているため、小さいトルクであっても、
図7(b)のように、刃金具22の接触部221が第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間に入る。この時、2つの接触子381は2つの通電端子145に接触したまま摺動するため、第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間は開いたままとなる。
【0042】
マルチコプター3を下降させると、
図6、
図7(a)のように、刃金具22の接触部221が第1刃受け金具141と第2刃受け金具142の間に挟まれた状態となる。これにより、火災感知器本体2が取付ベース1に取り付けられるとともに電気的に導通する。
【0043】
以上のように、マルチコプター3は、取付ベース1が設置される位置まで飛行する。そして、マルチコプター3の接触子381から通電端子145を介して取付ベース1に電流を供給することにより、アクチュエータ143が駆動して第1刃受け金具141と第2刃受け金具142が離間する。この状態でマルチコプター3を旋回させることにより、その離間によりできた空間に火災感知器本体2の刃金具22を挿入したり、刃金具22を抜き去ったりすることが可能である。
実施例2の第1刃受け金具441と第2刃受け金具442は、自身のバネ性により先端部441bと先端部442bが開こうとしている。そして、挟み部材444は、2本の固定された円柱からなり、第1刃受け金具441の傾斜部441cと第2刃受け金具442の傾斜部442cを、2本の挟み部材444により外側から押さえている。