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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076607
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】人力駆動車用チェーン
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/06 20060101AFI20240530BHJP
   F16G 13/02 20060101ALI20240530BHJP
   B62M 9/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
F16G13/06 E
F16G13/02 F
F16G13/06 A
F16G13/06 C
B62M9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188236
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢守 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】荒 亮多
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖
(57)【要約】
【課題】劣化を抑制する人力駆動車用チェーンを提供する。
【解決手段】人力駆動車用チェーンは、チェーンピンと、保護部材とを備える。チェーンピンは、ピン中心軸心、第1ピン端面、および、ピン中心軸心に関するピン軸方向において第1ピン端面とは反対側に配置される第2ピン端面、を有する。保護部材は、人力駆動車用チェーンの組立状態において、第1ピン端面、および、第2ピン端面の少なくとも一方を覆うように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用チェーンであって、
ピン中心軸心、第1ピン端面、および、前記ピン中心軸心に関するピン軸方向において前記第1ピン端面とは反対側に配置される第2ピン端面、を有するチェーンピンと、
前記人力駆動車用チェーンの組立状態において、前記第1ピン端面、および、前記第2ピン端面の少なくとも一方を覆うように構成される保護部材と、を備える人力駆動車用チェーン。
【請求項2】
前記人力駆動車用チェーンの組立状態において前記チェーンピンが通過するように構成されるブッシュ開口を有するブッシュ、をさらに備える、請求項1に記載の人力駆動車用チェーン。
【請求項3】
前記保護部材は、前記第1ピン端面、および、前記第2ピン端面の両方を覆うように構成される、請求項1または2に記載の人力駆動車用チェーン。
【請求項4】
第1アウターリンクプレート、および、第2アウターリンクプレート、をさらに備え、
前記第1アウターリンクプレートは、
第1アウターリンク中心軸心を有する第1アウターリンク開口を含む第1アウターリンクエンド部と、
前記第1アウターリンク中心軸心と平行に延びる第2アウターリンク中心軸心を有する第2アウターリンク開口を含む第2アウターリンクエンド部と、
前記第1アウターリンクエンド部、および、前記第2アウターリンクエンド部を連結する第1アウターリンク中間部と、
第1アウターリンク面と、
前記第1アウターリンク中心軸心に関する第1アウターリンク軸方向において前記第1アウターリンク面とは反対側に配置される第2アウターリンク面と、を含み、
前記第2アウターリンクプレートは、
第3アウターリンク中心軸心を有する第3アウターリンク開口を含む第3アウターリンクエンド部と、
前記第3アウターリンク中心軸心と平行に延びる第4アウターリンク中心軸心を有する第4アウターリンク開口を含む第4アウターリンクエンド部と、
前記第3アウターリンクエンド部、および、前記第4アウターリンクエンド部を連結する第2アウターリンク中間部と、
前記人力駆動車用チェーンの組立状態において、前記第1アウターリンク軸方向において前記第1アウターリンクプレートの前記第1アウターリンク面に向くように構成される第3アウターリンク面と、
前記第3アウターリンク中心軸心に関する第2アウターリンク軸方向において前記第3アウターリンク面とは反対側に配置される第4アウターリンク面と、を含み、
前記保護部材は、前記第2アウターリンク面、および、前記第4アウターリンク面の少なくとも一方を少なくとも部分的に覆うように構成される、請求項1または2に記載の人力駆動車用チェーン。
【請求項5】
前記保護部材は、前記第1ピン端面、および、前記第2ピン端面の少なくとも一方に貼付されるシール、または、前記第1ピン端面、および、前記第2ピン端面の少なくとも一方に塗布される塗膜である、請求項1または2に記載の人力駆動車用チェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用チェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自転車用チェーンに関する技術が開示されている。特許文献1のチェーンは、交互に連続する外側のリンクと内側のリンクとを有する。特許文献1のチェーンでは、外側のリンクの接続端部と内側のリンクの接続端部とがチェーンピンによって接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-105438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、劣化を抑制する人力駆動車用チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従う人力駆動車用チェーンは、チェーンピンと、保護部材とを備える。チェーンピンは、ピン中心軸心、第1ピン端面、および、ピン中心軸心に関するピン軸方向において第1ピン端面とは反対側に配置される第2ピン端面、を有する。保護部材は、人力駆動車用チェーンの組立状態において、第1ピン端面、および、第2ピン端面の少なくとも一方を覆うように構成される。
【0006】
第1側面の人力駆動車用チェーンによれば、第1ピン端面、および、第2ピン端面の少なくとも一方の劣化を抑制できる。たとえば、人力駆動車用チェーンは、第1ピン端面、および、第2ピン端面の少なくとも一方における錆の発生を抑制できる。たとえば、チェーンピンには、錆の発生を抑制するためのコーティング層が形成されている。人力駆動車用チェーンが組み立てられ、チェーンピンが組立器具によって圧入される場合、組立器具との接触によってコーティング層が剥がれるおそれがある。保護部材が、コーティング層が剥がれた箇所を覆うことによって、人力駆動車用チェーンは、チェーンピンにおける錆の発生を抑制できる。
【0007】
第1側面に従う第2側面の人力駆動車用チェーンは、ブッシュをさらに備える。ブッシュは、人力駆動車用チェーンの組立状態においてチェーンピンが通過するように構成されるブッシュ開口を有する。
【0008】
第2側面の人力駆動車用チェーンによれば、ブッシュに挿入されるチェーンピンにおける第1ピン端面、および、第2ピン端面の少なくとも一方における劣化を抑制できる。たとえば、人力駆動車用チェーンは、ブッシュに挿入されるチェーンピンにおける第1ピン端面、および、第2ピン端面の少なくとも一方における錆の発生を抑制できる。
【0009】
第1または第2側面に従う第3側面の人力駆動車用チェーンにおいて、保護部材は、第1ピン端面、および、第2ピン端面の両方を覆うように構成される。
【0010】
第3側面の人力駆動車用チェーンによれば、保護部材によってチェーンピンの両端面における劣化を抑制できる。たとえば、人力駆動車用チェーンは、チェーンピンの両端面における錆の発生を抑制できる。
【0011】
第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の人力駆動車用チェーンにおいて、第1アウターリンクプレート、および、第2アウターリンクプレート、をさらに備える。第1アウターリンクプレートは、第1アウターリンクエンド部と、第2アウターリンクエンド部と、第1アウターリンク中間部と、第1アウターリンク面と、第2アウターリンク面と、を含む。第1アウターリンクエンド部は、第1アウターリンク中心軸心を有する第1アウターリンク開口を含む。第2アウターリンクエンド部は、第1アウターリンク中心軸心と平行に延びる第2アウターリンク中心軸心を有する第2アウターリンク開口を含む。第1アウターリンク中間部は、第1アウターリンクエンド部、および、第2アウターリンクエンド部を連結する。第2アウターリンク面は、第1アウターリンク中心軸心に関する第1アウターリンク軸方向において第1アウターリンク面とは反対側に配置される。第2アウターリンクプレートは、第3アウターリンクエンド部と、第4アウターリンクエンド部と、第2アウターリンク中間部と、第3アウターリンク面と、第4アウターリンク面と、を含む。第3アウターリンクエンド部は、第3アウターリンク中心軸心を有する第3アウターリンク開口を含む。第4アウターリンクエンド部は、第3アウターリンク中心軸心と平行に延びる第4アウターリンク中心軸心を有する第4アウターリンク開口を含む。第2アウターリンク中間部は、第3アウターリンクエンド部、および、第4アウターリンクエンド部を連結する。第3アウターリンク面は、人力駆動車用チェーンの組立状態において、第1アウターリンク軸方向において第1アウターリンクプレートの第1アウターリンク面に向くように構成される。第4アウターリンク面は、第3アウターリンク中心軸心に関する第2アウターリンク軸方向において第3アウターリンク面とは反対側に配置される。保護部材は、第2アウターリンク面、および、第4アウターリンク面の少なくとも一方を少なくとも部分的に覆うように構成される。
【0012】
第4側面の人力駆動車用チェーンによれば、第1アウターリンクプレート、および、第2アウターリンクプレートにおいて外側に配置される面の少なくとも一部が保護部材によって保護される。これにより、人力駆動車用チェーンは、第1アウターリンクプレート、および、第2アウターリンクプレートの少なくとも一方の劣化を抑制できる。たとえば、人力駆動車用チェーンは、第1アウターリンクプレート、および、第2アウターリンクプレートの少なくとも一方における錆の発生を抑制できる。
【0013】
第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面の人力駆動車用チェーンにおいて、保護部材は、第1ピン端面、および、第2ピン端面の少なくとも一方に貼付されるシール、または、第1ピン端面、および、第2ピン端面の少なくとも一方に塗布される塗膜である。
【0014】
第5側面の人力駆動車用チェーンによれば、シールの貼付、または、塗膜の塗布による簡易な作業によって、チェーンピンの劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の制御装置によれば、人力駆動車用チェーンの劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る人力駆動車の側面図である。
図2図2は、実施形態に係る人力駆動車用チェーンの一部を示す斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、図2のVBから見た正面図である。
図5図5は、変形例に係る人力駆動車用チェーンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示されるように、本発明の実施形態による人力駆動車2は、フロントスプロケット組立体4と、リアスプロケット組立体6と、人力駆動車用チェーン8とを、有する。人力駆動車用チェーン8は、フロントスプロケット組立体4、および、リアスプロケット組立体6に架け渡される。リアスプロケット組立体6には、人力駆動車用チェーン8を介して、フロントスプロケット組立体4からの駆動力が伝達される。
【0018】
図2、および、図3に示されるように、人力駆動車用チェーン8は、第1インナーリンクプレート12、および、第2インナーリンクプレート14を備える。人力駆動車用チェーン8は、第1アウターリンクプレート16、および、第2アウターリンクプレート18をさらに備える。人力駆動車用チェーン8は、ブッシュ20、および、チェーンピン22をさらに備える。人力駆動車用チェーン8は、ローラ24をさらに備える。人力駆動車用チェーン8は、保護部材26を備える。図2、および、図3においては、説明のため、一部の構成が省略される。
【0019】
第1インナーリンクプレート12は、第1インナーリンクエンド部32と、第2インナーリンクエンド部34と、第1インナーリンク中間部36とを含む。第1インナーリンクエンド部32は、第1インナーリンク開口32aを含む。第1インナーリンク開口32aは、第1インナーリンク中心軸心AX1を有する。
【0020】
第2インナーリンクエンド部34は、第2インナーリンク開口34aを含む。第2インナーリンク開口34aは、第2インナーリンク中心軸心AX2を有する。第2インナーリンク中心軸心AX2は、第1インナーリンク中心軸心AX1に平行に延びる。
【0021】
第1インナーリンク中間部36は、第1インナーリンクエンド部32と第2インナーリンクエンド部34とを連結する。
【0022】
第1インナーリンクプレート12は、さらに、第1インナーリンク面12aと、第2インナーリンク面12bとを含む。第2インナーリンク面12bは、第1インナーリンク中心軸心AX1に関する第1インナーリンク軸方向DAにおいて第1インナーリンク面12aと反対側に配置される。
【0023】
第2インナーリンクプレート14は、第3インナーリンクエンド部42と、第4インナーリンクエンド部44と、第2インナーリンク中間部46とを含む。第3インナーリンクエンド部42は、第3インナーリンク開口42aを含む。第3インナーリンク開口42aは、第3インナーリンク中心軸心AX3を有する。
【0024】
第4インナーリンクエンド部44は、第4インナーリンク開口44aを含む。第4インナーリンク開口44aは、第4インナーリンク中心軸心AX4を有する。第4インナーリンク中心軸心AX4は、第3インナーリンク中心軸心AX3に平行に延びる。
【0025】
第2インナーリンク中間部46は、第3インナーリンクエンド部42と第4インナーリンクエンド部44とを連結する。
【0026】
第2インナーリンクプレート14は、さらに、第3インナーリンク面14aと、第4インナーリンク面14bとを含む。第3インナーリンク面14aは、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、第1インナーリンク軸方向DAにおいて第1インナーリンクプレート12の第1インナーリンク面12aを向くように構成される。第4インナーリンク面14bは、第3インナーリンク中心軸心AX3に関する第2インナーリンク軸方向DBにおいて第3インナーリンク面14aとは反対側に配置される。
【0027】
第1アウターリンクプレート16は、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、他のインナーリンクプレート、または、他のアウターリンクプレートを介さずに第1インナーリンクプレート12に隣接するように構成される。
【0028】
第1アウターリンクプレート16は、第1アウターリンクエンド部52と、第2アウターリンクエンド部54と、第1アウターリンク中間部56とを含む。第1アウターリンクエンド部52は、第1アウターリンク開口52aを含む。第1アウターリンク開口52aは、第1アウターリンク中心軸心BX1を有する。
【0029】
第2アウターリンクエンド部54は、第2アウターリンク開口54aを含む。第2アウターリンク開口54aは、第2アウターリンク中心軸心BX2を有する。第2アウターリンク中心軸心BX2は、第1アウターリンク中心軸心BX1に平行に延びる。
【0030】
第1アウターリンク中間部56は、第1アウターリンクエンド部52と第2アウターリンクエンド部54とを連結する。
【0031】
第1アウターリンクプレート16は、さらに、第1アウターリンク面16aと、第2アウターリンク面16bとを含む。第2アウターリンク面16bは、第1アウターリンク中心軸心BX1に関する第1アウターリンク軸方向DCにおいて第1アウターリンク面16aと反対側に配置される。
【0032】
第2アウターリンクプレート18は、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、他のインナーリンクプレート、または、他のアウターリンクプレートを介さずに第2インナーリンクプレート14に隣接するように構成される。
【0033】
第2アウターリンクプレート18は、第3アウターリンクエンド部62と、第4アウターリンクエンド部64と、第2アウターリンク中間部66とを含む。第3アウターリンクエンド部62は、第3アウターリンク開口62aを含む。第3アウターリンク開口62aは、第3アウターリンク中心軸心BX3を有する。
【0034】
第4アウターリンクエンド部64は、第4アウターリンク開口64aを含む。第4アウターリンク開口64aは、第4アウターリンク中心軸心BX4を有する。第4アウターリンク中心軸心BX4は、第3アウターリンク中心軸心BX3に平行に延びる。
【0035】
第2アウターリンク中間部66は、第3アウターリンクエンド部62と第4アウターリンクエンド部64とを連結する。
【0036】
第2アウターリンクプレート18は、さらに、第3アウターリンク面18aと、第4アウターリンク面18bとを含む。第3アウターリンク面18aは、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、第1アウターリンク軸方向DCにおいて第1アウターリンクプレート16の第1アウターリンク面16aに向くように構成される。
【0037】
第4アウターリンク面18bは、第3アウターリンク中心軸心BX3に関する第2アウターリンク軸方向DDにおいて第3アウターリンク面18aと反対側に配置される。
【0038】
ブッシュ20は、第1ブッシュ72、および、第2ブッシュ74を含む。第1ブッシュ72は、第1ブッシュ開口72aを有する。第1ブッシュ72は、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、第1インナーリンク開口32a、および、第3インナーリンク開口42aに挿入されるように構成される。第1ブッシュ開口72aは、人力駆動車用チェーン8の組立状態においてチェーンピン22(第1チェーンピン82)が通過するように構成される。
【0039】
第2ブッシュ74は、第2ブッシュ開口74aを有する。第1ブッシュ72は、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、第2インナーリンク開口34a、および、第4インナーリンク開口44aに挿入されるように構成される。第2ブッシュ開口74aは、人力駆動車用チェーン8の組立状態においてチェーンピン22(第2チェーンピン84)が通過するように構成される。
【0040】
チェーンピン22は、略円柱状に形成される。チェーンピン22には、特殊鋼の表面に耐摩耗性を向上させるために硬化処理が施される。硬化処理は、防錆処理を含む。チェーンピン22は、第1チェーンピン82、および、第2チェーンピン84を含む。
【0041】
第1チェーンピン82は、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、第1アウターリンク開口52a、および、第3アウターリンク開口62aに挿入され、かつ、第1ブッシュ開口72aを通るように構成される。第1チェーンピン82は、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、第1アウターリンク開口52a、および、第3アウターリンク開口62aに圧入される。
【0042】
第1チェーンピン82は、第1円柱部92と、第1突出部94と、第2突出部96とを含む。第1チェーンピン82が第1アウターリンク開口52a、および、第3アウターリンク開口62aに圧入されていない状態において、第1円柱部92の直径は、第1アウターリンク開口52aの直径よりも僅かに大きい。第1チェーンピン82が第1アウターリンク開口52a、および、第3アウターリンク開口62aに圧入されていない状態において、第1円柱部92の直径は、第3アウターリンク開口62aの直径よりも僅かに大きい。第1チェーンピン82は、第1ピン中心軸心CX1を有する。第1ピン中心軸心CX1は、第1円柱部92の中心軸心である。
【0043】
第1突出部94は、第1円柱部92の一方の端部から、第1ピン中心軸心CX1に関するピン軸方向DEに突出するように構成される。第1突出部94は、第1円柱部92の径方向において、外側に広がるように構成される。第1突出部94は、第1アウターリンクプレート16の第1アウターリンクエンド部52に係合する。
【0044】
第2突出部96は、第1円柱部92の他方の端部から、第1ピン中心軸心CX1に関するピン軸方向DEに突出するように構成される。第2突出部96は、第1ピン中心軸心CX1に関するピン軸方向DEにおいて、第1突出部94とは反対側に突出するように構成される。第2突出部96は、第1円柱部92の径方向において、外側に広がるように構成される。第2突出部96は、第2アウターリンクプレート18の第3アウターリンクエンド部62に係合する。
【0045】
第1チェーンピン82は、第1ピン端面112、および、第2ピン端面114を有する。第1ピン端面112は、第1チェーンピン82における第1ピン中心軸心CX1に関するピン軸方向DEの端部に配置される。第1ピン端面112は、人力駆動車用チェーン8が組み立てられる場合に、組立器具が第1チェーンピン82に接触する箇所を含む。組立器具は、たとえば、圧入器具、および、カシメ器具を含む。第1ピン端面112は、第1突出部94の端面を含む。第1ピン端面112は、第1チェーンピン82の一方の端部における周縁部を含む。図3において、第1ピン端面112は、第1突出部94に形成される周縁部とすることができる。
【0046】
第2ピン端面114は、第1ピン中心軸心CX1に関するピン軸方向DEの端部に配置される。第2ピン端面114は、第1ピン中心軸心CX1に関するピン軸方向DEにおいて第1ピン端面112とは反対側に配置される。第2ピン端面114は、人力駆動車用チェーン8が組み立てられる場合に、組立器具が第1チェーンピン82に接触する箇所を含む。第2ピン端面114は、第2突出部96の端面を含む。第2ピン端面114は、第1チェーンピン82の他方の端部における周縁部を含む。図3において、第2ピン端面114は、第2突出部96に形成される周縁部とすることができる。
【0047】
第2チェーンピン84は、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、第2アウターリンク開口54a、および、第4アウターリンク開口64aに挿入され、かつ、第2ブッシュ開口74aを通るように構成される。第2チェーンピン84は、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、第2アウターリンク開口54a、および、第4アウターリンク開口64aに圧入される。
【0048】
第2チェーンピン84は、第2円柱部102と、第3突出部104と、第4突出部106とを含む。第2チェーンピン84が第2アウターリンク開口54a、および、第4アウターリンク開口64aに圧入されていない状態において、第2円柱部102の直径は、第2アウターリンク開口54aの直径よりも僅かに大きい。第2チェーンピン84が第2アウターリンク開口54a、および、第4アウターリンク開口64aに圧入されていない状態において、第2円柱部102の直径は、第4アウターリンク開口64aの直径よりも僅かに大きい。第2チェーンピン84は、第2ピン中心軸心CX2を有する。第2ピン中心軸心CX2は、第2円柱部102における中心軸心である。
【0049】
第3突出部104は、第2円柱部102の一方の端部から、第2ピン中心軸心CX2に関するピン軸方向DFに突出するように構成される。第3突出部104は、第2円柱部102の径方向において、外側に広がるように構成される。第3突出部104は、第1アウターリンクプレート16の第2アウターリンクエンド部54に係合する。
【0050】
第4突出部106は、第2円柱部102の他方の端部から、第2ピン中心軸心CX2に関するピン軸方向DFに突出するように構成される。第4突出部106は、第2ピン中心軸心CX2に関するピン軸方向DFにおいて、第3突出部104とは反対側に突出するように構成される。第4突出部106は、第2円柱部102の径方向において、外側に広がるように構成される。第4突出部106は、第2アウターリンクプレート18の第4アウターリンクエンド部64に係合する。
【0051】
第2チェーンピン84は、第1ピン端面116、および、第2ピン端面118を有する。第1ピン端面116は、第2チェーンピン84における第2ピン中心軸心CX2に関するピン軸方向DFの端部に配置される。第1ピン端面116は、人力駆動車用チェーン8が組み立てられる場合に、組立器具が第2チェーンピン84に接触する箇所を含む。第1ピン端面116は、第3突出部104の端面を含む。第1ピン端面116は、第2チェーンピン84の一方の端部における周縁部を含む。図3において、第1ピン端面116は、第3突出部104に形成される周縁部とすることができる。
【0052】
第2ピン端面118は、第2ピン中心軸心CX2に関するピン軸方向DFの端部に配置される。第2ピン端面118は、第2ピン中心軸心CX2に関するピン軸方向DFにおいて第1ピン端面116とは反対側に配置される。第2ピン端面118は、人力駆動車用チェーン8が組み立てられる場合に、組立器具が第2チェーンピン84に接触する箇所を含む。第2ピン端面118は、第4突出部106の端面を含む。第2ピン端面118は、第2チェーンピン84の他方の端部における周縁部を含む。図3において、第2ピン端面118は、第4突出部106に形成される周縁部とすることができる。
【0053】
保護部材26は、人力駆動車用チェーン8の組立状態において、第1ピン端面112、116、および、第2ピン端面114、118の少なくとも一方を覆うように構成される。保護部材26は、第1チェーンピン82の第1ピン端面112、および、第1チェーンピン82の第2ピン端面114の少なくとも一方を覆うように構成される。たとえば、保護部材26は、第1ピン端面112、および、第2ピン端面114の両方を覆うように構成される。保護部材26は、第2チェーンピン84の第1ピン端面116、および、第2チェーンピン84の第2ピン端面118の少なくとも一方を覆うように構成される。たとえば、保護部材26は、第1ピン端面116、および、第2ピン端面118の両方を覆うように構成される。保護部材26は、リング状に形成される。保護部材26は、ピン端面の周縁部を覆うように構成される。
【0054】
保護部材26は、第1ピン端面112、116、および、第2ピン端面114、118の少なくとも一方の劣化を抑制する部材によって構成される。具体的には、保護部材26は、錆の発生を抑制する部材である。保護部材26は、シール、または、塗膜である。シールは、第1ピン端面112、116、および、第2ピン端面114、118の少なくとも一方に貼付される。塗膜は、第1ピン端面112、116、および、第2ピン端面114、118の少なくとも一方に塗布される。たとえば、シールは、第1チェーンピン82の第1ピン端面112に貼付される。塗膜は、たとえば、第1チェーンピン82の第1ピン端面112に塗布された塗膜材が固まることによって形成される。例えば、人力駆動車用チェーン8を組立てる際に、チェーンピン22の防錆処理された保護層が部分的に剥がれた場合でも、保護部材26がチェーンピン22を保護して錆の発生を抑制する。例えば、保護層は、クロマイジング、および、バナダイジングなどの表面処理によって形成される。保護層は、亜鉛合金などのメッキ処理によって形成されてもよい。保護層は、塗装などによって形成されてもよい。
【0055】
シールは、金属シール、ラミネートシール、および、防水気密テープなどを含む。塗膜材は、塗料、および、接着剤のいずれか一方を含む。塗料は、エポキシパテ、シリコン樹脂、液体ゴム、ゲルコーティング材、および、錆転換剤などのいずれか1つを含む。塗料は、防水補修用の塗料などを含む。
【0056】
ローラ24は、第1ローラ122と、第2ローラ124とを含む。第1ローラ122は、第1インナーリンクプレート12の第1インナーリンクエンド部32と、第2インナーリンクプレート14の第3インナーリンクエンド部42との間に配置される。第1ローラ122は、第1ローラ開口122aを有する。第1ローラ開口122aには、第1ブッシュ72が挿通される。
【0057】
第2ローラ124は、第1インナーリンクプレート12の第2インナーリンクエンド部34と第2インナーリンクプレート14の第4インナーリンクエンド部44との間に配置される。第2ローラ124は、第2ローラ開口124aを有する。第2ローラ開口124aには、第2ブッシュ74が挿入される。
【0058】
人力駆動車用チェーン8が人力駆動車2に装着されるとき、ローラ24は、スプロケット歯に接触する。
【0059】
人力駆動車用チェーン8は、以下の手順によって組み立てられる。以下では、第1チェーンピン82が圧入される場合における手順が一例として説明される。第2チェーンピン84が圧入される場合の手順も同様である。
【0060】
まず、第1インナーリンクプレート12の第1インナーリンクエンド部32と、第2インナーリンクプレート14の第3インナーリンクエンド部42との間に、第1ローラ122が配置される。第1インナーリンクエンド部32の第1インナーリンク開口32aと、第1ローラ122の第1ローラ開口122aと、第3インナーリンクエンド部42の第3インナーリンク開口42aとが一致するように、第1インナーリンクプレート12などが配置される。
【0061】
次に、第1インナーリンク開口32a、第1ローラ開口122a、および、第3インナーリンク開口42aに、第1ブッシュ72が挿入される。次に、第1アウターリンクプレート16が、第1インナーリンクプレート12の外側に配置される。第2アウターリンクプレート18が、第2インナーリンクプレート14の外側に配置される。
【0062】
次に、第1アウターリンクプレート16の第1アウターリンク開口52a、第1ブッシュ72の第1ブッシュ開口72a、および、第2アウターリンクプレート18の第3アウターリンク開口62aに、第1チェーンピン82が挿入される。第1チェーンピン82は、第1アウターリンク開口52a、および、第3アウターリンク開口62aに圧入される。
【0063】
次に、第1チェーンピン82の第1突出部94が、カシメられることによって、第1突出部94が第1アウターリンクプレート16に係合する。さらに、第1チェーンピン82の第2突出部96が、カシメられることによって、第2突出部96が第2アウターリンクプレート18に係合する。
【0064】
次に、保護部材26が、第1チェーンピン82の第1ピン端面112、および、第1チェーンピン82の第2ピン端面114に設けられる。たとえば、保護部材26がシールである場合、保護部材26が、第1チェーンピン82の第1ピン端面112、および、第1チェーンピン82の第2ピン端面114に貼付される。
【0065】
保護部材26は、図5に示すように、第1ピン端面112、116の全面を覆うように構成されてもよい。保護部材26は、第2ピン端面114、118の全面を覆うように構成されてもよい。たとえば、保護部材26は、第1ピン中心軸心CX1における第1チェーンピン82の一方の端部を覆うように構成される。
【0066】
保護部材26は、第2アウターリンク面16b、および、第4アウターリンク面18bの少なくとも一方を少なくとも部分的に覆うように構成されてもよい。たとえば、保護部材26は、第2アウターリンク面16bの全面を覆うように構成されてもよい。保護部材26は、第4アウターリンク面18bの全面を覆うように構成されてもよい。保護部材26は、第2アウターリンク面16bの全面、および、第1ピン端面112、116を覆うように構成されてもよい。つまり、保護部材26は、第1ピン端面112、116を含む第2アウターリンク面16bの全面を覆うように構成される。保護部材26は、第4アウターリンク面18bの全面、および、第2ピン端面114、118を覆うように構成されてもよい。つまり、保護部材26は、第2ピン端面114、118を含む第4アウターリンク面18bの全面を覆うように構成される。
【0067】
チェーンピン22は、円筒状であってもよい。また、チェーンピン22は、突出部を有さないピンであってもよい。たとえば、第1チェーンピン82は、第1突出部94、および、第2突出部96を有さない円柱状のピンであってもよい。たとえば、突出部を有さない第1チェーンピン82は、第1アウターリンク開口52a、および、第3アウターリンク開口62aに圧入された後に、第1チェーンピン82の一部が切断される。保護部材26は、第1チェーンピン82の切断面に設けられる。
【0068】
人力駆動車用チェーン8は、ブッシュ20を有さないチェーンであってもよい。ブッシュ20を有さない人力駆動車用チェーン8においては、第1インナーリンクプレート12の第1インナーリンクエンド部32に第1インナーリンク開口32aを有する円筒部が形成される。たとえば、第1インナーリンクプレート12にバーリング加工が施されることによって、円筒部が形成される。同様に、第1インナーリンクプレート12の第2インナーリンクエンド部34に第2インナーリンク開口34aを有する円筒部が形成される。第2インナーリンクプレート14の第3インナーリンクエンド部42に第3インナーリンク開口42aを有する円筒部が形成される。第2インナーリンクプレート14の第4インナーリンクエンド部44に第4インナーリンク開口44aを有する円筒部が形成される。第1インナーリンクプレート12、および、第2インナーリンクプレート14は、第1インナーリンク開口32aを有する円筒部と、第3インナーリンク開口42aを有する円筒部とが向かい合うように配置される。第1インナーリンクプレート12、および、第2インナーリンクプレート14は、第2インナーリンク開口34aを有する円筒部と、第4インナーリンク開口44aを有する円筒部とが向かい合うように配置される。第1チェーンピン82は、第1インナーリンク開口32a、および、第3インナーリンク開口42aに挿入される。第2チェーンピン84は、第2インナーリンク開口34a、および、第4インナーリンク開口44aに挿入される。
【0069】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0070】
2…人力駆動車、8…人力駆動車用チェーン、12…第1インナーリンクプレート、14…第2インナーリンクプレート、16…第1アウターリンクプレート、16a…第1アウターリンク面、16b…第2アウターリンク面、18…第2アウターリンクプレート、18a…第3アウターリンク面、18b…第4アウターリンク面、20…ブッシュ、22…チェーンピン、26…保護部材、52…第1アウターリンクエンド部、52a…第1アウターリンク開口、54…第2アウターリンクエンド部、54a…第2アウターリンク開口、56…第1アウターリンク中間部、62…第3アウターリンクエンド部、62a…第3アウターリンク開口、64…第4アウターリンクエンド部、64a…第4アウターリンク開口、66…第2アウターリンク中間部、72…第1ブッシュ、72a…第1ブッシュ開口、74…第2ブッシュ、74a…第2ブッシュ開口、82…第1チェーンピン、84…第2チェーンピン、112…第1ピン端面、114…第2ピン端面、116…第1ピン端面、118…第2ピン端面
図1
図2
図3
図4
図5