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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076611
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240530BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240530BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
A01B69/00 303E
G05D1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188243
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】堀 哲理
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043AB19
2B043BB01
2B043BB03
2B043DA17
2B043EA08
2B043EA37
2B043EB08
2B043EB17
2B043EB22
2B043EB27
2B043EB28
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043ED12
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301LL01
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】目標経路上の障害物の存在が検知されるタイミングが遅くなりにくい作業車を提供する。
【解決手段】自動走行可能な作業車Aであって、機体1が目標経路LIに沿って走行するように機体1の自動走行を制御する走行制御部と、機体1に対して機体1の進行方向側に位置する障害物の存否を検知する検知装置17と、検知装置17が目標経路LI上の障害物の存否を検知するように、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向を自動的に変更する方向制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行可能な作業車であって、
機体が目標経路に沿って走行するように前記機体の自動走行を制御する走行制御部と、
前記機体に対して前記機体の進行方向側に位置する障害物の存否を検知する検知装置と、
前記検知装置が前記目標経路上の障害物の存否を検知するように、前記機体の向きに対する前記検知装置の検知方向を自動的に変更する方向制御部と、を備える作業車。
【請求項2】
前記目標経路は、直進用の第1経路要素と、旋回用の第2経路要素と、を含んでおり、
前記方向制御部は、前記機体が前記第1経路要素に沿って自動走行する状態から前記第2経路要素に沿って自動走行する状態に切り替わるときに、前記検知装置が前記第2経路要素上の障害物の存否を検知するように前記機体の向きに対する前記検知方向を自動的に変更する請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記目標経路は、直進用の第1経路要素と、旋回用の第2経路要素と、を含んでおり、
前記走行制御部の制御モードは、前記機体を前記第1経路要素に沿って自動走行させる第1モードと、前記機体を前記第2経路要素に沿って自動走行させる第2モードと、の間で切り替え可能であり、
前記方向制御部は、前記走行制御部の制御モードが前記第1モードから前記第2モードへ切り替わったことに応じて、前記機体の向きに対する前記検知方向を自動的に変更する請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記走行制御部の制御モードが前記第1モードから前記第2モードへ切り替わった時点から、前記機体が旋回し始めるまでの間に、前記機体の向きに対する前記検知方向の変更を行う請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記目標経路は、直進用の第1経路要素と、旋回用の第2経路要素と、を含んでおり、
前記方向制御部は、前記機体が前記第2経路要素に沿って自動走行しているとき、前記機体の旋回が急であるほど前記機体の向きに対する前記検知方向が旋回内側へ向くように、前記機体の向きに対する前記検知方向を変更する請求項1に記載の作業車。
【請求項6】
前記検知装置は複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナであり、
前記検知装置の指向性の高低を制御する高低制御部を備え、
前記高低制御部は、前記機体の車速が低いほど、前記検知装置の前記検知方向への指向性を低くする請求項1から5の何れか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行可能な作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この作業車(特許文献1では「トラクタ」)は、目標経路(特許文献1では「自動走行経路」)に沿って自動走行を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-9804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業車において、機体の前方に位置する障害物の存否を検知する検知装置を設けることが考えられる。検知装置を設けることにより、機体の前方に障害物が存在する場合に、例えば当該障害物の手前で自動的に停止する等の制御が可能となる。
【0005】
しかしながら、機体が旋回用(例えばUターン用)の目標経路に沿って自動走行している場合には、検知装置の検知方向と、目標経路の延びる方向と、が相違しがちである。その結果、目標経路上の地点のうち、機体から比較的遠い地点が、検知装置の検知範囲から外れてしまいがちである。これにより、機体が直進用の目標経路に沿って自動走行している場合に比べて、目標経路上の障害物の存在が検知されるタイミングが遅くなる事態が想定される。
【0006】
本発明の目的は、目標経路上の障害物の存在が検知されるタイミングが遅くなりにくい作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、自動走行可能な作業車であって、機体が目標経路に沿って走行するように前記機体の自動走行を制御する走行制御部と、前記機体に対して前記機体の進行方向側に位置する障害物の存否を検知する検知装置と、前記検知装置が前記目標経路上の障害物の存否を検知するように、前記機体の向きに対する前記検知装置の検知方向を自動的に変更する方向制御部と、を備えることにある。
【0008】
本構成によれば、検知装置が目標経路上の障害物の存否を検知するように、機体の向きに対する検知装置の検知方向が自動的に変更される。これにより、機体が旋回用(例えばUターン用)の目標経路に沿って自動走行している場合に、目標経路上の地点のうち、機体から比較的遠い地点が、検知装置の検知範囲に入りやすい。そのため、目標経路上の障害物の存在が検知されるタイミングが遅くなりにくい。
【0009】
即ち、本構成によれば、目標経路上の障害物の存在が検知されるタイミングが遅くなりにくい作業車を実現できる。
【0010】
さらに、本発明において、前記目標経路は、直進用の第1経路要素と、旋回用の第2経路要素と、を含んでおり、前記方向制御部は、前記機体が前記第1経路要素に沿って自動走行する状態から前記第2経路要素に沿って自動走行する状態に切り替わるときに、前記検知装置が前記第2経路要素上の障害物の存否を検知するように前記機体の向きに対する前記検知方向を自動的に変更すると好適である。
【0011】
本構成によれば、機体が第1経路要素に沿う自動走行から第2経路要素に沿う自動走行へ移行する場合において、検知方向の変更されるタイミングが適切になりやすい。これにより、検知装置による検知範囲が適切である状態が維持されやすい。
【0012】
さらに、本発明において、前記目標経路は、直進用の第1経路要素と、旋回用の第2経路要素と、を含んでおり、前記走行制御部の制御モードは、前記機体を前記第1経路要素に沿って自動走行させる第1モードと、前記機体を前記第2経路要素に沿って自動走行させる第2モードと、の間で切り替え可能であり、前記方向制御部は、前記走行制御部の制御モードが前記第1モードから前記第2モードへ切り替わったことに応じて、前記機体の向きに対する前記検知方向を自動的に変更すると好適である。
【0013】
本構成によれば、機体が第1経路要素に沿う自動走行から第2経路要素に沿う自動走行へ移行する場合において、検知方向の変更されるタイミングが適切になりやすい。これにより、検知装置による検知範囲が適切である状態が維持されやすい。
【0014】
さらに、本発明において、前記走行制御部の制御モードが前記第1モードから前記第2モードへ切り替わった時点から、前記機体が旋回し始めるまでの間に、前記機体の向きに対する前記検知方向の変更を行うと好適である。
【0015】
本構成によれば、機体が第1経路要素に沿う自動走行を行っている最中に、検知方向が第2経路要素へ向けて変更されてしまう事態を回避できる。また、本構成によれば、検知方向が変更されないままの状態で機体が第2経路要素に沿って旋回してしまう事態を回避できる。即ち、検知方向の変更されるタイミングが適切になりやすい。
【0016】
さらに、本発明において、前記目標経路は、直進用の第1経路要素と、旋回用の第2経路要素と、を含んでおり、前記方向制御部は、前記機体が前記第2経路要素に沿って自動走行しているとき、前記機体の旋回が急であるほど前記機体の向きに対する前記検知方向が旋回内側へ向くように、前記機体の向きに対する前記検知方向を変更すると好適である。
【0017】
本構成によれば、第2経路要素の曲がり具合に応じて検知方向が適切に変更されやすい。そのため、機体が第2経路要素に沿って自動走行しているとき、第2経路要素上の地点のうち、機体から比較的遠い地点が、検知装置の検知範囲に入りやすい。そのため、第2経路要素上の障害物の存在が検知されるタイミングが遅くなりにくい。
【0018】
さらに、本発明において、前記検知装置は複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナであり、前記検知装置の指向性の高低を制御する高低制御部を備え、前記高低制御部は、前記機体の車速が低いほど、前記検知装置の前記検知方向への指向性を低くすると好適である。
【0019】
検知装置の検知方向への指向性が比較的低い場合であっても、機体の車速が比較的低ければ、障害物が検知された場合に適切に対処しやすい。そして、本構成によれば、機体の車速が低いほど、検知装置の検知範囲を左右に広げることができる。そのため、本構成によれば、障害物が検知された場合に適切に対処可能でありつつ、検知範囲を左右方向に広げることが可能な作業車を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】目標経路に沿った自動走行を示す図である。
図2】機体の向きに対する検知装置の検知方向の変更を示す図である。
図3】制御部等の構成を示すブロック図である。
図4】機体の旋回半径と、検知装置の検知方向と、の関係を示す図である。
図5】検知装置の指向性の切り替えを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明では、トラクタA(本発明に係る「作業車」に相当)の機体1の前進方向を「前」として、その反対方向を「後」とする。また、機体1の前進方向視における左方を「左」、右方を「右」とする。
【0022】
〔トラクタの構成〕
図1に示すように、トラクタAの機体1は、走行装置10を備えている。走行装置10は、左右の前輪11及び左右の後輪12を含んでいる。
【0023】
走行装置10は、機体1に備わる原動機(図示せず)からの動力により駆動する。走行装置10が駆動することにより、機体1は走行する。尚、原動機は、ディーゼルエンジンや電動モータ等によって構成される。
【0024】
また、機体1は、キャビン13を備えている。キャビン13内には運転室が形成されている。
【0025】
機体1の前部には、ボンネット14が設けられている。ボンネット14は、キャビン13の前方に位置している。
【0026】
機体1の後部には、作業装置15が装備されている。本実施形態において、作業装置15は、耕耘装置である。ただし、本発明はこれに限定されない。作業装置15は、肥料散布装置や播種機等、いかなる種類の装置であっても良い。
【0027】
前輪11は操向輪として機能する。前輪11の操舵角を変更することにより、機体1の走行方向が変更される。ここで、トラクタAは、自動走行可能に構成されている。自動走行における前輪11の操舵角は、図示されていない電動操舵機構を介して制御可能である。手動走行における前輪11の操舵は、運転室に配置されているステアリングホイール(図示せず)の操作によって行われる。
【0028】
図1に示すように、トラクタAは、衛星測位モジュール16及び検知装置17を備えている。衛星測位モジュール16は、キャビン13の上面に取り付けられている。特に限定されないが、衛星測位モジュール16は、機体1の左右方向における中央位置に配置されていても良い。
【0029】
検知装置17は、ボンネット14の前端部に設けられている。即ち、検知装置17は、機体1の前端部に設けられている。検知装置17は複数のアンテナ素子(図示せず)を有するアレイアンテナである。特に限定されないが、本実施形態において、検知装置17は、フェーズドアレイアンテナである。
【0030】
機体1が前進しているとき、検知装置17は、機体1の前側に位置する障害物の存否を検知する。即ち、検知装置17は、機体1に対して機体1の進行方向側に位置する障害物の存否を検知する。尚、検知装置17が機体1の後部に設けられている場合、検知装置17は、機体1が後進しているとき、機体1の後側に位置する障害物の存否を検知しても良い。
【0031】
即ち、トラクタAは、機体1に対して機体1の進行方向側に位置する障害物の存否を検知する検知装置17を備えている。図1には、検知装置17による検知範囲DAが示されている。
【0032】
尚、障害物は、例えば樹木や岩や建物であっても良いし、人や鳥獣であっても良い。
【0033】
トラクタAが自動走行を行っている間、検知装置17は、機体1に対して機体1の進行方向側(例えば前側)に位置する障害物の存否を検知し続ける。
【0034】
〔自動走行に関する構成〕
図1及び図2に示すように、トラクタAは、圃場における目標経路LIに沿って自動走行可能である。以下では、トラクタAの自動走行に関する構成について説明する。
【0035】
図3に示すように、トラクタAの機体1は、制御部20を備えている。制御部20は、自車位置算出部21を有している。衛星測位モジュール16は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星からのGPS信号を受信する。そして、図3に示すように、衛星測位モジュール16は、受信したGPS信号に基づいて、機体1の自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
【0036】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール16は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール16は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0037】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール16により出力された測位データに基づいて、機体1の位置座標を経時的に算出する。これにより、自車位置算出部21は、機体1の位置座標を取得する。
【0038】
尚、自車位置算出部21は、機体1のうち、何れの部位の位置座標を算出しても良い。特に限定されないが、本実施形態において、自車位置算出部21は、衛星測位モジュール16の位置座標を算出する。
【0039】
図3に示すように、制御部20は、経路取得部22を有している。経路取得部22は、トラクタAが圃場において自動走行を行うための目標経路LIを取得する。特に限定されないが、例えば、経路取得部22は、圃場における中央領域CA(図1参照)及び外周領域SA(図1参照)の外形を示すデータを取得すると共に、当該データに基づいて目標経路LIを生成することにより、目標経路LIを取得しても良い。
【0040】
尚、中央領域CAとは、圃場における中央部に位置する領域である。外周領域SAとは、圃場における外周部に位置する領域である。外周領域SAは、中央領域CAを囲んでいる。外周領域SAは、例えば枕地であっても良い。
【0041】
図3に示すように、制御部20は、走行制御部23を有している。機体1が自動走行を行っているとき、走行制御部23は、自車位置算出部21から受け取った機体1の位置座標と、経路取得部22から受け取った目標経路LIを示す情報と、に基づいて、機体1が目標経路LIに沿って走行するように、走行装置10を制御する。これにより、トラクタAは、目標経路LIに沿って自動走行を行いながら、作業装置15によって作業を行う。このとき、走行制御部23は、例えば、衛星測位モジュール16が目標経路LI上に位置するように、機体1の走行を制御する。
【0042】
即ち、トラクタAは、機体1が目標経路LIに沿って走行するように機体1の自動走行を制御する走行制御部23を備えている。
【0043】
図1に示すように、目標経路LIは、直進用の第1経路要素LI1と、旋回用の第2経路要素LI2と、を含んでいる。特に限定されないが、本実施形態において、第1経路要素LI1は直線状の経路であり、第2経路要素LI2は曲線状の経路である。また、第1経路要素LI1は中央領域CAに位置している。第2経路要素LI2は外周領域SAに位置している。
【0044】
図1及び図2には、互いに平行に延びる二つの第1経路要素LI1と、U字状の一つの第2経路要素LI2と、が示されている。図1及び図2に示す例において、第2経路要素LI2は、一方の第1経路要素LI1における端点と、他方の第1経路要素LI1における端点と、を繋いでいる。
【0045】
走行制御部23の制御モードは、第1モードと第2モードとの間で切り替え可能に構成されている。第1モードは、機体1を第1経路要素LI1に沿って自動走行させる制御モードである。第2モードは、機体1を第2経路要素LI2に沿って自動走行させる制御モードである。
【0046】
即ち、走行制御部23の制御モードは、機体1を第1経路要素LI1に沿って自動走行させる第1モードと、機体1を第2経路要素LI2に沿って自動走行させる第2モードと、の間で切り替え可能である。
【0047】
機体1が第1経路要素LI1に沿って自動走行しているとき、走行制御部23の制御モードは、第1モードである。また、機体1の位置座標が第1経路要素LI1の終端(第2経路要素LI2の始端)に到達したとき、走行制御部23の制御モードは、第1モードから第2モードに切り替わる。
【0048】
機体1が第2経路要素LI2に沿って自動走行しているとき、走行制御部23の制御モードは、第2モードである。また、機体1の位置座標が第2経路要素LI2の終端(第1経路要素LI1の始端)に到達したとき、走行制御部23の制御モードは、第2モードから第1モードに切り替わる。
【0049】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる自車位置算出部21等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0050】
〔方向制御部〕
図3に示すように、制御部20は、方向制御部24を有している。方向制御部24は、検知装置17における各アンテナ素子の位相を制御することにより、検知装置17の検知方向を変更可能に構成されている。尚、このようなアレイアンテナ(フェーズドアレイアンテナ)の検知方向の制御については、公知の技術であるため説明を省略する。
【0051】
ただし、本発明はこれに限定されない。方向制御部24は、機体1に対する検知装置17の姿勢を変更することにより、検知装置17の検知方向を変更可能に構成されていても良い。
【0052】
方向制御部24は、検知装置17が目標経路LI上の障害物の存否を検知するように、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向を自動的に変更するように構成されている。
【0053】
即ち、トラクタAは、検知装置17が目標経路LI上の障害物の存否を検知するように、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向を自動的に変更する方向制御部24を備えている。
【0054】
例えば、図1及び図2に示す例では、トラクタAは、第1経路要素LI1に沿った自動走行を行い、第1経路要素LI1の終端(第2経路要素LI2の始端)に到達する。その後、トラクタAは、第2経路要素LI2に沿った自動走行を行う。第2経路要素LI2に沿った自動走行において、トラクタAは、左側へ旋回する。
【0055】
この例において、方向制御部24は、図3に示すように、走行制御部23から、現在の走行制御部23の制御モードを示す情報を、経時的に取得する。そして、方向制御部24は、走行制御部23の制御モードが第1モードから第2モードへ切り替わったことに応じて、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向を自動的に変更する。
【0056】
このとき、変更前の検知方向は、図1に示すように、機体1の向きに一致している。即ち、機体1が第1経路要素LI1に沿って自動走行しているとき(走行制御部23の制御モードが第1モードであるとき)、検知装置17の検知方向は、機体1の向きに一致している。
【0057】
尚、特に限定されないが、本実施形態において、機体1の向きとは、機体1の前方を意味する。ただし、本発明はこれに限定されず、機体1の向きは、機体1の前方以外であっても良い。機体1の向きは、例えば機体1の後方であっても良いし、機体1の左方や右方であっても良い。
【0058】
また、このとき、変更後の検知方向は、図2に示すように、機体1の向きに対して左側に向けられている。即ち、トラクタAが第1経路要素LI1の終端(第2経路要素LI2の始端)に到達すると、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向が左側に変化する。これにより、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向が、検知装置17が目標経路LI上の障害物の存否を検知するように変更されたこととなる。
【0059】
尚、図2に示す例とは異なり、第2経路要素LI2に沿った自動走行において、トラクタAが右側へ旋回する場合には、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向は、方向制御部24によって、右側に変更される。
【0060】
また、特に限定されないが、本実施形態において、検知装置17の検知方向とは、機体1から見て検知範囲DAの位置する方向である。また、図2においては、検知装置17の検知方向が変更される前の検知範囲DAが仮想線で示されており、検知装置17の検知方向が変更された後の検知範囲DAが実線で示されている。
【0061】
この構成により、方向制御部24は、機体1が第1経路要素LI1に沿って自動走行する状態から第2経路要素LI2に沿って自動走行する状態に切り替わるときに、検知装置17が第2経路要素LI2上の障害物の存否を検知するように機体1の向きに対する検知方向を自動的に変更する。
【0062】
より具体的には、トラクタAの方向制御部24は、走行制御部23の制御モードが第1モードから第2モードへ切り替わった時点から、機体1が旋回し始めるまでの間に、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向の変更を行う。
【0063】
尚、本実施形態において、「機体1が旋回し始めるまでの間」とは、第2経路要素LI2に沿った旋回のために、第2経路要素LI2の延びる方向(左側)への旋回動作が開始されるまでの間である。より具体的には、「機体1が旋回し始めるまでの間」とは、第2経路要素LI2に沿った旋回のために、左右の前輪11が第2経路要素LI2の延びる方向(左側)へ操舵され始めるまでの間である。
【0064】
また、図2には、目標経路LIに沿った自動走行中にトラクタA(機体1)が通過する領域である通過領域Tが示されている。検知範囲DAの横幅は、通過領域Tの幅以上に設定されている。また、検知範囲DAが通過する領域に通過領域Tの全体が含まれるように、検知範囲DAの大きさ及び機体1の向きに対する検知方向が制御される。
【0065】
また、トラクタAが第2経路要素LI2に沿った自動走行を行っているとき、図3に示すように、方向制御部24は、走行制御部23から、現在の機体1の旋回半径を示す情報を、経時的に取得する。当該情報は、例えば、左右の前輪11の操舵角であっても良い。
【0066】
そして、トラクタAが第2経路要素LI2に沿った自動走行を行っているとき、方向制御部24は、当該情報に基づいて、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向を制御する。このとき、方向制御部24は、機体1の旋回が急であるほど機体1の向きに対する検知装置17の検知方向が旋回内側へ向くように、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向を変更する。
【0067】
例えば、図4の上部及び下部に示す例では、それぞれ、機体1は、第2経路要素LI2に沿う自動走行を行いながら旋回している。尚、図4においては、機体1の向きを示す第1方向線Pと、検知装置17の検知方向を示す第2方向線Qと、が示されている。
【0068】
図4の上部に示す例では、機体1の旋回半径は第1半径R1である。検知装置17の検知方向は、機体1の向きを基準にして左側に第1角度Y1の方向である。
【0069】
図4の下部に示す例では、機体1の旋回半径は第2半径R2である。検知装置17の検知方向は、機体1の向きを基準にして左側に第2角度Y2の方向である。第2半径R2は第1半径R1よりも大きい。第2角度Y2は第1角度Y1よりも小さい。
【0070】
即ち、図4の上部に示す例では、図4の下部に示す例に比べて機体1の旋回が急である。また、図4の上部に示す例では、図4の下部に示す例に比べて、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向が、より大きく旋回内側へ向けられている。
【0071】
このように、方向制御部24は、機体1が第2経路要素LI2に沿って自動走行しているとき、機体1の旋回が急であるほど機体1の向きに対する検知装置17の検知方向が旋回内側へ向くように、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向を変更する。
【0072】
尚、方向制御部24は、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向の角度(例えば、図4の第1角度Y1や第2角度Y2)を決定することにより、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向を制御するように構成されていても良い。ただし、本発明はこれに限定されない。方向制御部24は、例えば、機体1の左方や右方に対する検知装置17の検知方向の角度を決定することにより、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向を制御するように構成されていても良い。
【0073】
〔高低制御部〕
図3に示すように、トラクタAは、車速センサ19を備えている。また、制御部20は、高低制御部25を有している。車速センサ19は、例えば走行装置10の駆動速度を検知することにより、機体1の現在の車速を検知する。高低制御部25は、車速センサ19から、機体1の現在の車速を示す情報を取得する。そして、高低制御部25は、当該情報に基づいて、検知装置17の指向性の高低を制御する。
【0074】
即ち、トラクタAは、検知装置17の指向性の高低を制御する高低制御部25を備えている。
【0075】
より具体的には、高低制御部25は、機体1の車速が低いほど、検知装置17の検知方向への指向性を低くする。例えば、図5には、第1検知範囲DA1及び第2検知範囲DA2が示されている。本実施形態において、高低制御部25は、検知装置17の検知範囲DAを、第1検知範囲DA1と第2検知範囲DA2との間で切り替え可能である。機体1の前後方向において、第2検知範囲DA2の長さは第1検知範囲DA1の長さよりも短い。機体1の左右方向において、第2検知範囲DA2の長さは第1検知範囲DA1の長さよりも長い。即ち、本実施形態において、高低制御部25は、機体1の車速に応じて、検知装置17の検知方向への指向性を、二段階で切り替え可能である。
【0076】
尚、図5に示す例においては、検知装置17の検知範囲DAが第1検知範囲DA1である状態、及び、第2検知範囲DA2である状態の何れにおいても、検知装置17の検知方向は、機体1の向きに一致している。
【0077】
機体1の車速が比較的高い場合、高低制御部25は、検知装置17の検知範囲DAを第1検知範囲DA1に決定する。これにより、機体1の車速が比較的高い場合、検知装置17の検知方向への指向性が比較的高くなる。
【0078】
機体1の車速が比較的低い場合、高低制御部25は、検知装置17の検知範囲DAを第2検知範囲DA2に決定する。これにより、機体1の車速が比較的低い場合、検知装置17の検知方向への指向性が比較的低くなる。
【0079】
ただし、本発明はこれに限定されない。高低制御部25は、機体1の車速に応じて、検知装置17の検知方向への指向性を三段階以上の段数で切り替え可能であっても良いし、無段階で切り替え可能であっても良い。
【0080】
以上で説明した構成によれば、検知装置17が目標経路LI上の障害物の存否を検知するように、機体1の向きに対する検知装置17の検知方向が自動的に変更される。これにより、機体1が旋回用(例えばUターン用)の目標経路LIに沿って自動走行している場合に、目標経路LI上の地点のうち、機体1から比較的遠い地点が、検知装置17の検知範囲DAに入りやすい。そのため、目標経路LI上の障害物の存在が検知されるタイミングが遅くなりにくい。
【0081】
即ち、以上で説明した構成によれば、目標経路LI上の障害物の存在が検知されるタイミングが遅くなりにくいトラクタAを実現できる。
【0082】
〔その他の実施形態〕
(1)検知装置17は、機体1のうち、機体1の前端部以外のいかなる箇所に設けられていても良い。
【0083】
(2)検知装置17はアレイアンテナでなくても良い。検知装置17は、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)センサやカメラであっても良い。
【0084】
(3)上記実施形態における走行装置10に代えて、左右の走行部(例えば左右のクローラ)が設けられていても良い。この場合、上述の「機体1が旋回し始めるまでの間」とは、第2経路要素LI2に沿った旋回のために、左右の走行部の駆動速度(回転速度)に差が生じ始めるまでの間である。
【0085】
(4)方向制御部24は、機体1が第1経路要素LI1に沿って自動走行する状態から第2経路要素LI2に沿って自動走行する状態に切り替わる前または後に、検知装置17が第2経路要素LI2上の障害物の存否を検知するように機体1の向きに対する検知方向を自動的に変更するように構成されていても良い。
【0086】
(5)目標経路LIは、直進用の第1経路要素LI1を含んでいなくても良い。
【0087】
(6)目標経路LIは、旋回用の第2経路要素LI2を含んでいなくても良い。
【0088】
(7)方向制御部24は、走行制御部23の制御モードが第1モードから第2モードへ切り替わる前に、機体1の向きに対する検知方向を自動的に変更するように構成されていても良い。
【0089】
(8)走行制御部23の制御モードは、第1モードと第2モードとの間で切り替え可能でなくても良い。
【0090】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、トラクタだけではなく、コンバイン、田植機、管理機等の種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 :機体
17 :検知装置
23 :走行制御部
24 :方向制御部
25 :高低制御部
A :トラクタ(作業車)
LI :目標経路
LI1 :第1経路要素
LI2 :第2経路要素
図1
図2
図3
図4
図5