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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076622
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】カウルカバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
B62D25/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188279
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井原 淳
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA04
3D203AA05
3D203BB38
3D203CA79
3D203DA19
3D203DA20
3D203DA37
3D203DA38
3D203DA68
(57)【要約】
【課題】フロントガラスに対して安定的に取り付け可能であるとともに、フロントガラスの縁部に近接させて別部材を配置可能なカウルカバー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】カウルカバー7は、フロントガラス5の縁部に取り付けられる。カウルカバー7は、フロントガラス5の縁部の車外面5a側に位置する重ね部22と、車幅方向に延び、フロントガラス5の縁部の車内面5b側に位置して重ね部22との間でフロントガラス5の縁部を保持する保持部23と、フロントガラス5の縁部の車内面5b側の一部を露出させるように保持部23に形成され、別部材30の少なくとも一部が挿入される挿入部26と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドの縁部に取り付けられるカウルカバーであって、
前記ウインドシールドの縁部の車外面側に位置する重ね部と、
車幅方向に延び、前記ウインドシールドの縁部の車内面側に位置して前記重ね部との間で前記ウインドシールドの縁部を保持する保持部と、
前記ウインドシールの縁部の車内面側の一部を露出させるように前記保持部に形成され、別部材の少なくとも一部が挿入される挿入部と、
を備えることを特徴とするカウルカバー。
【請求項2】
挿入部は、保持部に連なる取り除き部の取り除きにより形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のカウルカバー。
【請求項3】
取り除き部の両側部に切り込み部を備える
ことを特徴とする請求項2記載のカウルカバー。
【請求項4】
取り除き部の両側部間に亘るスリットを備える
ことを特徴とする請求項3記載のカウルカバー。
【請求項5】
ウインドシールドの縁部の車外面側に位置する重ね部と、車幅方向に延び、前記ウインドシールドの縁部の車内面側に位置して前記重ね部との間で前記ウインドシールドの縁部を保持する保持部と、前記ウインドシールの縁部の車内面側を露出させるように前記保持部に形成され、別部材の少なくとも一部が挿入される挿入部と、を備え、前記ウインドシールドの縁部に取り付けられるカウルカバーを製造するカウルカバーの製造方法であって、
前記重ね部と取り除き部を一部に備える前記保持部とを一体的に成形する成形工程と、
前記取り除き部を取り除くことで前記挿入部を形成する取り除き工程と、
を備えることを特徴とするカウルカバーの製造方法。
【請求項6】
成形工程において、取り除き部の両側部に切り込み部を有して重ね部と保持部とを一体的に成形し、
取り除き工程において、前記切り込み部を介して前記取り除き部を切り離すことで前記保持部から前記取り除き部を取り除く
ことを特徴とする請求項5記載のカウルカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドシールドの縁部に取り付けられるカウルカバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のウインドシールドであるフロントガラスの前端部とボンネットフードの後側部との間のいわゆるカウル部に配置され、このカウル部を覆って外観を向上するカウルカバーが用いられている。
【0003】
カウルカバーのフロントガラスへの取付構造として、カウルカバーの後端部に受け部を形成し、この受け部によってフロントガラスの前端部を挟み込んで保持するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような自動車において、寒冷地仕様の場合、冬季に降雪や氷結などによってワイパがフロントガラスに一体的に固着したときに、フロントガラスを温めることで解氷し、ワイパをフロントガラスから引き離すためのワイパデアイサなどの装置を備えるものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
このような装置は、自動車の乗員の視界を広く確保するために、可能な限りフロントガラスの前端部に近接して配置されることが好ましい。しかしながら、フロントガラスを安定的に保持するためにカウルカバーの受け部を車幅方向に延ばしている場合、装置を受け部に対して後方の位置に配置することとなり、フロントガラスの前端部に近接させて装置を配置することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-167952号公報 (第7頁、図1
【特許文献2】特開2018-176978号公報 (第4-6頁、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、フロントガラスに対してカウルカバーを安定的に取り付け可能としつつ、フロントガラスの前端部に近接させて別部材を配置可能とすることが望まれる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ウインドシールドに対して安定的に取り付け可能であるとともに、ウインドシールドの縁部に近接させて別部材を配置可能なカウルカバー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のカウルカバーは、ウインドシールドの縁部に取り付けられるカウルカバーであって、前記ウインドシールドの縁部の車外面側に位置する重ね部と、車幅方向に延び、前記ウインドシールドの縁部の車内面側に位置して前記重ね部との間で前記ウインドシールドの縁部を保持する保持部と、前記ウインドシールの縁部の車内面側の一部を露出させるように前記保持部に形成され、別部材の少なくとも一部が挿入される挿入部と、を備えるものである。
【0010】
請求項2記載のカウルカバーは、請求項1記載のカウルカバーにおいて、挿入部は、保持部に連なる取り除き部の取り除きにより形成されているものである。
【0011】
請求項3記載のカウルカバーは、請求項2記載のカウルカバーにおいて、取り除き部の両端部に切り込み部を備えるものである。
【0012】
請求項4記載のカウルカバーは、請求項3記載のカウルカバーにおいて、取り除き部の両側部間に亘るスリットを備えるものである。
【0013】
請求項5記載のカウルカバーの製造方法は、ウインドシールドの縁部の車外面側に位置する重ね部と、車幅方向に延び、前記ウインドシールドの縁部の車内面側に位置して前記重ね部との間で前記ウインドシールドの縁部を保持する保持部と、前記ウインドシールの縁部の車内面側を露出させるように前記保持部に形成され、別部材の少なくとも一部が挿入される挿入部と、を備え、前記ウインドシールドの縁部に取り付けられるカウルカバーを製造するカウルカバーの製造方法であって、前記重ね部と取り除き部を一部に備える前記保持部とを一体的に成形する成形工程と、前記取り除き部を取り除くことで前記挿入部を形成する取り除き工程と、を備えるものである。
【0014】
請求項6記載のカウルカバーの製造方法は、請求項5記載のカウルカバーの製造方法において、成形工程において、取り除き部の両側部に切り込み部を有して重ね部と保持部とを一体的に成形し、取り除き工程において、前記切り込み部を介して前記取り除き部を切り離すことで前記保持部から前記取り除き部を取り除くものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のカウルカバーによれば、重ね部と保持部とでウインドシールドの縁部を挟み込んで保持することで、ウインドシールドに対してカウルカバーを安定的に取り付け可能であるとともに、ウインドシールドの縁部の車内面側を露出させるように保持部に形成した挿入部に別部材の少なくとも一部を挿入することで、カウルカバーの端部から別部材を突出させることなく、ウインドシールドの縁部に近接させて別部材を配置可能となる。
【0016】
請求項2記載のカウルカバーによれば、請求項1記載のカウルカバーの効果に加えて、成形時に取り除き部が突っ張り形状の役目を果たすので、成形直後にカウルカバーが収縮変形することを抑制でき、取り除き部の取り除きによる挿入部の形成によってカウルカバーとウインドシールドの縁部との合わせに隙間が生じることを抑制できる。
【0017】
請求項3記載のカウルカバーによれば、請求項2記載のカウルカバーの効果に加えて、工具を切り込み部に挿入し、切り込み部を介して取り除き部を容易に切り離すことができる。
【0018】
請求項4記載のカウルカバーによれば、請求項3記載のカウルカバーの効果に加えて、切り込み部から切断するだけで取り除き部を容易に切り離すことができる。
【0019】
請求項5記載のカウルカバーの製造方法によれば、成形工程において取り除き部が突っ張り形状の役目を果たすので、成形直後にカウルカバーが収縮変形することを抑制でき、取り除き工程における取り除き部の取り除きによる挿入部の形成によってカウルカバーとウインドシールドの縁部との合わせに隙間が生じにくいカウルカバーを容易に製造できる。
【0020】
請求項6記載のカウルカバーの製造方法によれば、請求項5記載のカウルカバーの製造方法の効果に加えて、取り除き工程において工具を切り込み部に挿入することで、切り込み部を介して取り除き部を容易に切り離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態のカウルカバーを示す端面図であり、(a)は図4のI-I相当位置を示し、(b)は図4のII-II相当位置を示す。
図2】同上カウルカバーの一部を裏側から示す斜視図である。
図3】(a)は同上カウルカバーの成形状態の一部を裏側から示す斜視図、(b)は(a)のIII-III相当位置の端面図である。
図4】同上カウルカバーの斜視図である。
図5】同上カウルカバーを備える車両の一例を示す斜視図である。
図6】本発明の第2の実施の形態のカウルカバーの一部を裏側から拡大して示す斜視図である。
図7】(a)は本発明の第3の実施の形態のカウルカバーの一部を示す斜視図、(b)は(a)のIV-IV相当位置の端面図である。
図8】(a)は本発明の第4の実施の形態のカウルカバーの一部を示す斜視図、(b)は(a)のV-V相当位置の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図5において、1は車両としての自動車の車体である。車体1には、エンジンルーム2を覆う相手部材であるフード3と、車室4の前側に位置するウインドシールドであるフロントガラス5と、の間のカウル部6を覆って車両用部品であるカウルカバー7が配置されている。なお、以下、前後、上下、及び両側などの方向については、車体1の直進方向を基準として説明し、矢印FR方向が前方、矢印RR方向が後方、矢印U方向が上方、矢印D方向が下方、矢印L方向が車幅方向左方、矢印Rが車幅方向右方である。
【0024】
カウル部6は、エアボックスなどとも呼ばれるもので、例えば鉄板にて形成された車体部材であるフロントカウル8(図1(a)及び図1(b))により、上側を開口した樋状に形成されている。そして、カウル部6には、車室4内に外気を導入する空調装置の空気取入部(エアインテーク)が前後方向に開口されているとともに、カウル部6の一側には、ワイパのワイパアームを駆動するモータやワイパリンクなどが配置されている。
【0025】
フード3は、車体1の前部に位置してエンジンルーム2を開閉可能に覆うボンネットフードである。
【0026】
そして、図1(a)、図1(b)及び図4に示すように、カウルカバー7は、カウルトップカバーとも呼ばれ、フロントガラス5とフード3(図5)との間のカウル部6すなわちフロントカウル8の上側を覆って外観を向上するものである。カウルカバー7の前側の上部にフード3(図5)が位置し、フロントガラス5とフロントカウル8とによりカウルカバー7が支持される。
【0027】
カウルカバー7は、合成樹脂により射出成形され、長手状となっている。カウルカバー7は、車幅方向に長手状に配置される。
【0028】
カウルカバー7は、本体部10を有する。本体部10は、フロントガラス5と略平行に傾斜して長手方向に連なって形成されている。本体部10には、上方に突出する突出部が形成されていてもよい。突出部により、フード3とカウルカバー7との隙間を狭くするとともにカウルカバー7を積雪などのフロントガラス5側からの荷重に対して補強することが可能となる。本体部10は、全体的に後部から前部へと下方に傾斜した状態で配置される。カウルカバー7については、以下、車体1に配置された状態を基準として説明する。
【0029】
本体部10には、空気取入穴部11が形成されている。空気取入穴部11は、空気取入部と連通する。本実施の形態において、空気取入穴部11は、本体部10の長手方向の一端寄り、つまり車幅方向の一側に偏って形成されている。空気取入穴部11は、小さい開口が車幅方向及び前後方向に多数並んで配置されている。
【0030】
また、本体部10には、ワイパピボット穴部12が形成されている。ワイパピボット穴部12には、ワイパ装置のシャフトが挿通される。本実施の形態において、ワイパピボット穴部12は、本体部10の長手方向の他端寄り、つまり空気取入穴部11とは車幅方向に反対側の、車幅方向の他側に偏って複数形成されている。
【0031】
また、本体部10の前部には、縦壁部15が形成されている。縦壁部15は、カウル部6とエンジンルーム2との間に介在される隔壁部である。縦壁部15は、カウルカバー7の前端部を構成する。縦壁部15は、本体部10の前部にて上方に延びている。縦壁部15は、車幅方向に延びて形成されている。縦壁部15は、前方上側に向かい傾斜している。縦壁部15の下端部には、フロントカウル8の上部に支持される被支持部16が形成されている。本体部10の前端部において、縦壁部15と被支持部16とが上下に分岐されている。また、縦壁部15の上端部で、かつ、本体部10の前部には、シール部材であるフードシールが取り付けられる支持部17が前方に突出して形成されている。したがって、縦壁部15は、フロントカウル8とフード3(図5)との間に位置している。支持部17は、エンジンルーム2を閉塞したフード3(図5)の下部に対向する位置にある。フードシールは、フード3(図5)の後部下面に圧接される。そして、フードシールが、閉じた状態のフード3(図5)に液密に密着することで、エンジンルーム2からの熱気や臭気を遮蔽するようになっている。
【0032】
また、本体部10のフロントガラス5の前縁部に対向する後部には、樋部である受け部20が形成されている。受け部20は、フロントガラス5の前縁部を受ける部分である。受け部20は、重ね部22と保持部23とを有して、車幅方向つまりカウルカバー7の長手方向に連なる樋状に形成されている。受け部20は、本実施の形態において、本体部10の後縁部全体に亘り形成されている。
【0033】
重ね部22は、フロントガラス5の前縁部の車外面5a側に位置する部分である。重ね部22は、本体部10の後端部と面一または略面一に連なって後方に延びて形成されている。重ね部22は、車幅方向に連なって形成されている。重ね部22の先端部つまり後端部には、フロントガラス5の前縁部の車外面5aに対し弾性的に圧接される圧接部22aを一体的に有する。圧接部22aは、薄肉の板状に形成され、前端部が特に薄肉のヒンジ部22bとなっていて、この前端部を起点として上下に弾性変形可能となっている。
【0034】
保持部23は、重ね部22に対して下方に離れ、フロントガラス5の前縁部の車内面5b側に位置する部分である。すなわち、保持部23は、フロントガラス5を基準として重ね部22とは反対側に位置する。保持部23は、車幅方向に連なる平面状に形成されている。保持部23は、重ね部22に対し、平行または略平行、あるいは、先端部つまり後端部ほど徐々に離れるように傾斜している。保持部23の後端部は、重ね部22の後端部に対して前側に位置し、図示される例では、ヒンジ部22bと前後方向に略一致する位置にある。保持部23の前端部は、本体部10の裏面側に対し、接続部24を介して連結されている。本実施の形態では、接続部24は、本体部10の厚み方向に延びており、接続部24と保持部23とが断面L字状をなすように形成されている。
【0035】
図1(b)及び図2に示すように、保持部23には、挿入部26が形成されている。挿入部26は、保持部23の後端部を切り欠いて形成されている。図示される例では、挿入部26は、保持部23の後端部から接続部24に亘る部分を切り欠いて形成されている。挿入部26により、受け部20に保持されたフロントガラス5の前縁部の車内面5b側が露出されている。挿入部26は、車幅方向に長手状に形成されている。すなわち、挿入部26は、所定の幅を有して形成されている。例えば、挿入部26は、カウルカバー7の車幅方向の中央部、つまり保持部23の長手方向の中央部に位置する。
【0036】
挿入部26には、別部材30が配置される。別部材30は、フロントガラス5に対して機能を付与する機能部である。本実施の形態において、別部材30は、フロントガラス5を温めるヒータであるワイパデアイサ用のハーネスである。つまり、別部材30は、フロントガラス5の車内面5b側に重ねられて配置されたコネクタ部30aと、コネクタ部30aと電気的に接続された配線30bと、を一体的に有する。コネクタ部30aがフロントガラス5の車内面5bに配置されたワイパデアイサの電熱線と電気的に接続され、配線30bが電熱線と温度制御部とを電気的に接続する。コネクタ部30a及び配線30bの一部が挿入部26内に位置し、配線30bの残りの他部が挿入部26から下方及び前方、つまりカウル部6側に延びて位置する。
【0037】
この挿入部26は、図3(a)及び図3(b)に示すようにカウルカバー7の成形時に保持部23に一体的に形成される取り除き部32を保持部23から切り離して取り除くことで形成される。なお、図3(a)などにおいて、取り除き部32は、説明を明確にするために網掛けして示している。取り除き部32は、挿入部26(図2)の両側部の成形時の収縮変形を抑制するためのものである。取り除き部32は、挿入部26(図2)の両側部を連結し、保持部23に連なって形成されている。本実施の形態において、取り除き部32は、保持部23及び接続部24において挿入部26(図2)の両側部を連結して形成されている。本実施の形態では、取り除き部32は、保持部23と面一または略面一に連なって形成される四角形状の第一面部32aと、接続部24と面一または略面一に連なって形成される四角形状の第二面部32bと、を有する。そのため、取り除き部32は、保持部23及び接続部24と同様に、断面L字状に形成されている。
【0038】
取り除き部32の両側部、つまり長手方向の端部には、切り込み部34が形成されている。図示される例では、取り除き部32の第一面部32a及び第二面部32bのそれぞれの両側部つまり短辺部と保持部23及び接続部24との連結部に切り込み部34が形成されている。
【0039】
切り込み部34は、取り除き部32を保持部23及び接続部24から切断するためのニッパなどの工具の刃先を挿入しやすくして取り除き部32を切断しやすくするとともに切断面積を削減するものである。切り込み部34は、取り除き部32の両側部において、前後方向に間欠的に形成されている。本実施の形態において、切り込み部34は、縁部34aが湾曲して形成されている。切り込み部34の縁部34aは、保持部23及び接続部24側と、取り除き部32側と、のそれぞれが、保持部23及び接続部24側と、取り除き部32側と、に向かって湾曲する曲線状または弧状に形成されている。
【0040】
また、取り除き部32の第二面部32bの第一面部32aとは反対側の長辺部には、スリット35が形成されている。スリット35は、車幅方向すなわちカウルカバー7の長手方向に延びる直線状に形成され、取り除き部32の両側部間に亘って連なっている。本実施の形態では、スリット35の両側部、つまり長手方向の端部が切り込み部34と連なっている。つまり、本実施の形態において、スリット35は、切り込み部34,34間を連結している。スリット35により、取り除き部32の第二面部32bと接続部24の基端部とが互いに離れた状態で成形される。
【0041】
そして、カウルカバー7の製造時には、まず、溶融樹脂材料を射出成形することにより、本体部10、受け部20(重ね部22、両側部に切り込み部34を有する取り除き部32を一部に備える保持部23、接続部24)、縦壁部15、及び、被支持部16などを一体的に有する所定の形状に成形する(成形工程)。
【0042】
カウルカバー7の成形収縮後、切り込み部34に工具の刃先を挿入して保持部23及び接続部24から取り除き部32を切り離すことで、挿入部26を形成する(切り離し工程)。この後、挿入部26の両側縁部は、やすりなどの工具によって加工して凹凸が生じないようにしてもよい。
【0043】
完成したカウルカバー7は、受け部20にフロントガラス5の前縁部を挟み込み、フロントカウル8に対しクリップなどにより固定することで、カウル部6を覆って車体1に組み付ける。フロントガラス5の前縁部の車内面5b側が、挿入部26によって露出されるので、挿入部26に挿入した別部材30を、挿入部26内においてフロントガラス5の前縁部の車内面5b側に配置する。つまり、別部材30が、カウルカバー7(挿入部26)よりも後方に突出することなく配置される。
【0044】
カウル部6を覆うカウルカバー7は、カウル部6や車室4内などへの水や異物の侵入を防止するとともに、フード3を閉じた状態で、フードシールが変形してフード3に密着し、エンジンルーム2からの熱気や臭気を遮蔽する。
【0045】
例えば、冬季などに降雪や氷結などによってワイパがフロントガラスに一体的に固着したときなどの必要時には、ワイパデアイサの温度制御部から電熱線に別部材30を介して電流を流すことで、フロントガラス5を温めて解氷し、ワイパをフロントガラス5から引き離す。
【0046】
このとき、第1の実施の形態によれば、フロントガラス5の前縁部の車外面5a側に重ね部22を位置させ、車幅方向に延びる保持部23をフロントガラス5の前縁部の車内面5b側に位置させて重ね部22と保持部23との間でフロントガラス5の前縁部を挟み込んで保持することで、フロントガラス5に対してカウルカバー7を安定的に取り付け可能であるとともに、フロントガラス5の前縁部の車内面5b側の一部を露出させるように保持部23に形成した挿入部26に別部材30の少なくとも一部を挿入することで、カウルカバー7の後端部から別部材30を突出させることなく、フロントガラス5の前縁部に近接させて別部材30を配置可能となる。そのため、フロントガラス5の前縁部側の視界を別部材30により狭くすることなく別部材30の配置を成立させることができ、乗員の視界を広く確保できる。
【0047】
挿入部26を、保持部23に連なる取り除き部32の取り除きにより形成することで、成形工程において取り除き部32が突っ張り形状の役目を果たすので、成形直後にカウルカバー7が収縮変形することを抑制でき、取り除き部32の取り除きによる挿入部26の形成によってカウルカバー7とフロントガラス5の前縁部との合わせに隙間が生じることを抑制できるとともに、このようなカウルカバー7を容易に製造できる。
【0048】
取り除き部32の両端部に切り込み部34を形成することで、取り除き工程において工具を切り込み部34に挿入し、切り込み部34を介して取り除き部32を容易に切り離すことができる。
【0049】
また、切り込み部34の縁部34aが弧状に湾曲しているので、カウルカバー7が車幅方向に成形収縮した際の応力が分散しやすい。
【0050】
さらに、取り除き部32の両側部間に亘るスリット35を形成することで、切り込み部34から切断するだけで取り除き部32を容易に切り離すことができる。
【0051】
そこで、取り除き工程において取り除き部32を切り離すための工数が少なく、取り除き部32を容易に取り除くことができる。
【0052】
しかも、取り除き部32は、断面がL字形状となっているので、形状剛性が向上し、成形直後に、カウルカバー7がより変形しにくくなる。
【0053】
なお、図6に示す第2の実施の形態のように、切り込み部34の縁部34aを直線状に形成しても、カウルカバー7が車幅方向に成形収縮した際の応力が分散しやすいなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
また、取り除き部32は、その剛性を確保できれば、断面L字状である必要はない。例えば、図7(a)及び図7(b)に示す第3の実施の形態のように、取り除き部32の厚みを保持部23よりも大きく形成する場合には、取り除き部32を保持部23と連なる平板状、つまり断面I字状に形成しても、成形直後に、カウルカバー7がより変形しにくくなるなど、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。あるいは、図8(a)及び図8(b)に示す第4の実施の形態のように、取り除き部32は、平板状の面部32cの重ね部22とは反対側に突出する突出部32dを有する断面T字状に形成しても、成形直後に、カウルカバー7がより変形しにくくなるなど、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
また、第3及び第4の実施の形態の場合、取り除き部32の両側部が接続部24と連なっていないため、切り込み部34を介した切断面積をより低減できるので、取り除き部32を切り離すための工数をより少なくすることができる。
【0056】
なお、各実施の形態において、カウルカバー7の一部に、別の部品から成る部分を有していてもよい。
【0057】
また、カウルカバー7は、車体1の前部以外の部分に設け、例えば、ウインドシールドとしてのリアガラスと相手部材であるリアのトランクフードとの間などに配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば、自動車のフロントガラスとボンネットフードとの間に配置されるカウルカバーに適用できる。
【符号の説明】
【0059】
5 ウインドシールドであるフロントガラス
5a 車外面
5b 車内面
7 カウルカバー
22 重ね部
23 保持部
26 挿入部
30 別部材
32 取り除き部
34 切り込み部
35 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8