(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076624
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】キャッパ
(51)【国際特許分類】
B67B 3/20 20060101AFI20240530BHJP
B67B 3/26 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B67B3/20
B67B3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188281
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(72)【発明者】
【氏名】松下 真之
(72)【発明者】
【氏名】松井 一
(72)【発明者】
【氏名】下澤 涼祐
(72)【発明者】
【氏名】北元 宏明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇馬
【テーマコード(参考)】
3E080
【Fターム(参考)】
3E080AA07
3E080CD06
3E080CE09
3E080CF07
3E080EE02
3E080EE08
(57)【要約】
【課題】容器の口部のねじ部にキャップを巻き締めて取付ける動作において、容器の口部にねじれが発生してもキャップが緩むことのないキャッパを提供する。
【解決手段】チャック11は、キャップの外周面に対して進退可能に設けられた把持部を有する。サーボモータ12はチャック11を軸心周りに回転させるためのトルクを発生する。制御装置16は把持部の進退動作およびサーボモータ12のトルクの大きさを制御する。制御装置16は、把持部を前進させてキャップ組立体80を把持した状態で、チャック11にトルクを付与して回転させ、キャップ組立体80をねじ部に巻締めた後、トルクを徐々に低下させ、トルクが所定値以下へ低下してから把持部を後退させてキャップ組立体80を解放する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器側に設けられたねじ部にキャップを巻き締めて取付けるキャッパであって、
前記キャップの外周面に対して進退可能に設けられた把持部を有するチャックと、
前記チャックを軸心周りに回転させるためのトルクを発生するサーボモータと、
前記把持部の進退動作および前記サーボモータのトルクの大きさを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記把持部を前進させて前記キャップを把持した状態で、前記チャックにトルクを付与して回転させ、前記キャップを所定の締付けトルクで前記ねじ部に巻締めた後、前記チェックに付与するトルクを徐々に低下させ、前記トルクが所定値以下へ低下してから前記把持部を後退させて前記キャップを解放することを特徴とするキャッパ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記チャックに作用するトルクを検出することによって、前記トルクが所定値以下へ低下したと判断することを特徴とする請求項1に記載のキャッパ。
【請求項3】
前記制御手段は、前記チャックの回転速度を検出することによって、前記トルクが所定値以下へ低下したと判断することを特徴とする請求項1に記載のキャッパ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記所定の締付けトルクで巻き締めた後、前記チャックの回転角度を検出することによって、前記トルクが所定値以下へ低下したと判断することを特徴とする請求項1に記載のキャッパ。
【請求項5】
前記キャップが、前記ねじ部に取付けられた本体キャップに螺着されるオーバーキャップを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のキャッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップを容器の口部のねじ部に巻き締めて取付けるキャッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チャック(キャッピングヘッド)により把持されたキャップを容器の口部に巻き締めて取付ける技術が知られている(特許文献1)。特許文献1には、キャップの容器の口部への締付け動作中に、キャップの回転位置等に応じて、チャックに対するトルクの指令値が制御されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャックと容器とキャップの構成によっては、キャップの巻締動作終了時に容器の口部が巻締方向に5°ほどねじれる場合がある。そのような場合、巻締終了時、チャックに対する指令トルクは電気信号であるので瞬時にゼロになるが、チャックは空気圧の解放により、相対的に遅れて開状態に変化するので、キャップと容器の口部が巻締方向に例えば5°ねじれた状態でキャップはまだチャックにより把持されている。このため、この状態で指令トルクをゼロにすると、ねじれた容器の口部が元の状態に戻るときに、キャップを把持しているチャックも同時に逆転し、それによって発生するチャックの慣性がキャップにかかって、巻締めされたキャップが緩むことがあった。
本発明は、容器の口部のねじ部にキャップを巻き締めて取付ける動作において、容器の口部にねじれが発生してもキャップが緩むことのないキャッパを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器側に設けられたねじ部にキャップを巻き締めて取付けるキャッパであって、キャップの外周面に対して進退可能に設けられた把持部を有するチャックと、チャックを軸心周りに回転させるためのトルクを発生するサーボモータと、把持部の進退動作および前記サーボモータのトルクの大きさを制御する制御手段とを備え、制御手段は、把持部を前進させてキャップを把持した状態で、チャックにトルクを付与して回転させ、キャップを所定の締付けトルクでねじ部に巻締めた後、チャックに付与するトルクを徐々に低下させ、トルクが所定値以下へ低下してから把持部を後退させてキャップを解放することを特徴としている。
【0006】
制御手段は例えば、チャックに作用するトルクを検出することによって、トルクが所定値以下へ低下したと判断してもよい。また制御手段は、チャックの回転速度を検出することによって、トルクが所定値以下へ低下したと判断してもよい。また制御手段は、所定の締付けトルクで巻き締めた後、チャックの回転角度を検出することによって、トルクが所定値以下へ低下したと判断してもよい。一方キャップは、ねじ部に取付けられた本体キャップに螺着されるオーバーキャップを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器の口部のねじ部にキャップを巻き締めて取付ける動作において、容器の口部にねじれが発生してもキャップが緩むことのないキャッパを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を適用したキャッパの構成を概略的に示す模式図である。
【
図4】容器に対してキャップ組立体を巻き締める作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示された実施形態に基づいて本発明を説明する。
図1は本発明の一実施形態を適用したキャッパの構成を概略的に示す模式図である。容器70は図示しないコンベヤの上に載置され、コンベヤ上を停止した容器70の胴部はグリッパ10に把持されて固定される。容器70の口部の外面には容器ねじ部71が形成され、容器ねじ部71にはキャッパによってキャップ組立体80が螺着される。
【0010】
チャック11は、第1のサーボモータ12の出力軸13に同軸的に設けられた昇降軸14の下端に設けられる。昇降軸14は出力軸13の下部において、連結機構15によりスプライン結合される。すなわち出力軸13と昇降軸14は軸心周りに一体的に回転し、昇降軸14は出力軸13に対して相対的に昇降可能である。第1のサーボモータ12は制御装置16により制御され、チャック11を軸心周りに回転させるためのトルクを発生する。サーボモータ12にはエンコーダ17が設けられ、エンコーダ17は出力軸13の回転速度および回転角度位置に対応したパルス信号を制御装置16に出力する。またサーボモータ12は出力軸13の出力トルクに対応した電流値を電流計18に出力し、制御装置16は電流計18から得られる電流値に基づいて出力軸13の出力トルクを演算する。
【0011】
昇降軸14は、第2のサーボモータ20により出力軸13に対して昇降駆動される。第2のサーボモータ20の出力軸21は第1のサーボモータ12の出力軸13および昇降軸14に平行に延びるボールネジである。出力軸21にはナット22が螺合され、ナット22は連結機構15に固定される。したがって第2のサーボモータ20が回転駆動されると、出力軸21が軸心周りに回転し、ナット22が昇降して昇降軸14が昇降する。
【0012】
図2は容器70とキャップ組立体80を分解して示している。符号(a)はオーバーキャップ90を下から見た図であり、符号(b)は本体キャップ81を上から見た図である。容器70とキャップ組立体80は樹脂から成形され、キャップ組立体80は本体キャップ81とオーバーキャップ90を相互に螺合して構成される。本体キャップ81は円筒部82と、円筒部82の上面に設けられ、円筒部82よりも小径の口部83とを有する。
【0013】
オーバーキャップ90は本体キャップ81を全体的に覆うように構成される。本体キャップ81の円筒部82の内壁面には容器ねじ部71に螺合する雌ねじ(図示せず)が形成される。本体キャップ81の口部83の外面にはキャップねじ部84が形成され、オーバーキャップ90の内筒部91には、キャップねじ部84に螺合する内ねじ部92が形成される。内筒部91の下端には、本体キャップ81の口部83に形成された乗り越え部85とストッパ86に対応した位置に、係合部93が設けられる。
【0014】
キャップ組立体80は容器70に取付けられる前の工程において組み立てられる。すなわちオーバーキャップ90が本体キャップ81に被せられ、オーバーキャップ90の内筒部91が本体キャップ81の口部83に螺合される。オーバーキャップ90は、係合部93が乗り越え部85を乗り越えてストッパ86に係止するまで、本体キャップ81に対して回動される。このオーバーキャップ90の本体キャップ81に対する締付けトルクは例えば40N・cmである。これに対し、本体キャップ81の容器70の口部に対する締付けトルクは例えば170N・cmである。
【0015】
図3を参照してチャック11の構成を説明する。
ハウジング30は直径よりも軸方向長さが短い円筒状を呈し、本体31の下端に固定される。本体31の下端の中心部にはハウジング30内に突出する支持部材32が形成され、支持部材32の下端にはオーバーキャップ90の天面に当接する天面押え33が固定される。ハウジング30の中にはピストン34が収容される。ピストン34は、その中央に形成された孔35が支持部材32に嵌合され、ハウジング30天井内壁面と天面押え33の上面との間において昇降自在である。ハウジング30の下部にはゴム製の環状部材36が設けられ、ピストン34の外周縁に形成された環状の突起部37は常時環状部材36の上面に当接する。環状部材36の環状内壁面(把持部)38はオーバーキャップ90の外周面に当接可能である。
【0016】
本体31にはエア通路40が形成され、エア通路40の下端はハウジング30とピストン34の間に形成された空気圧室41に連通する。エア通路40は圧力源42に接続され、エア通路40と圧力源42の間には、エア通路40を開閉する開閉バルブ43が設けられる。ピストン34は、開閉バルブ43が開放して空気圧室41が加圧されたとき、下方へ変位して環状部材36の上面を押圧する。これにより環状部材36の環状内壁面38が内方へ膨張し、オーバーキャップ90の外周面に密着してオーバーキャップ90を把持する。これに対し、開閉バルブ43が閉塞されると、空気圧室41内の空気圧が低下するため、環状部材36は弾性的復元力によりピストン34を上昇させ、環状内壁面38は後退してオーバーキャップ90を解放する。すなわち環状内壁面38は空気圧室41内の空気圧に応じて、オーバーキャップ90の外周面に対して進退動する。
【0017】
次に
図4を参照し、容器70に対してキャップ組立体80を巻き締めて取付ける作用を説明する。キャップ組立体80はチャック11により把持され、チャック11がサーボモータ12により回転駆動されることにより、容器70の口部に巻き締められる。チャック11の環状内壁面38がキャップ組立体80に対して接離する進退動作、およびサーボモータ12のトルクの大きさは、制御装置16により制御される。
【0018】
図4において符号(a)はサーボモータ12に対する回転速度の指令値と実際の回転速度の時間的変化を示し、符号(b)はサーボモータ12に対するトルクの指令値と実際のトルク値の時間的変化を示し、符号(c)はチャック11に対する開閉動作の指令値と実際の開閉動作の時間的変化を示している。
【0019】
制御装置16はサーボモータ12に対して、回転速度の指令信号P1とトルクの指令信号Q1(締付けトルク)を出力し、これによりチャック11が回転し始める。制御装置16はエンコーダ17の出力信号に基づいて、チャック11の実際の回転速度P20~P24および回転角度位置を測定するとともに、電流計18により検出された電流値に基づいてチャック11に作用する実際のトルクQ21~Q24を測定する。また制御装置16は、チャック11に対して開閉信号としてON信号(閉信号)R1を出力しており、これにより、環状内壁面38が前進してキャップ組立体80のオーバーキャップ90を把持している。
【0020】
チャック11が回転し始めた初期段階において、チャック11は、本体キャップ81の雌ねじが容器ねじ部71に係合するまで一定の回転速度P21で、また相対的に小さいトルクQ21で回転する。本体キャップ81の雌ねじが容器ねじ部71に係合すると(時刻T1)、その後、チャック11の回転速度P22が急に低下し、トルクQ22が急に大きくなる。チャック11の回転速度P22が基準値Aまで低下すると(時刻T2)、本体キャップ81が締付けトルクQ1で容器ねじ部71に巻き締められたと見做される。そのとき、容器70のねじ部71が形成されている口部は巻締方向に5°ほどねじれた状態にある。
【0021】
チャック11の回転速度P22が基準値Aまで低下した後、制御装置16は、サーボモータ12に対する指令トルクを指令信号Q1から徐々に低下させる。すると、チャック11に作用する実際のトルクQ23は徐々に低下する。このとき、チャック11に作用するトルクの低下に伴い、巻締方向にねじれていた容器70の口部は徐々に巻締方向とは逆の方向に戻ろうとするため、オーバーキャップ90を把持しているチャック11も同時に巻締方向とは逆方向に回転する。このようにチャック11の実際の回転速度P22は時刻T2のときから徐々に低下して、負の値P23になる。すなわち、チャック11は巻締動作とは逆方向に回転し、容器70の口部が巻締方向にねじれた状態から中立位置へ向かって回転変位する。チャック11のトルクQ23が所定値以下へ低下すると(時刻T3)、容器70の口部が中立位置へ戻ったと見做され、制御装置16はチャック11に対する開閉信号としてOFF信号(開信号)R2を出力し、時間遅れをもって環状内壁面38が後退してオーバーキャップ90を解放する(符号R12)。
【0022】
以上のように制御装置16は、環状内壁面38を前進させてオーバーキャップ90を把持した状態で、チャック11にトルクを付与して回転させ、キャップ組立体80を所定の締付けトルクで容器ねじ部71に巻締めた後、チャック11に付与するトルクを徐々に低下させ、そのトルクの値を検出することによってトルクが所定値以下へ低下したと判断してから環状内壁面38を後退させてオーバーキャップ90を解放している。
【0023】
容器70の口部にキャップ組立体80を巻き締めて取付ける動作において、チャック11に付与されるトルクにより、容器70の口部にはねじれが発生する。しかし本実施形態では、チャック11に作用する実際のトルクが最大値(締付けトルクの値)になった後、チャック11のトルクを徐々に低下させるので、そのトルク低下の間に容器70の口部のねじれが解消し、オーバーキャップ90が本体キャップ81に対して緩むことはない。つまり、オーバーキャップ90の本体キャップ81に対する締付けトルクが、本体キャップ81の容器70の口部に対する締付けトルクよりも小さくても、オーバーキャップ90が本体キャップ81に対して緩むことなく、容器70の口部におけるねじれを除去することができる。
【0024】
なお本実施形態では、制御装置16はトルクQ23の値を検出することによってトルクが所定値以下になったことを判断しているが、回転速度や回転角度を検出することによってトルクが所定値以下になったことを判断してもよい。具体的には、回転速度を検出する場合、回転速度P23が負の値から徐々にゼロへ上昇する区間において所定値を定め、その速度になったことを検出してトルクQ23が所定値以下になったと判断してもよい。なお回転速度の所定値はゼロであってもよい。一方回転角度を検出する場合、キャップが締付けトルクQ1で巻き締められた時刻T2の時点からチャックが回転する角度を測定し、その角度が容器70の口部のねじれ角度(本実施形態では約5°)に相当する角度分回転したことを検出してトルクQ23が所定値以下になったと判断してもよい。
【0025】
図5は空気圧によって進退動する把持部を有するチャック11の他の例を示している。この例では、把持部はゴム製の環状部材ではなく、複数の当接部材51が所定間隔で環状に配置されて構成され、隣り合う当接部材51は図示しないバネにより、常時離間する方向(すなわち当接部材51の内壁面53が後退する方向)に付勢される。ピストン34は当接部材51に係合する円錐状のカム面52を有し、
図3の構成と同様に、空気圧によって昇降する。すなわち、ピストン34は、空気圧室41が加圧されたとき、符号(a)で示されるように、下降して当接部材51の上面を押圧し、これにより当接部材51の内壁面53が内方へ前進し、オーバーキャップの外周面に密着してオーバーキャップを把持する。これに対し、空気圧が解放されると、符号(b)で示されるように当接部材51はばね力により、ピストン34を上昇させて後退する。
【0026】
なお上記実施形態では、容器70の口部に、オーバーキャップ90と本体キャップ81から成るキャップ組立体80が巻き締めて取付けられる例を説明したが、本発明はこれに限定されず、単一のキャップを容器70の口部に取付ける場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
11 チャック
12 サーボモータ
16 制御装置(制御手段)
38 環状内壁面(把持部)
51 当接部材(把持部)
71 容器ねじ部(ねじ部)
80 キャップ組立体(キャップ)