(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076631
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20240530BHJP
A47L 9/04 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
A47L9/28 A
A47L9/04 A
A47L9/28 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188290
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鹿山 俊洋
【テーマコード(参考)】
3B057
3B061
【Fターム(参考)】
3B057DA09
3B061AD03
3B061AE02
(57)【要約】
【課題】モータの制御を安定化しつつ省電力化が可能な電気掃除機を提供する。
【解決手段】電気掃除機は、モータ12と、モータ12により回転される回転清掃体11と、モータ12を制御する制御手段と、を備える。制御手段は、モータ12の負荷電流値又はその関連値の増加及び減少の判定の結果に基づいてモータ12の駆動電力の減少処理と増加処理との少なくともいずれかをするものである。負荷電流値又は関連値の増減の所定時間内の検出回数の大きさに応じて、減少処理を生じにくくするための判定の判定基準の変更と、増加処理を生じやすくするための判定の判定基準の変更と、の少なくともいずれかをする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
該モータにより回転される回転清掃体と、
前記モータを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記モータの負荷電流値又はその関連値の増加及び減少の判定の結果に基づいて前記モータの駆動電力の減少処理と増加処理との少なくともいずれかをするものであって、
前記負荷電流値又は前記関連値の増減の所定時間内の検出回数の大きさに応じて、前記減少処理を生じにくくするための前記判定の判定基準の変更と、前記増加処理を生じやすくするための前記判定の判定基準の変更と、の少なくともいずれかをする
ことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
過去の所定時間における前記負荷電流値又は前記関連値の増加のピークと減少の底との検出回数と相関を有する値を基準回数とし、
前記減少処理を生じにくくするための前記判定の判定基準の変更と、前記増加処理を生じやすくするための前記判定の判定基準の変更と、の少なくともいずれかは、前記負荷電流値又は前記関連値の増減の所定時間内の検出回数が前記基準回数より大きいときにする
ことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記増加処理は、前記負荷電流値又は前記関連値の増加を判定した後、減少を判定し、再度増加を判定したことに基づいて実施されるものであって、
前記増加処理を生じやすくするための前記判定の判定基準の変更は、前記負荷電流値又は前記関連値の増加を判定した後減少を判定するまでの期限と、前記負荷電流値又は前記関連値の減少を判定した後再度増加を判定するまでの期限と、の少なくともいずれかの延長を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記増加処理は、少なくとも、前記負荷電流値又は前記関連値と、前記負荷電流値の変動量又は前記関連値と、前記負荷電流値又は前記関連値の変動比と、の少なくとも一つと閾値との比較に基づいて実施されるものであって、
前記増加処理を生じやすくするための前記判定の判定基準の変更は、前記閾値の絶対値の低減を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記減少処理は、少なくとも所定の判定時間内に前記モータの負荷電流値又は前記関連値の増加を判定しなかったことに基づいて実施されるものであって、
前記減少処理を生じにくくするための前記判定の判定基準の変更は、前記判定時間の延長を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記減少処理は、少なくとも、前記負荷電流値又は前記関連値と、前記負荷電流値又は前記関連値の変動量と、前記負荷電流値又は前記関連値の変動比と、の少なくとも一つと閾値と比較に基づいて実施されるものであって、
前記減少処理を生じにくくするための前記判定の判定基準の変更は、前記閾値の絶対値の低減を含む
ことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モータにより回転される回転清掃体を備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気掃除機に用いられる清掃具として、回転清掃体と、この回転清掃体を回転させるモータと、を備える、いわゆるアクティブブラシ構造の吸込口体が知られている。このような吸込口体では、モータの力によって回転された回転清掃体により被掃除面から塵埃を一旦掻き上げてから吸い込むことにより、絨毯のような塵埃が絡み付きやすい被掃除面からも効率的に塵埃を除去できる。
【0003】
回転清掃体は、安全性や省エネルギー性を考慮すると、吸込口体の回転清掃体が被掃除面から離れた状態で回転を抑制又は停止させることが好ましい。他方、絨毯上等、吸込口体による塵埃除去性能が求められる場面では、回転清掃体が十分なトルクを持って回転することが好ましい。そこで、モータが駆動している状態で、このモータの消費電流に基づく比較値が所定の閾値を所定時間に亘り下回り続けたときにモータの駆動電力を減少させ、吸込口体が絨毯上にある場合等、比較値が所定の閾値を上回るときにはモータの駆動電力を増加させて回転トルクを上げるものが知られている。
【0004】
このように、電流の変動に基づいてモータの挙動を制御する構成の場合、温度や湿度によるフローリングや畳の撓み、絨毯の毛の柔らかさの違い、ユーザが吸込口体を動かす速さやストローク等、回転清掃体またはモータの回転負荷との関連性が高い条件の相違に起因する負荷電流値の変動や相違に対して、モータの駆動電力の制御を安定させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、モータの制御を安定化しつつ省電力化が可能な電気掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電気掃除機は、モータと、モータにより回転される回転清掃体と、モータを制御する制御手段と、を備える。制御手段は、モータの負荷電流値又はその関連値の増加及び減少の判定の結果に基づいてモータの駆動電力の減少処理と増加処理との少なくともいずれかをするものである。負荷電流値又は関連値の増減の所定時間内の検出回数の大きさに応じて、減少処理を生じにくくするための判定の判定基準の変更と、増加処理を生じやすくするための判定の判定基準の変更と、の少なくともいずれかをする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の電気掃除機の一部を模式的に示す断面図である。
【
図2】同上電気掃除機の一部の内部構造を示すブロック図である。
【
図4】同上電気掃除機の制御を示すフローチャートである。
【
図5】同上電気掃除機のモータの駆動電力が小さいときの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1において、1は清掃具である。清掃具1は、掃除ヘッド等とも呼ばれ、床等の被掃除面である被掃除部Fを掃除する。清掃具1は、ケース体10を備える。ケース体10には、集塵口100が形成されている。集塵口100に臨んで回転清掃体11がケース体10に回転可能に取り付けられている。回転清掃体11は、モータ12により回転されて被掃除部Fの塵埃を掻き上げる。モータ12は、
図2に示す制御手段13により制御される。なお、以下、
図1に示す清掃具1の前後方向は、使用者が清掃具1を使用する際の使用者から見た方向を基準とする。一般的には、使用者から離れる方向を前方向、使用者に近づく方向を後方向とする。例えば、
図1に示す矢印FR方向を前方向、矢印RR方向を後方向とする。
【0011】
図3に示すように、清掃具1は、電気掃除機CLに用いられる。本実施形態において、清掃具1は、電気掃除機CLの掃除機本体2に配置された電動送風機等の吸引源3の駆動により生じた負圧によって空気とともに塵埃を分離部4へと吸い込む、吸引型の電気掃除機CLに適用される。電気掃除機CLは、床走行型又はキャニスタ型、スティック型、アップライト型、ハンディ型、あるいは、自走式電気掃除機等、任意のものとしてよい。本実施形態では、電気掃除機CLは、スティック型の電気掃除機を例に挙げて説明する。また、図示される例では、清掃具1は、吸込口体又は床ブラシとも呼ばれ、管部である延長管5、あるいは、掃除機本体2に対し、ケース体10に接続された接続部である接続管14を介して機械的及び流体的に接続される。さらに、本実施形態において、吸引源3の動作又は吸引力、及び、回転清掃体11又はモータ12の回転のオンオフは、把持操作用の手元操作部6のスイッチ7の操作により使用者が設定する。掃除機本体2には、スイッチ7により設定された操作に応じて吸引源3を動作させる本体制御部8が配置されている。スイッチ7又は本体制御部8が、制御手段13と電気的に接続される。制御手段13は、清掃具1に配置されていてもよいが、本実施形態では、本体制御部8に制御手段13の少なくとも一部が組み込まれている。電気掃除機CLの電源部Bは、例えば掃除機本体2に配置される。本実施形態において、電源部Bはバッテリ又は二次電池とするが、これに限らず、商用電源等の外部電源から電力を取るコードリール装置等でもよい。
【0012】
次に、制御手段13の内部構造について
図1及び
図2を参照して説明する。
【0013】
制御手段13は、モータ12の駆動電力を可変する電力可変部130を有する。電力可変部130は、モータ12の駆動電力を無段階に変化させてもよいし、複数の段階のいずれかに変化させてもよい。本実施形態では、電力可変部130は、モータ12の駆動電力を、少なくとも複数の段階のいずれかに設定可能となっている。
【0014】
電力可変部130によるモータ12の駆動電力の可変方法としては、例えば電源からモータ12への通電時間又は通電量を調整し、モータ12の駆動電力を、モータ12の通電時間に応じて設定する。一例として、電力可変部130は、モータ12への制御信号つまり印加電圧をPWM信号とし、PWM信号のデューティ比を調整することで、モータ12の駆動電力を設定する。つまり、PWM信号のデューティ比を100%とするとモータ12の駆動電力が最大となり、PWM信号のデューティ比を下げることでモータ12の駆動電力が減少され、回転清掃体11の回転速度及び回転トルクが低下するようになっている。つまり、電力可変部130は、モータ12の駆動電力を増加させる際に、デューティ比を増加させ、モータ12の駆動電力を減少させる際に、デューティ比を減少させる。本実施形態において、電力可変部130は、複数の異なるデューティ比を有し、モータ12のPWM信号のデューティ比をこれらのデューティ比のいずれかに選択的に設定することにより、モータ12の駆動電力を、複数の異なる駆動電力に設定可能となっている。
【0015】
なお、制御手段13又は電力可変部130は、回転清掃体11を任意の方向に回転させるようにモータ12を制御してよい。例えば、制御手段13又は電力可変部130は、清掃具1の進行方向に拘らず回転清掃体11の回転方向が一方向に固定されるようにモータ12を制御してもよいし、清掃具1の進行方向に応じて回転清掃体11の回転方向が切り換わるようにモータ12を制御してもよい。本実施形態では、制御手段13又は電力可変部130は、回転清掃体11を被掃除部F側が前方から後方に向かう回転方向、つまり
図1に示す矢印Xに示す反時計回り方向となるようにモータ12の回転方向を制御する。つまり、本実施形態において、制御手段13又は電力可変部130は、回転清掃体11が被掃除部Fを前方から後方に擦る回転方向となるようにモータ12の回転方向を制御する。すなわち、制御手段13又は電力可変部130は、モータ12の回転方向を所定の一定方向とする。本実施形態において、回転清掃体11の回転方向は、清掃具1の前進にとっては順回転又は正転、つまり清掃具1の前進を補助する方向であり、清掃具1の後進にとっては逆回転又は逆転、つまり清掃具1の後進に対してより大きい負荷を与える方向である。
【0016】
また、制御手段13は、モータ12の負荷電流値を検出する電流検出部131を有する。モータ12の負荷電流値は、モータ12により回転される回転清掃体11の負荷状態を示す電流値であり、モータ12の実電流値と相関を有する。モータ12の実電流値は、例えば所定時間毎に所定回数取得した電流値の平均値である。この実電流値は、電力可変部130のPWM信号のデューティ比に大きく依存する。そのため、本実施形態において、負荷電流値は、PWM信号のデューティ比から独立させるために、実電流値を電力可変部130でのPWM信号のデューティ比で除した値として求められる。すなわち、(負荷電流値)=(実電流値)/(デューティ比)である。したがって、本実施形態の負荷電流値は、モータ12に流れる電流値から算出された値である。電流検出部131による負荷電流値の検出周期Tは、例えば100msである。
【0017】
制御手段13による制御や判定においては、負荷電流値に代えて、又は、負荷電流値に加えて、負荷電流値の関連値を用いてもよい。負荷電流値の関連値としては、モータ12に流れる電流値自体、モータ12に流れる電流値から所定値を減算した値等の値が考えられる。この所定値は、回転清掃体11又はモータ12の回転負荷を一定又は略一定としたときの負荷電流値、例えば回転清掃体11を空転させたとき、特に清掃具1の製造時に確認のために回転清掃体11を空転させたときに検出されたモータ12の負荷電流値の半分の値とする。つまり、負荷電流値の関連値としては、モータ12に流れる電流値から算出された、この電流値と相関を有する値を含むものとする。以下、「負荷電流値又はその関連値」を単に「負荷電流値」といい、「回転清掃体11又はモータ12の回転負荷」を単に「回転負荷」というものとする。
【0018】
電流検出部131によるモータ12の電流値の検出方法としては、一例として、検出素子である抵抗値が小さい抵抗、いわゆるシャント抵抗に電流を流し、シャント抵抗の両端に発生する電位差を増幅して変換部であるA/Dコンバータに入力し、A/Dコンバータの出力を取り込む。
【0019】
なお、本実施形態において、電流検出部131は、検出素子及びA/Dコンバータ等を有してモータ12に流れる電流値を取得する電流値取得部、実電流値を求める実電流値算出部、及び、負荷電流値を求める負荷電流値算出部を備えるものとして説明したが、電流値取得部、実電流値算出部、及び、負荷電流値算出部については、それぞれ別個の回路部として構成されていてもよく、それらが任意に組み合わせられて構成されていてもよく、それらの一部が他の回路部の一部をなしていてもよい。すなわち、電流検出部131は、電流値取得部、実電流値算出部、及び、負荷電流値算出部を一体的に備えるものに限定されない。
【0020】
さらに、制御手段13は、メモリ等の記憶部132を有する。本実施形態において、記憶部132には、電流検出部131により検出された負荷電流値が都度記憶され、保持される。記憶部132に記憶される負荷電流値は、新たな負荷電流値を検出する度に更新されてもよいし、所定時間保持されて、新たな負荷電流値が検出される度に最も古い負荷電流値が削除されてもよい。また、記憶部132には、負荷電流値の最小値及び/又は最大値が記憶される。最小値、最大値は、所定時間保持された後、削除されてもよい。さらに、記憶部132には、各種の判定用の閾値や判定値等が記憶される。なお、以下、最小値とは、一つだけの最小の値に限るものではなく、最小の値に十分近い値、又は、変動する負荷電流値のうちの複数の極小値又はピーク値のいずれか、又は、それら極小値又はピーク値の少なくともいずれかの平均値等でもよい。同様に、最大値とは、一つだけの最大の値に限るものではなく、最大の値に十分近い値、又は、変動する負荷電流値のうちの複数の極大値又はピーク値のいずれか、又は、それら極大値又はピーク値の少なくともいずれかの平均値等でもよい。また、記憶部132には、その他の任意の閾値やフラグ、プログラム等、制御手段13による制御に用いられる各種データが記憶される。
【0021】
また、制御手段13は、判定部133を有する。判定部133は、電流検出部131で検出された負荷電流値及び記憶部132に記憶された過去の負荷電流値に基づき、負荷電流値の増加及び減少を判定し、その判定の結果から、清掃具1又は回転清掃体11の状態を判定するとともに、この判定に応じて、電力可変部130によるモータ12の駆動電力の設定を制御する。この判定部133による判定については、後述する。
【0022】
なお、モータ12及び制御手段13の電源は、清掃具1に備えられていてもよいし、掃除機本体2の電源部Bから取ってもよい。
【0023】
次に、一実施形態の動作を説明する。
【0024】
掃除の際、使用者は、手元操作部6を把持し、スイッチ7を操作することで、本体制御部8が吸引源3を動作させる。吸引源3の動作により生じた負圧が、分離部4を介して延長管5、清掃具1と作用することで、集塵口100から被掃除部の塵埃が空気とともに分離部4へと吸い込まれる。使用者は、手元操作部6により清掃具1を被掃除部F上に載置した状態で前後に交互に移動させることで、被掃除部F上の塵埃を分離部4へと順次吸い込ませていく。分離部4に吸い込まれた含塵空気は、分離部4において、塵埃が分離捕集される。塵埃が分離された空気は、吸引源3を冷却した後、掃除機本体2の外部に排出される。
【0025】
また、制御手段13は、電力可変部130により清掃具1のモータ12を起動させて回転清掃体11を回転させる。回転清掃体11の回転により、被掃除部Fの塵埃が掻き上げられ、この掻き上げられた塵埃が、集塵口100に作用する負圧によって分離部4へと吸い込まれる。なお、使用者は、回転清掃体11による物体の巻き込みを防止する等、必要に応じて、スイッチ7を操作して清掃具1の回転清掃体11の回転を停止させることが可能である。
【0026】
制御手段13は、モータ12の起動時の駆動電力を任意に設定してよいが、本実施形態では、一例として、モータ12の起動時すなわち回転清掃体11を始動させる際に、清掃具1が被掃除部Fに接しているか否か不明であるため、より高い安全性を考慮し、好ましくは、制御手段13は、電力可変部130によりモータ12を相対的に小さい駆動電力で起動させる。これにより回転清掃体11が低速回転する。そして、制御手段13は、モータ12の駆動電力が相対的に小さい状態で所定の増加条件を満たしたことを判定部133により判定したときに、電力可変部130によりモータ12の駆動電力を増加させ、回転清掃体11を高速回転させる。この制御を、以下、増加処理又は電力増加制御という。また、制御手段13は、モータ12の駆動電力が相対的に大きい状態で所定の減少条件を満たしたことを判定部133により判定したときに、電力可変部130によりモータ12の駆動電力を減少させ、回転清掃体11を低速回転又は停止させる。この制御を、以下、減少処理又は電力減少制御という。
【0027】
上記の減少処理は、モータ12の回転速度を、相対的に高い状態から減少させて、回転清掃体11の回転速度又は回転トルクを小さくすることを狙った制御である。減少処理を実施するための条件は、モータ12の負荷電流値の増加及び減少の判定の結果に基づいて任意に設定してよいが、本実施形態では、少なくとも、所定の第一判定時間内にモータ12の負荷電流値が増加したことを判定しなかったこと、つまり少なくとも第一判定時間内にモータ12の負荷電流値の増加判定が生じなかったこと、に基づいて減少処理が実施される。この条件は、被掃除部Fが、回転負荷が小さい木床等であること、清掃具1が被掃除部F上で移動しなかったこと、あるいは、清掃具1又は回転清掃体11が被掃除部Fから離れていること、を検出したことに対応する。
【0028】
また、上記の増加処理は、モータ12の回転速度を、相対的に低い状態から増加させて、回転清掃体11の回転速度又は回転トルクを大きくすることを狙った制御である。増加処理を実施するための条件は、モータ12の負荷電流値の増加及び減少の判定の結果に基づいて任意に設定してよいが、本実施形態では、少なくとも、モータ12の負荷電流値の増加を判定した後、負荷電流値の減少を判定し、さらにその後負荷電流値の再増加を判定したこと、つまり少なくともモータ12の負荷電流値の増加を判定し、その判定後、第二判定時間内にモータ12の負荷電流値の減少を判定し、さらにその判定後、第三判定時間内にモータ12の負荷電流値の増加を判定したこと、に基づいて増加処理が実施される。この条件は、掃除時に使用者が清掃具1を被掃除部Fに接した状態で前後に往復させる動作に着目するものであり、清掃具1が絨毯等の被掃除部F上で前進、後進、前進をしたことを検出したことに対応する。
【0029】
ここで、一般的な使用者による清掃具1の移動速度は、JIS等の所定の規格に規定されているように、0.5m/秒であり、一般的な使用者が清掃具1の前進を開始してから停止するまでの時間は、0.8~1秒程度、清掃具1の後進を開始してから停止又は再度前進するまでの時間は、1~1.5秒程度である。そこで、例えば第一判定時間は、清掃具1が一往復に要するまでの時間とし、2.0秒等を初期値として設定されている。また、第二判定時間及び第三判定時間は、互いに同一でもよいし異なっていてもよいが、例えば第二判定時間が、前進を開始してから停止するまでの時間として0.8秒、第三判定時間が後進を開始してから停止又は再度前進するまでの時間として1.0秒、等を初期値として設定されている。
【0030】
なお、本実施形態において、減少処理における「モータ12の駆動電力を減少させる」又は「相対的に小さい駆動電力に設定する」とは、制御手段13が、電力可変部130により、モータ12の駆動電力を0以上の所定の第一駆動電力に設定することを言う。第一駆動電力とは、電力可変部130で設定可能な複数の駆動電力のうち相対的に小さいほうの駆動電力、あるいは、回転清掃体11に使用者が触れても安全な小さい回転数となる駆動電力等である。なお、仮にモータ12の駆動電力が第一駆動電力の状態で減少処理の判定条件を満たした場合には、モータ12の駆動電力はそのまま維持されることとなる。減少処理により設定する第一駆動電力については、被掃除部Fが、回転負荷が小さい木床等であること、清掃具1が被掃除部F上で移動しなかったこと、清掃具1又は回転清掃体11が被掃除部Fから離れていること、のそれぞれで異なっていてもよいし、これらのいずれか二つが等しく、一つがそれらと異なっていてもよい。
【0031】
同様に、本実施形態において、増加処理における「モータ12の駆動電力を増加させる」又は「相対的に大きい駆動電力に設定する」とは、制御手段13が、電力可変部130により、モータ12の駆動電力をデューティ100%以下の所定の第二駆動電力に設定することを言う。第二駆動電力とは、電力可変部130で設定可能な複数の駆動電力のうち相対的に大きいほうの駆動電力であり、第一駆動電力よりも大きい。本実施形態では、電力可変部130は、第二駆動電力用のPWM信号のデューティ比を例えば100%とする。したがって、仮にモータ12の駆動電力が第二駆動電力の状態で増加処理の判定条件を満たした場合には、モータ12の駆動電力はそのまま維持されることとなる。
【0032】
本実施形態では、モータ12の負荷電流値の増加判定及び減少判定を、制御手段13の電流検出部131により検出されたモータ12の負荷電流値の変動に基づき判定部133により行う。具体的に、制御手段13は、判定部133において、電流検出部131により検出されたモータ12の所定の負荷電流値、及び/又は、所定の負荷電流値から算出された値と、所定の閾値と、の大小の比較に応じて、モータ12の負荷電流値の増加及び減少を判定する。
【0033】
本実施形態において、「所定の負荷電流値」とは、判定時から所定の短時間以内の、すなわち直近の負荷電流値等をいい、好適には最新の負荷電流値が用いられるが、これに限らず、最新の負荷電流値に対して直前の負荷電流値、すなわち記憶部132に記憶されている負荷電流値のうち最新のもの、つまり判定時から一検出周期T秒前の負荷電流値でもよい。また、直前の負荷電流値とは、記憶部132に記憶されている負荷電流値のうち所定の負荷電流値に最も近い過去のもの、つまり所定の負荷電流値から検出周期T秒前の負荷電流値とするが、これに限らず、所定の負荷電流値から2T秒前あるいは3T秒前等、十分短い所定時間以内の過去の負荷電流値を用いてもよいし、所定の負荷電流値から所定時間以内の負荷電流値の平均値等、直前の複数の負荷電流値から算出された値でもよい。
【0034】
また、本実施形態において、負荷電流値から算出された値とは、所定の負荷電流値とその直前の負荷電流値とに基づく算出値である。この算出値は、例えば所定の負荷電流値とその直前の負荷電流値との差、及び/又は、所定の負荷電流値とその直前の負荷電流値との比である。すなわち、この算出値は、負荷電流値の変動量、及び/又は、負荷電流値の変動比である。
【0035】
そして、制御手段13は、判定部133において、例えば以下の(1-a)ないし(1-c)の少なくともいずれかの場合に負荷電流値が増加したと判定する。
【0036】
(1-a)電流検出部131により検出されたモータ12の負荷電流値が、所定の増加検出時間内に所定の増加閾値より大きい状態となった場合。
【0037】
(1-b)電流検出部131により検出されたモータ12の負荷電流値と、過去の所定の増加検出時間内に記憶部132に記憶された負荷電流値の最小値と、の差の絶対値、つまり変動量が、所定の増加閾値より大きくなった場合。
【0038】
(1-c)電流検出部131により検出されたモータ12の負荷電流値と、過去の所定の増加検出時間内に記憶部132に記憶された負荷電流値の最小値と、の比、つまり変動比が、所定の増加閾値より大きくなった場合。
【0039】
同様に、制御手段13は、判定部133において、例えば以下の(2-a)ないし(2-c)の少なくともいずれかの場合に負荷電流値が減少したと判定する。
【0040】
(2-a)電流検出部131により検出されたモータ12の負荷電流値が、所定の減少検出時間内に所定の減少閾値以下の状態となった場合。
【0041】
(2-b)電流検出部131により検出されたモータ12の負荷電流値と、過去の所定の減少検出時間内に記憶部132に記憶された負荷電流値の最大値と、の差の絶対値、つまり変動量が、所定の減少閾値より大きくなった場合。
【0042】
(2-c)過去の所定の減少検出時間内に記憶部132に記憶された負荷電流値の最大値と、電流検出部131により検出されたモータ12の負荷電流値と、の比、つまり変動比が、所定の減少閾値より小さくなった場合。
【0043】
増加検出時間及び減少検出時間は、それぞれ第一判定時間、第二判定時間及び第三判定時間以下の所定の短時間である。増加検出時間と減少検出時間とは同一でもよいし異なっていてもよい。また、増加閾値と減少閾値とは、絶対値が同一でもよいし異なっていてもよい。
【0044】
ここで、モータ12の負荷電流値は、回転負荷との関連性が低い要因と、回転負荷と関連性が高い要因と、を含む。回転負荷との関連性が低い要因としては、モータ12の電流値のばらつき、モータ12の内部温度、あるいは、回転清掃体11への毛絡み等による経年劣化等の影響、が挙げられる。制御手段13では、減少処理及び増加処理において、上記のように、モータ12の負荷電流値の変動と減少閾値及び増加閾値との比較に基づき判定部133で負荷電流値の減少判定及び増加判定をすることで、回転負荷との関連性が低い要因をある程度排除し、減少判定及び増加判定の判定精度を高めることが可能となる。
【0045】
他方、回転負荷との関連性が高い要因としては、被掃除部Fが木床や畳である場合、温度や湿度に起因するそれらの撓み、被掃除部Fが絨毯等である場合の毛の柔らかさの違い、使用者が清掃具1を動かす速さやストローク等、が挙げられる。これらの要因によるモータ12の負荷電流値の変動が減少判定及び増加判定に影響を与え得る。モータ12の負荷電流値の減少判定及び増加判定が影響を受けると、減少処理及び増加処理についても、使用者にとっては不必要なタイミングで減少処理や増加処理が実施されたり、減少処理や増加処理を短時間で繰り返したりして、モータ12の駆動電力の制御が安定しないことが想定される。
【0046】
例えば、絨毯等の被掃除部Fを掃除しているときには、負荷電流値の変動が大きく、一般的に、使用者は一旦モータ12の駆動電力が大きい状態、つまり回転清掃体11の回転速度が大きい状態に設定されれば、それを維持すること希望することが多い。しかしながら、使用者が清掃具1を被掃除部F上でゆっくりと動かしていると、清掃具1が往復するより早く第一判定時間が経過してしまうために制御手段13が減少処理を実施し、あるいは、清掃具1が前進から後進するまでに第二判定時間が経過してしまう、あるいは、後進から前進するまでに第三判定時間が経過してしまうために制御手段13が増加処理を実施せず、回転清掃体11の回転速度が上がらないことが想定される。この場合、使用者は、回転清掃体11の回転速度を上げるために、制御手段13による増加処理を促すように清掃具1を被掃除部F上で速く動かすようにすることが予想される。
【0047】
そこで、使用者が清掃具1を動かす速さが負荷電流値の増減の検出頻度として現れることから、制御手段13は、電流検出部131により負荷電流値の増加のピークを検出した後所定の待機時間内に減少の底を検出したことを負荷電流値が1回増減したものと判定して、その負荷電流値の増減の検出回数を所定時間毎にカウントし、その履歴を記憶部132に記憶する。そして、負荷電流値の増減の所定時間内の検出回数の大きさに応じて、つまり負荷電流値の増減の頻度が大きくなると、制御手段13は、減少処理が生じにくくするための負荷電流値の増加及び/又は減少の判定の判定基準の変更と、増加処理が生じやすくするための負荷電流値の増加及び/又は減少の判定の判定基準の変更と、の少なくともいずれかをする。すなわち、制御手段13は、減少処理を実施するための負荷電流値の増加及び/又は減少の判定の判定基準を厳格化する、及び/又は、増加処理を実施するための負荷電流値の増加及び/又は減少の判定の判定基準を緩和する。なお、以下、「負荷電流値の増加及び/又は減少の判定の判定基準」を、単に「判定基準」という。
【0048】
負荷電流値の増加のピークとは、例えば電流検出部131により負荷電流値のピーク値又は極大値を検出したことでもよいし、判定部133による負荷電流値の判定が、増加判定から減少判定に切り変わったことでもよい。同様に、負荷電流値の減少の底とは、例えば電流検出部131により負荷電流値の底値又は極小値を検出したことでもよいし、判定部133による負荷電流値の判定が、減少判定から増加判定に切り変わったことでもよい。
【0049】
なお、「検出回数の大きさに応じて」とは、検出回数が予め決められた所定の基準回数より大きいか否かに応じて判定してもよいし、検出回数の増減に応じて変化する関数により各判定時間及び/又は閾値を設定してもよい。
【0050】
本実施形態では、負荷電流値の増減の所定時間内の検出回数の大きさは、例えば検出回数を所定の基準回数と比較して、基準回数より大きいか否かに基づいて制御手段13の判定部133により判定するものとする。
【0051】
基準回数は、判定時に対して所定時間前にカウントした、すなわち直前の所定時間における負荷電流値の増加のピーク又は減少の底の検出回数、又は、その検出回数に1以上の所定の固定値を加算又は乗算した値、つまり検出回数に比べて一定数又は一定比大きい値等、直前の所定時間における負荷電流値の増加のピーク又は減少の底の検出回数と相関を有する値でもよいし、予め設定された固定値でもよい。基準回数を予め設定された固定値とする場合、その固定値は、電気掃除機CLの工場出荷時等に予め設定された固定値でもよいし、過去にカウントした負荷電流値の増加のピーク及び減少の底の所定時間内の検出回数の最小値、最大値、最頻値、あるいはそれらのいずれかの所定の複数回分の平均値等、過去にカウントした負荷電流値の増加のピーク及び減少の底の所定時間内の検出回数と相関を有する値でもよい。
【0052】
また、本実施形態において、増加処理は、モータ12の負荷電流値に基づき判定部133が、清掃具1の前進、後進、前進、の一往復半を検出したときに実施されるので、一般的な速度で清掃具1を動かした状態で、清掃具1がその二倍の三往復をするまでの間を所定時間として設定している。所定時間としては、検出周期Tの倍数であり、例えば10秒程度が好ましい。
【0053】
また、待機時間は、モータ12の負荷電流値の増減の回数を判定するにあたり、負荷電流値がピークから底となるのを検出するまでの期限であって、負荷電流値がピークから減り始めて安定するまでの時間として設定している。つまり、清掃具1が後進し始めた瞬間に負荷電流値はピークとなり、清掃具1が後進を終了して前進を始める直前に負荷電流値は底となるので、清掃具1が後進をし始めてから後進を止めるまでの時間よりも短い時間を待機時間として設定している。待機時間としては、検出周期Tの倍数であり、所定時間より短く、例えば1.0秒程度が好ましい。
【0054】
このように構成することで、例えば使用者が絨毯等の回転負荷が大きい被掃除部F上で清掃具1をゆっくりと動かして掃除する場合等、使用者が回転清掃体11の回転速度の増加を希望しているにも拘らず制御手段13が増加処理を生じさせにくい状況で、そのことに気づいた使用者が清掃具1を被掃除部F上で動かす速さを上げたときに、制御手段13が増加処理を生じさせやすく、又は、減少処理を生じさせにくくして、回転清掃体11の回転速度を増加させることが可能になるとともに、次回以降は使用者が清掃具1を仮にゆっくり動かして掃除しても、制御手段13が増加処理を生じさせやすく又は減少処理を生じさせにくくすることができる。そこで、モータ12の制御を安定化しつつ、必要なときに減少処理、あるいは増加処理を実施して、省電力化が可能となる。
【0055】
一例として、減少処理を生じにくくするための判定基準の変更は、第一判定時間の延長、及び/又は、増加閾値の絶対値の低減を含む。
【0056】
例えば、第一判定時間を延長すると、制御手段13が判定部133においてモータ12の負荷電流値が増加したことを判定する機会が増えるので、負荷電流値の増加判定が出やすくなる。同様に、例えば、増加閾値の絶対値を低減すると、負荷電流値、あるいはその変動量、変動比の増加が比較的小さくても増加閾値を上回りやすく、負荷電流値の増加判定が出やすくなる。そのため、制御手段13が、判定部133において第一判定時間内に増加判定をしないという状況が相対的に減ることによって、減少処理が生じにくくなる。
【0057】
このように、減少処理を、少なくとも所定の第一判定時間内に負荷電流値の増加判定が生じなかったことに基づいて実施する制御手段13において、減少処理を生じにくくするための判定基準の変更が、第一判定時間の延長を含むことで、第一判定時間の延長によって負荷電流値の増加判定をする機会を増やすことができ、減少処理を容易に生じにくくさせることができる。
【0058】
また、減少処理を生じにくくするための判定基準の変更が、増加閾値の絶対値の低減を含むことで、負荷電流値やその変動量、変動比が大きく増加しなくても増加判定が生じやすくなるので、減少処理を生じにくくさせることができる。
【0059】
また、一例として、増加処理を生じやすくするための判定基準の変更は、増加閾値の絶対値の低減、及び/又は、第二判定時間及び/又は第三判定時間の延長を含む。
【0060】
例えば、増加閾値の絶対値を低減すると、負荷電流値、あるいはその変動量、変動比の増加が比較的小さくても増加閾値を上回りやすく、負荷電流値の増加判定が出やすくなる。また、例えば、第二判定時間及び/又は第三判定時間を延長すると、制御手段13が判定部133においてモータ12の負荷電流値が減少したことを判定する機会、及び/又は、モータ12の負荷電流値が増加したことを判定する機会が増えるので、負荷電流値の減少判定/及び又は増加判定が出やすくなる。さらには、減少閾値については、負荷電流値、あるいは、その変動比に対する減少閾値の絶対値を上昇すると、負荷電流値、あるいはその変動比の減少が比較的小さくても減少閾値を下回りやすく、負荷電流値の変動量に対する減少閾値の絶対値を低減すると、負荷電流値の変動量の減少が比較的小さくてもその絶対値が減少閾値を上回りやすいので、負荷電流値の減少判定が出やすくなる。そのため、制御手段13が、判定部133において負荷電流値の増加の後、減少、及び、再増加を判定する状況が増えることによって、増加処理が生じやすくなる。
【0061】
このように、増加処理を、少なくとも、負荷電流値の増加を判定した後、減少を判定し、再度増加を判定したことに基づいて実施する制御手段13において、増加処理を生じやすくするための判定基準の変更が、第二判定時間と、第三判定時間と、の少なくともいずれかの延長を含むことで、負荷電流の増加判定後に減少判定する機会、及び/又は、減少判定後に増加判定する機会を増やすことができ、増加処理を生じやすくさせることができる。
【0062】
増加処理を生じやすくするための判定基準の変更が、増加閾値の絶対値の低減を含むことで、負荷電流値やその変動量、変動比が大きく増加しなくても増加判定が生じやすくなるので、増加処理を生じやすくさせることができる。
【0063】
そして、基準回数を、過去の所定時間における負荷電流値の増加のピークと減少の底との検出回数と相関を有する値とすることで、使用者が清掃具1を被掃除部F上で動かす速さを変更したことを、負荷電流値の増減の検出回数の変化によって確実に検出できる。
【0064】
なお、上記の減少閾値又は増加閾値の絶対値の低減及び/又は上昇については、予め記憶されたテーブル等を用いて複数の固定値から選択してもよいし、所定の関数等により算出されてもよい。同様に、各判定時間の短縮及び/又は延長については、予め記憶されたテーブル等を用いて複数の固定値から選択してもよいし、所定の関数等により算出されてもよい。
【0065】
上記の制御を、
図4および
図5に示すフローチャートも参照して説明する。
【0066】
図4に示すように、電気掃除機CLは、起動すると、ステップS1において、制御手段13が、電力可変部130により、モータ12の駆動電力Pを相対的に小さい第一駆動電力PL、又は、相対的に大きい第二駆動電力PHに設定する。また、モータ12の電力状態が第一駆動電力PLとなったか否かを示すフラグF_L、及び、モータ12の電力状態が第二駆動電力PHとなったか否かを示すフラグF_Hを、それぞれFalseに設定する。さらに、基準回数NTHを0に設定する。
【0067】
次いで、ステップS2において、基準回数NTHを設定する設定制御を実施する。設定制御では、基準回数NTHが0である場合、基準回数NTHを所定の固定値に設定する。
【0068】
さらに、ステップS3において、制御手段13は、判定部133により、モータ12の駆動電力Pが第一駆動電力であるか否かを判定する。そして、ステップS3において、モータ12の駆動電力Pが第一駆動電力PLであると判定した場合、つまりステップS3のYESの場合、ステップS4の判定制御に進み、ステップS4が終了すると、ステップS3に進む。また、ステップS3において、モータ12の駆動電力Pが第一駆動電力PLでないと判定した場合、つまりステップS3のNOの場合、ステップS3を繰り返す。ステップS3及びステップS4の処理は、検出周期T毎に実施される。
【0069】
図5に判定制御を示す。まず、ステップS11において、制御手段13は、負荷電流値の増減の回数のタイマ又は時間カウンタT_waveを1加算する。判定制御が検出周期T毎に実施されることから、時間カウンタT_waveの1カウントは、検出周期Tの1回分に相当する。つまり、時間カウンタT_waveは、検出周期Tの倍数となる。次いで、ステップS12において、制御手段13は、判定部133により、負荷電流値がピークを達成したか否かを示すタイマ又は時間カウンタT_peakが0であるか否かを判定する。ステップS12において、時間カウンタT_peakが0である、すなわち負荷電流値がピークを達成していないと判定した場合、つまりステップS12のYESの場合、ステップS13において、制御手段13は、判定部133により、負荷電流値がピークとなったか否かを判定する。ステップS13において、負荷電流値がピークとなったと判定した場合、つまりステップS13のYESの場合、ステップS14において、時間カウンタT_peakを1に設定し、判定制御を終了する。また、ステップS13において、負荷電流値がピークとなっていないと判定した場合、つまりステップS13のNOの場合、そのまま判定制御を終了する。
【0070】
また、ステップS12において、時間カウンタT_peakが0でない、すなわち負荷電流値がピークを達成したと判定した場合、つまりステップS12のNOの場合、ステップS15において、制御手段13は、時間カウンタT_peakを1加算する。判定制御が検出周期T毎に実施されることから、時間カウンタT_peakの1カウントは、検出周期Tの1回分に相当する。つまり、時間カウンタT_peakは、検出周期Tの倍数となる。
【0071】
続いて、ステップS16において、制御手段13は、判定部133により、時間カウンタT_peakが待機時間T_b未満であるか否かを判定する。ステップS16において、時間カウンタT_peakが待機時間T_b未満でないと判定した場合、つまりステップS16のNOの場合、ステップS17において、制御手段13は、時間カウンタT_peakを0に設定し、判定制御を終了する。
【0072】
一方、ステップS16において、時間カウンタT_peakが待機時間T_b未満であると判定した場合、つまりステップS16のYESの場合、ステップS18において、制御手段13は、判定部133により、負荷電流値が底となったか否かを判定する。ステップS18において、負荷電流値が底となっていないと判定した場合、つまりステップS18のNOの場合、そのまま判定制御を終了する。また、ステップS18において、負荷電流値が底となったと判定した場合、つまりステップS18のYESの場合、ステップS19において、制御手段13は、所定時間内の負荷電流値の増減の検出回数を示すカウンタN_waveを1加算し、時間カウンタT_peakを0に設定する。
【0073】
次いで、ステップS20において、制御手段13は、判定部133により、時間カウンタT_waveが所定時間T_Pより大きいか否かを判定する。ステップS20において、時間カウンタT_waveが所定時間T_Pより大きくないと判定した場合、つまりステップS20のNOの場合、そのまま判定制御を終了する。また、ステップS20において、時間カウンタT_waveが所定時間T_Pより大きいと判定した場合、つまりステップS20のYESの場合、ステップS21において、制御手段13は、判定部133により、カウンタN_waveが基準回数NTHより大きいか否かを判定する。
【0074】
ステップS21において、カウンタN_waveが基準回数NTHより大きいと判定した場合、つまりステップS21のYESの場合、ステップS22において、制御手段13は、減少処理が生じにくくなるように、及び/又は、増加処理が生じやすくなるように、判定基準を変更し、ステップS24に進む。また、ステップS21において、カウンタN_waveが基準回数NTHより大きくないと判定した場合、つまりステップS21のNOの場合、ステップS23において、制御手段13は、ステップS2と同様の設定制御を実施する。この設定制御では、基準回数NTHが0でない場合、基準回数NTHを所定の固定値、又は、カウンタN_waveに所定の固定値を加算又は乗算した値に設定し、ステップS24に進む。
【0075】
そして、ステップS24において、制御手段13は、時間カウンタT_wave及びカウンタN_waveをそれぞれ0に設定し、設定制御を終了する。
【0076】
なお、増加処理は、例えばモータ12の負荷電流値の増加を判定した後、負荷電流値の減少を判定したこと、つまりモータ12の負荷電流値の増加を判定し、その判定後、所定の第二判定時間内にモータ12の負荷電流値の減少を判定したこと、に基づいて実施されてもよい。この条件は、掃除時に使用者が清掃具1を被掃除部Fに接した状態で前後に往復させる動作に着目するものであり、清掃具1が絨毯等の被掃除部F上で前進、後進をしたことを検出したことに対応する。この場合、増加処理を生じやすくするための判定基準の変更を、第二判定時間の延長とし、増加処理を生じにくくするための判定基準の変更を、第二判定時間の短縮としてもよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲をこれらの実施形態に限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
11 回転清掃体
12 モータ
13 制御手段
CL 電気掃除機