(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076636
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
F23G5/50 G ZAB
F23G5/50 J
F23G5/50 M
F23G5/50 N
F23G5/50 Q
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188297
(22)【出願日】2022-11-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将英
【テーマコード(参考)】
3K062
【Fターム(参考)】
3K062AA24
3K062AB01
3K062AC06
3K062AC07
3K062AC19
3K062CA01
3K062DA01
3K062DA23
3K062DA24
3K062DA25
3K062DA26
3K062DA32
(57)【要約】
【課題】調整目標の達成に必要な燃料ガスの投入量を提示する。
【解決手段】コンピュータが、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得し、取得された測定値と投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定し、決定された推奨投入量を操作画面に提示する、情報処理方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得し、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定し、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記推奨投入量の決定に使用した前記測定値を前記操作画面に提示する処理を更に有する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記操作画面に、提示した前記推奨投入量による調整後の前記目的変数の予測値を提示する処理を更に有する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記廃棄物は、廃液、廃油、被焼却物、プロセス排ガスのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記状態変数は、廃液の流量、廃油の流量、プロセス排ガスの流量、被焼却物の量、炉内の酸素濃度、炉内の温度、炉壁の温度のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記目的変数は、COの濃度、CO2の濃度、NOxの濃度、SOxの濃度、煤塵の濃度、ダイオキシンの濃度、未燃焼の燃料ガスの濃度、温室効果ガスの濃度、火炎輻射量、被加熱効物の表面温度の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項7】
決定された前記推奨投入量に基づいて、前記燃料に対応するバルブの開度を制御する処理を更に有する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、
予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記炉に投入される前記燃料と前記廃棄物の組み合わせの変化を検知した場合、変化後の組み合わせについて学習された前記第1学習モデルを前記目的変数の予測値の予測に使用する、
請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記予測値の予測に使用する前記第1学習モデルを、前記廃棄物の投入に使用するノズルの数と当該廃棄物の投入に使用したノズルの位置の違いのうち少なくとも一方に応じて切り替える、
請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記燃料の投入量と前記状態変数の測定値とで与えられる検索キーに使用して、当該投入量と、当該測定値と、前記目的変数の測定値の組み合わせを含む前記炉の運転データを検索し、
前記目的変数の測定値を前記調整目標に調整する検索結果に基づいて前記燃料の推奨投入量を決定する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記検索キーに該当する検索結果が存在しない場合、
前記検索キーとの類似度が高い複数の検索結果を使用して、前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を算出する、
請求項11に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記調整目標が複数の変数による関数として記述される場合、
前記複数の変数の測定値に対応する予測値を入力とし、当該予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第3学習モデルに対して当該予想値を入力して当該推奨投入量を決定する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項14】
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する取得部と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する決定部と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、
を有する情報処理装置。
【請求項15】
コンピュータに、
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する機能と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する機能と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用の燃焼炉の運転や管理は、長年、現場の作業員が担っている。しかし、作業員による属人的な調整は、精度のばらつきに加え、技能の継承に問題がある。また、作業員による調整は基本的に主観による。このため、現在の調整が最適解かも分からない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-020066号公報
【特許文献2】特開2008-249214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業用の燃焼炉の状態は時々刻々と変化する。例えば炉内に投入される廃棄物の量や種類(以下「状態変数」という。)が排出源の都合で変動することがある。また、燃料として投入される燃料ガスや空気(以下「制御変数」という。)と状態変数の関係は複雑であり、燃焼の結果として燃焼炉から排出されるガス(以下「排出ガス」という。)の濃度、火炎輻射量、被加熱物の表面温度等(以下「目的変数」という。)を正確に予測することは難しい。その結果、調整目標の達成に必要な燃料ガスの投入量を決定すること自体が難しくなっている。
【0005】
本発明の目的は、調整目標の達成に必要な燃料ガスの投入量を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、コンピュータが、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得し、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定し、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、情報処理方法である。
請求項2に記載の発明は、前記推奨投入量の決定に使用した前記測定値を前記操作画面に提示する処理を更に有する、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項3に記載の発明は、前記操作画面に、提示した前記推奨投入量による調整後の前記目的変数の予測値を提示する処理を更に有する、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項4に記載の発明は、前記廃棄物は、廃液、廃油、被焼却物、プロセス排ガスのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項5に記載の発明は、前記状態変数は、廃液の流量、廃油の流量、プロセス排ガスの流量、被焼却物の量、炉内の酸素濃度、炉内の温度、炉壁の温度のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項6に記載の発明は、前記目的変数は、COの濃度、CO2の濃度、NOxの濃度、SOxの濃度、煤塵の濃度、ダイオキシンの濃度、未燃焼の燃料ガスの濃度、温室効果ガスの濃度、火炎輻射量、被加熱効物の表面温度の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項7に記載の発明は、決定された前記推奨投入量に基づいて、前記燃料に対応するバルブの開度を制御する処理を更に有する、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項8に記載の発明は、前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定する、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項9に記載の発明は、前記炉に投入される前記燃料と前記廃棄物の組み合わせの変化を検知した場合、変化後の組み合わせについて学習された前記第1学習モデルを前記目的変数の予測値の予測に使用する、請求項8に記載の情報処理方法である。
請求項10に記載の発明は、前記予測値の予測に使用する前記第1学習モデルを、前記廃棄物の投入に使用するノズルの数と当該廃棄物の投入に使用したノズルの位置の違いのうち少なくとも一方に応じて切り替える、請求項9に記載の情報処理方法である。
請求項11に記載の発明は、前記燃料の投入量と前記状態変数の測定値とで与えられる検索キーに使用して、当該投入量と、当該測定値と、前記目的変数の測定値の組み合わせを含む前記炉の運転データを検索し、前記目的変数の測定値を前記調整目標に調整する検索結果に基づいて前記燃料の推奨投入量を決定する、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項12に記載の発明は、前記検索キーに該当する検索結果が存在しない場合、前記検索キーとの類似度が高い複数の検索結果を使用して、前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を算出する、請求項11に記載の情報処理方法である。
請求項13に記載の発明は、前記調整目標が複数の変数による関数として記述される場合、前記複数の変数の測定値に対応する予測値を入力とし、当該予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第3学習モデルに対して当該予想値を入力して当該推奨投入量を決定する、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項14に記載の発明は、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する取得部と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する決定部と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、を有する情報処理装置である。
請求項15に記載の発明は、コンピュータに、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する機能と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する機能と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を提示できる。
請求項2記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量に加え、現在の炉の状態の確認を可能にできる。
請求項3記載の発明によれば、調整結果の事前の確認を可能にできる。
請求項4記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項5記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項6記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項7記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの投入を自動的に制御できる。
請求項8記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項9記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項10記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項11記載の発明によれば、学習モデルを用意しなくても調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項12記載の発明によれば、検索キーに対応する運転データが存在しなくても調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を決定できる。
請求項13記載の発明によれば、調整目標が複数の目的変数の関数として記述される場合でも調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を決定できる。
請求項14記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を提示できる。
請求項15記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1で想定する燃焼炉システムの概念構成を説明する図である。
【
図2】実施の形態1で使用する情報提示装置の構成例を説明する図である。
【
図3】実施の形態1で使用する情報提示装置の機能構成例を説明する図である。
【
図4】実施の形態1で使用する投入量決定部の処理内容を説明する図である。
【
図5】排出ガスの濃度を予測値とする学習モデルの生成手順を説明するフローチャートである。
【
図6】勾配ブースティング決定木による学習モデルの修正方法を説明する図である。
【
図7】学習モデルの生成手順を説明するフローチャートである。
【
図8】補間演算により生成した教師データを用いた学習モデルの修正方法を説明するフローチャートである。
【
図9】教師データの生成方法を説明する図である。(A)は線形補間を用いて教師データのサンプル数を増加させる方法を示し、(B)は多項式又は回帰モデルを用いて教師データのサンプル数を増加させる方法を示す。
【
図10】調整目標を実現する燃料ガスの推奨値の提示動作例を説明するフローチャートである。
【
図11】調整目標を実現する燃料ガスの推奨値の他の提示動作例を説明するフローチャートである。
【
図12】調整目標がCO濃度の最小化である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
【
図13】調整目標が炉内温度の調整である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
【
図14】調整目標が燃焼炉に投入する燃料ガスの最小化である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
【
図15】調整目標が被加熱効率の最大化である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
【
図16】調整目標が火炎輻射の改善である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
【
図17】学習モデルの生成に使用する変数の一例を説明する図である。
【
図18】学習モデルの生成に使用する変数の他の例を説明する図である。
【
図19】1つの燃焼炉において想定される燃焼パターンを説明する図表である。
【
図20】実施の形態3における学習モデルの生成処理を説明するフローチャートである。
【
図21】教師データの分類機能を説明する図である。
【
図22】分類後の教師データを用いて各パターンに対応する専用の学習モデルの学習機能を説明する図である。
【
図23】実施の形態3における学習モデルの切り替え処理を説明するフローチャートである。
【
図24】燃焼炉の天井部分に被燃焼物毎に1つのノズルが設けられる場合を説明する図である。
【
図25】燃焼炉の天井部分に被燃焼物毎に2つのノズルが設けられる場合を説明する図である。
【
図26】燃焼炉の天井部分と壁面部分に分散して被燃焼物毎に合計2つのノズルが設けられる場合の他の例を説明する図である。
【
図27】廃棄物の投入に使用されるノズルの数と取付位置が燃焼中に変化する場合における学習モデルの切り替え処理を説明するフローチャートである。
【
図28】廃棄物の投入に使用されるノズルの数と取付位置が燃焼中に変化しない場合における学習モデルの設定処理を説明するフローチャートである。
【
図29】制御上のタイムラグを考慮した学習モデルの設定処理を説明するフローチャートである。
【
図30】基準時刻(現在時刻)に投入された被燃焼物の投入量等の測定値と基準時刻から一定時間後の排出ガスの濃度の測定値を教師データとする例を説明する図表である。
【
図31】基準時刻(現在時刻)における排出ガスの濃度の測定値と基準時刻から一定時間前に投入された被燃焼物の投入量等の測定値を教師データとする例を説明する図表である。
【
図32】実施の形態6で使用する情報提示装置の構成例を説明する図である。
【
図34】実施の形態6で使用する情報提示装置の機能構成例を説明する図である。
【
図35】投入量決定部による投入量の決定処理を説明するフローチャートである。
【
図36】実施の形態8で使用する投入量決定部の処理内容を説明する図である。
【
図37】実施の形態8で想定する燃焼炉システムの概念構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態1>
<システム構成>
本実施の形態では、廃棄物を燃焼する燃焼炉について説明する。特に、排出源の都合で廃棄物の投入量や投入される廃棄物の種類の組み合わせや比率が時々刻々と変化する燃焼炉について説明する。
【0010】
この種の燃焼炉は、炉内の状態が時々刻々と変化する。このため、燃焼炉から排出される排出ガス等の予測が、廃棄物の投入量などが一定に制御される燃焼炉に比して格段に難しい。もちろん、燃焼炉から排出される排出ガスの濃度等は測定により確かめることはできるが、測定値に基づく調整は後追いの調整となる上に、調整の結果を事前に予測できない。このため、調整は試行錯誤的にならざるを得ない。しかも、炉内の状態は時々刻々と変化するので、過去の調整の結果を参考に次の調整の内容を確定的に決定することも難しい。
【0011】
このように、排出源の都合で廃棄物の投入量や投入される廃棄物の種類の組み合わせや比率が時々刻々と変化する燃焼炉の燃焼状態を、調整目標が実現されるように調整することは難しい。
そこで、本実施の形態では、炉内の状態が時々刻々と変化する燃焼炉であっても、調整目標の達成に必要な燃料ガスの最適な投入量等を提示可能な仕組みについて説明する。
【0012】
<調整目標の例>
本実施の形態で想定する燃焼炉の調整目標は、事業者により様々である。以下に代表的な調整目標を例示する。
(1)調整目標1:
燃焼炉から排出される特定ガスの濃度を最小化する。調整目標は、各時点における燃焼環境での最小化であり、最小濃度が事前に与えられるとは限らない。
なお、本実施の形態では、燃焼炉から排出される排出ガスに含まれる特定のガスを「特定ガス」という。ここでの特定ガスには、例えばCO、CO2、NOx、SOx、煤塵、ダイオキシン、未燃焼の燃料ガス、温室効果ガス、炭化水素ガス等がある。
【0013】
(2)調整目標2:
炉内温度を目標温度に制御する。炉内の温度は、炉内で燃焼される物質の投入量が時々刻々と変化する燃焼炉でも、炉内の温度を目標温度に保ちたい場合がある。ここでの目標温度は、例えば500℃のように特定の温度値として指定される場合もあれば、500℃~600℃のように幅を有する場合もある。
(3)調整目標3:
投入する燃料ガスを最小化する。なお、廃棄物等の投入量が異なれば燃焼に必要な燃料ガスの投入量も異なるため、最小投入量が事前に与えられるとは限らない。例えば燃料コストの最小化を優先する場合には、このような調整が必要になる。ここでの燃料ガスには、例えば都市ガス、アンモニアと水素の混合ガス等がある。
【0014】
(4)調整目標4:
燃焼炉の燃焼効率を最大化する。燃焼効率の最大化は、燃料コストの削減や有害な排出ガスの削減にも有効である。
(5)調整目標5:
火炎輻射を改善する。被加熱物を間接加熱する用途の燃焼炉では、火炎輻射の改善が求められる。
このように、代表例だけでも5つの調整目標があるが、以下では、調整目標1の観点から実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、実施の形態1で想定する燃焼炉システム1の概念構成を説明する図である。
図1の場合、破線で示す大枠が、燃焼炉10と監視室とが設置される建屋や敷地の外縁を表している。監視室には、情報提示装置20とモニタ30が配置されている。
図1では、燃焼炉10を1つのみ表しているが、建屋や敷地内の燃焼炉10を1つに限る意図ではない。また、
図1では、情報提示装置20とモニタ30が各1つであるが、それぞれ複数でもよい。
【0016】
図1に示す燃焼炉10には、被燃焼物として、廃棄物(例えばプロセス排ガス、廃油、廃液)、燃料ガス(都市ガス、空気)が投入され、燃焼反応の結果物として排出ガスが排出される。
都市ガスと空気は、廃棄物を燃焼するための燃料である。都市ガスは、例えばメタンを主成分とする天然ガスである。
【0017】
なお、都市ガスに代えて、例えばプロパンやブタンを主成分とする液化石油ガス(いわゆるLPG)を投入してもよい。都市ガスとLPGは、炭化水素系燃料の代表例である。
この他、燃料ガスとして、アンモニアガス、アンモニアと都市ガスの混合ガス、アンモニアと水素の混合ガス等を燃焼炉10に投入してもよい。
なお、都市ガスの流量QN[Nm3/h]と空気の流量QA[Nm3/h]は、制御変数の一例である。
【0018】
廃棄物は、製造プロセスや化学反応プロセスの副産物であり、廃棄の対象となる物質をいう。廃棄物は、気体として排出される場合もあれば、液体として排出される場合もあれば、固体として排出される場合もある。
気体としての廃棄物の代表例には、プロセス排ガスがある。液体としての廃棄物の代表例には、廃油や廃液がある。
【0019】
廃油は油分を含む液体をいう。
廃液は、各プロセスから回収される液体である。本実施の形態では、油分を含まない液体を廃液という。廃液には、冷却や洗浄に使用した後の汚染水の他、有機系の液体等がある。また、複数のプロセスで個別から排出された液体の混合液を含む。
本実施の形態では、燃焼炉10で燃焼される液体を総称して「廃液」と呼ぶこともある。この意味での廃液には、油分を含む液体も含まれる。
固体としての廃棄物には、ゴミ、削りカス、切れ端などがある。
【0020】
なお、プロセス排ガスの流量Qp[Nm3/h]、廃油の流量QH[Nm3/h]、廃液の流量QD[Nm3/h]、炉内の酸素濃度XO[%]、炉内の温度T[℃]、炉壁の温度T[℃]は、炉の状態を表す変数(すなわち「状態変数」)の一例である。ここでの状態変数は、特許請求の範囲における「状態情報」の一例である。
因みに、状態変数としての廃棄物の重さは[ton/h]で表される。
各流量は流量計により、酸素濃度は酸素濃度計により、温度は温度センサにより、重さは重量計により、それぞれリアルタイムで測定される。
【0021】
排出ガスは、燃焼炉10で燃焼される物質によって異なるが、例えばCO、CO2、NOx、SOx、煤塵、ダイオキシン、未燃焼の燃料ガス、温室効果ガス、炭化水素ガス等である。
この他、燃焼反応の結果を表す情報には、火炎輻射量[W/m2]、被加熱物の表面温度T[℃]もある。例えば排出ガスの濃度、火炎輻射量、被加熱物の表面温度は、目的変数の一例である。この他、目的変数には、被加熱効率[%]もある。
【0022】
濃度は濃度計により、火炎輻射量と被加熱効率は計算により、表面温度は温度センサにより、それぞれリアルタイムで測定される。被加熱効率は、例えば燃焼炉10に投入された熱量と被加熱物の表面温度を用いて計算される。
もっとも、本実施の形態で想定する燃焼炉10に限ると、被加熱物は存在しない。このため、被加熱物の表面温度の測定は、燃焼炉10を加熱炉又は溶融炉として使用する場合に実行する。被加熱物には、例えばガラス、鉄、酸化アルミニウム、灰がある。
【0023】
<装置構成>
図2は、実施の形態1で使用する情報提示装置20の構成例を説明する図である。情報提示装置20は、「情報処理装置」の一例である。
情報提示装置20は、装置全体の動作を制御するプロセッサ201と、BIOS等が記録されたROM202と、プロセッサ201のワークエリアとして用いられるRAM203と、各種のデータを記録する補助記憶装置204と、モニタ30(
図1参照)や不図示の入力デバイス(例えばキーボード、マウス)との接続に使用するI/Oインタフェース205と、燃焼炉10(
図1参照)の各部に設置されたセンサと通信する通信インタフェース206とを有している。なお、プロセッサ201と他の処理部は、バスその他の信号線207を通じて相互に接続されている。
【0024】
プロセッサ201と、ROM202と、RAM203は、いわゆるコンピュータとして機能する。すなわち、情報提示装置20は、例えばサーバ、デスクトップ型のコンピュータ、ノート型のコンピュータで構成される。
プロセッサ201は、プログラムの実行を通じて各種の機能を実現する。
【0025】
本実施の形態では、プログラムの1つとして、制御変数と、状態情報と、目的変数の各測定値を教師データとして使用して、制御変数と状態情報を入力として与えた場合に目的変数の予測値を出力する予測モデルを生成するプログラムを想定する。
他のプログラムの1つとして、燃焼炉10の各部に設けたセンサから取得される制御変数と状態情報の各測定値を予測モデルに入力して、目的変数の予測値を出力するプログラムを想定する。
【0026】
他のプログラムの1つとして、制御変数と、状態情報と、目的変数の各測定値を教師データとして使用して、状態情報と目的変数を入力として与えた場合に目的変数を調整目標に調整する制御変数の推奨値を出力する制御モデルを生成するプログラムを想定する。
他のプログラムの1つとして、燃焼炉10の各部に設けたセンサから取得される状態情報と目的変数の各測定値を制御モデルに入力して、制御変数の推奨値を出力するプログラムを想定する。
【0027】
補助記憶装置204は、例えばハードディスク装置や半導体メモリである。本実施の形態における補助記憶装置204には、予測モデル204Aと制御モデル204Bが記憶される。
予測モデル204Aは、制御変数の測定値と状態変数の測定値を入力すると、目的変数の予測値を出力とする入出力関係を学習した学習モデルである。この予測モデル204Aは、特許請求の範囲における「第1学習モデル」の一例である。
【0028】
制御モデル204Bは、目的変数の予測値と状態変数の測定値を入力すると、調整目標を実現する制御変数の推奨値を出力する入出力関係を学習した学習モデルである。この制御モデル204Bは、特許請求の範囲における「第2学習モデル」の一例である。
本実施の形態における予測モデル204Aと制御モデル204Bは、実施の形態に係るプログラムの提供者等により事前に用意される。
本実施の形態における情報提示装置20は、これらの学習モデルを使用し、制御変数としての燃料ガスの推奨値をモニタ30に提示する。
【0029】
<情報提示装置の機能構成>
図3は、実施の形態1で使用する情報提示装置20の機能構成例を説明する図である。
プロセッサ201(
図2参照)は、プログラムの実行を通じ、測定データ取得部211と、投入量決定部212と、投入量提示部213として機能する。
測定データ取得部211は、燃焼炉10(
図1参照)の各部に設置されたセンサから測定データを取得する機能部である。
【0030】
本実施の形態では、測定データとして、状態情報の測定値と現在の燃料ガスの投入量を取得する。ここでの状態情報は、廃液の流量、廃油の流量、被焼却物の量、プロセス排ガスの流量、炉内の温度、炉壁の温度、炉内の酸素濃度である。また、燃料ガスの投入量は、都市ガスの流量、空気の流量である。
ここでの測定データ取得部211は、特許請求の範囲における「取得部」の一例である。
【0031】
投入量決定部212は、状態情報の測定値と燃料ガスの投入量に対応する目的変数を調整目標に調整するために推奨される燃料ガスの投入量(すなわち推奨投入量)を決定する機能部である。
ここでの投入量決定部212は、特許請求の範囲における「決定部」の一例である。
図4は、実施の形態1で使用する投入量決定部212の処理内容を説明する図である。
図4に示すように、投入量決定部212は、現在の燃焼環境における目的変数の予測値を予測する目的変数予測部212Aと、目的変数の予測値と状態変数の測定値を用いて調整目標を実現するための制御変数の推奨値を決定する制御変数決定部212Bとで構成される。
【0032】
目的変数予測部212Aは、制御変数の測定値と状態変数の測定値を予測モデル204Aに入力し、予測モデル204Aから目的変数の予測値を得る。
制御変数決定部212Bは、目的変数の予測値と状態変数の測定値を制御モデル204Bに入力し、制御モデル204Bから制御変数の推奨値を得る。
【0033】
図3の説明に戻る。
投入量提示部213は、投入量決定部212で決定された制御変数の推奨値をモニタ30(
図1参照)等を通じて提示する機能部である。
ここでの投入量提示部213は、特許請求の範囲における「提示部」の一例である。
【0034】
<学習モデルの生成>
参考までに、前述した予測モデル204Aと制御モデル204Bの生成手法について説明する。
【0035】
<生成手法1>
図5は、排出ガスの濃度を予測値とする学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)の生成手順を説明するフローチャートである。図中に示す記号のSはステップを意味する。
図5に示す処理動作は、予測モデル204Aの生成にも、制御モデル204Bの生成にも使用される。なお、
図5に示す生成手順は、情報提示装置20が、学習モデルも生成する場合について説明する。
【0036】
まず、プロセッサ201は、教師データを取得する(ステップ1)。ここでの教師データは、制御変数としての燃料(例えば都市ガスと空気)の投入量と、炉の状態情報(例えば廃液の流量、プロセス排ガスの流量、炉内の温度、炉壁の温度)と、投入量と状態情報に対応する目的変数(例えば排出ガスの濃度)の測定値である。
【0037】
次に、プロセッサ201は、教師データを学習する(ステップ2)。
予測モデル204Aの場合、プロセッサ201は、制御変数と炉の状態情報を入力層に入力すると、出力層から目的変数の予測値が出力されように中間層のパラメータの学習を進める。
【0038】
制御モデル204Bの場合、プロセッサ201は、目的変数と炉の状態情報を入力層に入力すると、出力層から制御変数の推奨値が出力されように中間層のパラメータの学習を進める。
ここでの推奨値は、調整目標に応じて決定される。例えば燃焼炉10から排出される排出ガスの濃度(目的変数)の最小化を目的とする場合、現在の状態変数に合致する複数の教師データのうちで排出ガスの濃度が最小になる制御変数の値が出力層から出力されるように中間層のパラメータの学習を進める。
【0039】
1つの教師データについて学習が実行されると、プロセッサ201は、未処理の教師データがあるか否かを判定する(ステップ3)。
未処理の教師データがある場合、ステップ3で肯定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、ステップ1に戻り、未処理の教師データの1つが学習用に選択される。
なお、未処理の教師データがない場合、ステップ3で否定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、予測モデル204Aの生成処理を終了する。この結果、都市ガスの流量、空気の流量、廃液の流量、プロセス排ガスの流量、炉内の温度、炉壁の温度を入力とし、排出ガスの濃度の予測値を出力とする予測モデル204Aが生成される。
【0040】
<生成手法2>
学習モデルの学習精度を上げるには、多くのサンプルを必要とする。しかし、大量のサンプルの収集には時間を要する。
そこで、生成手法2では、限られたサンプルを用いて予測モデルの学習精度を上げる手法として勾配ブースティング決定木(GBDT:Gradient Boosting Decision Tree)を適用する。
【0041】
図6は、勾配ブースティング決定木による学習モデルの修正方法を説明する図である。
図6では、数字の1、2、3…Mの順番に学習モデルの修正が進行する。
図6に示すように、目的変数(排出ガスの濃度)とそれまでに作成した学習モデルによる予測値との差を学習し、差が小さくなるまで逐次的に学習モデルが追加される。
図7は、学習モデルの生成手順を説明するフローチャートである。
図7には、
図5との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0042】
まず、プロセッサ201は、教師データを取得すると(ステップ1)、取得した教師データを学習する(ステップ2)。ここでの教師データは、学習の対象とする学習モデルに応じて異なる。
1つの教師データについて学習が実行されると、プロセッサ201は、未処理の教師データがあるか否かを判定する(ステップ3)。
未処理の教師データがある場合、ステップ3で肯定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、ステップ1に戻る。
【0043】
なお、未処理の教師データがない場合、ステップ3で否定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、学習モデルの出力値と正解値との差を算出する(ステップ4)。ここでの正解値は、出力値に対応する測定データである。
次に、プロセッサ201は、差が閾値以下か否かを判定する(ステップ5)。
【0044】
差が閾値より大きい場合、ステップ5で否定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、差に学習率を乗算して学習モデルの出力値を修正する(ステップ6)。学習モデルの修正後、プロセッサ201は、ステップ4に戻る。この処理は、ステップ5で肯定結果が得られるまで繰り返される。
差が閾値以下の場合、ステップ5で肯定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、学習モデルの生成処理を終了する。この結果、サンプル数が少なくても、出力値の精度が高い学習モデルが生成される。
【0045】
<生成手法3>
生成手法2の場合、勾配ブースティング決定木による学習モデルの修正により、教師データのサンプル数が少なくても精度の高い学習モデルを得ているが、生成手法3では、補間処理を用いて教師データのサンプル数を事前に増加させる。
図8は、補間演算により生成した教師データを用いた学習モデルの修正方法を説明するフローチャートである。
図8には、
図5との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0046】
まず、プロセッサ201は、実測値を取得すると(ステップ11)、取得した実測値を用いて教師データを生成する(ステップ12)。
図9は、教師データの生成方法を説明する図である。(A)は線形補間を用いて教師データのサンプル数を増加させる方法を示し、(B)は多項式又は回帰モデルを用いて教師データのサンプル数を増加させる方法を示す。
図9では、説明の都合上、縦軸を特定ガスの濃度で表し、横軸を都市ガスの投入量で表している。
図9の場合、特定ガスの濃度と都市ガスの投入量についてサンプル数を増やすことが目的である。
【0047】
図9(A)では、線形補間により2つの実測値の中間点を補完値として算出しているが、2つの実測値の間に2つ以上の補完値を算出してもよい。
図9(B)では、実測値を通る関数を定義し、2つの実測値の中間点を補完値として算出しているが、やはり2つの実測値の間に2つ以上の補完値を算出してもよい。
教師データとして使用する補完値の生成が終了すると、
図5で説明した生成手法1と同じ処理が実行される。
【0048】
<推奨値の提示動作>
続いて、実施の形態1で使用する情報提示装置20による推奨値の提示動作を説明する。以下では、提示動作例を2つ説明する。
【0049】
<作業者への推奨値の提示により処理が終了する場合>
図10は、調整目標を実現する燃料ガスの推奨値の提示動作例を説明するフローチャートである。なお、
図10に示す処理動作は、プロセッサ201によるプログラムの実行を通じて実現される。この処理動作は、情報処理方法の一例である。
まず、プロセッサ201は、燃焼炉10の各部に設置されているセンサから測定データを取得する(ステップ21)。ここでの測定データは、例えば制御変数(燃料ガスの投入量)と状態変数(廃棄物の投入量等)のリアルタイム値である。
【0050】
次に、プロセッサ201は、測定データを予測モデル204A(
図2参照)に入力して目的変数の予測値を予測する(ステップ22)。ここでの目的変数は、例えば燃焼炉10から排出される特定ガスの濃度のリアルタイム値である。
続いて、プロセッサ201は、目的変数の予測値と状態変数の測定値を制御モデル204B(
図2参照)に入力して燃料ガスの投入量を決定する(ステップ23)。
【0051】
その後、プロセッサ201は、決定された燃料ガスの投入量を操作画面に提示する(ステップ24)。ここでの投入量は推奨値である。操作画面は、モニタ30(
図1参照)に表示される。
燃焼炉10の作業者は、操作画面に提示された燃料ガスの投入量に基づいて、燃料ガスの供給バルブの開度を手作業で調整する。
この処理動作は、燃焼炉10に設置されている供給バルブがリモート制御に対応していない場合に使用される。
【0052】
<推奨値に基づく自動制御で処理が終了する場合>
図11は、調整目標を実現する燃料ガスの推奨値の他の提示動作例を説明するフローチャートである。
図11には、
図10との対応部分に対応する符号を付して示している。
図11に示す処理動作も、プロセッサ201によるプログラムの実行を通じて実現される。
図11に示す処理動作のうちステップ24までの処理動作は、
図10に示した処理動作と同じである。
【0053】
図11に示す処理動作の場合、プロセッサ201は、ステップ24の実行後に、決定された燃料ガスの投入量に応じて燃料ガスの供給バルブの開度を自動調整する(ステップ25)。ここでの自動調整は、都市ガスや空気の供給バルブが電動バルブであり、加えて、情報提示装置20と電動バルブとの間で通信が可能な場合に実行される。なお、供給バルブとの通信が不良な場合でも、ステップ24で提示された投入量を確認した作業者は、燃焼炉10に対する調整を継続することが可能である。
一方で、供給バルブの開度を自動調整する場合には、ステップ24をスキップ可能としてもよい。ステップ24をスキップする場合でも、作業者が指示した場合には、いつでも推奨される投入量がモニタ30に表示される仕組みを採用する。
【0054】
<作業画面例>
以下では、調整目的に応じた作業画面例を説明する。なお、作業画面に表示される燃料ガスの投入量の推奨値の提示には、調整目的に応じて学習された予測モデル204A(
図2参照)と制御モデル204B(
図2参照)が使用される。
【0055】
<画面例1>
図12は、調整目標がCO濃度の最小化である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
図12に示す画面例は、モニタ30に表示される。
図12に示す画面は、燃焼環境欄301Aと、推奨制御値欄302Aと、制御結果提示欄303Aで構成されている。
【0056】
燃焼環境欄301Aには、状態変数の測定値が表示されている。
推奨制御値欄302Aには、現在の燃焼環境の下で排出されるCOの濃度を最小化するための都市ガスの流量と空気の流量とが表示されている。
制御結果提示欄303Aには、燃料ガスの流量を制御すると、CO濃度が推定で4[ppm]になることが表示されている。このように制御後の推定値が表示されることで、作業者は、現在の燃焼環境下での最適解を具体的に知ることができる。
【0057】
<画面例2>
図13は、調整目標が炉内温度の調整である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
図13に示す画面例も、モニタ30に表示される。
図13に示す画面は、燃焼環境欄301Bと、推奨制御値欄302Bと、制御結果提示欄303Bで構成されている。
図13の場合、制御結果提示欄303Bには、燃料ガスの流量を制御した後の炉内温度が推定で800℃になることが表示されている。
【0058】
<画面例3>
図14は、調整目標が燃焼炉10に投入する燃料ガスの最小化である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
図14に示す画面例も、モニタ30に表示される。
図14に示す画面は、燃焼環境欄301Cと、推奨制御値欄302Cと、制御結果提示欄303Cで構成されている。
図14の場合、制御結果提示欄303Cには、燃料ガスの流量の制御による削減量が推定で0.3Nm
3/hになることが表示されている。
【0059】
<画面例4>
図15は、調整目標が被加熱効率の最大化である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
図15に示す画面例も、モニタ30に表示される。
図15に示す画面は、燃焼環境欄301Dと、推奨制御値欄302Dと、制御結果提示欄303Dで構成されている。
図15の場合、制御結果提示欄303Dには、燃料ガスの流量の制御により被加熱効率が推定で30%になることが表示されている。
【0060】
<画面例5>
図16は、調整目標が火炎輻射の改善である場合の燃料ガスの推奨投入量を提示する画面例である。
図16に示す画面例も、モニタ30に表示される。
図16に示す画面は、燃焼環境欄301Eと、推奨制御値欄302Eと、制御結果提示欄303Eで構成されている。
図16の場合、制御結果提示欄303Eには、燃料ガスの流量の制御後の輻射量が推定で50W/m
2になることが表示されている。
【0061】
<実施の形態1のまとめ>
本実施の形態で説明した情報提示装置20を用いれば、排出源の都合で廃棄物の投入量や投入される廃棄物の種類の組み合わせや比率が時々刻々と変化する燃焼炉10が制御対象である場合にも、任意の調整目標を実現するための制御変数(燃料ガスの流量)の最適値を作業者に提示することが可能になる。
【0062】
<実施の形態2>
<原因物質の含有量に着目する学習>
ここでは、調整目標が、燃焼炉10から排出されるCOガスの濃度の最小化である場合について説明する。
燃焼炉10からCOが発生するメカニズムには、以下のメカニズム1及び2が考えられる。
【0063】
・メカニズム1:
燃焼炉10内に投入される霧状の廃液により火炎が冷却され、CO2を生成する酸化反応が途中で凍結し、COとして排出される。
・メカニズム2:
C分を多く含む廃液が大量に投入された結果、一部のC分が完全燃焼せず、COとして排出される。ここでのC分は、COの原因物質である。
【0064】
本実施の形態は、メカニズム2に着目する。
廃液全体の投入量は同じでも、C分を多く含む廃液を燃焼する場合と、C分をほとんど含まない廃液を燃焼する場合とでは、燃焼炉10から排出されるCOの濃度が異なる。
そこで、本実施の形態では、廃液等の投入量に加え、排出ガスの原因物資であるC分の濃度や粘度の情報を、予測モデル204Aと制御モデル204Bの学習に使用する。因みに、C分の含有量が多い廃液の粘度は高く、C分の含有量が少ない廃液の粘度は低いので、粘度が分かると、廃液に含まれるC分の含有量を特定することができる。
【0065】
<学習モデルの生成処理1>
図17は、学習モデル(すなわち予測モデル204A、制御モデル204B)の生成に使用する変数の一例を説明する図である。
なお、燃焼炉10に投入される都市ガスの流量は、バルブ101の開度により調整が可能である。また、燃焼炉10に投入される空気の流量は、バルブ102の開度により調整が可能である。
【0066】
因みに、廃液槽103から燃焼炉10には廃液が投入され、生産ライン等104から燃焼炉10には廃液やプロセス排ガスが投入される。そして、これら被燃焼物の燃焼反応の結果物として、燃焼炉10から排出ガスが排出される。
図17の場合、教師データには、廃液等の投入量だけでなく、廃液等に含まれるC分の濃度や粘度の測定値が含まれる。ここでの濃度や粘度の測定値は、リアルタイム値である。
【0067】
生成処理1では、各時点で投入される廃液等に含まれるC分の含有量の違いを学習モデルの学習に反映する。
具体的には、COガスの原因物質であるC分の含有量の違い別に教師データを用意し、用意された教師データを用いてC分の含有量別の学習モデルを学習する。このようにC分の含有量別の学習モデルを用意することにより、廃液等の投入量だけに着目する学習モデルよりも、COガスの濃度の予測精度の向上が期待される。その結果、調整目標を実現する燃料ガスの推奨投入量の予測精度の向上が期待される。
【0068】
なお、燃焼炉10に投入されるC分の含有量は、時間により変化する場合と時間によらず一定の場合がある。
C分の含有量の時間変化は、例えば排出源単位で廃液に含まれるC分の濃度等が時間で変化する場合に生じる。このようにC分の含有量が時間変化する場合には、各時点におけるC分の含有量に応じて学習モデルを切り替える方が、投入量だけで学習した学習モデルを使用する場合よりも、各時点に排出されるCOガスの濃度の予測精度が向上する。その結果、調整目標を実現する燃料ガスの推奨投入量の予測精度の向上が期待される。
【0069】
C分の濃度等が時間によらず一定の場合でも、C分の含有量がC1の廃液等を燃焼するA社の燃焼炉10と、C分の含有量がC2の廃液等を燃焼するB社の燃焼炉10とでは、廃液等の投入量が同じでもCOガスの濃度は異なる。
そこで、A社の燃焼炉10には含有量C1で学習した学習モデルを使用し、B社の燃焼炉10には含有量C2で学習した学習モデルを使用することにより、投入量だけで学習した学習モデルを使用する場合よりも、各時点に排出されるCOガスの濃度の予測精度が向上する。
【0070】
かくして、生成処理1では、学習モデルの学習に使用する教師データとして、燃料(都市ガスと空気)の投入量と、炉の状態情報(プロセス排ガス、廃液)の投入量と、排出ガスの原因物質であるC分の廃液中の濃度と、各値の投入時に排出された排出ガスの濃度(目的変数)の測定値を使用する。
なお、教師データには、C分の廃液中の濃度に代えて廃液の粘度を用いてもよいし、C分の廃液中の濃度と廃液の粘度の両方を用いてもよい。
また、プロセス排ガス中のC分の濃度を教師データに含めてもよい。
【0071】
<学習モデルの生成処理2>
図18は、学習モデル(すなわち予測モデル204A、制御モデル204B)の生成に使用する変数の他の例を説明する図である。
図18には、
図17との対応部分に対応する符号を付して示している。
図18の場合、廃液等に含まれるC分の濃度や粘度の測定値に代えてC分の累計量(時間積分値)を教師データに含める。C分の累計量は、例えば各時点のC分量(=投入量×濃度)の時間積分値として計算される。
【0072】
生成処理2では、燃焼炉10に投入されたC分の累積量が大きい場合に、廃液等に含まれるC分の含有量の一時的な増減がCOガスの濃度の変化に現れない状況の他、燃焼炉10に投入されたC分の累積量が小さい場合に、廃液等に含まれるC分の含有量の一時的な増減がCOガスの濃度の変化に即座に反映する状況を想定する。
このような場合には、
図18に示すように、C分の累積量を教師データに含めることが求められる。
【0073】
かくして、生成処理2では、学習モデルの学習に使用する教師データとして、燃料(都市ガスと空気)の投入量と、炉の状態情報(プロセス排ガス、廃液)の投入量と、排出ガスの原因物質であるC分の廃液中の累計量と、各値の投入時に排出された排出ガスの濃度(目的変数)の測定値を使用する。
なお、C分の含有量を表す情報として廃液の粘度が与えられる場合には、C分の累積量を、各時点のC分量(=α×投入量×粘度)の時間積分値で計算する。αは係数である。
この他、燃焼炉10に投入されたプロセス排ガスに由来のC分の累積量を教師データに含めてもよい。
【0074】
<実施の形態2のまとめ>
本実施の形態で説明した予測モデル204Aを用いれば、燃焼炉10内に投入される廃棄物(プロセス排ガス、廃油、廃液)中に含まれる特定ガス(すなわちCO)の原因物質の濃度の違いや濃度の時間変化によらず、燃焼炉10から排出される排出ガスの濃度(目的変数)をリアルタイムで高い精度で予測することが可能になる。
【0075】
また、燃焼炉10内に投入される特定ガス(すなわちCO)の原因物質の濃度の違いや濃度の時間変化が制御モデル204Bの学習に反映されているので、実施の形態1に比して、調整目標を実現する制御変数の推奨値を高い精度で決定することが可能になる。
【0076】
なお、
図17及び
図18の説明では、排出ガス中に含まれる特定ガスをCOとし、その原因物質としてC分を想定しているが、特定ガスとしてNOxを想定する場合には、その原因物質として窒化物を考慮すればよい。
また、特定ガスとしてSOxを想定する場合には、その原因物質として硫化物を考慮すればよい。また、特定ガスとしてダイオキシンを想定する場合には、その原因物質として塩素化合物と芳香族化合物を考慮すればよい。
【0077】
因みに、廃液等に含まれる原因物質の含有量別の学習モデルの生成には、後述する
図20~
図22と同様の手法を適用すればよい。
また、排出ガスの濃度の予測や燃料ガスの推奨投入量の予測には、後述する
図23と同様の手法を適用すればよい。すなわち、現在の廃液等に含まれる原因物質の含有量に応じ、学習モデルを切り替えればよい。
【0078】
<実施の形態3>
<廃棄物の内容の組み合わせに特化した専用の学習モデルを用いた制御>
ここでは、時間の経過とともに、燃焼炉10に投入される廃棄物の内容の組み合わせが変化する場合について説明する。
前述した実施の形態では、燃焼炉10に投入される廃棄物の内容の組み合わせが一定の場合を想定している。
しかし、前述した廃油と、廃液と、プロセス排ガスの3つが常に同時に投入されるとは限らない。
【0079】
図19は、1つの燃焼炉10において想定される燃焼パターンを説明する図表である。
図19では、燃焼炉10で燃焼される被燃焼物として、燃料と廃棄物を想定している。また、廃棄物として、廃液、廃油、被焼却物、プロセス排ガスを想定している。
もっとも、
図19に示す廃棄物は一例であり、これらの全てを1つの燃焼炉10で燃焼しなくてもよい。
【0080】
・パターン#1:
燃料(都市ガスと空気)だけが投入される期間
・パターン#2:
廃液だけが投入される期間
・パターン#3:
廃油だけが投入される期間
・パターン#4:
被焼却物だけが投入される期間
・パターン#5:
プロセス排ガスだけが投入される期間
・パターン#6~#15:
燃料、廃液、廃油、被焼却物、プロセス排ガスのうちの任意の2つだけが投入される期間
・パターン#16~#25:
燃料、廃液、廃油、被焼却物、プロセス排ガスのうちの任意の3つだけが投入される期間
・パターン#26~#30:
燃料、廃液、廃油、被焼却物、プロセス排ガスのうちの任意の4つだけが投入される期間
・パターン#31:
燃料、廃液、廃油、被焼却物、プロセス排ガスの全部が投入される期間
【0081】
本実施の形態では、これらのパターン別(期間別)に学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)を生成し、燃焼炉10に投入される被燃焼物の組み合わせに応じて、排出ガスの濃度の予測に使用する学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)を切り替えることで予測精度の向上を図る。
【0082】
<被燃焼物の組み合わせに応じた学習モデルの生成処理>
以下では、
図20~
図22を用いて、実施の形態3における学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)の生成処理を説明する。
図20は、実施の形態3における学習モデルの生成処理を説明するフローチャートである。
プロセッサ201は、被燃焼物の組み合わせ別に教師データを分類する(ステップ31)。プロセッサ201は、例えば被燃焼物として想定する各流路別に設けたセンサからの情報により、各時点に燃焼炉10に投入されている被燃焼物の組み合わせ別に教師データを分類する。
【0083】
図21は、教師データの分類機能を説明する図である。プロセッサ201によるプログラムの実行を通じて実現される教師データ取得部221には、分類機能が付属している。実施の形態3では、分類機能を有効化し、各時点における測定値等を被燃焼物の組み合わせ別の教師データに分類する。
例えば現在の組み合わせがパターン#1の場合、教師データ取得部221は、例えば炉内の温度、炉壁の温度、炉内の酸素濃度、都市ガスの流量、空気の流量、排出ガスの濃度を、パターン#1用の教師データに分類する。これにより、教師データ取得部221は、31種類の教師データを生成する。
【0084】
図20の説明に戻る。教師データの分類が終わると、プロセッサ201は、分類後の教師データを用いて、各分類に対応する予測モデル204Aと制御モデル204Bを生成する(ステップ32)。
図22は、分類後の教師データを用いて各パターンに対応する専用の学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)の学習機能を説明する図である。
【0085】
図22に示す学習モデル学習部222は、被燃焼物の組み合わせ別の教師データを用いて学習モデルを学習させることにより、各組み合わせに対応する専用の学習モデルを生成する。本実施の形態では、31種類の学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)が生成される。
【0086】
<学習モデルの切り替え>
図23は、実施の形態3における学習モデルの切り替え処理を説明するフローチャートである。なお、前提として、各組み合わせに対応する専用の学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)が用意されているものとする。
まず、プロセッサ201は、燃焼炉10に投入中の廃棄物の組み合わせを検知する(ステップ41)。
【0087】
次に、プロセッサ201は、組み合わせが変化したか否かを判定する(ステップ42)。組み合わせの変化は、今回の検知結果と直前回の検知結果との比較により判定される。
検知結果に変化がない場合、プロセッサ201は、ステップ42で否定結果を得る。この場合、プロセッサ201は、ステップ41に戻る。
【0088】
一方、検知結果に変化が認められた場合、プロセッサ201は、ステップ42で肯定結果を得る。この場合、プロセッサ201は、現在の組み合わせに対応した学習モデルに切り替える(ステップ43)。例えば現在の組み合わせがパターン#3の場合、プロセッサ201は、予測モデル204A及び制御モデル204Bとして、パターン#3に対応する専用のモデルに切り替える。
これにより、目的変数予測部212A(
図4参照)と制御変数決定部212B(
図4参照)からは、現在の燃焼環境に最適化された出力値を出力することが可能になる。
【0089】
<実施の形態3のまとめ>
本実施の形態によれば、時間の経過に伴って燃焼炉10に投入される被燃焼物の内容の組み合わせが変化する場合に、前述した他の実施の形態に比して、調整目標を実現するために推奨する燃料ガスの投入量の精度を向上させることができる。
換言すると、被燃焼物の内容の組み合わせに応じて学習した専用の学習モデルを使用することにより、汎用性の高い学習モデルを使用する場合よりも制御の精度を高めることができる。
【0090】
<実施の形態4>
<ノズルの数と取付位置の組み合わせに特化した学習モデルを用いた制御>
燃焼炉10(
図1参照)の配管構造は、被燃焼物の違いや現場の制約等により異なることがある。本実施の形態では、廃棄物の投入に使用するノズルの数や取付位置の組み合わせの違いに着目する。
なお、廃棄物の投入に使用するノズルの数や取付位置の組み合わせは構造上に依存する場合と燃焼中に変化する場合とがある。燃焼中にノズルの数や取付位置が変化する場合とは、例えば投入量が増えると、投入に使用するノズルの数を増やすが、投入量が減ると、投入に使用するノズルの数を減らす等である。
【0091】
いずれにしても、燃料ガスや廃棄物等の投入に使用するノズルの数や取付位置の違いが廃棄物等の燃焼に影響を及ぼし、燃焼炉10に対する投入量は同じでも排出ガスの濃度等が変化する可能性がある。
例えば1つのノズルを用いて廃液を投入する場合と2つのノズルを用いて廃液を投入する場合とでは投入量は同じでも、燃焼炉10から排出される排出ガスの濃度等が異なる可能性がある。
また、各ノズルが燃焼炉10の天井面に取り付けられる場合と各ノズルが燃焼炉10の側面に取り付けられる場合とでは投入量は同じでも、燃焼炉10から排出される排出ガスの濃度等が異なる可能性がある。
【0092】
<ノズルの数と配置のパターン例>
図24は、燃焼炉10の天井部分に被燃焼物毎に1つのノズルが設けられる場合を説明する図である。
図24には、
図17との対応部分に対応する符号を付して示している。なお、
図24における廃棄物は、廃液と廃油である。
図24の場合、都市ガス用の1個のノズルと、空気用の1個のノズルと、廃液用の1個のノズルと、廃油用の1個のノズルの計4個が燃焼炉10の天井に設けられる。
【0093】
図25は、燃焼炉10の天井部分に被燃焼物毎に2つのノズルが設けられる場合を説明する図である。
図25には、
図24との対応部分に対応する符号を付して示している。
図25における廃棄物も廃液と廃油である。
図25の場合、都市ガス用の2個のノズルと、空気用の2個のノズルと、廃液用の2個のノズルと、廃油用の2個のノズルの計8個が燃焼炉10の天井に設けられる。
【0094】
図26は、燃焼炉10の天井部分と壁面部分に分散して被燃焼物毎に合計2つのノズルが設けられる場合の他の例を説明する図である。
図26には、
図24との対応部分に対応する符号を付して示している。
図26における廃棄物も廃液と廃油である。
図26の場合、都市ガス用の1個のノズルと、空気用の1個のノズルと、廃液用の1個のノズルと、廃油用の1個のノズルの計4個が燃焼炉10の天井に設けられ、都市ガス用の1個のノズルと、空気用の1個のノズルと、廃液用の1個のノズルと、廃油用の1個のノズルの計4個が燃焼炉10の側面に設けられている。
【0095】
なお、被燃焼物毎のノズルの数は3つ以上でもよいし、ノズルの取付位置は燃焼炉10の底面側でもよい。また、側面に取り付けられるノズルも、天面に近い側に取り付けられる場合と底面に近い側に取り付けられる場合がある。また、1つの側面に複数のノズルが取り付けられる場合には、縦並びにノズルが配置される場合、横並びにノズルが配置される場合、対角線方向にノズルが配置される場合がある。また、2つの側面に複数のノズルが取り付けられる場合には、向かい合う2つの側面にノズルを取り付ける場合や隣り合う側面にノズルを取り付ける場合がある。
【0096】
また、
図24~
図26の場合には、燃焼炉10に投入される被燃焼物毎に同数のノズルが取り付けられる場合を説明したが、被燃焼物毎に取り付けるノズルの数が異なってもよい。例えば廃液の投入用には2つのノズルを用意し、廃油の投入用には1つのノズルを用意してもよい。
このように、燃焼炉10に被燃焼物を噴出するノズルの数や取付位置の組み合わせは、燃焼炉10の内容積や内部空間の形状の違いも考慮すると、多くのパターンに分類が可能である。
【0097】
<学習モデルの切り替え1>
図27は、廃棄物の投入に使用されるノズルの数と取付位置が燃焼中に変化する場合における学習モデルの切り替え処理を説明するフローチャートである。なお、前提として、ノズルの数と取付位置の組み合わせ別に専用の学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)が用意されているものとする。
【0098】
まず、プロセッサ201は、ノズルの数と取付位置の組み合わせを検知する(ステップ51)。
次に、プロセッサ201は、組み合わせが変化したか否かを判定する(ステップ52)。組み合わせの変化は、今回の検知結果と直前回の検知結果との比較により判定される。
検知結果に変化がない場合、プロセッサ201は、ステップ52で否定結果を得る。この場合、プロセッサ201は、ステップ51に戻る。
【0099】
一方、検知結果に変化が認められた場合、プロセッサ201は、ステップ52で肯定結果を得る。この場合、プロセッサ201は、現在の組み合わせに対応した学習モデルに切り替える(ステップ53)。
例えば現在の組み合わせがパターン#3の場合、プロセッサ201は、予測モデル204A及び制御モデル204Bとして、パターン#3に対応する専用のモデルに切り替える。
これにより、目的変数予測部212A(
図4参照)と制御変数決定部212B(
図4参照)からは、現在の燃焼環境に最適化された出力値を出力することが可能になる。
【0100】
<学習モデルの切り替え2>
図28は、廃棄物の投入に使用されるノズルの数と取付位置が燃焼中に変化しない場合における学習モデルの設定処理を説明するフローチャートである。なお、前提として、ノズルの数と取付位置の組み合わせ別に専用の学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)が用意されているものとする。
【0101】
まず、プロセッサ201は、ノズルの数と取付位置の組み合わせの情報を取得する(ステップ61)。ここでの情報は、例えば情報提示装置20(
図1参照)の設定時に登録される。
次に、プロセッサ201は、取得された組み合わせに対応する学習モデルの使用を設定する(ステップ62)。これにより、目的変数予測部212A(
図4参照)と制御変数決定部212B(
図4参照)からは、現在の燃焼環境に最適化された出力値を出力することが可能になる。
【0102】
<実施の形態4のまとめ>
本実施の形態によれば、被燃焼物の投入に使用するノズルの数と取付位置の組み合わせ別に用意された専用の予測モデルを使用できるので、前述した他の実施の形態に比して、調整目標を実現するために推奨する燃料ガスの投入量の精度を向上させることができる。
換言すると、被燃焼物の内容の組み合わせに応じて学習した専用の学習モデルを使用することにより、汎用性の高い学習モデルを使用する場合よりも制御の精度を高めることができる。
【0103】
<実施の形態5>
<制御上のタイムラグを考慮した学習モデルを用いた制御>
燃焼炉10(
図1参照)によっては、燃料ガスや廃棄物等の投入量の変化が、燃焼炉10から排出される排出ガスの濃度の変化として出現するまでのタイムラグを無視できない場合がある。タイムラグが大きい燃焼炉10について、タイムラグを考慮せずに学習モデルを学習しても調整目標を実現できない可能性がある。
【0104】
<学習モデルの切り替え>
図29は、制御上のタイムラグを考慮した学習モデルの設定処理を説明するフローチャートである。なお、前提として、制御上のタイムラグの長さ別に専用の学習モデル(予測モデル204A、制御モデル204B)が用意されているものとする。
【0105】
まず、プロセッサ201は、燃焼炉10に固有の制御上のタイムラグの長さの情報を取得する(ステップ71)。ここでのタイムラグの長さは、燃料ガスの投入量の変化が排出ガスの濃度等に反映されるまでの時間差であり、例えば燃焼炉10の稼働を開始する際に測定される。なお、定期的にタイムラグを測定してもよい。取得されたタイムラグの長さは、情報提示装置20(
図1参照)に登録される。
【0106】
次に、プロセッサ201は、取得されたタイムラグに対応する学習モデルの使用を設定する(ステップ72)。これにより、目的変数予測部212A(
図4参照)と制御変数決定部212B(
図4参照)からは、現在の燃焼環境に最適化された出力値を出力することが可能になる。
なお、点検時等に測定されたタイムラグの長さの最新値が現在の設定と異なる場合には、目的変数予測部212A(
図4参照)と制御変数決定部212B(
図4参照)が参照する学習モデルをタイムラグの長さの最新値に応じて変更する。
【0107】
<制御上のタイムラグの例>
図30は、基準時刻(現在時刻)に投入された被燃焼物の投入量等の測定値と基準時刻から一定時間後の排出ガスの濃度の測定値を教師データとする例を説明する図表である。
図30では、被燃焼物の投入量の変化が排出ガスの濃度の変化に現れるまでの時間差(タイムラグ)が3分の場合を想定している。言うまでもなく、3分は一例に過ぎない。
【0108】
図30に示す図表は、各時点における燃料ガス(都市ガスと空気)の投入量と、状態情報(炉内温度、炉内酸素濃度、廃液の流量、プロセス排ガスの流量、廃棄物量、廃油の流量)と、排出ガスの濃度(CO濃度)の測定値を表している。
図30の場合、「2022/4/10:01」が現在時刻である。この場合、現在時刻における燃料ガスの投入量と状態情報に対応付ける排出ガスの濃度は、現在時刻から3分後の「2022/4/10:04」の50[ppm]となる。すなわち、
図30において、着色した数値の関係を満たす測定値の組み合わせが教師データとして取得され、予測モデルの学習に使用される。
【0109】
図31は、基準時刻(現在時刻)における排出ガスの濃度の測定値と基準時刻から一定時間前に投入された被燃焼物の投入量等の測定値を教師データとする例を説明する図表である。
図31の場合も、被燃焼物の投入量の変化が排出ガスの濃度の変化に現れるまでの時間差(タイムラグ)が3分の場合を想定している。
ただし、
図31の場合には、排出ガスの濃度の測定値が得られた時刻を基準時刻(現在時刻)とし、対応付ける燃料ガス(都市ガスと空気)の投入量と、状態情報(炉内温度、炉内酸素濃度、廃液の流量、プロセス排ガスの流量、廃棄物量、廃油の流量)と、排出ガスの濃度(CO濃度)の測定値を決定する。
【0110】
具体的には、「2022/4/10:04」における排出ガスの濃度値(すなわち50[ppm])に対し、3分前の「2022/4/10:01」における燃料ガスの投入量と状態情報に対応付ける排出ガスの濃度を対応付ける。
すなわち、
図31において、着色した数値の関係を満たす測定値の組み合わせが教師データとして取得され、予測モデルの学習に使用される。
図30の場合と
図31の場合で、教師データとして記録されるデータの組み合わせは同じになるが、いずれの測定値が得られた時刻を基準時刻とするかが異なっている。
【0111】
<実施の形態5のまとめ>
本実施の形態によれば、燃焼炉10の制御上のタイムラグの長さに応じた学習モデルを使用しない場合に比して、調整目標を実現するために推奨する燃料ガスの投入量の精度を向上させることができる。
なお、教師データの生成に使用するタイムラグの長さは、例えば測定値と予測値との一致率が高くなる時間差を実験結果から特定してもよい。
【0112】
<実施の形態6>
<運転データの履歴を用いた制御>
本実施の形態では、学習モデルを使用しない燃料ガスの投入量の制御について説明する。
【0113】
<装置構成>
図32は、実施の形態6で使用する情報提示装置20の構成例を説明する図である。
図32には、
図2との対応部分に対応する符号を付して示している。ここでの情報提示装置20も「情報処理装置」の一例である。
図32に示す情報提示装置20のハードウェア構成は、
図2に示す情報提示装置20のハードウェア構成と同じである。違いは、補助記憶装置204に運転データ204Cが記憶され、学習モデル(予測モデル204Aと制御モデル204B)は記憶されていない点である。
【0114】
<運転データの例>
図33は、運転データの例を説明する図である。運転データは、測定データの集合(履歴)である。
図33には、燃焼炉10に関する運転データの一部のみを表している。
図33の場合、運転データを構成する測定データが1分単位で記憶されているが、1分単位である必要はなく、15秒単位や30秒単位でもよく、数分単位でもよい。
【0115】
<情報提示装置の機能構成>
図34は、実施の形態6で使用する情報提示装置20の機能構成例を説明する図である。
図34には、
図3との対応部分に対応する符号を付して示している。
本実施の形態におけるプロセッサ201(
図2参照)も、プログラムの実行を通じ、測定データ取得部211と、投入量決定部212と、投入量提示部213として機能する。
【0116】
図3に示す機能構成との違いは、投入量決定部212のサブ機能として検索部212Cが設けられている点と、補助記憶装置204に記憶されているデータが運転データ204Cである点である。
検索部212Cは、測定データ取得部211から与えられる燃料ガスの投入量と状態変数の測定値を検索キーに使用して運転データ204Cを検索し、検索キーを満たす運転データを検索する。検索部212Cによる検索は、完全一致である必要はない。例えば検索キーとのデータ空間上の距離(例えばユークリッド距離、コサイン類似度)が閾値以内である運転データ204Cを検索結果として出力する。
【0117】
投入量決定部212は、検索結果の中から調整目標との整合性が高い運転データ204Cを特定する。換言すると、投入量決定部212は、現在の燃焼環境に合致する運転データ204Cの中から調整目標との整合性が高い運転データ204Cを特定する。なお、調性目標との整合性が高い運転データ204Cが特定されると、投入量決定部212は、特定された運転データ204Cにおける燃料ガスの投入量を、投入量提示部213に出力する。例えば検索結果として3つの運転データ204Cが出力された場合、3つの中で最も特定ガス(例えばCO)の濃度が最も小さい運転データ204Cを、調整目標との整合性が高い運転データ204Cとして特定する。
【0118】
<投入量の決定処理>
図35は、投入量決定部212による投入量の決定処理を説明するフローチャートである。
まず、プロセッサ201は、測定データを取得する(ステップ81)と、取得した測定データから検索キーを設定する(ステップ82)。検索キーは、取得された測定データのうちの一部でもよい。
【0119】
次に、プロセッサ201は、検索キーを用いて運転データを検索する(ステップ83)。
続いて、プロセッサ201は、一致する運転データがあるか否かを判定する(ステップ84)。一致する運転データが存在する場合、ステップ84で肯定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、CO濃度が最小となる運転データで用いた燃料ガスの投入量をモニタ30(
図1参照)に提示する(ステップ85)。
【0120】
一方、一致する運転データが存在しない場合、ステップ84で否定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、検索キーとの距離が閾値未満の運転データがあるか否かを判定する(ステップ86)。換言すると、プロセッサ201は、検索キーに近い運転データを検索する。
閾値未満の運転データが存在しない場合、ステップ86で否定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、閾値を変更し(ステップ87)、その後、ステップ86に戻る。具体的には閾値の数値を大きくする。
【0121】
閾値未満の運転データが存在した場合、ステップ86で肯定結果が得られる。この場合、プロセッサ201は、ステップ85に進み、CO濃度が最小となる運転データで用いた燃料ガスの投入量をモニタ30に提示する。
なお、検索キーとの距離が閾値未満の運転データが複数見つかった場合には、調整目標の観点から更に複数の運転データに絞り込み、絞り込み後の複数の運転データにおける燃料ガスの投入量の平均値等を推奨値として決定してもよい。なお、推奨値は平均値に限らない。
【0122】
<実施の形態6のまとめ>
現在の燃焼環境と合致する又は類似する燃焼環境下で使用した運転データを検索し、検索された運転データの中から調整目標との整合性が高い運転データを特定する手法の採用により、学習モデルを使用しなくても、調整目標の達成に必要な燃料ガスの投入量を提示することができる。
本実施の形態の手法は、制御の対象である燃焼炉10の実績値としての運転データをそのまま用いるので、制御対象とする燃焼炉10との制御の整合性が高くなる。つまり、期待通りの制御を実現できる。
【0123】
<実施の形態7>
本実施の形態では、調整目標が複数の場合について説明する。
前述した他の実施の形態は、調整目標が1つの場合を想定している。例えばCO濃度の最小化を目的とする。一方で、CO濃度の最小化と燃焼効率の最大化を同時に実現したい場合も考えられる。
【0124】
そこで、本実施の形態では、調整目標を、複数の目的変数の関数fとして表現し、関数fを最小化する又は最大化する燃料ガスの推奨投入量を提示する方法について説明する。
例えば目的変数の1つをCOの濃度とし、別の目的変数の1つを燃焼効率Pとすると、関数fは、例えば次式で定義される。
f=w1*Xco-w2*P …式1
ただし、XcoはCOの濃度値である。また、w1、w2は調整可能な重みである。
なお、燃焼効率Pは、被加熱物の持ち去る熱量/投入熱量により算出される。
【0125】
式1に示す関数fでは、2つの調整目標を実現する場合に値が小さくなる。
例えばCOの濃度値Xcoが同じでも、燃焼効率Pが小さい方の関数fの値が、燃焼効率Pが大きい方の関数fの値よりも小さくなる。
また、燃焼効率Pが同じでも、COの濃度値Xcoが小さい方の関数fの値が、燃焼効率Pが大きい方の関数fの値よりも小さくなる。
なお、調整目標3のように、燃料ガスの投入量の最小化が目標である場合には、関数fは、目的変数と制御変数の関数として定義される。
【0126】
<情報提示装置の機能構成>
図36は、実施の形態8で使用する投入量決定部212の処理内容を説明する図である。
図36に示すように、投入量決定部212は、現在の燃焼環境を表す測定値を用いて調整目標毎に用意された関数fの値を算出する関数値算出部212Dと、調整目標を実現するための制御変数の推奨値を決定する制御変数決定部212Eとで構成される。
【0127】
関数fは、複数の調整目標の組み合わせ毎に用意される。ここでの関数fは、3つ以上の調整目標の組み合わせについて定義してもよい。関数fの変数には、調整目標に対応する変数が用いられる。
本実施の形態の場合、関数fの値は、燃焼炉10に設置されたセンサの測定値に基づいて算出される。本実施の形態では、関数fを用いて関数値を算出しているが、調整目標の組み合わせ別に用意された変換テーブルに対して、現在の測定値に対応する関数値を読み出してもよい。
【0128】
制御変数決定部212Eは、算出された関数値と状態変数の測定値を入力とし、燃焼炉10に対する燃料ガスの投入量を出力とする関係を学習した制御モデル204Dに対して算出された関数値を与え、燃料ガスの投入量を決定する。この制御モデル204Dは、特許請求の範囲における「第3学習モデル」の一例である。
ここでの制御モデル204Dの学習には、状態変数の測定値と、制御変数の測定値と、これらに対応する関数値とで構成される教師データを使用する。
【0129】
なお、制御モデル204Dの学習は、関数値を最小化する又は最大化する(調整目標を実現することを意味する)制御変数の推奨値が出力されるように実行される。例えば状態変数の組み合わせが同じであれば、調整目標により合致する運転データにおける燃料ガスの投入量を教師データに選択する。
因みに、制御モデル204Dの学習に際しては、前述した勾配ブースティング決定木や補間処理を適用して学習モデルの予測精度を高めてもよい。
【0130】
<実施の形態7のまとめ>
複数の調整目標の実現を目標とする場合にも、複数の調整目標の組み合わせに応じて定義した関数の値が最小化又は最大化されるように学習を進めた制御モデル204Dを用いることにより、複数の調整目標の達成に必要な燃料ガスの投入量を提示することができる。
なお、実施の形態6で説明したように、現在の燃焼環境での関数値よりも数値が低い又は大きい過去の運転データを検索して、調整目標の達成に必要な燃料ガスの投入量を提示してもよい。
【0131】
<実施の形態8>
<推奨値をサーバから提供する例>
図37は、実施の形態8で想定する燃焼炉システム1Aの概念構成を説明する図である。
図37には、
図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
図37に示す燃焼炉システム1Aの場合、ネットワークN上に存在する情報処理サーバ40にて、前述した処理動作を実行する。このため、
図37では、情報提示装置20を設けていない。もっとも、燃焼炉10に設置されたセンサから取得された運転データを情報処理サーバ40にアップロードするための端末は、燃焼炉10と同じ建屋内や敷地内に配置されている。
ここでのネットワークNには、例えばLAN(Local Area Network)、インターネット、4Gや5G等の移動通信システムを想定する。
【0132】
情報処理サーバ40は、例えば教師データの取得、取得された教師データを用いた学習モデルの生成、燃料ガスの推奨投入量の提示等を実行する。因みに、推奨投入量の提示には、実施の形態6で説明したように学習モデルは必ずしも必要でない。
なお、情報処理サーバ40は、サーバ型のコンピュータである。もっとも、情報処理サーバ40は、1台のコンピュータで構成される必要はなく、ネットワークNを介して接続され、協働により予測モデルの生成処理等を実行する複数台のコンピュータで構成されてもよい。
【0133】
この他、教師データの取得処理は、燃焼炉10が設けられている建屋や敷地内の情報端末(サーバ、デスクトップ型のコンピュータ、ノート型のコンピュータ等)で実行し、取得された教師データを情報処理サーバ40にアップロードしてもよい。
また、情報処理サーバ40で予測された燃料ガスの投入量は、燃焼炉10が設けられている建屋や敷地内の情報端末にフィードバックしてもよい。
【0134】
<他の実施の形態>
(1)以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、前述の実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0135】
(2)前述の実施の形態では、廃棄物の発生源として製造プロセスや化学反応プロセスを有する工業炉を想定しているが、工業炉に限らない。
【0136】
(3)前述の実施の形態では、状態情報として、プロセス排ガスの流量、廃油の流量、廃液の流量等を例示したが、その他として、燃料ガスを燃焼するバーナーの口径、燃料ガスの空気比(都市ガスと空気の比率)、燃焼炉10の排気経路に設けられる排気ダンパの開度を含めてもよい。
【0137】
(4)前述の実施の形態では、燃焼炉について説明したが、焼却炉でも加熱炉でもよい。焼却炉は、燃料ガスを用いて廃棄物その他の物質を焼却する炉である。加熱炉は、燃料ガスを用いて被加熱物を加熱する炉である。
【符号の説明】
【0138】
1、1A…燃焼炉システム、10…燃焼炉、20…情報提示装置、30…モニタ、40…情報処理サーバ、101、102…バルブ、103…廃液槽、104…生産ライン等、201…プロセッサ、202…ROM、203…RAM、204…補助記憶装置、204A…予測モデル、204B、204D…制御モデル、204C…運転データ、205…I/Oインタフェース、206…通信インタフェース、211…測定データ取得部、212…投入量決定部、212A…目的変数予測部、212B、212E…制御変数決定部、212C…検索部、212D…関数値算出部、213…投入量提示部、221…教師データ取得部、222…学習モデル学習部
【手続補正書】
【提出日】2023-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得し、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定し、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、
情報処理方法であり、
前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、
予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定し、
前記炉に投入される前記燃料と前記廃棄物の組み合わせの変化を検知した場合、変化後の組み合わせについて学習された前記第1学習モデルを前記目的変数の予測値の予測に使用する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記予測値の予測に使用する前記第1学習モデルを、前記廃棄物の投入に使用するノズルの数と当該廃棄物の投入に使用したノズルの位置の違いのうち少なくとも一方に応じて切り替える、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
コンピュータが、
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得し、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定し、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、
情報処理方法であり、
前記燃料の投入量と前記状態変数の測定値とで与えられる検索キーを使用して、当該投入量と、当該測定値と、前記目的変数の測定値の組み合わせを含む前記炉の運転データを検索し、
前記目的変数の測定値を前記調整目標に調整する検索結果に基づいて前記燃料の推奨投入量を決定する、
情報処理方法。
【請求項4】
前記検索キーに該当する検索結果が存在しない場合、
前記検索キーとの類似度が高い複数の検索結果を使用して、前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を算出する、
請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
コンピュータが、
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得し、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定し、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、
情報処理方法であり、
前記調整目標が複数の変数による関数として記述される場合、
前記複数の変数の測定値に対応する予測値を入力とし、当該予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第3学習モデルに対して当該予測値を入力して当該推奨投入量を決定する、
情報処理方法。
【請求項6】
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する取得部と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する決定部と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、
を有する情報処理装置であり、
前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、
予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定し、
前記炉に投入される前記燃料と前記廃棄物の組み合わせの変化を検知した場合、変化後の組み合わせについて学習された前記第1学習モデルを前記目的変数の予測値の予測に使用する、
情報処理装置。
【請求項7】
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する取得部と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する決定部と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、
を有する情報処理装置であり、
前記燃料の投入量と前記状態変数の測定値とで与えられる検索キーを使用して、当該投入量と、当該測定値と、前記目的変数の測定値の組み合わせを含む前記炉の運転データを検索し、
前記目的変数の測定値を前記調整目標に調整する検索結果に基づいて前記燃料の推奨投入量を決定する、
情報処理装置。
【請求項8】
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する取得部と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する決定部と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、
を有する情報処理装置であり、
前記調整目標が複数の変数による関数として記述される場合、
前記複数の変数の測定値に対応する予測値を入力とし、当該予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第3学習モデルに対して当該予測値を入力して当該推奨投入量を決定する、
情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータに、
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する機能と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する機能と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、
を実現させるためのプログラムであり、
前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、
予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定し、
前記炉に投入される前記燃料と前記廃棄物の組み合わせの変化を検知した場合、変化後の組み合わせについて学習された前記第1学習モデルを前記目的変数の予測値の予測に使用する、
プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する機能と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する機能と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、
を実現させるためのプログラムであり、
前記燃料の投入量と前記状態変数の測定値とで与えられる検索キーを使用して、当該投入量と、当該測定値と、前記目的変数の測定値の組み合わせを含む前記炉の運転データを検索し、
前記目的変数の測定値を前記調整目標に調整する検索結果に基づいて前記燃料の推奨投入量を決定する、
プログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する機能と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する機能と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、
を実現させるためのプログラムであり、
前記調整目標が複数の変数による関数として記述される場合、
前記複数の変数の測定値に対応する予測値を入力とし、当該予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第3学習モデルに対して当該予測値を入力して当該推奨投入量を決定する、
プログラム。
【請求項12】
コンピュータが、
燃料ガスを用いて廃棄物を燃焼する炉であり、燃焼中の期間により、燃料ガスと廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料ガスの投入量とを取得し、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための前記燃料ガスの推奨投入量を、当該目的変数の予測値と当該測定値と当該推奨投入量を教師データに用いて学習した学習モデルを用いて決定し、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、
情報処理方法。
【請求項13】
前記推奨投入量の決定に使用した前記測定値を前記操作画面に提示する処理を更に有する、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記操作画面に、提示した前記推奨投入量による調整後の前記目的変数の予測値を提示する処理を更に有する、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記廃棄物は、廃液、廃油、被焼却物、プロセス排ガスのうちの少なくとも1つを含む、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記状態変数は、廃液の流量、廃油の流量、プロセス排ガスの流量、被焼却物の量、炉内の酸素濃度、炉内の温度、炉壁の温度のうちの少なくとも1つを含む、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項17】
前記目的変数は、COの濃度、CO2の濃度、NOxの濃度、SOxの濃度、煤塵の濃度、ダイオキシンの濃度、未燃焼の燃料ガスの濃度、温室効果ガスの濃度、火炎輻射量、被加熱効物の表面温度の少なくとも1つを含む、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項18】
決定された前記推奨投入量に基づいて、前記燃料ガスに対応するバルブの開度を制御する処理を更に有する、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項19】
前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、
予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定する、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項20】
燃料ガスを用いて廃棄物を燃焼する炉であり、燃焼中の期間により、燃料ガスと廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料ガスの投入量とを取得する取得部と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための前記燃料ガスの推奨投入量を、当該目的変数の予測値と当該測定値と当該推奨投入量を教師データに用いて学習した学習モデルを用いて決定する決定部と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、
を有する情報処理装置。
【請求項21】
コンピュータに、
燃料ガスを用いて廃棄物を燃焼する炉であり、燃焼中の期間により、燃料ガスと廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料ガスの投入量とを取得する機能と、
取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための前記燃料ガスの推奨投入量を、当該目的変数の予測値と当該測定値と当該推奨投入量を教師データに用いて学習した学習モデルを用いて決定する機能と、
決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
請求項1に記載の発明は、コンピュータが、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得し、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定し、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、情報処理方法であり、前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定し、前記炉に投入される前記燃料と前記廃棄物の組み合わせの変化を検知した場合、変化後の組み合わせについて学習された前記第1学習モデルを前記目的変数の予測値の予測に使用する、情報処理方法である。
請求項2に記載の発明は、前記予測値の予測に使用する前記第1学習モデルを、前記廃棄物の投入に使用するノズルの数と当該廃棄物の投入に使用したノズルの位置の違いのうち少なくとも一方に応じて切り替える、請求項1に記載の情報処理方法である。
請求項3に記載の発明は、コンピュータが、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得し、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定し、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、情報処理方法であり、前記燃料の投入量と前記状態変数の測定値とで与えられる検索キーを使用して、当該投入量と、当該測定値と、前記目的変数の測定値の組み合わせを含む前記炉の運転データを検索し、前記目的変数の測定値を前記調整目標に調整する検索結果に基づいて前記燃料の推奨投入量を決定する、情報処理方法である。
請求項4に記載の発明は、前記検索キーに該当する検索結果が存在しない場合、前記検索キーとの類似度が高い複数の検索結果を使用して、前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を算出する、請求項3に記載の情報処理方法である。
請求項5に記載の発明は、コンピュータが、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得し、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定し、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、情報処理方法であり、前記調整目標が複数の変数による関数として記述される場合、前記複数の変数の測定値に対応する予測値を入力とし、当該予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第3学習モデルに対して当該予測値を入力して当該推奨投入量を決定する、情報処理方法である。
請求項6に記載の発明は、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する取得部と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する決定部と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、を有する情報処理装置であり、前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定し、前記炉に投入される前記燃料と前記廃棄物の組み合わせの変化を検知した場合、変化後の組み合わせについて学習された前記第1学習モデルを前記目的変数の予測値の予測に使用する、情報処理装置である。
請求項7に記載の発明は、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する取得部と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する決定部と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、を有する情報処理装置であり、前記燃料の投入量と前記状態変数の測定値とで与えられる検索キーを使用して、当該投入量と、当該測定値と、前記目的変数の測定値の組み合わせを含む前記炉の運転データを検索し、前記目的変数の測定値を前記調整目標に調整する検索結果に基づいて前記燃料の推奨投入量を決定する、情報処理装置である。
請求項8に記載の発明は、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する取得部と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する決定部と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、を有する情報処理装置であり、前記調整目標が複数の変数による関数として記述される場合、前記複数の変数の測定値に対応する予測値を入力とし、当該予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第3学習モデルに対して当該予測値を入力して当該推奨投入量を決定する、情報処理装置である。
請求項9に記載の発明は、コンピュータに、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する機能と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する機能と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、を実現させるためのプログラムであり、前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定し、前記炉に投入される前記燃料と前記廃棄物の組み合わせの変化を検知した場合、変化後の組み合わせについて学習された前記第1学習モデルを前記目的変数の予測値の予測に使用する、プログラムである。
請求項10に記載の発明は、コンピュータに、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する機能と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する機能と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、を実現させるためのプログラムであり、前記燃料の投入量と前記状態変数の測定値とで与えられる検索キーを使用して、当該投入量と、当該測定値と、前記目的変数の測定値の組み合わせを含む前記炉の運転データを検索し、前記目的変数の測定値を前記調整目標に調整する検索結果に基づいて前記燃料の推奨投入量を決定する、プログラムである。
請求項11に記載の発明は、コンピュータに、燃料と廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料の投入量とを取得する機能と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための推奨投入量を決定する機能と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、を実現させるためのプログラムであり、前記調整目標が複数の変数による関数として記述される場合、前記複数の変数の測定値に対応する予測値を入力とし、当該予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第3学習モデルに対して当該予測値を入力して当該推奨投入量を決定する、プログラムである。
請求項12に記載の発明は、コンピュータが、燃料ガスを用いて廃棄物を燃焼する炉であり、燃焼中の期間により、燃料ガスと廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料ガスの投入量とを取得し、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための前記燃料ガスの推奨投入量を、当該目的変数の予測値と当該測定値と当該推奨投入量を教師データに用いて学習した学習モデルを用いて決定し、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する、情報処理方法である。
請求項13に記載の発明は、前記推奨投入量の決定に使用した前記測定値を前記操作画面に提示する処理を更に有する、請求項12に記載の情報処理方法である。
請求項14に記載の発明は、前記操作画面に、提示した前記推奨投入量による調整後の前記目的変数の予測値を提示する処理を更に有する、請求項12に記載の情報処理方法である。
請求項15に記載の発明は、前記廃棄物は、廃液、廃油、被焼却物、プロセス排ガスのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の情報処理方法である。
請求項16に記載の発明は、前記状態変数は、廃液の流量、廃油の流量、プロセス排ガスの流量、被焼却物の量、炉内の酸素濃度、炉内の温度、炉壁の温度のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の情報処理方法である。
請求項17に記載の発明は、前記目的変数は、COの濃度、CO2の濃度、NOxの濃度、SOxの濃度、煤塵の濃度、ダイオキシンの濃度、未燃焼の燃料ガスの濃度、温室効果ガスの濃度、火炎輻射量、被加熱効物の表面温度の少なくとも1つを含む、請求項12に記載の情報処理方法である。
請求項18に記載の発明は、決定された前記推奨投入量に基づいて、前記燃料ガスに対応するバルブの開度を制御する処理を更に有する、請求項12に記載の情報処理方法である。
請求項19に記載の発明は、前記投入量と前記測定値を入力とし、当該投入量と当該測定値に対応する目的変数の予測値を出力とする関係を学習した第1学習モデルに対して当該投入量と当該測定値を入力して当該目的変数の予測値を予測し、予測された前記目的変数の予測値と前記状態変数の測定値を入力とし、当該目的変数の予測値を前記調整目標に調整するための前記推奨投入量を出力とする関係を学習した第2学習モデルに対して当該予測値と当該測定値を入力して当該推奨投入量を決定する、請求項12に記載の情報処理方法である。
請求項20に記載の発明は、燃料ガスを用いて廃棄物を燃焼する炉であり、燃焼中の期間により、燃料ガスと廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料ガスの投入量とを取得する取得部と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための前記燃料ガスの推奨投入量を、当該目的変数の予測値と当該測定値と当該推奨投入量を教師データに用いて学習した学習モデルを用いて決定する決定部と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する提示部と、を有する情報処理装置である。
請求項21に記載の発明は、コンピュータに、燃料ガスを用いて廃棄物を燃焼する炉であり、燃焼中の期間により、燃料ガスと廃棄物の少なくとも1つが燃焼される炉の状態変数の測定値と現在の燃料ガスの投入量とを取得する機能と、取得された前記測定値と前記投入量とに対応する目的変数を調整目標に調整するための前記燃料ガスの推奨投入量を、当該目的変数の予測値と当該測定値と当該推奨投入量を教師データに用いて学習した学習モデルを用いて決定する機能と、決定された前記推奨投入量を操作画面に提示する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項2記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項3記載の発明によれば、学習モデルを用意しなくても調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項4記載の発明によれば、検索キーに対応する運転データが存在しなくても調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を決定できる。
請求項5記載の発明によれば、調整目標が複数の目的変数の関数として記述される場合でも調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を決定できる。
請求項6記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項7記載の発明によれば、学習モデルを用意しなくても調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項8記載の発明によれば、調整目標が複数の目的変数の関数として記述される場合でも調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を決定できる。
請求項9記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項10記載の発明によれば、学習モデルを用意しなくても調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項11記載の発明によれば、調整目標が複数の目的変数の関数として記述される場合でも調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を決定できる。
請求項12記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を提示できる。
請求項13記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量に加え、現在の炉の状態の確認を可能にできる。
請求項14記載の発明によれば、調整結果の事前の確認を可能にできる。
請求項15記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項16記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項17記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項18記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの投入を自動的に制御できる。
請求項19記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量の決定精度を高めることができる。
請求項20記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を提示できる。
請求項21記載の発明によれば、調整目標の達成に必要な燃料ガスの推奨投入量を提示できる。