IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤ除水性の評価方法及びタイヤ 図1
  • 特開-タイヤ除水性の評価方法及びタイヤ 図2
  • 特開-タイヤ除水性の評価方法及びタイヤ 図3
  • 特開-タイヤ除水性の評価方法及びタイヤ 図4
  • 特開-タイヤ除水性の評価方法及びタイヤ 図5
  • 特開-タイヤ除水性の評価方法及びタイヤ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076637
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】タイヤ除水性の評価方法及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20240530BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240530BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240530BHJP
   G01B 11/28 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B60C19/00 H
B60C11/03 Z
B60C1/00 A
G01B11/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188298
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮佑
【テーマコード(参考)】
2F065
3D131
【Fターム(参考)】
2F065AA58
2F065BB16
2F065CC13
2F065FF04
2F065JJ03
2F065MM26
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ26
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU05
3D131AA03
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC18
3D131EA10U
3D131EB07U
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】タイヤ表面の凹凸によるマイクロスケールでの除水性を評価できる方法、及び氷上グリップ性能に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】水膜を形成した透明又は半透明な板上を走行するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影する撮影ステップと、撮影した動画の各スナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する画像処理ステップと、実接地部分と水膜部分との比率を求める計算ステップとを含むタイヤ除水性の評価方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水膜を形成した透明又は半透明な板上を走行するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影する撮影ステップと、
撮影した動画の各スナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する画像処理ステップと、
実接地部分と水膜部分との比率を求める計算ステップとを含むタイヤ除水性の評価方法。
【請求項2】
前記計算ステップにおいて、前記比率が、スナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合である請求項1に記載のタイヤ除水性の評価方法。
【請求項3】
前記水膜が懸濁液で形成されている請求項1に記載のタイヤ除水性の評価方法。
【請求項4】
前記計算ステップにおいて、実接地部分の領域がスナップショット画像の1.0%(面積%)以上になった最初のスナップショット画像に対して、該最初のスナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合(面積%)を求める請求項1に記載のタイヤ除水性の評価方法。
【請求項5】
前記画像処理ステップにおいて、実接地部分と、実接地部分以外との領域に分離する二値化閾値が、輝度分布において最大頻度を示す値である請求項1に記載のタイヤ除水性の評価方法。
【請求項6】
前記画像処理ステップにおいて、空間部分と、空間部分以外との領域に分離する二値化閾値が、判別分析法により決定される請求項1に記載のタイヤ除水性の評価方法。
【請求項7】
前記画像処理ステップにおいて、撮影した動画を構成する全てのスナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する請求項1に記載のタイヤ除水性の評価方法。
【請求項8】
トレッドを備えるタイヤであって、
以下のタイヤ除水性の評価方法により求められた面積割合S(%)、前記トレッドの厚みT(mm)が、下記式(1)、(2)を満たすタイヤ。
(1)S<30
(2)S×T≦400
(タイヤ除水性の評価方法)
水膜を形成した透明又は半透明な板上を走行するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影する撮影ステップと、
撮影した動画の各スナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する画像処理ステップと、
実接地部分と水膜部分との比率を求める計算ステップとを含むタイヤ除水性の評価方法であって、
前記水膜が懸濁液で形成されており、
前記画像処理ステップにおいて、実接地部分と、実接地部分以外との領域に分離する二値化閾値が、輝度分布において最大頻度を示す値であり、空間部分と、空間部分以外との領域に分離する二値化閾値が、判別分析法により決定され、かつ、撮影した動画を構成する全てのスナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離し、
前記計算ステップにおいて、実接地部分の領域がスナップショット画像の1.0%(面積%)以上になった最初のスナップショット画像に対して、該最初のスナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合(面積%)を求める、
タイヤ除水性の評価方法。
【請求項9】
下記式を満たす請求項8に記載のタイヤ。
S×T≦380
【請求項10】
下記式を満たす請求項8に記載のタイヤ。
S×T≦360
【請求項11】
ランド比L(%)、面積割合S(%)が、下記式を満たす請求項8に記載のタイヤ。
L/S≧2.0
【請求項12】
アセトン抽出量A(質量%)が下記式を満たす請求項8に記載のタイヤ。
A≧17.0
【請求項13】
トレッドは、ゴム成分100質量部に対する無機充填材の含有量が60質量部以上である請求項8に記載のタイヤ。
【請求項14】
トレッドは、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が60質量部以上である請求項8に記載のタイヤ。
【請求項15】
トレッドが水溶性フィラーを含む請求項8に記載のタイヤ。
【請求項16】
トレッドがゴム粉を含む請求項8に記載のタイヤ。
【請求項17】
トレッドが液状ポリマーを含む請求項8に記載のタイヤ。
【請求項18】
冬用タイヤである請求項8に記載のタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ除水性の評価方法及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ走行時の接地状態を観察する場合、一般には、ガラス板上をタイヤを走行させ、該ガラス板の下方からタイヤのガラス板接地部をビデオカメラで撮影する方法などが用いられているが、タイヤ表面の凹凸によるマイクロスケールでの除水性は評価されていなかった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-128196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、タイヤ表面の凹凸によるマイクロスケールでの除水性を評価できる方法、及び氷上グリップ性能に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水膜を形成した透明又は半透明な板上を走行するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影する撮影ステップと、
撮影した動画の各スナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する画像処理ステップと、
実接地部分と水膜部分との比率を求める計算ステップとを含むタイヤ除水性の評価方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、タイヤ表面の凹凸によるマイクロスケールでの除水性を評価できる方法を提供することができる。また、氷上グリップ性能に優れたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のタイヤ除水性の評価方法において、静止状態、走行状態などのタイヤの接地状態(接地部)を撮影する模式図の一例
図2】撮影ステップにおいて、(a)水膜103を形成した透明又は半透明な板102上で十分静止した状態のタイヤ111の接地部112を撮影した静止画像、(b)該静止画像の輝度分布
図3】水膜103を形成した透明又は半透明な板102上を走行するタイヤ111の接地状態の変化を、該透明又は半透明な板102の下方から撮影した動画のなかから、抽出した3つのスナップショット画像
図4】画像処理ステップで決定された実接地部分の領域がスナップショット画像中の1.0面積%以上を最初に占めるようになった画像を模式的に示した図(a)及び(b)
図5】本発明のタイヤの一例
図6図5のトレッド4付近の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<タイヤ除水性の評価方法>
本発明は、水膜を形成した透明又は半透明な板上を走行するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影する撮影ステップと、
撮影した動画の各スナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する画像処理ステップと、
実接地部分と水膜部分との比率を求める計算ステップとを含むタイヤ除水性の評価方法である。
【0009】
水膜上を走行するタイヤにおいて、タイヤと路面との接地面のうち、タイヤと路面との間に水膜が存在しない領域がグリップ性能に大きく寄与しており、タイヤ表面の凹凸によるタイヤと路面との間の水膜の除去が早いほど、氷上グリップ性能が良好であると考えられる。本発明によると、水膜上を走行するタイヤを実接地部分、水膜部分、空間部分に分離することで、タイヤと路面との接地面のうち、タイヤと路面との間に水膜が存在しているかを確認することができる。さらに、実接地部分と水膜部分との比率を求めることで、タイヤと路面との間の水膜の除去が行われ、路面と実接地する素早さを定量的に評価できる。以上の理由から、タイヤ表面の凹凸によるマイクロスケールでの除水性を評価できる方法を提供することができる。
【0010】
なお、タイヤ除水性の評価方法において、撮影ステップ、画像処理ステップ、計算ステップの順は特に限定されず、任意の順序で行うことが可能であるが、なかでも、撮影ステップ→画像処理ステップ→計算ステップの順に行うことが好ましい。
【0011】
本発明のタイヤ除水性の評価方法の一例を以下に説明するが、本発明は以下の方法に制限されるものではない。
【0012】
撮影ステップでは、水膜を形成した透明又は半透明な板上を走行するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から動画を撮影する。また、後述する「実接地部分の取得ステップ」において、二値化閾値の取得が容易という観点から、上記動画に加えて、水膜を形成した透明又は半透明な板上で静止するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影した静止画像を取得することが好ましい。
【0013】
図1は、本発明のタイヤ除水性の評価方法において、静止状態、走行状態などのタイヤの接地状態を撮影する模式図の一例を示している。
図1に示されるタイヤ接地状態の撮影装置101は、図示しない車両の通行が可能な透明又は半透明な板102と、該透明又は半透明な板102上に形成された水膜103と、該透明又は半透明な板102の下方位置に配設された撮像装置104とを備えている。
【0014】
図1は、水膜103を形成した透明又は半透明な板102上に静止するタイヤ111(図示しない車両に装着されたタイヤ)、又は水膜103を形成した透明又は半透明な板102上を走行するタイヤ111の接地状態を、透明又は半透明な板102の下方から撮影している模式図を示している。
【0015】
本発明のタイヤ除水性の評価方法に適用可能なタイヤは特に限定されず、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤのいずれにも適用できる。夏用タイヤ、冬用タイヤ、オールシーズンタイヤ等に適用できる。なお、上記冬用タイヤとしては、例えば、スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤが挙げられる。また、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤなどに適用できる。適用できるタイヤのサイズに制限はなく、任意のサイズのタイヤに適用可能である。
【0016】
なかでも、冬用タイヤに好適に適用できる。この場合、冬用タイヤで重要なタイヤ表面の凹凸による水膜の除水性能を定量的に評価できる。
【0017】
タイヤ除水性の評価方法において、車速は特に限定されないが、タイヤ表面の凹凸による除水の様子を観察できる観点から、好ましくは0.1km/時以上、より好ましくは1km/時以上、更に好ましくは5km/時以上であり、また、好ましくは50km/時以下、より好ましくは30km/時以下、更に好ましくは20km/時以下である。
【0018】
タイヤ除水性の評価方法において、タイヤ1本にかかる荷重は特に限定されないが、タイヤ表面の凹凸による除水の様子を観察できる観点から、好ましくは150kg以上、より好ましくは250kg以上、更に好ましくは375kg以上であり、また、好ましくは800kg以下、より好ましくは700kg以下、更に好ましくは600kg以下である。
【0019】
透明又は半透明な板102は、その下方位置から水膜103上に静止する又は走行するタイヤ111の接地状態の撮影が可能な程度に透明又は半透明である板であれば特に限定されず使用できる。
透明又は半透明な板102は、例えば、透明又は半透明のガラス板、アクリル板などが挙げられる。上記ガラス板としては、例えば、強化ガラスなどが挙げられる。
【0020】
透明又は半透明な板102は、タイヤ111の接地状態の撮影が可能な透明ないしは半透明な板であれば、その透過率は特に限定されない。また、無色透明、半透明、着色透明、着色半透明等のいずれも包含される。
なかでも、透明又は半透明な板102は、透過率が60以上であることが好ましく、65以上であることがより好ましい。透過率の上限は、通常、100以下であるが、これに限定されない。なお、透過率は、例えば、分光測色計の透過率(L*値)を用いことができる。
【0021】
透明又は半透明な板102の厚さは、タイヤ走行に十分耐えると共に、下方からの撮像装置104によりタイヤ111の接地部112の撮影が十分可能なように適宜設定すればよい。
なかでも、強度やタイヤの撮像性の観点から、厚さの上限は、好ましくは30mm以上、より好ましくは40mm以上、更に好ましくは50mm以上であり、また、下限は、好ましくは200mm以下、より好ましくは100mm以下、更に好ましくは80mm以下である。
【0022】
水膜103を形成する材料は、水を含む膜を透明又は半透明な板102上に形成することが可能な任意の材料を使用できる。なかでも、除水性の良好に撮影する観点から、懸濁液で形成された水膜103とすることが望ましい。
【0023】
懸濁液としては特に限定されず、例えば、白色の懸濁液を使用できる。なお、白色の懸濁液としては、特に限定されず、絵の具などの白色の塗料と水との混合液であってもよく、牛乳と水との混合液であってもよい。白色の懸濁液の濃度は、得られる画像を考慮して適宜選択すればよく、白色の絵の具と水との混合液の場合、例えば、白色の塗料の濃度が0.1~1.0質量%であり、牛乳と水との混合液の場合、例えば、牛乳の濃度が10~50質量%である混合液が挙げられる。
【0024】
水膜103として白色の懸濁液を用いると、タイヤ111が黒色、白色の懸濁液が白色であることから、接地部112の輪郭が鮮明に写し出される。また、外光の遮蔽効果が大となり、接地部112の照明が外光に負けず、該接地部112の画像が暗くならず、はっきり写し出される。
【0025】
水膜103の厚さは、特に限定されず、例えば、1~10mm、好ましくは4~6mmである。上記範囲内であると、外光の遮蔽効果、コントラストになる効果などが好適得られる傾向がある。
【0026】
撮像装置104は、水膜103が形成された透明又は半透明な板102上に静止する車両、走行する車両のタイヤ111の接地部112の撮影が可能なものであれば使用可能であり、静止画用カメラ、動画用カメラなどの各種カメラなどを使用できる。
なかでも、撮像装置104として、タイヤ表面の凹凸による除水の様子を観察できる観点から、ハイスピードカメラを用いることが望ましい。前記ハイスピードカメラとしては、例えば、デジタルハイスピードカメラなどが挙げられる。
【0027】
本発明において、ハイスピードカメラとは、1秒間に30フレーム(コマ)を超えるフレーム(コマ)を連続的に撮影できるカメラである。
【0028】
ハイスピードカメラのフレームレート(撮影速度)は、1000~50000fps(frame per second)であることが好ましく、1500~40000fpsであることがより好ましい。また、ハイスピードカメラのシャッタースピードは、特に限定されないが、20.1μs以下であることが好ましい。
【0029】
照度は特に限定されないが、タイヤ表面の凹凸による除水の様子を観察できる観点から、好ましくは1万ルクス以上、より好ましくは5万ルクス以上、更に好ましくは10万ルクス以上であり、また、好ましくは50万ルクス以下、より好ましくは40万ルクス以下、更に好ましくは30万ルクス以下である。
【0030】
撮像装置104は、タイヤ表面の凹凸による除水の様子を観察できる観点から、狭小な視野を撮影することが望ましい。
撮像する視野(部分)は、好ましくは5.0cm以下、より好ましくは3.0cm以下、更に好ましくは2.0cm以下であり、下限は特に限定されず、狭小視野を撮影するほど望ましいが、例えば、0.01cm以上、0.05cm以上、0.1cm以上であってもよい。
【0031】
撮像装置104は、静止画、動画を撮影するためにコンピュータによって制御及び運転されてもよい。コンピュータは、撮像装置104を制御するとともに、撮像装置104からの撮影データを処理するデータ処理装置と、データ処理装置で処理した処理データに基づくタイヤ111の接地状態を表示する表示装置として機能するものなどを使用できる。
【0032】
タイヤ接地状態の撮影装置101は、撮像装置104によりコントラストのある静止画、動画を撮影するため、適宜、照明装置が設けられていてもよい。
【0033】
画像処理ステップでは、撮影ステップで取得した画像に対して、実接地部分、水膜部分、空間部分の領域に分離する。上記画像処理ステップとしては、特に限定されないが、実接地部分と非実接地部分(水膜部分と空間部分とを合わせた領域、すなわち、実接地部分以外の領域)とに分離する閾値を決定する「実接地部分の取得ステップ」と、空間部分と空間部分以外の部分(実接地部分と水膜部分とを合わせた領域)とに分離する閾値を決定する「空間部分の取得ステップ」からなることが好ましい。なお、前記タイヤ除水性の評価方法において、実接地部分の取得ステップ、空間部分の取得ステップを行う順序は、特に限定されず、いずれのステップを先に行ってもよいし、別途同時に行ってもよい。
【0034】
ここで、本発明において、「実接地部分」とは、タイヤが実際に接地している領域、すなわち、タイヤと路面との間に水膜が存在しない領域である。「水膜部分」とは、タイヤがマイクロスケールでは路面に接地していない領域、すなわち、タイヤと路面との間に水膜が存在する領域である。「空間部分」とは、タイヤが映っていない領域、すなわち、タイヤが到達していないか、あるいはタイヤが走り去った領域である。また、「非実接地部分」とは、「水膜部分」と「空間部分」とを合わせた領域、すなわち、スナップショット画像全体から「実接地部分」を除いた残りの領域のことを指す。
【0035】
実接地部分の取得ステップは、撮影ステップにおいて撮影した画像、例えば、水膜103を形成した透明又は半透明な板102上のタイヤ111の接地状態を、該透明又は半透明な板102の下方から撮影した静止画像に対して、実接地部分と非実接地部分(水膜部分と空間部分とを合わせた領域)とに分離する二値化閾値を決定することにより、実施できる。なお、上記静止画像のほかに、後述するスナップショット画像を使用し、二値化閾値を決定することもできる。
【0036】
実接地部分の取得ステップでは、実接地部分と非実接地部分(水膜部分と空間部分とを合わせた領域)とを分離する二値化閾値が、撮影ステップで撮影した静止画像の輝度分布において最大頻度を示す値であることが望ましい。上記最大頻度を示す値が2つ以上存在する場合には、より値が小さいものを最大頻度とすることが望ましい。また、前記輝度の下限値は、通常、0以上であることが望ましく、上限値は、通常、255以下であることが望ましい。
【0037】
前記撮影ステップにおいて撮影した静止画像は、透明又は半透明な板上で静止するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影した画像であることが望ましい。さらに、実接地部分の取得ステップにおける二値化閾値は、タイヤごとに決定することが望ましい。
【0038】
図2は、撮影ステップにおいて、(a)水膜103を形成した透明又は半透明な板102上で十分静止した状態のタイヤ111の接地部112を撮影した静止画像、(b)画像処理ステップにおいて、該画像の輝度分布を抽出した図を示している。
【0039】
(a)の静止画像は、水膜103を形成した透明又は半透明な板102上にタイヤ111を装着した車両を十分静止させた状態で、撮像装置104を用いて、透明又は半透明な板102の下方から、タイヤ111の接地部112を撮影して得られた画像であり、(b)の図は、(a)の画像の輝度分布を抽出して得られた図である。
【0040】
具体的には、(b)の図において、例えば、最大頻度(ピクセル数)を示す輝度の値を、二値化閾値とすることができ、タイヤの実接地部分と、非実接地部分とに分離できる。このとき、二値化閾値以下の領域を実接地部分とし、二値化閾値より大きい領域を非実接地部分とすることが望ましい。図2の例では、二値化閾値は52であり、輝度52以下の領域をタイヤの実接地部分とすることができる。
【0041】
空間部分の取得ステップは、撮影ステップにおいて撮影した動画の各スナップショット画像に対して、空間部分と、空間部分以外の部分(水膜部分と実接地部分とを合わせた領域)に分離する二値化閾値を決定することにより、実施できる。
【0042】
空間部分の取得ステップでは、実接地部分の取得ステップで用いた二値化閾値を決定する方法と異なる方法で、二値化閾値が決定される。なかでも、空間部分と空間部分以外の部分(実接地部分と水膜部分とを合わせた領域)との領域に分離する二値化閾値が、判別分析法、すなわち、大津の二値化(例えば、大津展之著、「判別及び最小2乗規準に基づく自動しきい値選定法」、電子情報通信学会論文誌D、Vol.J63-D、No.4、pp.346-356(1980)参照)により二値化閾値を決定することが望ましい。
【0043】
ここで、「スナップショット画像」とは、撮影した動画を構成する各コマの静止画像であり、全てのスナップショット画像の集合により撮影した動画が構成される。なお、本発明において、「撮影した動画」とは、透明又は半透明な板上をタイヤが通過する前から撮影を開始し、上記板上をタイヤが完全に通過し終わるまで撮影を行うものであり、タイヤと水膜以外の物体は何も映り込まない動画を指す。
【0044】
空間部分の取得ステップでは、撮影ステップにおいて撮影した動画を構成する全てのスナップショット画像に対して、空間部分と空間部分以外(実接地部分と水膜部分とを合わせた領域)の領域とに分離する二値化閾値を決定し、空間部分と空間部分以外の領域とに分離することが望ましい。
【0045】
なお、通常、空間部分の取得ステップで決定された二値化閾値は、実接地部分の取得ステップで決定された二値化閾値よりも大きい値となる。また、空間部分の取得ステップでは、スナップショット画像ごとに二値化閾値が決定されるため、それぞれ決定される二値化閾値は同一の値とはならず、通常異なる値となる。一方、実接地部分の取得ステップで決定された二値化閾値は、全てのスナップショット画像で共通した値を取ることが望ましい。具体的には、図2の例では、輝度52以下の領域はタイヤの実接地部分であり、輝度52以下という閾値はスナップショット画像ごとに変動しない。
【0046】
空間部分の取得ステップは、例えば、走行中のタイヤ111について、撮影位置にタイヤ111が入ってきてから、撮影位置からタイヤ111が出ていくまでの動画を、先ず撮影した上で、その動画を構成する各スナップショット画像の全画像に対して、大津の二値化などにより二値化閾値をそれぞれ決定することにより実施できる。
【0047】
タイヤ111の走行方法は、撮影位置にタイヤ111が入ってきてから出ていくまでの直進走行など、特に限定されないが、直進走行が望ましい。
【0048】
図3は、水膜103を形成した透明又は半透明な板102上を走行するタイヤ111の接地状態の変化を、該透明又は半透明な板102の下方から撮影した動画のなかから、抽出した3つのスナップショット画像を示しており、実接地部分の取得ステップで決定した二値化閾値(図2の場合は52)を持つ領域を黒色部位、空間部分の取得ステップで決定した二値化閾値を持つ領域を白色部位として示している。
【0049】
図3の(a)は、走行中のタイヤ111が動画の撮影位置に入ってきた初期の接地部112のスナップショット画像であり、(b)は、撮影位置の中期の接地部112のスナップショット画像であり、(c)は、撮影位置の終期の接地部112のスナップショット画像、の一例である。
【0050】
計算ステップは、撮影した画像の各スナップショット画像の実接地部分と水膜部分との比率を求めることにより実施できる。なかでも、スナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合を求めることが望ましく、動画の各スナップショット画像のうち、実接地部分の領域が所定割合以上となった最初のスナップショット画像に対して、該最初のスナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合を求めるものであることが特に望ましい。なお、実接地部分と水膜部分との比率の算出方法は上記の方法に限定されず、例えば、実接地部分及び水膜部分を合計した領域の面積中、実接地部分の領域が占める面積割合を求める方法であってもよい。
【0051】
前記計算ステップでは、先ず、全スナップショット画像のうち、実接地部分の領域が所定割合以上となった最初のスナップショット画像を抽出する。例えば、図2の場合、閾値52以下の領域が所定割合以上となった最初のスナップショット画像を抽出する。
【0052】
前記「所定割合」は、適宜選択することが可能である。なかでも、実接地部分と水膜部分と空間部分との領域からなるスナップショット画像100%(面積%)中、実接地部分の領域が1.0%(面積%)以上を所定割合以上とすることが望ましい。
【0053】
なお、本発明において、「最初のスナップショット画像」とは、全スナップショット画像のうち、実接地部分の領域が所定割合以上となった最初のスナップショット画像を意味する。すなわち、動画開始時のスナップショット画像から、最初のスナップショット画像の直前までの全スナップショット画像は、実接地部分の領域が所定割合未満である。例えば、全スナップショット画像のうち、スナップショット画像100%(面積%)中の実接地部分の領域が1.0%以上となった最初のタイミングの画像を最初のスナップショット画像とした場合、スナップショット画像が、実接地部分の領域が0.1%を占めるスナップショット画像1→0.4%を占めるスナップショット画像2→1.1%を占めるスナップショット画像3→1.5%を占めるスナップショット画像4の順に続くのであれば、1.0%以上となった最初のスナップショット画像は、スナップショット画像3となる。
【0054】
例えば、空間部分の取得ステップで決定された閾値が60である場合、最初のスナップショット画像100%(面積%)中、閾値が60以下の領域が占める割合(%)、すなわち、最初のスナップショット画像100面積%中の実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合(面積%)を求めることができる。
【0055】
図4の(a)、(b)は、それぞれ異なるタイヤについて、撮影ステップと、画像処理ステップと、計算ステップの最初のスナップショット画像の抽出とをそれぞれ行い、得られた最初のスナップショット画像中の、実接地部分の領域を黒色領域、空間部分を白色領域、水膜部分を斜線領域、実接地部分及び水膜部分を合わせた領域を破線で囲まれた領域、として模式的に示した図である。
【0056】
具体的には、図4の(a)、(b)は、実接地部分の取得ステップで決定された二値化閾値52以下の実接地部分の領域(占める割合)がスナップショット画像中の1.0面積%以上を最初に占めるようになった画像を模式的に示した図である。黒色領域は、最初のスナップショット画像100面積%中の実接地部分の取得ステップにおいて決定された閾値52以下の領域を模式的に示している。白色領域は、最初のスナップショット画像100質量%中の空間部分の取得ステップにおいて決定された閾値60超の領域を模式的に示している。破線で囲まれた領域は、最初のスナップショット画像100質量%中の空間部分の取得ステップにおいて決定された閾値60以下の領域を模式的に示している。さらに、斜線領域は、最初のスナップショット画像100質量%中の空間部分の取得ステップにおいて決定された閾値60以下を満たし、かつ、実接地部分の取得ステップにおいて決定された閾値52超の領域を模式的に示している。
【0057】
図4の(a)は、(b)に比べて、最初のスナップショット画像の全体(100%(面積%))中、空間部分の取得ステップで決定された二値化閾値以下の領域(破線で囲まれた領域の占める割合(%)、すなわち実接地部分と水膜部分を合わせた領域)の占める割合が小さい。このような場合、(b)のタイヤに比べて(a)のタイヤの方が、除水速度が速いと評価できる。
【0058】
スナップショット画像の全体(100%(面積%))中の実接地部分の領域の面積割合、水膜部分の領域の面積割合、空間部分の領域の面積割合、実接地部分と水膜部分を合わせた領域の面積割合は、画像処理などの手法により測定できる。
【0059】
<タイヤ>
本発明は、トレッドを備えるタイヤであって、
前述のタイヤ除水性の評価方法により求められた面積割合S(%(面積%))、前記トレッドの厚みT(mm)が、下記式(1)、(2)を満たすタイヤである。
(1)S<30
(2)S×T≦400
【0060】
前記タイヤは、氷上グリップ性能が優れている。
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
タイヤと氷上の間の水膜を素早く除水することで、タイヤのトレッドゴムと氷とが密着する時間が増加する(式(1))。さらに、トレッドゴムの厚みを薄くすることでゴム内部の蓄熱を抑制することができ、タイヤ表面と氷との密着時間が増加した場合であっても、氷が解けて生じる新たな水膜の発生を抑えることができるため(式(2))、良好な氷上グリップ性能が達成されると推測される。
【0061】
前記タイヤは、特に、水膜を形成した透明又は半透明な板上を走行するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影する撮影ステップと、
撮影した動画の各スナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する画像処理ステップと、
実接地部分と水膜部分との比率を求める計算ステップとを含むタイヤ除水性の評価方法であって、
前記水膜が懸濁液で形成されており、
前記画像処理ステップにおいて、実接地部分と、実接地部分以外との領域に分離する二値化閾値が、輝度分布において最大頻度を示す値であり、空間部分と、空間部分以外との領域に分離する二値化閾値が、判別分析法により決定され、かつ、撮影した動画を構成する全てのスナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離し、
前記計算ステップにおいて、実接地部分の領域がスナップショット画像の1.0%(面積%)以上になった最初のスナップショット画像に対して、該最初のスナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合(面積%)を求める、
タイヤ除水性の評価方法により求められた面積割合S(%(面積%))、前記トレッドの厚みT(mm)が、前記式(1)、(2)を満たすタイヤであることが望ましい。
【0062】
本発明は、トレッドを備えるタイヤである。
前記トレッドは、トレッド用ゴム組成物から構成される。
【0063】
トレッド用ゴム組成物は、ゴム成分を含む。
トレッド用ゴム組成物に使用可能なゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のポリマーで、アセトンにより抽出されないポリマー成分がゴム成分に該当する。前記ゴム成分は、常温(25℃)で固体状態である。
【0064】
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0065】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0066】
ゴム成分としては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなども挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより得られる観点から、イソプレン系ゴム、BR、SBRが好ましく、イソプレン系ゴム、BRがより好ましい。
【0067】
ゴム成分は、非変性ゴムでもよいし、変性ゴムでもよい。
変性ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するゴムであればよく、例えば、ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ゴム等が挙げられる。
【0068】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシシリル基が好ましい。なお、上記アミノ基としては、特に限定されないが、アミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基が好ましい。上記アルコキシ基としては、特に限定されないが、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましい。アルコキシシリル基としては、特に限定されないが、炭素数1~6のアルコキシシリル基が好ましい。
【0069】
また、ゴムとして、水素添加ゴムも使用可能である。
【0070】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。また、前述の変性ゴムと同様の官能基を有する変性イソプレン系ゴムも使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
トレッド用ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0072】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRは、シス含量が90質量%以上のハイシスBRを含むことが好ましい。該シス含量は、95質量%以上がより好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0073】
また、BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。変性BRとしては、前記変性ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。また、BRとして、水素添加ブタジエンゴムも使用可能である。
【0074】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0075】
トレッド用ゴム組成物がBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0076】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H-NMR測定によって測定できる。
【0078】
SBRのビニル結合量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは42質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0079】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0080】
トレッド用ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上限は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0081】
トレッド用ゴム組成物は、効果がより良好に得られる観点から、水溶性フィラーを含むことが望ましい。
【0082】
水溶性フィラーの中央値粒度(メジアン径、D50)は、好ましくは0.4μm以上、より好ましくは0.6μm以上、更に好ましくは1.0μm以上である。上限は、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、水溶性フィラーの中央値粒度は、レーザー回折法にて測定でき、レーザー回折散乱法によって得られた質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径を意味する。
水溶性フィラーの中央値粒度は、以下の方法により測定される。
〔水溶性フィラーの中央値粒度(メジアン径)の測定〕
(株)島津製作所製SALD-2000J型を用い、レーザー回折法により測定する。操作方法は以下のとおりである。
<測定操作>
水溶性フィラーを、分散溶媒(トルエン)と分散剤(10質量%スルホこはく酸ジー2-エチルヘキシルナトリウム/トルエン溶液)との混合溶液に室温で分散させ、得られた分散液に超音波を照射しながら、該分散液を5分間撹拌して試験液を得る。該試験液を回分セルに移し、1分後に測定する。(屈折率:1.70-0.20i)
【0083】
水溶性フィラーとしては、例えば、水溶性無機塩、水溶性有機物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
水溶性無機塩としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の金属硫酸塩;塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の金属塩化物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩;等が挙げられる。
【0085】
水溶性有機物としては、リグニン誘導体、糖類等が挙げられる。
リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、等が好適である。リグニン誘導体は、サルファイトパルプ法、クラフトパルプ法のいずれにより得られたものでもよい。
【0086】
リグニンスルホン酸塩としては、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルコールアミン塩等が挙げられる。なかでも、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、バリウム塩等)が好ましい。
【0087】
リグニン誘導体は、スルホン化度がスルホン化度1.5~8.0/OCHであることが好ましい。この場合、リグニン誘導体は、リグニン及び/又はその分解物の少なくとも一部がスルホ基(スルホン基)で置換されているリグニンスルホン酸及び/又はリグニンスルホン酸塩を含むものであり、リグニンスルホン酸のスルホ基は、電離していない状態でもよいし、スルホ基の水素が金属イオン等のイオンに置換されていてもよい。該スルホン化度は、より好ましくは3.0~6.0/OCHである。上記範囲内にすることで、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0088】
なお、リグニン誘導体粒子(該粒子を構成するリグニン誘導体)のスルホン化度は、スルホ基の導入率であり、下記式で求められる。
スルホン化度(/OCH)=リグニン誘導体中のスルホン基中のS(モル)/リグニン誘導体中のメトキシル基(モル)
【0089】
糖類は、構成する炭素数に特に制限はなく、単糖、少糖、多糖のいずれでもよい。単糖としては、アルドトリオース、ケトトリオースなどの三炭糖;エリトロース、トレオースなどの四炭糖;キシロース、リボースなどの五炭糖;マンノース、アロース、アルトロース、グルコースなどの六炭糖;セドヘプツロースなどの七炭糖などが挙げられる。少糖としては、スクロース、ラクトースなどの二糖;ラフィノース、メレジトースなどの三糖;アカルボース、スタキオースなどの四糖;キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖などのオリゴ糖、等が挙げられる。多糖としては、グリコーゲン、でんぷん(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、ヘミセルロース、デキストリン、グルカン等が挙げられる。
【0090】
水溶性フィラーのなかでも、水溶性無機塩が好ましく、金属硫酸塩がより好ましく、硫酸マグネシウムが更に好ましい。また、硫酸マグネシウムのなかでも、無水硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム2水和物、硫酸マグネシウム3水和物が好ましく、無水硫酸マグネシウムがより好ましい。また、硫酸ナトリウムも好ましく、無水硫酸ナトリウムもより好ましい。
【0091】
トレッド用ゴム組成物において、水溶性フィラーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、特に好ましくは60質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内にすることで、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0092】
トレッド用ゴム組成物は、効果がより良好に得られる観点から、加硫ゴム粒子を含むことが望ましい。
【0093】
加硫ゴム粒子は、加硫ゴムを材質とする粒子であり、具体的には、JIS K 6316:2017に規定されるゴム粉などを使用可能である。環境への配慮及びコストの観点から、廃タイヤの粉砕物等から製造される再生ゴム粉が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
加硫ゴム粒子の市販品としては、Lehigh社、村岡ゴム工業(株)等の製品を使用できる。なお、本明細書において、加硫ゴム粒子は、ゴム成分には含まれない。
【0095】
加硫ゴム粒子の平均粒子径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、加硫ゴム粒子の平均粒子径は、JIS Z 8815:1994に準拠して測定される粒度分布から算出された質量基準の平均粒子径である。
【0096】
加硫ゴム粒子の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、特に好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0097】
トレッド用ゴム組成物は、効果がより良好に得られる観点から、表面粗化材を配合することが好ましい。
【0098】
表面粗化材としては特に限定されないが、卵殻粉、短繊維、酸化亜鉛ウィスカ、脱殻粉、シラス粒状物、粉砕胡桃、火山灰、鉄微粒子等が挙げられる。また、表面粗化材としては、再生ゴム、加硫ゴム粉末などのゴム粉も使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、卵殻粉が好ましい。卵殻粉は、卵殻を粉砕することで得られるものであり、その主成分は炭酸カルシウムである。
【0099】
表面粗化材(好ましくは卵殻粉)の平均粒子径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは70μm以下、特に好ましくは50μm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、表面粗化材(卵殻粉)の平均粒子径は、粒度分布測定器を用いて測定される。
【0100】
卵殻粉としては、例えば、(株)グリーンテクノ21、キューピー(株)等の製品を使用できる。
【0101】
トレッド用ゴム組成物において、表面粗化材の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、卵殻粉の含有量も同様の範囲が好適である。
【0102】
トレッド用ゴム組成物は、効果がより良好に得られる観点から、無機充填材を含むことが望ましい。
【0103】
無機充填材としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラーが挙げられる。
【0104】
トレッド用ゴム組成物において、無機充填材の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
【0105】
無機充填材のなかでも、効果がより良好に得られる観点から、シリカが望ましい。
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0106】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは125m/g以上である。また、シリカのNSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0107】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0108】
トレッド用ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは80質量部以上、特に好ましくは100質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、例えば、300質量部以下、200質量部以下、150質量部以下であってよい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
【0109】
トレッド用ゴム組成物は、効果がより良好に得られる観点から、カーボンブラックを含むことが望ましい。
【0110】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、70m/g以上が更に好ましい。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましく、120m/g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0112】
トレッド用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0113】
シリカ、カーボンブラック、水溶性フィラー以外に使用可能なフィラー(充填材)としては例えば、難分散性フィラー等も挙げられる。
【0114】
難分散性フィラーとしては、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維、短繊維状セルロース、ゲル状化合物等が挙げられる。なかでも、ミクロフィブリル化植物繊維が好ましい。
【0115】
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、良好な補強性が得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。これらのミクロフィブリル化植物繊維は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
なお、本明細書において、セルロースミクロフィブリルとは、典型的には、平均繊維径が10μm以下の範囲内であるセルロース繊維、より典型的には、セルロース分子の集合により形成されている平均繊維径500nm以下の微小構造を有するセルロース繊維を意味する。典型的なセルロースミクロフィブリルは、例えば、上記のような平均繊維径を有するセルロース繊維の集合体として形成されている。
【0117】
トレッド用ゴム組成物は、シランカップリング剤を含むことが望ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
トレッド用ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部(表面修飾シリカを構成するシリカ及びそれ以外に含まれるシリカの合計量100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0119】
トレッド用ゴム組成物は、可塑剤を含むことが好ましい。
ここで、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)等が挙げられる。
【0120】
トレッド用ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは35質量部以上、特に好ましくは40質量部以上、最も好ましくは55質量部以上である。上限は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0121】
トレッド用ゴム組成物に使用可能な液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマー、液状ファルネセン系ポリマーなど)などを用いることが望ましい。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、液状ポリマーを含むことが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0122】
トレッド用ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、特に好ましくは35質量部以上、最も好ましくは50質量部以上である。上限は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0123】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。また、上記植物油を食用油等として利用したものを回収した廃食用油であってもよい。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。
【0124】
トレッド用ゴム組成物において、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、特に好ましくは35質量部以上、最も好ましくは50質量部以上である。上限は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、オイルの含有量は、油展ゴムの伸展油も含む量である。
【0125】
液状ポリマーについて、液状樹脂としては、テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0126】
液状ポリマーについて、液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0127】
トレッド用ゴム組成物において、液状ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0128】
トレッド用ゴム組成物に使用可能な上記樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
【0129】
トレッド用ゴム組成物において、上記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0130】
上記樹脂の軟化点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0131】
上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0132】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0133】
上記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0134】
上記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0135】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0136】
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0137】
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂が好ましい。
【0138】
上記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり、例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネンなど、フェノール系化合物としては、フェノール、ビスフェノールAなど、芳香族化合物としては、スチレン系化合物(スチレン、α-メチルスチレンなど)が挙げられる。
【0139】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0140】
可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0141】
トレッド用ゴム組成物は、加工助剤を含有してもよい。
加工助剤としては、金属塩(酸の水素原子が金属イオンで置換された化合物)、脂肪酸アミド、アミドエステル、脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、金属塩、脂肪酸アミドが好ましく、金属塩がより好ましい。
【0142】
金属塩に使用される金属としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属や、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。また、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、モリブデン等も使用可能である。なかでも、アルカリ金属が好ましい。
【0143】
金属塩に使用される酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の脂肪酸等が挙げられる。また、ホウ酸、炭酸、塩酸、硝酸、硫酸等も使用可能である。
【0144】
加工助剤の市販品としては、キシダ化学(株)、健栄製薬(株)、ストラクトール社、Performance Additives社等の製品を使用できる。
【0145】
トレッド用ゴム組成物において、加工助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0146】
トレッド用ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0147】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0148】
トレッド用ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。
【0149】
トレッド用ゴム組成物は、ステアリン酸を含んでもよい。前記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部以上、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0150】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0151】
トレッド用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含んでもよい。
トレッド用ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~3質量部である。
【0152】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0153】
トレッド用ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。
トレッド用ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは2~5質量部である。
【0154】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0155】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0156】
トレッド用ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な前記性能バランスを付与するという点で、硫黄を配合してもよい。
【0157】
トレッド用ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0158】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0159】
トレッド用ゴム組成物は、加硫促進剤を含んでもよい。
トレッド用ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、通常、0.3~10質量部、好ましくは0.5~4質量部である。
【0160】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0161】
トレッド用ゴム組成物には、上記成分以外にも、離型剤や顔料等の応用分野に従って、それらの使用に使われる通常の添加物を適宜配合してもよい。トレッド用ゴム組成物において、前記添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは2~5質量部である。
【0162】
トレッド用ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、必要に応じて架橋する方法などにより製造できる。なお、混練条件としては、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。
【0163】
本発明のタイヤは、上記トレッド用ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。
例えば、各種材料を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0164】
本発明のタイヤは、前記タイヤ除水性の評価方法により求められた面積割合S(%(面積%))が、下記式(1)を満たす。
(1)S<30
Sは、好ましくは28%以下、より好ましくは25%以下、更に好ましくは21%以下、特に好ましくは18%以下である。Sの下限は特に限定されないが、好ましくは5%以上、より好ましくは9%以上、更に好ましくは12%以上、特に好ましくは15%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0165】
前記タイヤは、前記面積割合S(%)、トレッドの厚みT(mm)が、下記式(2)を満たす。
(2)S×T≦400(単位:%・mm)
S×Tは、好ましくは380以下、より好ましくは360以下、更に好ましくは286以下、特に好ましくは252以下、最も好ましくは234以下である。S×Tの下限は特に限定されないが、好ましくは100以上、より好ましくは130以上、更に好ましくは150以上、特に好ましくは170以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0166】
前記タイヤにおいて、面積割合Sは、前記タイヤ除水性の評価方法で、かつ以下の(1)~(4)の条件を満たす評価方法において、第三ステップで得られる面積割合(%)であるこことが望ましい。
(1)水膜が懸濁液で形成される。
(2)第一ステップでは、静止画像の輝度分布において最大頻度を示す輝度の値を、実接地部分と非実接地部分又は空間部分に分離する二値化閾値と決定する。
(3)第二ステップで、大津の二値化により二値化閾値を決定する。
(4)第三ステップで、第一ステップで決定された二値化閾値以下の実接地部分の領域が1.0%(面積%)以上となったスナップショット画像を最初のスナップショット画像とする。
【0167】
前記タイヤは、効果がより良好に得られる観点から、トレッドの厚みT(mm)が、下記式を満たすことが望ましい。
5.0≦T≦18.0
Tの下限は、好ましくは6.0mm以上、より好ましくは9.0mm以上、更に好ましくは11.0mm以上である。上限は、好ましくは16.0mm以下、より好ましくは14.0mm以下、更に好ましくは13.0mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0168】
前記タイヤにおいて、トレッドの厚みTは、トレッド面上の各点における各トレッドの厚みのうち、最大寸法(トレッド部の最大厚み)を指す。
トレッド表面上の各点における厚みは、当該点におけるトレッド表面の法線に沿って計測される値であり、トレッド部の厚みTは、各点における厚みの最大値である。各点における厚みは、タイヤの軸を含む平面で切った断面において、トレッド表面からベルト層、カーカス層などの他の繊維材料を含む補強層のタイヤ最表面側の界面までの距離であり、溝を有する箇所は、該溝のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線で形成される面からの直線距離である。具体的には、後述の図5、6で示されるようなキャップ層及びベース層からなる2層構造トレッドの場合、各点における厚みは、トレッド面24からバンド18のタイヤ最表面側の界面までの距離を意味する。また、当該2層構造トレッドに代えて、単層構造トレッドや3層以上の構造を有するトレッドを適用したタイヤの場合も、2層構造トレッドと同様、各点における厚みは、トレッド面からバンドのタイヤ最表面側の界面までの距離を意味する。
なお、本発明において、トレッド部は、キャップゴム層の1層のみで形成されていてもよく、キャップゴム層の内側にベースゴム層を設けて、2層にされていてもよく、また、3層でもよく、4層以上であってもよい。
【0169】
なお、本明細書において、トレッドの厚みTの寸法は、特に言及がない限り、タイヤを解体し、当該厚みTを測定して得られた値である。
【0170】
前記タイヤにおいて、効果がより良好に得られる観点から、ランド比L(%)、前記面積割合S(%)は、下記式を満たすことが望ましい。
L/S≧2.0(単位:無次元)
L/Sの下限は、好ましくは2.3以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.7以上である。上限は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.2以下、更に好ましくは3.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0171】
前記タイヤにおいて、効果がより良好に得られる観点から、ランド比L(%)は、下記式を満たすことが望ましい。
L≧50%
ランド比の下限は、好ましくは65%以上、より好ましくは68%以上、更に好ましくは70%以上である。前記ランド比の上限は、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは82%以下、特に好ましくは80%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0172】
なお、本明細書において、上記タイヤが空気入りタイヤの場合、ランド比(L)は、正規リム、正規内圧、正規荷重条件下における接地形状から計算される。非空気入りタイヤの場合、正規内圧を必要とせずに、同様に測定できる。
【0173】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0174】
「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”INFLATION PRESSURE”を意味し、「正規リム」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250KPa以上)を指す。なお、250KPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0175】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、前記した「正規リム」や「正規内圧」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合は以下の計算により、正規荷重Wを求める。
V={(Dt/2)-(Dt/2-Ht)}×π×Wt
=0.000011×V+175
:正規荷重(kg)
V:タイヤの仮想体積(mm
Dt:タイヤ外径(mm)
Ht:タイヤの断面高さ(mm)
Wt:タイヤの断面幅(mm)
【0176】
「接地形状」は、タイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることにより得ることができる。
タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させる。すなわち、5回、接地形状を得る。このとき、5つの接地形状について、該輪郭の溝で途切れた部分を滑らかに繋ぎ、得られる形状を仮想接地面とする。
ランド比(L)は、厚紙の転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/(5つの接地形状から仮想接地面の面積の平均値)×100(%)で計算される。
【0177】
前記タイヤにおいて、トレッドを構成するトレッド用ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)は、アセトン抽出量A(質量%)が下記式を満たすことが望ましい。
A≧17質量%
Aの下限は、20質量%以上が好ましく、23質量%以上がより好ましい。上限は、34質量%以下が好ましく、31質量%以下がより好ましく、28質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本発明において、アセトン抽出量(A)は、前記ゴム組成物(試料)について、JIS K 6229:2015に準拠したアセトン抽出量の測定方法により測定される(単位:前記ゴム組成物(試料)中の質量%)。
【0178】
トレッド用ゴム組成物で構成されたトレッドを備えた本発明のタイヤの一例を、図5を用いて説明する。
図5において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。トレッド部4は、キャップ層30及びベース層28を備えている。
【0179】
なお、図5では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド部4の例が示されているが、単層構造トレッド、3層以上の構造を有するトレッド部でもよい。
【0180】
タイヤ2において、それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ10と接合されている。このサイドウォール6は、カーカス14の損傷を防止できる。
【0181】
図5のそれぞれのウィング8は、トレッド4とサイドウォール6との間に位置している。ウィング8は、トレッド4及びサイドウォール6のそれぞれと接合している。
【0182】
それぞれのクリンチ10は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。
【0183】
それぞれのビード12は、クリンチ10の軸方向内側に位置している。ビード12は、コア32と、このコア32から半径方向外向きに延びるエイペックス34とを備えている。コア32はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含むことが望ましい。エイペックス34は、半径方向外向きに先細りである。
【0184】
カーカス14は、カーカスプライ36を備えている。このタイヤ2では、カーカス14は1枚のカーカスプライ36からなるが、2枚以上で構成されてもよい。
【0185】
このタイヤ2では、カーカスプライ36は、両側のビード12の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ36は、それぞれのコア32の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ36には、主部36aと一対の折り返し部36bとが形成されている。すなわち、カーカスプライ36は、主部36aと一対の折り返し部36bとを備えている。
【0186】
図示されていないが、カーカスプライ36は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°が好適である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有することが好ましい。
【0187】
図5のベルト層16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト層16は、カーカス14と積層されている。ベルト層16は、カーカス14を補強する。ベルト層16は、内側層38及び外側層40からなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層38の幅は外側層40の幅よりも若干大きいことが望ましい。このタイヤ2では、ベルト層16の軸方向幅はタイヤ2の断面幅(JATMA参照)の0.6倍以上が好ましく、0.9倍以下が好ましい。
【0188】
図示されていないが、内側層38及び外側層40のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。言い換えれば、ベルト層16は並列された多数のコードを含んでいる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層38のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層40のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。
【0189】
タイヤ2は、トレッド4が、前述のトレッド用ゴム組成物で構成されている。
【0190】
図5のバンド18は、ベルト層16の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド18はベルト層16の幅と同等の幅を有している。このバンド18が、このベルト層16の幅よりも大きな幅を有していてもよい。
【0191】
図示されていないが、バンド18は、コードとトッピングゴムとからなることが望ましい。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド18は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下であることが好ましい。このコードによりベルト層16が拘束されるので、ベルト層16のリフティングが抑制される。
【0192】
図5のベルト層16及びバンド18は、補強層を構成している。ベルト層16のみから、補強層が構成されてもよい。
【0193】
図6は、図5のトレッド4付近の拡大図である。
図6のT1は、トレッド表面24上の所定の点におけるトレッドの厚みを示しており、当該点におけるトレッド表面24の法線に沿って計測される値である。そして、トレッドの厚みTは、各点における厚みの最大値(トレッド部の最大厚み)である。
【0194】
そして、タイヤ2は、このトレッド4の厚みT(mm)、タイヤ除水性の評価方法により求められた前記面積割合S(%)、トレッドの樹脂成分の含有量が、前記式(1)「S<30」、(2)「S×T≦400」を満たし、S×T≦380であることが好ましく、S×T≦360であることがより好ましい。
また、タイヤ2は、ランド比L(%)、トレッド4の厚みT(mm)が、前記式「L/T≧200」を満たすことが望ましい。また、トレッド4を構成するゴム組成物(加硫後のゴム組成物)は、アセトン抽出量AE(質量%)が式「AE≧20.0」を満たすことが望ましい。
【0195】
インナーライナー20は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー20は、カーカス14の内面に接合されている。インナーライナー20の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0196】
それぞれのチェーファー22は、ビード12の近傍に位置している。この実施形態では、チェーファー22は布とこの布に含浸したゴムとからなることが望ましい。このチェーファー22が、クリンチ10と一体とされてもよい。
【0197】
このタイヤ2では、トレッド4は溝26として主溝42を備えている。図5に示されているように、このトレッド4には、複数本、詳細には、3本の主溝42が刻まれている。これらの主溝42は、軸方向に間隔をあけて配置されている。このトレッド4には、3本の主溝42が刻まれることにより、周方向に延在する4本のリブ44が形成されている。つまり、リブ44とリブ44との間が主溝42である。
【0198】
それぞれの主溝42は、周方向に延在している。主溝42は、周方向に途切れることなく連続している。主溝42は、例えば雨天時において、路面とタイヤ2との間に存在する水の除水を促す。このため、路面が濡れていても、タイヤ2は路面と十分に接触することができる。
【実施例0199】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【0200】
以下に示す各種薬品を用いて各表に従って配合を変化させて得られるタイヤを検討し、下記評価方法に基づいて算出した結果を各表に示す。
【0201】
(ゴム成分)
NR:TSR20
BR:JSR(株)製のBR730(ハイシスBR、シス含量:97質量%)
【0202】
(ゴム成分以外の薬品)
シリカ:エボニック・デグサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックI(N220、NSA:114m/g、DBP114ml/100g)
硫酸マグネシウム1:馬居化成工業(株)製の硫酸マグネシウム(中央値粒度(メジアン径):1μm)
硫酸マグネシウム2:馬居化成工業(株)製の硫酸マグネシウム(中央値粒度(メジアン径):50μm)
硫酸マグネシウム3:馬居化成工業(株)製の硫酸マグネシウム(中央値粒度(メジアン径):100μm)
硫酸マグネシウム4:馬居化成工業(株)製の硫酸マグネシウム(中央値粒度(メジアン径):150μm)
加硫ゴム粒子1:村岡ゴム工業(株)製のゴム粉(平均粒子径:10μm)
加硫ゴム粒子2:村岡ゴム工業(株)製のゴム粉(平均粒子径:50μm)
加硫ゴム粒子3:村岡ゴム工業(株)製のゴム粉(平均粒子径:100μm)
加硫ゴム粒子4:村岡ゴム工業(株)製のゴム粉(平均粒子径:150μm)
卵殻粉1:(株)グリーンテクノ21製の卵殻粉(平均粒子径10μm)
卵殻粉2:(株)グリーンテクノ21製の卵殻粉(平均粒子径50μm)
卵殻粉3:(株)グリーンテクノ21製の卵殻粉(平均粒子径100μm)
シランカップリング剤:EVONIK-DEGUSSA製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH-24(アロマオイル)
樹脂:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85(α-メチルスチレン及びスチレンの共重合体、常温で固体状態の樹脂)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
加工助剤:Performance Additives社製のULTRA-FLOW 440(脂肪酸亜鉛)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
液状ポリマー:CRAY VALLEY社製のRICON130(ポリブタジエン、Mn2500)
【0203】
<試験用タイヤの製造>
各表に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の16Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を160℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得る。
次に、得られる混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ポリマー組成物を得る。
得られる未加硫ポリマー組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、次いで、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造する。
【0204】
各表に従って配合を変化させた組成物により得られる試験用タイヤを想定して、下記のタイヤ除水性の評価方法、氷上グリップ性能の評価方法に基づいて、算出した結果を各表に示す。
なお、基準配合は、以下のとおりとする。
表1:配合1-14
表2:配合2-10
表3:配合3-9
【0205】
<タイヤ除水性の評価方法>
(1)撮影ステップでは、以下の実験条件下で、図1に示されるタイヤ接地状態の撮影装置101を用い、図2~4に示される方法により、各試験用タイヤの静止画像と動画を撮影する。
(実験条件)
タイヤ1本にかかる荷重:375kg
タイヤ:195/65R15(100km程度慣らし走行済)
車速:ハイスピードカメラ通過時に5km/h(動画撮影時)
ガラス厚み:60mm
水膜の厚み:4mm
懸濁水:白色の絵の具を水に混ぜて作成( 水8Lに対して塗料32ml、塗料の種類:サクラポスターカラーwhite)
ハイスピードカメラ:nac製 ACS-1 M60
ハイスピードカメラ側の設定
:撮影fps 30000fps
:ゲイン ガンマ mid
:シャッタ(露光時間) open
使用レンズ:100mm F2.8 Ultra Macro APO レンズ
レンズの設定
:しぼり f4
:撮影倍率 x3.4(x2のテレコンバーターを使用)
照度:10万ルクス
視野:1.5cm×1.2cm
【0206】
(2)画像処理ステップでは、以下の手順で二値化閾値を取得する。
(2-1)実接地部分の取得ステップでは、前記撮影ステップで撮影した静止画像の輝度分布において最大頻度を示す値を、実接地部分とそれ以外の部分(水膜部分と空間部分とを合わせた領域)とに分離する二値化閾値とする。
(2-2)空間部分の取得ステップでは、前記撮影ステップで撮影した動画の各スナップショット画像に対して、判別分析法により取得される二値化閾値を、空間部分と空間部分以外の部分(実接地部分と水膜部分とを合わせた領域)との領域に分離する二値化閾値とする。
【0207】
(3)計算ステップでは、動画の各スナップショット画像のうち、実接地部分の領域が1.0%(面積%)以上となった最初のスナップショット画像に対して、該最初のスナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合を求める。
【0208】
表1~3において、以上のタイヤ除水性の評価方法で求められる面積割合S(%)が30.0%未満と小さいタイヤは、タイヤの除水性、特にタイヤ表面の凹凸によるマイクロスケールでの除水性が良好と評価できる。
【0209】
<アセトン抽出量AE(質量%)>
上記試験用タイヤのトレッドから切り出したゴム試験片について、JIS K 6229:2015に準拠したアセトン抽出量の測定方法により、アセトン抽出を行い、抽出量を測定する。
【0210】
<氷上グリップ性能>
試験用タイヤを車両に装着し、下記条件下で氷上を実車走行し、氷上グリップ性能を評価する。氷上グリップ性能評価として、上記車両を用いて氷上を走行し、時速30km/hでロックブレーキを踏み、停止させるまでに要する停止距離(氷上制動停止距離)を測定する。
基準比較例を100としたときの指数で表示する(氷上グリップ性能指数)。
指数が大きいほど、氷上での制動性能(氷上グリップ性能)に優れることを示す。
気温:-1~-6℃
【0211】
【表1】
【0212】
【表2】
【0213】
【表3】
【0214】
本発明(1)は、水膜を形成した透明又は半透明な板上を走行するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影する撮影ステップと、
撮影した動画の各スナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する画像処理ステップと、
実接地部分と水膜部分との比率を求める計算ステップとを含むタイヤ除水性の評価方法である。
【0215】
本発明(2)は、前記計算ステップにおいて、前記比率が、スナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合である本発明(1)に記載のタイヤ除水性の評価方法である。
【0216】
本発明(3)は、前記水膜が懸濁液で形成されている本発明(1)又は(2)に記載のタイヤ除水性の評価方法である。
【0217】
本発明(4)は、前記計算ステップにおいて、実接地部分の領域がスナップショット画像の1.0%(面積%)以上になった最初のスナップショット画像に対して、該最初のスナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合(面積%)を求める本発明(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せのタイヤ除水性の評価方法である。
【0218】
本発明(5)は、前記画像処理ステップにおいて、実接地部分と、実接地部分以外との領域に分離する二値化閾値が、輝度分布において最大頻度を示す値である本発明(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのタイヤ除水性の評価方法である。
【0219】
本発明(6)は、前記画像処理ステップにおいて、空間部分と、空間部分以外との領域に分離する二値化閾値が、判別分析法により決定される本発明(1)~(5)のいずれかとの任意の組合せのタイヤ除水性の評価方法である。
【0220】
本発明(7)は、前記画像処理ステップにおいて、撮影した動画を構成する全てのスナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する本発明(1)~(6)のいずれかとの任意の組合せのタイヤ除水性の評価方法である。
【0221】
本発明(8)は、トレッドを備えるタイヤであって、
以下のタイヤ除水性の評価方法により求められた面積割合S(%)、前記トレッドの厚みT(mm)が、下記式(1)、(2)を満たすタイヤである。
(1)S<30
(2)S×T≦400
(タイヤ除水性の評価方法)
水膜を形成した透明又は半透明な板上を走行するタイヤを、該透明又は半透明な板の下方から撮影する撮影ステップと、
撮影した動画の各スナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離する画像処理ステップと、
実接地部分と水膜部分との比率を求める計算ステップとを含むタイヤ除水性の評価方法であって、
前記水膜が懸濁液で形成されており、
前記画像処理ステップにおいて、実接地部分と、実接地部分以外との領域に分離する二値化閾値が、輝度分布において最大頻度を示す値であり、空間部分と、空間部分以外との領域に分離する二値化閾値が、判別分析法により決定され、かつ、撮影した動画を構成する全てのスナップショット画像に対して、実接地部分、水膜部分及び空間部分の領域に分離し、
前記計算ステップにおいて、実接地部分の領域がスナップショット画像の1.0%(面積%)以上になった最初のスナップショット画像に対して、該最初のスナップショット画像の総面積100%(面積%)中、実接地部分及び水膜部分を合計した領域が占める面積割合(面積%)を求める、
タイヤ除水性の評価方法。
【0222】
本発明(9)は、下記式を満たす本発明(8)に記載のタイヤである。
S×T≦380
【0223】
本発明(10)は、下記式を満たす本発明(8)又は(9)に記載のタイヤである。
S×T≦360
【0224】
本発明(11)は、ランド比L(%)、面積割合S(%)が、下記式を満たす本発明(8)~(10)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
L/S≧2.0
【0225】
本発明(12)は、アセトン抽出量A(質量%)が下記式を満たす本発明(8)~(11)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
A≧17.0
【0226】
本発明(13)は、トレッドが、ゴム成分100質量部に対する無機充填材の含有量が60質量部以上である本発明(8)~(12)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0227】
本発明(14)は、トレッドが、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が60質量部以上である本発明(8)~(13)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0228】
本発明(15)は、トレッドが水溶性フィラーを含む本発明(8)~(14)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0229】
本発明(16)は、トレッドがゴム粉を含む本発明(8)~(15)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0230】
本発明(17)は、トレッドが液状ポリマーを含む本発明(8)~(16)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0231】
本発明(18)は、冬用タイヤである本発明(8)~(17)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【符号の説明】
【0232】
101 タイヤ接地状態の撮影装置
102 透明又は半透明な板
103 水膜
104 撮像装置
111 タイヤ
112 接地部
2 空気入りタイヤ
3 サイド部
4 トレッド
6 サイドウォール
8 ウィング
10 クリンチ
12 ビード
14 カーカス
16 ベルト
18 バンド
20 インナーライナー
22 チェーファー
24 トレッド面
26 溝
28 ベース層
30 キャップ層
32 コア
34 エイペックス
36 カーカスプライ
36a 主部
36b 折り返し部
38 内側層
40 外側層
42 主溝
44 リブ
CL タイヤ2の赤道面
T1 トレッド表面24上の所定の点におけるトレッドの厚み
D トレッド4に形成された周方向の主溝42の主溝深さ

図1
図2
図3
図4
図5
図6