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特開2024-76642ケーブルリール及び陸電受電用コンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076642
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】ケーブルリール及び陸電受電用コンテナ
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/48 20060101AFI20240530BHJP
   B65H 75/38 20060101ALI20240530BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20240530BHJP
【FI】
B65H75/48 Z
B65H75/38 Z
B63J99/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188303
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000180966
【氏名又は名称】寺崎電気産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000121327
【氏名又は名称】遠藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 雄二
(72)【発明者】
【氏名】高島 禎典
【テーマコード(参考)】
3F068
【Fターム(参考)】
3F068AA12
3F068BA11
3F068DA05
3F068EA02
3F068FA06
3F068HA03
3F068HA07
3F068JA01
(57)【要約】
【課題】長さが同じ複数のケーブルをケーブルリールで同時に巻き取る際に、各ケーブルの先端に取り付けられたプラグ同士の位置ズレを抑制する。
【解決手段】陸電受電用コンテナに収容されるケーブルリールのドラムは、隣り合う鍔部同士の間で1本の所定長のケーブルを胴部に対して多列多段に巻き取ることによって、複数のケーブルの各々を多列多段に同時に巻き取る。各ケーブルには、陸側のソケットに接続するためのプラグが取り付けられている。胴部は、軸方向において、第1の端部と、第1の端部とは反対側の第2の端部とを有する。各鍔部は、第1の端部側の第1の側面と、第2の端部側の第2の側面とを有する。複数の第1の側面と複数の第2の側面とのうち、互いに対向する第1の側面と第2の側面との少なくとも一方における多段のうちの複数の段に対応する位置の各々に、他方側に突出した突起部が設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ船の舷に配置される陸電受電用コンテナに収容されるケーブルリールであって、
所定の軸周りに回転する胴部と、前記軸の軸方向に間隔をあけて前記胴部の胴周りに取り付けられた3つ以上の鍔部とを含むドラムと、
前記ドラムを回転させるモータとを備え、
前記ドラムは、前記モータの回転に基づき、隣り合う前記鍔部同士の間で1本の所定長のケーブルを前記胴部に対して多列多段に巻き取ることによって、複数の前記ケーブルの各々を前記胴部の互いに異なる位置で多列多段に同時に巻き取り、
各前記ケーブルには、陸側のソケットに接続するためのプラグが取り付けられており、
前記胴部は、前記軸方向において、第1の端部と、前記第1の端部とは反対側の第2の端部とを有し、
各前記鍔部は、前記第1の端部側の第1の側面と、前記第2の端部側の第2の側面とを有し、
複数の前記第1の側面と複数の前記第2の側面とのうち、互いに対向する前記第1の側面と前記第2の側面との少なくとも一方における前記多段のうちの複数の段に対応する位置の各々に、他方側に突出した突起部が設けられている、ケーブルリール。
【請求項2】
各前記鍔部は、各々が、前記胴部に取り付けられ、かつ前記ケーブルと接触する複数のリブと、各々が隣り合う前記リブ同士の間に設けられた複数の仕切り板とを含み、
前記仕切り板に対して前記リブよりも前記ケーブル側に突出するように金具を前記仕切り板に取り付けることにより、前記突起部が構成され、
各前記仕切り板には、前記金具を予め定められた複数の位置のいずれかに取り付けるために、前記軸方向に貫通した複数の第1の貫通孔が形成されている、請求項1に記載のケーブルリール。
【請求項3】
請求項2に記載のケーブルリールを備えた陸電受電用コンテナであって、
各前記ケーブルをさらに備え、
各前記プラグは、本体部と、前記本体部と離間した状態で前記本体部の周囲を覆う筒状のカバーとを有しており、
前記カバーには、前記カバーの外周面から内周面側に向かって貫通した第2の貫通孔が1又は複数形成されており、
前記カバーの直径は、隣り合う前記鍔部同士の間の距離よりも短く、
前記第1の貫通孔に治具の第1のフックが挿入され、かつ、前記第2の貫通孔に前記治具の第2のフックが挿入されることにより、前記プラグが隣り合う前記鍔部同士の間で収容された状態で前記鍔部に対して固定される、陸電受電用コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブルリール、及びケーブルリールを備えた陸電受電用コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
環境への配慮から、コンテナ船等の大型船の停泊中に、重油を燃料とする船内発電機を停止して陸上の商用電力(「陸電」とも称される。)を船舶へ供給することが行なわれている。これにより、港での停泊中に船内発電機から排出される環境負担物質(NOやCO等)を削減することができる。
【0003】
また、停泊中に陸上から受電するための設備(ケーブルリールや受電盤等)の船上配置スペースや利便性等の観点から、コンテナ船では、コンテナ内に受電設備を収容し、その受電用コンテナを船舶の右舷及び左舷の一方又は双方に配置して陸上から受電することも行なわれている。このような構成によれば、たとえば、受電用コンテナの上方に商業用のコンテナを積載したり、離岸時に受電用コンテナを陸側に保管したりすることも可能となる。さらに、離岸時に受電用コンテナを船上の別の場所に保管することも可能となる。
【0004】
特開2017-222277号公報(特許文献1)は、このような陸電受電システムを開示する。この陸電受電システムは、船舶の右舷と左舷との各々に受電用コンテナを備える。各受電用コンテナには、ケーブル、ケーブルリール、高圧陸電盤等が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-222277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
受電用コンテナでは、保管時には、ケーブルリールに給電用のケーブルが多段一列に巻き取られている。このケーブルの先端には、陸側のソケットに接続するためのプラグが取り付けられている。モバイル式の受電用コンテナの場合、船舶が着岸した後、陸電を船舶へ供給するために、当該受電用コンテナが船舶へ搭載される。その後、ケーブルリールからケーブルが繰り出される。船舶の出港(離岸)の際に、ケーブルリールによってケーブルを多段一列に巻き取る。その後、受電用コンテナは、陸へ下ろされる。
【0007】
しかしながら、船舶の着岸場所によって、ケーブルリールと陸側のソケットとの距離が長くなる場合がある。この場合、ケーブルの長さが足りないことが起こり得る。この点に関し、外形寸法が規格化された受電用コンテナにケーブルリールを収容するため、ケーブルリールの径は、受電用コンテナの外形寸法(縦寸法、横寸法、高さ寸法)の制限を受ける。詳しくは、ケーブルリールの径は、縦寸法、横寸法、高さ寸法うち長さが最も短い横寸法(2438mm)の制限を受ける。このような制限によってケーブルリールの径を大きくすることは難しい。すなわち、段数を増加させることは難しい。
【0008】
そこで、ケーブルを多段多列に巻き取るケーブルリールを用いることにより、多段一列にケーブルを巻き取る構成に比べて、ケーブル(詳しくは、ケーブルの有効長)を長くすることが考えられる。しかしながら、このような構成の場合、以下のような問題が生じる。
【0009】
コンテナ船において要求される電力は一般的に大きい。それゆえ、受電用コンテナは、有効長が同じである複数本(典型的には2本)のケーブルを用いて陸電から電力を受電する。複数本のケーブルの各々を多段多列に巻き取るケーブルリールを用いることにより、複数本のケーブルを同時に巻き取る。
【0010】
しかしながら、上記のように複数本のケーブルの各々を多段多列に巻き取るケーブルリールを用いた場合、各ケーブルに関し、多列に均等にケーブルが巻き取られることなく、特定の列(典型的には、端の列)に偏ってケーブルが巻き取られることがある。
【0011】
このような場合、複数のケーブルのうち1本のケーブルの巻き取りが完了しても、残りのケーブルの巻き取りが完了していない状況が起こりえる。その場合、各プラグの位置(高さ)がズレて、全てのプラグをコンテナ内に収容できないといった事態が生じ得る。
【0012】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、長さが同じ複数のケーブルをケーブルリールで同時に巻き取る際に、各ケーブルの先端に取り付けられたプラグ同士の位置ズレを抑制することが可能なケーブルリール、及びケーブルリールを備えた陸電受電用コンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示のある局面に従うと、ケーブルリールは、コンテナ船の舷に配置される陸電受電用コンテナに収容される。ケーブルリールは、所定の軸周りに回転する胴部と、軸の軸方向に間隔をあけて胴部の胴周りに取り付けられた3つ以上の鍔部とを含むドラムと、ドラムを回転させるモータとを備える。ドラムは、モータの回転に基づき、隣り合う鍔部同士の間で1本の所定長のケーブルを胴部に対して多列多段に巻き取ることによって、複数のケーブルの各々を胴部の互いに異なる位置で多列多段に同時に巻き取る。各ケーブルには、陸側のソケットに接続するためのプラグが取り付けられている。胴部は、軸方向において、第1の端部と、第1の端部とは反対側の第2の端部とを有する。各鍔部は、第1の端部側の第1の側面と、第2の端部側の第2の側面とを有する。複数の第1の側面と複数の第2の側面とのうち、互いに対向する第1の側面と第2の側面との少なくとも一方における多段のうちの複数の段に対応する位置の各々に、他方側に突出した突起部が設けられている。
【0014】
本開示の他の局面に従うと、陸電受電用コンテナは、上述したケーブルリールに加えて、上述した各ケーブルをさらに備える。各プラグは、本体部と、本体部と離間した状態で本体部の周囲を覆う筒状のカバーとを有している。カバーには、カバーの外周面から内周面側に向かって貫通した第2の貫通孔が1又は複数形成されている。カバーの直径は、隣り合う鍔部同士の間の距離よりも短い。第1の貫通孔に治具の第1のフックが挿入され、かつ、第2の貫通孔に治具の第2のフックが挿入されることにより、プラグが隣り合う鍔部同士の間で収容された状態で鍔部に対して固定される。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成によれば、複数のケーブルをケーブルリールで同時に巻き取る際に、各ケーブルの先端に取り付けられたプラグ同士の位置ズレを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コンテナ船に陸側から給電している状態を示した図である。
図2】受電用コンテナを説明するための図である。
図3】ケーブルリールを説明する図である。
図4】ドラムを説明する斜視図である。
図5】金具の取り付けを説明するための図である。
図6】金具の配置と、金具による効果とを説明するための図である。
図7】2本のケーブルが巻き上げられた後の状態を示した図である。
図8】金具が設けられていないケーブルリールで2本のケーブルを巻き上げたときの状態を示した図である。
図9】プラグを示した図である。
図10】プラグをケーブルリールに固定するための治具を示した図である。
図11】治具の使用方法を説明するための図である。
図12】治具による効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る陸電受電用コンテナについて説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0018】
図面においては、実際の寸法の比率に従って図示しておらず、構造の理解を容易にするために、構造が明確となるように比率を変更して図示している箇所がある。なお、以下で説明される各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0019】
<A.全体構成>
図1は、コンテナ船1に陸側から給電している状態を示した図である。図1に示されるように、コンテナ船1は、右舷側において、港の岸壁800に着岸している。
【0020】
岸壁800には、送電用のソケット810と、電力線ケーブル811と、通信用のケーブル812とが設置されている。ソケット810には、電力線ケーブル811と、通信用のケーブル812とが接続されている。電力線ケーブル811と、通信用のケーブル812とは、地中に埋設されている。
【0021】
コンテナ船1は、エンジンルーム5と、居住区9とを備える。コンテナ船1には、複数の商業用コンテナ2と、陸電受電用コンテナである受電用コンテナ4とが積載可能である。
【0022】
受電用コンテナ4は、コンテナ船1の離岸時に陸上に保管可能なモバイルタイプである。すなわち、受電用コンテナ4は、コンテナ船1が着岸すると、陸上からクレーン(図示せず)を用いてコンテナ船1の所定位置に設置される。本例では、コンテナ船1の右舷に受電用コンテナ4が積載されている。コンテナ船1は、右舷及び左舷に受電用コンテナ4を積載可能である。なお、後述するケーブルリールが受電用コンテナ内に設置される構成であれば、受電用コンテナ4は、固定設置タイプであってもよい。
【0023】
エンジンルーム5は、船内に設けられている。エンジンルーム5内には、プロペラ(図示せず)の駆動力を発生するエンジン(図示せず)の他に、船内で使用される電力を発生する発電機(図示せず)、エンジンコントロールルーム51等が設けられる。
【0024】
エンジンコントロールルーム51内には、エンジンを駆動するための各種補機(図示せず)と、主配電盤3とが設けられる。主配電盤3は、上記の発電機によって発電された電力を船内の各種電気負荷へ分配するための電気設備である。
【0025】
受電用コンテナ4は、2本の受電用のケーブル6R,6Lを有する。ケーブル6Rの長さと、ケーブル6Lの長さとは、同じである。詳しくは、ケーブル6Rの有効長と、ケーブル6Lの有効長とは、同じである。
【0026】
ケーブル6Rの先端には、プラグ7Rが取り付けられている。ケーブル6Lの先端には、プラグ7Lが取り付けられている。受電用コンテナ4を使用しないときには、ケーブル6R,6Lとプラグ7R,7Lとは、受電用コンテナ4内に収容される。プラグ7R,7Lは、ケーブルリール10側のコネクタである。
【0027】
受電用コンテナ4は、図示しない陸上の給電設備から商用電力(たとえば6.6kVの高圧電力)を受電し、エンジンルーム5内の発電機に代えて主配電盤3へ電力を供給するための陸電受電設備である。このコンテナ船1は、港に停泊中に、エンジンルーム5内の発電機を停止し、陸上から電力の供給を受けて船内の電気負荷へ電力を供給することができる。
【0028】
なお、船央側には多数の商業用コンテナ2が積載されるので、受電用コンテナ4は船尾に設けられるのが好ましいが、受電用コンテナ4の配置は船尾に限定されるものではない。商業用コンテナ2と受電用コンテナ4との外形寸法は、規格化されており、かつ同一である。
【0029】
コンテナ船1が着岸した後に受電用コンテナ4がコンテナ船1に設置されると、受電用コンテナ4の扉41が開けられ、受電用コンテナ4内から2本の受電用のケーブル6R,6Lが引き出される。その後、ケーブル6R,6Lの先端に取り付けられたプラグ7R,7Lが、陸上側のソケット810に接続される。
【0030】
ケーブル6R,6Lは、高圧ケーブルである。より詳しくは、ケーブル6R,6Lは、電力線と、通信線とが内蔵されている。なお、受電用コンテナ4内に2本のケーブル6R,6Lを備える構成を説明しているが、ケーブルの本数は複数であれば、特に限定されない。
【0031】
<B.受電用コンテナ>
図2は、受電用コンテナ4を説明するための図である。図2に示されるように、受電用コンテナ4は、ケーブルリール10と、コンテナケース40と、ケーブル6R,6L(図1)とを備える。受電用コンテナ4の保管時には、ケーブルリール10にケーブル6R,6Lが巻かれている。
【0032】
ケーブルリール10は、ドラム11と、複数の機器を収容した機器用ケース12とを含む。コンテナケース40は、扉41(図1参照)に加えて、扉41とは反対側の内壁面42を含む。さらに、コンテナケース40は、ケーブルリール10が設置される設置面43を含む。ケーブルリール10は、扉41と内壁面42との間において、扉41と内壁面42とに対して隙間をあけて設置される。
【0033】
受電用コンテナ4は、高圧陸電盤(図示せず)をさらに含む。当該高圧陸電盤のスイッチ(図示せず)をオペータが操作することにより、ケーブルリール10が回転する。なお、受電用コンテナ4は、高圧陸電盤の二次側に接続される変圧器をさらに含んでいてもよい。コンテナ船1が、このような変圧器を含む場合、受電用コンテナ4に当該変圧器を設ける必要はない。
【0034】
<C.ケーブルリール>
図3は、ケーブルリール10を説明する図である。図3に示すように、機器用ケース12には、ドラム11を回転させるモータ99と、ケーブル6R用のスリップリング(図示せず)と、ケーブル6L用のスリップリング(図示せず)とが収容されている。
【0035】
受電用コンテナ4は、2本の二次側(固定側)のケーブル95R,95Lをさらに備える。ケーブル95Rの一端は、ケーブル6R用のスリップリングに接続されている。ケーブル95Lの一端は、ケーブル6L用のスリップリングに接続されている。
【0036】
スリップリングは、回転体から静止側の機器へ電気等を授受する回転コネクタである。スリップリングは、回転する円形の導体と、当該導体の周囲に設けられたバネ状のブラシとを有する。導体がブラシに接触しながら回転することにより、途切れることなく通電及び通信を行える。
【0037】
本例では、ケーブル6R用のスリップリングにより、ケーブル6Rとケーブル95Rとの間における電力及び電気信号の伝達が可能となる。同様に、ケーブル6L用のスリップリングにより、ケーブル6Lとケーブル95Lとの間における電力及び電気信号の伝達とが可能となる。
【0038】
ドラム11は、ケーブル6Rを巻き取る巻取部11Rと、ケーブル6Lを巻き取る巻取部11Lとを備える。詳しくは、ドラム11は、胴部100と、3つの鍔部201,202,203と含む。
【0039】
ドラム11は、ある局面において、モータ99の回転に基づき、2本のケーブル6R,6Lを同時に巻き取る。ドラム11は、2本のケーブル6R,6Lを同じ速度で巻き取る。ドラム11は、他の局面において、モータ99の回転に基づき、2本のケーブル6R,6Lを同時に送り出す。ドラム11は、2本のケーブル6R,6Lを同じ速度で送り出す。このように、ケーブルリール10によって、2本のケーブル6R,6Lの巻き取りと、送り出しとが行われる。
【0040】
胴部100は、軸190の軸方向(Y軸方向)において、機器用ケース12側の端部101と、端部101とは反対側の端部102とを有する。胴部100は、モータ99によって軸190周りに回転する。詳しくは、胴部100は、ケーブル6R,6Lを巻き取る方向と、ケーブル6R,6Lを送り出す方向とに回転可能である。
【0041】
鍔部201,202,203は、軸190の軸方向に間隔をあけて、この順に胴部100の胴周りに取り付けられている。詳しくは、鍔部201は、鍔部202よりも端部101側(機器用ケース12側)に位置する。鍔部202は、鍔部203よりも端部101側(機器用ケース12側)に位置する。
【0042】
なお、以下では、説明の便宜上、3つの鍔部201,202,203の各々を区別しない場合には、これら3つの鍔部のうちの任意の1つの鍔部を「鍔部200」とも称する。また、2つのケーブル6R,6Lの各々を区別しない場合には、これら2つのケーブルのうちの任意の1本のケーブルを「ケーブル6」とも称する。さらに、2つのプラグ7R,7Lの各々を区別しない場合には、これら2つのプラグのうちの任意の1つのプラグを「プラグ7」とも称する。
【0043】
ドラム11は、モータ99の回転に基づき、隣り合う鍔部200同士の間で1本のケーブル6を胴部100に対して多列多段に巻き取ることによって、複数のケーブル6の各々を胴部100の互いに異なる位置で多列多段に同時に巻き取る。本例では、ドラム11は、互いに隣り合う鍔部201と鍔部202との間で1本のケーブル6Lを胴部100に対して3列多段に巻き取り、かつ、互いに隣り合う鍔部202と鍔部203との間で1本のケーブル6Rを胴部100に対して3列多段に巻き取る。なお、図3においては、ケーブル6L,6Rが3列多段に巻かれている状態を明らかにするため、説明の便宜上、ケーブル6L,6Rの断面を示している。
【0044】
ケーブルリール10は、各ケーブル6R,6Lを3列多段で巻き取るため、各ケーブル6R,6Lの長さ(詳しくは、有効長)を1列多段の構成に比べて、長くすることができる。すなわち、1列多段の場合比べて、長いケーブルを利用可能となる。たとえば、1列多段の場合に30m~40m程度であったケーブルの長さを、60m~70m程度に延伸することができる。本例では、ケーブル6R,6Lの長さは、60m~70mの間の所定長である。
【0045】
ケーブルリール10を3列多段式のものとすることにより、各プラグ7R,7Lを、互いに隣り合う鍔部200同士の間に収容可能となる。詳しくは、鍔部201と鍔部202との間の距離(Y軸方向の離間距離)は、プラグ7Lの直径よりも長い。同様に、鍔部202と鍔部203との間の距離は、プラグ7Rの直径よりも長い。これにより、ケーブル6R,6Lを巻き取った際に、プラグ7L,7Rの一部又は全部を鍔部200同士の間に収容することも可能となる。
【0046】
なお、ケーブルリール10が3本以上のケーブル6を巻き取る構成の場合には、鍔部200を4つ以上備えていればよい。
【0047】
<D.ドラム>
図4は、ドラム11を説明する斜視図である。図4に示されるように、ドラム11は、上述したように、胴部100と、3つの鍔部201,202,203とを備える。ドラム11には、モータ99によって回転する回転軸150が取り付けられている。回転軸150とドラム11とは、軸190を回転中心として回転する。
【0048】
胴部100は、上述したように、端部101(図3参照)と、端部102とを備える。胴部100は、軸190を中心に回転する。胴部100は、端部101側の外周面103Lと、端部102側の外周面103Rとをさらに備える。外周面103Lには、ケーブル6Lが巻かれる。外周面103Rには、ケーブル6Rが巻かれる。
【0049】
鍔部201は、複数のリブ211と、仕切り板220と、リム231とを含む。複数のリブ211の各々は、胴部100に取り付けられ、かつケーブル6L接触する。各リブ211は、外周面103Lに沿って、等間隔に、胴部100から放射状に設置されている。各リブ211は、典型的には、溶接によって胴部100に固定されている。
【0050】
リム231は、円環状をしている。リム231は、溶接によって各リブ211の頂部に固定されている。複数の仕切り板220の各々は、隣り合うリブ211同士の間に設けられている。本例では、各仕切り板220は、扇面の形状を有する。各仕切り板220は、溶接によって、互いに隣り合う2本のリブ211と、リム231とに固定されている。詳しくは、仕切り板220の円弧部分がリム231に溶接により固定されている。本例では、2本のリブ211とリム231とで構成される枠の内側の隙間を埋めるように、仕切り板220が設置されている。
【0051】
鍔部202は、複数のリブ212と、仕切り板220と、リム232とを含む。複数のリブ212の各々は、胴部100に取り付けられ、かつケーブル6L,6Rの各々と接触する。各リブ212は、外周面103L,103Rに沿って、等間隔に、胴部100から放射状に設置されている。各リブ212は、溶接によって胴部100に固定されている。なお、リブ212は、頂部における形状(外周側の先端形状)がリブ211とは異なる。
【0052】
リム232は、円環状をしている。リム232は、溶接によって各リブ212の頂部に固定されている。鍔部202の各仕切り板220は、隣り合うリブ212同士の間に設けられている。鍔部202の各仕切り板220は、溶接によって、互いに隣り合う2本のリブ212と、リム232とに固定されている。なお、リム232は、軸190方向の幅がリム231よりも長い。
【0053】
鍔部203は、中央の鍔部202に関し、鍔部201と面対称の形状を有する。このため、鍔部203の詳細な構成の説明は繰り返さない。なお、鍔部203の各リブ211は、ケーブル6Rと接触する。
【0054】
なお、以下では、説明の便宜上、形状が互いに異なるリブ211,212の各々を区別しない場合には、2つのリブのうちの任意の1つのリブを「リブ210」とも称する。
【0055】
各仕切り板220には、軸190方向に貫通した複数の貫通孔229が形成されている。複数の貫通孔229のうちの2つの貫通孔229を用いて、金具250が仕切り板220に固定される。なお、本例では、仕切り板220に対してリブ210よりもケーブル6側に突出するように金具250を仕切り板220に取り付けることにより、本発明の「突起部」が構成される。
【0056】
なお、複数の貫通孔229のうちの一部の貫通孔229の開口部は、円形である。残りの貫通孔229の開口部は、金具250の取り付け位置の調整のために、上記一部の貫通孔229の開口部よりも、外周面103R,103Lの方向に広くなっている。これにより、金具250の取り付け位置の自由度が増す。
【0057】
図4に例示した3つの金具250に着目すると、3つの金具250の各々は、1つ又は2つの仕切り板220に取り付けられており、かつ、取り付けられた仕切り板220に対して、リブ212よりもケーブル6R側(鍔部203側)に突出している。詳しくは、当該3つの金具250は、多段(ケーブル6Rが巻かれたときの段数)のうちの3つの段に対応する位置の各々に設置されている。また、当該3つの金具250は、外周面103Rの周方向に沿って、並んで配置されている。
【0058】
たとえば、「多段のうちの3つの段に対応する位置」とは、ケーブル6の直径をR(mm)とすると、胴部100の外周面103Rから、外周面103Rに対して垂直方向(リブ212が延びている方向)に、距離L(=2R+R/2)だけ離れた位置となる。なお、「2R」は2段分(2本分)のケーブル6の直径の合計であり、「R/2」は3段目のケーブル6の半径である。なお、Rの値は、本例では70mmである。また、ケーブル6の重量は、本例では11kg/mである。
【0059】
複数の金具250が各鍔部200の側面に取り付けられる。各金具250の取り付け位置及び数は、ケーブル6の太さ等を考慮し、メーカ、ユーザ等によって適宜、決定される。
【0060】
好ましくは、巻取部11R及び巻取部11Lの各々において、少なくとも3段目以降の各段に金具250が設置されることが好ましい。この場合、詳細については後述するが、奇数段の各金具250と、偶数段の各金具250とが、異なる鍔部200に設けられていることが好ましい(図6参照)。3段目以降に金具250を設置する理由は、3段目からケーブル6の偏りが始まると考えられるためである。これに限らず、2段目に金具250を設置してもよい。
【0061】
図5は、金具250の取り付けを説明するための図である。図5は、図4の3つの金具250のうちの真ん中の金具250を、図4の矢印V方向から視た図でもある。すなわち、図5は、リブ212を跨いで取り付けられた金具250を示している。
【0062】
図5に示されるように、金具250は、本例ではコの字(U字形状)をしている。金具250の2つの先端部250cにはネジがきってある。ネジ部としての先端部250cに連続する円柱部250bは、貫通孔229を貫通可能な太さに加工されている。2つの円柱部250b同士の間の中央部250aのうち少なくとも円柱部250bに連続する箇所は、貫通孔229を通過できない太さを有する。
【0063】
このような金具250の2つの先端部250cと2つの円柱部250bとを、各々異なる貫通孔229に差し込み、かつナット251で締結することにより、金具250を2つの仕切り板220に固定することができる。
【0064】
<E.巻き取り態様>
図6は、金具250の配置と、金具250による効果とを説明するための図である。図6に示すとおり、各鍔部201,202,203は、端部101側の側面291と、端部102側の側面292とを有する。鍔部200を壁と捉えると、側面291,292は、壁面とも言える。
【0065】
鍔部201,203の各側面291,292は、本例では、仕切り板220の1つの表面(主面)と、リブ211の3つの表面(連続面)と、リム231の表面の一部とで構成される。同様に、鍔部202の側面291,292は、仕切り板220の1つの表面(主面)とリブ212の3つの表面(連続面)と、リム232の表面の一部とで構成される。
【0066】
複数の側面291と複数の側面292とのうち、互いに対向する側面291と側面292との少なくとも一方における多段(ケーブル6が巻かれたときの段数)のうちの複数の段に対応する位置の各々に、他方側に突出した金具250が設けられている。本例では、巻取部11L,11Rの各々については、互いに対向する側面291と側面292との両方、かつ、外周面103L,103Rから異なる高さに、金具250が設置されている。
【0067】
また、金具250同士がY軸方向において互いに重ならないように配置されている。これにより、ケーブル6R,6Lが3列分の巻き幅を確保できる。詳しくは、仕切り板220からの金具250の突出量(軸190方向の長さ)は、3列分の巻き幅を確保可能な量に抑えられている。より詳しくは、3列分の巻き幅を確保可能なように、金具250の形状及び寸法が決定されている。
【0068】
本例では、巻取部11Lに関し、鍔部201の側面292の3段目と5段目と7段目との各位置において、金具250が鍔部202の側面291方向に突出している。鍔部202の側面291の4段目と6段目との各位置において、金具250が鍔部201の側面292方向に突出している。
【0069】
同様に、巻取部11Rに関し、鍔部202の側面292の3段目と5段目と7段目との各位置において、金具250が鍔部203の側面291方向に突出している。鍔部203の側面291の4段目と6段目との各位置において、金具250が鍔部202の側面292方向に突出している。
【0070】
ところで、ケーブル6R,6Lがフリーな状態(偏った方向に力がかからない状態)においては、ケーブル6R,6Lは、自重にて自然に空いている空間に落ちるため、順番に順序よく巻かれる。その一方、陸側(港湾側)でケーブル6R,6Lが一方向に引っ張られるなどして、ケーブル6R,6Lに対して左方向又は右方向に偏った力が加わると、ケーブル6R,6Lは端(左端又は右端)の列に重なる虞がある。
【0071】
特に、3段目以降において、このようにケーブルが偏る現象が起こり易い。図6の状態(A)の例では、ケーブル6Lの中間部位600Pと、ケーブル6Rの中間部位600Qとが、2段目に巻かれることなく、3段目に巻かれようとされている。
【0072】
しかしながら、本例では、3段目以降に設けられた金具250によって、偏って巻かれたケーブル6R,6Lを自重で下層の段に落下させることができる。たとえば、図6の状態(B)に示すように、ケーブル6Lの中間部位600Pと、ケーブル6Rの中間部位600Qとを、3段目から2段目に落とすことができる。
【0073】
詳しくは、中間部位600Pと中間部位600Qとが、図6の状態(A)において重心位置が右側に寄るため、2段目のケーブル6によって安定的に支持されない状態となる。その結果、中間部位600Pと中間部位600Qとは、矢印A1,A2の方向(右下方向)に自然に落下する。これにより、2段目において、ケーブル6を3列に巻きにすることができる。
【0074】
図7は、ケーブル6Rとケーブル6Lとが巻き上げられた後の状態を示した図である。図7に示すように、ケーブル6R,6Lの巻き取り時において、ケーブル6R,6Lの各々を複数の金具250に接触させることより、偏りなく、あるいは、偏りが少ない状態で、ケーブルリール10のドラム11に巻き取ることが可能となる。
【0075】
<F.比較例>
図8は、比較例を示した図である。詳しくは、図8は、金具250が設けられていないケーブルリール911で2本のケーブル6R,6Lを巻き上げたときの状態を示した図である。金具250が備わっていない場合には、図8に示すように、たとえば、2つの巻取部911L,911Rのうちの少なくとも一方(図8の例では巻取部911Rの一方)において、ケーブル6の巻き取りに偏りが生じる。
【0076】
ところで、ケーブルリール911で2本のケーブル6R,6Lの各々を多列多段巻きする構成の場合、図8のように、少なくとも一方のケーブル6R,6Lが偏って巻き取られると、全長を巻き取ったときにプラグ7Rとプラグ7Lとに高低差(段差)が生じる結果となる。このような高低差が生じると、2つのケーブル6R,6Lのうちの一方のみが受電用コンテナ4内に収納され、他方が受電用コンテナ4内に収納できないといった事態が生じ得る。この場合、受電用コンテナ4をコンテナ船1から陸側に移動させることが困難になる。その結果、コンテナ船1の出港に影響を与えることともなりかねない。
【0077】
ところが、本実施の形態に係るケーブルリール10では、金具250とケーブル6R,6Lとが接触するため、上述したように、ケーブル6R,6Lを下段に落とすことができる。それゆえ、ケーブルリール10によれば、金具250を備えない比較例のケーブルリール911の構成に比べて、複数のケーブル6の各々を多列多段に順序よく巻くことができる。
【0078】
したがって、ケーブルリール10によれば、ケーブル6R,6Lの少なくとも一方の全長を巻き取ったときに、プラグ7Rとプラグ7Lとの高さに差が生じること、あるいは差が所定以上大きくなることを防止できる。すなわち、複数のケーブル6R,6Lをケーブルリール10で同時に巻き取る際に、各ケーブル6R,6Lの先端に取り付けられたプラグ7R,7L同士の位置ズレを抑制することが可能となる。その結果、ケーブルリール10によれば、プラグ7Rとプラグ7Lとを受電用コンテナ4に収容することができる。
【0079】
<G.小括>
上述したケーブルリール10を小括すると、以下のとおりである。
【0080】
(1)ケーブルリール10は、図2に示すように、コンテナ船1の舷に配置される受電用コンテナ(陸電受電用コンテナ)4に収容される。ケーブルリール10は、図3及び図4に示すように、軸190周りに回転する胴部100と、軸190の軸方向に間隔をあけて胴部100の胴周りに取り付けられた3つの鍔部200とを含むドラム11と、ドラム11を回転させるモータ99とを備える。
【0081】
ドラム11は、図3図6、及び図7に示すように、モータ99の回転に基づき、隣り合う鍔部200同士の間で1本の所定長のケーブル6を胴部100に対して多列多段に巻き取ることによって、複数のケーブル6の各々を胴部100の互いに異なる位置で多列多段に同時に巻き取る。各ケーブル6には、図1に示すように、陸側のソケット810に接続するためのプラグ7が取り付けられている。
【0082】
胴部100は、図3及び図4に示すように、軸190方向において、端部101と、端部101とは反対側の端部102とを有する。各鍔部200は、図6等に示すように、端部101側の側面291と、端部102側の側面292とを有する。ケーブルリール10では、図6等に示すように、複数の側面291と複数の側面292とのうち、互いに対向する側面291と側面292との少なくとも一方における上記多段のうちの複数の段に対応する位置の各々に、他方側に突出した金具250が設けられている。
【0083】
このような構成を有するケーブルリール10によれば、上述したように、各ケーブル6を多列多段で巻き取るため、各ケーブル6の長さ(有効長)を1列多段の構成に比べて、長くすることができる。さらに、上述したように、長さが同じ複数のケーブル6をケーブルリール10で同時に巻き取る際に、各ケーブル6の先端に取り付けられたプラグ7同士の位置ズレを抑制することができる。それゆえ、複数のプラグ7を受電用コンテナ4に収容することが可能となる。
【0084】
(2)各鍔部200は、図4に示すように、各々が、胴部100に取り付けられ、かつケーブル6と接触する複数のリブ210と、各々が隣り合うリブ210同士の間に設けられた複数の仕切り板220とを含む。金具250は、図4に示すように、仕切り板220に取り付けられており、かつ、仕切り板220に対して、リブ210よりもケーブル6側に突出している。各仕切り板220には、図4に示すように、金具250を予め定められた複数の位置のいずれかに取り付けるために、軸190方向に貫通した貫通孔229が形成されている。
【0085】
このような構成によれば、金具250をユーザ等が所望する位置に設置することが可能となる。
【0086】
<H.プラグの固定>
ところで、金具250により、ケーブル6R,6Lの偏り巻きが生じないよう対策がなされているが、それにもかかわらず、2本のケーブル6R,6Lに高低差が生じた場合の対策について、以下説明する。
【0087】
2本のケーブル6R,6Lが巻き上げられ、プラグ7Rとプラグ7Lとの間に高低差が生じた場合に、両方のプラグ7R,7Lを受電用コンテナ4に収容するために、一方のケーブル6が巻き上げられた後に他方のケーブル6を巻き続けたとする。この場合、先に巻き上げられたケーブル6の先端に接続されたプラグ7は、ドラム11の縁(リム232)に沿って移動する。高低差が大きいと、当該プラグ7は、受電用コンテナ4内の扉41(図2参照)とは反対側に落下する虞がある。そこで、以下では、プラグ7が扉41とは反対側に落下することを防止する構成について説明する。
【0088】
図9は、プラグ7Rを示した図である。図9に示すように、プラグ7Rは、本体部71と、カバー72とを有する。本体部71は、陸側のソケット810と電気的に接続するための接点(図示せず)を有する。
【0089】
カバー72は、筒状である。カバー72は、本体部71と離間した状態で本体部71の周囲を覆っている。詳しくは、カバー72と本体部71との間には隙間790が形成されている。
【0090】
カバー72には、カバー72の外周面から内周面側に向かって貫通した複数の貫通孔720が形成されている。本例では、カバー72の外周面に沿って、等間隔に8つの貫通孔720が形成されている。カバー72の直径は、隣り合う鍔部200同士の間の距離よりも短い。すなわち、カバー72の直径は、互いに対向する側面291と側面292との間の距離よりも短い。
【0091】
なお、プラグ7Lもプラグ7Rと同様の構成を有するため、ここでは、プラグ7Lについては繰り返し説明を行わない。貫通孔720の数は、8つに限定されない。貫通孔720の数は、1つ又は複数であればよい。
【0092】
図10は、プラグ7をケーブルリール10に固定するための治具を示した図である。図10に示すように、治具1000は、フック1001,1002と、コイルバネ1003と、ワイヤ1004とを有する。
【0093】
コイルバネ1003は、引っ張りバネである。フック1001は、コイルバネ1003の両端部のうちの一端に取り付けられている。フック1002は、上記両端部のうちの他端に取り付けられている。
【0094】
ワイヤ1004の形状は、リング状である。ワイヤ1004は、コイルバネ1003の内部を通過して、端部同士が結ばれている。ワイヤ1004は、コイルバネ1003が引っ張られすぎて、永久変形しないようにするために取り付けられている。
【0095】
図11は、治具1000の使用方法を説明するための図である。図11に示されるように、本体部71には、接点を保護する着脱可能な保護カバー711が取り付けられている。プラグ7Rをソケット810(図1参照)に接続する際には、保護カバー711は取り外される。
【0096】
たとえば、ケーブル6Rの巻き上げがケーブル6Lよりも先に完了した場合、2つの治具1000のうちの一方の治具1000のフック1001がプラグ7Rの貫通孔720に挿入されることにより、当該一方の治具1000の一端がプラグ7Rに引っ掛けられる。さらに、当該一方の治具1000のフック1002が鍔部202の仕切り板220の貫通孔229に挿入されることにより、当該一方の治具1000の他端も仕切り板220に引っ掛けられる。このとき、コイルバネ1003は、ある程度延びた状態となっていてもよいし、延びていない状態であってもよい。
【0097】
同様に、他方の治具1000のフック1001がプラグ7Rの他の貫通孔720に挿入されることにより、当該他方の治具1000の一端がプラグ7Rに引っ掛けられる。さらに、当該他方の治具1000のフック1002が鍔部203の仕切り板220の貫通孔229に挿入されることにより、当該他方の治具1000の他端も仕切り板220に引っ掛けられる。
【0098】
以上のように、2つの治具1000によって、プラグ7Lよりも先に巻き上がったプラグ7Rがケーブルリール10に固定される。
【0099】
なお、上記においては、一方の治具1000の他端と他方の治具1000の他端とを、互いに異なる鍔部200に仕切り板220に引っ掛ける例を示しているが、必ずしもこれに限定されない。一方の治具1000の他端と他方の治具1000の他端とを、同じ鍔部200に仕切り板220に引っ掛けてもよい。
【0100】
また、上記においては、2つの治具1000でプラグ7Rをケーブルリール10に固定する構成を例に挙げて説明したが、1つの治具1000又は3つ以上の治具1000によって、プラグ7Rをケーブルリール10に固定してもよい。
【0101】
図12は、治具1000による効果を説明するための図である。図12の状態(A)に示すように、ケーブル6Rが巻き上がった時点で、プラグ7Lがプラグ7Rよりも下方に位置している。この状態では、プラグ7Lが受電用コンテナ4に収容できないため、オペータは、矢印A3の方向にケーブルリール10をさらに回転させる。たとえば状態(B)のような位置までプラグ7Rが上昇すると、オペレータはケーブルリール10の回転を停止させる。
【0102】
状態(B)において、オペレータは、図11に示したように、2つの治具1000を用いて、プラグ7Rをケーブルリール10に固定する。さらに、オペレータは、状態(C)に示すようにケーブル6Lが巻き上がるまで、矢印A3の方向にケーブルリール10を回転させる。オペレータは、ケーブル6Lが巻き上がると、ケーブルリール10の回転を停止させる。
【0103】
状態(C)に遷移すると、プラグ7Lを受電用コンテナ4に収容することが可能となる。加えて、治具1000でプラグ7Rを固定しているため、プラグ7Rが受電用コンテナ4の奥側(扉41と反対側)に落下することを防止できる。
【0104】
治具1000でプラグ7Rを固定しない場合には、ケーブル6Rは、受電用コンテナ4の奥側に落下する。場合によっては、ケーブル6Rは、受電用コンテナ4の設置面43(図2参照)のうちの内壁面42寄りの位置まで落下する。このような場合、ケーブル6Rの重量が非常に重たいため、受電用コンテナ4の奥側等に落下したプラグ7Rを状態(B)のような位置まで戻すのは非常に困難である。
【0105】
しかしながら、本例ではプラグ7Rはケーブルリール10に固定されているため、受電用コンテナ4の次回の使用時に、オペレータが矢印A3とは反対の方向(図12において時計回り方向)にケーブルリール10を回転させることにより、プラグ7Rをコンテナケース40の内壁面42(図2参照)に接触することを防止できる。それゆえ、プラグ7Rを状態(B)に示した位置へとスムーズに移動させることができる。
【0106】
オペレータは、状態(B)に示した位置で2つの治具1000をプラグ7Rとケーブルリール10とから取り外し、その後、さらにケーブルリール10を矢印A3とは反対方向に回転させることにより、プラグ7Rを受電用コンテナ4の外部に送り出すことができる。
【0107】
なお、上記においては状態(B)に示した位置で、オペレータが2つの治具1000を用いて、プラグ7Rをケーブルリール10に固定する例を示したが、これに限定されるものではない。オペレータは、たとえば状態(A)から状態(B)へと遷移する途中でケーブルリール10を停止させ、このときにプラグ7Rをケーブルリール10に固定してもよい。
【0108】
上述した受電用コンテナ4を小括すると、以下のとおりである。受電用コンテナ4は、ケーブルリール10を備える。受電用コンテナ4は、ケーブル6R,6Lをさらに備える。各プラグ7R,7Lは、図9に示すように、本体部71と、本体部71と離間した状態で本体部71の周囲を覆う筒状のカバー72とを有している。カバー72には、カバー72の外周面から内周面側に向かって貫通した8つの貫通孔720が形成されている。
【0109】
カバー72の直径は、隣り合う鍔部200同士の間の距離よりも短い。貫通孔229に治具1000のフック1001が挿入され、かつ、貫通孔720に治具1000のフック1002が挿入されることにより、プラグ7が隣り合う鍔部200同士の間で収容された状態で鍔部200に対して固定される。
【0110】
このような構成によれば、上述したように、プラグ7を隣り合う鍔部200同士の間で収容した状態で、ケーブル6をさらに巻き取ることができる。また、治具1000によって、受電用コンテナ4内においてプラグ7の落下を防止できる。それゆえ、受電用コンテナ4によれば、次回の使用時において、容易にプラグ7を陸側に送り出すことが可能となる。
【0111】
<I.変形例>
(1)図4及び図5においては、1つの段に対応する位置(円周上の位置)に、1つの金具250を設置した構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。1つの段に対応する位置に、間隔を開けて複数の金具250を設置してもよい。
【0112】
(2)上記においては、1つの段に対応する位置に金具250が取り付けられた例を示した。しかしながら、必ずしも、これに限定されるものではない。1つの金具250を複数の段に亘って固定してもよい。たとえば、一方の先端部250cを3段目に対応する貫通孔229にて固定し、他方の先端部250cを4段目に対応する貫通孔229にて固定する等してもよい。
【0113】
(3)金属製の部材である金具250の代わりに、金具250と同形状の非金属で造られた部材を用いてもよい。
【0114】
(4)金具250の形状は、U字形状に限定されるものではない。仕切り板220に取り付けられ、ケーブル6側に突出する構成であれば、特に限定されない。
【0115】
(5)仕切り板220に対してリブ210よりもケーブル6側に突出するように金具250を仕切り板220に取り付けることにより、本発明の「突起部」が構成したが、これに限定されるものではない。仕切り板220又はリブ210に凸部を溶接等で設けることにより、当該凸部によって突起部を構成してもよい。
【0116】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 コンテナ船、2 商業用コンテナ、3 主配電盤、4 受電用コンテナ、5 エンジンルーム、6L,6R,95L,95R,812 ケーブル、7L,7R プラグ、9 居住区、10 ケーブルリール、11 ドラム、11L,11R,911L,911R 巻取部、12 機器用ケース、40 コンテナケース、41 扉、42 内壁面、43 設置面、71 本体部、72 カバー、99 モータ、100 胴部、101,102 端部、103L,103R 外周面、150 回転軸、190 軸、201,202,203 鍔部、211,212 リブ、220 仕切り板、229,720 貫通孔、231,232 リム、250 金具、250a 中央部、250b 円柱部、250c 先端部、251 ナット、291,292 側面、600P,600Q 中間部位、711 保護カバー、790 隙間、800 岸壁、810 ソケット、811 電力線ケーブル、1000 治具、1001,1002 フック、1003 コイルバネ、1004 ワイヤ。
図1
図2
図3
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図5
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図12