(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007665
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】呼吸情報測定システム、および起動装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/113 20060101AFI20240112BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61B5/113
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108884
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】松沢 航
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】呼吸情報の測定に係る対象者と医療従事者の双方の負担を軽減する。
【解決手段】センサ11は、対象者20の呼吸動作に対応する検出信号DTを出力する。処理装置12は、検出信号DTに基づいて対象者20の呼吸情報を自動的に算出する測定処理を行なう。起動装置13は、対象者20による操作入力が可能な位置に配置されており、当該操作入力により処理装置12に測定処理を開始させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の呼吸情報を測定するシステムであって、
前記対象者の呼吸動作に対応する検出信号を出力するセンサと、
前記検出信号に基づいて前記対象者の呼吸情報を自動的に算出する測定処理を行なう処理装置と、
前記対象者による操作入力が可能な位置に配置されるように構成されており、当該操作入力により前記処理装置に前記測定処理を開始させる起動装置と、
を備えている、
呼吸情報測定システム。
【請求項2】
前記センサは、前記対象者からベッドに加わる荷重に対応する信号を前記検出信号として出力するように構成されている、
請求項1に記載の呼吸情報測定システム。
【請求項3】
前記測定処理の終了までの時間を前記対象者に通知する通知装置を備えている、
請求項1または2に記載の呼吸情報測定システム。
【請求項4】
前記対象者に再度の前記操作入力を促す通知を行なう通知装置を備えており、
前記処理装置は、前記呼吸情報の算出が適切になされたかの判断を行ない、当該判断の結果に応じて前記通知装置に前記通知を行なわせるように構成されている、
請求項1または2に記載の呼吸情報測定システム。
【請求項5】
前記対象者が映り込んだ画像を取得する撮像装置を備えており、
前記判断は、前記画像に基づいて行なわれる、
請求項4に記載の呼吸情報測定システム。
【請求項6】
前記判断は、前記検出信号の波形と前記呼吸情報の算出可否の組合せを学習データとして用いた機械学習により生成された学習済みモデルを用いて行なわれる、
請求項4に記載の呼吸情報測定システム。
【請求項7】
前記検出信号に対応する情報と前記呼吸情報の少なくとも一方を出力する出力装置を備えている、
請求項1に記載の呼吸情報測定システム。
【請求項8】
対象者による操作入力を受け付ける受付部と、
前記操作入力に基づいて、センサから出力される前記対象者の呼吸動作に対応する検出信号に基づいて当該対象者の呼吸情報を自動的に算出する測定処理を処理装置に開始させる起動信号を出力する出力部と、
を備えており、
前記センサと前記処理装置の少なくとも一方とは独立して配置されるように構成されている、
起動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象者の呼吸情報を測定するシステム、および当該システムに含まれて呼吸情報の測定を開始させる起動装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、対象者の呼吸動作における特定のタイミングで医療従事者が測定装置に操作を入力することによって、対象者の呼吸数を測定する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
呼吸情報の測定に係る対象者と医療従事者の双方の負担を軽減することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示により提供されうる態様例の一つは、対象者の呼吸情報を測定するシステムであって、
前記対象者の呼吸動作に対応する検出信号を出力するセンサと、
前記検出信号に基づいて前記対象者の呼吸情報を自動的に算出する測定処理を行なう処理装置と、
前記対象者による操作入力が可能な位置に配置されるように構成されており、当該操作入力により前記処理装置に前記測定処理を開始させる起動装置と、
を備えている。
【0006】
本開示により提供されうる態様例の一つは、起動装置であって、
対象者による操作入力を受け付ける受付部と、
前記操作入力に基づいて、センサから出力される前記対象者の呼吸動作に対応する検出信号に基づいて当該対象者の呼吸情報を自動的に算出する測定処理を処理装置に開始させる信号を出力する出力部と、
を備えており、
前記センサと前記処理装置の少なくとも一方とは独立して配置されるように構成されている。
【0007】
対象者の一例である患者の容体が悪化する可能性を予測する指標として早期警告スコア(Early Warning Score)が知られている。当該スコアを算出するためには、呼吸数などの呼吸情報が必要とされる。重症患者の場合、生体モニタなどの医療機器を接続することにより、連続的に呼吸情報が取得される。他方、軽症患者の場合、医療従事者が一日に数回の訪問を通じて呼吸情報の測定が行なわれることが一般的である。スポットチェックと称されるこの訪問測定は、医療従事者の業務負荷を増大させる一因となっている。
【0008】
上記の各態様例に係る構成によれば、起動装置への操作入力を通じて呼吸情報の測定を開始するタイミングを対象者自身が決めることができるので、対象者の心的負担を軽減できる。対象者は、安静状態を自覚したタイミングで起動装置に操作入力を行なえばよい。これにより、外的なタイミング設定に起因する対象者自身の準備不足や体動により呼吸情報の測定精度が低下する事態の発生を抑制できる。加えて、呼吸情報の測定に際して医療従事者が帯同する必要がないので、スポットチェックに係る業務負荷の増大を抑制できる。結果として、呼吸情報の測定に係る対象者と医療従事者の双方の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る呼吸情報測定システムの機能構成を例示している。
【
図2】
図1の処理装置により実行される処理の流れを例示している。
【
図3】
図1の学習済みモデルを生成する装置の機能構成を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る呼吸情報測定システム10(以降は測定システム10と略称する)の機能構成を例示している。測定システム10は、対象者20の呼吸数を測定するシステムである。呼吸数は、呼吸情報の一例である。
【0012】
本実施形態においては、測定システム10は、ベッド30に横たわった対象者20の呼吸数を測定するように構成されている。測定システム10は、センサ11を含んでいる。センサ11は、対象者20からベッド30に加わる荷重に対応する検出信号DTを出力するように構成されている。対象者20の呼吸動作に伴い、当該荷重は変化する。したがって、センサ11は、対象者20の呼吸動作に対応する検出信号DTを出力する。検出信号DTは、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。
【0013】
一例として、センサ11は、ベッド30の各脚部と床の間に配置された荷重計(いわゆるベッドスケール)を含むように構成されうる。この場合、センサ11は、各荷重計により検出された荷重に基づいて検出信号DTを生成する。別例として、センサ11は、ベッド30のマットレスや脚部に内蔵された荷重センサを含むように構成されうる。この場合、センサ11は、当該荷重センサにより検出された荷重に基づいて検出信号DTを生成する。あるいは、センサ11は、空気が充填されたエアバッグの内圧に対応する検出信号DTを生成するように構成されうる。
【0014】
測定システム10は、処理装置12を含んでいる。処理装置12は、入力インタフェース121、プロセッサ122、および出力インタフェース123を備えている。
【0015】
入力インタフェース121は、入力インタフェース121は、センサ11から出力された検出信号DTを受け付けるように構成されている。検出信号DTがアナログ信号である場合、入力インタフェース121は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を備える。この説明は、入力インタフェース121が受け付けうる他の信号やデータについて同様に適用される。
【0016】
プロセッサ122は、入力インタフェース121により受け付けられた検出信号DTに基づいて対象者20の呼吸数を自動的に算出する測定処理を実行するように構成されている。呼吸数の算出は、例えば所定の時間内に得られた有意な荷重の変化の回数に基づいてなされうる。
【0017】
出力インタフェース123は、算出された呼吸数を示す呼吸数データRNを出力するように構成されている。呼吸数データRNは、デジタルデータの形態であってもよいし、アナログデータの形態であってもよい。呼吸数データRNがアナログデータの形態である場合、出力インタフェース123は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を備える。この説明は、出力インタフェース123が出力しうる他の信号やデータについて同様に適用される。
【0018】
呼吸数データRNは、外部装置50において適宜に利用されうる。一例として、呼吸数データRNは、外部装置50としての表示装置に測定結果としての呼吸数を表示するために使用されうる。当該表示装置は、呼吸数に加えてあるいは代えて、センサ11から出力された検出信号DTに対応する情報を表示してもよい。この場合、外部装置50は、出力装置の一例である。別例として、呼吸数データRNは、測定結果としての呼吸数を分析や管理するために外部装置50としての記憶装置に保存されうる。なお、処理装置12は、外部装置50に内蔵されていてもよい。
【0019】
測定システム10は、起動装置13を含んでいる。起動装置13は、ベッド30に横たわった対象者20による操作入力を受け付ける受付部を備えている。換言すると、起動装置13は、対象者20による操作入力が可能な位置に、センサ11および処理装置12とは独立して配置されている。本例においては、起動装置13は、ボタンスイッチを備えている。対象者20は、ボタンスイッチを押すことにより操作入力を行なう。
【0020】
起動装置13は、操作入力に応答して起動信号ACを出力する出力部を備えている。起動信号ACは、処理装置12に前述した測定処理を開始させるように構成されている。起動信号ACは、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。起動装置13から処理装置12への起動信号ACの送信は、有線通信を介してなされてもよいし、無線通信を介してなされてもよい。
【0021】
具体的には、起動装置13から出力された起動信号ACが、処理装置12の入力インタフェース121により受け付けられる。プロセッサ122は、起動信号ACが入力インタフェース121により受け付けられると、前述した測定処理を開始するように構成されている。
【0022】
測定処理の終了は、所定時間の経過後あるいは呼吸数データRNの出力後にプロセッサ122により自動的になされてもよいし、起動装置13を通じた対象者20による操作入力を通じてなされてもよい。
【0023】
対象者の一例である患者の容体が悪化する可能性を予測する指標として早期警告スコア(Early Warning Score)が知られている。当該スコアを算出するためには、呼吸数などの呼吸情報が必要とされる。重症患者の場合、生体モニタなどの医療機器を接続することにより、連続的に呼吸情報が取得される。他方、軽症患者の場合、医療従事者が一日に数回の訪問を通じて呼吸情報の測定が行なわれることが一般的である。スポットチェックと称されるこの訪問測定は、医療従事者の業務負荷を増大させる一因となっている。
【0024】
本実施形態に係る構成によれば、起動装置13への操作入力を通じて呼吸情報の測定を開始するタイミングを対象者20自身が決めることができるので、対象者20の心的負担を軽減できる。対象者20は、安静状態を自覚したタイミングで起動装置13に操作入力を行なえばよい。これにより、外的なタイミング設定に起因する対象者20自身の準備不足や体動により呼吸情報の測定精度が低下する事態の発生を抑制できる。加えて、呼吸情報の測定に際して医療従事者が帯同する必要がないので、スポットチェックに係る業務負荷の増大を抑制できる。結果として、呼吸情報の測定に係る対象者と医療従事者の双方の負担を軽減できる。
【0025】
前述したように、本実施形態においては、センサ11は、対象者20からベッド30に加わる荷重に対応する検出信号DTを出力するように構成されている。
【0026】
荷重に基づいて呼吸数を算出する手法は、目視による確認を前提としているスポットチェックを不要にできる一方、測定結果が体動の影響を受けやすいこと知られている。しかしながら、前述のように対象者20が安静状態を自覚したタイミングで測定を開始できるので、体動除去に係る複雑な処理アルゴリズムを採用することなく、測定精度の低下を抑制できる。さらに、呼吸情報に加えて対象者20の体重を取得できる。これにより、対象者20の水分出納も考慮した容態管理を行なうことができる。
【0027】
経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)もまた、呼吸数と相関を有する呼吸情報になりうる。この場合、センサ11としてパルスオキシメトリプローブが用いられうる。対象者20の呼吸状態と関連付けられるのであれば、心拍数、体温、血圧などの生体パラメータの値も呼吸情報になりうる。この場合、センサ11として当該生体パラメータの値を取得しうる適宜のセンサが用いられうる。
【0028】
図1に例示されるように、測定システム10は、通知装置14を含みうる。通知装置14は、処理装置12により行なわれる呼吸数の測定処理が終了するまでの時間を対象者20に通知するように構成される。残り時間の通知は、視覚的通知、聴覚的通知、および触覚的通知の少なくとも一つを通じて行なわれる。例えば、「あと10秒です。」といったメッセージが、表示装置を通じて表示されたり、スピーカを通じて音声出力されたりする。
【0029】
具体的には、処理装置12のプロセッサ122が測定処理の残り時間を特定する。一例として、残り時間の特定は、測定が開始されてからの経過時間を所定の時間長さから減算することにより行なわれうる。別例として、最初に有意な呼吸数が算出できてから移動平均処理などを用いて算出結果を更新する構成の場合、最初の有意な呼吸数が算出できてからの経過時間を所定の時間長さから減算することにより残り時間が特定されうる。
【0030】
プロセッサ122は、特定された残り時間を示す残り時間データRTを、出力インタフェース123から出力する、残り時間データRTは、通知装置14の仕様に応じて、アナログテータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。処理装置12から通知装置14への残り時間データRTの送信は、有線通信を介してなされてもよいし、無線通信を介してなされてもよい。
【0031】
通知装置14は、受信した残り時間データRTが示す測定処理の残り時間を、対象者20に通知する。
【0032】
このような構成によれば、対象者20は、通知装置14による通知を通じて安静状態を保つ必要のある残り時間を把握できるので、測定に伴う心的負担がより軽減される。
【0033】
通知装置14は、対象者20に再度の操作入力を促す通知を行なうように構成されうる。当該通知は、視覚的通知、聴覚的通知、および触覚的通知の少なくとも一つを通じて行なわれる。例えば、「もう一度ボタンを押してください」といったメッセージが、表示装置を通じて表示されたり、スピーカを通じて音声出力されたりする。
【0034】
なお、再操作入力を促す通知を行なう装置は、前述した測定処理の残り時間の通知を行なう装置と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
この場合、処理装置12のプロセッサ122は、呼吸数の算出が適切になされたかの判断を行ない、算出が適切になされなかったと判断された場合に通知装置14に再操作入力を促す通知を行なわせるように構成される。
図2は、プロセッサ122により実行される処理の流れを例示している。
【0036】
まず、プロセッサ122は、起動装置13から出力された起動信号ACが入力インタフェース121により受け付けられたかを判断する(STEP1)。起動信号ACが受け付けられたと判断されるまで、当該処理が繰り返される(STEP1においてNO)。
【0037】
起動信号ACが受け付けられたと判断されると(STEP1においてYES)、プロセッサ122は、内部タイマによる計時を開始するとともに、センサ11から出力された検出信号DTが入力インタフェース121により受け付けられたかを判断する(STEP2)。
【0038】
検出信号DTが受け付けられていないと判断されると(STEP2においてNO)、プロセッサ122は、内部タイマによる計時結果を参照し、所定の時間が経過したかを判断する(STEP3)。所定の時間が経過していないと判断されると(STEP3においてNO)、処理はSTEP2に戻る。
【0039】
検出信号DTが受け付けられたと判断されると(STEP2においてYES)、プロセッサ122は、所定の算出処理の結果として呼吸数が適切に算出されたかを判断する(STEP4)。呼吸数が算出されたと判断されると(STEP4においてYES)、プロセッサ122は、算出された呼吸数に対応する呼吸数データRNを出力インタフェース123から出力する(STEP5)。
【0040】
呼吸数が適切に算出されていないと判断されると(STEP4においてNO)、プロセッサ122は、内部タイマによる計時結果を参照し、所定の時間が経過したかを判断する(STEP3)。所定の時間が経過していないと判断されると(STEP3においてNO)、処理はSTEP2に戻る。
【0041】
所定の時間が経過したと判断されると(STEP3においてYES)、プロセッサ122は、再操作入力を促す通知を通知装置14に行なわせる要求信号RQを、出力インタフェース123から出力する(STEP6)。要求信号RQは、通知装置14の仕様に応じてアナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。
【0042】
検出信号DTが受け付けられないまま所定時間が経過した場合や、呼吸数が適切に算出されていないまま所定時間が経過した場合は、センサ11の不具合や対象者20の体動などにより算出処理が適切に遂行できていない状況が想定される。このような状況が対象者20に通知されることにより、対象者20自身による測定環境の再設定が促されうる。結果として、呼吸数の測定精度の低下が抑制されるだけでなく、医療従事者の介入を必要最小限にできる。
【0043】
図1に例示されるように、測定システム10は、撮像装置15を含みうる。撮像装置15は、対象者20が映り込んだ画像を取得するように構成されている。撮像装置15は、当該画像に対応する画像データIMを、処理装置12へ送信するように構成されている。画像データIMは、デジタルデータの形態の形態であってもよいし、アナログデータの形態であってもよい。撮像装置15から処理装置12への画像データIMの送信は、有線通信を介してなされてもよいし、無線通信を介してなされてもよい。
【0044】
撮像装置15の例としては、デジタルカメラ、サーモカメラ、TOF(Time of Flight)カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)スキャナなどが挙げられる。
【0045】
画像データIMは、処理装置12の入力インタフェース121により受け付けられる。プロセッサ122は、前述した呼吸数の算出が適切になされたかの判断を、画像データIMに基づいて行なう。例えば、プロセッサ122は、周知の画像認識処理を通じて、画像に映り込んだ対象者20の動き量を検出する。プロセッサ122は、当該動き量が閾値を上回る場合に呼吸数が適切に算出されていないと判断する。閾値は、例えば、呼吸数の算出を阻害しうる体動量に対応するように設定される。
【0046】
撮像装置15に加えてあるいは代えて、
図1に例示されるように、測定システム10は集音装置16を含みうる。集音装置16は、対象者20が発する音声を取得するように構成されている。集音装置16は、当該音声に対応する音声データADを、処理装置12へ送信するように構成されている。音声データADは、デジタルデータの形態の形態であってもよいし、アナログデータの形態であってもよい。集音装置16から処理装置12への音声データADの送信は、有線通信を介してなされてもよいし、無線通信を介してなされてもよい。
【0047】
音声データADは、処理装置12の入力インタフェース121により受け付けられる。プロセッサ122は、前述した呼吸数の算出が適切になされたかの判断を、音声データADに基づいて行なう。例えば、プロセッサ122は、周知の音声認識処理を通じて、対象者20による咳や発話の有無を検出する。呼吸数の算出を阻害するような咳や発話に対応する音声データが含まれていた場合に、呼吸数が適切に算出されていないと判断する。
【0048】
このような構成によれば、呼吸量の適切な算出を阻害しうる対象者20の体動や発声が検出された場合に、対象者20に測定処理のやり直しを促す通知を行ないうる。これにより、呼吸数の測定精度の低下がさらに抑制される。また、比較的大きな体動や発声を検出できればよいので、撮像装置15に求められる解像度の高さや集音装置16に求められる集音性能に係る要件を緩和できる。
【0049】
図1に例示されるように、処理装置12は、学習済みモデル124を備えうる。学習済みモデル124は、センサ11から出力された検出信号DTの波形を入力することにより、呼吸数が適切になされた確率を出力する処理を行なうように構成される。
【0050】
学習済みモデル124は、検出信号DTの波形と呼吸数の算出可否の組合せを学習データとして用いた機械学習を通じて生成された推論アルゴリズムである。
図3は、学習済みモデル124を生成するモデル生成装置40の機能構成を例示している。
【0051】
モデル生成装置40は、入力インタフェース41を備えている。入力インタフェース41は、学習データLGを受け付けるように構成されている。学習データLGは、ある対象者について取得された検出信号DTの波形に対応する波形情報と、当該波形に基づいて当該対象者の呼吸数が算出できたかを示す算出可否情報の対を多数含んでいる。
【0052】
モデル生成装置40は、プロセッサ42を備えている。プロセッサ42は、学習データLGを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデル124を生成するように構成されている。本例においては、ニューラルネットワークに学習させる処理として、教師あり学習に係る手法が使用される。
【0053】
モデル生成装置40は、出力インタフェース43を備えている。出力インタフェース43は、プロセッサ42により生成された学習済みモデル124を、処理装置12に実装可能な形態で出力するように構成されている。
【0054】
処理装置12に実装された学習済みモデル124は、入力された検出信号DTの波形に基づいて対象者20の呼吸数が適切に算出された確率を推論し、当該確率を示す推論データをプロセッサ122へ出力する。プロセッサ122は、推論データの示す確率が閾値を下回る場合に、対象者20の呼吸数が適切に算出されなかったと判断する。
【0055】
このような構成によれば、処理装置12により行なわれる呼吸数が適切に算出されたかの判断について明示的な規則の事前設計に係る負担を軽減できるだけでなく、処理装置12の汎化性能を高めることができる。
【0056】
これまで説明した各種の機能を有する処理装置12のプロセッサ122とモデル生成装置40のプロセッサ42の各々は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。当該コンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされてから汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。
【0057】
これまで説明した各種の機能を有する処理装置12のプロセッサ122とモデル生成装置40のプロセッサ42の各々は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読媒体の一例である。これまで説明した各種の機能を有する処理装置12のプロセッサ122とモデル生成装置40のプロセッサ42の各々は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0058】
これまで説明した様々な構成は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の各構成は、本開示の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更や組み合わせがなされうる。
【0059】
上記の実施形態においては、起動装置13は、対象者20による機械的操作を受け付けるように構成されている。しかしながら、起動装置13は、対象者20の音声やジェスチャを操作入力として受け付けるように構成されてもよい。
【0060】
上記の実施形態においては、センサ11は、対象者20からベッド30に加わる荷重に対応する検出信号DTを出力するように構成されている。しかしながら、センサ11は、対象者20の体動に対応する検出信号DTを検出するように構成されてもよい。対象者20の呼吸に伴う体動は、圧力センサ、振動センサ、加速度センサ、マイクロ波センサなどにより検出されうる。
【0061】
上記の実施形態においては、呼吸数の測定は、対象者20がベッド30に横たわった状態で行なわれている。しかしながら、呼吸数の測定が適切に行なわれうる環境であれば、必ずしも測定がベッド30上で行なわれることを要しない。センサ11の仕様もまた、測定環境に応じて適宜に変更されうる。
【0062】
上記の実施形態においては、モデル生成装置40は、教師あり学習を通じて学習済みモデル124を生成している。しかしながら、モデル生成装置40は、教師なし学習を通じて学習済みモデル124を生成してもよい。この場合、学習データLGは、呼吸数が算出された検出信号DTが統計的処理に供された基準波形情報を含む。この学習を通じて生成された学習済みモデル124は、センサ11から受信した検出信号DTの波形が基準波形情報の示す波形から逸脱している場合に、呼吸数が適切に算出されなかったと推論する。
【0063】
上記の実施形態においては、モデル生成装置40は、ニューラルネットワークを用いた機械学習を通じて学習済みモデル124を生成している。しかしながら、他の機械学習アルゴリズムを通じて学習済みモデル124が生成されてもよい。他の機械学習アルゴリズムの例としては、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクトルマシン、スパースモデリング、ベイズ推定、ガウス過程などが挙げられる。
【0064】
上記の実施形態においては、呼吸情報測定システム10に含まれるセンサ11、処理装置12、起動装置13、および通知装置14が相互に独立した装置として説明されている。しかしながら、センサ11、処理装置12、起動装置13、および通知装置14の少なくとも一つは、同じ装置の一部として提供されうる。
【0065】
以下に列挙される構成もまた、本開示の一部を構成する。
(1):対象者の呼吸情報を測定するシステムであって、
前記対象者の呼吸動作に対応する検出信号を出力するセンサと、
前記検出信号に基づいて前記対象者の呼吸情報を自動的に算出する測定処理を行なう処理装置と、
前記対象者による操作入力が可能な位置に配置されるように構成されており、当該操作入力により前記処理装置に前記測定処理を開始させる起動装置と、
を備えている、
呼吸情報測定システム。
(2):前記センサは、前記対象者からベッドに加わる荷重に対応する信号を前記検出信号として出力するように構成されている、
(1)に記載の呼吸情報測定システム。
(3):前記測定処理の終了までの時間を前記対象者に通知する通知装置を備えている、
(1)または(2)に記載の呼吸情報測定システム。
(4):前記対象者に再度の前記操作入力を促す通知を行なう通知装置を備えており、
前記処理装置は、前記呼吸情報の算出が適切になされたかの判断を行ない、当該判断の結果に応じて前記通知装置に前記通知を行なわせるように構成されている、
(1)から(3)のいずれかに記載の呼吸情報測定システム。
(5):前記対象者が映り込んだ画像を取得する撮像装置を備えており、
前記判断は、前記画像に基づいて行なわれる、
(4)に記載の呼吸情報測定システム。
(6):前記判断は、前記検出信号の波形と前記呼吸情報の算出可否の組合せを学習データとして用いた機械学習により生成された学習済みモデルを用いて行なわれる、
(4)に記載の呼吸情報測定システム。
(7):前記検出信号に対応する情報と前記呼吸情報の少なくとも一方を出力する出力装置を備えている、
(1)から(6)のいずれかに記載の呼吸情報測定システム。
(8):対象者による操作入力を受け付ける受付部と、
前記操作入力に基づいて、センサから出力される前記対象者の呼吸動作に対応する検出信号に基づいて当該対象者の呼吸情報を自動的に算出する測定処理を処理装置に開始させる起動信号を出力する出力部と、
を備えており、
前記センサと前記処理装置の少なくとも一方とは独立して配置されるように構成されている、
起動装置。
【符号の説明】
【0066】
10:呼吸情報測定システム、11:センサ、12:処理装置、124:学習済みモデル、13:起動装置、14:通知装置、15:撮像装置、20:対象者、30:ベッド、50:外部装置、AC:起動信号、DT:検出信号